説明

樹脂磁石成形体の製造方法、樹脂磁石成形体、および、着磁ヨーク

【課題】 従来の樹脂磁石材料の射出成形によるマグネットピースでは、長手方向の磁束密度を均一にすることが難しく、特に反ゲート側の磁束密度が高くなる。
【解決手段】 本発明により、溶融樹脂磁石材料を射出成形用金型にて成形した長手方向の長さが210mm以上のマグネットピース、または成形された前記マグネットピースをシャフトに接着したマグネットローラの後着磁工程において、鉄心の少なくとも一カ所以上を分割して巻き線を施し着磁ヨークとし、その着磁ヨークを使用して着磁、または脱磁を行うことにより、長手方向の磁力レベルを均一にする事が出来る。上記成形条件を満足することを特徴とするマグネットピースを使用し、マグネットローラを形成することで高品質のマグネットローラを製造することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の複写機、ファクシミリ、レーザープリンタなどに使用される樹脂磁石成形体の製造方法、樹脂磁石成形体、および、着磁ヨークに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真方式の複写機、ファクシミリ、レーザープリンタなどに使用されるマグネットローラは、複数の磁極をその表面に形成し、回転自在な円筒状のスリーブに封入され、スリーブ内周面とマグネットローラ外周面が接触しないように構成されている。
【0003】
前記マグネットローラとしては、マグネットローラ本体中央部の外径より両端部付近の外径を小さくしたものがある(特許文献1)。
【0004】
マグネットピースの長手方向両端部の幅を小さくなる形状に成形し、該マグネットピースをシャフトに複数個貼り合わせたものがある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平01−115109号公報
【特許文献2】特開平09−68866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子写真方式の複写機、ファクシミリ、レーザープリンタなどの現像装置に使用するマグネットローラ(図1)の表面磁束密度は、長手方向に出来るだけ均一であることが高画質に現像するために不可欠な性能となっており、表面磁束密度を均一にするために様々な試みがなされている。
【0006】
近年、比較的柔らかい材料、例えばエチレン−エチルアクリレート樹脂などの材料を使用した射出成形では、従来使用されていたポリアミド樹脂等にくらべ流動性が異なるため、長手方向の磁束密度が均一でなく、特に反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)の磁束密度が高くなる傾向がある。従って、マグネットローラの表面磁束密度を均一に仕上げるのが難しく、成形後の再着磁の際に手間がかかり苦労することが多く、コストアップにつながっていた。
【0007】
また、高磁力への要望も多く、含有する磁性粉に等方性希土類、また異方性希土類などを配合する場合も多い。そのため磁場配向には特別な措置が必要で、特に異方性希土類は、配向磁場に対する感度が高く射出成形での成形条件では長手方向に磁場を均一に仕上げることが難しい。
【0008】
特許文献1、2には、長手方向の磁場を均一に仕上げる方策が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、金型の成形空間部分の両端部にテーパ加工をする必要があり、金型加工が大変複雑になり、高価な金型になるとともにメンテナンスも難しくなる場合がある。
また、特許文献2では、金型の成形空間部分の両端部に突起を設ける必要があり、金型加工が大変複雑になり、高価な金型になるとともにメンテナンスも難しくなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記のごとき問題点を改善し、表面磁束密度の均一なマグネットローラを製造するためになされたものである。
【0010】
(1)本発明の第1は、
着磁ヨークの長手方向において、2以上の異なる磁束密度を発生する能力を有する着磁ヨーク、
である。
【0011】
(2)本発明の第2は、
着磁ヨークの長手方向において、磁束密度可変部位を2以上有することを特徴とする、(1)記載の着磁ヨーク、
である。
【0012】
(3)本発明の第3は、
着磁ヨークの着磁面以外の部位において1以上のスリットを有し、
かつ、
スリットに隣接して隣り合う2つの磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1つ以上有ることを特徴とする、
(1)〜(2)のいずれかに記載の着磁ヨーク、
である。
【0013】
(4)本発明の第4は、
着磁ヨークの着磁面以外の部位において2以上のブロック状磁束密度可変部位を組み合わせたものである着磁ヨークであって、
かつ、
隣り合う2つのブロック状磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1以上有ることを特徴とする、
(1)〜(3)のいずれかに記載の着磁ヨーク、
である。
【0014】
(5)本発明の第5は、
樹脂バインダーと磁性粉とを含む樹脂磁石組成物を、
成形と同時に配向着磁することを特徴とする樹脂磁石成形体の製造方法であって、
成形後の樹脂磁石成形体に対して、
(1)〜(4)のいずれかに記載の着磁ヨークを用いて、さらに着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とする、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0015】
(6)本発明の第6は、
前記の樹脂磁石成形体が、マグネットローラを構成するマグネットピースであることを特徴とする、(5)に記載の、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0016】
(7)本発明の第7は、
