説明

椅子

【課題】大人が使用する第2使用状態と子供が使用する第1使用状態とを容易に切り換えることができる椅子を提供すること。
【解決手段】床に固定されたベース4に対して前後方向に揺動可能に枢支された第1及び第2脚支柱5,6を有し、第1脚支柱5の上端には、第1座部7が設けられるとともに、第2脚支柱6の上端には、第2座部8が前後方向に揺動可能に枢支され、第2座部8は、その前端が第1座部7に枢支されるとともに、その後端から背凭れ9が延設されており、両脚支柱5,6が揺動されることによって、第1座部7と第2座部8とが、互いの上面7a,8aが面一をなすように並設される第1使用状態と、第1座部7が、その前部が降下する第2使用状態と、に切り換え可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に劇場や映画館等に設置される椅子に係り、特に簡単な操作により座面の奥行きを換えることで子供も大人も使用できる椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映画館等に設置される観客用の椅子としては、大人と子供が兼用して使えるようにするために、兼用座体(第1座部)と後部座(第2座部)とにより広域座面を形成し、大人が着座可能な通常の椅子として使用するとともに、兼用座体をアームや蹴上板によるリンク機構に支持させることで、兼用座体を背凭れに近づけるとともに、規定高さ位置にして子供が着座可能な椅子として使用するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公平3−24109号公報(第3〜4頁、第5〜7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の大人・子供兼用椅子にあっては、大人が使用可能な状態から子供が使用可能な状態に切り換える際に、兼用座体(第1座部)と後部座(第2座部)とを、一旦原状位置に起立させた後、アームや蹴上板によるリンク機構による支持により、子供が着座可能な位置に兼用座体を移動しなければならず、その切り換え作業が煩雑になり、特に子供が容易に椅子の切り換え操作を行えないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、大人が使用する第2使用状態と子供が使用する第1使用状態とを容易に切り換えることができる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の椅子は、
床に固定されたベースに対して前後方向に揺動可能に枢支された第1及び第2脚支柱を有し、前記第1脚支柱の上端には、第1座部が設けられるとともに、前記第2脚支柱の上端には、第2座部が前後方向に揺動可能に枢支され、該第2座部は、その前端が前記第1座部に枢支されるとともに、その後端から背凭れが延設されており、前記両脚支柱が揺動されることによって、前記第1座部と前記第2座部とが、互いの上面が面一をなすように並設される第1使用状態と、前記第1座部が、その前部が降下する第2使用状態と、に切り換え可能となっていることを特徴としている。
この特徴によれば、第1使用状態では、第1座部と第2座部の上面を合わせた広さの座面が構成され、座面の前端から背凭れまでの幅を広くして大人用の椅子として使用することができ、第2使用状態では、第2座部のみで座面が構成されるため、座面の前端から背凭れまでの幅を狭くして子供用の椅子として使用することができるようになり、かつ両脚支柱を揺動させる操作により、第1使用状態と第2使用状態とを容易に切り換えることができるので、子供であっても容易に切り換え操作を行うことができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の椅子は、請求項1に記載の椅子であって、
前記第2使用状態において、前記第1座部が略垂直状態をなすことを特徴としている。
この特徴によれば、第2使用状態において、着座に使用しない第1座部が垂直状態に傾斜されることで、使用者の足元で第1座部が邪魔にならずに済むようになる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の椅子は、請求項1または2に記載の椅子であって、
