説明

歩数計

【課題】 操作部の操作による歩行の誤検出を抑制して、より正確な歩数計測を行えるようにすること。
【解決手段】 CPU101は、操作部104の操作を検出したとき、歩行判定モードに移行して、加速度センサ105からの歩行信号を計数して順次歩数バッファメモリ110に記憶し、前記歩行判定モードにおいて歩行中と判断した場合には、歩数計測モードに移行して、歩数バッファメモリ110に記憶した歩数を歩数メモリ109に記憶している歩数に加算した後、継続して歩数計測を行い、加速度センサ105からの歩行信号を受信する毎に歩数メモリ109の歩数に加算する。歩行判定モードにおいて、歩行停止状態にあると判断したときは、歩数バッファメモリ110の歩数は歩数メモリ109の歩数に加算することなく歩数計測を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行を検出して歩数計測を行う歩数計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使用者の腕や腰等の身体に装着して、あるいは、使用者が保持しているバッグに収納した状態等で使用することにより、当該使用者の歩数を計測する歩数計が開発されている。
前記従来の歩数計は、使用者の身体の動きを検出し、一定の動きがあれば歩行が生じたと判別して、歩数の計測を行っている。
【0003】
したがって、歩数計の表示モードとして複数の表示モード(例えば、歩数表示モード、距離表示モード、カロリー表示モード等)が設けられており、これらのいずれの表示モードにおいても、選択された表示を行いながら歩数計数動作を行うように機能する場合、操作部を操作して表示モードを切り換えると、操作部の操作によるスイッチ入力時の振動を歩行センサが感知して歩行と誤認識してしまい、歩行していないにもかかわらず歩数として誤計数してしまうという問題がある。
【0004】
従来、前記問題を解決する方法として、操作部の操作から一定時間だけ歩数検出を停止し、前記歩数検出停止時間に生じた歩数を、操作部が操作される直前の歩行ピッチから類推して、前記停止時間の歩数を補正するようにした歩数計が開発されている(特許文献1参照)。また、他の方法として、前記停止時間中の操作によるスイッチ入力数を計数して、補正を行うようにした歩数計が開発されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のいずれに記載された発明も、歩数検出の停止時間を設け、補正をしていることから、歩数を正確に計測できないという問題がある。
一方、歩行センサからの信号が所定期間連続して入力された場合に、歩行中であると判定するようにした歩数計が開発されているが(特許文献3参照)、操作部の操作による誤検出については考慮されていない。
【0006】
【特許文献1】特許第3493550号公報(段落[0026]〜[0033]、図6)
【特許文献2】特開2005−291890号公報(段落[0071]〜[0135]、図8〜図23)
【特許文献3】特開2005−283340号公報(段落[0014]〜[0041]、図1〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、操作部の操作による誤検出を抑制して、より正確な歩数計測を行うことが可能な歩数計を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、歩行を検出して対応する歩行信号を出力する歩行検出手段と、前記歩行信号に基づいて歩数を算出すると共に歩行状態か否かを判断する歩行判定モードにおいて歩行状態にあると判断したとき、前記歩行信号に基づいて歩数を計数する歩数計測モードに移行することによって継続して前記歩数信号に基づく歩数計数を行い、前記歩行判定モードにおいて歩行停止状態にあると判断したとき、歩数の計数を停止する歩数計数手段と、前記歩数計数手段によって計数した歩数を表示する表示手段と、所定の操作を行うための操作手段と、前記操作手段の操作を検出する操作検出手段とを備えて成り、前記歩数計数手段は、前記操作手段が操作されたことを前記操作検出手段が検出したときに前記歩行判定モードに移行し、前記歩行判定モードにおいて歩行状態と判断した場合には、前記歩数計数モードに移行して継続して歩数計数を行うことを特徴とする歩数計が提供される。
【0009】
歩行検出手段は歩行を検出して対応する歩行信号を出力する。歩数計数手段は、歩行判定モードにおいて歩行状態にあると判断したとき、歩数計測モードに移行することによって継続して前記歩数信号に基づく歩数計数を行い、前記歩行判定モードにおいて歩行停止状態にあると判断したとき、歩数の計数を停止する。また、前記歩数計数手段は、操作手段が操作されたことを操作検出手段が検出したときに前記歩行判定モードに移行し、前記歩行判定モードにおいて歩行状態と判断した場合には、前記歩数計数モードに移行して継続して歩数計数を行う。表示手段は、前記歩数計数手段によって計数した歩数を表示する。
【0010】