前記の樹脂磁石成形体が、マグネットローラであることを特徴とする、(5)に記載の、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0017】
(8)本発明の第8は、
磁性粉が、交換スプリング磁性粉を含むことを特徴とする、(5)〜(7)のいずれかに記載の、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0018】
(9)本発明の第9は、
(5)〜(8)のいずれかに記載の製造方法によって得られうることを特徴とする、長手方向の長さが210mm以上であって、最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mT以下である樹脂成形体、
である。
【0019】
(10)本発明の第10は、
溶融樹脂磁石材料を射出成形用金型にて成形した長手方向の長さが210mm以上のマグネットピースの後着磁工程において、鉄心の少なくとも一カ所以上を分割して巻き線を施した着磁ヨークを使用して着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とするマグネットピースの製造方法、
である。
【0020】
(11)本発明の第11は、
マグネットピースの反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)に対応する部分とマグネットピースのゲート側に対応する部分とで、着磁ヨークの巻き線のターン数を変えたことを特徴とする(10)記載のマグネットピースの製造方法、
である。
【0021】
(12)本発明の第12は、
溶融樹脂磁石材料を射出成形用金型にて成形された長手方向の長さが210mm以上のマグネットピースをシャフトに接着したマグネットローラの後着磁工程において、鉄心の少なくとも一カ所以上を分割して巻き線を施した着磁ヨークを使用して着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とするマグネットローラの製造方法、
である。
【0022】
(13)本発明の第13は、
マグネットピースの反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)に対応する部分とマグネットピースのゲート側に対応する部分とで、着磁ヨークの巻き線のターン数を変えたことを特徴とする(12)記載のマグネットローラの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の製造方法により、表面磁束密度が長手方向に均一な品質の良いマグネットピースを得ることが出来、該マグネットピースを貼り合わせて成形したマグネットローラは、いわゆる白抜けや濃度ムラのない高画質な画像を得ることが出来る。
【0024】
本発明の製造方法により、反ゲート側の表面磁束密度の盛り上がりが矯正でき、表面磁束密度が長手方向に均一な品質の良いマグネットピースを得ることが出来、該マグネットピースを貼り合わせて成形したマグネットローラは、いわゆる白抜けや濃度ムラのない高画質な画像を得ることが出来る。
【0025】
本発明の着磁ヨークにより、表面磁束密度が長手方向に均一な樹脂磁石成形体を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明においては、希土類磁粉やフェライト磁粉を例えば熱可塑性樹脂バインダーに分散混合させ、ペレット状にした混合樹脂を金型内に射出成形機により溶融射出を行い、その際、電磁石または金型内に配置された永久磁石により着磁配向を行った後、成形機から成形品を取り出す。その後、本発明の着磁ヨークにより着磁、または脱磁を行うことで長手方向に均一な磁束密度を有する高品質なマグネットローラ形成用のマグネットピースを得ることが出来る。(図2)。
【0027】
以下、詳細について説明する。
【0028】
(1)本発明の第1は、
着磁ヨークの長手方向において、2以上の異なる磁束密度を発生する能力を有する着磁ヨーク、
である。
【0029】
(2)本発明の第2は、
着磁ヨークの長手方向において、磁束密度可変部位を2以上有することを特徴とする、(1)記載の着磁ヨーク、
である。
【0030】
なお、「着磁ヨークの長手方向において、2以上の異なる磁束密度を発生する能力を有する着磁ヨーク」について、説明する。
【0031】
1つの態様では、「着磁ヨークの長手方向において、2以上の異なる磁束密度を発生する能力を有する着磁ヨーク」とは、
「着磁ヨークの長手方向において、磁束密度可変部位を2以上有することを特徴とする、磁ヨーク」である。
【0032】
この着磁ヨークは、
図3で説明すると、長手方向の2以上の部位
(図3(a)の場合は(i)、(ii)、(iii)で示される長手方向の3個の部位、
図3(c)の場合は(i)、(ii)で示される長手方向の2個の部位)
で、着磁ヨーク表面の発生磁場を変化させることが可能な着磁ヨークである。
【0033】
(2)本発明の第2は、
前記の、着磁ヨーク表面の発生磁場を長手方向の2以上の部位で変化させることが可能な着磁ヨークが、
磁束密度可変部位を長手方向に2以上有する着磁ヨークであることを特徴とする、(1)記載の樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0034】
なお、「磁束密度可変部位を長手方向に2以上有する着磁ヨーク」とは、
図3で説明すると、長手方向の2以上の部位
(図3(a)の場合は(i)、(ii)、(iii)で示される長手方向の3個の部位、
図3(c)の場合は(i)、(ii)で示される長手方向の2個の部位)
で、着磁ヨーク表面の発生磁場を変化させることが可能な着磁ヨークである。

着磁ヨークに使用する鉄心は、少なくとも長手方向に一カ所以上分割を行う。たとえば着磁ヨークにスリットなどを入れ、このスリット間にターン数を変えて巻き線を施すことにより、着磁ヨーク表面の発生磁場を変化させることを最大の特徴とする。(図3)の(a)〜(d)。
