説明

植栽装置

【課題】 貯水容器に対する植栽容器の上下動が円滑で、しかも、貯水容器による植栽容器の姿勢保持も安定良く確実に行うことのできる植栽装置。
【解決手段】 植栽用の水Wを貯留する貯水容器1と植栽床材3を収容する植栽容器2を備え、植栽容器2が水Wに浮揚する状態で、植栽容器2の貯水容器1に対する上下動をガイドするガイド手段6が設けられ、ガイド手段6が、貯水容器1の内周壁面1aまたは植栽容器2の外周壁面2bのいずれか一方から他方に向けて突設されて他方の壁面に当接自在な上下方向に延びる突出部材4で構成され、平面視において、突出部材4が貯水容器1の内周壁面1aまたは植栽容器2の外周壁面2bに沿って3つ以上設けられ、それら隣接する突出部材4間で、貯水容器1の内周壁面1aおよび植栽容器2の外周壁面2bの間に、突出部材4とそれに対向する壁面との間よりも大きな空間7が形成される植栽装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植栽用の水を貯留する貯水容器と植栽床材を収容する植栽容器を備え、前記植栽容器が前記貯水容器内において貯水容器内の水に浮揚する状態で、その植栽容器の前記貯水容器に対する上下動をガイドするガイド手段が設けられている植栽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような植栽装置では、植栽床材を収容する植栽容器が貯水容器内の植栽用の水に浮揚しており、植物が生長するのに伴って重くなると、植栽用の水に対する植栽容器の沈み込み量が自動的に増大し、植物の生長に見合った量の水が供給されるので、きわめて使い勝手がよく、近年、その需要が急速に増加しつつある。
しかし、植物を保持する植栽容器が水に浮揚している関係上、植物が生長して重心が上方へ移動すると、植栽容器の姿勢がきわめて不安定となるため、貯水容器に対する植栽容器の上下動をガイドするガイド手段が必要となる。
そこで、従来、平面視において、貯水容器の内周壁面と植栽容器の外周壁面を共にほぼ同形の長方形にし、あるいは、ほぼ同形の円形にして、貯水容器の内周壁面と植栽容器の外周壁面によってガイド手段を構成したものなどが知られている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−164990号公報(図1〜図3)
【特許文献2】特開2002−119159号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記公報に記載の植栽装置では、いずれにせよ、貯水容器の内周壁面と植栽容器の外周壁面がほぼ同形であるため、例えば、貯水容器に対する植栽容器の上下動が円滑になるように、貯水容器の内周壁面と植栽容器の外周壁面との間に大きな隙間を確保すると、植栽容器の姿勢保持が不安定となる。
逆に、植栽容器の姿勢保持が安定化するように、貯水容器の内周壁面と植栽容器の外周壁面との間の隙間を小さくすると、植栽容器の上下動が円滑に行かず、極端な場合には、貯水容器の内周壁面に対して植栽容器の外周壁面がくっついて、植栽容器の上下動が不能になる不可能もあり、この点に改良の余地があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、貯水容器に対する植栽容器の上下動が円滑で、しかも、貯水容器による植栽容器の姿勢保持も安定良く確実に行うことのできる植栽装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、植栽用の水を貯留する貯水容器と植栽床材を収容する植栽容器を備え、前記植栽容器が前記貯水容器内において貯水容器内の水に浮揚する状態で、その植栽容器の前記貯水容器に対する上下動をガイドするガイド手段が設けられている植栽装置であって、前記ガイド手段が、前記貯水容器の内周壁面または前記植栽容器の外周壁面のいずれか一方から他方に向けて突設されて他方の壁面に当接自在な上下方向に延びる突出部材で構成され、平面視において、その突出部材が前記貯水容器の内周壁面または前記植栽容器の外周壁面に沿って3つ以上設けられ、かつ、それら隣接する突出部材間で、前記貯水容器の内周壁面および植栽容器の外周壁面の間に、前記突出部材とそれに対向する壁面との間よりも大きな空間が形成されるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、貯水容器に対する植栽容器の上下動をガイドするガイド手段が、貯水容器の内周壁面または植栽容器の外周壁面のいずれか一方から他方に向けて突設されて他方の壁面に当接自在な上下方向に延びる突出部材で構成され、平面視において、その突出部材が貯水容器の内周壁面または植栽容器の外周壁面に沿って3つ以上設けられているので、例えば、3つの突出部材をほぼ等間隔に配置することによって、植栽容器の姿勢を安定良く保持することができ、しかも、その突出部材は上下方向に延びているので、植栽容器の上下動にかかわらず安定良く保持することができる。
