説明

構造ヘルスモニタリング(SHM)変換器アセンブリ及びシステム

変換器アセンブリ(100)は、誘電体からなる第1層(102)と、この第1誘電層に隣接する一対の導電トレース(104a、104b)とを含む。導電トレースの各々は、第1接触パッド(106a)と、第2接触パッド(106b)とを含む。誘電体からなる第1層には、第1接触パッドの各々を露出させるための、一対のバイアホール又は開口を形成することができる。誘電体からなる第2層(112)は、誘電体からなる第1層との間に配置される一対の導電トレースにより、誘電体からなる第1層に取り付けることができる。変換器(114)は誘電体からなる第2層に取り付けることができ、各第2接触パッドは変換器に電気的に接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機又はその他乗り物といった対象物の構造健全性のモニタリングに関連し、具体的には、構造ヘルスモニタリング(SHM)変換器アセンブリと、SHM変換器アセンブリを利用しうるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業において民間航空機及びその他エアロスペースビークル用に、並びに市民の生活基盤となる設備、地上輸送、及びその他の産業において、新規の軽量複合材料、従来の金属材料、及びその他の材料が、これまで以上に設計に広く使用され、且つ最適化されている。新規の材料及び新規の設計は、衝撃又はその他の原因により、極度の応力を受ける場合があり、又は破損の可能性を有する場合がある。例えば、民間航空機の胴体の貨物用ドア周辺近傍では、バゲッジ作業員が偶発的に航空機の胴体にぶつかったり破損させたりすることが頻繁に起こる。そのような破損はすべて、迅速且つ効率的に特定して位置をはっきりさせ、大きさ及び範囲を画定することにより、必要な修理をすべて行って、航空機の維持費用を削減し、且つ航空機のキャンセル及び遅延を避けなければならない。迅速に実行できるが故にメンテナンスに掛かる時間を確実に最短にする非破壊評価を実施するためには多数の変換器が必要である。そのような新規検査システムを航空機又は稼動環境及びコスト的競合が苛酷なその他の構造に追加するために、変換器は低コストのものでなければならず、過酷な環境で動作できなければならず、そして非常な長時間に亘って機能しなければならない。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、変換器アセンブリは、誘電体からなる第1の層と、この第1誘電層に隣接する一対の導電トレースを含むことができる。各導電トレースは、第1接触パッドと第2接触パッドとを含むことができる。誘電体からなる第1層には、第1接触パッドの各々を露出させるための、一対のバイアホール又は開口を形成することができる。誘電体からなる第2層は、有電体からなる第1層との間に配置される一対の導電性のトレースにより、誘電体からなる第1層に取り付けることができる。変換器又はセンサなどは、誘電体からなる第2層に取り付けることができ、第2接触パッドの各々は変換器に電気的に接続することができる。本発明の別の実施形態では、変換器の底面全体を覆う変換器の底部(変換器ディスクの底及び誘電体からなる第2層の一部)に、誘電体からなる第3の層を結合することができる。
【0004】
本発明の別の実施形態によれば、変換器アセンブリを形成する方法は、誘電体からなる第1の層を供給するステップと、この第1誘電層の隣に一対の導電トレースを配置するステップとを含むことができる。導電トレースの各々は、第1接触パッドと第2接触パッドとを含むことができる。本方法は、第1接触パッドの各々を露出させるための一対のバイアホール又は開口を、誘電体からなる第1層に形成するステップも含むことができる。本方法は、誘電体からなる第2層を、誘電体からなる第1層との間に配置された一対の導電トレースにより、誘電体からなる第1層に取り付けるステップも含むことができる。本方法は更に、誘電体からなる第2層に変換器を取り付けるステップも含むことができ、この場合第2接触パッドの各々は変換器に電気的に接続される。
【0005】
請求の範囲によってのみ規定される本発明のその他の態様及び特徴は、添付図面に関連する本発明の以下の非限定的且つ詳細な説明により当業者に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】本発明の一実施形態による構造ヘルスモニタリングに使用できる変換器アセンブリの一実施例の分解図である。
