説明

樹脂部品取付け構造

【課題】
車体に設けられた取付け孔に挿通させたスクリューを用いて、車体と樹脂部品に一体に設けられたボス部とを締結する従来の部品取付け構造を採用すると、樹脂部品取付け時にスクリューの回転荷重がボス部に加わることでボス部と樹脂部品との結合部分に応力が集中し、樹脂部品表面に歪みや白化が発生し、外観品質を損なう。
【解決手段】
本発明の樹脂部品取付け構造は、
キャップ3のリヤフェンダー5の裏側の面と対向する面であるキャップ座面3eに設けられ、取付け孔5aを挿通するリブ3aを有し、
スクリュー4締結時にリブ3aが取付け孔5aの縁部と干渉することを最も主要な特徴とす
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体への樹脂部品取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に樹脂部品を取付ける際に、車体に設けられた取付け孔に挿通させたスクリューで車体と外装樹脂部品とを締結させる樹脂部品取付け構造がある。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2004−329450号公報(第7頁、第2図) ドア2に設けられた取付け孔12に挿通させたスクリュー19を用いて樹脂部品であるオーバーフェンダー5に一体に設けられたボス部15とドア2とを直接締結することでオーバーフェンダーを車体に取付ける部品取付け構造がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来の樹脂部品取付け構造を採用すると、樹脂部品取付けのためのスクリュー締結作業時にスクリューの回転荷重がボス部に加わることで樹脂部品の裏面側に形成されたボス部の基部に過大な応力がかかり、樹脂部品表面に歪みや白化が発生し、外観品質を損なう恐れがある。
この歪みや白化の抑制にはボス部の基部の肉厚を増やし強度を向上させることが有効であるが、ボス部の外表面側にヒケが発生し、外観品質を損なう恐れがある。
そこで、本発明では、樹脂部品のボス部基部へスクリューの回転荷重が加わることを抑制し、樹脂部品の外観品質を向上させる外樹脂部品取付け構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂部品取付け構造にあっては、
樹脂部品に被取付け部品の取付け孔へ向けてボス部が形成され、該ボス部とキャップとで被取付け部品を挟んでスクリュー締結され、
キャップには、スクリュー締結時に被取付け部品の取付け孔の縁部と干渉する突起が設けられていることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂部品取付け構造によれば、キャップと樹脂部品とで車体パネルを挟み込んだ状態で、キャップ側からスクリューを用いて車体パネルと樹脂部品とを締結することで、スクリューの回転荷重はキャップに伝わる。車体パネルと対向してキャップに設けられ、取付け孔を挿通する突起と車体パネルに設けられた取付け孔の縁部とが干渉することでキャップに伝わった回転荷重は受け止められ、樹脂部品のボス部へ回転荷重が加わることを抑制することが可能となる。
【0007】
従って、樹脂部品のボス部と樹脂部品との結合部分に応力が集中による歪みや白化の発生を抑制し、外観品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】樹脂部品取付け構造の概略図
【図2】樹脂部品取付け構造の分解図
【図3(a)】取付け部の拡大図
【図3(b)】図1のA−A線に沿う断面構造図
【図3(c)】B−B線に沿う断面構造図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面とともに詳述する。
図1〜3は本発明にかかる樹脂部品取付け構造の実施形態を示し、図1は樹脂部品取付け構造の概略図、図2は樹脂部品取付け構造の分解図、図3は樹脂部品取付け構造の詳細図で、図3(a)は取付け部の拡大図、図3(b)は図1のA−A線に沿う断面構造図、図3(c)はB−B線に沿う断面構造図を示す。
【0010】
本実施形態の樹脂部品取付け構造では、図1に示すとおり、ピックアップトラックのリヤフェンダー5(請求項に記載の被取付け部品に相当)にリヤオーバーフェンダー1(請
求項に記載の樹脂部品に相当)を取付ける。
図2に示すとおり、リヤオーバーフェンダー1のリヤフェンダー5側の面に設けられたボス部1aと、ボス部1aが挿通するリヤフェンダーに設けられた略長方形を呈する取付け孔5aと、リヤフェンダー5を挟みボス部1aと反対側に位置する円盤状のキャップ3と、を備える。
【0011】
図3(a)に示すとおり、キャップ3のリヤフェンダー5と対向する面からボス部1aに向かって突出し、取付け孔5aに挿通されるリブ3a(請求項記載の突起に相当)と、ボス部1aに設けられたグロメット2と、を備える。リブ3aは略長方形の取付け孔5aの長辺縁部5bと近接
または接し、グロメット2を挟むようにボス部に設けられた略長方形を呈したスリット1b
に挿入される。図3(b)に示すとおり、スリット1bのグロメット2側の長辺縁部であるボス
側面1cとリブ3aのグロメット2側の側面であるリブ側面3dとは接している。また、取付け
孔5aの長辺端部5bはリヤーオーバーフェンダー1の長手方向に沿うように配置され、リブ3aと取付け孔5aの短辺縁部5cとの間に間隙Lが設けられる。
【0012】
リヤオーバーフェンダー1をリヤフェンダー5に組付ける手順を説明する。まずリヤフ
ェンダー5に設けられた取付け孔5aにリヤオーバーフェンダー1のボス部1aを挿通し、ボス部1aとキャップ3のリブ3aを有する面であるキャップ座面3eとでリヤフェンダー5を挟んで、リブ3aを取付け孔5aに挿通させ、さらにリブ3aをボス部1aに設けられたスリット1bに挿通させる。グロメット2とキャップ裏面3fとが接するまでキャップ3をボス部1aに向かって押込み、リブ側面3dからグロメット2に向かって突出する爪3bとボス側面1cの端部が嵌合