【0035】
また、スリットでなくても分割したブロックを組み合わせてもターン数を変えて巻き線を施すことにより同様の効果を得ることが出来る。(図3)の(d)
(3)本発明の第3は、
着磁ヨークの着磁面以外の部位において1以上のスリットを有し、
かつ、
スリットに隣接して隣り合う2つの磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1つ以上有ることを特徴とする、
(1)〜(2)のいずれかに記載の着磁ヨーク、
である。
【0036】
「スリットに隣接して隣り合う2つの磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1つ以上有ることを特徴とする」について、図3(a)の場合を例に挙げて、説明する。
図3(a)の場合、
(i)、(ii)、(iii)で示される長手方向の3個の部位は、それぞれ、「磁束密度可変部位」である。
【0037】
磁束密度可変部位(i)の巻き数をN1とし、
磁束密度可変部位(ii)の巻き数をN2とし、
磁束密度可変部位(iii)の巻き数をN3とする。
ただし、N1、N2、N3は、図3(a)の場合、(i)、(ii)、(iii)の部分を長手方向に横切る数のことを言う。具体的に図3(a)の場合は、N1=4,N2=7,N3=11である。
この場合、
「スリットに隣接して隣り合う2つの磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1つ以上有る」とは、
「N1=N2 かつ N2≠N3」または、
「N1≠N2 かつ N2≠N3」または、
「N1≠N2 かつ N2=N3」または、の場合である。
【0038】
すなわち、「N1=N2=N3」の場合は、
「スリットに隣接して隣り合う2つの磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1つ以上有る」とは、いえない。「N1=N2=N3」の場合は、そもそも、着磁ヨークを分割する前の状態と同じであるため、「N1=N2=N3」とする意味が無い。
【0039】
繰り返すが、着磁ヨークに使用する鉄心は、少なくとも長手方向に一カ所以上分割を行う。たとえば着磁ヨークにスリットなどを入れ、このスリット間にターン数を変えて巻き線を施すことにより、着磁ヨーク表面の発生磁場を変化させることを最大の特徴とする。
【0040】
具体的に図3(a)の場合は、N1=4,N2=7,N3=11であるから、これは、「N1≠N2 かつ N2≠N3」の場合である。
【0041】
(4)本発明の第4は、
前記の、磁束密度可変部位を長手方向に2以上有する着磁ヨークが、
着磁ヨークの着磁面以外の部位において2以上のブロック状磁束密度可変部位を組み合わせたものであって、
かつ、
隣り合う2つのブロック状磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1以上有ることを特徴とする、
着磁ヨークであることを特徴とする、(2)記載の樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0042】
「隣り合う2つのブロック状磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1以上有ることを特徴とする」について、図3(d)の場合を例に挙げて、説明する。
図3(d)の場合、
(i)、(ii)、(iii)で示される長手方向の3個の部位は、それぞれ、「ブロック状磁束密度可変部位」である。
【0043】
ブロック状磁束密度可変部位(i)の巻き数をN1とし、
ブロック状磁束密度可変部位(ii)の巻き数をN2とし、
ブロック状磁束密度可変部位(iii)の巻き数をN3とする。
ただし、N1、N2、N3は、図3(d)の場合、(i)、(ii)、(iii)の部分を長手方向に横切る数のことを言う。具体的に図3(d)の場合は、N1=4,N2=6,N3=10である。
この場合、
「隣り合う2つのブロック状磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1以上有ることを特徴とする」とは、
「N1=N2 かつ N2≠N3」または、
「N1≠N2 かつ N2≠N3」または、
「N1≠N2 かつ N2=N3」または、の場合である。
【0044】
すなわち、「N1=N2=N3」の場合は、
「隣り合う2つのブロック状磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1以上有る」とは、いえない。「N1=N2=N3」の場合は、そもそも、着磁ヨークを分割する前の状態と同じであるため、「N1=N2=N3」とする意味が無い。
【0045】
繰り返すが、着磁ヨークに使用する鉄心は、少なくとも長手方向に一カ所以上分割を行う。たとえば着磁ヨークにスリットなどを入れ、このスリット間にターン数を変えて巻き線を施すことにより、着磁ヨーク表面の発生磁場を変化させることを最大の特徴とする。
【0046】
具体的に図3(d)の場合は、N1=4,N2=6,N3=10であるから、これは、「N1≠N2 かつ N2≠N3」の場合である。
【0047】
(5)本発明の第5は、
樹脂バインダーと磁性粉とを含む樹脂磁石組成物を、
成形と同時に配向着磁することを特徴とする樹脂磁石成形体の製造方法であって、
成形後の樹脂磁石成形体に対して、
(1)〜(4)のいずれかに記載の着磁ヨークを用いて、さらに着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とする、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0048】
(6)本発明の第6は、
前記の樹脂磁石成形体が、マグネットローラを構成するマグネットピースであることを特徴とする、(5)に記載の、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0049】