【図1B】図1Aの変換器アセンブリの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態による変換器アセンブリを形成するための積層構造の一実施例を示す。
【図3】本発明の一実施形態による、乗り物などの対象物の構造ヘルスモニタリングの例示的システムに含まれる図1Bの変換器アセンブリの、線3−3における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態についての以下の詳細な説明では、本発明の特定の実施形態を例示する添付図面に言及する。異なる構造及び機能を有する他の実施形態も、本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態による構造ヘルスモニタリングに使用できる変換器アセンブリ100の一実施例の分解図である。変換器アセンブリ100は、誘電体からなる第1の層102を含むことができる。第1の誘電体層102は、ポリイミドフィルム又は同様の柔軟な非導体材料とすることができる。第1の層の厚さは約7.5ミル以下とすることができる。ポリイミドフィルム又は第1の層102は、デュポン社のPyralux LF9150(登録商標)又は同様の材料とすることができる。Pyralux(登録商標)は、米国及び/又はその他の国において、デュポン社(正式名称:E.I. Du Pont De Nemours and Company)の登録商標である。
【0009】
一対の導電トレース104は、デュポン社のPyralux LF9150(登録商標)及び種々のポリイミド−銅の積層材の場合と同様に、第1の誘電層102又はポリイミドフィルムの隣に配置するか、それに接着するか又はその他の手段によって取り付けることができる。層102の材料は、ファイバーグラス繊維を染み込ませた樹脂のような、接着された銅トレース104を有する非導体複合材料とすることもできる。各導電トレース104は、導電性のシルクスクリーンインク及び導体束、導電性にコーティングされた半導体又は導電性にコーティングされた非導電ファイバーといった、銅又は類似の導体材料のうちの一つとすることができる。各導電トレース104は、第1接触パッド106及び第2接触パッド108を含むことができる。第1誘電層102には一対のバイアホール110又は開口を形成し、第1接触パッド106の各々を露出させて、トレース104と構造ヘルスモニタリング装置(図1Aには示さない)又は同様のデバイスとの配線インターフェースとすることができる。バイアホール110は、そのような開口110を精密に形成できるレーザ切断プロセス又はその他のプロセスにより形成することができる。
【0010】
第2誘電体層112は、第1誘電体層102との間に配置される一対の導電トレースにより、第1誘電体層に取り付けることができる。第2誘電体層112の、第1誘電体層102の反対側には、電気機械的変換器114を取り付けることができる。各第2接触パッド108は、第2誘電体層112を介して電気機械的変換器114に電気的に接続することができる。
【0011】
第2誘電体層112は、導電トレース104を封入し、且つ電気機械的変換器114を第1誘電体層102又はポリイミドフィルムに取り付けるために、非導電性の接着剤からなる層を含むことができる。各導電トレース104の二つの接触パッド108の各々は、導電性の接着フィルム116、接着パッチ又はペースト状の接着剤により、非導電性の誘電体からなる第2層112に設けられた穴117を介して電気的に接続することができる。
【0012】
非導電性接着剤からなる層112の厚さは、約4ミル以下とすることができる。非導電性接着剤層112は、Ablefilm CF563(登録商標)又は同様の非導電性接着剤とすることができる。導電性接着剤フィルム116又はパッチの厚さも、約4ミル以下とすることができる。導電性の接着フィルム116は、Ablefilm CR3350(登録商標)又は同様の導電フィルムのようなエポキシフィルムとすることができる。Ablefilm(登録商標)は、米国及び/又はその他の国において、米国デラウェア州ニューキャッスルのナショナルスターチ社(正式名称:National Starch and Chemical Investment Holding Corporation)の登録商標である。導電性接着剤の電気的結合部116は、電気パッド118及び120に接続することにより、変換器114に取り付けられる。ディスク又は変換器114上の電気パッド118及び120は電気的に遮蔽する非導電層122によって分離されることに注意されたい。導電性接着ボンド116もパッド108に接続する。