ここで、前記歩数計数手段は、前記歩行判定モードにおいて、前記歩行信号が所定時間継続して得られたときに歩行状態と判断するように構成してもよい。
また、前記歩行判定モードにおいて前記歩数計数手段が計数した歩数を順次記憶する歩数バッファメモリと、前記歩数計測モードにおいて計数した歩数を順次記憶する歩数メモリとを有し、前記歩数計数手段は、前記歩行判定モードにおいて計数した歩数を前記歩数バッファメモリに記憶すると共に前記歩数計測モードにおいて計数した歩数を前記歩数メモリに記憶し、前記歩行判定モードから歩行計測モードへの移行に際して、前記歩数バッファメモリに記憶した歩数を前記歩数メモリに記憶した歩数に加算して記憶するように構成してもよい。
【0011】
また、前記表示手段は歩数を表示する歩数表示モードを含む複数の表示モードを有し、前記操作手段の操作に応答して前記表示モードを切り換えるように構成してもよい。
また、前記表示手段は、前記歩数表示モードでは、前記歩数メモリに記憶した歩数に対応する歩数を表示するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る歩数計によれば、操作部の操作による誤検出を抑制して、より正確な歩数計測を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図であり、腕や腰に装着して、あるいは、バッグ等に収納した状態で保持して使用されるように構成された歩数計の例である。
図1において、歩数計は、中央処理装置(CPU)101、所定周波数の信号を出力する発振回路102、発振回路102の出力信号を所定分周比で分周して計時用の基準信号を出力する分周回路103、外部から操作可能なキースイッチ等によって構成された操作部104、使用者の歩行(走行も含む。)を検出して該歩行に対応する信号(歩行信号)を出力する加速度センサ105、加速度センサ105からの歩行信号を増幅して出力する増幅回路106を備えている。
【0014】
また、歩数計は、歩数や時刻等を表示する表示部107、計測した歩数データや設定値等を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)109、CPU101が実行するプログラム等を予め記憶した読み出し専用メモリ(ROM)111を備えている。RAM109は計測した歩数を順次記憶する歩数メモリとして機能し又、RAM109には、後述する歩行判定モードにおいて歩数を一時的に記憶するための歩数バッファメモリ110が設けられている。
ここで、CPU101は歩数計数手段及び操作検出手段を構成し、操作部104は操作手段を構成し、加速度センサ105は歩行検出手段を構成し、表示部107は表示手段を構成し、RAM109及びROM110は記憶手段を構成している。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係る歩数計の通常時の歩数計測処理を示すフローチャートであり、CPU101がROM111に記憶されたプログラムを実行することによって行う処理を示している。
また、図3は、本実施の形態における通常時の歩数計測処理のタイミング図である。
以下、図1〜図3を用いて、本実施の形態に係る歩数計について、通常時の歩数計測処理動作を説明する。
【0016】
本実施の形態に係る歩数計の歩数計測動作を概略説明すると、通常時の歩行計測処理は、加速度センサ105からの歩行信号に基づいて歩数を算出すると共に歩行状態か否かを判断する歩行判定モード(図3における時刻T1〜T2)と、前記歩行信号に基づいて使用者の歩数を計数する歩数計測モード(図3における時刻T2以降)とによって構成されている。
【0017】
前記歩行判定モードでは、CPU101は、所定長さの歩行判定期間(T1〜T2)において、増幅回路106を介して加速度センサ105から受信した歩行信号に基づいて、歩行中か否かを判定する。また、CPU101は、前記歩行判定期間中に加速度センサ105から受信した歩行信号を計数して歩数バッファメモリ110に記憶する。
【0018】
一方、前記歩数計測モードでは、CPU101は、増幅回路106を介して加速度センサ105から歩行信号を受信する毎に、歩数メモリ109に記憶されている歩数に加算して、使用者の累積歩数を計数する。CPU101は、前記歩行判定モードから前記歩数計測モードに移行した直後には、前記歩行判定期間中に計数した歩数データを歩数バッファメモリ110から読み出して、歩数メモリ109に記憶されている歩数に加算した後、歩行センサ105からの歩数信号を受信する毎に、歩数メモリ109に記憶している歩数データに加算して、累積歩数を算出する、以上のようにして、歩数計測を行う。
【0019】
次に、本実施の形態に係る歩数計の動作を詳細に説明すると、先ず、使用者は、腕などに歩数計を装着して、歩数計測動作を開始する。
加速度センサ105は、図3に示すように、使用者の歩行を検出する毎に、対応する歩行信号を出力する。
【0020】
