説明

植付機

【課題】 薬剤を圃場に植付ける植付装置(5)と、薬剤を上方から前記植付装置(5)へ落下供給する主供給装置(4)とを設け、前記主供給装置(4)は、ループ状の移送経路に沿って複数の供給カップ(40)を移送して順次主供給位置(P)へ供給し、該主供給位置(P)にある供給カップ(40)内の薬剤を前記植付装置(5)へ落下供給する構成とした植付機において、副供給装置により薬剤を前記主供給位置に対して移送下手側の前記供給カップへ上方から供給する構成とすると、副供給装置により薬剤が供給カップへ供給されてから主供給位置(P)へ移送されるまでの間が長くなり、薬剤が水分を吸収したりして主供給位置(P)へ適正に供給されなくなるおそれがある。
【解決手段】 副供給装置(110)により、薬剤を前記主供給位置(P)あるいは該主供給位置(P)から移送上手側の前記供給カップ(40)へ上方から供給する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗、肥料、薬剤あるいは種子等の植付対象物を圃場へ供給して植付ける植付機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
植付対象物となる種子を圃場に植付ける植付装置と、種子を上方から前記植付装置へ落下供給する主供給装置とを設け、前記主供給装置は、ループ状の移送経路に沿って複数の供給カップを移送して順次主供給位置へ供給し、該主供給位置にある供給カップ内の種子を前記植付装置へ落下供給する構成とした植付機(播種機)において、前記種子を前記主供給位置に対して移送下手側の前記供給カップへ上方から供給する副供給装置を設けたものがある。そして、この植付機において、作業者が前記供給カップへ植付対象物として苗を供給することにより苗を圃場へ植付ける苗移植機として使用できる構成となっている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−299017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記背景技術の植付機は、副供給装置により植付対象物を前記主供給位置に対して移送下手側の前記供給カップへ上方から供給するので、副供給装置により植付対象物が供給カップへ供給されてから主供給位置へ移送されるまでの間が長くなり、植付対象物が主供給位置へ適正に供給されなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は、前記主供給装置へ植付対象物を適正に供給し、ひいては植付対象物を植付装置へ適正に供給して圃場に植付けることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、植付対象物を圃場に植付ける植付装置(5)と、植付対象物を上方から前記植付装置(5)へ落下供給する主供給装置(4)とを設け、前記主供給装置(4)は、ループ状の移送経路に沿って複数の供給カップ(40)を移送して順次主供給位置(P)へ供給し、該主供給位置(P)にある供給カップ(40)内の植付対象物を前記植付装置(5)へ落下供給する構成とした植付機において、植付対象物を前記主供給位置(P)あるいは該主供給位置(P)から移送上手側の前記供給カップ(40)へ上方から供給する副供給装置(110)を設けた植付機とした。
【0006】
従って、この植付機は、副供給装置110から前記主供給位置Pあるいは該主供給位置Pから移送上手側の供給カップ40へ上方から植付対象物を供給し、該植付対象物を主供給位置Pで植付装置5へ落下供給し、植付装置5により圃場に植付ける。
【発明の効果】
【0007】
よって、主供給位置Pあるいは該主供給位置Pの移送上手側で供給カップ40へ植付対象物が供給されるので、主供給装置4へ植付対象物を適正に供給し、ひいては植付対象物を植付装置5へ適正に供給して適正に圃場に植付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施の一形態の植付機を以下に説明する。この植付機として、苗と共に薬剤を土中に供給して植付ける苗移植機について説明する。
この苗移植機1は、野菜苗を植付ける野菜移植機であり、走行車輪2,2,3,3を有する走行部1aによって畝Uを跨いだ状態で機体を進行させながら、主供給装置となる苗供給装置4、副供給装置となる薬剤供給装置110及び苗植付装置5等からなる植付部1bで野菜のポット苗を畝Uの上面に植付けると共に植付けた苗の近傍に薬剤を施用する構成となっている。作業者は、機体後方に設けた操縦ハンドル6で適宜機体を操向操作すると共に、植付作業時には機体側方を歩きながら苗供給装置4へ苗を補給する。以下、各部の構成について説明する。