(7)本発明の第7は、
前記の樹脂磁石成形体が、マグネットローラであることを特徴とする、(5)に記載の、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0050】
(8)本発明の第8は、
磁性粉が、交換スプリング磁性粉を含むことを特徴とする、(5)〜(7)のいずれかに記載の、樹脂磁石成形体の製造方法、
である。
【0051】
(9)本発明の第9は、
(5)〜(8)のいずれかに記載の製造方法によって得られうることを特徴とする、長手方向の長さが210mm以上であって、最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mT以下である樹脂成形体、
である。
【0052】
(10)本発明の第10は、
溶融樹脂磁石材料を射出成形用金型にて成形した長手方向の長さが210mm以上のマグネットピースの後着磁工程において、鉄心の少なくとも一カ所以上を分割して巻き線を施した着磁ヨークを使用して着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とするマグネットピースの製造方法、
である。
【0053】
(11)本発明の第11は、
マグネットピースの反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)に対応する部分とマグネットピースのゲート側に対応する部分とで、着磁ヨークの巻き線のターン数を変えたことを特徴とする(10)記載のマグネットピースの製造方法、
である。
【0054】
(12)本発明の第12は、
溶融樹脂磁石材料を射出成形用金型にて成形された長手方向の長さが210mm以上のマグネットピースをシャフトに接着したマグネットローラの後着磁工程において、鉄心の少なくとも一カ所以上を分割して巻き線を施した着磁ヨークを使用して着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とするマグネットローラの製造方法、
である。
【0055】
(13)本発明の第13は、
マグネットピースの反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)に対応する部分とマグネットピースのゲート側に対応する部分とで、着磁ヨークの巻き線のターン数を変えたことを特徴とする(12)記載のマグネットローラの製造方法、
である。
【0056】
マグネットピースの射出成形では成形品の反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)部分の磁束密度が高くなる傾向があるため、ヨークを着磁ヨークとして使用する場合、反ゲート側部分に巻き線数を少なく巻き、ゲート側部分に多く巻いたのち、着磁を行うことにより均一な磁力パターンを得ることが出来る。(図4)の(j)―(ii)、(k)―(ii)
また反対に、脱磁用としてヨークを使用する場合は、反ゲート側部分に巻き線を多く巻き、ゲート側部分に少なく巻いて減磁を行うことで発生磁場の強さを調整し均一な磁力パターンを得ることが出来る。(図4)の(j)―(i)、(k)―(i)
ゲートの位置により、スリットの数を決め、反ゲート側部とゲート側部で巻き線のターン数に差をつけ、ヨーク表面の発生磁場を調整することで長手方向に均一な磁気特性をもつマグネットピース、またはマグネットローラを得ることが可能となる。
【0057】
ヨークの巻き線の調整方法として、図6の<1>のような磁気パターンで(e)のような調整を行うのが目的とする場合、反ゲート側部にターン数を多くし脱磁電流を流し、反ゲート側部の磁力を減磁し、長手方向に均一な磁気パターンを形成する。また、(f)のような調整を行う場合、ゲート側部にターン数を多くし着磁電流を流し、ゲート側部に強く着磁を行うことで長手方向に均一な磁気パターンを形成する。(e)のような調整を行うか、(f)のような調整を行うかは使用する磁性粉、樹脂、成型条件、磁粉の配向度などの状況に応じて適宜決定されるもので、特に制限されるものではない。
【0058】
ピース中央部付近にゲートがある場合も、長手方向の磁力は(図6)(g)(h)のようなパターン<2>となり上記と同様にヨーク調整を行う事により長手方向に均一な磁気パターンを形成することができる。
【0059】
ただし一般的には、<1>のような磁気パターンになる場合は、金型内の温度分布、樹脂の流動性変化、樹脂充填率の違いなどの理由によりゲート側部の配向度が低く、磁力が反ゲート側部よりも低くなる傾向があり、その場合、(f)よりも(e)の調整方法の方がより効果的に改良出来る場合が多い。
【0060】
マグネットピースまたはマグネットローラの表面に接するヨーク表面いわゆる着磁面と巻き線(図3)との距離は、再接近した場所で1mm以上、一番遠い場所で30mm以下が望ましい。1mm未満ではヨークの製造が困難となり、また、30mmを超えると巻き線数を変化させている効果が低下してしまう。
【0061】
巻き線のターン数とターン数の差は、着磁、または脱磁(減磁含む)されるマグネットピース、またはマグネットローラの表面磁場により適宜決定され、また、ヨーク鉄心の形状、大きさ、装置への装着スペース等の物理的制約にも左右され、状況に応じて適宜決定すれば良く、特に制限されるものではない。
【0062】
また、巻き線の径については、巻きやすさや着脱磁時の電流値の大きさからφ0.5〜2mm程度の電線が良く使用されるが、上記と同様の理由により特に制限されるものではない。
【0063】
ヨーク鉄心の幅は、着磁、または脱磁されるマグネットピース、またはマグネットローラの大きさ、要求される半値幅、磁力などにより設定され、特に制限されるものではない。マグネットピース、またはマグネットローラの大きさにもよるが、ヨークの作りやすさや要求される磁気特性から0.8〜2.5mm程度の幅の鉄心が良く使用される。
【0064】