【0013】
電気化学的変換器114は、平坦なセラミック製圧電超音波変換器ディスク、センサ、或いは、本明細書に記載の試験下の構造又は対象物内に応力波を伝送することができる同様のデバイスとすることができる。本明細書において変換器と言う場合、それはここに記載の機能を実行できるセンサ又は任意のデバイスも意味する。電気機械的変換器ディスク114の厚さは、約10ミル以下とすることができる。電気機械的変換器114は、APC社(正式名称:APC International, Ltd.)が販売する圧電材料のような、圧電ディスクの両面に装着又は結合された、導電性であるが個別に遮蔽された板を有する厚さ10ミルの鉛、ジルコン酸塩、チタン酸塩の圧電セラミック材とすることができる。
【0014】
電気機械的変換器114は、非導電性層112の反対側に信号伝送面124を含むことができる。信号伝送面124が対象物に結合されているとき、圧電材料は、励起されて応力波を対象物に送り込むことができる、及び/又は対象物から戻ってくる応力波を受け取って、対象物の構造の健全性をモニタリングするか、又は対象物中の何らかの異常を検出することができる。ここで図3を参照して更に詳細に説明するように、応力波は、何らかの異常、故障又は破損を検出する超音ラム波又は類似の波とすることができる。
【0015】
非導体材料からなる第2の層112は、穴の開いた接着剤又は誘電体と接着剤との組み合わせとすることができ、第2層112に設けられた穴117を通って延びる導電性接着フィルムパッチ116は、第1誘電体層102又はポリイミドフィルムに対する電気機械的変換器114の取り付け又は保持を補助する。電気機械的変換器114の取り付けは、信号送信面124が、非導電性接着層112を有するほぼ平坦な又は面状の表面を形成し、よって変換器アセンブリ100が構造ヘルスモニタリングの対象物に取り付けられたときに空隙や実質的な段差ができることが防止されるか、又はあらゆる異常が検出されるように、行われる。図3は、変換器アセンブリ100に類似の変換器アセンブリ304の一実施例を示し、このアセンブリ304は、変換器アセンブリ304と対象物302の間に空隙や実質的段差が無いように、モニタリングされる対象物に取り付けられている。非導電性の層320(図1Aの112)は、図3に示すように、電気機械的変換器322(図1Aの114)とぴったり重なるように平坦に形成されている。このように平坦であることにより、図3に示すように、変換器322の縁の周りが密封される。
【0016】
変換器アセンブリ100は、他の構造的な層又は厚みを有するコンポーネントを追加で用いる必要なく、構造ヘルスモニタリングを行う対象物に取り付けることができる。図3に示すように、導電性接着剤又は非導電性接着剤326からなる薄層のみを使用して、図1Aの変換器アセンブリ100と同じものでありうる変換器アセンブリ322を(図3に示すように)結合することができる。ここに記載される電気機械的変換器アセンブリ100結合方法により、対象物302に取り付けられたときに凹凸の小さいほぼ平坦な構造が得られ、よって変換器アセンブリの破損を招きうる変換器アセンブリに対する偶発的な衝撃が実質的に防止される。加えて、単純で、最小の層構造は、構造ヘルスモニタリング中の機械的なインピーダンスの不一致を最小化し、信号対雑音比を増大させる。ほぼ平坦な底面は、変換器アセンブリと、変換器が適用される対象物又は構造の結合を均一化するのに寄与する表面となる。
【0017】