【0009】
走行部1aは、走行部ミッションケース7の前側にエンジン9が配置されている。エンジン9の左側面部には該エンジンの動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11等が設けられ、その上側をボンネット12が覆っている。走行部ミッションケース7の背面部に側面視長方形の左右に長い連結フレーム13が一体に設けられており、この連結フレームの背面右端部に走行部1aと操縦ハンドル6をつなぐメインフレーム14の前端部が固着連結されている。メインフレーム14は、植付部1bの平面視右側を通って後方に延び、途中で斜め上向きに湾曲し、そのまま植付部1bの後方位置まで延びている。そして、その後端部に操縦ハンドル6が固着して取り付けられている。
【0010】
走行部ミッションケース7の左右側面から突出する回動筒部15,15に走行伝動ケース16,16が一体に取り付けられ、その走行伝動ケースの先端部に駆動走行車輪である後輪2,2が軸支されている。また、エンジン9の下側に前後方向のピボット軸17aを中心に揺動自在に設けた前輪支持フレーム17の左右両端部に前輪支持ロッド18,18が高さ調節可能に取り付けられ、該ロッドの下端部に従動走行車輪である前輪3,3が軸支されている。
【0011】
走行部1aには機体に対し後輪2,2を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、走行部ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニット20から後方に向けて昇降シリンダ21が設けられ、該シリンダのピストンロッドの先端部に天秤杆22が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッドは、前後両端が油圧バルブユニット20とメイフレーム14に取り付けた取付部材23とに支持されたガイド軸24に沿って摺動するようになっている。天秤杆22の左右両端部と、回動筒部15,15に固着したスイングアーム25,25とが、連結ロッド26,26を介して連結されている。左側の連結ロッド26は、ローリングシリンダ27が組み込まれており、該シリンダを伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0012】
昇降シリンダ21及びローリングシリンダ27は、前記油圧ポンプ10から供給される作動油を油圧バルブユニット20内の制御バルブ(図示せず)で制御して作動させられる。昇降シリンダ21を伸縮作動させると、左右の後輪2,2が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ27を伸縮作動させると、左右の後輪2,2が逆方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0013】
植付部1bは、前記連結フレーム13の上面に走行部ミッションケース7から伝動される植付部ミッションケース30の下部が固着され、該植付部ミッションケースの上部に第一植付伝動ケース31の基部が固着され、更に該第一植付伝動ケースの先端部に第二植付伝動ケース32の基部が固着されている。そして、第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32に後述する苗植付装置5の作動機構が連結されている。苗植付装置5の後記苗植付具60は、走行部1aよりも後側に位置している。また、植付部ミッションケース30に基部を固着した上部フレーム34に、苗植付具60の上方に位置するように苗供給装置4が取り付けられている。
【0014】
図3に示すように、植付部ミッションケース30の入力軸30aは該ケースの下端部から前方に突出しており、これを走行部ミッションケース7のPTO取出部7aに挿入することにより、該PTO取出部内の走行部側の軸に伝動連結するようになっている。また、植付部ミッションケース30は、前記連結フレーム13にボルト35,…によって着脱自在に取り付けられている。このため、ボルト35,…を外し、PTO取出部7aから入力軸31aを抜くことにより、走行部1aから植付部1bごと取り外せることができ、植付部1bのメンテナンスが容易に行える。