そして、それら隣接する突出部材間で、貯水容器の内周壁面および植栽容器の外周壁面の間に、突出部材とそれに対向する壁面との間よりも大きな空間が形成されるので、たとえ突出部材とそれに対向する壁面との間の隙間を小さくして植栽容器の姿勢保持を確実にしても、突出部材とそれに対抗する壁面とがくっついて植栽容器の円滑な上下動が阻害されることもない。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、平面視において、前記貯水容器の内周壁面と前記植栽容器の外周壁面が互いに異なる形状であるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、平面視において、貯水容器の内周壁面と植栽容器の外周壁面が互いに異なる形状であるから、例えば、互いに異なる種々の形状の貯水容器と植栽容器を組み合わせることにより、斬新な意匠感を有する植栽装置とすることができるとともに、隣接する突出部材間に比較的大きな空間を形成することができ、植栽容器の円上下動もより一層円滑となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、平面視において、前記貯水容器の内周壁面がほぼ正方形で、前記植栽容器の外周壁面がほぼ円形であるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、平面視において、貯水容器の内周壁面がほぼ正方形で、植栽容器の外周壁面がほぼ円形であるから、比較的単純な形状の組み合わせによってシンプルな植栽装置とすることができ、しかも、隣接する突出部材間に比較的大きな空間を形成して、植栽容器の確実な保持と確実な上下動を確保することができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記突出部材が、前記ほぼ正方形の貯水容器の内周壁面における4つの辺のほぼ中央部から突設されているところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、突出部材が、ほぼ正方形の貯水容器の内周壁面における4つの辺のほぼ中央部から突設されているので、貯水容器の内周壁面の各辺から突設される4つの突出部材によって植栽容器の姿勢を確実に所望どおりに保持することができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記突出部材が、前記ほぼ正方形の貯水容器の内周壁面における4つの角部から突設されているところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、突出部材が、ほぼ正方形の貯水容器の内周壁面における4つの角部から突設されているので、貯水容器の各角部から突設される4つの突出部材によって植栽容器の姿勢を確実に所望どおりに保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による植栽装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この植栽装置は、植栽用の水に植栽容器を浮揚させながら植物を栽培するためのもので、図1〜図3に示すように、植栽用の水Wを貯留する貯水容器1と植栽床材3を収容する植栽容器2を備えている。
貯水容器1は、例えば、透明または半透明の樹脂やガラスなどで形成された有底の容器で、平面視においてほぼ正方形の形状を有している。なお、この貯水容器1は、樹脂やガラス以外にも、種々の材料から形成することができるが、樹脂により形成されていれば、割れ難くて安全性が高まるので好ましい。
そして、貯水容器1の内周壁面1aと外周壁面1bには、上端から下端にわたって上下方向に延びる多数の凹凸が形成されている。それら多数の凹凸のうち、内周壁面1aにおける4つの辺のほぼ中央部から内方へ向けて突出している凸部が、後に詳しく説明する突出部材4として機能するように構成されている。
