説明

歩行型管理機

【課題】安全クラッチレバーの操作により主クラッチを入切することを可能とし、主クラッチを「切」の状態にした場合には作業者が歩行型管理機本体に近づけるようにする。
【解決手段】主クラッチ14dと連係されるとともに、主クラッチ14dが「入」となる後方位置から主クラッチ14dが「切」となる前方位置までの範囲内において回動軸87を中心として回動可能な安全クラッチレバー56を具備し、安全クラッチレバー56は、水平に架け渡された中央当接部56aと、中央当接部56aの左端部から延出されるとともにステー64に回動可能に支持される左支持部53bと、中央当接部56aの右端部から延出されるとともに右のステーに回動可能に支持される右支持部53cと、を備え、安全クラッチレバー56が前方位置にあるとき、中央当接部56aが歩行型管理機本体に最も近づく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業あるいは中耕除草作業等の農作業を行うための歩行型管理機に関し、より特定的には、歩行型管理機に具備される操作具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より公知の歩行型管理機には、後進時等において、作業者がハンドル及び作業装置と、後方の壁や柱等の構造体と、の間に挟み込まれて身動きがとり難くなることを防止するための挟込防止操作具が具備される。例えば特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の歩行型管理機の操作部には、ハンドル、把持部、操作ボックス、及び、挟込防止操作具の一例であるセーフティワイヤが具備される。
ハンドルは、歩行型管理機本体の後部から左上方に延出した左フレーム、歩行型管理機本体の後部から右上方に延出した右フレーム、並びに、左フレームの中途部及び右フレームの中途部を連結する連結フレームから成る。連結フレームは、左フレーム及び右フレームを補強するとともに、作業者が歩行型管理機本体(作業装置)に近づき過ぎることを防止するためのものであり、安全鑑定基準に準拠した位置に配置されている。
【0004】
左フレーム及び右フレームの後端部には、作業者が手で握るための左右の把持部が形成される。左右の把持部の近傍には、各種の操作具を備えた操作ボックスが設けられ、左右の把持部と連結フレームの間には、セーフティワイヤが左右方向に平行に張られる(張設される)。係るセーフティワイヤは、主クラッチを「入」から「切」に切り替える操作と連係される。
このように構成することで、特許文献1に記載の歩行型管理機においては、後進時等に、作業者がハンドル及び作業装置と、後方の構造体と、の間に挟まれると、作業者の身体がセーフティワイヤに当接することによりセーフティワイヤが前方に引っ張られ、クラッチが「切」となる。その結果、歩行型管理機の走行及び作業装置の作動を迅速に停止することができる。また、作業者が緊急時等においてセーフティワイヤを突発的に後方に引っ張ることによっても、歩行型管理機の走行及び作業装置の作動を迅速に停止することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の歩行型管理機では、主クラッチを「切」の状態にした場合においても、左右の把持部と連結フレームの間に張られたセーフティワイヤが邪魔となって、作業者が歩行型管理機本体に近づくことが困難であった。このため、メンテナンス時等において作業者が操作部(セーフティワイヤの後方)から歩行型管理機本体側に手を伸ばして、作業装置や、変速レバーや、高さ調節レバー等を操作することは困難であった。
また、上記のセーフティワイヤの操作によっては、主クラッチを「切」から「入」に切り替えることができず、操作性という観点からは改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−137647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、挟込防止操作具の操作により主クラッチを「入」または「切」に切り替えることを可能とし、かつ、主クラッチを「切」の状態にした場合には、作業者が歩行型管理機本体に近づくことを可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の一つの観点に従った歩行型管理機は、エンジンが搭載される歩行型管理機本体と、前記エンジンからミッションケースへの動力の伝達を入切する主クラッチと、各種の操作具を支持する左右のステー、前端部が前記歩行型管理機本体に固定されるとともに左右に分岐した後上部に前記左右のステーが固定されたハンドル部、及び、該ハンドル部の左右の後端部であって前記左右のステーの後方となる位置に設けられた左右の把持部、を備える操作部と、前記主クラッチと連係されるとともに、該主クラッチが「入」となる後方位置から該主クラッチが「切」となる前方位置までの範囲内において左右方向に平行な第一回動軸を中心として回動可能な安全クラッチレバーと、を具備し、該安全クラッチレバーは、水平に架け渡された中央当接部と、該中央当接部の左端部から延出されるとともに前記左のステーに回動可能に支持される左支持部と、前記中央当接部の右端部から延出されるとともに前記右のステーに回動可能に支持される右支持部と、を備え、前記安全クラッチレバーが前方位置にあるとき、前記中央当接部が前記歩行型管理機本体に最も近づき、前記安全クラッチレバーが後方位置にあるとき、前記中央当接部が前記左右の把持部に最も近づく、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、挟込防止操作具の操作により主クラッチを「入」または「切」に切り替えることが可能であり、かつ、主クラッチを「切」の状態にした場合には、作業者が歩行型管理機本体に近づくことが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の一形態に係る歩行型管理機の全体的な構成を示す左側面図。
【図2】本発明の実施の一形態に係る歩行型管理機の全体的な構成を示す平面図。
【図3】主クラッチ、主クラッチレバー、及び安全クラッチレバーの連係の態様、並びに、ブレーキ装置及び駐車ブレーキレバーの連係の態様を示す模式図である。
【図4】主クラッチレバー及び安全クラッチレバーの操作系、並びに、駐車ブレーキレバーの操作系を構成する部材を示す斜視図である。
【図5】主クラッチレバー、安全クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーを操作ボックスに取り付けた状態を示す図である。
【図6】主クラッチが「切」の状態のときの、主クラッチレバー及び安全クラッチレバーの配置の関係を示す図である。
【図7】図6の状態から、主クラッチレバーを入位置側に向かって回動したときの状態を示す図であり、安全クラッチレバーが中立位置に到達したときの状態を示す図である。
【図8】主クラッチが「入」の状態のときの、主クラッチレバー及び安全クラッチレバーの配置の関係を示す図である。
【図9】(a)は本実施形態に係る歩行型管理機における作業者の位置及び姿勢を示す図である。(b)は別実施形態に係る歩行型管理機における作業者の位置及び姿勢を示す図である。
【図10】作動位置のときの駐車ブレーキレバーと、切位置のときの主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図11】図10の状態から主クラッチレバーを所定の回動位置Yまで回動したときの、駐車ブレーキレバーと、主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図12】入位置のときの主クラッチレバーと、解除位置のときの駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図13】図12の状態から駐車ブレーキレバーを所定の回動位置Zまで回動したときの、主クラッチレバーと、駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明に係る歩行型管理機の実施の一形態である管理機1の全体的な構成について、図1及び図2を参照して説明する。
