説明

植付装置

【課題】 植物体を直立性良く圃場に植付けることができるようにする。
【解決手段】 本発明の植付装置1は、開閉自在な少なくとも一対の摘み片2からなる植付部3と、該植付部3を上昇位置P1及び下降位置P2の間で昇降させる昇降装置4と、摘み片2を開閉させる開閉装置5とを備えている。植付部3は、上昇位置P1において球根Nの下部の少なくとも一部を下方に突出させた状態で摘み片2により摘み、下降位置P2に下降することにより球根Nの下部を圃場Hに突き刺し、摘み片2を開いて上昇することにより、球根Nを圃場Hに植え付けるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に球根や苗等の植物体を植え付ける植付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、特許文献1に記載された移植機の植付装置を例示する。この植付装置は、図8に示すように、下端部が嘴状に形成された前後一対の開閉自在な植付カップ81と、該カップ81を上下動させる昇降装置82と、カップ81を開閉させる開閉装置83とを有し、カップ81の閉じた上昇位置で該カップ81内に移植苗を収容し、該カップ81を下降させて圃場に突き刺し、該カップ81を開いて上昇することにより、カップ81内の苗を圃場に植えつけるようにしている。そして、開閉装置83は、カップ81の開閉を制御するカム84を有している。
【0003】
【特許文献1】特開2000−102307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、下端部が略球面状になっている直立性の悪いラッキョ、ニンニク等の球根を、従来の植付装置で植え付けようとすると、カップ81が開いたときに球根が直立せず、また、反転するものができてしまうという課題がある。このように球根が反転すると育たないので、現在、球根の植え付けは手植えで行われているが、屈み作業で、しかも植付個数が多いので、重労働となり、機械化が強く要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の植付装置は、
開閉自在な少なくとも一対の摘み片を含む植付部と、
該植付部を上昇位置及び下降位置の間で昇降させる昇降装置と、
前記摘み片を開閉させる開閉装置と
を備えた植付装置であって、
前記植付部は、前記上昇位置において植物体の下部の少なくとも一部を下方に突出させた状態で前記摘み片により摘み、前記下降位置に下降することにより前記植物体の下部を圃場に突き刺し、前記摘み片を開いて上昇することにより、前記植物体を圃場に植え付けるように構成されている。
【0006】
前記植物体としては、特に限定されないが、圃場に植え付ける球根類や苗等を例示する。
【0007】
この構成によれば、前記摘み片により、植物体の下部の少なくとも一部を下方に突出させた状態で摘み、該植物体の下部を圃場に突き刺すようにしているので、前記摘み片を開いたときに、該植物体における前記摘み片よりも下方に突出させた部位が圃場に突き刺さった状態になっており、植物体の倒れを防止することができる。このため、植物体を直立性良く圃場に植付けることができる。
【0008】
前記上昇位置にある前記植付部の下方位置に、植物体の下部の少なくとも一部が前記摘み片の下方に突出する位置において植物体の落下を規制する落下規制部材を備えた態様を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記突出する位置で、植物体を前記摘み片により確実に摘むようにすることができる。
【0010】
前記摘み片において、前記植物体を摘むときに該植物体の周面に接触する部位は、該周面に沿うように湾曲形成された態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、前記植付部が前記植物体を摘むときに該植物体を傷めることを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る植付装置によれば、植物体を直立性良く圃場に植付けることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図7は本発明を具体化した一実施形態の植付機10の植付装置1を示している。この植付機10は、植物体としてのラッキョ、ニンニク等の球根Nを植え付けるものであり、図1及び図2に示すように、走行手段としての走行輪11及び駆動輪12に走行自在に支持された機体13には、植付装置1が搭載されている。植付装置1は、開閉自在な一対の摘み片2を含む植付部3と、該植付部3を上昇位置P1及び下降位置P2の間で昇降させる昇降装置4と、摘み片2を開閉させる開閉装置5と、昇降装置4及び開閉装置5を駆動する駆動機構6を備えている。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0014】