【0015】
側面視において、植付部ミッションケース30は連結フレーム13から後方上向きに設けられ、且つ第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の上端部から後方下向きに設けられ、且つ第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31の下端部から水平後方に設けられている。この構成とすることにより、機体の前後長を必要以上に長くすることなく、第二植付伝動ケース32の下側に前記天秤杆22が移動するためのスペースが確保されている。
【0016】
また、平面視において、植付部ミッションケース30は、連結フレーム13の右端部に固着されており、昇降シリンダ21と天秤杆22と右側の連結ロッド26の間に形成される機体制御機構の右側空間部を通って上方に延びている。そして、第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の左側、第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31のさらに左側に配置されている。ローリングシリンダ27が設けられていない分だけ左側空間部よりも右側空間部の方が広いので、植付部ミッションケース30を右側に配置するのが好ましいのである。第二植付伝動ケース32は苗植付装置5の作動機構の外側(左側)に位置しているので、当該第二植付伝動ケースが苗補給作業時にオペレータが上記作動機構に干渉することを防ぐ防護カバーとしての役割も有している。また、植付部ミッションケース30、第一植付伝動ケース31及び第二植付伝動ケース32を左右に振り分けて配置することにより、左右の重量バランスが良好となる。
【0017】
苗供給装置4は、複数(計8個)の苗供給カップ40,…を円周上に等間隔で配置したターンテーブル41を備えている。このターンテーブル41は、後述する苗植付具60に対して左側に偏位して配置されている。ターンテーブル41は、前記上部フレーム34に固定された支持板42に、中心軸43を支点にして回転自在に設けられている。中心軸43にはラチェットホイール45が取り付けられ、そのラチェットホイールの歯に噛み合う方向に付勢したラチェット爪46が中心軸43に回転自在に嵌合するラチェットアーム47に取り付けられている。ラチェットアーム47と、後記前リンク支持アーム67Bと一体に作動する苗供給駆動アーム49とが苗供給駆動ロッド50を介して連結されており、苗供給駆動アーム49が揺動することにより、ターンテーブル41が苗植付装置5の作動と同期して苗供給カップ40,…の取付間隔分づつ間欠的に回転する。従って、苗供給カップ40は、平面視で円形となるループ状の移送経路に沿って循環して移送される。また、苗供給カップ40は、上側へいくにつれて広がるラッパのような形状に構成され、上方から苗や粉粒体を供給しやすい形状となっている。
【0018】
各苗供給カップ40,…の底部には開閉自在なシャッタ52,…が取り付けられている。平面視で前側やや左寄りの位置が切れたC字形のシャッタ閉じ棒53が苗供給カップの底部に接する高さに設けられており、上記シャッタ閉じ棒53の切れた部分に相当する主供給位置となる苗供給位置Pに位置する苗供給カップ40のシャッタ52は自重もしくは苗の重量で開くが、それ以外の苗供給カップ40,…のシャッタ52,…はシャッタ閉じ棒53に規制されて閉じた状態になる。
【0019】
ターンテーブル41の前側には、育苗トレイを1個づつ載せられる苗載台56が設けられている。この苗載台56は、植付部ミッションケース30の上端から上方に突設する右側の取付棒56aと、該右側の取付棒56aから左側に延びる中継棒56bを介して固着された左側の取付棒56aとに取り付けられ、育苗トレイを水平に支持するように設けられている。
【0020】
苗植付装置5は、下端が尖ったカップ状の苗植付具60を備えている。この苗植付具60は、前側部材60aと後側部材60bとからなっており、苗植付具60の後方に位置する前側部材回動軸61Aに回動自在に支持された前側部材取付アーム62A,62Aに前側部材60aが一体に取り付けられ、苗植付具60の前方に位置する後側部材回動軸61Bに回動自在に支持された後側部材取付アーム62B,62Bに後側部材60bが一体に取り付けられている。よって、回動軸61A,61Bを支点にして両部材60a,60bが回動すると、苗植付具60の下部が開閉する。前側部材取付アーム62Aと後側部材取付アーム62Bに形成された長穴に遊嵌する連動ピン63によって、前側部材60aと後側部材60bは互いに連動して回動する。前側部材取付アーム62Aの脚部62aAと後側部材取付アーム62Bの脚部62aBとの間に、前側部材60a及び後側部材60bを閉じる側に付勢するスプリング64が張設されている。この苗植付具60は、下記の作動機構によって所定の動作を行う。