前記第2使用状態における前記第2座部で構成される座面の高さが、前記第1使用状態における前記第1座部と前記第2座部とで構成される座面の高さよりも低くなることを特徴としている。
この特徴によれば、主に子供が使用する第2使用状態において、座面の高さが低くなり、大人よりも身長が低い子供が椅子に座り易くなる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の椅子は、請求項1または2に記載の椅子であって、
前記第2使用状態における前記第2座部で構成される座面の高さが、前記第1使用状態における前記第1座部と前記第2座部とで構成される座面の高さよりも高くなることを特徴としている。
この特徴によれば、主に子供が使用する第2使用状態において、座面の高さが高くなり、子供が椅子に座った際の視線を高くすることができ、大人よりも身長が低い子供が前方を見やすくなる。
【0010】
本発明の請求項5に記載の椅子は、請求項1または2に記載の椅子であって、
前記第1使用状態における前記第1座部と前記第2座部とで構成される座面の高さと、前記第2使用状態における前記第2座部で構成される座面の高さと、が同じ高さになることを特徴としている。
この特徴によれば、座面の高さを変化させずに、座面の前端から背凭れまでの幅のみを変化させるため、第1使用状態の椅子と第2使用状態の椅子とを並設して使用しても、それぞれの使用状態の椅子の座面の高さが一定になり、使用状態が異なる椅子に座ることで生じる大人と子供の相対的な視線の高さ位置が変化しなくて済む。
【0011】
本発明の請求項6に記載の椅子は、請求項1ないし5のいずれかに記載の椅子であって、
前記第1脚支柱には、前記第2脚支柱を収納する収納部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、使用者の足元には、第1脚支柱のみが配置されるため第2脚支柱が邪魔にならずに済むようになり、かつ第2脚支柱が第1脚支柱の収納部内に収納されて隠蔽されるため、椅子の見栄えがよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る椅子を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、実施例1における椅子を示す側面図であり、図2は、第2使用状態の椅子を示す斜視図であり、図3は、第1使用状態の椅子を示す斜視図であり、図4は、第2使用状態の椅子を示す縦断側面図であり、図5は、第1使用状態の椅子を示す縦断側面図である。以下、図1、図4、図5の紙面左方側を椅子の正面側(前方側)として説明する。
【0014】
図1の符号1は、映画館やコンサートホール等に設置される本発明の適用された椅子1である。本実施例では、複数の椅子1が前後方向の所定間隔毎に床に固定された状態で設けられている。尚、特に図示はしないが、これらの椅子1は、左右方向に所定間隔毎に複数設けられている。
【0015】
図1に示すように、本実施例の椅子1は、床面に固定されたベース4を有しており、該ベース4には、第1脚支柱5が前後方向に揺動可能に枢軸10cによって枢支されている(図2参照)。この第1脚支柱5の上端部には、本実施例における第1座部としての座前部7が一体的に形成されている。
【0016】
座前部7の後方には、背凭れ9を有する本実施例における第2座部としての座後部8が配置されている。また、座後部8の前端部と、座前部7の後端部とは、蝶番15によって互いに接続されている。尚、背凭れ9は、座後部8の後端部から上方に向かって一体的に延設されている。
【0017】
また、ベース4には、第2脚支柱6の下端部が枢軸10aによって前後方向に揺動可能に枢支されている。この第2脚支柱6の上端部は、座後部8の下面側に設けられたブラケット11に枢軸10bによって枢支されており、座後部8が前後方向に揺動可能となっている。
【0018】
尚、本実施例では、これら第1脚支柱5及び第2脚支柱6が前後に揺動されることで、座前部7及び座後部8の配置を変更して、椅子1を子供Cが使用(着座)する第2使用状態と、大人である使用者Uが使用(着座)する第1使用状態とに切り換えることができるようになっている。
【0019】
