説明

樹脂組成物の製造方法

【課題】樹脂組成物中に含まれる繊維状充填材の繊維長が制御された樹脂組成物の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の樹脂組成物の製造方法は、押出機を用いて樹脂(A)と繊維状充填材(B)とを溶融混練して押し出す工程を含む樹脂組成物の製造方法であって、シリンダー2と、シリンダー2に設けられたメインフィード口5と、シリンダー2のメインフィード口5より押出方向後方に設けられたサイドフィード口7と、を備えた押出機10を用い、押出機10のメインフィード口5から、前記樹脂(A)の一部量と、重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の一部量と、を供給し、押出機10のサイドフィード口7から、前記樹脂(A)の残量と、前記重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の残量と、を供給することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状充填材を含有する樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリエステルは、成形加工性が良好であり、高い耐熱性や強度を有し、且つ絶縁性に優れていることから電気・電子部品や光学部品の材料として適用されている。
液晶ポリエステルは、成形時に分子鎖が流動方向に配向し易く、流動方向とその垂直方向とで成形収縮率や機械的性質に異方性が生じやすい。そのため、これを低減すべく、繊維状や板状などの種々の形状の充填材を配合して用いられている。
【0003】
液晶ポリエステルに繊維状の充填材を配合する場合、所望の流動性や成形性、及び成形体の強度を得るために、充填材の平均繊維長を制御することが望まれる。
特許文献1には、(A)異方性溶融相を形成する液晶ポリエステル樹脂、及び液晶ポリエステルアミド樹脂から選ばれた少なくとも1種の液晶性樹脂100重量部に対して、(B)平均繊維径が3〜15μmのガラス繊維5〜300重量部を充填してなり、該組成物ペレット中の重量平均繊維長が0.02〜0.55mmの範囲にあって、且つ、繊維長が1mmを超えるガラス繊維の比率が該ガラス繊維の0〜15重量%、且つ、繊維長が0.1mm以下のガラス繊維の比率が該ガラス繊維の0〜50重量%であるガラス繊維強化液晶性樹脂組成物から得られたペレットを射出成形して、射出成形時の流動長さ、及び成形品の収縮率を求めているが、この技術は、ガラス繊維充填において、重量比や平均繊維長を制御する技術ではない。
また、予め平均繊維長を揃えた繊維状の充填材を配合することにより、液晶ポリエステル組成物中の充填材の平均繊維長を制御することも可能であるが、配合前に繊維状の充填材を繊維長で分級する必要があり、手間とコストがかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−240114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、樹脂組成物中に含まれる繊維状充填材の繊維長が制御された樹脂組成物の製造方法の提供を課題とする。また、本発明は樹脂組成物中に含まれる繊維状充填材の繊維長が制御された樹脂組成物を経済的に製造できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂組成物の製造方法は、押出機を用いて樹脂(A)と繊維状充填材(B)とを溶融混練して押し出す工程を含む樹脂組成物の製造方法であって、シリンダーと、前記シリンダー内に配置されたスクリューと、前記シリンダーに設けられたメインフィード口と、前記シリンダーの前記メインフィード口より押出方向後方に設けられたサイドフィード口と、を備えた前記押出機を用い、前記押出機の前記メインフィード口から、前記樹脂(A)の一部量と、重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の一部量と、を供給し、前記押出機の前記サイドフィード口から、前記樹脂(A)の残量と、前記重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の残量と、を供給することを特徴とする。
【0007】
本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記樹脂(A)の前記押出機への供給量が80〜55重量%であり、前記繊維状充填材(B)の前記押出機への供給量が20〜45重量%(ただし、前記樹脂(A)と前記繊維状充填材(B)の合計は100重量%)であることが好ましい。
【0008】
本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記押出機のメインフィード口からの供給量(重量%)を、それぞれ、前記樹脂(A)の一部量(X1)と、前記繊維状充填材(B)の一部量(Y1)とし、前記押出機の前記サイドフィード口からの供給量(重量%)を、それぞれ、前記樹脂(A)の残量(X2)と、前記繊維状充填材(B)の残量(Y2)とし(ただし、X1+X2+Y1+Y2=100重量%である)、X1/X2=55/45〜70/30重量%比、Y1/Y2=75/25〜25/75重量%比、且つX2/Y2=90/10〜45/55重量%比となるように前記樹脂(A)および前記繊維状充填材(B)を前記押出機に供給することが好ましい。
【0009】