管理機1は、適宜の作業装置を装着することにより、耕耘作業あるいは中耕除草等の農作業を行うことができるものである。本実施形態の管理機1には、作業装置の一例としてロータリ式の耕耘装置40が装着されている。
以下では、管理機1が直進する方向を前後方向と規定するとともに、エンジン12が搭載される側を前方(図1の矢印Aの方向)、耕耘装置40が装着される側を後方と規定して説明を行う。
【0013】
図1に示す管理機1は、エンジンフレーム11、エンジン12、伝動機構14、ミッションケース20、走行車輪30・30、耕耘装置40、及び操作部50等を具備する。
ここで、エンジンフレーム11、エンジン12、伝動機構14、ミッションケース20、及び走行車輪30・30を合わせたものは、歩行型管理機本体を構成している。
【0014】
管理機1の駆動源であるエンジン12は、エンジンフレーム11の前部に搭載される。エンジン12の出力軸12aから取り出した回転動力は、プーリ14a・14b及びベルト14c等により構成される伝動機構14を介してミッションケース20の入力軸21に伝達される。
伝動機構14には、後述する主クラッチ14dが備えられる。主クラッチ14dの入切操作は、後述する主クラッチレバー54及び安全クラッチレバー56の操作と連係される(図3参照)。
【0015】
入力軸21から取り出された動力の一部は、ミッションケース20内の変速機構、走行側出力軸、及び車軸31等を経由して、左右一対の走行車輪30・30に伝達される。
変速機構は、入力軸21から走行側出力軸に伝達される動力を複数の変速段に変速可能とする機構であり、変速レバー25の操作と連係される。変速レバー25を操作することにより管理機1の走行速度を変速可能である。
変速機構(厳密には変速機構に備えられるブレーキ軸28(図3参照))には、後述するブレーキ装置18が備えられる。ブレーキ装置18の操作は、後述する駐車ブレーキレバー57の操作と連係される。
【0016】
また、入力軸21から取り出された動力の他の一部は、チェーンケース46・47内の伝動機構及び耕耘側出力軸等を経由して、耕耘装置40の耕耘軸44に伝達される。
【0017】
走行車輪30・30は管理機1を走行させるものである。走行車輪30・30は車軸31の左右両端部に固定されるとともに、ミッションケース20の下部の左右両側方に配置される。
【0018】
耕耘装置40は、前述したチェーンケース46・47、耕耘側出力軸、及び耕耘軸44の他、さらに耕耘カバー45等を備える。耕耘軸44の外周面には耕耘爪42・42・・・が固定される(植設される)。耕耘爪42・42・・・が耕耘軸44と一体的に回転することにより、管理機1を走行車輪30・30によって走行しながら、圃場を耕耘することが可能である。耕耘カバー45は、耕耘爪42・42・・・の回動軌跡の上半部の概ね全体を、上方から被覆している。
【0019】
耕耘カバー45の左右の側面部45b・45c(図2参照)は、上面部45aに対する傾斜角度を変更可能に構成される。左右の側面部45b・45cの傾斜角度を調整することにより、耕耘爪42・42・・・によって跳ね上げられた圃場の土が跳ぶ方向を適宜に調整し、ひいては圃場に所望の形状の畝を形成することが可能である。
【0020】
操作部50は、ハンドル基部51及びハンドル58を有するハンドル部、並びに、各種の操作具を備える。ハンドル基部51はミッションケース20の上に設けられる。ハンドル基部51には、ハンドル58の前端部が高さ調節可能に取り付けられる。ハンドル58は後上方に延出され、その後端部には左右の把持部52・62が形成される。把持部52・62は、管理機1を操作するときに作業者が手で握る部分であり、耕耘装置40の後上方に配置される。
【0021】
図2に示すように、ハンドル58は、前端部から左後上方に延出した左延出部58L、前端部から右後上方に延出した右延出部58R、並びに、左延出部58L及び右延出部58Rを連結するクロスビーム58Cを有する。
【0022】
左延出部58Lの後部には、操作ボックス53が固定される。左延出部58Lの後端部であって操作ボックス53の後方となる位置には、作業者が左手で握る部分である把持部52が形成される。右延出部58Rの後部には、操作ボックス153が固定される。右延出部58Rの後端部であって操作ボックス153の後方となる位置には、作業者が右手で握る部分である把持部62が形成される。把持部52・62は耕耘装置40の後上方に配置される。
【0023】
クロスビーム58Cは、左延出部58Lの中途部と、右延出部58Rの中途部と、を連結するものであり、左右の操作ボックス53・153の前方、かつ、耕耘軸44及び耕耘爪42・42・・・の後方となる位置に設けられる。クロスビーム58Cは左右方向に平行に架け渡される。管理機1では、係るクロスビーム58Cを設けることにより、左延出部58Lと右延出部58Rとを補強している。クロスビーム58Cの上には、エンジン12を停止するための押しボタン式の停止スイッチ68がステーを介して設けられる。
【0024】
ハンドル58上の、左の把持部52の前方となる位置には、操作ボックス53が固定される。操作ボックス53には、主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57を含む各種の操作具が配置される。
ハンドル58上の、右の把持部62の前方となる位置には、操作ボックス153が固定される。操作ボックス153には、耕耘装置40の作動及びその停止を切り替えるための耕耘クラッチレバー55等の各種の操作具が配置される。
左の操作ボックス53と、右の操作ボックス153と、の間には安全クラッチレバー56が架け渡される。安全クラッチレバー56は、管理機1に備えられる「挟込防止操作具」に相当する。
【0025】
なお、本実施形態の管理機1においては、ハンドル基部51を概ね水平方向に回動することにより、ハンドル基部51及びハンドル58が延出する向きを前後に振替可能である。
【0026】
以下では、操作ボックス53の構成について、図4及び図5を参照して説明する。
操作ボックス53は、ベースプレート63、ステー64、及び上カバー65を有する。
【0027】
図4に示すベースプレート63は、板材を折り曲げて形成された部材であり、左側板63a、右側板63b、及び底板63cから成る。左側板63aの上部は、ステー64を介してハンドル58に固定される。左側板63aの上面と、ステー64の下面と、の間には、孔67(隙間)が形成される。ベースプレート63及びステー64は、上方から上カバー65(図1及び図6参照)により被覆される。
ベースプレート63の内側には、駐車ブレーキレバー57、主クラッチレバー54、及び第二支持部材82(後述)が左右方向に並べて設けられる。
【0028】
ステー64の後部の側面部、及び、右側板63bには、回動軸66を貫装するための側面視円形状の孔64d・63eがそれぞれ形成される。
孔64d・63eに回動軸66を貫装することにより、回動軸66はその軸線が水平方向に延びた姿勢で、ベースプレート63及びステー64に支持される。回動軸66は主クラッチレバー54の回動支点を成す。
なお、以下の説明における「側面視」及び「右側面視」は、回動軸66の軸線方向からみたときの状態を指すものとする。
【0029】
ステー64の前部の側面部には、回動軸69を貫装するための側面視円形状の孔64fが形成される。
孔64fに回動軸69を貫装することにより、回動軸69はその軸線が回動軸66の軸線と平行となる姿勢で、ステー64に支持される。回動軸69は駐車ブレーキレバー57の回動支点を成す。
ここで、右側面視において、回動軸69の中心が配置される地点は、回動軸66の中心が配置される地点の前方に配置されている。このように、回動軸69と回動軸66とは、相互に平行であり、かつ、軸線方向が一直線とならないように配置されている。
【0030】
ベースプレート63の右側板63bの前部には、安全クラッチレバー56の左連結部56d(後述)を回動可能に支持するための側面視円形状の孔63fが形成される。
また、右の操作ボックス153の左側板(不図示)には、安全クラッチレバー56の右連結部56e(後述)を回動可能に支持するための側面視円形状の孔(不図示)が形成される。当該孔は、側面視において孔63fと重ね合わせることが可能である。
【0031】