したがって、貯水容器1の外周壁面1bの凹凸は必ずしも必要なものではないが、外周壁面1bに凹凸があると、滑り難くて持ち易いため、持ち運びに便利である。
【0017】
植栽容器2は、植栽用の水Wに浮揚するように、例えば、水より小さな比重を有する発泡スチロールにより有底の円筒状に形成され、かつ、貯水容器1内に収容可能な寸法に形成されて、その底部には浸水孔5が設けられている。すなわち、植栽容器2は、平面視において、その内周壁面2aと外周壁面2bが同一軸心を有するほぼ円形の形状を有し、貯水容器1内に収容可能に構成されている。なお、植栽容器2は、その内部を中空とし、その中空内部に空気を封じ込めて植栽用の水Wに対して浮揚するように構成することもでき、その場合には、発泡スチロール以外の各種の材料から形成することもできる。
そして、植栽容器2が貯水容器1内に収容された状態で、上述した貯水容器1における内周壁面1aの4つの突出部材4が、平面視において、その内周壁面1aに沿ってほぼ90度の角度を隔てて植栽容器2の外周壁面2bに向けて突設され、かつ、植栽容器2の外周壁面2bに当接自在に構成されて、貯水容器1に対する植栽容器2の上下動をガイドするガイド手段6として機能するように構成されている。
【0018】
さらに、植栽容器2が貯水容器1内に収容された状態で、平面視において、互いに隣接する突出部材4の間には、貯水容器1の内周壁面1aと植栽容器2の外周壁面2bとの間に、各突出部材4とそれに対向する植栽容器2の外周壁面2bとの間よりも大きな空間7が形成されるように構成されている。
そして、植栽容器2には、赤玉土、鹿沼土、腐葉土、ピート、水苔などの天然の植栽用土は勿論のこと、パーミキュライト、パーライト、ウレタン樹脂やフェーノール樹脂などの各種発泡樹脂材、ロックウール、ハイドロボールなどの人工の植栽用土からなる植栽床材3が収容され、その植栽床材3によって植物Pを栽培するように構成されている。
【0019】
つぎに、この植栽装置の使用方法と作用について説明する。
この植栽装置を使用して植物Pを栽培するには、貯水容器1に植栽用の水Wを入れ、植栽容器2に植栽床材3を収容し、その植栽床材3に植物Pを植えたり植物Pの種子を撒いたりして、植栽容器2を貯水容器1内に収容する。
すると、植栽容器2は水Wに対してある程度沈んだ状態で浮揚し、貯水容器1内の水Wが、浸水孔5を介して植栽床材3に供給されて植物Pに必要な植栽用の水Wが供給され、 植物Pが生長すると、その生長に伴って水Wに対する植栽容器2の沈み込み量が増大し、植物Pの生長に見合った量の水Wが供給される。
【0020】
その際、植栽容器2は、その外周壁面2bに当接自在な4つの突出部材4によりガイドされるのであるが、隣接する突出部材4の間に大きな空間7が形成されて、その大きな空間7内に水Wが存在するので、突出部材4に対して植栽容器2の外周壁面2bがくっついて植栽容器2の上下動が阻害されることはない。
したがって、植栽容器2は貯水容器1に対して円滑に上下動可能となり、また、植物Pの生長により重心が上方へ移動しても、ガイド手段6として機能する突出部材4は、貯水容器1の内周壁面1aの上端から下端にわたって上下方向に延びているので、植栽容器2の姿勢は確実に保持されて転倒するおそれはない。
【0021】
なお、この植栽装置において、栽培する植物Pの名前などを記載する表示具を予め準備しておいて、その表示具に名前などの必要事項を記載して植栽を楽しむこともできる。
そのための表示具としては、例えば、植物Pの名前などを記載する表示部とその表示部から延出する針状のポール部を備え、さらに、針状ポール部の中間部に拡径部を備えたものとすることができる。
そして、針状ポール部を植栽床材3に差し込んだり、あるいは、針状ポール部に設けられた拡径部を貯水容器1の四隅の凹部に係合させることによって、表示具を植栽装置に取付けて植栽を楽しむのである。
【0022】
〔別実施形態〕
つぎに、別の実施形態について説明するが、重複説明を避けるため、先の実施形態で説明した構成部材や同じ作用を有する構成部材については、同じ符号を付すことにより説明を省略し、主として先の実施形態と異なる構成について説明する。
【0023】
(1)先の実施形態では、平面視においてほぼ正方形の貯水容器1において、ガイド手段6としての突出部材4が、その内周壁面1aにおける4つの辺のほぼ中央部から内方へ向けて突出された例を示したが、図4に示すように、突出部材4を貯水容器1の内周壁面1aにおける4つの角部から内方へ向けて突出させて実施することもできる。