本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記樹脂(A)が液晶ポリエステルであることが好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法において、繊維状充填材(B)が、ガラス繊維、カーボン繊維、バサルト繊維、アルミナ繊維からなる群から選択される無機充填材であることも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、樹脂組成物中に含まれる繊維状充填材の繊維長が制御された樹脂組成物の製造方法を提供できる。また、本発明によれば、繊維状充填材の繊維長が制御された樹脂組成物を経済的に製造できる方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の樹脂組成物の製造方法で用いる押出機の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の樹脂組成物の製造方法の実施の形態について説明する。
【0013】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、押出機を用いて樹脂(A)と繊維状充填材(B)とを溶融混練して押し出す工程を含む樹脂組成物の製造方法であって、シリンダーと、前記シリンダー内に配置されたスクリューと、前記シリンダーに設けられたメインフィード口と、前記シリンダーの前記メインフィード口より押出方向後方に設けられたサイドフィード口と、を備えた前記押出機を用い、前記押出機の前記メインフィード口から、前記樹脂(A)の一部量と、重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の一部量と、を供給し、前記押出機の前記サイドフィード口から、前記樹脂(A)の残量と、前記重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の残量と、を供給することを特徴とする。
【0014】
[押出機]
図1は、本実施形態の樹脂組成物の製造方法で用いる押出機の一例を示す概略断面図である。以下、本実施形態の樹脂組成物の製造方法では、図1に示す押出機を用いて、樹脂(A)と繊維状充填材(B)とを溶融混練して樹脂組成物を製造することとして説明を行う。
【0015】
なお、本発明の樹脂組成物の製造方法に用いられる押出機としては、図1に示す構成の押出機に限定されず、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリューと、シリンダーに設けられた2箇所以上の供給口(メインフィード口及びサイドフィード口)とを有するものが好ましく用いられ、さらにシリンダーに1箇所以上のベント部が設けられたものがより好ましく用いられる。本発明に適用可能な押出機として、具体的には、短軸押出機、二軸押出機のいずれでもよい。二軸押出機としては、同方向回転の1条ネジのものから3条ネジのもの、異方向回転の平行軸型、斜軸型又は不完全噛み合い型のもの等が挙げられるが、同方向回転の二軸押出機が好ましい。
【0016】
図1に示す押出機10は、モーターボックス1aに収容されたモーター1と、モーターボックス1aに隣接して設けられたシリンダー2と、シリンダー2内に挿入され、モーター1と接続されたスクリュー3と、を有している。図1に示す押出機10は、シリンダー2内に2本のスクリュー3が挿入された二軸押出機である。
【0017】
シリンダー2は、シリンダー2内に樹脂(A)及び繊維状充填材(B)を供給するメインフィード口5と、メインフィード口5よりも押出方向後方(下流側)でシリンダー2内に樹脂(A)及び繊維状充填材(B)を供給するサイドフィード口7と、シリンダー2内で生じる揮発成分(ガス)を排出する第1ベント部4及び第2ベント部6と、溶融混練した樹脂組成物(樹脂(A)と繊維状充填材(B)の混合物)を成形する吐出ダイ9と、を備えている。
シリンダー2には、最上流の位置(モーターボックス1側の位置)に、メインフィード口5が設けられ、メインフィード口5から下流側(押出方向後方;ダイ9側)に向けて、サイドフィード口7、第1ベント部4、第2ベント部6がこの順に設けられており、シリンダー2の下流側端部にはシリンダー2と連通するノズル穴9aを有する吐出ダイ9が設けられている。
【0018】
メインフィード口5及びサイドフィード口7は、シリンダー2内部と接続するホッパーと、樹脂(A)及び繊維状充填材(B)を定質量又は定容量で供給する供給装置と、を有している。供給装置の供給方式としては、例えば、ベルト式、スクリュー式、振動式、テーブル式が挙げられる。
【0019】
第1ベント部4及び第2ベント部6は、大気に開放されたオープンベント方式であっても、水封式ポンプ、ロータリーポンプ、油拡散ポンプ、ターボポンプ等に接続して真空に保持する真空ベント方式であってもよい。
【0020】
スクリュー3は、樹脂組成物(樹脂(A)と繊維状充填材(B)の混合物)を搬送するための搬送部8を備えている。また、スクリュー3は、メインフィード口5とサイドフィード口7との間に前記樹脂組成物の可塑化およびニーディングを行う第1混練部11を備え、サイドフィード口7と第1ベント部4との間に前記樹脂組成物の可塑化およびニーディングを行う第2混練部12を備え、第1ベント部4と第2ベント部6との間に前記樹脂組成物の混練を行う第3混練部13を備えている。尚、第1ベント部4と第2ベント部6にさらに第4混練部、第5混練部を備えていてもよい。この際、剪断発熱を抑制するシリンダー温度の充分な制御を行うことが好ましい。
【0021】
このようなスクリュー3は、スクリューエレメントを組み合わせて構成される。搬送部8は順フライト(フルフライト)のスクリューエレメント、第1混練部11、第2混練部12及び第3混練部13は、フルフライト、逆フライト、シールリング、順ニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、逆ニーディングディスク等のスクリューエレメントが組み合わされて構成されるのが一般的である。