【0021】
第二植付伝動ケース32から上方に突出する支持部33aに後リンク支持アーム67Aが回動自在に取り付けられ、その支持アームに基部が枢着された後リンク68Aの後端に前側部材回動軸61Aが連結されている。後リンク68Aの中間部には、第二植付伝動ケース32の後端部に設けた後リンク駆動アーム69Aが連結されている。また、植付部ミッションケース30に前リンク支持アーム67Bが回動自在に取り付けられ、その支持アームに基部が枢着された前リンク68Bの後端に後側部材回動軸61Bが連結されている。前リンク68Bの中間部には、第一植付伝動ケース31の後端部に設けた前リンク駆動アーム69Bが連結されている。両駆動アーム69A,69Bが駆動回転すると、後リンク68A及び前リンク68Bが基部の位置を前後に変動させつつ上下に揺動し、苗植付具60が一定姿勢のまま上下動する。
【0022】
後リンク68Aの基部には開閉アーム71が回動自在に取り付けられ、その開閉アーム71の先端部と前側部材取付アーム62Aとが開閉ロッド72で連結されている。また、後リンク68Aの中間部には後リンク駆動アーム69Aと一体に回転する開閉カム73が取り付けられている。この開閉カムのカムフォロアとしてのローラ74が開閉アーム71に設けられている。苗植付具60が下死点付近にある位置から上昇する行程で、開閉カム73がローラ74に係合するようになっている。開閉カム73がローラ74に係合すると、開閉ロッド72が引かれ、前側部材60aと後側部材60bが互いに連動して回動し、苗植付具60が開く。開閉カム73がローラ74に係合しない時は、スプリング64の張力によって苗植付具60が閉じている。
【0023】
苗植付具60が上死点にある時に、該苗植付具60の真上の苗供給位置Pにある苗供給カップ40から苗が落下供給される。供給された苗は、前側部材回動軸61Aと後側部材回動軸61Bに取り付けられている筒状の苗ガイド76を通って苗植付具内に導かれる。苗を保持した苗植付具60が下降し、下死点では苗植付具60の下部が畝の表土部に突き刺さり、苗移植用穴を形成する。これとほぼ同期して苗植付具60が開き、保持していた苗を上記苗移植用穴の中に解放する。そのまま苗植付具60が上昇し、上死点付近まで上昇すると苗植付具60が閉じる。
【0024】
苗植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪80,80が設けられている。この鎮圧輪80,80は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、後記ロッド92に遊嵌させたスプリング81によって下向きに付勢されており、機体の進行に伴って畝面を転動し、苗が植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。鎮圧輪80,80が取り付けられた鎮圧輪フレーム82は、植付深さ調節ガイド枠83に上下に回動自在に支持されている。植付深さ調節ガイド枠83には複数の係合部84a,…を有するガイド溝84が形成されており、このガイド溝に鎮圧輪フレーム82と一体の植付深さ調節レバー85が摺動自在に嵌合している。植付深さ調節レバー85をガイド溝84の係合部84a,…に係合させると、鎮圧輪フレーム82が回動しないように固定される。よって、植付深さ調節レバー85の操作により、鎮圧輪80,80の取付高さを複数段階に設定できる。これにより、苗の植付深さが段階的に調節される。
【0025】
また、上記植付深さ調節ガイド枠83は、メインフレーム14の前後中間部に固着した支持枠86に上下に揺動自在に支持された揺動フレーム87の後端部に取り付けられている。畝面の凹凸に応じて鎮圧輪80,80が機体に対し上下動すると、その鎮圧輪の上下動による鎮圧輪フレーム81の揺動が、連動機構88を介して油圧バルブユニット20内の昇降用油圧バルブに伝えられ、揺動フレーム87の角度が元に戻る方向に昇降シリンダ21を作動させる。これにより、畝の上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御する。
【0026】
