説明

歩行型耕耘機

【課題】培土板を備えた歩行型の耕耘機において、培土作業と耕耘作業とを簡単に切り換えることができる歩行型耕耘機を提供する。
【解決手段】耕耘爪の上方を覆う耕耘上部カバーの後端に背面視で逆台形状の培土体20と、横軸芯に前後方向に回動する耕耘カバー体Cを設け、培土体20と耕耘カバー体Cとを連結する耕耘作業時と、培土体20と耕耘カバー体Cの連結を解除し、かつ耕耘カバー体Cを上方に回動して位置固定する培土作業時とを選択可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型の耕耘機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、畝を形成する培土作業位置と通常の耕耘作業位置に切り換える技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-172219
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、培土作業位置と耕耘作業位置を切り換えるのに、左右一対の培土板それぞれ切り換え作業を要するため煩わしい。本発明は係る課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、かかる技術的課題を解決するために次のような技術的手段を講ずる。すなわち、請求項1記載の発明は、耕耘爪(10)の上方を覆う耕耘上部カバー(11)の後端に背面視で逆台形状の培土体(20)と、横軸芯に前後方向に回動する耕耘カバー体(C,D)を設け、培土体(20)と耕耘カバー体(C,D)とを連結する耕耘作業時と、培土体(20)と耕耘カバー体(C,D)の連結を解除し、かつ耕耘カバー体(C,D)を上方に回動して位置固定する培土作業時とを選択可能に構成した歩行型耕耘機とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、培土作業時に耕耘カバー体(C,D)を固定する位置を回動支点よりも高い位置であることを特徴とする請求項1記載の歩行型耕耘機とする。
請求項3記載の発明は、培土体(20)は横軸芯に前後方向に前後方向に回動する構成とし、培土作業時に作業反力で後方に回動する培土体(20)の動作を規制する規制棒(31)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2いずれか記載の歩行型耕耘機とする。
【0007】
請求項4記載の発明は、規制棒(31)は規制棒ホルダ(33)で上下スライドする構成とし、規制棒ホルダ(33)には培土作業時に耕耘カバー体(C,D)を固定する連結受具(35)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3いずれか記載の歩行型耕耘機とする。
【0008】
請求項5記載の発明は、耕耘カバー体(D)は背面視で横長の長方形状とし、かつ培土体(20)の後方にあってオーバーラップする構成とし、耕耘カバー体(D)に切欠き部(41)を設け、培土作業時に耕耘カバー体(D)を上方に回動すると規制棒(31)が切欠き部(41)を貫通することを特徴とする請求項2から請求項4いずれか記載の歩行型耕耘機とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明においては、耕耘カバー体を回動することで培土作業と耕耘作業の切り換え作業が行えることで操作が簡単である。
請求項2記載の発明においては、培土作業時に耕耘カバー体を回動支点より高い位置まで持ち上げるため、畝の形成状態を視認しやすい。
【0010】
請求項3記載の発明においては、培土作業時に培土体が圃場に追従し易い。
請求項4記載の発明においては、耕耘カバー体を他の部材に当接せずに培土作業位置まで回動し、固定することができる。
【0011】