【0022】
第1混練部11及び第2混練部12のエレメントは、それぞれ、ニーディングディスクを位相角が0よりも大きく90度よりも小さくなるようにずらしながら重ねた構成のエレメントとニュートラルニーディングエレメント(ニーディングディスクを位相角90度でずらして重ね合わせた構成)を用いるのが好ましい。
また、第3混練部13にはニュートラルニーディングエレメントを用いるのが好ましい。
なお、スクリュー3が第3混練部13よりも押出方向後方(下流側)にさらに混練部を備える場合には、最下流に位置する混練部にニュートラルニーディングエレメントを用い、最下流以外の混練部にはニーディングディスクを位相角が0よりも大きく90度よりも小さくなるようにずらしながら重ねた構成のエレメントとニュートラルニーディングエレメントを用いることが好ましい。例えば、第1ベント部4と第2ベント部6にさらに第4混練部、第5混練部を備えている場合には、第1〜第4混練部のエレメントとして、ニーディングディスクを位相角が0よりも大きく90度よりも小さくなるようにずらしながら重ねた構成のエレメントとニュートラルニーディングエレメントを用い、第5混練部のエレメントとしてニュートラルニーディングエレメントを用いることが好ましい。
スクリュー3を構成するその他のエレメントには、溶融した樹脂組成物の全体的な搬送性を失わない限りは、どのようなスクリューエレメントを用いても良い。
【0023】
[樹脂(A)]
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に用いる樹脂(A)としては、液晶ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられ、特に液晶ポリエステルが好ましい。
【0024】
本実施形態の製造方法に用いる樹脂(A)である液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0025】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの、
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
【0026】
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0027】
液晶ポリエステルは、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
【0028】
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
【0029】
(式中、Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表し;Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基を表し;X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基(−NH−)を表し;Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
【0030】
(4)−Ar−Z−Ar
【0031】
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表し;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基を表す。)
【0032】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基毎に、それぞれ独立に、2個以下であることが好ましく、1個以下であることがより好ましい。
【0033】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1〜10であることが好ましい。
【0034】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びAr1が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0035】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arがp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arがm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0036】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びAr3が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0037】
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは40〜70モル%、特に好ましくは45〜65モル%である。
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは15〜30モル%、特に好ましくは17.5〜27.5モル%である。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、成形に必要な温度が高くなり易い。