図1に示すように、この椅子1の座前部7は、第1脚支柱5が前方に揺動されることで、座前部7の上面7aが正面側に向くように傾斜するようになっている。具体的には、図1の紙面左方側の椅子1に示すように、椅子1が子供Cに使用されるときには、第1脚支柱5及び第2脚支柱6が正面側に揺動されて前方に傾くようになっているとともに、座前部7の前端部が下降するように傾斜されており、座前部7が略垂直状態になって、子供Cが略水平に配置された座後部8に着座できるようになる。この状態が、子供が椅子1を使用する第2使用状態となっており、第2使用状態では、座後部8の上面8aにより狭い座面16が構成される。
【0020】
尚、第1脚支柱5が前方に揺動されることで、座後部8は子供Cが着座しやすい高さhに配置される。更に尚、第2使用状態では、座後部8の前端から背凭れ9までの幅(距離)が狭く(短く)なり、子供Cが着座し易いようになる。
【0021】
また、図1の紙面右方側の椅子1に示すように、子供Cが使用する第2使用状態から大人の使用者Uが椅子1の背凭れ9を掴んで、椅子1を後方に揺動させると、第1脚支柱5及び第2脚支柱6が後方に揺動され、該揺動に伴い座前部7と座後部8が後方の揺動限界位置で略水平状態になる。この状態が、大人が椅子1を使用する第1使用状態となっており、第1使用状態では、座前部7と座後部8の上面7a,8aが面一をなすことで広い座面16が構成される。
【0022】
尚、このときの座前部7及び座後部8は大人である使用者Uが着座しやすい高さhに配置される。更に尚、第1使用状態では、座前部7の前端から背凭れ9までの幅(距離)が広く(長く)なり、大人の使用者Uが着座し易いようになる。
【0023】
図2及び図4に示すように、第1脚支柱5の下端部はベース4に枢支されている。また、第2脚支柱6の下端部は、第1脚支柱5の下端部よりも上方かつ後方位置でベース4に対して前後方向に枢軸10aにより揺動自在に枢支されている。
【0024】
また、第1脚支柱5の後部からは、左右方向に延設されたリブ5aが設けられている(図2参照)。該リブ5aは、椅子1が正面側(前方側)に付勢された際に、ベース上面4aに当接することで椅子1の正面側への揺動を規制し、椅子1が子供Cに使用される第2使用状態となる位置を規定している(図2参照)。尚、椅子1が大人の使用者Uによって使用される際には、リブ5aがベース背面4bに当接することで椅子1の背面側への揺動を規制し、椅子1の第1使用状態となる位置を規定している(図3参照)。
【0025】
図2に示すように、第1脚支柱5の上端に一体的に形成されている座前部7は、側面視で略く字形状をなすように板部材が屈曲されて形成されている。また、座前部7の前部側には、該座前部7を左右方向に貫通する孔14が設けられており、座前部7の軽量化を図っている。
【0026】
また、図4及び図5に示すように、第1脚支柱5の後部には、該第1脚支柱5の下端部から上端部にかけて背面側(後方側)に開口する本実施例における収納部としての溝部13が形成されている。第2脚支柱6は、第1脚支柱5の溝部13内に収納されるとともに、上端部を座後部8の下面側に設けられたブラケット11に枢軸10bによって枢支されている。座後部8の後端部には、背凭れ9が上方に向かって一体的に延設されており、これら座後部8及び背凭れ9は側面視で略L字形状をなすように板部材が屈曲されて形成されている。
【0027】
尚、座前部7と座後部8の上面7a,8aには、合成樹脂等の材質で形成されて伸縮性を有するカバー17が接着されている。このカバー17によって、第1使用状態において大人の使用者Uの着座時に座前部7と座後部8間に使用者Uの服等が挟まることを防いでいる。また、第2使用状態においても子供Cの服等が挟まることを防いでいる。
【0028】
図4に示すように、第2使用状態における椅子1の座前部7は、前端部が下降するように傾斜されており、該座前部7及び座後部8は子供Cの座りやすい高さhで、第1使用状態であるときよりも前方に配置されている。
【0029】
椅子1を使用者U(大人)が使用する際には、使用者Uが第2使用状態の椅子1の背凭れ9を背面側に引くことにより、第1脚支柱5及び第2脚支柱6を背面側に揺動させて、図3及び図5に示すように、椅子1を座前部7及び座後部8の上面7a,8aが面一、かつ略水平状態となる第1使用状態とする。
【0030】
