説明

植木鉢

【課題】 盆栽の自然美との一体感を同時に楽しむことができる美工芸の加工美を、有し、心の豊かさと美の深さを楽しむことができる植木鉢を提供することを目的とする。
また、植木に適度に空気を流通でき、さらに、植木に適度な保湿状態を保ち得る植木鉢を提供することを、他の目的とする。
【解決手段】 植木5が植えられる上方開口状容器本体1と、容器本体1の上端縁10に取外し可能として施蓋される蓋体2と、を具備する。容器本体1と蓋体2は、共に陶器から構成され、外面14,24に模様が描かれる。かつ、容器本体1の上端縁10と、蓋体2の周端縁20に、夫々、切欠部11,21が形成され、施蓋状態で合わせられた両切欠部11,21によって、植木5の幹部6が通される窓部3が、形成される。さらに、蓋体2は、その天井壁部22に、通気孔部4が、貫設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植木が植えられる植木鉢に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の植木鉢として、周囲壁部が上方へテーパ状に拡径して形成され、上方に開口しているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−31302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来の植木鉢は、湿り気を与えるための保水材が内部に入れられ、その上に土壌が敷きつめられて、植木が植栽される。
この植木鉢の形状は、上方テーパ拡径状の単純な形状であって、屋外へ設置できるが、室内には不向きであり、美術工芸を意識した美的外観を有しておらず、植木(盆栽)の自然美との一体感を楽しむことができるものではない。
【0004】
そこで、本発明は、盆栽の自然美との一体感を同時に楽しむことができる美工芸の加工美を有し、心の豊かさと美の深さを楽しむことができる植木鉢を提供することを目的とする。さらに、詳しく述べれば、人は美を求め、美と心を表現することに心をもやす。茶道・華道・香道が良く知られているが、昔より、特に桃山文化以降、華道の生花によって人の心と生命の豊かさを表現してきた歴史が有り、これらの主流は切り花によるものであり、器とのバランスと、天・地・人でもって、その心と宇宙空間が表現されている。この表現を切り花でなく、根付き植木による盆栽でもって焼成文化の美との合体により、更に心と生命と宇宙空間の美を大きく表現できる様にしようとするものである。
また、植木に適度に空気を流通(通風)でき、さらに、植木に対し適度な保湿状態を保ち得る植木鉢を提供することを、他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る植木鉢は、植木が植えられる上方開口状容器本体と、該容器本体の上端縁に取外し可能として施蓋される蓋体と、を具備すると共に、焼成物から成り、上記容器本体の上記上端縁と、上記蓋体の周端縁に、夫々、切欠部が形成され、施蓋状態で合わせられた両該切欠部によって、上記植木の幹部が通される窓部が、形成されるように構成されている。
【0006】
また、植木鉢は、植木が植えられる上方開口状容器本体と、該容器本体の上端縁に取外し可能として施蓋される蓋体と、を具備すると共に、外面に模様が描かれた陶器から構成され、上記容器本体の上記上端縁と、上記蓋体の周端縁に、夫々、切欠部が形成され、施蓋状態で合わせられた両該切欠部によって、上記植木の幹部が通される窓部が、形成されるように構成されている。
また、上記蓋体は、その天井壁部に、通気孔部が、貫設されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
植木鉢は、容器本体と、その上端縁に取外し可能として施蓋される蓋体とを具備し、植木の幹部が通される窓部が形成されるので、植木が窓部から伸び出て、植樹の拡がりを表現できる。そして、蓋体を外せば、容器本体への土壌の交換、植樹が容易であり、また、灌水・注水も容易である。そして、容器本体と蓋体は陶器から成ると共に模様が描かれており、美工芸の加工美を有しているので、蓋体を容器本体に施蓋(合体化)することにより、焼成文化の美を表現することができる。
このように、植木(盆栽)の自然美と、植木鉢の加工美を一体感で楽しむことができ、根付き植木による盆栽でもって、焼成文化の美との合体により、一層、心と生命と宇宙空間の美を大きく表現できる。
さらに、この植木鉢の内部は、蓋体により、植木にとって適度な状態に保湿され、例えば、一週間に一回程度の給水を行えばよく手間が省かれる。しかも、根腐りが防がれて、植木の寿命の長期化を図ることができる。
また、蓋体の天井壁部に、通気孔部が、貫設されているので、植木鉢の内部と外部との適度の空気の通風が有り、植木の寿命の一層の長期化を図り得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1,図2及び図3は、本発明に係る植木鉢の第1の実施の形態を示し、植木5が植えられる上方開口状容器本体1と、容器本体1の上端縁10に取外し可能として施蓋される蓋体2と、を具備する。
容器本体1は、上端縁10から下方向へ略同径状に形成されつつ緩やかに弯曲状に縮径して底部16に連続するよう形成され、底部16の中央に水抜き孔15が貫設されると共に、底部16の下面に、下方へ突設された短円筒状の安定保持部17を、有する。