【0038】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0039】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0040】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)として、X及びYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することがより好ましい。このようにすることで、液晶ポリエステルの溶融粘度が低くなり易くなる。
【0041】
液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(以下、「プレポリマー」ということがある。)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この場合の触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0042】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは270℃以上、より好ましくは270〜400℃、さらに好ましくは280〜380℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、流動開始温度があまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
【0043】
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
【0044】
(繊維状充填材)
本実施形態の製造方法に用いる繊維状充填材(B)は、繊維状無機充填材であっても、繊維状有機充填材であってもよい。
繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維(カーボン繊維);シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;ステンレス繊維等の金属繊維;及びバサルト繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が挙げられる。
成形加工時の装置に与える磨耗負荷や入手性を考慮すると、繊維状充填材(B)としては、ガラス繊維、カーボン繊維、バサルト繊維及びアルミナ繊維からなる群から選択される繊維状無機充填材が好ましく、中でもガラス繊維がさらに好ましい。
また、繊維状充填材(B)は、上記した充填材のうちの2種類以上の混合物であってもよい。また、繊維状充填材とそれ以外の充填材の混合物であってもよい。充填材の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。
【0045】
また、繊維状充填材(B)は、本実施形態の製造方法により得られた樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形体からの発生ガスをより低減化し、樹脂成形体の化学的安定性を向上させることや、電気・電子機器又は光学機器を組み立てた際に、発生ガスが周辺部材を汚染することが少ないといった観点から、表面コーティング処理が施されていてもよい。表面コーティング処理としては、チタンカップリング剤等のカップリング剤による表面コーティング処理や、各種熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂による表面コーティング処理が挙げられる。
また、繊維状充填材(B)であるガラス繊維としては、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆あるいは集束剤で処理されたものであってもよい。
【0046】
繊維状充填材(B)の重量平均繊維長は1mm以上とされ、好ましくは1mm〜10mm、より好ましくは2〜10mmである。繊維状充填材(B)の平均径は、好ましくは3〜15μmである。繊維状充填材(B)の平均径が3μm未満であると、補強材としての効果が小さくなる傾向がある。また、繊維状充填材(B)の平均径が15μmを超えるとと成形性が低下し、表面の外観が悪化する傾向がある。繊維状充填材(B)は、長さに分布がなく一定に揃っているチョップドストランドが好ましい。
【0047】
次に、本実施形態の樹脂組成物の製造方法の一実施形態について、図1に示す押出機10を用いて、樹脂(A)と繊維状充填材(B)とを溶融混練して押し出すことにより樹脂組成物を製造する場合について説明する。
【0048】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法においては、
(i)押出機10のメインフィード口5から、樹脂(A)の一部量(X1)と、重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の一部量(Y1)と、を供給し、
(ii)押出機10のサイドフィード口7から、前樹脂(A)の残量(X2)と、重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の残量(Y2)と、を供給する。
ここで、樹脂(A)の押出機10への総供給量(P)=X1+X2(重量%)、繊維状充填材(B)の押出機10への総供給量(Q)=Y1+Y2(重量%)、樹脂(A)と繊維状充填材(B)の供給量の合計(P+Q)は100重量%である。
【0049】
得られる樹脂組成物中の樹脂(A)と繊維状充填材(B)の重量比率(即ち、押出機10に供給する樹脂(A)および繊維状充填材(B)の供給量の比率)は、樹脂(A)55〜85重量%と、繊維状充填材(B)45〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは(A)60〜70重量%と、(B)40〜30重量%(ここで、樹脂(A)と繊維状充填材(B)の合計は100重量%である)である。樹脂組成物中の繊維状充填材(B)の比率が多すぎると、樹脂組成物を用いて成形する際に樹脂組成物の流動性が阻害され、成形が困難になる。また、樹脂組成物中の繊維状充填材(B)の比率が少なすぎても、樹脂組成物を用いて得られる成形体の補強効果が少なくなり、剛性が不足する。