鉄心の分割は、上記のようにスリットを設け、巻き線数、巻き線位置により、巻き線場所の発生磁場の調整を行ってもよく、また完全に分割し、別々のブロックの組み合わせにより発生磁場に変化をつけてもよい。その際は必ずマグネットピース、またはマグネットローラの表面に接する部分の鉄心と接触させなければならず、鉄心表面に磁気的な不連続を発生させないように磁気回路を形成することが大切である。
【0065】
上記スリットの分割数は少なくとも一カ所以上必要で、多くても10個程度が望ましい。望ましくは2〜5個がヨークを製作する上でも都合が良く、効果も高い。10個を超えると製作するのが困難な上にコスト高となり、効果も低下する。
【0066】
スリットの幅、または分割ブロックの組み合わせ幅は、5〜10mm程度が望ましい。5mm未満では着磁ヨークの製作が著しく困難であり、10mmを超えると長手方向に磁気的不連続が発生しやすくなってしまい、均一な磁気パターンの形成が困難となる。
【0067】
巻き線を巻く方向は全て同一方向とし、発生磁場の極性を統一しなければならない。
【0068】
巻き線は、一本の電線により直列に巻いても良いし、別々の電線で巻いても構わない。
【0069】
また通電は、一つの電源からでも良いし、別々の電線で巻いた場合複数台の電源からの通電でも構わない。
【0070】
通電時のバックヨークとして鉄製シャフトを使用することが望ましいが、使用しなくても良い(図5)。
【0071】
マグネットピースの磁化は、金型内に組み込まれた永久磁石または成形機内に設けられた電磁石により239k・A/m〜2400k・A/mの着磁磁場で成形と同時に配向着磁して成形品を磁化する。本発明は、樹脂バインダーと、磁性粉とを含む樹脂磁石組成物を、成形と同時に配向着磁することを特徴とする樹脂磁石成形体の製造方法である。
【0072】
前記マグネットピースを構成するフェライト磁性粉としては、MO・nFe23(nは自然数)に代表される化学式を持つ異方性フェライト磁性粉を用い、式中のMとしてSr、Baまたは鉛などの1種あるいは2種類以上が適宜選択して用いられる。
【0073】
また、磁性粉は、強磁性体粉末であってもよい。
【0074】
前記磁性粉は、樹脂バインダーや各種添加剤を含む組成物と混合してペレット状にされ成形される。
【0075】
前記樹脂バインダーとしては、たとえば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート樹脂(EEA)、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニルスルフィド)、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EVOH(エチレン−ビニルアルコール共重合体)、CPE(塩素化ポリエチレン)およびPVC(ポリ塩化ビニル)などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂およびポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂があげられる。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて混合して用いることも出来る。これらのうちでは、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が、コストの点から好ましいが、本発明は、特に柔らかい材料、例えばエチレン−エチルアクリレート樹脂(EEA)などのような樹脂に磁性粉を混合分散したペレットを成形材料として使用する場合に特に有効である。
【0076】
前記磁性体及び樹脂バインダー(可塑剤、滑剤、安定剤等含む)の樹脂磁石材料に占める磁性粉の含有率(重量%)は50〜95%さらには60〜90%であるのが好ましい。また、前記磁性粉の含有率(重量%)が50%未満の場合、磁性粉不足によりマグネットピースの磁気特性が低下して所望の磁力が得られにくくなり、また、その含有率(重量%)が95%を超えると、バインダー不足となりマグネットピースの成形性が損なわれやすくなる。
【0077】
樹脂バインダーは、樹脂および添加剤を含む樹脂成分であってもよい。
【0078】
高磁束密度への要求に応えるために、マグネットピースの製造に等方性希土類磁性粉と異方性フェライト磁性粉とを混合してなる磁性粉を用いることができる。前記等方性希土類磁性粉と異方性フェライト磁性粉との混合割合としては、通常、等方性希土類磁性粉が10〜90重量%(以下%と記載する)で、異方性フェライト磁性粉が90〜10%であるが、等方性希土類磁性粉が20〜80%で、異方性フェライト磁性粉が80〜20%(両者の合計は100%)であるのが、高価な等方性希土類磁性粉の含有率をより少なくすることにより、マグネットピースの低コスト化を図ることが出来る点から好ましい。等方性希土類磁性粉の含有率が前記範囲よりも少ない場合には、マグネットピースにしめる等方性希土類磁性粉の割合が少なくなりすぎるため、従来のフェライト磁石と同程度の磁力しか得ることができなくなる。等方性希土類磁性粉の含有率が前記範囲よりも多い場合には、高磁力を得る(高磁束密度を達成する)ことができるが、マグネットローラに所望される範囲を超えた磁力を有する磁極が着磁されるおそれがあると共に、マグネットローラの仕様に無駄が生じ、該マグネットローラが高価になってしまう。
【0079】
上記マグネットピースに使用される希土類磁性粉や前記の希土類磁性粉として例を挙げると、R(希土類元素)−Fe−N系合金、R−Fe−B系合金、R−Co系合金、R−Fe−Co系合金などがあげられる。これらの中でも、軟磁性相と硬磁性相とを含み両相の磁化が交換相互作用する構造を持つ交換スプリング磁性粉を用いても良い。
【0080】
前記交換スプリング磁性粉は、軟磁性相からくる低保持力を有し、かつ交換相互作用からくる高い残留磁束密度を有するので、高い磁力を得ることが出来る。また従来の希土類磁性粉に比べ耐酸化性が良好で、メッキなどの表面被覆をすることなく錆を防止できる。さらに、多量の軟磁性相が含まれるので、キュリー点が高くなり(400℃以上)使用限界温度が高く(200℃以上)残留磁化の温度依存性が小さくなる。
