説明

植物栽培方法及び植物栽培装置

【課題】 植物の収穫作業の自動化を容易にすることができる植物栽培方法及び植物栽培装置を提供する。
【解決手段】
植物栽培装置は、植物の複数の苗2,2,…に対して花芽誘導剤を供給するための供給管21及び噴射ノズル11を備えており、複数の苗2,2,…のうちの所定の高さまで成長した苗2,2,…における所定の高さの部位に対して、供給管21及び噴射ノズル11を用いて花芽誘導剤を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜類などの植物を栽培する植物栽培方法及びその方法を実施する植物栽培装置に関し、特に花芽誘導剤を用いて植物を栽培する植物栽培方法及び植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種農作物の収穫作業を機械により自動化するために、収穫対象物(農作物)の位置を検出するための技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、カラー画像における色別の輝度差に基づいてきゅうり等の果菜類とその葉とを識別することにより、果菜類の位置を検出する果菜収穫機の果菜類検出装置が開示されている。また、特許文献2には、送風部からの送風によって葉を果菜類から離間させ、その際に得られた撮像画像に対して所定の画像処理を施すことによって、葉に隠れた果菜類の位置を検出することができる果菜類の収穫対象部検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−23748号公報
【特許文献2】特開平8−103139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来の検出装置では、上述したように画像処理技術を用いることによって果菜類などの収穫対象物の位置を検出することができる。そのため、その後はその検出された位置に対して、把持及び切断機能を有するハンド装置等を備えた刈り取り機を用いて刈り取り作業を行うことにより、収穫対象物の刈り取りも自動化することができる。
【0005】
しかしながら、複数の苗の間で収穫対象物の高さが大きく異なる場合、刈り取り機はハンド装置を大きく上下移動させなければならず、刈り取り作業を効率良く行うことができないという問題がある。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、花芽誘導剤を用いることによって、上記課題を解決することができる植物栽培方法及びその方法を実施するための植物栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の植物栽培方法は、植物の複数の苗の中から所定の高さまで成長した苗を特定する苗特定工程と、前記苗特定工程によって特定された苗における所定の高さの部位に対して花芽誘導剤を供給する花芽誘導剤供給工程とを有している。これにより、複数の苗において共通する高さに花芽を形成することが期待でき、その結果収穫作業の自動化を容易に実現することが可能になる。
【0008】
ここで、「花芽誘導剤」とは、各種の植物において花芽の形成を誘導したり、着花を促進したりすることができる物質を意味している。この花芽誘導剤としては、花芽形成・着花を促進する花成ホルモン(フロリゲン)や着果・果実肥大を促進するトマトトーン(登録商標)等を挙げることができる。
【0009】
前記態様の苗特定工程において、撮像装置によって前記複数の苗を撮像し、その結果得られた撮像画像に基づいて前記所定の高さまで成長した苗を特定するようにしてもよい。
【0010】
また、前記上記態様の花芽誘導剤供給工程において、所定の高さまで成長した前記苗における所定の高さの部位に対して、所定の時間間隔で繰り返し花芽誘導剤を供給するようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記態様において、花芽誘導剤が供給された苗における花芽誘導剤の供給箇所に花芽が形成されたか否かを判定する花芽形成判定工程をさらに有し、前記花芽形成判定工程にて、花芽誘導剤の供給箇所に花芽が形成されたと判定された場合、前記苗を花芽誘導剤の供給対象から除外するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明の一の態様の植物栽培装置は、植物の複数の苗に対して花芽誘導剤を供給する花芽誘導剤供給部を備え、前記複数の苗のうちの所定の高さまで成長した苗における所定の高さの部位に対して、前記花芽誘導剤供給部を用いて花芽誘導剤を供給するように構成されている。
【0013】
