説明

椅子

【課題】 回動速度を調節しつつ、小さく収納することができる椅子を提供する。
【解決手段】
椅子ユニット1は、左右方向に所定の間隔を空けて配置される一対の支柱10(10R,10L)と、支柱10R,10Lにより水平に支持される天板20と、背凭れ30と、着座用の座体40と、からなる。座体40は、支持軸14により回動可能に支持されており、ガススプリング50により着座面41が略鉛直となる方向に付勢される。
座体40がガススプリング50に付勢されて立ち上がるとき、ブレーキポイントに到達するまでは、座体40は素早く回動する。座体40がブレーキポイントを通過すると、ガススプリング50による第2の反力により回動速度が抑制され、ゆっくりと着座面41が略鉛直となる収納位置に移動して静止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座面が略鉛直となる収納位置,および,着座面が略水平となる使用位置それぞれへと回動して変位するように構成された椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば学校の講義室のように、机および椅子が群設されている場所においては、机と椅子との間を人が容易に移動できるように、非着席時には、着座用の座体が略鉛直方向に立ち上がって収納可能となるように構成された椅子が用いられている。例えば、座体が支軸に対して回転可能な状態で取り付けられるとともに、座体における支軸よりも後方の部分に円柱状の錘が横設された構成の椅子が開示されている(特許文献1参照)。このような構成の椅子では、錘によって座体が立ち上がる方向へ付勢されており、使用者が離席すると座体が自動的に立ち上がって収納される。
【0003】
しかしながら、上記の椅子は、座体が勢いよく跳ね上がって背凭れやストッパなどに強く当接し、大きな衝撃音や振動を発生させて周囲に不快感を与えたり、その衝撃によりストッパの破損や劣化を促進する虞がある。一方、座体がゆっくりと立ち上がる構成とすると、座体に足が接触して使用者が立ちにくくなる。よって、座体が回動する速度は、使用者が立ち上がった際に使用者の足に接触しなくなる位置に座体が回動するまではなるべく早く、その位置以降はゆっくりと回動することが望まれる。
【0004】
このような問題を解決する椅子としては、例えば、座体を立ち上げる方向に付勢するスプリングと、流体が充填されたシリンダおよびシリンダ内を摺動するピストンを有するシリンダ装置と、を備え、座体の回動に伴って、ピストンを摺動してシリンダ内の流体を圧縮又は流動させ、その反力を座体に伝達し、座体の回動方向に抗する反力を加えるように構成された椅子が開示されている(特許文献2参照)。このような構成の椅子では、使用者が立ち上がるとスプリングにより座体が立ち上がり、座体が回動するとシリンダ装置が座体の回動速度を抑制し、座体が背凭れなどに当接する際の衝撃音を低減することができる。
【特許文献1】実公昭58−47903号公報
【特許文献2】特許第3888992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献2に記載の椅子は、座体にスプリングとシリンダ装置とを別々の位置に設置する必要があるため、それらを配置してカバーを取り付けると、座体自体が厚くなってしまう。そのため、座体が立ち上がった状態であっても机と椅子との間のスペースが狭くなってしまい、机と椅子との間の移動が不便になるという問題があった。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、回動速度を調節しつつ、小さく収納することができる椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題点を解決するためになされた請求項1記載の発明は、所定の間隔を空けて配置された一対の支持体と、水平に配置され、上記一対の支持体により両端が支持されてなる支持軸と、前後方向に拡がる着座面を有し、上記着座面が略水平となる使用位置と、上記着座面の前方が上昇することで上記着座面が略鉛直となる収納位置と、の間で回動可能となるように、上記支持軸により支持される座体と、上記座体に設けられた第1取付部に一端が取り付けられると共に、上記支持体に対する位置関係が一定となる第2取付部に他端が取り付けられており、伸長することで、上記座体を上記収納位置に向けて付勢するガススプリングと、を備え、上記座体が回動する領域のうち、上記収納位置から所定の範囲にあたる収納領域に上記座体が位置する場合の上記ガススプリングの伸長速度は、上記収納領域以外の領域に上記座体が位置する場合の上記ガススプリングの伸長速度に比べて小さいことを特徴とする椅子である。
