説明

植物工場

【課題】配線をコードレス化して栽培室内に設置するセンサを容易に移動・メンテナンスできる植物工場を提供する。
【解決手段】各種センサ7は、太陽電池パネル9を動作電源とし、センサ回路71に送信側RF回路72を接続して測定データを制御ユニット8に無線伝送する。太陽電池パネル9は、LEDランプ51の照射光を光電変換して電力を生成する。制御ユニット8は、前段に受信側RF回路81を設置して各種センサ7の測定データを収集し、CO2供給装置2、空調設備3、LEDモジュール5、ファン6を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閉鎖的な空間内で光強度、CO2濃度、温度、湿度などの生育環境を人工的に制御して作物を計画的に生産する植物工場に関する。
【背景技術】
【0002】
植物工場は、環境の調節が可能な閉鎖された空間において、光強度、温度、湿度、CO2濃度、照度、養液濃度、pHなど植物成長に影響を与える生育環境を人工的に制御することで、露地栽培に比べ天候不順などの自然環境や病虫害などに左右されることなく、高品質の無農薬野菜を一年中安定栽培し、安定価格で、安定供給できるメリットがある。特にLED照明の場合、光の波長(色)や照射方法(点滅照射など)を変えることで更なる作物の成長促進が可能になる。また、これまでの年1回の収穫に比べ、植物の成長能力を最大限に引き出すので、年数回の収穫が可能になり、さらに立体化・多段栽培化により単位面積当たりの栽培効率を大幅に向上させることができる。
【0003】
植物を効率よく良好に育成するためには光合成速度を最大限に高める必要がある。この光合成速度は光強度、CO2濃度、温度、湿度に依存するので、これらの状態を細かく見極め、それに応じて細かく制御する必要がある。そのため特許文献1では、図4に示すように、太陽電池などの光強度検知手段10、CO2センサ20、温度センサ30などを配置して出力を制御手段40へ送り、栽培室に設置したLEDなどの照明システム50、CO2を排出する改質器60、エアコンディショナなどの温度制御手段70を制御している。
【0004】
植物の生育環境を細かく制御するには多くのセンサを必要とし、そのため栽培室内に電源ケーブルや信号ケーブルなど多くの配線が必要になる。ところがセンサは植物の作付けや収穫時は作業の邪魔になるので一時的に取り除いたり、コストを抑えるため数を減らしたり、最適な測定場所を探して数を増やしたり場所を変えたりする。そのため多くの配線があるとこのような数の変更や移動が容易にできなくなる。また、配線が邪魔して光を遮ったり、多段栽培時に高さを取られないようにするときの障害になったり、CO2の拡散を防ぐ囲いやLED光の反射板などの設置が困難になる。また、配線が高温多湿な環境や酸性の養液に長時間さらされて腐食したり、水が配線を伝わって基板に滲み込んでショートしたり、誤動作する恐れもある。
何よりも栽培室内で配線が複雑に絡み合いながら露呈する様は美観上好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−262852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は以上のような点であり、本発明は、配線をコードレス化して栽培室内に設置するセンサを容易に移動・メンテナンスできる植物工場を提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明は、栽培室内の状態を感知するセンサに、太陽電池パネルを取り付けて動作電源とする一方、RF回路を接続してセンサ出力を無線伝送し、これよりセンサに接続する電源ケーブルと信号ケーブルを不要にしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、栽培室内の状態を感知するセンサに太陽電池パネルを取り付けて動作電源とし、RF回路を接続してセンサ出力を無線伝送するので、センサに接続する電源ケーブルや信号ケーブルなどの配線が不要になる。従って、センサの増減や移動が容易になり作業の都合やコストの低減に合わせて取り除いたり、設置場所を変更したりすることが自由にできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を実施した植物工場の概略構成図である。
【図2】各種センサと制御ユニットのシステム関連図である。
【図3】センサ回路のブロック図である。
【図4】従来例の植物工場の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1に、本発明を実施した植物工場の概略構成図を示す。
植物工場は、半閉鎖空間の栽培室1にCO2供給装置2と空調設備3を接続し、栽培室1内に既存の水耕栽培ユニット4を多段に設置する。