更に、メインフレーム14の後部には鎮圧輪固定レバー90が回動自在に設けられ、該レバーと一体のアーム91の長穴91aに下端部を揺動フレーム87に連結したロッド92の上端部がピン止めされている。鎮圧輪固定レバー90をガイド溝93の係止部93aに係止すると、鎮圧輪80,80が機体に対し一定高さに固定され、上記昇降制御が機能しなくなる。機体を非作業位置へ上昇させた状態で苗植付装置5を作動させる場合や、運搬時に鎮圧輪80,80が動くのを防止するために、上記方法で鎮圧輪80,80を固定する。
【0027】
揺動フレーム87は機体の右側に配置されているので、機体の左側を歩行する作業者がこの揺動フレーム87に接触することがなく、確実な鎮圧を行えると共に、機体の昇降を正確に行える。
【0028】
なお、油圧バルブユニット20内のローリング用油圧バルブは左右傾斜検出用の振り子95の動きに連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ27が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。
【0029】
操縦ハンドル6は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部にグリップ6a,6aが取り付けられている。旋回時や路上走行時には、作業者がグリップ6a,6aを握って操縦する。操縦ハンドル6は機体の左右中心から右側にずらせて設けられているので、畝の右側の溝を歩行しながらハンドル操作を行いやすく、また、機体の左側を歩行しながら苗補給作業を行う時に邪魔にならない。
【0030】
グリップ6a,6aの下側にはサイドクラッチレバー100,100が設けられている。また、操縦ハンドル6の基部には操作パネル101が設けられ、該操作パネルに、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー102、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー103等が設けられている。図中の符号104は苗の植付間隔を調節する株間調節レバーである。
【0031】
苗供給装置4の上方には薬剤供給装置110が設けられている。この薬剤供給装置110は、粒状の薬剤を貯留する薬剤タンク111と、該薬剤タンク111内の薬剤を所定量づつ繰り出す繰出部112と、該繰出部112から繰り出される薬剤を吐出する下向きの吐出口113とを備えている。前記繰出部112と吐出口113とは2個設けられると共に、薬剤タンク111は中央の仕切り板111aを境に2区画に区分けされており、これら2個設けられた繰出部112、吐出口113及び薬剤タンク111の区画が各々対応している。また、2個の吐出口113のうち、一方は苗供給位置Pにある苗供給カップ40の上方に設けられ、他方は苗供給位置Pにある苗供給カップ40の移送上手側の隣の苗供給カップ40の上方に設けられている。従って、これらの吐出口113により、植付対象物となる薬剤を苗供給位置P及び該苗供給位置Pから移送上手側の前記苗供給カップ40へ上方から供給する構成となっている。そして、薬剤タンク111の2区画に互いに異なる種類の薬剤(例えば、オルトランとリュウアン等)を充填することにより、2種類の薬剤を苗供給カップ40へ供給できる。なお、薬剤タンク111の2区画の一方に薬剤、他方に肥料を充填すれば、薬剤と肥料とを苗供給カップ40へ供給できる。
【0032】
薬剤供給装置110は、植付部ミッションケース30の上端から斜め後上側に延びる薬剤供給装置支持フレーム114に取付プレート115を介して取り付け支持されている。従って、薬剤供給装置支持フレーム114により、比較的近い位置から薬剤供給装置110を支持でき、薬剤供給装置110の支持構造を簡単にできる。前記取付プレート115には2個の繰出部112が固着され、該繰出部112の上方に薬剤タンク111、繰出部112の下方に吐出口113が固着されている。また、ターンテーブル41の中心から上方に突出しターンテーブル41と一体回転する薬剤用出力軸116、該薬剤用出力軸116にピン117で連結される薬剤用中継軸118及び該薬剤用中継軸118と一体回転する薬剤伝動入力軸119を介してターンテーブル41の回転が取付プレート115に固着した薬剤伝動ケース120内に入力され、該薬剤伝動ケース120からの動力で繰出部112が駆動する。なお、薬剤伝動ケース120内には、同じ歯数の一対のベベルギヤが設けられ、上下方向の薬剤伝動入力軸119回りの回転を同じ回転速度で横方向の軸回りの回転に変換して繰出部112へ伝動するようになっている。