前記態様において、前記複数の苗が所定の方向に沿って定植され、前記花芽誘導剤供給部が、前記所定の方向に沿って延設され、花芽誘導剤を供給するための供給管と、所定の間隔で前記供給管に複数設けられ、当該供給管によって供給される花芽誘導剤を噴射するための噴射ノズルとを具備し、前記所定の高さまで成長した前記苗と対応する位置に設けられている前記噴射ノズルから当該苗における所定の高さの部位に対して花芽誘導剤を噴射するように構成されていてもよい。
【0014】
また、前記態様において、前記複数の苗を撮像する撮像部をさらに備え、前記花芽誘導剤供給部が、前記撮像部によって得られた撮像画像に基づいて前記所定の高さまで成長したと特定された前記苗における所定の高さの部位に対して花芽誘導剤を供給するように構成されていてもよい。
【0015】
また、前記態様において、前記花芽誘導剤供給部が、所定の高さまで成長した前記苗における所定の高さの部位に対して、所定の時間間隔で繰り返し花芽誘導剤を供給するように構成されていてもよい。
【0016】
また、前記態様において、前記花芽誘導剤供給部が、花芽誘導剤が供給された苗における花芽誘導剤の供給箇所に花芽の形成が認められた場合に、当該苗を花芽誘導剤の供給対象から除外するように構成されていてもよい。
【0017】
さらに、前記態様において、前記花芽誘導剤供給部が、気温を含む生育条件に応じて花芽誘導剤の供給回数及び/又は供給量を変更するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る植物栽培方法及び植物栽培装置によれば、花芽誘導剤を用いることによって、各種の果菜類及び花などの植物の収穫作業の自動化を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置の使用態様を示す模式図。
【図3】本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置のCPUが実行する苗特定処理の処理手順を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置のCPUが実行する花芽誘導剤噴射処理の処理手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置のCPUが実行する花芽形成判定処理の処理手順を示すフローチャート
【図6】本発明の実施の形態2に係る植物栽培装置の構成を示すブロック図。
【図7】本発明の実施の形態2に係る植物栽培装置のCPUが実行する花芽誘導剤噴射処理の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
[植物栽培装置の構成]
図1は、本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置の構成を示すブロック図である。図1に示すとおり、本実施の形態の植物栽培装置10は、各種のデバイスの動作を制御する制御部としてのCPU13と、そのCPU13に接続された主記憶装置14、補助記憶装置15及び入出力インタフェース(I/F)16とを備えている。なお、これらのCPU13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び入出力I/F16はバスによって接続されている。
【0022】
CPU13は、補助記憶装置15に記憶されているコンピュータプログラムを実行する。これにより、植物栽培装置10は、各種のデバイスの動作を制御しながら、後述する各種の処理を実行することが可能になる。
【0023】
主記憶装置14は、SRAMまたはDRAM等によって構成されており、補助記憶装置15に記憶されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、主記憶装置14は、CPU13がコンピュータプログラムを実行するときに、CPU13の作業領域としても利用される。
【0024】
補助記憶装置15は、フラッシュメモリ又はハードディスクなどの不揮発性記憶装置によって構成されており、CPU13に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータ等を記憶している。このように補助記憶装置15に記憶されているデータには、図1に示すとおり、噴射ノズル−カメラ対応情報15A、噴射対象リスト15B及び対象除外リスト15Cが含まれている。これらの各データの詳細については後述する。
【0025】