図3に示すように、主クラッチレバー54と安全クラッチレバー56とは、第一連係機構80により互いの動きが連係されている。第一連係機構80については、後に詳述する。
また、主クラッチレバー54と駐車ブレーキレバー57とは、第二連係機構70により相互の動きが連係されている。第二連係機構70の構成についても、後に詳述する。
【0032】
以下では、主クラッチレバー54、主クラッチ14d、第二支持部材82、及びこれらを連係する機構について、図3〜図6を参照して詳細に説明する。
【0033】
主クラッチレバー54は、主クラッチ14dを「入」または「切」に人為的に切り替えるための操作具である。主クラッチレバー54は、把持部52を手で握っている作業者が、把持部52から手を離さなくても、先端部のグリップ54g(後述)を親指等で押し上げたり押し下げたりすることにより操作可能な位置に配置される(図1及び図2参照)。
【0034】
図4及び図5に示すように、主クラッチレバー54は前後方向に長い板状の部材であり、後延出部54a、中途部54b、及び前延出部54cを有する。後延出部54aの先端部(後端部)には、操作時に作業者が手(指)で触れて力を加える部分であるグリップ54gが形成される。後延出部54aは、操作ボックス53の後部の、ベースプレート63及び上カバー65の間の孔(不図示)に貫装され、中途部54b及び前延出部54cはベースプレート63の内側に収容される。
【0035】
中途部54bは、後延出部54aと前延出部54cとが接続される部分であり、円筒部54d及び突出片54eが形成される。
円筒部54dは、中途部54bの側面から左右両側方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回動軸66に嵌装される。突出片54eは、中途部54bの右側面から右側方に向かって突出する部材であり、後述する第二支持部材82の下面と当接可能である。
前延出部54cには、後述する当接面54fが形成される。
【0036】
第二支持部材82は、前後方向に長い板状の部材であり、円筒部82a、ワイヤー軸82b、及びガイド孔82cを有する。
円筒部82aは、第二支持部材82の後下部の側面から左右両側方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回動軸66に嵌装される。ワイヤー軸82bは、第二支持部材82の上部の右側面から右側方に向かって突出する軸であり、後述するワイヤー15の後端部が連結される(図3及び図6参照)。ガイド孔82cは、第二支持部材82の前部にその板面を貫通するように形成された孔であり、側面視において歪んだ三角形状である。
【0037】
このような構成の主クラッチレバー54及び第二支持部材82は、回動軸66を中心として回動可能にベースプレート63に支持される。より詳細には、左側板63aと右側板63bの間に、主クラッチレバー54及び第二支持部材82が左右に隣接するように配置され、孔64dと、円筒部54dと、円筒部82aと、孔63eと、に回動軸66が貫装される。
【0038】
ここで、第二支持部材82は、その下面が主クラッチレバー54の突出片54eの上面に当接することにより、主クラッチレバー54に対する相対的な回動が制限されている(主クラッチレバー54に対して僅かにしか回動しない)。よって、主クラッチレバー54は、第二支持部材82と概ね一体的に回動する。
【0039】
このような構成により、主クラッチレバー54を、回動軸66を中心として所定の範囲内において回動できるようにしている。以下では、グリップ54gが最も上方に到達する位置まで回動したときの主クラッチレバー54の位置を「切位置」(図6参照)と規定する。一方、グリップ54gが最も下方に到達する位置まで傾倒したときの主クラッチレバー54の位置を「入位置」(図8参照)と規定する。
主クラッチレバー54の回動位置は、ワイヤー15から受ける張力、及び、捩りバネ84(後述)から受ける付勢力により、「切位置」または「入位置」のいずれか一方に選択的に保持される。
【0040】
図3に示す主クラッチ14dは、エンジン12の出力軸12aからミッションケース20の入力軸21への動力の伝達及びその停止を切り替える(入切操作する)ものである。主クラッチ14dはベルトテンション式のクラッチであり、ベルト14cの張力を変動させることにより出力軸12aから入力軸21への動力の伝達及びその停止を切り替えることが可能である。主クラッチ14dは、テンションアーム14e及びテンションプーリ14f等を有する。
【0041】
テンションアーム14eは棒状の部材であり、その中途部はミッションケース20に回動可能に支持される。テンションアーム14eの一端部(前端部)には、テンションプーリ14fが回転可能に支持される。テンションアーム14eの他端部(後端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー15等を介して、第二支持部材82のワイヤー軸82bに連結される。ここで、第二支持部材82は主クラッチレバー54と概ね一体的に回動することから、上記を換言すると、テンションアーム14eの他端部(後端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー15等を介して、主クラッチレバー54の中途部54bに連結されている、といえる。
【0042】
作業者がグリップ54gを下方に傾倒することにより、主クラッチレバー54が入位置まで回動された場合、ワイヤー15の後端部が後方に引っ張られ、テンションアーム14eが左側面視で時計回りに回動する。これに伴って、テンションプーリ14fがベルト14cの外周面に押し付けられ、ベルト14cの張力が増大する。したがって、プーリ14aの回転動力がベルト14cを介してプーリ14bに伝達可能な状態となる。その結果、主クラッチ14dは「入(出力軸12aから取り出した動力が入力軸21に伝達され得る状態)」となる。換言すれば、管理機1の走行及び耕耘作業が可能な状態となる。
【0043】
作業者がグリップ54gを上方に傾倒することにより、主クラッチレバー54が切位置まで回動された場合、ワイヤー15の後端部が入位置のときよりも前方に移動し、テンションアーム14eが左側面視で反時計回りに回動する。これに伴って、テンションプーリ14aがベルト14cの外周面から離間し、ベルト14cの張力が減少する。したがって、プーリ14aの回転動力がプーリ14bに伝達不能な状態となる。その結果、主クラッチ14dは「切(出力軸12aから取り出した動力が入力軸21に伝達されない状態)」となる。換言すれば、出力軸12aから入力軸21への動力の伝達が停止され、管理機1の走行及び耕耘作業ができない状態となる。
【0044】
以下では、安全クラッチレバー56の構成について、図2〜図6を参照して詳細に説明する。
安全クラッチレバー56は、主クラッチレバー54と同様に、主クラッチ14dを「入」または「切」に人為的に切り替えるための操作具である。安全クラッチレバー56の操作は、第一連係機構80により主クラッチレバー54の操作と連係されている(図3参照)。
【0045】
本実施形態の安全クラッチレバー56は金属製の棒状の部材をU字形状(ハット形状)に折り曲げて形成されたものであり、中央当接部56a、左支持部56b、及び右支持部56c等を有する。
【0046】
中央当接部56aは、管理機1の後進時において、作業者が、クロスビーム58Cと、後方の壁や柱等の構造体と、の間に挟まれて身動きがとれなくなった場合に、作業者の身体と当接する(接触する)部分である。また、主クラッチ14dを「入」の状態に切り替えたい場合に、作業者が手で後方に引き寄せる部分である。本実施形態の中央当接部56aは、ハンドル58の左延出部58Lと右延出部58Rに挟まれる位置に、左右方向に平行に(水平に)架け渡される。
【0047】
左支持部56bは、中央当接部56aの左端部から操作ボックス53(第一支持部材81)が配置される側に向かって延出される部分である。左支持部56bの一端部は、中央当接部56aの左端部と連続している。左支持部56bの他端部には、左連結部56dが形成される。左連結部56dは、中央当接部56aの軸線と平行な方向に延出されるとともに、ベースプレート63(操作ボックス53)の右側板63bの孔63fに貫装される。