【0081】
前記R(希土類元素)として、好ましいものとしてSm、Nbがあげられる。この他にPr,Dy,Tbなどの1種または2種類以上を組み合わせたものを用いることが出来る。また、前記Feの一部を置換して磁気特性を高めるために、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、aU、Hg、Tl、Pb、Biなどの元素の1種または2種類以上を添加することができる。
【0082】
前記交換スプリング磁性粉としては、硬磁性相としてR−Fe−B化合物を用い、軟磁性相としてFe相またはFe−B化合物相を用いた物や、硬磁性相としてR−Fe−N系化合物相を用い、軟磁性相としてFe相を用いた物が好ましい。より具体的には、Nd−Fe−B系合金(軟磁性相:Fe−B合金、αFe)、Sm−Fe−N系合金(軟磁性相:αFe)、Nd−Fe−Co−Cu−Nb−B系合金(軟磁性相:Fe−B系合金、αFeなど)Nd−Fe−Co系合金(軟磁性相:αFeなど)などの交換スプリング磁性粉が好適であり、特に保持力(iHc)を低く、かつ残留磁束密度(Br)を大きくする観点からは、Nd4Fe8020合金(軟磁性相:Fe3B、αFe)やSm2Fe173合金(軟磁性相:αFe)の交換スプリング磁性粉が好ましい。
【0083】
ここで交換スプリング磁性について説明する。
【0084】
交換スプリング磁性とは、磁石内に多量の軟磁性相が存在し、軟磁性特性を有する結晶粒と硬磁性特性を有する結晶粒の磁化が交換相互作用で互いに結びつき、軟磁性結晶粒の磁化が反転するのを硬磁性結晶粒の磁化が妨げ、あたかも軟磁性相が存在しないかのような特性を示すものである。このように、残留磁束密度が大きく、かつ保持力が小さい軟磁性相が多量に含まれる場合、保持力が小さく、かつ高残留磁束密度の磁石が得られる。
【0085】
前記マグネットピースを成形する場合、異方性フェライト磁性粉は、磁場を印加した方向に配向着磁されるが、等方性希土類磁性粉は配向されず、着磁のみされる。
【0086】
ここでは磁性粉として異方性フェライト磁性粉単独、異方性フェライト磁性粉と等方性希土類磁性粉との混合磁性粉の場合を示したが、等方性フェライト単独、等方性希土類単独、異方性希土類単独、等方性フェライトと異方性フェライトとの混合磁性粉、異方性フェライトと異方性希土類との混合磁性粉、等方性フェライトと異方性希土類との混合磁性粉、等方性フェライトと等方性希土類との混合磁性粉、異方性希土類と等方性希土類との混合磁性粉を用いても良い。
【0087】
また、磁場配向させる方向は、単一方向でも外周面の一部から外周面以外の三辺へ磁束を拡散させるように極異方配向させても良く、必要とされる磁力、半値幅、磁気吸引力等により決定する事ができ、特に制限されるものではない。
前記のごとく、本発明により長手方向に均一な磁束密度を有する高品質なマグネットローラを提供することができる。
【0088】
また、本発明は、以下の発明も、開示するものである。
【0089】
(14)下記の1.〜7.の性質を有する、樹脂磁石成形体。
1.長手方向の長さが210mm以上の樹脂磁石成形体であって、
2.一度脱磁を行った後、
3.長手方向において磁束密度が一様である着磁ヨークを用いて着磁した後に、
4.その時点の樹脂磁石成形体の最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mTを越えて、かつ、
5.さらに脱磁を行った後、
6.その時点の樹脂磁石成形体に対して、請求項1〜4のいずれかに記載の着磁ヨークを用いて、さらに着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行った後に、
7.その時点の樹脂磁石成形体の最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mT以下である樹脂成形体。
【0090】
(15)前記樹脂磁石成形体が、マグネットピースまたはマグネットローラである、(14)記載の樹脂成形体。
【0091】
本発明の(14)のような樹脂磁石成形体や(15)のようなマグネットピースまたはマグネットローラは、そのものの過去の製造履歴には限定が無いものである。
【0092】
1.長手方向の長さが210mm以上の樹脂磁石成形体が、
上記2.の工程で、生産時の磁束密度の履歴を潜在的に保持しつつ、脱磁される。
上記3.の工程(図8に示すような、本発明の(1)〜(4)の着磁ヨークとは異なる比較例に記載の着磁ヨーク)で平均的に着磁する。上記2.で脱磁された・潜在的に持っている磁束密度が、長手方向の磁束密度分布において、さらなる改善が望ましい樹脂成形体である場合には、
4.に示すように、その時点の樹脂磁石成形体の最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mTを越える。
5.さらに脱磁を行った後、
6.その時点の樹脂磁石成形体に対して、請求項1〜4のいずれかに記載の着磁ヨークを用いて、さらに着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行った後に、
7.その時点の樹脂磁石成形体の最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mT以下である樹脂成形体、
となる。
本発明によって、
磁束密度の分布において、最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mTを越えるような物について、
最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mT以下である樹脂成形体とすることができる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例と比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0094】
(実施例1)