また、図示はしないが、先の実施形態で示した4つの辺から突出する突出部材4に加えて、図4に示した4つの角部から突出する突出部材4を設け、合計8つの突出部材4により植栽容器2の上下動をガイドするように構成することもできる。
【0024】
(2)これまでの実施形態では、突出部材4が貯水容器1の内周壁面1aから内方へ向けて突出された例を示したが、図5に示すように、突出部材4を植栽容器2の外周壁面2bから外方へ向けて突出させ、対向する貯水容器1の内周壁面1aに当接自在に構成して実施することもできる。
また、図示はしないが、図4に示した貯水容器1の4つの角部から内方へ突出する突出部材4に加えて、図5に示した植栽容器2の外周壁面2bから外方へ突出する突出部材4を設け、貯水容器1側の突出部材4と植栽容器2側の突出部材4を組み合わせて実施することもできる。
【0025】
(3)これまでの実施形態では、突出部材4が最低4つ設けられた例を示したが、突出部材4は少なくとも3つあればよく、その一例を示したのが図6である。
この図6の実施形態によれば、貯水容器1が平面視においてほぼ正三角形であり、正三角形の内周壁面1aにおける3つの辺のほぼ中央部から合計3つの突出部材4が内方へ向けて突設されている。
さらに、これまでの実施形態では、平面視において、貯水容器1の内周壁面1aと植栽容器2の外周壁面2bが互いに異なる形状に構成された例を示したが、例えば、貯水容器1と植栽容器2を共に円形にして、貯水容器1の内周壁面1aから3つ以上の突出部材4を突設したり、あるいは、植栽容器2の外周壁面2bから3つ以上の突出部材4を突設して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】植栽装置の斜視図
【図2】植栽装置の縦断正面図
【図3】植栽装置の平面図
【図4】別の実施形態による植栽装置の平面図
【図5】別の実施形態による植栽装置の平面図
【図6】別の実施形態による植栽装置の平面図
【符号の説明】
【0027】
1 貯水容器
1a 貯水容器の内周壁面
2 植栽容器
2b 植栽容器の外周壁面
3 植栽床材
4 突出部材
6 ガイド手段
7 空間
P 植物
W 植栽用の水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽用の水を貯留する貯水容器と植栽床材を収容する植栽容器を備え、前記植栽容器が前記貯水容器内において貯水容器内の水に浮揚する状態で、その植栽容器の前記貯水容器に対する上下動をガイドするガイド手段が設けられている植栽装置であって、
前記ガイド手段が、前記貯水容器の内周壁面または前記植栽容器の外周壁面のいずれか一方から他方に向けて突設されて他方の壁面に当接自在な上下方向に延びる突出部材で構成され、平面視において、その突出部材が前記貯水容器の内周壁面または前記植栽容器の外周壁面に沿って3つ以上設けられ、かつ、それら隣接する突出部材間で、前記貯水容器の内周壁面および植栽容器の外周壁面の間に、前記突出部材とそれに対向する壁面との間よりも大きな空間が形成される植栽装置。
【請求項2】
平面視において、前記貯水容器の内周壁面と前記植栽容器の外周壁面が互いに異なる形状である請求項1に記載の植栽装置。
【請求項3】
平面視において、前記貯水容器の内周壁面がほぼ正方形で、前記植栽容器の外周壁面がほぼ円形である請求項2に記載の植栽装置。
【請求項4】
前記突出部材が、前記ほぼ正方形の貯水容器の内周壁面における4つの辺のほぼ中央部から突設されている請求項3に記載の植栽装置。
【請求項5】
前記突出部材が、前記ほぼ正方形の貯水容器の内周壁面における4つの角部から突設されている請求項3に記載の植栽装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−280337(P2006−280337A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108563(P2005−108563)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(502275942)サントリーフラワーズ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】