座前部7及び座後部8は、側面視で円弧を描いて背面側に揺動されることによって、座前部7及び座後部8の高さが高さhに上昇し、第1使用状態となる位置で使用者U(大人)が着座しやすい高さとなる。このとき、座前部7は、背凭れ9が背面側に引かれると、座後部8とともに背面側に引かれて第1脚支柱5がベース4に枢支された点を中心に背面側に側面視で円弧を描いて背面側に揺動される。そして、座前部7は上面7aが上方に向くように揺動され、椅子1が第1使用状態となる位置で座前部7の上面7aと座後部8の上面8aとが面一かつ略水平状態となり、広い座面16を形成する。
【0031】
尚、椅子1を図5に示す第1使用状態から図4に示す第2使用状態にする際には、使用者U(大人)が背凭れ9を正面側に押すことにより、第1脚支柱5及び第2脚支柱6が正面側に揺動されて、第1脚支柱5の揺動に伴い座面16を構成する座前部7及び座後部8が略水平状態から第2使用状態に移行する。
【0032】
そして、使用者U(大人)が背凭れ9を正面側に押すと、座前部7が蝶番15を介して座後部8から正面側に向けて押されつつ枢軸10cを中心として正面側に揺動される。こうすることで、座前部7の前端部が降下するように傾斜され、かつ座後部8が子供Cの座りやすい高さhとなり、第1使用状態であるときよりも前方に配置される第2使用状態となる。
【0033】
以上、本実施例における椅子1では、両脚支柱5,6が揺動されることによって、座前部7と座後部8とが、互いの上面7a,8aが面一をなすように並設される第1使用状態と、座前部7が、その前部が降下する第2使用状態と、に切り換え可能となっていることで、第1使用状態では、座前部7と座後部8の上面7a,8aを合わせた広さの座面16が構成され、座面16の前端から背凭れ9までの幅を広くして大人U用の椅子1として使用することができ、第2使用状態では、座後部8のみで座面16が構成されるため、座面16の前端から背凭れ9までの幅を狭くして子供C用の椅子1として使用することができるようになり、かつ両脚支柱5,6を揺動させる操作により、第1使用状態と第2使用状態とを容易に切り換えることができるので、子供Cであっても容易に切り換え操作を行うことができる。
【0034】
また、第2使用状態において、着座に使用しない座前部7が垂直状態に傾斜されることで、使用者である子供Cの足元で座前部7が邪魔にならずに済むようになる。
【0035】
また、第2使用状態における座後部8で構成される座面16の高さhが、第1使用状態における座前部7と座後部8との上面7a,8aで構成される座面16の高さhよりも低くなることで、主に子供Cが使用する第2使用状態において、座面16の高さhが低くなり、大人Uよりも身長が低い子供Cが椅子1に座り易くなる。
【0036】
また、第1脚支柱5には、第2脚支柱6を収納する収納部としての溝部13が設けられていることで、使用者Uの足元には、第1脚支柱5のみが配置されるため第2脚支柱6が邪魔にならずに済むようになり、かつ第2脚支柱6が第1脚支柱5の溝部13内に収納されて隠蔽されるため、椅子1の見栄えがよくなる。
【実施例2】
【0037】
次に、実施例2に係る椅子につき、図6を参照して説明する。図6(a)は、実施例2における第2使用状態の椅子を示す概念図であり、図6(b)は、第1使用状態の椅子を示す概念図である。以下、図6(a)及び図6(b)の紙面左方側を椅子の正面側(前方側)として説明する。
【0038】
図6(a)及び図6(b)に示すように、実施例2における椅子18は、床面に固定されたベース19を有しており、該ベース19の後部には、第1脚支柱20の下端部が枢軸10cによって枢支されており、ベース19の前部には、第2脚支柱21の下端部が第1脚支柱20と同じ高さ位置で枢軸10aによって枢支されている。尚、第1脚支柱20と第2脚支柱21は、第1脚支柱20よりも第2脚支柱21の方が長く形成されている。
【0039】
また、ベース19の上方には、板状の座前部22及び座後部23と、座後部23の後端部から上方に延びる背凭れ24が配置されている。これら座前部22の後端部と座後部23の先端部は蝶番15で接続されている。座前部22の下面側のブラケット25には、第1脚支柱20の上端部が枢軸10dによって枢支されるとともに、座後部23の下面側のブラケット26には、第2脚支柱21の上端部が枢軸10bによって枢支されている。第1脚支柱20と第2脚支柱21は側面視で交差している。