上述のように、図1Aに示す本発明の実施形態の変換器又はセンサアセンブリ100の構造が極度に単純であることにより、安価で効率的に作製することが可能である。これについて、図2を参照して更に詳しく後述する。作製費用が低いことにより、航空機の選択された位置に、又は構造ヘルスモニタリングプログラムの一部としてあらゆる構造に、そのような変換器又はセンサアセンブリを複数個配置することができる。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態により変換器アセンブリ202を形成するための積層構造200の一実施例を示す。変換器アセンブリ202は、図1Aの変換器アセンブリ100と同じでよい。硬化させていない変換器アセンブリ202は、オートクレーブツールの上又は中に配置することができる。非粘着性の耐熱材料からなる第1の隔離シート206と、剥離プライ又は剥離材からなる層208を、変換器アセンブリ202とオートクレーブツール204の間に配置又は設置することができる。非粘着性の耐熱性材料からなる第1剥離シート206は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)又は同様の非粘着性の耐熱材料からなる固体シートとすることができる。剥離材層208は、任意の種類の剥離プライ材などでよい。第1隔離シート206及び剥離材層208又は剥離プライにより、硬化後オートクレーブツール204から変換器アセンブリ202を容易に除去することができる。
【0019】
温度テープ210は、未硬化の変換器アセンブリ202の、オートクレーブツール204とは反対の側に配置することができる。温度テープ210は、未硬化の変換器アセンブリ202の複数の異なるプライの、未硬化状態での互いに対する相対的位置決めを維持するあらゆる種類の接着剤とすることができる。温度テープ210の上に、第2の隔離シート212が配置される。第2隔離シート212は、穿孔されたFEPセパレータ又は変換器アセンブリ202を完全に真空にすることができ、且つ硬化後に変換器アセンブリ202の除去を可能にする材料からなる同様の層とすることができる。
【0020】
第2隔離シート212上には空気抜きシート214が配置される。空気抜きシート214は、120#のファイバーグラス空気抜き器又は変換器アセンブリ202を完全に真空にできる類似の機構とすることができる。空気抜きシート214の上には、第3の隔離シート216が配置される。第3隔離シート216は、固体のFEP隔離層とすることができる。第3隔離シート216の上には、エアウィーブ息抜き218を配置してもよい。ここでも、エアウィーブ息抜き218と穿孔された隔離シート216により変換器アセンブリ202を真空にすることができ、穿孔されたセパレータ216は硬化後のアセンブリ202の除去を助ける。
【0021】
積層構造220は、真空チャンバ又はバッグ222内に配置されてシールされる。真空バッグ222は、粘着性のテープ、或いは同様の接着性又はその他適切な手段などの、テープ224によりシールすることができる。構造220の完全な真空状態は、真空ポート226によりつくることができる。
【0022】
未硬化の変換器アセンブリ202は、エアポケット及び樹脂過多部を殆ど持たないように変換器アセンブリ202を硬化させる所定の硬化スケジュールを用いて硬化させることができる。例えば、硬化の間に、変換器アセンブリ202を完全な真空状態にすることができる。変換器アセンブリ202に硬化温度を適用し、温度を、周囲温度から華氏約300°(F)まで毎分華氏約20°で上昇させることができる。硬化温度は約30分間に亘って華氏約300°に保たれる。約30分後、毎分華氏約20°で周囲温度まで硬化温度を低下させる。
【0023】
高温及び高圧による硬化の結果、多数の利点が得られ、そのような利点には、変換器アセンブリ202が、平坦なインターフェース面の、均一で頑丈な構造を持つことにより、破損を招きうる変換器アセンブリ202への偶発的な衝撃による損害がほぼ防止されることが含まれる。このような設計及び硬化スケジュールの他の幾つかの利点には、圧電ディスクとの構造的な応力伝達を最大化する強度の高い信号による良好な信号性能が含まれ、よって、図3の対象物302のような試験下にある対象物又はモニタリングされる対象物に、ラム波が効率的に伝達される。圧電ディスク322と接着剤320の間の平坦な構造を図3に見ることができる。変換器の小型で効率的な設計は、変換器使用中に、機械的なインピーダンスの不一致を最小化し、且つ信号対雑音比を上昇させる雑音を最小化するのを助ける。図3の302のような対象物に結合されたとき、圧電ディスク又はセンサと回路(接着剤320に囲まれている)とが封入されることにより、湿気、周期的な凍結/解凍、及び化学流出といった厳しい環境条件から更に保護される。圧電ディスクより大きく、平坦で均一な変換器の結合表面は、結合プロセスにおいて変換器が構造に結合されるとき均一で空隙の無い結合を保証し、応力の集中を最小化するのを助けて、構造の静的な疲労破壊、音響振動破壊、及び電気機械的インターフェース(EMI)の露出、並びに変換器の衝撃による偶発的破損に対する保護となる。