【0033】
繰出部112には横方向の軸回りに回転する繰出ローラを備え、該繰出ローラの外周面には薬剤を溜める複数(計8個)の繰出溝を回転方向において等間隔で設けている。従って、ターンテーブル41が苗供給カップ40の取付間隔分づつ間欠的に回転するのに連動して、前記繰出ローラが繰出溝の配列ピッチづつ間欠的に回転して繰出溝ごとに間欠的に薬剤が繰り出され、各苗供給カップ40ごとに確実に薬剤を供給することができる。また、苗供給カップ40の個数と繰出ローラの繰出溝の数を同じ数にしているので、ターンテーブル41の1回転につき繰出ローラを1回転させればよく、薬剤伝動ケース120を含む繰出ローラへの伝動において変速機構を設ける必要がなく、ターンテーブル41から繰出部112(繰出ローラ)への伝動機構を簡単に構成できる。
【0034】
以上により、作業時には、機体の進行に合わせて作業者が左側の後輪2の後方を歩きながら、苗載台56に載置されている育苗トレイのポット苗を各苗供給カップ40,…に補給する。また、薬剤供給装置により、苗供給カップ40に薬剤が供給される。ターンテーブル41の回転により苗の入った苗供給カップ40が苗供給位置Pまで移動すると、シャッタ52が開き苗及び薬剤が苗植付装置5の苗植付具60の中に落下する。
【0035】
ターンテーブル41は後輪2,2よりも後方で且つ苗供給位置Pすなわち後述する苗植付具60に対して左側に偏位して配置されているので、作業者がターンテーブル41の左側真横を歩行しながら容易に苗補給作業を行うことができ、作業性が良好である。メインフレーム14は作業者と反対側(右側)にあるので、作業の邪魔にならない。この時、ターンテーブル41と操縦ハンドル6の隙間から左右の鎮圧輪80の間の畝面が見えるので、苗を植付状況を監視しながら苗補給作業を行える。また、場合によっては、操縦ハンドル6の後側を歩行しながら、ターンテーブル41の苗を苗供給カップ40,…に補給してもよい。
【0036】
そして、薬剤供給装置110は、2個の吐出口113により、苗供給位置Pにある苗供給カップ40と苗供給位置Pの移送上手側の隣(右隣)の苗供給カップ40とに薬剤を供給するので、苗供給カップ40の移送経路において苗供給位置Pに対して移送上手側の近い位置で薬剤が供給され、苗供給位置Pに対して移送下手側の近い位置で薬剤を供給する場合と比較して、薬剤が苗供給カップ40へ供給されてから苗供給位置Pへ移送されるまでの時間及び移送距離すなわち薬剤が苗供給カップ40内に収容される時間及び移送距離が短くなり、薬剤が水分を吸収して溶解してしまうようなことを防止でき、苗供給カップ40や苗植付具60に薬剤が付着して圃場に適正に供給されなくなるようなことを防止でき、圃場へ適正に薬剤を供給することができる。従来は、主供給位置に対して移送下手側の近い位置で吐出口から植付対象物(種子)が供給カップへ供給される構成であった。
【0037】
また、薬剤は苗植付具60内に収容されて該苗植付具60の下部が土中で開くことで圃場の苗移植用穴に苗と共に落下供給される構成であるので、圃場面にマルチフィルム等をシートを敷設していても、苗植付具60の下部で開けられるシートの穴を介して土中に確実に薬剤を供給できる。
【0038】
更に、苗供給位置Pの直前の苗供給カップ40の位置を苗供給位置Pに対して作業者とは反対側(右側)に配置し、苗供給位置Pへの苗供給カップ40の移送方向を作業者側(左側)へ向けて(平面視で左回りの方向へ向けて)構成したため、苗供給装置4(ターンテーブル41)において苗植付位置となる苗植付具60の位置すなわち苗供給位置Pが偏位する側(右側)に薬剤供給装置110が配置されているので、作業者側(左側)で且つ上方に薬剤供給装置110が配置されない苗供給カップ40の個数を増すことができ、作業者が薬剤供給装置110が邪魔にならずに楽に苗供給装置4への苗供給作業が行える。
【0039】