【0048】
右支持部56cは、中央当接部56aの右端部から操作ボックス153が配置される側に向かって延出される部分である。右支持部56cの一端部は、中央当接部56aの右端部と連続している。右支持部56cの他端部には、右連結部56eが形成される。右連結部56eは、中央当接部56aの軸線と平行な方向に延出されるとともに、操作ボックス153の左側板の孔(前述)に貫装される。右連結部56eの軸線方向は、左連結部56dの軸線方向と一直線となるように設定される。
【0049】
このような構成の安全クラッチレバー56は、左連結部56d及び右連結部56eが成す仮想の回動軸87(実体のない回動軸)を中心として回動可能に、左右の操作ボックス53・153に支持される。
ここで、左連結部56d及び右連結部56eが成す回動軸87は、本発明に係る第一回動軸の実施の一形態であり、中央当接部56aの軸線と平行であり、かつ、中央当接部56aからある程度離れた位置に配置されるもの(左右方向に平行な直線)である。
したがって、安全クラッチレバー56が回動軸87を中心として回動することにより、中央当接部56aの位置は前後に移動する。
【0050】
以下では、第一連係機構80の構成について、図4〜図8を参照して詳細に説明する。
第一連係機構80は、主クラッチレバー54の操作と、安全クラッチレバー56の操作と、を連係する機構である。
第一連係機構80は、第一支持部材81、第二支持部材82、摺動軸部材83、及び捩りバネ84を備える。
【0051】
図4に示す第一支持部材81は、長方形状の板材である。第一支持部材81の一端部(前端部)は、安全クラッチレバー56の左連結部56dに固定される。第一支持部材81の他端部は、後方(安全クラッチレバー56が配置される側とは反対側)に延出される。安全クラッチレバー56が回動軸87を中心として回動した場合、第一支持部材81は安全クラッチレバー56と一体的に回動する。
【0052】
第二支持部材82は、前述の如く板状の部材である。第二支持部材82の一端部(後端部)は、主クラッチレバー54に概ね固定される(主クラッチレバー54に対して相対回転不能である)。第二支持部材82の他端部は、前方(主クラッチレバー54が配置される側とは反対側)に延出される。主クラッチレバー54が回動軸66を中心として回動した場合、第二支持部材82は主クラッチレバー54と概ね一体的に回動する。
【0053】
図4に示す摺動軸部材83は、円柱形状の部材であり、第一支持部材81と第二支持部材82とを連動させるための部材である。摺動軸部材83の右端部は、その軸線方向に垂直な方向に移動不能な状態で第一支持部材81の他端部(後端部)に支持される。摺動軸部材83の左端部は、第二支持部材82のガイド孔82cに貫装(遊嵌)される。摺動軸部材83の外周面と、ガイド孔82cの外周面と、の間には充分な「遊び」(隙間)が形成される。
【0054】
捩りバネ84(図5及び図6参照)の一端部は、ベースプレート63の右側板63bの後上部に連結される。捩りバネ84の他端部は、摺動軸部材83に連結される。
なお、本実施形態の捩りバネ84の他端部は摺動軸部材83に連結されるものとしたが、この構成に代えて、捩りバネの他端部を第一支持部材の中途部に連結する構成としてもよい。
【0055】
捩りバネ84から受ける付勢力によって付勢されることにより、第一支持部材81の回動位置は、後端部が最も下方に到達するときの位置、または、後端部が最も上方に到達するときの位置、のいずれか一方に保持される。これに伴って、第一支持部材81と一体的に回動する安全クラッチレバー56の回動位置は、中央当接部56aが最も前方に到達するときの位置、または、中央当接部56aが最も後方に到達するときの位置、のいずれか一方に保持される。
【0056】
以下では、中央当接部56aが最も前方に到達する位置まで回動したときの安全クラッチレバー56の位置を「前方位置」と規定する。一方、中央当接部56aが最も後方に到達するまで回動したときの安全クラッチレバー56の位置を「後方位置」と規定する。
【0057】
次の(1)〜(4)では、第一連係機構80による主クラッチレバー54及び安全クラッチレバー56の連係の態様について、図6〜図8を参照して詳細に説明する。
【0058】
(1)以下では、安全クラッチレバー56が前方位置にある状態において、主クラッチレバー54を切位置から入位置側に向かって回動する場合の動作について説明する。
なお、主クラッチレバー54が切位置にあり、かつ、安全クラッチレバー56が前方位置にある状態を、初期の状態(図6参照)と想定して説明を行う。
【0059】
初期の状態のとき、安全クラッチレバー56は、摺動軸部材83及び第一支持部材81を介して捩りバネ84から受ける付勢力により、前方位置に保持されている。この状態において、摺動軸部材83は、捩りバネ84から受ける付勢力により、ガイド孔82cの下辺(下方の角部)に押し付けられている。
ここで、作業者がグリップ54gを下方に傾倒することにより、主クラッチレバー54を切位置から入位置側に向かって回動すると、摺動軸部材83はガイド孔82cの下辺に押し付けられた状態を保持しつつ、ガイド孔82cの下辺に沿って後方にスライドする。これに伴って、安全クラッチレバー56は、捩りバネ84から受ける付勢力に抗して、後方位置側に向かって回動される。
【0060】
安全クラッチレバー56の回動位置が、前方位置から後方位置までの途中の中立位置Xに到達したとき、捩りバネ84の支点越えが生じる(図7参照)。これにより、捩りバネ84が摺動軸部材83を付勢する方向がこれまでとは反対方向となる。
したがって、安全クラッチレバー56は、摺動軸部材83及び第一支持部材81を介して捩りバネ84から受ける付勢力により、後方位置側に付勢されることとなる。また、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの下辺から離れ、ガイド孔82cの上辺に当接する位置まで移動するとともに、捩りバネ84から受ける付勢力によりガイド孔82cの上辺に押し付けられる。
【0061】
作業者が主クラッチレバー54から手を離すことにより、主クラッチレバー54が捩りバネ84から受ける付勢力に従って中立位置Xよりも入位置側に回動されると、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの上辺に押し付けられた状態を保持しつつ、ガイド孔82cの上辺に沿って前方にスライドする。これに伴って、安全クラッチレバー56は、捩りバネ84から受ける付勢力に従って、後方位置側に回動される。
こうして、主クラッチレバー54が入位置に到達するとともに、安全クラッチレバー56が後方位置に到達する(図8参照)。これにより、管理機1の主クラッチ14dが「入」となり、管理機1の走行及び耕耘装置40の作動が可能な状態となる。
【0062】
(2)以下では、主クラッチレバー54が切位置にある状態において、安全クラッチレバー56を前方位置から後方位置側に向かって回動する場合の動作について説明する。
なお、主クラッチレバー54が切位置にあり、かつ、安全クラッチレバー56が前方位置にある状態を、初期の状態(図6参照)と想定して説明を行う。
【0063】
初期の状態のとき、主クラッチレバー54は、摺動軸部材83及び第二支持部材82を介して捩りバネ84から受ける付勢力、並びに、ワイヤー15から受ける張力により、切位置に保持されている。摺動軸部材83は、捩りバネ84から受ける付勢力により、ガイド孔82cの下辺(下方の角部)に押し付けられている。
ここで、作業者が中央当接部56aを後方に引き寄せることにより、安全クラッチレバー56を前方位置から後方位置側に向かって回動すると、摺動軸部材83は安全クラッチレバー56と一体的に移動する。したがって、摺動軸部材83は、付勢部材から受ける付勢力に抗して、ガイド孔82cの下辺から離れ、ガイド孔82cの上辺に当接する位置まで移動する。
作業者が中央当接部56aをさらに後方に引き寄せると、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの上辺を押しながら、ガイド孔82cの上辺に沿って後方にスライドする。摺動軸部材83に押されることにより、第二支持部材82及び主クラッチレバー54が、捩りバネ84から受ける付勢力、並びに、ワイヤー15から受ける張力に抗して、入位置側に向かって回動される。