図1Aの非導電性プライ112は、短絡を回避するために、導体(信号)と地面とを完全に遮蔽する。導電性プライ又はパッチ116は、電気的経路と圧電変換器ディスク114の間の電機接続を確実に保証する。100、202、及び304で示す変換器アセンブリは、変換器304と結合用接着剤326の間に追加の材料層(図示しない)を有することができる。この材料層は、構造302からの変換器304の電気的隔離を助ける。変換器結合用の接着剤326は、非導電性でも導電性でもよく、よって変換器304の接地又は構造302からの遮蔽を助ける。図3に示すように、導電性又は非導電性の接着剤326は、硬化後、変換器ディスク304と、変換器304が結合される任意の対象物又は構造302との電気的遮蔽又は電気伝導を提供する。電気的遮蔽の場合、変換器304と構造302の間の遮蔽は、ほぼ平坦な底部の設計インターフェースを、変換器アセンブリ304の材料320及びディスク322に延長することにより、変換器ディスク322と、モニタリングされる任意の対象物又は構造302の間に、一貫性を有する均一な結合線が得られるという事実によるものである。
【0024】
変換器アセンブリ304と構造302の間が電気的に完全に遮蔽されることが望ましい場合、図3に示すように、任意の、薄い(約4ミル以下)非導電性の遮蔽層330を変換器アセンブリの底部に追加することができる。非導電遮蔽層は非導電性の樹脂とすることができ、この樹脂は、非導電性の繊維トウから作製された非導電性の薄い織物などにより強化することができる。使用される非導電性の繊維強化材は、ガラス又はその他の非導電性ファイバーとすることができる。本発明の別の実施形態では、非導電層330は、層330を確実に起均一の厚さにし、且つ電気的遮蔽を保証するために、非導電性樹脂(層330に追加される微小な非導電性のビード又は非導電性を有するその他の厚みを制御する又はスペーサとなる材料も有することができる。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態による、乗り物などの対象物302の構造ヘルスモニタリングの例示的システム300に含まれる、図1Bの変換器アセンブリ100(図3の304)の線3−3における断面図である。対象物302は、エアロスペースビークル、陸上車両、船舶、民間インフラ(橋、デッキ、又は線路)、或いはその他の種類の乗り物又は構造とすることができる。システム300は、対象物302上の所定の位置に複数の変換器又はセンサアセンブリ304を含むことができる。本発明の説明として、単独の変換器アセンブリ304の断面図を図3に示す。変換器アセンブリ304は、図1A及びの変換器アセンブリ100と類似又は同一のものでよい。従って、変換器アセンブリ304は、ポリイミドフィルム306を含むことができる。一対の導電トレース308がポリイミドフィルム306に結合される。各導電トレース308は、図1Aの導電トレース104に類似のものとすることができる。従って、導電トレース308の各々は、第1接触パッド310及び第2接触パッド312を含むことができる。ポリイミドフィルムには、第1接触パッド310の各々を露出させて構造ヘルスモニタリング装置310に接続させるために、図1Aのバイアホール110と類似の一対のバイアホール又は開口を形成することができる。第1接触パッド310の各々は、適切な接続手段316、例えばはんだを用いて各第1接触パッド310に電気的に結合されたコネクタワイヤ、導電性接着剤により各接触パッドに電気的に結合及び装着されたワイヤ、又は変換器アセンブリ304及びモニタリングされる対象物302の特定の用途に適したその他の手段により、構造ヘルスモニタリング装置314に接続することができる。電気絶縁及び密封埋め込み用樹脂318又はその他適切な材料を、各第1接触パッド310及びそこまでの接続部の上に配置して、環境条件から変換器アセンブリ304を密封することができる。
【0026】
非導電性接着剤からなる層又はプライ320は、この非導電層320とポリイミドフィルム306の間に封入された導電性トレース308により、ポリイミドフィルム306に取り付けられる。前述のものと同様に、非導電層320は、圧電ディスク又は変換器322の信号伝送面324aが、非導電性接着層320とほぼ平坦な又は面状の表面を形成することにより、変換器アセンブリ304を対象物302に取り付けたときに空隙又は段差が形成されることを防ぐように、ポリイミドフィルム306に平坦な電気機械的変換器322又は圧延変換器、センサ、又はディスクを装着できるように構成することができる。これにより、変換器322と対象物302の間に、音響波又は応力波に良好な機械的又は音響的連成が提供される。任意の隔離層330が存在する場合、構造に対する変換器のインターフェース表面は324bである。
