説明

樹脂組成物の製造方法

【課題】樹脂中に無機多孔体を配合した樹脂組成物であって、さらに熱膨張係数(CTE)の小さい樹脂組成物、特には熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを混合して第1混合物とする第1混合工程と、該第1混合物と疎水化処理されたメソポーラスシリカとを混合して第2混合物とする第2混合工程と、該第2混合物を硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱膨張係数(以下「CTE」という)の小さい樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂は耐熱性や機械的特性に優れており、電子回路の基板や電子部品のマウント材料等に用いられている。しかし、電子部品は発熱等により熱負荷がかかることが多いのに対し、熱硬化性樹脂のCTEは電子素子や金属に比べて大きいことから、CTEの差によって回路が断線したり、電子素子が破壊したりするおそれがある。このため、熱硬化性樹脂のCTEをできるだけ低くしたいという要請がある。
【0003】
こうした要請に応えるべく、熱硬化性樹脂中に無機多孔体を配合した樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−138095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、樹脂に対する低CETの要求は益々厳しくなっており、上記特許文献1に記載されている樹脂組成物よりもさらにCTEの値の小さい樹脂組成物が求められていた。本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、樹脂中に無機多孔体を配合した樹脂組成物であって、さらにCTEの小さい樹脂組成物の製造方法を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来、樹脂中に無機多孔体を配合した樹脂組成物の製造方法としては、樹脂のプレポリマーと硬化剤と疎水化処理されたメソポーラスシリカとを全て一緒にして混合してから、硬化させている(例えば特許文献1の実施例1〜3)。これに対して、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを前もって混合しておき、その後に疎水化処理されたメソポーラスシリカを添加するということは、CTEの低下の観点からは良くないことであると信じられていた。その理由は、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを前もって混合しておいた場合、混合と同時に樹脂の硬化剤による硬化が始まって分子量が大きくなり、メソポーラスシリカが有している細孔内に樹脂が侵入し困難となると考えられていたからである。
【0007】
ところが、本発明者らの試験結果によれば、樹脂のプレポリマーと疎水化処理されたメソポーラスシリカと混合した後、硬化剤を加えてさらに混合して硬化させた場合よりも、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを前もって混合しておき、その後に疎水化処理されたメソポーラスシリカを添加し混合した方が、CTEが低くなり、ほとんどシリカのCTEに匹敵する程度になるという驚くべき結果となった。本発明は、この従来の技術常識に反する結果に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明の樹脂組成物の製造方法は、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを混合して第1混合物とする第1混合工程と、該第1混合物と疎水化処理されたメソポーラスシリカとを混合して第2混合物とする第2混合工程と、該第2混合物を硬化させる硬化工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂の中ではエポキシ樹脂が好ましい。
【0010】
また、第1混合工程において粘度が大きくなりすぎる場合には、溶剤を加えて粘度を小さくすることも好ましい。こうであれば、第1混合工程における混合が均一になり、第2混合工程において、メソポーラスシリカの細孔内に熱硬化性樹脂を侵入し易くなる。
【0011】
また、メソポーラスシリカの平均粒径は0.2〜1.0μmであると、より好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】メソポーラスシリカの構造を示す模式図である。
【図2】実施例1-6の成形品の断面TEM写真である。
【図3】実施例1-6の成形品の断面のEPMAによる各元素のマッピング写真である。
【図4】実施例1-4、比較例2及び比較例3について温度と熱膨張係数の関係についてのグラフである。
【図5】実施例1-1〜1-6の温度と熱膨張係数の関係についてのグラフである。
【図6】実施例1-1〜1-6におけるポア外のポリマーの量とガラス転位温度以上の温度でのCTE値の関係についてのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法によって得られる樹脂組成物は、マトリックスとなる樹脂の中に疎水化処理されたメソポーラスシリカが分散されている。樹脂としては、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0014】
<原 料>
・熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂の種類については、熱硬化性樹脂のプレポリマーを硬化剤によって硬化させるものであれば、特に限定はない。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、シリコーン(ケイ素)樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、好適に用いられるのは、エポキシ系樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂等である。これらの熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
上記エポキシ系樹脂としては、従来公知のエポキシ系樹脂を用いることができ、例えば
、芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリ
シジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルアクリル
型エポキシ樹脂、ポリエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ系樹脂
は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、エポキシ系樹脂とし
て、これらのエポキシ系樹脂の誘導体又は水添加物が用いられてもよい。
【0016】
より具体的に、上記芳香族エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキ
シ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ビスフェノール型エポキシ系樹脂と
しては、例えば、ビスフェノールA 型エポキシ樹脂、ビスフェノールF 型エポキシ樹脂、
ビスフェノールA D 型エポキシ樹脂、ビスフェノールS 型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、ノボラック型エポキシ系樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ク
レゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、ナフタレン、ビフェニル等の
芳香族環を主鎖中に有するエポキシ系樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等も挙
げられる。さらに、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族化合物か
らなるエポキシ系樹脂等も挙げられる。
【0017】
上記脂環族エポキシ系樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4− エポキシ−2−メチルシ
クロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレートビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル等が挙げられる。脂環族エポキシ系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、商品名「EHPE−3150」(軟化温度71℃、ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。
【0018】
上記グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂としては、例えば、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、炭素数が2〜9(好ましくは2〜4)のアルキレン基を有するポリオキシアル
キレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等を含む長鎖ポリオールのポ
リグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0019】
上記グリシジルエステル型エポキシ系樹脂としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、サリチル酸のグリシジルエーテル−グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル等が挙げられる。
【0020】
上記グリシジルアミン型エポキシ系樹脂としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、環状アルキレン尿素のN,N’−ジグリシジル誘導体、p− アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体、m−アミノフェノールのN,N,O−トリグリシジル誘導体等が挙げられる。
【0021】
上記グリシジルアクリル型エポキシ系樹脂としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートと、エチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル等のラジカル重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。
【0022】
上記ポリエステル型エポキシ系樹脂としては、例えば、1分子当たり1個以上、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0023】
さらに、エポキシ系樹脂としては、例えば、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ジシクロペンタジエン等の共役ジエン化合物を主体とする重合体又はその部分水添物の重合体における不飽和炭素の二重結合をエポキシ化した化合物が挙げられる。
【0024】
またさらに、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック又はその部分水添物の重合体ブロックとを同一分子内にもつブロック共重合体において、共役ジエン化合物が有する不飽和炭素の二重結合部分をエポキシ化した化合物等が挙げられる。このような化合物としては、例えば、エポキシ化SBS等が挙げられる。
【0025】
また、この他のエポキシ系樹脂としては、例えば、上記のエポキシ系樹脂の構造中にウレタン結合やポリカプロラクトン結合を導入した、ウレタン変成エポキシ樹脂やポリカプロラクトン変成エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
さらにまた、これらのエポキシ樹脂以外に、少なくとも1つのオキシラン環を有する樹脂又はオリゴマーが添加されたものもエポキシ系樹脂のひとつである。
【0027】
上述したエポキシ系樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては、従来公知のエポキシ
系樹脂用の硬化剤を用いることができ、例えば、アミン化合物、アミン化合物から合成さ
れる化合物、3 級アミン化合物、イミダゾール化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合