【0064】
安全クラッチレバー56の回動位置が、前方位置から後方位置までの途中の中立位置Xに到達したとき、捩りバネ84の支点越えが生じる(図7参照)。これにより、捩りバネ84が摺動軸部材83を付勢する方向がこれまでとは反対方向となる。
したがって、安全クラッチレバー56は、摺動軸部材83及び第一支持部材81を介して捩りバネ84から受ける付勢力により、後方位置側に付勢されることとなる。
【0065】
作業者が安全クラッチレバー56から手を離すことにより、安全クラッチレバー56が捩りバネ84から受ける付勢力に従って中立位置Xよりも後方位置側に回動されると、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの上辺を押しながら、ガイド孔82cの上辺に沿って前方にスライドする。これに伴って、主クラッチレバー54は、捩りバネ84から受ける付勢力に従って、入位置側に回動される。
こうして、安全クラッチレバー56が後方位置に到達するとともに、主クラッチレバー54が入位置に到達する(図8参照)。これにより、管理機1の主クラッチ14dが「入」となり、管理機1の走行及び耕耘装置40の作動が可能な状態となる。
【0066】
(3)以下では、安全クラッチレバー56が後方位置にある状態において、主クラッチレバー54を入位置から切位置側に向かって回動する場合の動作について説明する。
なお、主クラッチレバー54が入位置にあり、かつ、安全クラッチレバー56が後方位置にある状態を、初期の状態(図8参照)と想定して説明を行う。
【0067】
初期の状態のとき、安全クラッチレバー56は、摺動軸部材83及び第一支持部材81を介して捩りバネ84から受ける付勢力により、後方位置に保持されている。この状態において、摺動軸部材83は、捩りバネ84から受ける付勢力により、ガイド孔82cの上辺(上方の角部)に押し付けられている。
ここで、作業者がグリップ54gを上方に傾倒することにより、主クラッチレバー54を入位置から切位置側に向かって回動すると、摺動軸部材83はガイド孔82cの上辺に押し付けられた状態を保持しつつ、ガイド孔82cの上辺に沿って後方にスライドする。これに伴って、安全クラッチレバー56は、捩りバネ84から受ける付勢力に抗して、前方位置側に向かって回動される。
【0068】
安全クラッチレバー56の回動位置が、後方位置から前方位置までの途中の中立位置Xに到達したとき、捩りバネ84の支点越えが生じる(図7参照)。これにより、捩りバネ84が摺動軸部材83を付勢する方向がこれまでとは反対方向となる。
したがって、安全クラッチレバー56は、摺動軸部材83及び第一支持部材81を介して捩りバネ84から受ける付勢力により、前方位置側に付勢されることとなる。また、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの上辺から離れ、ガイド孔82cの下辺に当接する位置まで移動するとともに、捩りバネ84から受ける付勢力によりガイド孔82cの下辺に押し付けられる。
【0069】
作業者が主クラッチレバー54から手を離すことにより、主クラッチレバー54が捩りバネ84から受ける付勢力に従って中立位置Xよりも切位置側に回動されると、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの下辺に押し付けられた状態を保持しつつ、ガイド孔82cの下辺に沿って前方にスライドする。これに伴って、安全クラッチレバー56は、捩りバネ84から受ける付勢力に従って前方位置側に回動される。
こうして、主クラッチレバー54が切位置に到達するとともに、安全クラッチレバー56が前方位置に到達する(図6参照)。これにより、管理機1の主クラッチ14dが「切」となり、管理機1の走行が停止されるとともに、耕耘装置40の作動が停止される。
【0070】
(4)以下では、主クラッチレバー54が入位置にある状態において、安全クラッチレバー56が後方位置から前方位置側に向かって回動された場合の動作について説明する。
なお、主クラッチレバー54が入位置にあり、かつ、安全クラッチレバー56が後方位置にある状態を初期の状態(図8参照)と想定して説明を行う。
【0071】
初期の状態のとき、主クラッチレバー54は、摺動軸部材83及び第二支持部材82を介して捩りバネ84から受ける付勢力により、入位置に保持されている。摺動軸部材83は、捩りバネ84から受ける付勢力により、ガイド孔82cの上辺(上方の角部)に押し付けられている。
ここで、作業者が歩行型管理機本体に近づく(前方に移動する)ことにより作業者の身体が中央当接部56aに当接し、安全クラッチレバー56が後方位置から前方位置側に向かって回動されると、摺動軸部材83は安全クラッチレバー56と一体的に移動する。したがって、摺動軸部材83は、捩りバネ84から受ける付勢力に抗して、ガイド孔82cの下辺に当接する位置まで移動する。
【0072】
作業者の身体と当接することにより中央当接部56aがさらに前方に押されると、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの下辺を押しながら、ガイド孔82cの下辺に沿って後方にスライドする。摺動軸部材83に押されることにより、第二支持部材82及び主クラッチレバー54が、捩りバネ84から受ける付勢力に抗して、切位置側に向かって回動される。
安全クラッチレバー56の回動位置が、後方位置から前方位置までの途中の中立位置Xに到達したとき、捩りバネ84の支点越えが生じる(図7参照)。これにより、捩りバネ84が摺動軸部材83を付勢する方向がこれまでとは反対方向となる。
したがって、安全クラッチレバー56は、摺動軸部材83及び第一支持部材81を介して捩りバネ84から受ける付勢力により、前方位置側に付勢されることとなる。
【0073】
作業者の身体が安全クラッチレバー56から離れることにより、安全クラッチレバー56が捩りバネ84から受ける付勢力に従って中立位置Xよりも前方位置側に回動されると、摺動軸部材83は、ガイド孔82cの下辺を押しながら、ガイド孔82cの下辺に沿って前方にスライドする。これに伴って、主クラッチレバー54は、捩りバネ84から受ける付勢力に従って、切位置側に回動される。
こうして、安全クラッチレバー56が前方位置に到達するとともに、主クラッチレバー54が切位置に到達する(図6参照)。これにより、管理機1の主クラッチ14dが「切」となり、管理機1の走行が停止されるとともに、耕耘装置40の作動が停止される。
【0074】
以上の如く、第一連係機構80では、主クラッチレバー54の操作と、安全クラッチレバー56の操作と、を連係している。このように構成することにより、主クラッチレバー54を入位置まで回動するか、若しくは、安全クラッチレバー56を後方位置まで回動することにより、主クラッチ14dを「入」の状態とすることができる。また、主クラッチレバー54を切位置まで回動するか、若しくは、安全クラッチレバー56を前方位置まで回動することにより、主クラッチ14dを「切」の状態とすることができる。
よって、管理機1の作業者は、状況に応じて臨機応変に、手元の主クラッチレバー54または前方の安全クラッチレバー56の何れかを操作することにより、主クラッチ14dを入切操作することが可能となる。このため、管理機1の操作性が向上する。
【0075】
また、作業者が耕耘装置40側に近づき過ぎた場合、作業者の身体が安全クラッチレバー56に当接し、安全クラッチレバー56が前方位置側に回動される。これにより主クラッチ14dが「切」となる。したがって、作業者が耕耘装置40に近づき過ぎた場合には強制的に耕耘装置40を停止することができるので、作業者の安全を確保することができる。
【0076】
また、図9(a)に示すように、本実施形態の管理機1においては、主クラッチ14dを「入」から「切」の状態に切り替えた場合には、安全クラッチレバー56の中央当接部56aが前方に移動する。したがって、ハンドル58の左延出部58Lと右延出部58Rの間に位置する作業者は、主クラッチ14dが「切」の状態においてクロスビーム58Cの近傍まで移動することができる。よって、前方に配置される耕耘装置40や変速レバー25等に手が届きやすくなり、メンテナンスや変速段の切り替え等の操作を行いやすくなる。