【0050】
本発明では、押出機10のメインフィード口5から樹脂(A)の一部量(X1)と、繊維状充填材(B)の一部量(Y1)を、メインフィード口5より押出方向後方に設けられたサイドフィード口7から樹脂(A)の残量(X2)と、繊維状充填材(B)の残量(Y2)を、それぞれX1/X2=55/45〜70/30重量%比、Y1/Y2=75/25〜25/75重量%比になるように供給することが好ましい。さらに好ましくは、X2/Y2=90/10〜45/55重量%比となるように供給する。
メインフィード口5に供給する繊維状充填材(B)の量(Y1)が前記範囲より多すぎると、押出機10への負荷が大きくなってしまう可能性がある。一方、メインフィード口5に供給する繊維状充填材(B)の量(Y1)が前記範囲より少なすぎると、得られる樹脂組成物中の繊維状充填材の平均繊維長が長くなり、該樹脂組成物を用いて成形を行う場合の樹脂組成物の流動性を阻害してしまう可能性がある。また、サイドフィード口7から供給するの樹脂(A)の量(X2)と繊維状充填材(B)の量(Y2)の比率が前記範囲を外れると、得られる樹脂組成物中の繊維状充填材の平均繊維長が長くなり、該樹脂組成物を用いて成形を行う場合の樹脂組成物の流動性を阻害してしまう可能性がある。
尚、メインフィード口5およびサイドフィード口7ともに、樹脂(A)と繊維状充填材(B)は、同時に供給することが望ましい。
【0051】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法において、押出機10のシリンダー2の温度を、樹脂(A)が溶融する温度(400度から340度)で混練を行うことが好ましい。また、せん断発熱による溶融樹脂の過昇温を抑えるために、サイドフィーダー7より下流側でシリンダー2の温度を−120度まで下げても良い。
【0052】
押出機10の吐出ダイ9からの樹脂組成物(樹脂(A)と繊維状充填材(B)の混合物)の吐出量は、200kg/hrから400kg/hrとすることが好ましい。また、押出機10のスクリュー3の回転数は、500rpmから800rpmとすることが好ましい。なお、これらの製造条件はトルクが60%以上となるように調整することが好ましい。
【0053】
以上の条件で、押出機10に樹脂(A)及び繊維状充填材(B)を供給して、溶融混練し、押し出すことにより樹脂組成物を製造できる。得られた樹脂組成物は、押出機10からの押し出し後に、ペレット状に成形することが好ましい。
得られた樹脂組成物中の繊維状充填材の重量平均繊維長は150〜350μm、好ましくは200〜300μm、さらに好ましくは200〜280μmである。また、得られた樹脂組成物中の繊維状充填材の数平均繊維長は100〜220μm、好ましくは100〜210μm、さらに好ましくは120〜200μmである。
樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長が上記範囲より短いと、該樹脂組成物を用いて得られる成形体の剛性が不足し、異方性が大きくなってしまう可能性がある。一方、樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長が上記範囲よりも長いと、該樹脂組成物を用いて成形体を成形する際に、樹脂組成物の流動性が阻害され成形性が悪化する可能性がある。また、樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長が上記範囲よりも長いと、該樹脂組成物を用いて得られる成形体の表面の概観が損なわれ、繊維状充填材の脱落やそれに由来する樹脂屑の発生などによる発塵性が悪化する可能性がある。
【0054】
以下に繊維状充填材の繊維長の測定方法を記載する。
[繊維状充填材の繊維長の測定方法]
繊維状フィラーの重量平均繊維長と数平均繊維長は、樹脂組成物中にある繊維状充填材の外観形状で求めるものである。具体的に、これらの測定方法について説明する。
繊維状充填材の外観形状は、樹脂組成物のうち1.0gをるつぼに採取し、電気炉内にて600℃で4時間処理して灰化させ、その残渣をメタノールに分散させてスライドガラス上に展開させた状態で顕微鏡写真をとり、その写真から繊維状充填材の形状を直接的に読み取って、その平均値を算出して求められるものである。尚、平均値の算出にあたっては母数を400以上とする。各重量については、繊維状充填材の比重より各繊維長に対する重量を算出し、平均値の算出にあたっては用いた試料の全重量を用いる。
【0055】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、押出機10のメインフィード口5から樹脂(A)の一部量及び重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の一部量を供給し、メインフィード口5よりも押出方向後方に位置するサイドフィード口7から樹脂(A)の残量及び重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の残量を供給する構成である。そのため、メインフィード口5から供給された繊維状充填材(B)は、第1混練部11、第2混練部12、第3混練部13で3度ニーディングされるため、サイドフィード口7のみで供給された場合と比較して繊維長が短くなる。若しくは、第1ベント部4にさらに第4混練部を、第2ベント部6にさらに第5混練部を追加すれば、より繊維長制御の効果が高い。また、メインフィード口5から供給された繊維状充填材(B)は、同時に供給された溶融前の硬い樹脂(A)と混練されることで互いに粉砕されるので、より繊維長が短くなる。これにより、本発明の製造方法によれば、特定の重量平均繊維長、さらには特定の繊維長分布を有する樹脂組成物を製造できる。