物、酸無水物、フェノール化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開
始剤、ジシアンジアミド及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で
用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
エポキシ系樹脂の硬化剤に用いられるアミン化合物としては、例えば、鎖状脂肪族アミ
ン化合物、環状脂肪族アミン、芳香族アミン等が挙げられる。
【0029】
これらのなかで、鎖状脂肪族アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエ
チレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリオキシプ
ロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン等が挙げられる。
【0030】
また、環状脂肪族アミン化合物としては、例えば、メンセンジアミン、イソフォロンジアミン、ビス(4−アミノ3−メチルシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N−アミノエチル(3−アミノプロピル)2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。
【0031】
さらに、芳香族アミン化合物としては、m − キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル) エチルアミン、m − フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、α,α−ビス(4−アミノフェニル)−p− ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0032】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるアミン化合物から合成される化合物としては、例えば、ポリアミノアミド化合物、ポリアミノイミド化合物、ケチミン化合物等が挙げら
れる。
【0033】
これらのなかで、ポリアミノアミド化合物としては、例えば、上記のアミン化合物とカルボン酸とから合成される化合物等が挙げられる。カルボン酸としては、例えば、コハク
酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカ二酸、イソフタル酸、テレフタル酸
、ジヒドロイソフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙
げられる。
【0034】
また、ポリアミノイミド化合物としては、例えば、上記のアミン化合物とマレイミド化
合物とから合成される化合物等が挙げられる。マレイミド化合物としては、例えば、ジア
ミノジフェニルメタンビスマレイミド等が挙げられる。
【0035】
さらに、ケチミン化合物としては、例えば、上記のアミン化合物とケトン化合物とから
合成される化合物等が挙げられる。
【0036】
またさらに、アミン化合物から合成される化合物としては、例えば、上記のアミン化合
物と、エポキシ化合物、尿素化合物、チオ尿素化合物、アルデヒド化合物、フェノール化
合物、アクリル化合物等の化合物とから合成される化合物が挙げられる。
【0037】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである3 級アミン化合物としては、例えば、N,N−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル) フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1, 8−ジアザビスシクロ(5,4,0) ウンデセン−1等が挙げられる。
【0038】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるイミダゾール化合物としては、例えば、2−エチル−4− メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1− ベンジル−2−メチルイミダゾール、1− ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1− シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2− フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2− ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−〔2´− メチルイミダゾリル−(1´)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2´−ウンデシルイミダゾリル−(1´)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2´−エチル−4´− メチルイミダゾリル−(1´)〕−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2´−メチルイミダゾリル−(1´)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、2,3− ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール等が挙げられる。イミダゾール化合物は硬化剤としてだけではなく、他の硬化剤
と併用して硬化促進剤としても使用できる。
【0039】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるヒドラジド化合物としては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5− イソプロピルヒダントイン、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