樹脂バインダーとしてエチレン−エチルアクリレート樹脂(日本ユニカー製DPDJ−9169)を10重量%(滑剤、可塑剤、安定剤を含む)、磁性粉として異方性ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe23:日本弁柄工業(株)製NF110)を90重量%とし、これらを混合し溶融混練し、ペレット状に成形した物を配向用磁石搭載の射出成形機により図2に示すようなマグネットピース(扇形状、長さ330mm)を製造した。金型の温度は60℃とした。
【0095】
型開きにより成形品を取り出しマグネットピースを得た。その後マグネットピースを1000μFのコンデンサー容量を持つ着磁電源で約1500Vの電圧をかけて、着磁ヨークにより着磁を行った。
【0096】
使用した着磁ヨークは、図3(b)のタイプで、巻き線径φ1.2、鉄心材質S25C、鉄心の幅2mm、巻き線のターン数を図3(b)(i)部8ターン、(ii)部4ターン、(iii)部2ターン、スリット幅7mm、着磁面からの距離を一番近い部分で1mm、一番遠い部分で9mmとした。
【0097】
同様に、極性を各々変えて他4極分所望の磁束密度に着磁を行い、シアノアクリレート系瞬間接着剤(スリーボンド社製1782)をマグネットピースの長手方向に均一に適量を塗布してそれぞれ5極のマグネットピースを金属製(SUM22)のシャフトに接着固定し、図5のような5極のマグネットローラを得た。マグネットローラの外径はφ13.6、シャフト径はφ6とした。
【0098】
マグネットローラ形成後、プローブ(磁束密度センサー)をマグネットローラ中心から8mm離れたところに設置し、マグネットローラ表面の磁束密度をマグネットローラの両端部を支持しマグネットローラを回転させながら測定し、当該マグネットローラの最重要極であるS1極のピーク位置を見出し、該ピーク位置で長手方向にマグネット部分の端部から端部まで該プローブをスキャンさせ、長手方向の磁束密度のバラツキ(最大値と最小値の差)を測定した。(n=20)
結果を表1に示す。また、着磁処理前と処理後の磁気パターンを図7に示す。
表1に示した長手方向磁束密度差は、マグネットピースの長手方向の両端部10mmを除く範囲において、最大磁束密度と最小磁束密度との差とした。
【0099】
【表1】

通常A3サイズ(A3とは、210mm×297mmの大きさ)では、上記最大磁束密度と最小磁束密度との差が4.0mT以下となれば良好となる。
なお、表1では、評価結果を示すために、
4.0mTを越えるものを×とし、
4.0mT以下〜3.0mT以上を○とし、
3.0mT未満を◎とした。
【0100】
(実施例2)
使用した着磁ヨークは、図3(c)のタイプで、巻き線径φ2.0、鉄心材質S25C、鉄心の幅2mm、巻き線のターン数を図3(c)(i)部3ターン、(ii)部4ターン、スリット幅7mm、着磁面からの距離を一番近い部分で1mm、一番遠い部分で3mmとした他は実施例1と同様に実施した。
結果を表1に示す。
【0101】
(実施例3)
樹脂バインダーとしてナイロン12樹脂(宇部興産製P3012)を10重量%(滑剤、可塑剤、安定剤を含む)、磁性粉として異方性ストロンチウムフェライト(SrO・6Fe:日本弁柄工業(株)製NF110)を90重量%とし、これらを混合し溶融混練し、ペレット状に成形した物を配向用磁石搭載の射出成形機により図2に示すようなマグネットピース(扇形状、長さ330mm)を製造した。金型の温度は80℃とした。また、型開きにより成形品を取り出しマグネットピースを得た。その後マグネットピースを1000μFのコンデンサー容量を持つ着磁電源で約1500Vの電圧をかけて、着磁ヨークにより着磁を行った。
【0102】
使用した着磁ヨークは、図3(b)のタイプで、巻き線径φ1.2、鉄心材質S25C、鉄心の幅2mm、巻き線のターン数を図3(b)(i)部2ターン、(ii)部4ターン、(iii)部8ターン、スリット幅7mm、着磁面からの距離を一番近い部分で1mm、一番遠い部分で9mmとした。
【0103】
同様に、極性を各々変えて他4極分所望の磁束密度に着磁を行い、シアノアクリレート系瞬間接着剤(スリーボンド社製1782)をマグネットピースの長手方向に均一に適量を塗布してそれぞれ5極のマグネットピースを金属製(SUM22)のシャフトに接着固定し、図5のような5極のマグネットローラを得た。マグネットローラの外径はφ13.6、シャフト径はφ6とした。
【0104】
マグネットローラ形成後、プローブ(磁束密度センサー)をマグネットローラ中心から8mm離れたところに設置し、マグネットローラ表面の磁束密度をマグネットローラの両端部を支持しマグネットローラを回転させながら測定し、当該マグネットローラの最重要極であるS1極のピーク位置を見出し、該ピーク位置で長手方向にマグネット部分の端部から端部まで該プローブをスキャンさせ、長手方向の磁束密度のバラツキ(最大値と最小値の差)を測定した。(n=20)
結果を表1に示す。
【0105】
(実施例4)
着磁ヨークを脱磁ヨークとして使用した。
【0106】
型開きにより成形品を取り出しマグネットピースを得た後、マグネットピースを1000μFのコンデンサー容量を持つ着磁電源で約600Vの電圧にてマグネットピース表面の極性と逆の磁場をかけて、着磁ヨークにより減磁を行った。
使用した着磁ヨークは、図3(b)のタイプで、巻き線径φ1.2、鉄心材質S25C、鉄心の幅2mm、巻き線のターン数を図3(b)(i)部2ターン、(ii)部4ターン、(iii)部8ターン、スリット幅7mm、着磁面からの距離を一番近い部分で1mm、一番遠い部分で9mmとした。
【0107】
以上の他は実施例1と同じに実施した。また、着磁処理前と処理後の磁気パターンを図7に示す。
【0108】
(比較例1)
スリットのない分割していない鉄心を用いた着磁ヨーク(図8)を使用した。巻き線径φ1.2、鉄心材質S25C、鉄心の幅2mm、巻き線のターン数を8ターン、着磁面からの距離を一番近い部分で1mmとした他は実施例1と同様に実施した。
結果を表1に示す。