【0077】
また、図9(b)に示す如き別実施形態の歩行型管理機に本発明を適用した場合には、以下の利点を奏する。
すなわち、中央当接部56aを主クラッチ14dが「切」となる位置(前方位置)にするとともに、ハンドル部(ハンドル基部51及びハンドル58)を前方に振り替えて作業する場合には、作業者は、左延出部58Lと右延出部58Rの間に身体を位置させた状態で、手が耕耘装置40の前部まで届くようになる。したがって、作業者は左延出部58L及び右延出部58Rの外側を通って耕耘装置40側へ回り込まなくても、耕耘カバー45の側面部45b・45cの傾斜角度の調整や、変速レバー25の操作等を容易に行うことが可能となる。
なお、図9(b)に示した歩行型管理機は、耕耘作業とともに揚土作業を行うためのものであり、例えば葱を植えている圃場等において使用される。一般に、係る歩行型管理機には耕耘カバー45の開度を調整するための開度調節レバー90が備えられている。本発明を適用した場合、主クラッチ14dを「切」の状態としたときに開度調節レバー90に手が届きやすくなり、操作性が向上する。
【0078】
以下では、駐車ブレーキレバー57、ブレーキ装置18、及びこれらを連係する機構について、図3〜図5、及び図10を参照して詳細に説明する。
【0079】
駐車ブレーキレバー57は、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に人為的に切り替える(切替操作する)ための操作具である。
【0080】
図4に示すように、駐車ブレーキレバー57は、側面視において概ねL字型の板状の部材であり、長辺部57a、短辺部57b、及び角部57cを有する。長辺部57aの先端部(上端部)には、操作時に作業者が手で触れて力を加える部分であるグリップ57gが形成される。長辺部57aは上カバー65の上面に形成されたガイド溝(不図示)に貫装され、短辺部57b及び角部57cはベースプレート63の内側に収容される。
【0081】
角部57cは、長辺部57aと短辺部57bとが接続される部分であり、円筒部57dが形成される。円筒部57dは、角部57cの側面から左右両側方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回動軸69に嵌装される。
短辺部57bには、ワイヤー軸57e及び後述する突出軸57fが形成される。
ワイヤー軸57eは、短辺部57bの左側面から左側方に向かって突出する軸であり、後述するワイヤー19の後端部が連結される(図3及び図10参照)。
【0082】
このような構成の駐車ブレーキレバー57は、回動軸69を中心として回動可能にステー64に支持される。より詳細には、孔64f及び円筒部57dに回動軸69が貫装されるとともに、ワイヤー軸57eが側面視において孔67に収容された状態で、駐車ブレーキレバー57が操作ボックス53に取り付けられる。
ここで、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として回動できる範囲は、ワイヤー軸57eが孔67内を移動できる範囲により制限されている。
【0083】
このような構成により、駐車ブレーキレバー57を、回動軸69を中心として所定の範囲内において回動できるようにしている。
ワイヤー軸57eが孔67の前上方の外周面に当接したとき(図12参照)、駐車ブレーキレバー57のグリップ57gが最も前方に到達する。以下では、係る場合の駐車ブレーキレバー57の位置を「解除位置」と規定する。
一方、ワイヤー軸57eが孔67の下方の外周面に当接したとき(図10参照)、駐車ブレーキレバー57のグリップ57gが最も後方に到達する。以下では、係る場合の駐車ブレーキレバー57の位置を「作動位置」と規定する。
【0084】
図3に示すブレーキ装置18は、走行車輪30・30の回転に抵抗を付与するものである。走行車輪30・30(厳密には変速機構に備えられるブレーキ軸28)の回転に付与する抵抗の大きさを変動させることにより、走行車輪30・30が回転可能な状態と、走行車輪30・30の回転を停止する状態と、に切り替えることが可能である。ブレーキ装置18は、ブレーキアーム18a、シュー18b・18b、及びブレーキドラム18c等を有する。
【0085】
ブレーキアーム18aは棒状の部材であり、ミッションケース20に回動可能に支持される。ブレーキアーム18aの一端部(後端部)は、カム機構等を介してミッションケース20の内部に設けられたシュー18b・18bに連結される。ブレーキアーム18aの他端部(前端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー19等を介して、駐車ブレーキレバー57のワイヤー軸57eに連結される。ブレーキドラム18cはブレーキ軸28の左端部に固定(嵌設)される。
なお、ブレーキアーム18aの回動位置は、ブレーキアーム18aとミッションケース20とを連結するように介装された付勢部材(不図示)からの付勢力を受けることにより、ブレーキ装置18が「解除」となるときの位置(解除位置)に保持されている。
【0086】
管理機1の作業者が駐車ブレーキレバー57から手を離している場合には、前記付勢部材によりワイヤー19の前端部(ブレーキ装置18に連結される側の端部)が前方に常に引っ張られている。これにより、駐車ブレーキレバー57の位置は、解除位置または作動位置のいずれか一方に選択的に保持されている。詳述すると、前記付勢部材は、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置までの途中の所定の回動位置に到達したときに、支点越えが生じるように設定されているから、駐車ブレーキレバー57の回動位置を解除位置または作動位置に安定的に保持することができる。
【0087】
作業者がグリップ57gを後方に傾倒することにより、駐車ブレーキレバー57が作動位置まで回動された場合、ワイヤー19の後端部が後方に引っ張られ、ブレーキアーム18aが左側面視で反時計回りに回動する。これに伴って、シュー18b・18bがブレーキドラム18cに押し付けられ、ブレーキ軸28の回転に抵抗が付与される。したがって、ブレーキ軸28の回転が停止され、ひいては走行車輪30・30の回転が停止(制動)される。その結果、管理機1は走行を停止した状態を保持することが可能となる。
【0088】
作業者が駐車ブレーキレバー57のグリップ57gを前方に傾倒することにより、その回動位置が解除位置まで回動された場合、ワイヤー19の後端部が作動位置のときよりも前方に移動し、テンションアーム14eが左側面視で時計回りに回動する。これに伴って、シュー18b・18bがブレーキドラム18cから離間し、ブレーキ軸28の回転に付与されていた抵抗が解除される。したがって、ブレーキ軸28が回転可能な状態となり、ひいては走行車輪30・30が回転可能な状態となる。その結果、管理機1が走行可能な状態となる。
【0089】
以下では、第二連係機構70の構成について、図4、図5、及び図10〜図13を参照して詳細に説明する。
第二連係機構70は、(1)駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構と、(2)主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構と、を有する。
【0090】
本実施形態の第二連係機構70は、突出軸57f及び当接面54f等により構成される(図4及び図5参照)。
【0091】
突出軸57fは、駐車ブレーキレバー57の短辺部57bに形成されるものであり、短辺部57bの右側面から主クラッチレバー54が配置される側に向かって突出する円柱形状の部材である。突出軸57fの軸線は、回動軸69の軸線と平行である。
【0092】
当接面54fは、主クラッチレバー54の前延出部54cの上面に形成されるものであり、前延出部54cの板面の厚みにより形成される面である。
【0093】
次に、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構について、図10及び図11を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー54が切位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある状態を、初期の状態(図10参照)と想定して説明を行う。