【0040】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるメラミン化合物としては、例えば、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0041】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである酸無水物としては、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテート、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ナジック酸無水物、メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、5−(2,5− ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸− 無水マレイン酸付加物、ドデセニル無水コハク酸、ポリアゼライン酸無水物、ポリドデカン二酸無水物、クロレンド酸無水物等が挙げられる。
【0042】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつであるフェノール化合物としては、例えば、フェノールノボラック系樹脂、o−クレゾールノボラック系樹脂、p−クレゾールノボラック系樹脂、t−ブチルフェノールノボラック系樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール系樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0043】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである熱潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、
イオン性熱潜在性カチオン重合触媒、非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒等が挙げられ
る。
【0044】
これらのなかで、イオン性熱潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、対アニオンとして6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を用いたベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0045】
また、非イオン性熱潜在性カチオン重合触媒としては、例えば、N − ベンジルフタルイミド、芳香族スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0046】
エポキシ系樹脂の硬化剤のひとつである光潜在性カチオン重合開始剤としては、例えば
、イオン性光潜在性カチオン重合開始剤、非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤等が挙
げられる。
【0047】
これらのなかで、イオン性光潜在性カチオン重合開始剤としては、例えば、オニウム塩、有機金属錯体等が挙げられる。オニウム塩としては、対アニオンとして6フッ化アンチモン、6フッ化リン、4フッ化ホウ素等を用いた芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等が挙げられる。有機金属錯体としては、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリルシラノール− アルミニウム錯体等が挙げられる。
【0048】
非イオン性光潜在性カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N − ヒドロキシイミドスルホナート等が挙げられる。
【0049】
なお、光硬化性樹脂とは、これらの光潜在性カチオン重合開始剤を含有したエポキシ樹
脂を意味する。
【0050】
上記熱硬化性樹脂として好適に用いられる熱硬化性ポリイミド系樹脂としては、分子主鎖中にイミド結合を有する樹脂であれば特に限定されず、具体的には、例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸との縮合重合体、芳香族ジアミンとビスマレイミドとの付加重合体であるビスマレイミド樹脂、アミノ安息香酸ヒドラジドとビスマレイミドとの付加重合体であるポリアミノビスマレイミド樹脂、ジシアネート化合物とビスマレイミド樹脂とからなるビスマレイミドトリアジン樹脂等が挙げられる。これらのうち、ビスマレイミドトリアジン樹脂がより好適に用いられる。これらの熱硬化性ポリイミド系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
熱硬化性系樹脂のひとつである熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂を構成するモノマーの一部の官能基がアミノ基、グリシジル基、イソシアネート基等の熱硬化性を有する官能基の中から1 種又は2種以上によって置換された樹脂等が挙げられる。官能基がこのように置換されることにより、熱硬化性が発現される。すなわち、官能基の熱硬化が開始されると、分子量を増大させながら不可逆的に3 次元の網目状構造が形成されていき、熱硬化性を呈する。これらの熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
熱硬化性樹脂のひとつであるユリア系樹脂としては、尿素とホルムアルデヒドとの付加
縮合反応で得られる熱硬化性樹脂であれば特に限定されない。
【0053】
ユリア系樹脂の硬化反応に用いられる硬化剤としては、例えば、顕在性硬化剤、潜在性
硬化剤等が挙げられる。顕在性硬化剤としては、例えば、無機酸、有機酸、酸性硫酸ナト
リウム等の酸性塩が挙げられる。潜在性硬化剤としては、カルボン酸エステル、酸無水物
、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の塩が挙げられる。これらのうち、潜在性硬
化剤は、貯蔵寿命が長いので好適に用いられる。
【0054】
熱硬化性樹脂のひとつであるアリル系樹脂としては、ジアリルフタレートモノマーの重
合及び硬化反応によって得られるものであれば特に限定されない。ジアリルフタレートモ
ノマーとしては、例えば、オルソ体、イソ体、テレ体が挙げられる。この硬化反応の触媒
としては特に限定されないが、例えば、t−ブチルパーベンゾエートとジ−t−ブチルパ
ーオキシドとの併用が好適である。