することで、キャップ3とリヤオーバーフェンダー1とでリヤフェンダー5を挟んだ状態
でキャップ3はボス部1bに仮保持される。そして、スクリュー4をキャップ3中央に設けられた挿入孔3cからグロメット2に向けて回転荷重を加えながら挿通させ、リヤフェンダ
ー5にリヤオーバーフェンダー1を締結する。なお、図3(b)及び(c)に示すとおり、スク
リュー4でリヤオーバーフェンダー1とリヤフェンダー5とが締結された状態において、グロメット2とキャップ裏面3fとは強圧される一方、キャップ座面3eとリヤフェンダ5とは、その間に若干の間隙lが設けられ圧着しない。キャップ3はリヤフェンダ5の曲面に沿って、リブ3aと取付け孔5aの短辺縁部5cとの間に設けられる間隙Lの分だけ摺動可能である。
このため、リヤオーバーフェンダー1の長手方向に沿ってオーバーリヤフェンダー1に所定以上の力が加えられた場合に、リヤオーバーフェンダー1に伴ってキャップ3が間隙Lだけリヤオーバーフェンダー1の長手方向に移動可能となる。
【0013】
スクリュー4に加えられた回転荷重は、スクリュー座面4aとキャップ3との摩擦によりキャップ3に伝達する。キャップ3がスクリュー4を軸として回転を開始しようとすると、リブ3aと長辺縁部5bとが干渉し、キャップ3の回転が抑制され、キャップ裏面3fからグロメ
ット2を介して、ボス部へスクリュー4の回転荷重が伝達することが抑制される。また、
スクリュー4に加えられた回転荷重がグロメット2に伝達し、ボス部が回転を開始しようとするが、リブ側面3dがボス側面1cを挟み込んでいるため、グロメット2の回転が抑制さ
れ、グロメット2からボス部へスクリュー4の回転荷重が伝達することが抑制される。このように、スクリュー4に加えた回転荷重をリヤフェンダー5に形成された取付け孔5aの長辺縁部5c、及びキャップ3に設けたリブ側面3dで受け止めるため、リヤオーバーフェンダー
1をリヤフェンダー5に組付ける際に、スクリュー4に加えた回転荷重がボス部1aに伝わることでリヤオーバーフェンダー1のボス部1aの根元に応力が集中し、リヤオーバーフェンダー1が歪むまたは白化することを抑制可能となる。
【0014】
また、樹脂は温度変化による熱膨張や熱収縮、そして湿度の変化にともなう吸水膨張や乾燥収縮による寸法変化が、金属のそれに比べて一般的に大きいとされる。そのため、金属製パネルのリヤフェンダー5に比べ、樹脂製のリヤオーバーフェンダー1の方が膨張収縮率が高く、リヤフェンダー5にリヤオーバーフェンダー1を組付けた後の温度や湿度の変化によりリヤオーバーフェンダー1が長手方向に沿って膨張収縮する。
【0015】
このため、リヤフェンダー5にリヤオーバーフェンダー1が強固に固定されている場合、リヤオーバーフェンダーの膨張収縮による寸法変化によりボス部1aに応力が集中し、リヤオーバーフェンダー1のボス部1aの根元に応力が集中し、リヤオーバーフェンダー1が歪
むまたは白化する恐れがある。
本発明では先述の通り、キャップ3とリヤフェンダ5とは、強く密着しないため、キャップ3はリヤフェンダ5の曲面に沿って、リブ3aと取付け孔5aの短辺縁部5cとの間に設けられる間隙Lの分だけリヤオーバーフェンダー1の長手方向に摺動可能である。このため、リヤオーバーフェンダー1の膨張収縮による寸法変化に対してボス部1aが摺動修道することで
、リヤオーバーフェンダー1のボス部1aの根元に応力が集中し、リヤオーバーフェンダー1が歪むまたは白化することを抑制可能となる。
【0016】
ところで、本発明の樹脂部品取付け構造は本実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種とることができ、例えば、本発明の樹脂部品取付け構造は内装部品の場合でも、同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0017】
1 リヤオーバーフェンダー
1a ボス部
3 キャップ
3a リブ
3b 爪
4 スクリュー
5 リヤフェンダー
5a 取付け孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付け部品である樹脂部品と、
該樹脂部品が表側の面に取り付けられる被取付け部品と、
前記被取付け部品の表側の面に対向して前記樹脂部品に設けられるボス部と、
前記被取付け部品に設けられる取付け孔と、
前記被取付け部品の裏側の面に取り付けられるキャップと、
前記ボス部と前記キャップとを締結するスクリューと、
前記被取付け部品の裏側の面と対向して前記キャップに設けられ、前記取付け孔を挿通する突起と、
を有し、前記スクリュー締結時に前記突起が前記取付け孔の縁部と干渉することを特徴とする樹脂部品取付け構造
【請求項2】
前記樹脂部品の長手方向に沿って前記突起と前記取付け孔縁部との間に間隙を有することを特徴とする、請求項1記載の樹脂部品取付け構造
【請求項3】
前記突起に設けられ前記スクリューに向かって突出させた爪と、前記ボス部の端部とが嵌合することで前記キャップが前記ボス部に仮保持されることを特徴とする請求項1また
は2記載の樹脂部品組付け構造

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図3(c)】
image rotate


【公開番号】特開2013−95270(P2013−95270A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239975(P2011−239975)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】