CPU101は、使用者の歩数を計測する歩数計測モードにあるか否か判断し(ステップS21)、歩数計測モードにあると判断した場合には、増幅回路106を介して加速度センサ105から歩行信号を受信したか否か確認し(ステップS210)、前記歩行信号が無いと判断した場合には使用者が歩行停止状態にあると判定を行い(ステップS211)、前記歩行信号を受信していないと判断した場合には表示部107に現在時刻等を表示する(ステップS26)。
【0021】
CPU101は、処理ステップS21において、歩数計測モードにないと判断した場合には、歩行判定期間が終了しているか確認し(ステップS22)、前記期間が終了していれば、歩行判定モードを停止し(ステップS27)、歩数計測モードに移行する(ステップS28)。
次に、CPU101は、加速度センサ105からの歩行信号を確認し(ステップS29)、歩行信号があれば、歩行判定期間中の歩数(歩数バッファメモリ110に記憶した歩数)を、現在の歩数(歩数メモリ109に記憶している歩数)に加算し(ステップS30)、表示部107に歩数の表示やその他の処理(例えば、カロリー計算、距離計算など)を行う(ステップS26)。尚、歩数バッファメモリ110の歩数データは、処理ステップS30の時点でクリアされる。
【0022】
CPU101は、処理ステップS22において、歩行判定期間が終了していない(即ち、歩行判定モードにある)と判断した場合、加速度センサ105からの歩行信号を確認し、歩行信号があれば歩数バッファメモリ110に記憶した歩数に1加算し(ステップS24)、歩行判定期間をスタートさせた後(ステップS25)、処理ステップS26に移行する。但し、既に歩行判定期間がスタートしている場合には、処理ステップS25では、スタート処理等の処理は一切行わない。前記処理を繰り返すことにより、通常時の歩数計測が行われる。尚、CPU101における処理ステップS21〜S30、S210、S211は、歩数計数手段を構成している。
【0023】
CPU101は、計測した歩数に基づいて、使用者が歩いた距離、消費したカロリーを算出する。使用者は、操作部104を操作することによって、表示部107の複数の表示モード(例えば、歩数を表示する歩数表示モード、使用者が歩いた距離を表示する距離表示モード、使用者が消費したカロリーを表示するカロリー表示モード)の中のいずれかを切り換え表示させて、歩数、距離、消費カロリーを確認することができる。
【0024】
次に、操作部104の操作によって発生した振動を歩行と誤検出しないための処理(誤検出防止処理)について説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る歩数計において、誤検出防止処理を含む歩数計測処理のフローチャートであり、CPU101がROM111に記憶されたプログラムを実行することによって行う処理を示している。尚、図2と同一内容の処理については同一符号を付して、以下の説明を省略する。
また、図5は、図4の処理を行う場合のタイミング図である。
以下、図1、図4及び図5を用いて、誤検出防止処理を含む歩数計測処理について説明する。
【0025】
図5の時刻T3において、表示部107の表示切換等の操作を操作部104によって行う(即ち、操作部104の操作によって、図示しない操作スイッチをONにする)と、CPU101は操作部104が操作されたと判断して(図4のステップS311)、歩数バッファメモリ110に記憶している歩数データをクリアする(ステップS312)。
また、CPU101は、歩数計測モードをOFFにして強制的に歩数計測モードを停止し(ステップS313)、歩行判定モードをONにして歩行判定モードに移行する(ステップS314)。ここで、CPU101における処理ステップS311は操作検出手段を構成している。
【0026】
CPU101は、処理ステップ314以降は、図2と同様の処理を行うことにより、歩行判定モード及び歩数計測モードに入って、歩数計測処理を行う(ステップS21〜S30、S210、S211)。
このようにして、CPU101は、操作部104の操作に応答して、歩数計測モードを停止し、歩行判定モードに移行するが、使用者が歩行中であれば、歩行判定期間(時刻T3〜T4)を経過した後、再度、歩数計測モードに移行して、歩数計測を継続することになる。
したがって、歩行を停止した状態で操作部104を操作した場合には、CPU101は、歩行停止と判断して歩数計測は行わないが、歩行している状態で操作部104を操作した場合には、CPU101は、歩行中と判断して歩数計測を継続することになる。
【0027】
以上述べたように本実施の形態に係る歩数計は、CPU101は、操作部104の操作を検出したとき、歩行判定モードに移行し、前記歩行判定モード期間中は、加速度センサ105からの歩行信号を計数して順次歩数バッファメモリ110に記憶する。一方、CPU101は、前記歩行判定モードにおいて歩行中と判断した場合には、歩数計測モードに移行し、歩数バッファメモリ110に記憶した歩数を歩数メモリ109に記憶している歩数に加算した後、継続して歩数計測を行って、加速度センサ105からの歩行信号を受信する毎に歩数メモリ109の歩数に加算する。また、歩行判定モードにおいて、歩行停止状態にあると判断したときは、歩数バッファメモリ110の歩数は歩数メモリ109の歩数に加算することなく歩数計測を停止するようにしている。