【0055】
熱硬化性樹脂のひとつであるケイ素系樹脂としては、分子鎖中にケイ素−ケイ素結合、ケイ素− 炭素結合、シロキサン結合、ケイ素− 窒素結合等を含むであれば特に限定されない。このようなケイ素系樹脂としては、例えば、ポリシロキサン、ポリカルボシラン、ポリシラザン等が挙げられる。なお、これらのケイ素系樹脂の分子鎖中に含まれる結合は1種類のみであってもよく、2 種類以上であってもよい。
【0056】
熱硬化性樹脂のひとつであるベンゾオキサジン系樹脂としては、ベンゾオキサジンのモ
ノマーあるいはオリゴマーがオキサジン環の開環重合によって得られるものであれば特に
限定されない。このようなベンゾオキサジンとしては、例えば、オキサジン環の窒素に対
して、フェニル基、メチル基、シクロヘキシル基等の官能基が結合した化合物、あるいは
ジベンゾオキサジン環の窒素間が、フェニレン基、メチレン基、シクロヘキシレン基等の
官能基で結合した化合物等が挙げられる。
【0057】
・熱可塑性樹脂
一方、熱可塑性樹脂の種類については、熱可塑性樹脂のプレポリマーを重合開始剤や架橋剤等からなる硬化剤によって硬化させるものであれば、特に限定はない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0058】
これらの熱可塑性樹脂に硬化剤としての有機過酸化物や添加剤などを配合することが出来る。有機過酸化物は、架橋条件でパーオキシラジカルを発生する公知な有機過酸化物であれば、その種類は特に限定されない。このような有機過酸化物系の硬化剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。有機過酸化物の配合量は、架橋性熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、架橋性熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常0.1〜20重量部程度である。なお、放射線を照射して架橋させてもよい。
【0059】
なお、上記の添加剤としては、特に限定されず、例えば、重合禁止剤、充填剤、顔料、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤などが挙げられる。
【0060】
また、本明細書において、メソポーラスシリカとは、均一で規則的な細孔を有し、平均細孔径が1.5〜50nmのポーラスシリカを指す。メソポーラスシリカの一般的な製法としては、界面活性剤を鋳型としたゾルゲル法が用いられるが、その製法によって製造されたメソポーラスシリカに限定されるものではない。ゾルゲル法においては、水溶液中に臨界ミセル濃度以上の濃度で界面活性剤を溶解させると、界面活性剤の種類に応じて一定の大きさと構造をもつミセル粒子が形成される。しばらく静置するとミセル粒子が充填構造をとり、コロイド結晶となる。ここで溶液中にシリカ源となるテトラエトキシシランなどを加え、微量の酸あるいは塩基を触媒として加えると、コロイド粒子の隙間でゾルゲル反応が進行しシリカゲル骨格が形成される。最後に高温で焼成すると、鋳型とした界面活性剤が分解・除去されて純粋なメソポーラスシリカが得られる。こうして得られるメソポーラスシリカは、棒状ミセルの存在していた場所が抜け殻として細孔となり、しかもその細孔は、界面活性剤の種類やpHやその他の条件を制御することにより、均質な径を有する貫通した細孔とすることができる。このため、表面処理剤による細孔径の制御も精密に行うことができる。こうして得られたメソポーラスシリカの構造の代表例を図1に示す。この図は貫通する細孔を有する一次元細孔の2D−Hexagonal構造を示しているが、界面活性剤の種類を変更することで、細孔の大きさや形や充填構造を制御し、3D−Hexagonal構造としたり、cubic Pn構造としたりすることができる。代表的なものとしては、小分子系カチオン性界面活性剤を用いるMCMシリーズ、ブロックコポリマーを用いるSBAシリーズが知られている。
【0061】
原料となるメソポーラスシリカの具体的な製法としては、特開2006-248832号公報に示されているように、無機原料を有機原料と混合し、反応させることにより、有機物を鋳型としてそのまわりに無機物の骨格が形成された有機物と無機物の複合体を形成させた後、得られた複合体から、有機物を除去する方法を採用することもできる。
【0062】
無機原料としては、ケイ素を含有する物質であれば特に限定されない。ケイ素を含有する物質としては、例えば、カネマイト(NaHSi・3HO)、ジ珪酸ナトリウム結晶(NaSi)、マカタイト(NaHSi・5HO)、アイラアイト(NaHSi17・XHO)、マガディアイト(NaHSi129・XHO)、ケニヤアイト(NaHSi2041・XHO)、水ガラス(珪酸ソーダ)、ガラス、無定形珪酸ナトリウム、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルアンモニウム(TMA)シリケート、テトラエチルオルトシリケートなどのシリコンアルコキシドなどが挙げられる。また、珪酸塩以外の珪素を含有する物質としては、シリカ、シリカ酸化物、シリカ−金属複合酸化物などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
また、有機原料としては、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0064】
さらに、鋳型となる陽イオン性界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩などが挙げられ、これらの中では第4級アンモニウム塩が好ましい。アミン塩は、アルカリ性域では分散性が不良のため、合成条件が酸性域でのみ使用されるが、第4級アンモニウム塩は、合成条件が酸性、アルカリ性のいずれの場合にも使用することができる。
【0065】
また、鋳型となる第4級アンモニウム塩としては、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、デシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムブロミド、ベヘニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