請求項5記載の発明においては、耕耘カバー体を回動支点より高い位置まで持ち上げるとき、耕耘カバー体の切欠き部に規制棒が入り込み、耕耘カバー体が固定位置で固定されると、規制棒が耕耘カバー体を貫通する姿勢となるため、耕耘カバーの回動に規制棒が邪魔にならない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】側面から見た培土作業時の歩行型耕耘機を示す図
【図2】側面から見た耕耘作業時の歩行型耕耘機を示す図
【図3】背面から見た耕耘作業時の歩行型耕耘機を示す図
【図4】背面から見た耕耘体を培土作業位置にしたことを示す図
【図5】背面から見た培土作業時の歩行型耕耘機を示す図
【図6】背面から見た耕耘作業時の歩行型耕耘機を示す別実施例図
【図7】背面から見た耕耘カバー体を培土作業位置にしたことを示す別実施例図
【図8】背面から見た培土作業時の歩行型耕耘機を示す別実施例図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の歩行型耕耘機の基本構成について図に基づいて説明する。なお、本実施の形態における前後とは機体の進行方向を指し、左右とは形成する畝側を指す。
機体の前部にはエンジンEと燃料タンク2とを機体フレーム1の上方に載置し、機体の前後中央部には走行車輪3を設け、機体後部には耕耘部Kを設けている。また、機体の前後中央部から後下がりに耕耘部Kに伝動する伝動軸(図示せず)を内装する伝動ケース4を設け、また後上がりに延びる操作ハンドル部5を設けている。6は変速レバーである。
【0014】
耕耘部Kは横軸芯に回転する周知の多数の耕耘爪10を設け、耕耘爪10の回転軌跡Mの上方には耕耘上部カバー11を設けている。耕耘上部カバー11の後部を抵抗棒13が貫通する構成とし、抵抗棒13を上下方向にスライドさせる抵抗棒ホルダ14を耕耘上部カバー11の上面に取り付けている。
【0015】
耕耘上部カバー12の後端部には耕耘後部カバーBの上端を連結し、耕耘後部カバーBは垂れ下がる構成としている。耕耘後部カバーBは左右中央部の培土板20と左右両側の耕耘板21と左右両側の耕耘板21を連結する連結板22とで構成され、背面視で横長の長方形状に形成している。
【0016】
培土板20は背面視で逆台形状とし、前面すなわち培土面20aを平板とする鉄板で構成し、左右の耕耘板21は背面視で台形状に構成している。
左右の耕耘板21を連結する連結板22は本実施の形態では左右の耕耘板21の下端から培土板20の下方にわたって延びる構成としており、本実施の形態では左右の耕耘板21と連結板22とは溶接で固着する構成としている。そして連結板22の左右中央部に後述の通常の耕耘作業を行なうために培土板20と連結するか、畝Uを形成する培土作業のために持ち上げ固定位置に連結する連結具である連結ピン23を取り付けている。また、連結板22の下端部には多数の三角形状をゴム又は樹脂で形成する耕耘ならし体24を設けている。
【0017】
本実施の形態では、耕耘板21と連結板22とを組み合わせて一体の耕耘カバー体Cを構成としているが、別実施例として左右の耕耘板と連結板を一枚の鉄板で構成し、左右中央部を培土板の形状に切り欠く耕耘カバー体Cを構成しても良い。また、耕耘カバー体をゴムや樹脂による弾性部材で形成しても良い。
【0018】
培土板20の左右両端部にはヒンジ25を取り付け、平行四辺形状の畝側面押板26を取り付けている。畝側面押板26を培土板20の前面位置から後方に縦軸芯に回動する構成とし、畝側面押板26の後面には樹脂やゴムの弾性板27を取り付け、弾性板27の先端を畝側面押板26が後方に回動したとき、畝側面押板26の後端よりも後方に延びる位置に形成する。培土板20の下端部は後方に屈曲形成し、該屈曲部に連結ピン23を挿入する挿入孔(図示せず)を形成する耕耘作業時用連結受具28を形成し、培土板20と耕耘カバー体Cとを連結可能に構成している。
【0019】
耕耘カバー体Cと培土板20が連結していないときには、横軸芯の回動軸30を支点に耕耘カバー体Cと培土板20は前後方向にそれぞれ別個に回動可能に構成している。また、耕耘カバー体Cと培土板20が連結しているときは一体に回動する構成としている。回動軸30は左右一対設け、それぞれ培土板20の左右一端と耕耘板21とを連結している。
