説明

機器の壁面取付構造

【課題】 壁掛け金具を用いて機器を壁に取付けるにあたって、壁掛け金具の係止片に機器の穴を合わせ易くする。
【解決手段】 壁掛け金具1は機器2に係止する第1係止片11aを上部の左右に、第2係止片11bを下部の左右に備え、機器2の背部に第1係止片11a及び第2係止片11bを下方から受け入れて保持する第1係止穴21a及び第2係止穴21bを設けた。第1係止穴21aの下方に第1係止片11aを第1係止穴21aに案内する案内凹部23を形成した。案内凹部23の左右端部となる外側の壁部23a間の距離は左右の第1係止片11aの先端間の距離より大きく形成し、テーパ面22aを介して第1係止穴21aに連結した。機器2を壁掛け金具1に保持させる際に、第1係止片11aを案内凹部23に位置合わせした後、機器2を下方に移動して全ての係止穴21に係止片11を挿入して機器を壁掛け金具1に係止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機器の壁面取付構造に関し、詳しくは壁に壁掛け金具を取り付けて、この壁掛け金具に機器を保持させることで機器を壁に取り付ける機器の壁面取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
別途設けたインターホン子機等と通話を行うためのインターホン親機等の機器は居室壁面に設置すると使い勝手が良く、このような機器を壁面に取り付ける場合は壁掛け金具が使用される。壁掛け金具は通常壁面に埋設されたスイッチボックスを覆うように取り付けられ、この取付金具に対して機器が取り付けられて壁面に設置される。なお、この場合、スイッチボックスには、インターホン子機等から壁内を通して配設された伝送線や電源線が挿通され、壁掛け金具を介して機器に接続される。
このような機器の壁面取付構造として、例えば特許文献1に記載された構成のものがある。具体的に特許文献1には、壁掛け金具の4隅に機器を引っ掛ける引っ掛け部を設け、対応する機器ケースには引っ掛け部を挿入する穴と穴の下方に穴へ続く凹部及び案内溝を設け、案内溝に案内させて穴に引っ掛け部を挿入させる構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−124644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁掛け金具を使用する上記特許文献1の技術は、案内溝に壁掛け金具の引っ掛け部を合わせることで、その後は案内溝を辿って引っ掛け部を凹部に誘導すれば、穴に引っ掛け部を挿入できた。
しかしながら、壁に取り付けた壁掛け金具の係止片に機器ケースの案内溝を合わせる作業は、引っ掛け部が機器ケースに隠れて見えなくなってしまうため作業がし辛かった。特に、取り付ける壁面の左右どちらかに構造物があった場合、側面からの視認は不可能となり更に作業し辛かった。また、凹部や案内溝は引っ掛け部より僅かに大きい程度であったため、引っ掛け部を凹部に誘導するのに手間取ったし、案内溝が小さいために左右一方しか引っ掛かっていないような中途半端な状態で取り付けられた場合があった。更に、壁掛け金具には上下方向があるため、反転して壁面に取り付けた場合は機器を取り付けできなかった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、壁掛け金具を用いて機器を壁に取付けるにあたって、壁掛け金具の係止片に機器の穴を合わせ易く、また壁掛け金具に方向性が無く容易に機器を取り付けできる機器の壁面取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に請求項1の発明は、壁面に固定した壁掛け金具に保持させて機器を壁面に取り付ける機器の壁面取付構造であって、壁掛け金具は、機器を係止して保持するための第1係止片を左右に備える一方、機器の背部には第1係止片を下方から受け入れて保持する第1係止穴を一対有し、第1係止片は、壁掛け金具の枠状本体の左右端部から前方に突出して形成され、突出した部位に第1係止穴に係止する舌片を有し、左側の第1係止片の舌片は左側方へ突出する一方、右側第1係止片の舌片は右側方へ突出して形成され、機器は、第1係止穴に第1係止片を導く為の案内凹部を第1係止穴の下部に有し、案内凹部は、左右の舌片に対して一体に或いは独立に形成され、舌片の左右端部のうち少なくとも外側突出部に係合する壁部を有し、左右に形成された壁部間の距離は、左右の舌片の外側先端部間の距離より大きく形成されると共に、壁部は第1係止穴からテーパ面を介して連続形成され、第1係止片を案内凹部内に配置した後、機器を下方に移動して、第1係止穴に第1係止片を挿入し、機器を壁掛け金具に保持させることを特徴とする。