【0027】
変換器アセンブリ304は、非導電性接着層320を介して第2接触パッド312の各々をアクチュエータ又はセンサディスク322に接続する一対の導電フィルム又はパッチ328も含むことができる。導電フィルム又はパッチ328は、図1Aの導電フィルム又はパッチ116と類似又は同一のものとすることができる。
【0028】
変換器アセンブリ設置用接着剤326を使用して、各変換器アセンブリ304を対象物302に取り付けることができる。本発明の一実施形態によれば、変換器アセンブリ304は、追加の層又はコンポーネントを何ら必要とすることなく対象物302に取り付けることができ、これにより、ヘルスモニタリングされる対象物302に取り付けたときにほぼ平坦な結合表面324a(任意の隔離層330が存在する場合は324b)を有する凹凸の無い構造が得られ、よって破損を招きうる変換器アセンブリ304への偶発激な衝撃が実質的に最小化され、構造302との確実な電気的遮蔽が促され、均一な結合が保証されることにより変換器における応力の集中が軽減され、且つ空隙の無い一貫した結合が保証される。小型で最小の層又はプライの設計はまた、機械的インピーダンスの不一致を全体的に最小化することにより、構造ヘルスモニタリング又はデータ収集のための変換器304の起動及び検知の間の、電気的雑音に対する感受性を低下させ、且つ信号対雑音比を増大させる能力を向上させる。
【0029】
構造ヘルスモニタリング装置314は、超音波送受信機、データ取得装置、或いは、対象物302中の応力波、ラム波、超音波信号、又はその他非破壊検査(NDE)の種類の信号又は波の送受信及び分析を行うことにより異常、故障又は破損を検出してその個所を特定する同様のデバイスとすることができる。従って、システム300は、対象物302などの構造と効率的に超音波信号を送受信する手段として機能する。構造ヘルスモニタリング装置314又はデータ取得装置は、変動する電圧の形態で特定の周波数コンテントにより信号バーストをパルス送出することができる。電圧は、変換器322又はセンサに繋がる導電トレース308を含む有線接続により送信することができる。電圧は、圧縮モードにおいて変換器322の圧電コンポーネントをひずませる。このような機械的なひずみは、対象物302に局所的に伝播する全方向モードの応力波による対象物302の特定を可能にする。変換器304に類似の、近く又は隣の変換器は機械的応力波を受け取り、逆圧電効果により、電圧が生成されて変換器アセンブリ304によりモニタリングされる。
【0030】
総括すると、本発明は、航空機又はその他構造のような対象物の構造健全性をモニタリングするための、低コストで、作製が容易な変換器アセンブリを提供する。コストが低いことにより、構造ヘルスモニタリングされる航空機の戦略的位置に、このような変換器アセンブリを複数個配置することができる。変換器は小さく、有意な重量を加えることはなく、上述のように容易に設置することができ、更には簡単に取り外す又は取り替えることができる。本明細書に記載の変換器アセンブリは、温度、湿度、衝撃による破損、化学物質などの環境条件に対して大きな耐性を有する。本変換器アセンブリは、モニタリングされる構造から電気的に遮蔽することができるが、遮蔽されない実施形態も可能である。
【0031】
本明細書に使用される用語法は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。ここで使用される単数形の名詞は、特に断らない限り、同じ名詞の複数形を含むことを意図している。本明細書において使用される「備える」及び/又はその文法的変化形、並びに「含む」及び/又はその文法的変化形は、記載の特徴、整数、ステップ、操作、要素及び/又はコンポーネントの存在を明記するものであるが、一又は複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素及び/又はコンポーネント、及び/又はそれらの組の存在又は追加を除外するものではない。
【0032】