入出力I/F16は、CPU13と各種の外部装置とを接続するためのインタフェース装置である。この入出力I/F16には、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子で構成される複数のカメラ12,12,…と、液状の花芽誘導剤が貯留されている貯留タンク17に設けられたポンプ18と、後述するように花芽誘導剤を供給するための供給管に設けられた複数の噴射ノズルの開閉を制御するための複数の噴射弁19,19,…とが接続されている。
【0026】
図2は、上述したように構成された本実施の形態の植物栽培装置の使用態様を示す模式図である。図2において、符号1は並列状に形成された畝を示しており、各畝1の長手方向に沿ってトマトなどの果菜類の複数の苗2,2,…が整列して定植されている。このように、本実施の形態では複数の苗2,2,…が土壌で形成された畝1に定植されているが、本発明はこれに限定されるわけではなく、例えば養液栽培用の栽培ベッド等に定植されていてもよい。
【0027】
畝1の両側方には一対の支柱20,20が所定の間隔離れて立設されている。そして、花芽誘導剤を供給するための供給管21が、上述したように整列して定植された苗2,2,…の後方でこれら苗2,2,…の整列方向と平行するように、支柱20,20間に架設されている。この供給管21は、ステンレス製の中空のパイプにより構成されており、その内部において貯留タンク17に貯留されている液状の花芽誘導剤が通流可能なように構成されている。
【0028】
供給管21には、所定の間隔を置いて複数の噴射ノズル11,11,…が形成されている。この間隔は、苗2,2,…の間隔と同様であることが好ましい。これらの噴射ノズル11,11,…のそれぞれは上述した噴射弁19,19,…を備えている。CPU13の指示にしたがって各噴射弁19が動作することによって、噴射ノズル11,11,…の開閉が制御される。
【0029】
噴射ノズル11,11,…から噴射された花芽誘導剤をその前方に位置する苗2,2,…における所定の高さの部位に吹き付けるために、噴射ノズル11,11,…はそのノズル孔が前方を向くようにして供給管21に設けられている。なお、噴射ノズル11,11,…が、噴射方向を適宜調整できるような可変ノズルであってもよい。
【0030】
また、供給管21には、その前方に位置する苗2,2,…を撮像するための上述した複数のカメラ12,12,…が設けられている。これらのカメラ12,12,…は噴射ノズル11,11,…と一対一に対応して設けられており、その撮像範囲に1又は複数の苗2,2,…が含まれるように調整されている。カメラ12,12,…により得られた撮像画像データは補助記憶装置15に記憶される。
【0031】
なお、補助記憶装置15に記憶されている撮像画像データには、その撮像画像データを生成したカメラ12を識別するためのカメラID情報が付与されている。CPU13は、このカメラID情報を参照することにより、どのカメラ12により得られた撮像画像データであるのかを認識することができる。
【0032】
また、補助記憶装置15には、各噴射ノズル11,11,…を識別するための噴射ノズルID情報と、当該噴射ノズル11,11,…のそれぞれと対応して設けられている各カメラ12,12,…のカメラID情報とが対応付けられた噴射ノズル−カメラ対応情報15Aが記憶されている。CPU13は、この噴射ノズル−カメラ対応情報15Aを参照することにより、どの噴射ノズル11がどのカメラ12と対応して設けられているのかを認識することができる。
【0033】
なお、上述したとおり、本実施の形態では各カメラ12,12,…が噴射ノズルと一対一に対応して設けられているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、2つの噴射ノズル11,11の間に1つのカメラ12が設けられる(すなわち、2つの噴射ノズル11,11毎に1つのカメラ12が設けられる)構成であってもよく、また3つ以上の噴射ノズル11,11,…毎に1つのカメラ12が設けられていてもよい。この場合、噴射ノズル−カメラ対応情報15Aでは、一対多の関係でカメラID情報と噴射ノズルID情報とが対応付けられることになる。
【0034】
さらに、補助記憶装置15には、花芽誘導剤の噴射処理を行う噴射ノズル11の噴射ノズルID情報で構成される噴射対象リスト15Bと、噴射処理を行う対象から除外される噴射ノズル11の噴射ノズルID情報で構成される対象除外リスト15Cとが記憶されている。これらの噴射対象リスト15B及び対象除外リスト15Cがどのように生成されてどのように用いられるかについては後述する。
【0035】
カメラ12は、苗2,2,…を撮像することができる位置に設けられていればよいため、本実施の形態のように供給管21に配設されるのではなく、他の位置に配設されていてもよい。噴射ノズル11,11,…及び苗2,2,…の両方が撮像範囲に含まれるようにカメラ12が設けられる場合であれば、CPU13は、撮像画像データを参照することにより、当該撮像画像データに表れている特定の苗2に対して花芽誘導剤を供給するためにはどの噴射ノズル11を用いればよいのかを認識することができる。