水耕栽培ユニット4は、各段にLEDモジュール5とファン6を取り付け、各段の適正箇所にCO2センサ、温度センサ、湿度センサなどの各種センサ7を配置する。水耕栽培ユニット4は、養液を循環させてLEDモジュール5の放射熱を吸収させる働きもある。
各種センサ7の測定データは制御ユニット8に伝送し、これら測定データの分析結果に基づいて制御ユニット8がCO2供給装置2、空調設備3、LEDモジュール5、ファン6を制御して栽培室1内のCO2濃度、光強度、温度、湿度などを調節する。
【0012】
CO2供給装置2は、CO2ボンベ21に取り付けた電磁バルブ22を開閉してCO2の供給量を制御する。CO2は比重が空気の1.5倍あり、下に沈むので横から供給する。また、水に溶けると酸性化するのでその分炭酸塩などで養液を中和する必要がある。
CO2ボンベ21は、工場から排出されたCO2を充填することでCO2の工場排出量を削減し、CO2削減ビジネスの関連事業とすることができる。
【0013】
LEDモジュール5は、赤、緑、青の3色のLEDランプ51を複数配列して赤、緑、青の回路ブロックを形成し、回路ブロック毎にパルス幅のデュ−ティ・サイクルを変えるPWM制御して発光量や色相を制御する。
光合成には例えば350〜800nmの波長の光が有効で、波長を限定すればLEDの消費電力を低減できる。そのため植物の種類毎や生育状況に応じて適した波長(色)の光を選択できるよう、このように色の異なるLEDランプ51をいくつか組み合わせて配置する。
【0014】
ファン6は、多段に設置した水耕栽培ユニット4の各段の空気を攪拌し、各段のCO2濃度、温度、湿度を平均化する。
【0015】
各種センサ7は、図2に示すように、太陽電池パネル9を動作電源とし、センサ回路71に送信側RF回路72を接続して測定データを制御ユニット8に無線伝送する。
太陽電池パネル9は、LEDランプ51の照射光を光電変換して電力を生成する。
制御ユニット8は、前段に受信側RF回路81を設置して各種センサ7の測定データを収集し、CO2供給装置2、空調設備3、LEDモジュール5、ファン6を制御する。
【0016】
図3に、センサ回路のブロック図を示す。
センサ回路71は、センサ711の出力をアンプ712で増幅し、A/D変換器713でデジタル信号に変換してCPU714に入力する。
CPU714は、ROM715に格納されたプログラムを実行してデジタル信号の測定データを送信側RF回路72へ送出し、測定データをRAM716に記録する。
【0017】
センサ711は、CO2センサの場合、赤外線吸収式やガラス電極式に比べ小型で安価な固体電解質型センサを用いる。固体電解質型センサは、イオン導電性を有する固体電解質の両面に一対の電極を形成し、一方の電極がCO2と接触したときに2つの電極間で発生する導電イオンの濃度差に基づく起電力の変化を検出することによってCO2濃度を測定する。
温度センサや湿度センサの場合、出力を電気信号で取り出せ、センサ部を小型化できる抵抗変化型や静電容量変化型の電子式センサを用いる。
【符号の説明】
【0018】
1 栽培室
2 CO2供給装置
21 CO2ボンベ
22 電磁バルブ
3 空調設備
4 水耕栽培ユニット
5 LEDモジュール
51 LEDランプ
6 ファン
7 各種センサ
71 センサ回路
711 センサ
712 アンプ
713 A/D変換器
714 CPU
715 ROM
716 RAM
72 送信側RF回路
8 制御ユニット
81 受信側RF回路
9 太陽電池パネル
10 光強度検知手段
20 CO2センサ
30 温度センサ
40 制御手段
50 照明システム
60 改質器
70 温度制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培室内の状態を感知するセンサに、
太陽電池パネルを取り付けて動作電源とする一方、
RF回路を接続してセンサ出力を無線伝送し、
これよりセンサに接続する電源ケーブルと信号ケーブルを不要にしたことを特徴とする植物工場。
【請求項2】
前記栽培室にCO2ボンベを接続し、
このCO2ボンベのバルブを開閉して栽培室内のCO2濃度を調節することを特徴とする請求項1記載の植物工場。
【請求項3】
前記CO2ボンベに工場から排出されたCO2を充填することを特徴とする請求項2記載の植物工場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−147413(P2011−147413A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12946(P2010−12946)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(503398886)株式会社感性デバイシーズ (12)
【出願人】(000141794)株式会社宮入バルブ製作所 (12)
【Fターム(参考)】