上述では、特定の実施形態について説明及び記載したが、当業者であれば、同じ目的を達成するように計算されたあらゆる構成で、ここに示した特定の実施形態を置き換えることができること、並びに、本発明は他の環境において他の用途を有することを理解するであろう。本明細書は、本発明のあらゆる修正又は変形を網羅するものである。請求の範囲の記載内容は、本発明の範囲を、本明細書に記載の特定の実施形態に制限することを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体からなる第1の層(102)、
第1誘電層(102)に隣接する一対の導電トレース(104)であって、各々が第1接触パッド(106、310)と第2接触パッド(108、312)とを含み、且つ誘電体からなる第1の層(102)には、第1接触パッド(106、310)の各々を露出させるための一対のバイアホール(110)が形成される、一対の導電トレース、
誘電体からなる第1の層(102)との間に配置される一対の導電トレース(104)により誘電体からなる第1の層(102)に取り付けられる、電体からなる第2の層(112)、及び
誘電体からなる第2の層(112)に取り付けられる変換器(114、322)であって、各第2接触パッド(108、312)と電気的に接続される変換器
を備える変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項2】
変換器(114、322)によってモニタリングされる構造(202)を遮蔽するために、変換器(114、322)の表面の、誘電体からなる第2の層(112)とは反対側に取り付けられる、非導体材料からなる別の層(330)を更に備える、請求項1に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項3】
非導体材料からなる別の層(330)が、厚さ約4ミル以下の繊維強化樹脂を含む、請求項2に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項4】
誘電体からなる第1の層(102)が、厚さ約7.5ミル以下のポリイミドフィルムからなる、請求項1に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項5】
誘電材料からなる第2の層(112)が、導電トレース(104)を封入し、且つ誘電体からなる第1の層(102)に変換器(114、322)を取り付けるための、非導電性の接着剤からなる層を含み、第2接触パッド(108、312)の各々が、導電性接着フィルム(116)により、非導電性接着剤からなる層を介して変換器(114、322)に電気的に接続する、請求項1に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項6】
変換器(114、322)が信号伝送面(324)を含み、変換器(114、322)の信号伝送面(324)が非導電性接着剤層(320)と実質的に平坦な表面を形成することにより、変換器アセンブリ(114、322)を構造ヘルスモニタリングの対象物(302)に取り付けたときに空隙の生成が防止され且つ均一な結合線が生成されるように、非導電性接着剤からなる層が、変換器(114、322)を誘電体からなる第1の層(102)に取り付けるように構成されている、請求項5に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項7】
誘電体からなる第1の層(102)、一対の導電トレース(104)、非導電性接着剤からなる層(330)、導電接着フィルム(116)及び変換器(114、322)が互いに対して位置決めされている変換器アセンブリ(100、202、304)であって、所定の温度及び所定の真空圧の一つで又は所定の真空圧及び所定のオートクレーブ圧で硬化される結果、エアポケット及び樹脂過多部を実質的に持たない、請求項6に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項8】
非導電性接着剤からなる層(320)の厚さが約4ミル以下である、請求項5に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項9】
変換器(114、322)が、平坦な電気機械的変換器を含む、請求項1に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項10】