【0008】
このように構成された椅子において、ガススプリングは、座体を付勢して収納位置に移動させると共に、収納位置付近では座体の回動速度を抑え、大きな衝突音を発生することを抑制する。従来は、上記の機能を得るためにスプリングなどの付勢手段と、ダンパーなどの緩衝手段と、の2種類を別々の位置に取り付ける必要があったが、上記請求項1の構成ではガススプリングのみを取り付ければよく、部品の取り付けに必要なスペースを減少させることができる。よって、本発明の椅子であれば、回動速度を調節しつつ小さく収納することがでる。それにより、例えば講義室などの群設されている椅子に適用することで、座体を収納した時に使用者が移動するスペースを大きくとることができる。
【0009】
また、従来は座体の回動速度を調整するために、スプリングの復元力とシリンダ装置の反力とをそれぞれ調整し、その合力を適切な値に合わせる必要があったため、回動速度を適切なものとすることが困難であったが、本発明の椅子ではガススプリングの調整のみでよく、適切な回動速度の調整が容易となる。
【0010】
なお、第2取付部の設置位置は、支持体との位置関係が一定となる位置、つまり、座体の回動に伴って変位しない位置であれば、その設置位置は特に限定されない。例えば、支持体に設けられていても良いし、支持軸が座体と共に回動しないのであれば支持軸に設けられていても良い。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の椅子であって、上記ガススプリングが、上記座体における上記着座面の裏面側に位置する領域に配置されることを特徴とする。
このように構成された椅子であれば、使用者の体や衣服がガススプリングに接触しにくくなるので、座体の回動に伴って移動および伸縮するガススプリングに体や衣服を巻き込む事故を抑制することができる。また、座体が使用位置にある場合においては、ガススプリングが座体の下に位置することとなるので、使用者の着座の邪魔にならず、椅子の正面および背面のスペースを効率よく使用することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の椅子であって、上記収納領域は、上記座体が上記使用位置にあるときの上記座体の上記床面に対する位置関係に基づいて定まる足接地位置よりも、上記椅子の背面側に位置することを特徴とする。
【0013】
このように構成された椅子であれば、使用者が立ち上がろうとすると、立ち上がったときに足が接触しやすい領域では座体が素早く回動し、足が接触しにくい領域まで回動すると、座体がゆっくりと動くことになる。よって、立ち上がり動作の邪魔にならず、都合がよい。
【0014】
なお、上述した足接地位置とは、座体の着座面の先端や、座体の床面からの高さによって定まる位置であって、一般的な体格の人が椅子から自然に(楽に)立ち上がろうとする際に、足の踵が接地する位置である。この位置より背面側に座体がある場合には、使用者の足に座体が接触しないので、この位置より背面側まで座体が素早く回動させることで、使用者の立ち上がりを快適なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
本実施例の椅子ユニット1は、図1に示すように、左右方向(図1におけるAB方向)に所定の間隔を空けて配置される一対の支柱10(10R,10L)と、上記支柱10R,10Lにより水平に支持される天板20と、上記天板20の正面方向(図1におけるC方向)の端部に取り付けられた略鉛直方向に広がる背凭れ30と、上記支柱10R,10Lにより床面より高い位置で支持される着座用の座体40と、からなるものであって、支柱10R,10Lと天板20が机として機能し、支柱10R,10L,背凭れ30,および座体40が椅子として機能する。この椅子ユニット1は、講義室などにおいて、図2に示すように、椅子の正面方向に複数並べて設置される。
【0016】
上述した支柱10R,10Lには、図1に示すように、床面に固定される固定部11(11R,11L)と、固定部11R,11Lから上方向に延びだす柱部12(12R,12L)と、柱部12(12R,12L)それぞれから椅子の正面方向に延びだす突出部13(13R,13L)が設けられている。この突出部13Rと突出部13Lとの間には、上記左右方向に伸びて水平に配置される支持軸14が配置されている。この支持軸14は、両端を突出部13Rおよび突出部13Lにより回動不能に固定されている。なお、上述した支柱10R,10Lが本発明における支持体に相当する。
【0017】