【0056】
本発明の製造方法によれば、得られる樹脂組成物中の数平均繊維長を100〜220μm、重量平均繊維長を150〜350μmに制御することが可能となる。
また、本発明の製造方法によれば、押出機10に供給する前の繊維状充填材を予め、所望の繊維長に分級する必要がないため、経済的に樹脂組成物中の繊維状充填材の繊維長が制御された樹脂組成物を製造できる。
【0057】
なお、上記した実施形態では、押出機を用いて溶融混練される樹脂組成物が、樹脂(A)と繊維状充填材(B)のみを含む場合について説明したが、本発明はこの例に限定されず、押出機を用いて溶融混練される樹脂組成物中に、さらに、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分が1種以上配合されていてもよい。これらの添加剤及び液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分は、必要に応じて、メインフィード口5及び/又はサイドフィード口7よりシリンダー2内に供給すればよい。
【0058】
押出機を用いて溶融混練される樹脂組成物が含有していてもよい添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。添加剤の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
【0059】
押出機を用いて溶融混練される樹脂組成物が含有していてもよい液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜99質量部である。
【0060】
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物を用いて成形することにより、様々な成形体を得ることができる。成形体の例としては、電気・電子部品、光学部品が挙げられ、具体的には例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、回路基板、半導体パッケージ、コンピュータ関連部品、カメラ鏡筒、光学センサー筐体、コンパクトカメラモジュール筐体(パッケージや鏡筒)、プロジェクター光学エンジン構成部材、ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー等照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク、スピーカー等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品等を挙げることができる。
【0061】
また、上記以外の用途としては、例えば、分離爪、ヒータホルダー等の複写機、印刷機関連部品;インペラー、ファン歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品;自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱等の支持材料、屋根材等の建築資材、または土木建築用材料;航空機、宇宙機、宇宙機器用部品;原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品等が挙げられる。
【0062】
本発明により得られる樹脂組成物から成形体を製造する場合の成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0063】
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物を用いた成形体は、機械強度、耐熱性及び成形性に優れ、且つ、耐発塵性を有する。
【実施例】
【0064】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0065】
〔液晶ポリエステルの製造〕
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、無水酢酸1347.6g(13.2モル)及び1−メチルイミダゾール0.194gを入れ、窒素ガス気流下、攪拌しながら、室温から145℃まで15分かけて昇温し、145℃で1時間還流させた。次いで、1−メチルイミダゾール0.194gを加え、副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、145℃から320℃まで3時間かけて昇温し、320℃で2時間保持した後、反応器から内容物を取り出し、室温まで冷却した。得られた固形物を、粉砕機で粉砕して、粉末状のプレポリマーを得た。このプレポリマーの流動開始温度は、261℃であった。次いで、このプレポリマーを、窒素ガス雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から285℃まで5時間かけて昇温し、285℃で3時間保持することにより、固相重合させた後、冷却して、粉末状の液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルの流動開始温度は、327℃であった。このようにして得られた液晶ポリエステルをLCP1とした。
【0066】
〔比較例1−3、実施例1−3〕