この構成によれば、案内凹部が広く形成されているため、第1係止片を案内凹部内に容易に配置できる。配置した後は、機器を下方へ移動すればテーパ面が係止片を誘導するため、係止穴にスムーズに挿入させることができ、機器の取り付けを簡易に実施できる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の構成において、壁掛け金具は、上端に第1係止片を有すると共に下端に同様の形状の一対の第2係止片を備え、機器背面には第2係止片に対応する第2係止穴が第1係止片と同様の形状で形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、機器を取り付ける際に完全に隠れる第1係止片に対しては案内凹部があるので、係止片の第1係止穴への挿入を簡易に行うことができる。そして機器の4ヶ所が係止されることで機器を安定した状態で壁に取り付けできる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載の構成において、第2係止穴は、機器背部の下端部或いは下端部近傍に形成され、第2係止穴の下部には第2係止片を案内するテーパ面を有することを特徴とする。
この構成によれば、第2係止穴は機器の下端部或いは下端部近傍に形成されているので、案内凹部に第1係止片を位置合わせする際、第2係止片を機器の下方に露出させた状態で位置合わせすることができる。そのため、第2係止片を第2係止穴に挿入する際、目視で位置を確認しながら取り付け作業ができ、作業がし易い。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は3記載の構成において、一対の第1係止片及び一対の第2係止片を構成する全4個の係止片は、壁掛け金具の4隅に上下及び左右対称に配置形成され、壁掛け金具を上下反転しても機器の取り付けが可能であることを特徴とする。
この構成によれば、壁掛け金具には上下の方向性がないため、上下反転させても機器を取り付けることができ、上下方向を間違える問題が生じない。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の構成において、壁掛け金具は、各係止片に隣接する4ヶ所に機器を固定するための固定孔を備える一方、機器は第1係合穴に隣接する部位に、係止片が第1係合孔に挿入された際に固定孔に係止する突起を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、壁掛け金具に取り付けた機器は固定されるし、壁掛け金具を上下反転しても機器は確実に固定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、案内凹部が広く形成されているため、第1係止片を案内凹部内に容易に配置できる。配置した後は、機器を下方へ移動すればテーパ面が係止片を誘導するため、係止穴にスムーズに挿入させることができ、機器の取り付けを簡易に実施できる。
また、壁掛け金具の係止片を壁掛け金具の4隅に上下及び左右対称に配置形成でき、壁掛け金具の上下の方向性を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る機器の壁面取付構造の一例を示し、壁掛け金具を機器に取り付けた状態の背面視斜視図である。
【図2】壁掛け金具の斜視図である。
【図3】機器の背面視斜視図である。
【図4】機器を壁掛け金具に取り付ける様子を示す背面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は本発明に係る機器の壁面取付構造の一例を示し、図1は壁掛け金具を機器に取り付けた状態の背面視斜視図、図2は壁掛け金具の正面視斜視図、図3は機器の背面視斜視図を示している。各図において、1は壁掛け金具、2はインターホン親機等の機器であり、図1に示すように機器2は壁掛け金具1を介して壁面に取り付けられる。
【0014】
壁掛け金具1は、図2に示すように略四角形板状の枠体であり、枠状本体1aの4隅に機器2を係止するための係止片11(上部の第1係止片11a,11aと下部の第2係止片11b,11b)を備えている。枠状本体1aは、別途設置されたインターホン子機(図示せず)から配設された伝送線や電源線等を挿通するための大開口部12が中央に形成され、大開口部12の周囲には壁に固定する際使用される複数の小孔が形成され、このうち長孔13は壁に埋設されたスイッチボックス(図示せず)に固定するためのネジの挿通孔に使用される。
【0015】