上述した座体40は、前後左右方向(図1におけるC−D,A−B方向)に拡がる着座面41を有する座板42と、座板42の裏面における左右(図1におけるA−B方向)両端に取り付けられ、上記支持軸14に対して座板42を回動可能に固定する軸受け43と、着座面41の裏面側の領域を覆うように形成されたカバー44と、からなる。
【0018】
この座体40は、図3に示すように、着座面41が略水平となる使用位置(図3における座体40aの位置であって、図2においては座体40aに該当)と、着座面41の前方が上昇することで着座面41が略鉛直となる収納位置(図3における座体40cの位置であって、図2においては座体40cに該当)と、の間で回動可能となるように、支持軸14により後方が支持される。なお、図示しないストッパにより、使用位置と収納位置との間の領域以外への回動が制限されている。
【0019】
また、座板42の裏面には、着座面41が収納位置となる方向に座板42を付勢するガススプリング50が備えられている。このガススプリング50は、座体40に設けられた第1取付部45に第1連結部59が回動可能に連結すると共に、支持軸14に設けられた第2取付部15に第2連結部61が回動可能に連結する。これにより、ガススプリング50が伸長することで、着座面41が略鉛直状態となる収納位置に座体40が付勢されることとなる。
【0020】
ガススプリング50は、図4に示すように、ガス51およびオイル52が封入されたシリンダ53と、一端がシリンダ53内に挿入されると共に他端がシリンダ53外に突出しており、シリンダ53内部を摺動して突出量が変化するロッド54と、ロッド54における上述した一端側の端部に取り付けられ、シリンダ53内部を2室に画成するピストン55と、ピストン55に形成され、上記2室を連通するオリフィス56と、ロッド54においてピストン55と並べて配置されたチェックバルブ57と、からなる。シリンダ53におけるロッド54が突出しない側の先端には、貫通孔58が形成されてなる第1連結部59が形成されている。また、ロッド54の上述した他端側の先端には、貫通孔60が形成されてなる第2連結部61が形成されている。
【0021】
このようなガススプリング50において、ピストン55は、ピストン55に加わるガス圧力の2室間の差異により、ロッド54を外部に押し出す方向(図4におけるE方向)に付勢されている。この付勢力より強い外力がロッド54に加えられないときは、ロッド54がシリンダ53外に向かって移動する(ガススプリング50が伸長する)。
【0022】
また、ロッド54が移動する際には、ガス51がオリフィス56を通過することにより、ロッド54の移動速度およびオリフィス56の径により定まる第1の反力で移動速度が抑制される。
【0023】
また、チェックバルブ57は、通常、図5(a)に示すように、ピストン55と一定の間隔をあけて位置しているが、ロッド54がシリンダ53外に向かって移動し、ピストン55がオイル52の層に進入すると、図5(b)に示すように、ピストン55側に移動してオリフィス56の出口の経路をさらに狭める。これにより、上述した第1の反力よりも強い第2の反力でロッド54の移動速度が抑制される。
【0024】
つまり、ガススプリング50の伸長速度は、ガススプリング50が所定の長さ(ピストン55がオイル52の層に進入するときのガススプリング50の長さ)を超えたときを境に大きく減少する。なお、ロッド54がシリンダ53内に向かって移動する際には、ロッド54の位置に関わらずチェックバルブ57は図5(a)の位置となり、上述した第2の反力は発生せず、第1の反力により移動速度が抑制される。
【0025】
なお、第2取付部15の設置位置は、支柱10R,10Lとの位置関係が一定となるように設置されていれば、その具体的な設置位置は特に限定されない。例えば、支柱10Rまたは支柱10Lに対して直接設置されていても良い。
【0026】
また、カバー44は、上述した軸受け43およびガススプリング50を覆うように座板42に沿って形成されており、座体40の回動に伴ってそれらが動作した際に、服や体の一部などが巻き込まれることを抑制している。
(2)座体40の回動動作
座体40の回動動作を、図2に基づいて説明する。図2において、座体40aは使用者2aが座って使用している状態、座体40bは使用者2bが立ち上がる過程における状態、座体40cは使用者2cが立ち上がった後の状態を示している。
【0027】
座体40の着座面41が略水平状態である使用位置(図2における座体40aの位置)に座体40が位置するときは、ガススプリング50は最も圧縮された状態(ロッド54がシリンダ53の内部に進入した状態)となっており、座体40は使用者2aの体重の負荷によりその状態が維持される。
【0028】