【0040】
図6(a)に示すように、椅子18が子供Cに使用されるときは、第1脚支柱20及び第2脚支柱21が正面側に揺動されて前方に傾くようになっている。このとき第1脚支柱20が前方に揺動されることで、座前部22の上面22aが正面側に向くように傾斜して、座前部22が略垂直状態となり、第2使用状態に切り換わるようになっている。
【0041】
また、第2使用状態では、第2脚支柱21が前方に揺動されて略垂直に立設されることで、座後部23が前上方に上昇されて所定の高さhに座後部23の上面23aが配置されている。尚、第2使用状態における座後部23の高さhは、後述するように、大人の使用者Uが着座する第1使用状態の座前部22及び座後部23の高さhよりも高くなる(図6(b))。
【0042】
また、図6(b)に示すように、子供Cが使用する第2使用状態から大人の使用者Uが使用する第1使用状態に切り換える際には、椅子18の背凭れ24を掴んで、椅子18を後方に揺動させる。すると、第1脚支柱20及び第2脚支柱21が後方に揺動されて、座前部22と座後部23とが略水平になり、互いの上面22a,23aが面一をなすように並設される。尚、第1使用状態における座前部22及び座後部23の高さhは、前述した第2使用状態の座後部23の高さhよりも低くなる(図6(a)参照)。
【0043】
図6(b)の第1使用状態では、第2脚支柱21が後方側に倒れるように傾斜されるため、後方に第2脚支柱21揺動されることで座後部23は、第1使用状態よりも低い位置hに配置される。また、図6(a)の第2使用状態では、第2脚支柱21が略垂直に立設されるため、前方に第2脚支柱21揺動されることで座後部23は、第1使用状態よりも高い位置hに配置される。
【0044】
図6(a)の第2使用状態では、座後部23の上面23aにより、椅子18の狭い座面27が構成され、座後部23の前端から背凭れ24までの幅を狭くして子供Cが着座し易いようにできる。また、図6(b)の第1使用状態では、座前部22と座後部23の上面22a,23aが面一となることで椅子18の広い座面27が構成され、座前部22の前端から背凭れ24までの幅を広くして大人の使用者Uが着座し易いようにできる。
【0045】
以上、実施例2における椅子18では、第2使用状態における座後部23の上面23aで構成される座面27の高さhが、第1使用状態における座前部22と座後部23の上面22a,23aとで構成される座面27の高さhよりも高くなることで、主に子供Cが使用する第2使用状態において、座面27の高さhが高くなり、子供Cが椅子18に座った際の視線を高くすることができ、大人Uよりも身長が低い子供Cが前方を見やすくなる。
【実施例3】
【0046】
次に、実施例3に係る椅子につき、図7(a)から図7(b)を参照して説明する。尚、前記実施例2に示される構成部分と同一構成部分に付いては同一符号を付して重複する説明を省略する。図7(a)は、実施例3における第2使用状態の椅子を示す概念図であり、図7(b)は、第1使用状態の椅子を示す概念図である。以下、図7(a)及び図7(b)の紙面左方側を椅子の正面側(前方側)として説明する。
【0047】
図7(a)及び図7(b)に示すように、実施例3における椅子28は、実施例2における椅子18と異なり、第1脚支柱29と第2脚支柱30とがほぼ同じ長さに形成されている。この第2脚支柱30は、第1使用状態にて後方に傾いたときの床面に対する傾斜角度と、第2使用状態にて前方に傾いたときの床面に対する傾斜角度がほぼ同じになっている。そのためどちらの使用状態に切り換わっても、座面27の高さhが変化しないようになっている。
【0048】
以上、実施例3における椅子28では、第1使用状態における座前部22と座後部23の上面22a,23aとで構成される座面27の高さhと、第2使用状態における座後部23の上面23aで構成される座面27の高さhと、が同じ高さになることで、座面27の高さhを変化させずに、座面27の前端から背凭れ24までの幅のみを変化、すなわち座面27の広さのみを変化させるため、第1使用状態の椅子28と第2使用状態の椅子28とを並設して使用しても、それぞれの使用状態の椅子28の座面27の高さhが一定になり、使用状態が異なる椅子28に座ることで生じる大人Uと子供Cの相対的な視線の高さ位置が変化しなくて済む。