係止片11は、枠状本体1aに対して前方に1段張り出してL字状に折り曲げ形成され、張り出した位置で横方向に突出させた舌片16を備えている。具体的に、第1係止片11a、第2係止片11bともに左側の舌片16は枠状本体1aの左外方へ突出形成され、右側の舌片16は右外方へ突出形成されている。そして、これら全4個の係止片11a,11a,11b,11bは枠状本体1a上で左右対称かつ上下対称に形成されている。即ち全ての係止片11は同一形状であり、上下反転しても同一の形状となっている。
更に、各係止片11に隣接する枠状本体1aには、取り付けた機器2を固定するための固定孔14が穿設されている。
【0016】
機器2の背面2aには、壁掛け金具1の係止片11を挿入する係止穴21(上部の第1係止穴21a、下部の第2係止穴21b)が、夫々の係止片11の位置に合わせて4ヶ所形成され、下方から係止片11を受け入れるよう下方に向けて開口形成されている。そして、全ての係止穴21の下部には、テーパ面22aを設けて拡幅したガイド部22が設けられ、係止片11の挿入をし易くしている。
【0017】
また、上部一対の第1係止穴21a,21aに対しては、ガイド部22に連続して案内凹部23が下方に延設されている。この案内凹部23は、係止片11の幅寸法(図4に示すt1)に対して十分に大きな幅(図4に示すt2)を有している。そして、係止穴21、ガイド部22と同一の深さで連続形成され、テーパ面22aに連続する壁部23aが形成され、第1係止片11aの舌片16先端部に当接して第1係止片11aを第1係止穴21aの直下にガイドし、挿入係止操作をし易くしている。更に、第1係止穴21aの近傍には、壁掛け金具1の固定孔14に係合する突起24が形成されている。
【0018】
一方、下部一対の第2係止穴21b,21bは、機器2の下端部近傍に形成され、案内凹部23に第1係止片11aを位置合わせする際、第2係止片11b,11bが機器2に隠れることなく露出するよう形成されている。
【0019】
このように構成された機器の壁面取付構造の作用を次に説明する。まず壁掛け金具1が壁面に取り付けられる。壁掛け金具1はネジ等により壁に固定される。通常、壁に埋設されたスイッチボックスにねじ挿通孔を使用してネジ止めすることで壁面に取り付けられる。壁面に取り付けられた壁掛け金具1は、係止片11が前方に張り出した状態になる。
【0020】
こうして壁面上で張り出した係止片11に対して機器2の左右を位置合わせ操作し、下方に摺動して取り付ける。図4は、この取り付け操作時の壁掛け金具1と機器2の位置関係を示す背面説明図であり、この図を基に具体的に説明する。
まず、壁掛け金具1の上部が隠れるように機器2を配置し、押し付けながら左右に少し動かすことにより、壁掛け金具1の上部の第1係止片11aを機器2の案内凹部23内に入り込ませる。この時、下部の第2係止片11bは押し当てられた機器2に隠れることが無いので、作業者は第1係止片11aの位置を想像して案内凹部23に容易に入り込ませることができる。また、案内凹部23は幅広に形成されているので、容易に入り込ませることができる。
第1係止片11aが案内凹部23に入り込んだ係合状態は、第1係止片11aが案内凹部23の左右の壁部23aに当接して左右動が規制されるため容易に確認できる。
【0021】
第1係止片11aを位置合わせした後、機器2を下方向に摺動操作すると、第1係止片11aは案内凹部23に続きテーパ面22aにガイドされ、第1係止穴21aに挿入される。同時に下部の第2係止片11bはガイド部22のテーパ面22aに案内されて下部の第2係止穴21bに挿入される。係止片11の挿入が完全に終了すると、機器2の突起24が固定孔14に係合して機器2が固定され、機器2の壁面への取り付けが終了となる。
【0022】
尚、突起24が固定孔14に完全に係合しない中途半端な状態では、テーパ面22aを有するガイド部22の存在により、係止片11は機器2に係止し難く機器2が滑り落ち易い。特に、機器2の裏で配線の余長分が多い場合顕著で、機器2が前方に押し出されて係止片11が機器2から外れ易い。そのため、中途半端な取り付け状態を把握し易く、中途半端な状態で取り付けられるのを防止でき、後から機器の落下等で配線が切断されるのを防止できる。
【0023】
このように、上部の第1係止片11aに対して形成された案内凹部23は広く形成されているため、第1係止片11aを案内凹部23に容易に配置することができ、第1係止片11aが隠れて見えなくても第1係止片11aを案内凹部23に簡単に配置できる。その後は、機器2を下方へ移動すれば、テーパ面22aが第1係止片11aを誘導するため第1係止穴21aにスムーズに挿入させることができ、機器2の取り付けを簡易に実施できる。