【0094】
初期の状態のとき、突出軸57fは、側面視において主クラッチレバー54の当接面54fの前方に配置されている。ここで、主クラッチレバー54を切位置から入位置側に向かって回動すると、入位置に向かう途中の所定の回動位置Yに到達したとき(作用時)に、当接面54fが突出軸57fに当接する(図11参照)。
当接面54fが突出軸57fに当接したとき、突出軸57fは当接面54fにより前上方に押される。詳述すると、突出軸57fの当接面54fとの接触部(作用点)には、当接面54fに対して概ね垂直な方向の外力Fが働く。ここで図11に示すように、外力Fの作用線(外力Fが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸69の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸69(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Fが加えられることにより、駐車ブレーキレバー57の突出軸57fには、回動軸69に関する右側面視反時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り、すなわち解除位置側へ向かう回動方向)とは反対方向である。
【0095】
したがって、突出軸57fが当接面54fにより前上方に押されても、これに伴って駐車ブレーキレバー57が解除位置まで回動されることはない(作動位置に保持される)。
【0096】
なお、右側面視における当接面54fと突出軸57fとが当接する地点(作用点)は、回動軸69の中心が配置される地点よりも下方となるように設定される。また、当接面54fと突出軸57fとの作用時には、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として作動位置側へ向かう方向に押されるように、当接面54f及び突出軸57fの位置が調整されている。
【0097】
次に、主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構について、図12及び図13を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー54が入位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が解除位置にある状態を、初期の状態(図12参照)と想定して説明を行う。
【0098】
初期の状態のとき、突出軸57fは、側面視において主クラッチレバー54の当接面54fの上方に配置されている。ここで、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に向かって回動すると、作動位置に向かう途中の所定の回動位置Zに到達したとき(作用時)に、突出軸57fが当接面54fに当接する(図13参照)。
突出軸57fが当接面54fに当接したとき、当接面54fは突出軸57fにより後下方に押される。詳述すると、当接面54fの突出軸57fとの接触部(作用点)には、当接面54fの面に対して概ね垂直な方向の外力Rが働く。ここで図13に示すように、外力Rの作用線(外力Rが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸66の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸66(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Rが加えられることにより、主クラッチレバー54の当接面54fには、回動軸66に関する右側面視時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り)と同じ方向である。
したがって、当接面54fが突出軸57fにより後下方に押されることによって(図13参照)、主クラッチレバー54が切位置まで回動される(図10参照)。
【0099】
なお、右側面視における突出軸57fと当接面54fとが当接する地点(作用点)は、回動軸66の中心が配置される地点よりも上方となるように設定される。また、突出軸57fと当接面54fとの作用時には、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として切位置側へ向かう方向に押されるように、突出軸57f及び当接面54fの位置が調整されている。
【0100】
このように、第二連係機構70では、突出軸57fが当接面54fに当接することにより、駐車ブレーキレバー57の作動位置側への回動と、主クラッチレバー54の切位置側への回動と、が連動するようにしている。
【0101】
このように、管理機1においては、主クラッチレバー54と安全クラッチレバー56とが第一連係機構80により連係されるとともに、主クラッチレバー54と駐車ブレーキレバー57とが第二連係機構70により連係されている。その結果、主クラッチレバー54と、安全クラッチレバー56と、駐車ブレーキレバー57と、が相互に連係している。
【0102】
すなわち、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合においては、主クラッチレバー54が切位置に保持されるとともに、安全クラッチレバー56が前方位置に保持される。換言すれば、ブレーキ装置18が「作動」の状態の場合には、主クラッチレバー54及び安全クラッチレバー56の両方が、主クラッチ14dが「切」となるときの位置に保持される。
【0103】
また、主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に回動すると、これに連動して主クラッチレバー54が切位置まで回動されるとともに、安全クラッチレバー56が前方位置まで回動される。換言すれば、ブレーキ装置18を「解除」の状態から「作動」の状態に切り替えた場合には、主クラッチレバー54及び安全クラッチレバー56の両方が、主クラッチ14dが「切」となるときの位置まで強制的に回動される。
【0104】
このように構成することにより、作業者は管理機1の主クラッチレバー54、安全クラッチレバー56、及び駐車ブレーキレバー57の各々を個別に操作する必要がなくなり、管理機1の操作が簡潔となる。
【0105】
以上の如く、本実施形態に係る管理機1は、エンジン12が搭載される歩行型管理機本体と、エンジン12からミッションケース20への動力の伝達を入切する主クラッチ14dと、各種の操作具を支持する左右のステー(操作ボックス53・153)、前端部が前記歩行型管理機本体に固定されるとともに左右に分岐した後上部に前記左右のステーが固定されたハンドル部(ハンドル58)、及び、該ハンドル部(ハンドル58)の左右の後端部であって前記左右のステーの後方となる位置に設けられた左右の把持部52・62、を備える操作部50と、主クラッチ14dと連係されるとともに、主クラッチ14dが「入」となる後方位置から主クラッチ14dが「切」となる前方位置までの範囲内において左右方向に平行な回動軸87を中心として回動可能な安全クラッチレバー56と、を具備し、安全クラッチレバー56は、水平に架け渡された中央当接部56aと、中央当接部56aの左端部から延出されるとともに左のステー64に回動可能に支持される左支持部53bと、中央当接部56aの右端部から延出されるとともに右のステーに回動可能に支持される右支持部53cと、を備え、安全クラッチレバー56が前方位置にあるとき、中央当接部56aが前記歩行型管理機本体に最も近づき、安全クラッチレバー56が後方位置にあるとき、中央当接部56aが前記左右の把持部52・62に最も近づく、ものである。
したがって、安全クラッチレバー56の後方に位置する作業者は、主クラッチ14dを「切」の状態にしたときに、歩行型管理機本体に最も近づくことができる。また、主クラッチ14dを「入」の状態にしたときに、把持部52・62に最も近づくことができる。
【0106】