【0036】
[植物栽培装置の動作]
次に、上述したように構成された植物栽培装置10の動作について、フローチャートを参照しながら説明する。
本実施の形態の植物栽培装置10は、大きく分けて、(1)花芽誘導剤を噴射する対象の苗を特定する苗特定処理、(2)苗に対して花芽誘導剤を噴射する花芽誘導剤噴射処理、及び(3)花芽が形成された否かを判定する花芽形成判定処理の3つの処理を実行する。以下では、これらの各処理についてそれぞれ説明する。
【0037】
(1)苗特定処理
以下に説明する苗特定処理は、毎日又は毎週定められた時間に実行される等、予め定められた時間間隔で繰り返し実行される。ただし、このように自動的に繰り返し実行されるのではなく、オペレータが任意のタイミングで苗特定処理の実行開始を植物栽培装置10に対して指示し、この指示を受けた植物栽培装置10が以下の苗特定処理を実行するようにしてもよい。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置10のCPU13が実行する苗特定処理の処理手順を示すフローチャートである。
まず、CPU13は、カメラ12,12,…に対して撮像処理を指示する(S101)。これにより、カメラ12,12,…が苗2,2,…をそれぞれ撮像し、その結果得られた苗2,2,…の撮像画像データが補助記憶装置15に記憶される。
【0039】
次に、CPU13は、補助記憶装置15から撮像画像データを読み出し(S102)、その読み出した撮像画像データを用いて各苗2の高さを特定する(S103)。この苗2の高さを特定する処理は、例えば苗2の頂点及び茎等が撮像画像データ中のどの位置に表れているかを特定すること等によって行われる。より詳細に説明すると、撮像画像データ中に苗2の頂点が表れておらず且つ茎も表れていない場合は撮像範囲の最下位置よりも苗2が低いと判断し、撮像画像データ中に苗2の頂点は表れていないものの茎が表れている場合は撮像範囲の最上位置よりも苗2が高いと判断する。また、撮像画像データ中に苗2の頂点及び茎の両方が表れている場合は、その頂点の位置と撮像範囲の最下位置との間の距離を用いて苗2の高さを特定する。
【0040】
次に、CPU13は、ステップS103にて特定された各苗2の高さと所定の閾値(例えば、撮像範囲の最下位置よりも5cm上の位置等)とを比較し、その閾値以上の高さの苗2が存在するか否かを判定する(S104)。ここで、閾値以上の高さの苗2が存在しないと判定した場合(S104でNO)、CPU13は処理を終了する。他方、閾値以上の高さの苗2が存在すると判定した場合(S104でYES)、その苗2を噴射対象として特定する(S105)。
【0041】
ステップS105を実行した後、CPU13は、噴射対象として特定された苗2に対して花芽誘導剤を吹き付けることが可能な噴射ノズル11を特定する(S106)。この処理は、補助記憶装置15に記憶されている噴射ノズル−カメラ対応情報15Aを参照し、ステップS104にて閾値以上の高さであると判定された苗2を撮像したカメラ12のカメラID情報と対応付けられている噴射ノズルID情報を特定することによって行われる。ここで、閾値以上の高さの苗2が複数存在する場合は、複数の噴射ノズル11,11,…が特定されることになる。
【0042】
最後に、CPU13は、ステップS106によって特定された噴射ノズル11の噴射ノズルID情報で構成される噴射対象リスト15Bを生成し、その生成した噴射対象リスト15Bを補助記憶装置15に記憶する(S107)。
【0043】
(2)花芽誘導剤噴射処理
次に、上記の苗特定処理によって特定された苗に対して花芽誘導剤を噴射する花芽誘導剤噴射処理について説明する。なお、この花芽誘導剤噴射処理も、上記の苗特定処理と同様に、予め定められた時間間隔で自動的に繰り返し実行されてもよく(例えば6時間経過する毎に実行する等)、オペレータの指示を受けたときに実行されるようにしてもよい。
【0044】
図4は、本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置10のCPU13が実行する花芽誘導剤噴射処理の処理手順を示すフローチャートである。
まず、CPU13は、補助記憶装置15に記憶されている噴射対象リスト15Bを参照して噴射処理を行う噴射ノズル11を特定する(S201)。次に、CPU13は、補助記憶装置15に記憶されている対象除外リスト15Cを参照する(S202)。なお、この対象除外リスト15Cは、後述する花芽形成判定処理において生成される。