植付部3は、図3〜図5に示すように、ベース部20と、該ベース部20に取り付けられ、上端側がテーパー状に拡径した案内筒部21と、該ベース部20における該案内筒部21の下側に設けられた植付カップ部22とを備えている。植付カップ部22は、ベース部20に一対のカップ支持軸23を介してそれぞれ軸支された一対の回動片24と、該両回動片24にそれぞれ取り付けられた一対の摘み片2とを備えている。両回動片24は、図4に示すように、その一方に設けられたカム溝25と、その他方に設けられたピン26とにより、互いに連動して回動するように構成されるとともに、圧縮バネ27により両摘み片2が閉じる方向に付勢されている。このように植付部3においては、一対の摘み片2が案内筒部21の下側において該球根Nを摘むように、該案内筒部21に対して開閉自在に支持されている。一対の摘み片2は、それらが閉じた状態において、下端側がテーパー状に縮径した筒状になるように形成されることにより、図5に示すように、球根Nを摘むときに該球根Nの周面に接触する部位2aが、該周面に沿うように湾曲形成されている。
【0015】
昇降装置4は、図3に示すように、機体13に前後に間隔をおいて軸支された一対の植付アーム軸30と、該両植付アーム軸30にそれぞれ取り付けられた一対の植付アーム部31とを備えている。植付アーム部31は、本例では、植付アーム軸30を中心に90度間隔で配設された4本のアーム32を備えている。一対の植付アーム軸30同士の距離は、植付部3における一対のカップ支持軸23同士の距離と同じに設定されており、両植付アーム部31の対応する一対のアーム32の先端は、植付部3の一対のカップ支持軸23にそれぞれ回動自在に連結されている。これにより、両植付アーム部31の対応する一対のアーム32が平行リンクを構成し、植付アーム部31の回転に伴って、植付部3は起立姿勢を保持しながら円運動で昇降動作をするようになっている。
【0016】
開閉装置5は、図3に示すように、植付部3のいずれか一方の回動片24に、ローラ支持片35を介して回動自在に支持されたローラ36と、機体13に支持された第一植付カム37及び落下規制部材38と、植付アーム部31の各アーム32に取り付けられた第二植付カム39とを備えている。第一植付カム37には、植付部3が上昇位置P1にあるときに、植付アーム部31の回転に伴って、一対の摘み片2が一定量、開くように、ローラ36がガイドされる。この間は、上昇位置P1にある植付部3の下方位置に設けられた落下規制部材38により、球根Nの下部の少なくとも一部が摘み片2の下方に突出する位置において球根Nの落下が規制される。このときの一定量としては、最低でも球根Nの下部の少なくとも一部が摘み片2の下方に突出し得る量とする。第二植付カム39には、植付部3が下降位置P2にあるときに、植付アーム部31の回転に伴って、一対の摘み片2が開いて球根Nを離すように、ローラ36がガイドされる。
【0017】
駆動機構6は、図1及び図2に示すように、駆動輪12の回転力を一方の植付アーム軸30に伝動する動力伝動機構としてのチェーン伝動機構となっており、駆動輪12の軸12a及び植付アーム軸30にそれぞれ取り付けられた一対のスプロケット40,41と両スプロケットに巻き掛けられたチェーン42とを備えている。
【0018】
以上のように構成された植付装置1は、下記(1)、(2)を繰り返すことにより、球根Nを順次圃場Hに植え付ける。
(1)植付部3が円運動をしながら上昇位置P1になると、第一植付カム37により一対の摘み片2が一定量、開かれた状態になるようにローラ36がガイドされる。このときに、案内筒部21から球根Nが投入される。球根Nは、案内筒部21に案内されて一対の摘み片2の間に落下するとともに、落下規制部材38により球根Nの落下が規制される。そして、植付部3の円運動中において、一対の摘み片2が落下規制部材38の上方にあるうちにローラ36が第一植付カム37にガイドされなくなり、球根Nの下部の少なくとも一部を下方に突出させた状態で摘み片2により摘んだ状態になる。
【0019】