【0028】
したがって、操作部104の操作を歩行と誤検出することを抑制することができ、より正確な歩数計測を行うことが可能になるという効果を奏する。
また、補正は行わずに実際の歩行信号を常時検出しているので、より正確な歩数計測が可能になるという効果を奏する。
例えば、表示部107がバックライトを有する液晶表示装置の場合、夜間等では前記バックライトを点灯させるために操作部104を操作したり、歩数表示モードや距離表示モードあるいはカロリー表示モード等の表示切換のために操作部104を操作しても、歩行の誤検出を抑制することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
腕に装着して使用する方式の歩数計、腰に装着して使用する方式の歩数計、バッグに収納して保持した状態で使用する方式の歩数計等、操作部を有する各種の歩数計に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態に係る歩数計のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る歩数計の処理を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る歩数計のタイミング図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る歩数計の処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る歩数計のタイミング図である。
【符号の説明】
【0031】
101・・・歩数計数手段及び操作検出手段を構成するCPU
102・・・発振回路
103・・・分周回路
104・・・操作手段を構成する操作部
105・・・歩行検出手段を構成する加速度センサ
106・・・増幅回路
107・・・表示手段を構成する表示部
109・・・歩数メモリを構成するRAM
110・・・歩数バッファメモリ
111・・・記憶手段を構成するROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行を検出して対応する歩行信号を出力する歩行検出手段と、前記歩行信号に基づいて歩数を算出すると共に歩行状態か否かを判断する歩行判定モードにおいて歩行状態にあると判断したとき、前記歩行信号に基づいて歩数を計数する歩数計測モードに移行することによって継続して前記歩数信号に基づく歩数計数を行い、前記歩行判定モードにおいて歩行停止状態にあると判断したとき、歩数の計数を停止する歩数計数手段と、前記歩数計数手段によって計数した歩数を表示する表示手段と、所定の操作を行うための操作手段と、前記操作手段の操作を検出する操作検出手段とを備えて成り、
前記歩数計数手段は、前記操作手段が操作されたことを前記操作検出手段が検出したときに前記歩行判定モードに移行し、前記歩行判定モードにおいて歩行状態と判断した場合には、前記歩数計数モードに移行して継続して歩数計数を行うことを特徴とする歩数計。
【請求項2】
前記歩数計数手段は、前記歩行判定モードにおいて、前記歩行信号が所定時間継続して得られたときに歩行状態と判断することを特徴とする請求項1記載の歩数計。
【請求項3】
前記歩行判定モードにおいて前記歩数計数手段が計数した歩数を順次記憶する歩数バッファメモリと、前記歩数計測モードにおいて計数した歩数を順次記憶する歩数メモリとを有し、
前記歩数計数手段は、前記歩行判定モードにおいて計数した歩数を前記歩数バッファメモリに記憶すると共に前記歩数計測モードにおいて計数した歩数を前記歩数メモリに記憶し、前記歩行判定モードから歩行計測モードへの移行に際して、前記歩数バッファメモリに記憶した歩数を前記歩数メモリに記憶した歩数に加算して記憶することを特徴とする請求項1又は2記載の歩数計。
【請求項4】
前記表示手段は歩数を表示する歩数表示モードを含む複数の表示モードを有し、前記操作手段の操作に応答して前記表示モードを切り換えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の歩数計。
【請求項5】
前記表示手段は、前記歩数表示モードでは、前記歩数メモリに記憶した歩数に対応する歩数を表示することを特徴とする請求項4記載の歩数計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−2821(P2008−2821A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−169772(P2006−169772)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】