この状態から使用者2aが立ち上がり、使用者2bの状態となると、体重による負荷が無くなるため、ガススプリング50が伸びることで座体40が回動する(図2における座体40b)。このとき、座体40の回動速度は第1の反力で抑制されるが、第1の反力は第2の反力よりも小さいため、座体40は素早く回動する。
【0029】
そして、ガススプリング50が伸長していくことで、座体40は、着座面41が略鉛直となる収納位置(図2における座体40c)まで回動する。このとき、ガススプリング50は最も伸長した状態(ロッド54がシリンダ53の外部に突出した状態)となる。上述したガススプリング50の所定の長さは、このときの長さより短い長さに設定される。
【0030】
ガススプリング50が上述した所定の長さを超えて伸びると、ガススプリング50の伸長速度が遅くなる結果、座体40の回動速度は遅くなる。ガススプリング50が所定の長さを超えたときの座体40の位置をブレーキポイントとすると、座体40はブレーキポイントを通過すると回動速度が遅くなる。
【0031】
その後、ゆっくりと収納位置に移動して静止する。よって、座体40が停止する際に衝突音などを発生しなくなる。また、ブレーキポイントから収納位置までの領域に座体40が位置する状態では、天板20と座体40との正面方向の幅Fが人の足に接触しない程度に大きくなり、人が容易に椅子と机の間を通過できるようになる。なお、ブレーキポイントから収納位置までの領域が、本発明における収納領域に相当する。
【0032】
一方、収納位置から使用位置に回動する際には、手などで座体40の前方を下方向に押圧することで実現できる。座体40を収納位置からブレーキポイント方向へ回動させる場合は、収納領域に座体40が位置していても、ガススプリング50の圧縮方向への速度抑制は上述した第1の反力によるものであるため、ブレーキポイントから収納位置へ回動する場合に比べて反力が小さく、小さな力で使用位置に座体40を回動させることができる。
(3)ブレーキポイントの設定
上述したブレーキポイントは、以下のように定められる。
【0033】
図2に示すように、着座中の使用者2aが立ち上がる際には、使用者2bのように足は床面に接地する。このときの踵の位置を足接地位置70とする。足接地位置70は、使用位置における着座面41の前端41aの位置,および着座面41の床面からの高さに応じて推定される位置である。
【0034】
この足接地位置70に踵を接地して起立すると、使用者2cの足の背面は、足接地位置70から鉛直方向に伸ばした線(図2における線G)に沿って位置するようになる。ブレーキポイントは、この線Gよりも椅子の背面側の領域に座体40の前端41aが回動したときの座体40の位置に定められる。前端41aが上記G線より背面側に位置していれば、ブレーキポイントはいずれの位置に定めてもよい。
【0035】
本実施例では、図6に示すように、天板20の高さHを720mm、使用者2の移動可能な幅I(支持軸14から天板20の後端20aまでの水平長さ)を380mm、着座面41の高さJを440mm以下(420〜440mm程度が適当)、座面41の奥行きK(座体40の前端41aから支持軸14までの長さ)を335mmとした。なお、本実施例のように、座体40の前方に天板20が存在する場合には、使用者2は起立するときに足の前面が天板20に当たらないように姿勢が変化するため、天板20の後端20aに基づいて奥行きKを定めてもよい。
【0036】
天板20の高さHおよび着座面41の高さJは、一般的な体格の人(身長165cm前後)が着座した際に、机として使用し易く、かつ、楽に足が接地できる高さである。
また、幅Iおよび奥行きKは、使用者2が起立する際に足が天板20にも座体40にも接触しない値に定められている。幅Iが上記よりも大きい値であれば、使用者2は容易に起立でき、奥行きKを大きくすることも可能となるが、支柱10の前後の設置間隔を広くすることが必要となる。また、奥行きKを上記よりも小さくすると、座体40への座り心地が悪くなる。
【0037】
天板20および座体40を上記のように設置すると、上述した一般的な体格の人が自然に(楽に)立ち上がる際の足接地位置70は、支持軸14の前方であって、支持軸14からの水平長さLが200±20mmの位置となる。この足接地位置70から鉛直方向に伸ばした線Gよりも座体40が背面側であれば、使用者2bの姿勢から起立状態となっても足が接触することが無い。前端41aが線G上に位置するとき、前端41aと支持軸14とを結ぶ直線の水平方向に対する角度(図6における角度M)は、55°となる。よって、ブレーキポイントは、角度Mが55°以上となるように設定すればよい。
(4)効果
このように構成された椅子ユニット1であれば、ガススプリング50により、座体40を立ち上がらせるための付勢と、座体40と背凭れ30やストッパなどとの衝突による大きな衝突音が発生することを抑制する減速と、を実現することができる。