【0045】
次に、CPU13は、ステップS201にて特定した噴射ノズル11のうち、対象除外リスト15Cに含まれていない噴射ノズル11(すなわち、噴射対象リスト15Bに含まれており且つ対象除外リスト15Cに含まれていない噴射ノズル11)を特定し、その噴射ノズル11を、噴射処理を行う噴射ノズルとして決定する(S203)。
【0046】
次に、CPU13はポンプ18を作動させる(S204)。これにより、貯留タンク17から供給管21へ花芽誘導剤が供給され、供給管21内を花芽誘導剤が通流する状態となる。ここで、CPU13は、ステップS203にて決定した噴射ノズル11の噴射弁19に対して噴射動作指示を送り、その結果その噴射ノズル11が開いてノズル孔から花芽誘導剤が噴射される(S205)。これにより、苗2における所定の高さ(本実施の形態では供給管21の設置高さとほぼ同じ高さ)の部位に花芽誘導剤が吹き付けられることになる。
【0047】
一定量の花芽誘導剤を噴射した後、CPU13は噴射弁19に対して噴射停止指示を送り、その結果花芽誘導剤の噴射が停止する(S206)。その後、CPU13はポンプ18を停止させ(S207)、処理を終了する。
【0048】
なお、上述したように花芽誘導剤噴射処理を実行する都度ポンプ18の作動及び停止を行うのではなく、ポンプ18を常時作動させておくようにしてもよい。この場合、供給管21内には常に花芽誘導剤が通流している状態となる。また、貯留タンク17と供給管21との間に開閉弁を設け、その開閉弁の開閉動作により供給管21に対する花芽誘導剤の供給を制御するようにしてもよい。
【0049】
(3)花芽形成判定処理
次に、苗2に花芽が形成された否かを判定する花芽形成判定処理について説明する。なお、この花芽形成判定処理も、上記の苗特定処理と同様に、予め定められた時間間隔で自動的に繰り返し実行されてもよく(例えば3日経過する毎に実行する等)、オペレータの指示を受けたときに実行されるようにしてもよい。
【0050】
図5は、本発明の実施の形態1に係る植物栽培装置10のCPU13が実行する花芽形成判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
まず、CPU13は、カメラ12,12,…に対して撮像処理を指示する(S301)。これにより、カメラ12,12,…が苗2,2,…をそれぞれ撮像し、その結果得られた苗2,2,…の撮像画像データが補助記憶装置15に記憶される。
【0051】
次に、CPU13は、補助記憶装置15から撮像画像データを読み出し(S302)、その読み出した撮像画像データを用いて、上記の花芽誘導剤噴射処理によって花芽誘導剤が噴射された箇所に花芽が形成されている苗2が存在するか否かを判定する(S303)。この判定処理は、例えば、撮像画像データに対して輪郭抽出処理を施し、その結果得られた輪郭と、予め用意された花芽の輪郭を示すテンプレートとのマッチング処理を実行すること等により行われる。
【0052】
ステップS303において花芽が形成された苗2は存在しないと判定した場合(S303でNO)、CPU13は処理を終了する。これに対し、花芽が形成された苗2が存在すると判定した場合(S303でYES)、CPU13はその苗2を花芽誘導剤の噴射除外対象として特定する(S304)。
【0053】
ステップS304を実行した後、CPU13は、噴射除外対象として特定された苗2に対して花芽誘導剤を吹き付けることが可能な噴射ノズル11を特定する(S305)。この処理は、補助記憶装置15に記憶されている噴射ノズル−カメラ対応情報15Aを参照し、ステップS303にて花芽が形成されたと判定された苗2を撮像したカメラ12のカメラID情報と対応付けられている噴射ノズルID情報を特定することによって行われる。ここで、花芽が形成された苗2が複数存在する場合は、複数の噴射ノズル11,11,…が特定されることになる。
【0054】
最後に、CPU13は、ステップS305によって特定された噴射ノズル11の噴射ノズルID情報で構成される対象除外リスト15Cを生成し、その生成した対象除外リスト15Cを補助記憶装置15に記憶する(S306)。
【0055】
上記の花芽形成判定処理を実行することによって、既に花芽が形成された苗2に対して花芽誘導剤を噴射することを回避することができる。
【0056】
なお、苗特定処理、花芽誘導剤噴射処理及び花芽形成判定処理のそれぞれを実行するタイミングを予め設定しておくようにしてもよい。例えば、苗特定処理を実行した後、花芽誘導剤噴射処理を6時間おきに3回繰り返し、その後所定期間経過後に花芽形成判定処理を実行するというサイクルを繰り返すこと等が考えられる。
【0057】