また、係止片11を係止穴21に挿入する際、下部の第2係止穴21bは機器背面2aの下端部近傍に形成されているので、第2係止片21bを機器2の下方に露出させた状態で第1係止片11aを案内凹部23に位置合わせすることができる。そのため、作業者が目視で第1係止片11aの位置を確認しながら取り付けることができ、取り付け作業がし易い。また、4ヶ所が係止されるので機器2を安定した状態で壁に取り付けできる。
更に、壁掛け金具1には上下方向が無いため、上下反転しても機器2を取り付けることができ、上下方向を間違える問題が生じない。
【0024】
尚、上記実施形態は、ガイド部22、案内凹部23を左右の第1係止片11a,11aに対して独立に形成しているが、ガイド部22、案内凹部23は左右の第1係止片11a,11aの双方に対して連続した凹部として一体としても良い。この場合、一体型とした案内凹部23の幅t4(図4に示す)が左右の舌片16間の幅t3より大きく(例えば5mm大きく)形成すれば良く、左右外側に突出した舌片16の先端部を良好にガイドでき、係止穴に誘導できる。
また、係止片11を一対の第1係止片11a,11aと一対の第2係止片11b,11bと4個設けた構成を示しているが、少なくとも一対の第1係止片11a,11aを設けるだけでも機器2を安定して保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
上記実施形態はインターホン機器の設置に関して説明したが、上記機器の壁面取付構造はインターホン機器の取り付けに関わらず、各種電子機器、特に液晶表示装置等を壁面に取り付ける際に好適である。
【符号の説明】
【0026】
1・・壁掛け金具、1a・・枠状本体、2・・機器、2a・・機器ケース、11・・係止片、14・・固定孔、16・・舌片、21・・係止穴、22・・ガイド部、22a・・テーパ面、23・・案内凹部、23a・・壁部、24・・突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に固定した壁掛け金具に保持させて機器を壁面に取り付ける機器の壁面取付構造であって、
前記壁掛け金具は、機器を係止して保持するための第1係止片を左右に備える一方、機器の背部には前記第1係止片を下方から受け入れて保持する第1係止穴を一対有し、
前記第1係止片は、壁掛け金具の枠状本体の左右端部から前方に突出して形成され、突出した部位に前記第1係止穴に係止する舌片を有し、左側の第1係止片の前記舌片は左側方へ突出する一方、右側第1係止片の前記舌片は右側方へ突出して形成され、
前記機器は、前記第1係止穴に前記第1係止片を導く為の案内凹部を前記第1係止穴の下部に有し、
前記案内凹部は、前記左右の舌片に対して一体に或いは独立に形成され、前記舌片の左右端部のうち少なくとも外側突出部に係合する壁部を有し、左右に形成された前記壁部間の距離は、左右の前記舌片の外側先端部間の距離より大きく形成されると共に、前記壁部は前記第1係止穴からテーパ面を介して連続形成され、
前記第1係止片を前記案内凹部内に配置した後、機器を下方に移動して、前記第1係止穴に前記第1係止片を挿入し、機器を前記壁掛け金具に保持させることを特徴とする機器の壁面取付構造。
【請求項2】
前記壁掛け金具は、上端に前記第1係止片を有すると共に下端に同様の形状の一対の第2係止片を備え、機器背面には前記第2係止片に対応する第2係止穴が前記第1係止片と同様の形状で形成されて成ることを特徴とする請求項1記載の機器の壁面取付構造。
【請求項3】
前記第2係止穴は、前記機器背部の下端部或いは下端部近傍に形成され、前記第2係止穴の下部には前記第2係止片を案内するテーパ面を有することを特徴とする請求項2記載の機器の壁面取付構造。
【請求項4】
一対の前記第1係止片及び一対の前記第2係止片を構成する全4個の係止片は、壁掛け金具の4隅に上下及び左右対称に配置形成され、壁掛け金具を上下反転しても機器の取り付けが可能であることを特徴とする請求項2又は3記載の機器の壁面取付構造。
【請求項5】
前記壁掛け金具は、各係止片に隣接する4ヶ所に前記機器を固定するための固定孔を備える一方、前記機器は前記第1係合穴に隣接する部位に、前記係止片が前記第1係合孔に挿入された際に前記固定孔に係止する突起を備えたことを特徴とする請求項4記載の機器の壁面取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−54695(P2012−54695A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194551(P2010−194551)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】