【0038】
よって、従来のように、スプリングなどの付勢するための手段と、ダンパーなどの緩衝するための手段とを2種類備える必要が無くなり、椅子ユニット1における部品を取り付けるためのスペースが削減できる。
【0039】
そのため、上述したスプリングやダンパーが柱部12R,12Lや背凭れ30に備えられているものと比較すると、上記装置の装着スペースが減少する分、着席して机を使用する際の足元のスペースを広く確保することや、椅子ユニット1を正面方向に詰めて設置することができる。
【0040】
また、上述したスプリングやダンパーが座体40の裏面に備えられているものと比較すると、座体40のカバー44で覆う厚みが小さくなり、座体40を薄く構成することができる。それにより、起立途中に座体40の裏面が人の足にあたってしまうことが抑制できるほか、座体40が立ち上がって収納状態となった時には、天板20と座体40とのスペースを広く確保できるため、そのスペースを容易に移動できるようになる。
【0041】
なお、座体40の裏面における可能な限り座板42に近接した位置に第1取付部45を設け、座体40が収納位置にある場合にロッド54が支持軸14に可能な限り近接した状態となる位置であって、支持軸14よりも床面側の位置に第2取付部を設けると、収納位置における座体40の厚みが薄くなり好ましい。
【0042】
また、上述した構成の椅子ユニット1では、使用者が立ち上がろうとすると、使用者の足の膝や太腿の裏が座体40に接触しやすい領域(使用位置からブレーキポイントまでの領域)では座体40が素早く回動し、接触しにくい領域(ブレーキポイントから収納位置までの領域、つまり収納領域)まで回動すると、ゆっくりと動くことになる。よって、立ち上がり動作の邪魔にならず、都合がよい。
【0043】
また、上述した構成の椅子ユニット1では、ガススプリング50のみを調節することで、座体40の回動速度とブレーキポイントの位置を調整することができる。
従来の椅子では、コイルスプリングの復元力とダンパーの反力との両方を調整する必要があったので、適切な回動動作を実現することが困難であった。また、コイルスプリングの品質のばらつきとダンパーの品質のばらつきを合せたものが、座体の動作を制御する力のばらつきとなっていたため、椅子ごとの動作のばらつきを小さくすることが困難であった。そのため、座体が収納位置に向けて回動する際、使用者の足と接触しにくい領域に回動するよりもかなり早い段階で回動速度が減速し、使用者の足に接触して起立の邪魔になるなどの問題が発生していたが、本実施例の椅子ユニット1では、調整が容易であるとともに、品質のばらつきを小さくできるため、容易に適切な回動動作を実現することができる結果、上述した従来技術の問題を解決することができる。
【0044】
また、上述した構成の椅子ユニット1では、コイルスプリングとダンパーに替えてガススプリング50のみを使用しているため、組み立て工数の減少や、部品の管理の簡易化によるコスト削減を可能とする。
【0045】
従来から、この手の座体が回動する椅子としては、木やプラスチックなどで形成された座体が軽いものや、クッションやパッドが取り付けられた座体が重いものなど、多くのバリエーションでの製品化が求められてた。このようなバリエーションごとに、座体の重量および使用形態に合せた座体の回動の制御を実現しようとすると、多種のコイルスプリングやダンパーなどが必要となり、またそれらを生産し在庫として保管しておく必要があった。
【0046】
これに対して上記構成の椅子ユニット1では、製造段階においてガススプリング50のみを取り扱えばよいため、多種の在庫を管理する必要がなくなるとともに、取り付け工数の減少、部品の取り付けミスの抑制などが可能となり、コスト削減を達成できる。
【0047】
また、必要な部品が減ることにより、椅子および机の設計上の制限が小さくなり、デザイン性が向上する。
また、上述した構成の椅子ユニット1では、ガススプリング50が座板42の裏面に配置されているため、座体40が使用位置にあるときは、カバー44が座体40の下側に位置することとなる。よって、使用者が着座している状態では、体の一部が接触する可能性が低く、動作の邪魔にならないので都合が良い。
(5)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0048】
例えば、上記実施形態においては、椅子ユニット1として、椅子および机の機能を備えているものを例示したが、天板20を備えておらず、椅子のみの機能を有する構成であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、ガススプリング50は座体40の裏面側に配置される構成を例示したが、座体40が立ち上がる方向に付勢することができれば、その取り付け位置は特に限定されない。