(2)この状態を保持したまま、植付部3は円運動をしながら、下降位置P2に下降することにより球根Nの下部を圃場Hに突き刺す。植付部3が下降位置P2になると、第二植付カムにより一対の摘み片2が開き始め、球根Nを圃場Hに残して上昇する。図6及び図7はこのときの様子を示しており、植付部3が円運動の下死点にある状態を実線で示すとともに、植付部3が下死点から15°、30°、45°、60°円運動した状態(各状態における摘み片をそれぞれ2a,2b,2c,2dで表示)を、それぞれ二点鎖線で示している。図6は植付機10の機体13に対する植付部3の相対的な動作を示している。図7は圃場Hに対して、植付機10の機体13とともに進行する植付部3の動作(圃場Hに対する相対的な動作)を示している。なお、本例では、植付ピッチが120mmとなるように設計しており、植付部3が15°円運動すると、機体13は20mm進行するように構成されている。図7に示すように、一対の摘み片2は、球根Nを直立させて圃場Hに突き刺して離した後は、直立した球根Nに触れないように十分に開いた状態で上昇して行くようになっている。
【0020】
以上のように構成された本例の植付機10の植付装置1によれば、摘み片2により、球根Nの下部の少なくとも一部を下方に突出させた状態で摘み、該球根Nの下部を圃場Hに突き刺すようにしているので、摘み片2を開いたときに、球根Nにおける摘み片2よりも下方に突出させた部位が圃場Hに突き刺さった状態になっており、球根Nの倒れを防止することができる。このため、球根Nを直立性良く圃場Hに植付けることができる。
【0021】
また、上昇位置P1にある植付部3の下方位置に、球根Nの下部の少なくとも一部が摘み片2の下方に突出する位置において球根Nの落下を規制する落下規制部材38を備えているので、前記突出する位置で、球根Nを摘み片2により確実に摘むようにすることができる。
【0022】
また、摘み片2において、球根Nを摘むときに該球根Nの周面に接触する部位2aは、該周面に沿うように湾曲形成されているので、植付部3が球根Nを摘むときに該球根Nを傷めることを防止することができる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)開閉装置5及び昇降装置4の機構を適宜変更すること。
(2)球根N以外の植物体の植付機10として具体化すること。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る植付装置が植付機に搭載された状態を示す側面図である。
【図2】同状態の平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】同植付装置の下降位置にある植付部の側断面図である。
【図5】図4のV矢視図である。
【図6】同植付機の機体に対する同植付部の相対的な動作を示す側面図である。
【図7】圃場に対して、同植付機の機体とともに進行する同植付部の動作を示す側面図である。
【図8】従来の移植機の植付装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 植付装置
2 摘み片
3 植付部
4 昇降装置
5 開閉装置
6 駆動機構
10 植付機
11 走行輪
12 駆動輪
13 機体
20 ベース部
21 案内筒部
22 植付カップ部
23 カップ支持軸
24 回動片
30 植付アーム軸
31 植付アーム部
32 アーム
36 ローラ
37 第一植付カム
38 落下規制部材
39 第二植付カム
H 圃場
N 球根
P1 上昇位置
P2 下降位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在な少なくとも一対の摘み片を含む植付部と、
該植付部を上昇位置及び下降位置の間で昇降させる昇降装置と、
前記摘み片を開閉させる開閉装置と
を備えた植付装置であって、
前記植付部は、前記上昇位置において植物体の下部の少なくとも一部を下方に突出させた状態で前記摘み片により摘み、前記下降位置に下降することにより前記植物体の下部を圃場に突き刺し、前記摘み片を開いて上昇することにより、前記植物体を圃場に植え付けるように構成された植付装置。
【請求項2】
前記上昇位置にある前記植付部の下方位置に、植物体の下部の少なくとも一部が前記摘み片の下方に突出する位置において植物体の落下を規制する落下規制部材を備えた請求項1記載の植付装置。
【請求項3】
前記摘み片において、前記植物体を摘むときに該植物体の周面に接触する部位は、該周面に沿うように湾曲形成された請求項1又は2記載の植付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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