変換器(114、322)が、厚さ約10ミル以下のセラミック製圧電超音波変換器ディスクを含む、請求項9に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項11】
変換器アセンブリ(100、202、304)が、構造ヘルスモニタリングの対象物(202)に設置用接着剤により取り付け可能であり、導電トレース(104)の第1接触パッド(106、310)が、変換器アセンブリ(100、202、304)が追加の材料層を何も含まない状態で且つ変換器アセンブリ(100、202、304)と対象物(302)の間に実質的に空隙を生じさせずに、構造ヘルスモニタリング装置(314)に接続可能である、請求項1に記載の変換器アセンブリ(100、202、304)。
【請求項12】
変換器アセンブリ(100、202、304)の作製方法であって、
誘電体からなる第1の層(102)を供給するステップ、
各々が第1接触パッド(106、310)及び第2接触パッド(108、312)を含む一対の導電トレース(104)を第1誘電層(102)の隣に配置するステップ、
誘電体からなる第1の層(102)に一対のバイアホール(110)を形成して第1接触パッド(106、310)の各々を露出させるステップ、
誘電体からなる第2の層(112)を、誘電体からなる第1の層(102)との間に配置された一対の導電トレース(104)により誘電体からなる第1の層(102)に取り付けるステップ、並びに
誘電体からなる第2の層(112)に変換器(114、322)を取り付け、各第2接触パッド(108、312)を変換器(114、322)に電気的に接続するステップ
を含む方法。
【請求項13】
所定の硬化スケジュールを使用して変換器アセンブリ(100、202、304)を硬化させ、実質的にエアポケット及び樹脂過多部の無い硬化した変換器アセンブリ(100、202、304)を生成するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
変換器アセンブリ(100、202、304)を硬化させるステップが、
オートクレーブツール(204)上に、少なくとも一層の非粘着の耐熱材料又は剥離材料(208)によりオートクレーブツール(204)から隔離して未硬化の変換器アセンブリ(100、202、304)を配置するステップ、
未硬化の変換器アセンブリ(100、202、304)の、オートクレーブツール(204)とは反対側に、温度テープ(210)を配置するステップ、
非粘着性の耐熱材料又は剥離剤からなる第1隔離シート(206)を、温度テープ(210)の上に配置するステップ、
第1隔離シート(206)上に空気抜き(214)を配置することにより、変換器アセンブリ(100、202、304)を完全に真空にするステップ、
非接着性の耐熱材料又は剥離剤からなる第2の隔離シート(212)を、空気抜き(214)の上に配置するステップ、
第2隔離シート(212)上にエアウィーブ息抜き(218)を配置するステップ、並びに
変換器アセンブリ(100、202、304)を完全に真空にするための真空バッグ(218)を配置するステップ
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
未硬化の変換器アセンブリ(100、202、304)を完全に真空にするステップ、
未硬化の変換器アセンブリ(100、202、304)に適用する硬化温度を、周囲温度から華氏約300°まで、毎分華氏約20°で上昇させるステップ、
約30分間に亘って硬化温度を華氏約300°に維持するステップ、並びに
硬化温度をほぼ周囲温度まで、毎分華氏約20°で低下させるステップ
を更に含む、請求項13に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−528566(P2010−528566A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510428(P2010−510428)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/064545
【国際公開番号】WO2008/147891
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【出願人】(509324355)
【Fターム(参考)】