また、蓋体2は、略円盤形状であり、さらに具体的には、周端縁20から中心方向に、緩やかな弯曲状をもって盛り上がるように形成されると共に、周状小くびれ部を介して、水平面状円形に形成された天井壁部22を、有する。言い換えると、蓋体2は、倒立略浅碗形状に形成されている。天井壁部22の中心部には、通気孔部4が、貫設されている。
また、蓋体2の周端縁20は、内径方向へ内鍔状に小さく折曲げられつつ下方へ折曲げられて、容器本体1の上端縁10の開口部に嵌込まれる嵌込短筒部23が、形成される。
この植木鉢は、容器本体1に蓋体2が施蓋された状態では、略壷型と言える。
【0009】
かつ、容器本体1の上端縁10と、蓋体2の周端縁20に、夫々、切欠部11,21が形成されており、容器本体1に蓋体2が施蓋された状態で、両切欠部11,21によって、植木5の幹部6が通される窓部3が、形成される。
両切欠部11,21は、窓部3が様々な植木5の幹部6を余裕をもって通す(包囲する)大きさを有するような、略矩形型や、丸型等様々な形状に形成される。
【0010】
容器本体1と蓋体2の材料は、土及び/又は石で焼成された焼成物であり、好ましくは、素焼き又は陶器から成り、各々の外面14,24に、(図示省略の)美術模様が描かれていたり、さらには、釉薬が塗布されているのも望ましい。あるいは、容器本体1と蓋体2は、磁器から成るのもよい。
【0011】
また、図4,図5,図6(及び図7)は、夫々、本発明に係る植木鉢の第2,第3,第4の実施の形態を示し、図1〜図3の植木鉢とは、容器本体1及び蓋体2の形状が相違する。
先ず、図4に示す植木鉢に於て、容器本体1は、上下中間部が側方に弯曲膨出状となった略お碗型に、形成される。
水抜き孔15や安定保持部17は、図1〜図3のものと同様の構成である。
また、蓋体2は、周端縁20から上方へ向けて緩やかに縮径しつつ、細長状に延伸された円筒状に──── 鶴首型に────形成され、上部に円板状天井壁部22を有する。
そして、容器本体1の上端縁10及び、蓋体2の周端縁20は、図1〜図3で既述したと同様の切欠部11,21が、形成される。蓋体2の天井壁部22は、通気孔部4が貫設される。
【0012】
次に、図5に示す植木鉢に於て、容器本体1は、上端縁10から下方に向かって略同径状に形成されつつ緩やかに縮径しながら底部16に連続するように、形成される。
また、蓋体2は、周端縁20から上方へ次第に縮径する円筒部を有すると共に上部に天井壁部22を有するように、形成される。水抜き孔15や安定保持部17は、図1〜図3のものと同様の構成である。
そして、容器本体1の上端縁10及び、蓋体2の周端縁20は、図1〜図3で既述したと同様の切欠部11,21が、形成される。蓋体2の天井壁部22は、通気孔部4が貫設される。
この植木鉢は、容器本体1に蓋体2が施蓋された状態で、略徳利型と言える。
【0013】
次に、図6及び図7に示す植木鉢に於て、容器本体1は、上端縁10から下方向へ縮径して(略バケツ型に)形成されると共に、内周面の上部に突設された蓋体支持用内鍔部12を、有する。
また、蓋体2は、円形薄板状に形成され、その中央に、通気孔部4が貫設されると共に、上面に、把持部25が付設されている。
そして、容器本体1の上端縁10及び、蓋体2の周端縁20は、図1〜図3で既述したと同様の切欠部11,21が、形成される。
この植木鉢は、容器本体1に蓋体2が施蓋された状態では、略水指型と言える。
【0014】
次に、本発明の植木鉢の使用方法について説明する。
先ず図1〜図3に示す植木鉢に於て、容器本体1の内部に、土壌7を、切欠部11にかからない(外部へ漏れ出ない)高さまで入れる。そして、植木5の根部を、幹部6が切欠部11に上方から嵌まり込む状態に(傾斜状態に)して、土壌7に植える。
そして、蓋体2を、その切欠部21が容器本体1の切欠部11に合うように、図3の矢印18のように容器本体1の上端縁10に施蓋する。すると、植木5が、植木鉢の(両切欠部11,21から形成された)窓部3を通って外部へ伸び出る(図1,図3参照)。
このように植木5が窓部3から伸び出て、植樹の拡がりが表現される。
そして、植木鉢自体が、容器本体1と蓋体2に描かれた模様により、美工芸の加工美を有しているので、植木5(盆栽)の自然美と、植木鉢の加工美を一体感で楽しむことができる。
また、この植木鉢の内部は、蓋体2により、植木5にとって適度な状態に保湿され、例えば、一週間に一回程度の給水を行えばよく、根腐りが防がれる。
また、蓋体2の通気孔部4を介して、植木鉢の内部と外部との空気の流通(通風)が有り、植木5の寿命が長期化する。
【0015】
また、図3の矢印18と逆向きに蓋体2を取外して、植木5を植え替えたり、土壌7の交換作業を行う。また、植木5・土壌7を取り除いて、容器本体1内を容易かつ確実に、(灌水・注水等で)洗浄を行う。
【0016】
また、図4,図5,図6及び図7の植木鉢に於ても、図1〜図3で既述したと同様の手順で、容器本体1に土壌7・植木5を入れたり、植木5の植え替え,土壌7の入れ替え,洗浄等の作業を行う。植木鉢内の保湿や、内外の空気の通風も、図1〜図3の植木鉢と同様の作用・効果を示す。
【0017】