よって、安全クラッチレバー56の後方に位置する作業者は、主クラッチ14dを「入」から「切」に切り替えた場合には前方に移動することができ、歩行型管理機本体及びこれに装着した耕耘装置40の各部に手が届きやすくなる。また、安全クラッチレバー56の後方に位置する作業者は、主クラッチ14dを「切」から「入」に切り替えた場合には後方に移動することができ、把持部52・62を握りやすくなる。これにより、管理機1のメンテナンス時や操向操作時における操作性が向上する。
【0107】
また、本実施形態に係る管理機1は、主クラッチ14dと連係されるとともに、主クラッチ14dが「入」となる入位置から主クラッチ14dが「切」となる切位置までの範囲内において回動軸87に概ね平行な回動軸66を中心として回動可能な主クラッチレバー54と、安全クラッチレバー56と主クラッチレバー54とを連係する第一連係機構80と、をさらに具備するものである。
したがって、主クラッチレバー54を入位置まで回動するか、若しくは、安全クラッチレバー56を後方位置まで回動すると、主クラッチ14dが「入」となる。また、主クラッチレバー54を切位置まで回動するか、若しくは、安全クラッチレバー56を前方位置まで回動すると、主クラッチ14dが「切」となる。
【0108】
よって、安全クラッチレバー56及び主クラッチレバー54のいずれの操作によっても、主クラッチ14dを「入」または「切」に切り替えることが可能となる。これにより、管理機1の操作性が向上する。
【0109】
また、本実施形態に係る管理機1は、第一連係機構80は、一端部が安全クラッチレバー56に固定される第一支持部材81と、一端部が主クラッチレバー54に固定される第二支持部材82と、第一支持部材81の他端部に軸線方向に垂直な方向にスライド不能に支持されるとともに、第二支持部材82の他端部に軸線方向に垂直な方向にスライド可能に支持される摺動軸部材83と、を備えるものである。
したがって、第一連係機構80を、第一支持部材81と、第二支持部材82と、摺動軸部材83と、を設けることにより製造することができる。
【0110】
よって、簡単な構成で、安全クラッチレバー56と主クラッチレバー54とを連係することができる。
【0111】
また、本実施形態に係る管理機1は、摺動軸部材83は、第二支持部材82に形成されたガイド孔82cに貫装されるとともに、ガイド孔82cの外周面に沿って移動可能である、ものである。
したがって、摺動軸部材83を、ガイド孔82cの外周面に沿って移動させることにより、軸線方向に垂直な方向にスライドさせることができる。
【0112】
よって、簡単な構成で、かつ、少ない部品点数で、安全クラッチレバー56と主クラッチレバー54とを連係することができる。
【0113】
また、本実施形態に係る管理機1は、第一連係機構80は、安全クラッチレバー56の位置を前方位置または後方位置に選択的に保持する捩りバネ84をさらに備え、捩りバネ84は、安全クラッチレバー56が前方位置から後方位置までの途中の中立位置Xよりも前方位置側に回動された場合、安全クラッチレバー56を前方位置側に付勢し、安全クラッチレバー56が中立位置Xよりも後方位置側に回動された場合、安全クラッチレバー56を後方位置側に付勢する、ものである。
したがって、安全クラッチレバー56が中立位置Xよりも前方位置側に回動された場合、捩りバネ84から受ける付勢力により前方位置まで容易に到達し、ひいては主クラッチ14dが「切」となる。また、安全クラッチレバー56が中立位置Xよりも後方位置側に回動された場合、捩りバネ84から受ける付勢力により後方位置まで容易に到達し、ひいては主クラッチ14dが「入」となる。
【0114】
よって、小さな操作力でもって、主クラッチ14dを「入」または「切」に切り替えることが可能となる。これにより、管理機1の操作性が向上する。
【0115】
また、本実施形態に係る管理機1は、前記歩行型管理機本体に搭載されたブレーキ装置18を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバー57と、主クラッチレバー54と駐車ブレーキレバー57とを連係する第二連係機構70と、をさらに具備するものである。
したがって、安全クラッチレバー56を操作することにより、間接的に、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に切り替えることが可能となる。
【0116】
よって、管理機1の安全クラッチレバー56、主クラッチレバー54、及び駐車ブレーキレバー57等の操作具の操作が簡潔となり、ひいては管理機1の操作性が向上する。
【符号の説明】
【0117】
1 管理機(歩行型管理機)
12 エンジン
14d 主クラッチ
18 ブレーキ装置
52 把持部(左の把持部)
53 操作ボックス(左の操作ボックス)
54 主クラッチレバー
56 安全クラッチレバー
56a 中央当接部
56b 左支持部
56c 右支持部
57 駐車ブレーキレバー
58 ハンドル(「ハンドル部」の一部)
62 把持部(右の把持部)
64 ステー
70 第二連係機構
80 第一連係機構
81 第一支持部材
82 第二支持部材
83 摺動軸部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが搭載される歩行型管理機本体と、
前記エンジンからミッションケースへの動力の伝達を入切する主クラッチと、
各種の操作具を支持する左右のステー、前端部が前記歩行型管理機本体に固定されるとともに左右に分岐した後上部に前記左右のステーが固定されたハンドル部、及び、該ハンドル部の左右の後端部であって前記左右のステーの後方となる位置に設けられた左右の把持部、を備える操作部と、
前記主クラッチと連係されるとともに、該主クラッチが「入」となる後方位置から該主クラッチが「切」となる前方位置までの範囲内において左右方向に平行な第一回動軸を中心として回動可能な安全クラッチレバーと、を具備し、
該安全クラッチレバーは、
水平に架け渡された中央当接部と、
該中央当接部の左端部から延出されるとともに前記左のステーに回動可能に支持される左支持部と、
前記中央当接部の右端部から延出されるとともに前記右のステーに回動可能に支持される右支持部と、を備え、
前記安全クラッチレバーが前方位置にあるとき、前記中央当接部が前記歩行型管理機本体に最も近づき、
前記安全クラッチレバーが後方位置にあるとき、前記中央当接部が前記左右の把持部に最も近づく、歩行型管理機。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行型管理機であって、
前記主クラッチと連係されるとともに、該主クラッチが「入」となる入位置から該主クラッチが「切」となる切位置までの範囲内において前記第一回動軸に概ね平行な第二回動軸を中心として回動可能な主クラッチレバーと、
前記安全クラッチレバーと前記主クラッチレバーとを連係する第一連係機構と、をさらに具備する歩行型管理機。
【請求項3】
請求項2に記載の歩行型管理機であって、
前記第一連係機構は、
一端部が前記安全クラッチレバーに固定される第一支持部材と、
一端部が前記主クラッチレバーに固定される第二支持部材と、
前記第一支持部材の他端部に軸線方向に垂直な方向にスライド不能に支持されるとともに、前記第二支持部材の他端部に軸線方向に垂直な方向にスライド可能に支持される摺動軸部材と、を備える歩行型管理機。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の歩行型管理機であって、
前記歩行型管理機本体に搭載されたブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、
前記主クラッチレバーと前記駐車ブレーキレバーとを連係する第二連係機構と、をさらに具備する歩行型管理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−189859(P2011−189859A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58538(P2010−58538)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】