また、2個の吐出口113は、苗供給カップ40の端部の上方に配置され、上側へいくにつれて広がるラッパ形状の苗供給カップ40において上部の傾斜面に向けて設けられている。従って、薬剤は前記吐出口113から苗供給カップ40の端部の傾斜面に当たって該苗供給カップ40の内側面をつたって該カップ40内へ供給されるので、既に苗供給カップ40へ供給された苗の葉に薬剤がかかるようなことを防止でき、薬剤により植付けた苗の成育を悪化させるようなことを防止できる。なお、前記吐出口113の高さは、苗供給カップ40の上端より若干高い程度で苗供給カップ40の上端に近づけているので、上記のように苗供給カップ40の端部に薬剤を供給するようにしても、吐出される薬剤が苗供給カップ40の外方にはじき出されるようなことを防止できる。更に、2個の吐出口113のうち、一方(苗供給位置Pの上方)の吐出口113は苗供給カップ40の右端部の上方に配置しているのに対し、他方(苗供給位置Pに隣接する苗供給カップ40の上方)の吐出口113は苗供給カップ40の左端部の上方に配置しており、2個の吐出口113の左右方向の位置を互いに近づけて2個の吐出口113が互いに前後に配置されるようにしている。これにより、薬剤タンク111を含む薬剤供給装置110全体を前後に長く配置することができ、薬剤供給装置110が機体の左右方向外側に突出して機体の左右幅が広くなるようなことを防止し、機体の左右幅の縮小化が図れる。
【0040】
また、薬剤用中継軸118を連結するピン117を取り外すことにより、薬剤供給装置110の繰出部112の駆動を停止させることができる。この繰出停止手段により、薬剤を供給しないように切り替えることができる。なお、繰出停止手段は、前記ピン117を取り外す以外に、薬剤用中継軸118を取り外したり、別途停止クラッチ等を設けて構成することができる。
【0041】
また、図1に示すように、第一植付伝動ケース31の左側には該ケース31内からの伝動で回転する回転円盤122により駆動するプランジャポンプ(灌水ポンプ)121を設けており、該プランジャポンプ(灌水ポンプ)121から灌水ホース123を介して苗植付具60内へ水を供給して苗の植付並びに薬剤供給と共に圃場に灌水する構成としている。これにより、仮に薬剤が苗植付具60の内面に付着するようなことがあっても、薬剤を洗い流して圃場に供給でき、付着する薬剤が苗の落下供給の抵抗になって苗の植付精度が悪化するようなことを防止できる。なお、上記の灌水は、苗を植え付けた後に苗植付具60が土壌から退出して上昇する過程で行うものであってもよい。
【0042】
なお、この実施の形態では、苗供給装置4を左側に、操縦ハンドル6、メインフレーム14及び薬剤供給装置110を右側に偏位させているが、苗供給装置4を右側に、操縦ハンドル6、メインフレーム14及び薬剤供給装置110を左側に偏位させてもよい。
【0043】
また、副供給装置が薬剤を供給するものについて説明したが、副供給装置を肥料を供給する肥料供給装置としても同様のことがいえる。また、種子を供給するものとしてもよい。更には、副供給装置として、粉粒体を供給するものだけでなく、液肥や薬液等の液剤を供給するものとしてもよい。
【0044】
以上は歩行型の苗移植機について詳述したが、作業者が座る座席を備える乗用型の苗移植機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】苗移植機の側面図である。
【図2】苗移植機の平面図である。
【図3】走行部と植付部の連結部分の斜視図である。
【図4】苗供給装置の底面図である。
【図5】苗植付装置等の側面図である。
【図6】苗植付装置等の平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1:苗移植機、4:苗供給装置、5:苗植付装置、40:苗供給カップ、110:薬剤供給装置、P:苗供給位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付対象物を圃場に植付ける植付装置(5)と、植付対象物を上方から前記植付装置(5)へ落下供給する主供給装置(4)とを設け、前記主供給装置(4)は、ループ状の移送経路に沿って複数の供給カップ(40)を移送して順次主供給位置(P)へ供給し、該主供給位置(P)にある供給カップ(40)内の植付対象物を前記植付装置(5)へ落下供給する構成とした植付機において、植付対象物を前記主供給位置(P)あるいは該主供給位置(P)から移送上手側の前記供給カップ(40)へ上方から供給する副供給装置(110)を設けた植付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−43958(P2007−43958A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232028(P2005−232028)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】