また、鋳型となる陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などが挙げられ、なかでも、セッケン、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステル、硫酸化オレフィン、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩および高級アルコールリン酸エステル塩などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
さらに、鋳型となる両性界面活性剤としては、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
また、鋳型となる非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン酸誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのエーテル型のものや、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの含窒素型のものなどが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
有機原料として界面活性剤を使用し、界面活性剤を鋳型として細孔を形成する場合は、鋳型としてミセルを利用することができる。また、界面活性剤のアルキル鎖長をコントロールすることにより、鋳型の径を変化させ、形成する細孔の径を制御することができる。さらに、界面活性剤と共にトリメチルベンゼン、トリプロピルベンゼンなどの比較的疎水性の分子を添加することにより、ミセルが膨張し、さらに大きな細孔の形成が可能となる。これらの方法を利用することにより、最適な大きさの細孔が形成できる。
【0070】
無機原料と有機原料を混合する場合、適当な溶媒を用いても良い。溶媒としては、特に限定されないが、THF、DMS0、DMF、水、アルコールなどが挙げられる。
【0071】
本発明において、メソポーラスシリカは前もって疎水化処理をされているものを用いる。疎水化処理の方法については特に限定はなく、例えば、疎水性の官能基を有し、シラノール基と化学結合する修飾試薬であれば用いることができる。このような修飾試薬としては、シランカップリング剤やシリル化剤などと呼ばれる有機シリコン化合物や、チタン系のカップリング剤、ジルコニア系のカップリング剤、アルコール等が挙げられる。
【0072】
上記有機シリコン化合物としては、シロキサン骨格のケイ素に結合する側鎖の一部又は全部が水素であるもが挙げられ、例えば、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ − メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ − メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ − メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ − メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のシロキサン骨
格のケイ素に結合する側鎖の一部又は全部が水素で置換されたものが挙げられ、このなかでは、例えば、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、γ − メタクリロキシプロピルジメチルジメトキシシラン等のメチル基の一部又は全部が水素基に置換されたシラン化合物が樹脂との密着性に優れるため特に好ましい。これらのシラン化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
疎水化処理を行ったメソポーラスシリカを採用することにより、CTEが耐剥離性が安定する。これは、メソポーラスシリカの細孔容積が大きく、各細孔の隔壁の厚さがナノサイズでかつ均一に配置されているからと考えられる。
【0074】
また、本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、その性能を阻害しない範囲において、難燃剤、造核剤、酸化防止剤( 老化防止剤) 、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃助剤、帯電防止剤、防曇剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。これらはそれぞれ単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カーボン、ガラス繊維、酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0075】
<第1混合工程>
本発明の樹脂組成物の製造方法では、第1混合工程として、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを混合して第1混合物とする。第1混合工程中では、樹脂のプレポリマーが硬化剤によって架橋され、分子量が増大する。この際、架橋反応があまりに早いと急激に粘度が上昇し、第2混合工程における疎水化処理したメソポーラスシリカとの混合が困難になる。このため、適度な架橋速度を示す硬化剤を適宜選択することが好ましい。また、第1混合工程において溶剤を用いて第1混合物を薄めても良いもよい。こうであれば、第1混合工程における混合が均一になり、第2混合工程において、メソポーラスシリカの細孔内に樹脂を侵入し易くなる。
【0076】
<第2混合工程>
上記第1混合工程で得られた第1混合物に疎水化処理を行ったメソポーラスシリカを添加し、撹拌し、金型に流し込んで必要に応じて加熱硬化させて成形品としたり、板上に流して必要に応じて加熱硬化させて板材としたりすることができる。
【0077】
以上のようにして得られたて成形品や板材が低いCTEを有するのは、以下の理由によるものと考えられる。
すなわち、原料のメソポーラスシリカが疎水化処理されているため、同じく疎水性である樹脂との濡れ性が良好となり、このため、メソポーラスシリカと樹脂との密着性が良好となり、それらの界面での剥離現象が防止される。また、ポーラスシリカに存在する小さな細孔内に樹脂が進入しやすくなる。このため、メソポーラスシリカと樹脂との接触面積が極めて大きくなり、メソポーラスシリカと樹脂との相互作用が高くなる。また、メソポーラスシリカは樹脂よりもCTEが小さいため、その小さなCTEの影響により、樹脂組成物全体としてのCTE自体も小さくなる。