上述した苗特定処理、花芽誘導剤噴射処理及び花芽形成判定処理を実行することにより、各苗2における所定の高さの部位に対して花芽誘導剤を吹き付けることができる。そのため、複数の苗2,2,…の収穫物の高さが揃うことが期待できる。これにより、その後の収穫作業の自動化を容易にすることができる。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態2の植物栽培装置は、気温などの苗の生育条件に応じて花芽誘導剤の噴射回数及び/又は噴射量を変更することができるものである。
【0059】
[植物栽培装置の構成]
図6は、本発明の実施の形態2に係る植物栽培装置の構成を示すブロック図である。図6に示すとおり、本実施の形態の植物栽培装置30は、実施の形態1の場合と同様に補助記憶装置15を備えており、その補助記憶装置15には噴射制御情報15Dが記憶されている。この噴射制御情報15Dは、気温、降水量及び日照時間などの苗の生育条件と、その生育条件に対応付けられた花芽誘導剤の噴射量とで構成されている。具体的に説明すると、噴射制御情報15Dには、「気温が10℃乃至15℃、降水量が直近の5日間で10mm以下、日照時間が直近の5日間で60時間以上」などの生育条件と、「1回当たり0.5ml」などの花芽誘導剤の噴射量とが対応付けられている。後述するように、本実施の形態の植物栽培装置30は、この噴射制御情報15Dに基づいて花芽誘導剤噴射処理を実行する。なお、植物栽培装置30のその他の構成については実施の形態1の場合と同様であるので、同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
[植物栽培装置の動作]
本実施の形態の植物栽培装置30も、実施の形態1の場合と同様に、(1)苗特定処理、(2)花芽誘導剤噴射処理、及び(3)花芽形成判定処理を実行する。このうち、苗特定処理及び花芽形成判定処理については実施の形態1の場合と同様であるため説明を省略する。以下、花芽誘導剤噴射処理について、フローチャートを参照しながら説明する。
【0061】
(2)花芽誘導剤噴射処理
図7は、本発明の実施の形態2に係る植物栽培装置30のCPU13が実行する花芽誘導剤噴射処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、図中、ステップS201乃至S207については実施の形態1の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0062】
植物栽培装置30のCPU13は、ステップS203を実行した後、補助記憶装置15に記憶されている噴射制御情報15Dを参照する(S401)。次に、CPU13は、現在の生育条件と合致する生育条件を噴射制御情報15Dに含まれる生育条件の中から検索し、検索された生育条件と対応付けられている花芽誘導剤の噴射量を特定する(S402)。
【0063】
なお、現在の生育条件はオペレータによって予め植物栽培装置30に与えられていてもよく、また、植物栽培装置30が外部の装置から自動的に取得できるように構成されていてもよい。
【0064】
その後のステップS205において、CPU13は、ステップS402にて特定した噴射量で花芽誘導剤を噴射するように噴射弁19の動作を制御する。これにより、生育条件に適した量の花芽誘導剤を苗2における所定の高さの部位に対して噴射することが可能になる。
【0065】
なお、噴射制御情報15Dにおいて生育条件と対応付けられている情報として、上記の花芽誘導剤の噴射量に代えて、または当該噴射量と共に、花芽誘導剤の噴射回数を用いるようにしてもよい。具体的には、各生育条件に対して「1日3回噴射、1回当たりの0.5ml」などの情報が対応付けられることによって噴射制御情報15Dが構成されていてもよい。この場合、苗2に対する花芽誘導剤の噴射を生育条件に適した回数行うことが可能になる。
【0066】
また、植物の種類毎に異なる噴射制御情報15Dが用意されていてもよい。この場合、植物の種類に応じて適切な噴射量及び/又は噴射回数を設定することが可能になる。
【0067】
(その他の実施の形態)
上記の各実施の形態では、植物栽培装置が備えるCPU13によって各種の画像処理が実行されているが、本発明はこのような構成に限定されるわけではない。例えば、画像処理専用のプロセッサを別途設け、そのプロセッサが上述した画像処理を実行するような構成であってもよい。
【0068】
上記の各実施の形態の植物栽培装置は、屋外及び屋内の何れの環境においても使用することが可能である。いわゆる植物工場においても使用することができ、その場合は生育条件を制御しやすいため、収穫物を同一の高さに揃えやすいという利点がある。
【0069】