上記で得られたLCP1、ガラス繊維(日東紡績株式会社製CS−3J−260S)を、LCP1(X1、X2)及びガラス繊維(Y1、Y2)を表1に示す配分で、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM−41SS)を用いて溶融混練し、樹脂組成物を得た。
二軸押出機は、図1に示す構成の押出機に、第1ベント部に第4混練部が、第2ベント部に第5混練部が、それぞれ追加された構成のものを使用した。二軸押出機の混練部は、第1混練部から第4混練部までは5R及び5Nからなる構成で、第5混練部は5Nのみからなる構成とした。尚、Nは90度でずらして5枚重ね合わせたニュートラルニーディングセグメント、Rは30度ずつ右回転になるようにずらして5枚重ねたセグメントを表す。また、第2混練部から第5混練部までは剪断発熱を抑制するために240℃とした。それ以外は340℃とした。スクリュー径は41mmのものを使用し、第2ベント部は水流ポンプで真空度がゲージ圧で−0.09MPa(大気圧を0MPaとする)となるように保持した。スクリューは二軸同方向(右回転)のものを使用し、スクリュー回転数は700rpmとし、押出量は300kg/hrで行った。
得られた樹脂組成物中の繊維状充填材(ガラス繊維)の繊維長は以下の方法を用いて測定した。結果を表2に示した。
【0067】
<樹脂組成物中の繊維状充填材の重量平均繊維長及び数平均繊維長の測定>
得られた樹脂組成物のうち1.0gをるつぼに採取し、電気炉内にて600℃で4時間処理して灰化させ、その残渣をメタノールに分散させてスライドガラス上に展開させた状態で顕微鏡写真をとり、その写真から繊維状充填材の形状を直接的に読み取って、その平均値を算出した。尚、平均値の算出にあたっては母数を400以上とした。各重量については、繊維状充填材の比重より各繊維長に対する重量を算出し、平均値の算出にあたっては用いた試料の全重量を用いた。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
表2に示す結果より、本発明の製造方法である実施例1〜3では、樹脂組成物中の繊維状充填材の数平均繊維長を100〜220μm、重量平均繊維長を150〜350μmに制御できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、電気・電子部品、光学部品、半導体製造プロセス関連部品、家庭電気製品部品、照明器具部品、音響製品部品、通信機器部品、印刷機関連部品、自動車部品、調理用器具、土木建築用材料、宇宙航空機器用部品、医療用機器部品、スポーツ用品、レジャー用品などの各種成形体に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…モーター、1a…モーターボックス、2…シリンダー、3…スクリュー、4…第1ベント部、5…メインフィード口、6…第2ベント部、7…サイドフィード口、8…搬送部、9…吐出ダイ、9a…ノズル穴、10…押出機、11…第1混練部、12…第2混練部、13…第3混練部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機を用いて樹脂(A)と繊維状充填材(B)とを溶融混練して押し出す工程を含む樹脂組成物の製造方法であって、
シリンダーと、前記シリンダー内に配置されたスクリューと、前記シリンダーに設けられたメインフィード口と、前記シリンダーの前記メインフィード口より押出方向後方に設けられたサイドフィード口と、を備えた前記押出機を用い、
前記押出機の前記メインフィード口から、前記樹脂(A)の一部量と、重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の一部量と、を供給し、
前記押出機の前記サイドフィード口から、前記樹脂(A)の残量と、前記重量平均繊維長が1mm以上の繊維状充填材(B)の残量と、を供給することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂(A)の前記押出機への供給量が80〜55重量%であり、前記繊維状充填材(B)の前記押出機への供給量が20〜45重量%(ただし、前記樹脂(A)と前記繊維状充填材(B)の合計は100重量%)であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記押出機のメインフィード口からの供給量(重量%)を、それぞれ、前記樹脂(A)の一部量(X1)と、前記繊維状充填材(B)の一部量(Y1)とし、
前記押出機の前記サイドフィード口からの供給量(重量%)を、それぞれ、前記樹脂(A)の残量(X2)と、前記繊維状充填材(B)の残量(Y2)とし(ただし、X1+X2+Y1+Y2=100重量%である)、
X1/X2=55/45〜70/30重量%比、Y1/Y2=75/25〜25/75重量%比、且つX2/Y2=90/10〜45/55重量%比となるように前記樹脂(A)および前記繊維状充填材(B)を前記押出機に供給することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂(A)が液晶ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
繊維状充填材(B)が、ガラス繊維、カーボン繊維、バサルト繊維、アルミナ繊維からなる群から選択される無機充填材である請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−71281(P2013−71281A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210454(P2011−210454)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】