【0049】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0050】
例えば、前記実施例1〜3では、使用者U(子供C)が手動により椅子1を揺動させることで、椅子1を第1状態と第2使用状態とに切り換えるようにしているが、付勢手段としてのコイルバネ等をベース4内に設けるようにし、該コイルバネにより脚支柱5,6を前方または後方のいずれか一方に揺動するようにしてもよく、このようにすれば、使用者U(子供C)が椅子1から離席するだけで、コイルバネの付勢力により椅子1が自動的に第1使用状態または第2使用状態に切り換わるようになり、使用者U(子供C)が椅子1の使用状態を切り換える煩わしさがなくなる。
【0051】
また、前記実施例1〜3では、両脚支柱5,6の前方及び後方の揺動限界位置で揺動が停止して第1使用状態及び第2使用状態となる構成となっていたが、両脚支柱5,6の前方及び後方の揺動限界位置で両脚支柱5,6の揺動を停止させるロック機構を設けるようにしてもよく、ロック機構を設けておけば、特に子供Cが着座した際などに不用意に椅子1の使用状態が切り換わることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施例1における椅子を示す側面図である。
【図2】第2使用状態の椅子を示す斜視図である。
【図3】第1使用状態の椅子を示す斜視図である。
【図4】第2使用状態の椅子を示す縦断側面図である。
【図5】第1使用状態の椅子を示す縦断側面図である。
【図6】(a)は、実施例2における第2使用状態の椅子を示す概念図であり、(b)は、第1使用状態の椅子を示す概念図である。
【図7】(a)は、実施例3における第2使用状態の椅子を示す概念図であり、(b)は、第1使用状態の椅子を示す概念図である。
【符号の説明】
【0053】
1 椅子
4 ベース
5 第1脚支柱
6 第2脚支柱
7 座前部(第1座部)
8 座後部(第2座部)
9 背凭れ
13 溝部(収納部)
16 座面
18 椅子
19 ベース
20 第1脚支柱
21 第2脚支柱
22 座前部
23 座後部
24 背凭れ
27 座面
28 椅子
29 第1脚支柱
30 第2脚支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に固定されたベースに対して前後方向に揺動可能に枢支された第1及び第2脚支柱を有し、前記第1脚支柱の上端には、第1座部が設けられるとともに、前記第2脚支柱の上端には、第2座部が前後方向に揺動可能に枢支され、該第2座部は、その前端が前記第1座部に枢支されるとともに、その後端から背凭れが延設されており、前記両脚支柱が揺動されることによって、前記第1座部と前記第2座部とが、互いの上面が面一をなすように並設される第1使用状態と、前記第1座部が、その前部が降下する第2使用状態と、に切り換え可能となっていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記第2使用状態において、前記第1座部が略垂直状態をなすことを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記第2使用状態における前記第2座部で構成される座面の高さが、前記第1使用状態における前記第1座部と前記第2座部とで構成される座面の高さよりも低くなることを特徴とする請求項1または2に記載の椅子。
【請求項4】
前記第2使用状態における前記第2座部で構成される座面の高さが、前記第1使用状態における前記第1座部と前記第2座部とで構成される座面の高さよりも高くなることを特徴とする請求項1または2に記載の椅子。
【請求項5】
前記第1使用状態における前記第1座部と前記第2座部とで構成される座面の高さと、前記第2使用状態における前記第2座部で構成される座面の高さと、が同じ高さになることを特徴とする請求項1または2に記載の椅子。
【請求項6】
前記第1脚支柱には、前記第2脚支柱を収納する収納部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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