上記の各実施の形態では、苗特定処理において画像処理により花芽誘導剤の噴射対象の苗を特定しているが、本発明はこれに限定されるわけではない。例えば、各苗について播種時期を記憶しておき、その播種時期から一定期間経過した苗は所定高さに到達したと判断して花芽誘導剤の噴射対象とするようにしてもよい。また、人間が目視により苗の高さを確認して、花芽誘導剤の噴射対象となる苗を特定するようにしてもよい。その場合は、人間が噴射対象リストをマニュアルで作成し、それを植物栽培装置10に対して入力する。これにより、植物栽培装置10は上記の各実施の形態と同様にしてその後の花芽誘導剤噴射処理等を実行することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の植物栽培方法及び植物栽培装置は、トマト及びきゅうりなどの各種の果菜類並びに各種の花などの植物の収穫作業の自動化を容易にするための植物栽培方法及び植物栽培装置等として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 畝
2 苗
10,30 植物栽培装置
11 噴射ノズル
12 カメラ
13 CPU
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
15A 噴射ノズル−カメラ対応情報
15B 噴射対象リスト
15C 対象除外リスト
15D 噴射制御情報
17 貯留タンク
18 ポンプ
19 噴射弁
20 支柱
21 供給管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の複数の苗の中から所定の高さまで成長した苗を特定する苗特定工程と、
前記苗特定工程によって特定された苗における所定の高さの部位に対して花芽誘導剤を供給する花芽誘導剤供給工程と
を有する、植物栽培方法。
【請求項2】
前記苗特定工程において、撮像装置によって前記複数の苗を撮像し、その結果得られた撮像画像に基づいて前記所定の高さまで成長した苗を特定する、請求項1に記載の植物栽培方法。
【請求項3】
前記花芽誘導剤供給工程において、所定の高さまで成長した前記苗における所定の高さの部位に対して、所定の時間間隔で繰り返し花芽誘導剤を供給する、請求項1又は2に記載の植物栽培方法。
【請求項4】
花芽誘導剤が供給された苗における花芽誘導剤の供給箇所に花芽が形成されたか否かを判定する花芽形成判定工程をさらに有し、
前記花芽形成判定工程において、花芽誘導剤の供給箇所に花芽が形成されたと判定された場合、前記苗を花芽誘導剤の供給対象から除外する、請求項1乃至3の何れかに記載の植物栽培方法。
【請求項5】
植物の複数の苗に対して花芽誘導剤を供給する花芽誘導剤供給部を備え、
前記複数の苗のうちの所定の高さまで成長した苗における所定の高さの部位に対して、前記花芽誘導剤供給部を用いて花芽誘導剤を供給するように構成されている植物栽培装置。
【請求項6】
前記複数の苗が所定の方向に沿って定植され、
前記花芽誘導剤供給部が、
前記所定の方向に沿って延設され、花芽誘導剤を供給するための供給管と、
所定の間隔で前記供給管に複数設けられ、当該供給管によって供給される花芽誘導剤を噴射するための噴射ノズルと
を具備し、
前記所定の高さまで成長した前記苗と対応する位置に設けられている前記噴射ノズルから当該苗における所定の高さの部位に対して花芽誘導剤を噴射するように構成されている、請求項5に記載の植物栽培装置。
【請求項7】
前記複数の苗を撮像する撮像部をさらに備え、
前記花芽誘導剤供給部が、前記撮像部によって得られた撮像画像に基づいて前記所定の高さまで成長したと特定された前記苗における所定の高さの部位に対して花芽誘導剤を供給するように構成されている、請求項5又は6に記載の植物栽培装置。
【請求項8】
前記花芽誘導剤供給部が、所定の高さまで成長した前記苗における所定の高さの部位に対して、所定の時間間隔で繰り返し花芽誘導剤を供給するように構成されている、請求項5乃至7の何れかに記載の植物栽培装置。
【請求項9】
前記花芽誘導剤供給部が、花芽誘導剤が供給された苗における花芽誘導剤の供給箇所に花芽の形成が認められた場合に、当該苗を花芽誘導剤の供給対象から除外するように構成されている、請求項5乃至8の何れかに記載の植物栽培装置。
【請求項10】
前記花芽誘導剤供給部が、気温を含む生育条件に応じて花芽誘導剤の供給回数及び/又は供給量を変更するように構成されている、請求項4乃至9の何れかに記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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