【0078】
また、本発明の製造方法のように、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを前もって混合しておき(すなわち第1混合工程)、その後に疎水化処理されたメソポーラスシリカを添加し混合(すなわち、第2混合工程)した方が、樹脂のプレポリマーと硬化剤と疎水化処理されたメソポーラスシリカとを全て一緒にして混合させるよりも、CTEの低い樹脂組成物が得られ理由については、完全には明らかになってはいないが、次のように推測される。
すなわち、樹脂のプレポリマーと硬化剤と疎水化処理されたメソポーラスシリカとを全て一緒にして混合した場合、疎水化されたメソポーラスシリカの細孔内には、疎水性である樹脂のプレポリマーが侵入し易いのに対し、硬化剤はアミノ基などの親水基を有しているため入り難い。その結果、メソポーラスシリカの細孔内には硬化剤で架橋されていない樹脂のプレポリマーが選択的に侵入し、メソポーラスシリカの細孔内で硬化されなくなる。
これに対し、樹脂のプレポリマーと硬化剤とを前もって混合しておき(すなわち第1混合工程)、その後に疎水化処理されたメソポーラスシリカを添加し混合(すなわち、第2混合工程)した場合には、第1混合工程で既に樹脂のプレポリマーの硬化剤による架橋反応が開始しており、続く第2混合工程では、ある程度架橋した樹脂のプレポリマーがメソポーラスシリカの細孔内に侵入するため、細孔内での硬化が十分となるためと考えられる。
さらには、上記のような理由の他、メソポーラスシリカの細孔内が、細長くて径の小さな制限空間であるということも原因と考えられる。、すなわち、このようなウナギの寝床のように細長い細孔内に、第1の成分として樹脂が先に入ってしまうと、外と均一密度で入り込むこととなる。ところが熱膨張抑えられて広がることはできないので、硬化剤のような「小さい分子」は身動きが取れず、入り込むことができないのである。
【0079】
また、マトリックスとなる有機樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタンなどの他、耐熱性に優れた有機樹脂であるポリイミド、不飽和ポリエステル、ビニルトリアジン、架橋性ポリフェニレンオキサイド及び硬化性ポリフェニレンエーテル等を用いることができる。
【0080】
また、ポーラスシリカの疎水化処理方法としては、疎水性の官能基を有し、表面水酸基と化学結合する化合物で化学修飾することが好ましい。このような表面処理剤としては、シランカップリング剤やシリル化剤などと呼ばれる有機シリコン化合物が挙げられる。
【0081】
具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等の疎水性シラン化合物やメルカプトシラン等が例示される。
【0082】
また、その他としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、N-メチル-N-トリメチルシリルアセテミド、N-トリメチルシリルジシラアミン、N-トリメチルシリルジメチルアミン、N-メチル-N-トリメチルシリル-トリフルオロアセテミド、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセテミド、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセテミド、N-トリメチルシリルイミダゾール等が例示される。シリル化剤の中でも、オルガノシラザンが特に好ましい。最も好ましいのはヘキサメチルジシラザンである。ヘキサメチルジシラザン(CH33SiNHSi(CH33は、ジシラザンH3SiNHSiH3のSiに結合しているHがメチル基に置き換わったものであり、ジシラザンのような爆発性や腐食性がなく、取り扱いが容易である。また、電子産業でホトレジスト塗布時の界面活性剤として多量に生産されており、入手が容易で、安価である。
【実施例】
【0083】
以下、本発明をさらに具体化した実施例について詳細に説明する。
(実施例1)
<疎水化メソポーラスシリカの調製>
メソポーラスシリカ(株式会社アドマテック製 TMPS4 平均細孔径4nm)をジェットミルによって解砕する。この解砕工程により、平均粒径が30μm〜40μm程度の3次粒子となっていたメソポーラスシリカが、解砕されて10μm未満の2次粒子となる。こうして、解砕されたメソポーラスシリカを160℃で4時間の加熱を行い、表面吸着している水を除去する。さらに、ナス型フラスコに入れ、さらにヘキサメチルジシラザン(HMDS)1.24mmol(0.2g)を溶媒で希釈することなくそのまま加え、混合する。そして恒温槽に入れて80℃で20時間の加熱を行なう。最後に、こうして得られた反応混合物を空気雰囲気下160℃にて1時間乾燥して未反応のHMDSを除去し、疎水化メソポーラスシリカを得た。
【0084】
<第1混合工程>
エポキシ樹脂(ビスフェノールA&F 東都化成製 ZX1059) 80重量部
硬化剤(アルベマール製 商品名Ethacure100) 1重量部
の割合で混練機で混練して第1混合物を得る。
【0085】
<第2混合工程>
第1混合物100重量部に対し、上記の疎水化メソポーラスシリカを所定量(実施例1−1では5重量%、実施例1−2では10重量%、実施例1−3では15重量%、実施例1−4では20重量%、実施例1−5では25重量%、実施例1−6では30重量%)添加し、混練機で混練して第2混合物を得た。
【0086】
<真空脱泡>
第2混合物を80℃で4時間、デシケータ内で真空脱泡を行った。
【0087】
<成型>
離型剤を塗った金型内に真空脱泡した第2混合物を注型し、120℃で3時間の硬化反応を行った後、金型から取り出し、これを実施例1−1〜1−6に係る成形品とした。
【0088】
(比較例1)
<混合工程>
エポキシ樹脂(ビスフェノールA&F 東都化成製 ZX1059) 80重量部
硬化剤(アルベマール製 商品名Ethacure100) 1重量部
トリメチルシリル化されたメソポーラスシリカ 20重量部
【0089】
その後、混合物を80℃で4時間、デシケータ内で真空脱泡し、離型剤を塗った金型内に注型し、170℃2時間で硬化した後、金型から比較例1の成形品を取り出した。
【0090】
(比較例2)
【0091】
<第1混合工程>
エポキシ樹脂(ビスフェノールA&F 東都化成製 ZX1059) 80重量部
硬化剤(アルベマール製 商品名Ethacure100) 1重量部