【0050】
例えば、ガススプリングが支柱10の柱部12に沿った位置に配置される構成であってもよい。その場合は、第1取付部45を座体40の後方に設け、第2取付部15を突出部13より上方に取り付けるとよい。このように構成することで、支柱10にガススプリング50を配置するスペースが必要となるものの、座体40の裏面に配置する構成要素が無くなるため、カバー44が不要となり、座体40は座板42のみで構成することが可能となる結果、座体40を薄く構成でき、収納状態での天板20と座体40とのスペースを非常に広くすることができる。
【0051】
また、上記実施形態においては、ガススプリング50の伸長速度がチェックバルブ57の動作により抑制される構成を例示したが、ガススプリング50が所定の長さとなったときに伸長速度が抑制されれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、シリンダ53内にコイルスプリングを取り付けておき、ガススプリング50が所定の長さとなったときにピストン55などに接触してコイルスプリングが圧縮される構成とすることが考えられる。
【0052】
また、上記実施形態においては、座体40の前端41aが、図2における線Gよりも椅子の背面側の領域に回動したときの座体40位置にブレーキポイントが定められる構成を例示したが、足接地位置70を基準として定められていれば、ブレーキポイントの具体的な位置は特に限定されない。例えば、座体40全体が線Gよりも椅子の背面側の領域に回動したときの位置をブレーキポイントとして定めることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態の椅子ユニットを示す斜視図
【図2】椅子ユニットを複数配置した状態を示す側面図
【図3】座体を示す側面図
【図4】ガススプリングの構造を示す断面図
【図5】チェックバルブの動作を示す断面図
【図6】椅子ユニットを配置した際の寸法を示す側面図
【符号の説明】
【0054】
1…椅子ユニット、2…使用者、10…支柱、11…固定部、12…柱部、13…突出部、14…支持軸、15…第2取付部、20…天板、20a…後端、30…背凭れ、40…座体、41…着座面、41a…前端、42…座板、43…軸受け、44…カバー、45…第1取付部、50…ガススプリング、51…ガス、52…オイル、53…シリンダ、54…ロッド、55…ピストン、56…オリフィス、57…チェックバルブ、58…貫通孔、59…第1連結部、60…貫通孔、61…第2連結部、70…足接地位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を空けて配置された一対の支持体と、
水平に配置され、前記一対の支持体により両端が支持されてなる支持軸と、
前後方向に拡がる着座面を有し、前記着座面が略水平となる使用位置と、前記着座面の前方が上昇することで前記着座面が略鉛直となる収納位置と、の間で回動可能となるように、前記支持軸により支持される座体と、
前記座体に設けられた第1取付部に一端が取り付けられると共に、前記支持体に対する位置関係が一定となる第2取付部に他端が取り付けられており、伸長することで、前記座体を前記収納位置に向けて付勢するガススプリングと、を備え、
前記座体が回動する領域のうち、前記収納位置から所定の範囲にあたる収納領域に前記座体が位置する場合の前記ガススプリングの伸長速度は、前記収納領域以外の領域に前記座体が位置する場合の前記ガススプリングの伸長速度に比べて小さい
ことを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記ガススプリングは、前記座体における前記着座面の裏面側に位置する領域に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記収納領域は、前記座体が前記使用位置にあるときの前記座体の前記床面に対する位置関係に基づいて定まる足接地位置よりも、前記椅子の背面側に位置する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−207608(P2009−207608A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52080(P2008−52080)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000116596)愛知株式会社 (37)
【Fターム(参考)】