以上のことから、本発明に係る植木鉢は、植木5が植えられる上方開口状容器本体1と、容器本体1の上端縁10に取外し可能として施蓋される蓋体2と、を具備すると共に、焼成物から成り、容器本体1の上端縁10と、蓋体2の周端縁20に、夫々、切欠部11,21が形成され、施蓋状態で合わせられた両切欠部11,21によって、植木5の幹部6が通される窓部3が、形成されるように構成されているので、植木5が窓部3から伸び出て、植樹の拡がりを表現できる。そして、植木鉢自体が、美工芸の加工美を有しているので、蓋体2を容器本体1に施蓋(合体化)することにより、焼成文化の美を表現することができる。そして、蓋体2を外せば、容器本体1への土壌7の交換、植樹が容易であり、また、灌水・注水も容易である。
このように、植木5(盆栽)の自然美と、植木鉢の加工美を一体感で楽しむことができ、根付き植木5による盆栽でもって、焼成文化の美との合体により、一層、心と生命と宇宙空間の美を大きく表現できる。
さらに、この植木鉢の内部は、蓋体2により、植木5にとって適度な状態に保湿され、例えば、一週間に一回程度の給水を行えばよく手間が省かれる。しかも、根腐りが防がれて、植木5の寿命の長期化を図ることができる。
【0018】
また、植木鉢は、植木5が植えられる上方開口状容器本体1と、容器本体1の上端縁10に取外し可能として施蓋される蓋体2と、を具備すると共に、外面14,24に模様が描かれた陶器から構成され、容器本体1の上端縁10と、蓋体2の周端縁20に、夫々、切欠部11,21が形成され、施蓋状態で合わせられた両切欠部11,21によって、植木5の幹部6が通される窓部3が、形成されるように構成されているので、植木5が窓部3から伸び出て、植樹の拡がりを表現できる。そして、植木鉢自体が、容器本体1と蓋体2に描かれた模様により、美工芸の加工美を有しているので、蓋体2を容器本体1に施蓋(合体化)することにより、焼成文化の美を表現することができる。そして、蓋体2を外せば、容器本体1への土壌7の交換、植樹が容易であり、また、灌水・注水も容易である。
このように、植木5(盆栽)の自然美と、植木鉢の加工美を一体感で楽しむことができ、根付き植木5による盆栽でもって、焼成文化の美との合体により、一層、心と生命と宇宙空間の美を大きく表現できる。
さらに、この植木鉢の内部は、蓋体2により、植木5にとって適度な状態に保湿され、例えば、一週間に一回程度の給水を行えばよく手間が省かれる。しかも、根腐りが防がれて、植木5の寿命の長期化を図ることができる。
【0019】
また、蓋体2は、その天井壁部22に、通気孔部4が、貫設されているので、植木鉢の内部と外部との空気の流通(通風)が有り、植木5の寿命が長期化する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る植木鉢の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】断面側面図である。
【図3】説明用分解斜視図である。
【図4】本発明に係る植木鉢の第2の実施の形態を示す断面側面図である。
【図5】本発明に係る植木鉢の第3の実施の形態を示す断面側面図である。
【図6】本発明に係る植木鉢の第4の実施の形態を示す断面側面図である。
【図7】要部斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 容器本体
2 蓋体
3 窓部
4 通気孔部
5 植木
6 幹部
10 上端縁
11 切欠部
14 外面
20 周端縁
21 切欠部
22 天井壁部
24 外面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植木(5)が植えられる上方開口状容器本体(1)と、該容器本体(1)の上端縁(10)に取外し可能として施蓋される蓋体(2)と、を具備すると共に、焼成物から成り、
上記容器本体(1)の上記上端縁(10)と、上記蓋体(2)の周端縁(20)に、夫々、切欠部(11)(21)が形成され、施蓋状態で合わせられた両該切欠部(11)(21)によって、上記植木(5)の幹部(6)が通される窓部(3)が、形成されるように構成されたことを特徴とする植木鉢。
【請求項2】
植木(5)が植えられる上方開口状容器本体(1)と、該容器本体(1)の上端縁(10)に取外し可能として施蓋される蓋体(2)と、を具備すると共に、外面(14)(24)に模様が描かれた陶器から構成され、
上記容器本体(1)の上記上端縁(10)と、上記蓋体(2)の周端縁(20)に、夫々、切欠部(11)(21)が形成され、施蓋状態で合わせられた両該切欠部(11)(21)によって、上記植木(5)の幹部(6)が通される窓部(3)が、形成されるように構成されたことを特徴とする植木鉢。
【請求項3】
上記蓋体(2)は、その天井壁部(22)に、通気孔部(4)が、貫設されている請求項1又は2記載の植木鉢。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−158345(P2006−158345A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357642(P2004−357642)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(504454473)
【出願人】(504455805)
【Fターム(参考)】