【0109】
(比較例2)
スリットのない分割していない鉄心を用いた着磁ヨーク(図8)を使用した。巻き線径φ2.0、鉄心材質S25C、鉄心の幅2mm、巻き線のターン数を4ターン、着磁面からの距離を一番近い部分で1mmとした他は実施例1と同様に実施した。
結果を表1に示す。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明のマグネットローラ形状例の全体図
【図2】本発明のマグネットピース形状例
【図3】鉄心のスリットと鉄心への巻き線の巻き方例
【図4】ゲートの位置と表面磁場とそれに対応する巻き線のイメージ図例
【図5】着磁ヨークとマグネットピースとバックヨークの位置関係の例
【図6】長手方向の磁気パターン例と着磁および脱磁後の磁力補正概念図
【図7】実施例1と実施例4の処理前と処理後の磁気パターン図
【図8】比較例の着磁ヨーク例
【符号の説明】
【0111】
1 シャフト
2 マグネットローラ
3 マグネットピース
4 鉄心(ヨーク)
5 巻き線
6 スリット
7 着磁面
8 バックヨーク(シャフト)
a:巻き線例1
b:巻き線例2
c:巻き線例3
d:巻き線を施したブロックの組み合わせ例
e:長手方向の磁気パターン例と着磁および脱磁後の磁力補正例1
f;長手方向の磁気パターン例と着磁および脱磁後の磁力補正例2
g:長手方向の磁気パターン例と着磁および脱磁後の磁力補正例3
h:長手方向の磁気パターン例と着磁および脱磁後の磁力補正例4
j:ゲート位置が中央付近での磁力パターンと対応するヨーク、巻き線パターン例
(i)脱磁用巻き線例
(ii)着磁用巻き線例
k:ゲート位置が端部の磁力パターンと対応するヨーク、巻き線パターン例
(i)脱磁用巻き線例
(ii)着磁用巻き線例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着磁ヨークの長手方向において、2以上の異なる磁束密度を発生する能力を有する着磁ヨーク。
【請求項2】
着磁ヨークの長手方向において、磁束密度可変部位を2以上有することを特徴とする、請求項1記載の着磁ヨーク。
【請求項3】
着磁ヨークの着磁面以外の部位において1以上のスリットを有し、
かつ、
スリットに隣接して隣り合う2つの磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1つ以上有ることを特徴とする、
請求項1〜2のいずれかに記載の着磁ヨーク。
【請求項4】
着磁ヨークの着磁面以外の部位において2以上のブロック状磁束密度可変部位を組み合わせたものである着磁ヨークであって、
かつ、
隣り合う2つのブロック状磁束密度可変部位における巻き線の巻き数において、それぞれの巻き数が異なる部分が少なくとも1以上有ることを特徴とする、
請求項1〜3のいずれかに記載の着磁ヨーク。
【請求項5】
樹脂バインダーと磁性粉とを含む樹脂磁石組成物を、
成形と同時に配向着磁することを特徴とする樹脂磁石成形体の製造方法であって、
成形後の樹脂磁石成形体に対して、
請求項1〜4のいずれかに記載の着磁ヨークを用いて、さらに着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とする、樹脂磁石成形体の製造方法。
【請求項6】
前記の樹脂磁石成形体が、マグネットローラを構成するマグネットピースであることを特徴とする、請求項5に記載の、樹脂磁石成形体の製造方法。
【請求項7】
前記の樹脂磁石成形体が、マグネットローラであることを特徴とする、請求項5に記載の、樹脂磁石成形体の製造方法。
【請求項8】
磁性粉が、交換スプリング磁性粉を含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の、樹脂磁石成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の製造方法によって得られうることを特徴とする、長手方向の長さが210mm以上であって、最大磁束密度と最小磁束密度との差が6.0mT以下である樹脂成形体。
【請求項10】
溶融樹脂磁石材料を射出成形用金型にて成形した長手方向の長さが210mm以上のマグネットピースの後着磁工程において、鉄心の少なくとも一カ所以上を分割して巻き線を施した着磁ヨークを使用して着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とするマグネットピースの製造方法。
【請求項11】
マグネットピースの反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)に対応する部分とマグネットピースのゲート側に対応する部分とで、着磁ヨークの巻き線のターン数を変えたことを特徴とする請求項10記載のマグネットピースの製造方法。
【請求項12】
溶融樹脂磁石材料を射出成形用金型にて成形された長手方向の長さが210mm以上のマグネットピースをシャフトに接着したマグネットローラの後着磁工程において、鉄心の少なくとも一カ所以上を分割して巻き線を施した着磁ヨークを使用して着磁、脱磁、減磁から選ばれる1以上を行うことを特徴とするマグネットローラの製造方法。
【請求項13】
マグネットピースの反ゲート側(製造時のゲート側に位置する端面とは反対側)に対応する部分とマグネットピースのゲート側に対応する部分とで、着磁ヨークの巻き線のターン数を変えたことを特徴とする請求項12記載のマグネットローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−27220(P2007−27220A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203836(P2005−203836)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(596087214)栃木カネカ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】