を混練機に投入し、混練して混合物を得た。
【0092】
<第2混合工程>
第1混合物100重量部に対し、上記の中実シリカであるアドマファイン(SO-C1)を20重量%添加し、混練機で混練して第2混合物を得た。
【0093】
その後、混合物を80℃で4時間、デシケータ内で真空脱泡し、離型剤を塗った金型内に注型し、170℃2時間で硬化した後、金型から比較例2の成形品を取り出した。
【0094】
(比較例3)
<混合工程>
エポキシ樹脂(ビスフェノールA&F 東都化成製 ZX1059) 80重量部
硬化剤(アルベマール製 商品名Ethacure100) 1重量部
を混練機に投入し、混練して混合物を得た。
【0095】
その後、混合物を80℃で4時間、デシケータ内で真空脱泡し、離型剤を塗った金型内に注型し、170℃2時間で硬化した後、金型から比較例2の成形品を取り出した。
【0096】
−評 価−
(実施例1-4及び比較例1、2のCTE及びガラス転位温度)
こうして得られた実施例1-4及び比較例1、2の成形品について、CTE及びガラス転位温度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
この表から、エポキシ樹脂のプレポリマーと硬化剤とを前もって混合しておき、その後に疎水化処理されたメソポーラスシリカを添加し混合した実施例1-4の方が、エポキシ樹脂のプレポリマーと疎水化処理されたメソポーラスシリカと混合した後、硬化剤を加えてさらに混合して硬化させた比較例1よりも、CTE値が低く、ガラス転位温度も高くなることが分かった。また、実施例1-4と同様に、エポキシ樹脂のプレポリマーと硬化剤とを前もって混合しておき、その後に疎水化処理された中実シリカを添加し混合した比較例2では、CTE(0-50℃)はそれほどかわらないものの、CTE(175-195℃)におけるCTE及びガラス転位温度が実施例1よりも低く、高い温度におけるCTEが実施例1よりも高いことが分かった。
【0099】
(実施例1-1〜実施例1-5について、ポリマー/メソポーラスシリカの比率)
実施例1-1〜実施例1-5について、メソポーラスシリカとポリマーとの配合比率及び総体積から求めたポア内の樹脂占有比率(Dead Pore)、ポア内の樹脂重量%(Inside polymer wt%)、ポア外の樹脂重量%(Outside polymer wt%)、ポア内の空間体積(Inside space cm3)、ポア内の樹脂重量(Inside polymer g)、ポア内の樹脂重量(Outside polymer g)、総体積(Total Volume cm3)、ポア外に存在するポリマー体積%(Outside polymer Vol.%)、シリカ体積%(silica Vol.%)、ポア内のポリマー体積%(Inside polymer Vol.%)、及びポア内の空間体積%(Inside space Vol.%)を表2に示す。なお、計算にあったっては、メソポーラスシリカとポリマーとの密着不良による空間は0であり、ポリマーはポア内に均一に侵入すると仮定した。
【0100】
【表2】

【0101】
表2から、メソポーラスシリカの含有量が30重量%のとき、ポア外に存在するポリマーの量に対して半分近くのポリマーがポア内に存在するということが分かる。
【0102】
また、実施例1-6(メソポーラスシリカ含有量30重量%)の成形品の断面TEM写真を図2に、EPMAによる各元素のマッピング写真を図3に、それぞれ示す。図3から、メソポーラスシリカ部分のカーボン含有量は低いものの、均一なカーボンの存在が示された。また、二酸化ケイ素が無くポリマーが存在する領域では、カーボンの存在が一様で多いことが分かった。以上のことから。ポリマー分子は、二酸化ケイ素粒子内部に均一に侵入していることが示唆された。
【0103】
また、メソポーラスシリカを含有する実施例1-4、中実シリカを含有する比較例2及びシリカを含有しない比較例3について温度と熱膨張係数の関係についてのグラフを図4に、メソポーラスシリカを含有する実施例1-1〜1-6の温度と熱膨張係数の関係についてのグラフを図5に、それぞれ示す。図4から、メソポーラスシリカを添加した実施例1-4の成形品は、中実シリカを含有する比較例2やシリカを添加していない比較例3に比べて、熱膨張係数が小さいことが分かる。また、図5から、メソポーラスシリカの添加量を多くするにつれて、各温度におけるCTEが低下することが分かる。
【0104】
さらに、実施例1-1〜1-6におけるポア外のポリマーの量とガラス転位温度以上の温度でのCTE値の関係についてのグラフを図6に示す。図6から、メソポーラスシリカの添加量に反比例してガラス転位温度以上の温度でのCTE値が低下し、外装線の切片(ポア内でのポリマーが存在しない状態)では、熱膨張係数がほぼ0となり、熱による膨張はほとんどないことが分かった。
【0105】
上記実施例1-1〜1-6において低CTEが実現した理由は、エポキシ樹脂がメソポーラスシリカの孔の中に入って身動きが取れないような拘束力を受けることにあると考えられる。エポキシ樹脂の分子の形状及びメソポーラスシリカの孔の径から計算すると、エポキシ樹脂はメソポーラスシリカの孔に14本入る計算となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂のプレポリマーと硬化剤とを混合して第1混合物とする第1混合工程と、
該第1混合物と疎水化処理されたメソポーラスシリカとを混合して第2混合物とする第2混合工程と、
該第2混合物を硬化させる硬化工程と、
を有することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂は熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第1混合工程において、さらに溶剤を加えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記メソポーラスシリカの平均粒径は0.2〜1.0μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−180388(P2012−180388A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42142(P2011−42142)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000241485)豊田通商株式会社 (73)
【Fターム(参考)】