【0020】
31は規制棒で一端を棒部31aに形成し、他端に尾輪32を取り付ける構成とし、規制棒31のスライドを支持する規制棒ホルダ33に尾輪32を上向き姿勢にするか下向き姿勢にするかいずれかを選択できる構成としている。36は規制棒31の位置を固定するピンである。
【0021】
規制棒ホルダ33は抵抗棒ホルダ14の後方で、かつ回動軸30よりも高い位置に設けられ、抵抗棒ホルダ14と接続体34で接続される構成とし、また、耕耘カバー体Cを回動して持ち上げたときに持ち上げた位置を固定する連結ピン23で挿入する挿入孔(図示せず)を形成する培土作業時用連結受具35を取り付けている。
【0022】
次に通常の耕耘作業と、畝立てする培土作業について以下順に説明する。
耕耘作業時は図2と図3に示すように耕耘カバー体Cと培土板20を垂れ下げる姿勢とする。すなわち、連結ピン23を耕耘作業用連結受具28に挿入し、耕耘カバー体C(耕耘板21)と培土板20とを連結状態とし、一体で回動軸30を軸芯に前後方向に回動する構成とする。このとき、畝側面押板26は培土板20の前面と略同じ位置に横姿勢の位置にあり、耕耘板21は弾性板27と畝側面押板26の後面に当接している。そして、作業者は抵抗棒13を下にスライドして使用状態にセットし、規制棒31を上方にスライドして棒部31aが作業反力で後方に回動する培土板20の後面に当接しない位置まで上昇させる。
【0023】
作業者はエンジンEを始動して操作ハンドル5を把持して前進走行すると、抵抗棒13の先端が土中に埋まり抵抗になりながら耕耘爪10が回転し、耕耘作業がなされる。耕耘爪10で耕耘作業がなされながら耕耘ならし体24で圃場面がならされ、耕耘作業跡の見栄えが良好になる。
【0024】
培土作業時は図1と図4、図5に示すように耕耘カバー体Cを持ち上げている。
連結ピン23を耕耘作業用連結受具28から解除し、耕耘カバー体Cを上方に跳ね上げ連結ピン23を培土作業用連結受具35に挿入し、持ち上げ位置で固定する(図3の状態)。そして、棒部31aを下方に向けて規制棒31を下方にスライドし、棒部31aの先端が培土板20の後方に対向する位置にセットする。そして、抵抗棒13を不使用状態まで上方にスライドさせる。
【0025】
作業者はエンジンEを始動して操作ハンドル5を把持して前進走行すると、耕耘爪10で耕耘されて後方に跳ね上げられた土が培土板20の前面20aに当たり、培土板20が作業反力で後方に回動する。すると、規制棒31の棒部31aが培土板20の後面に当接し、培土板20がそれ以上後方に回動するのを規制する。すると、培土板20の前面に当たった土が培土板20の左右にはみ出し畝Uを形成する。なお、左右にはみ出す土の作用により横姿勢の畝側面押板26が後方に押し出され、以後畝側面押板26は形成された畝Uの側面を押し付け、畝Uの側面を形成する。そして、形成された畝の側面を弾性体27で整える。畝側面押板26と弾性体27はヒンジ25の作用により畝側面を追従しながら畝側面を形成する。
【0026】
なお、耕耘機を単に移動するときには尾輪32を下向きにして接地することで、移動しやすくなる。
本実施の形態の効果について以下記載する。
【0027】
培土作業時に、耕耘カバー体Cを一度の操作で非耕耘作業位置まで回動できるため培土作業と耕耘作業の切り換え作業が簡単になる。
培土作業時に耕耘カバー体Cを回動軸30より高い位置まで持ち上げて固定するため、作業者は運転操作しながら畝の形成状態を視認しやすい。
【0028】
培土作業時に培土板20が作業反力により後方に回動したときに規制棒31で抑えるため、培土板20の左右に土を放出しやすい。また、培土板20が柔軟に回動動作するため、圃場の状態に合わせて追従しやすい。
【0029】
耕耘カバー体Cを他の部材に当接せずに培土作業位置、すなわち非耕耘作業位置まで回動し、固定することができる。
畝側面押板26で畝Uの側面を形成し、さらに弾性体27でならすことができるため、畝側面の見栄えを良好にすることができる。
【0030】
連結板22を耕耘板21と培土板20の下側にわたって水平に設け、その下部に耕耘ならし体24を装着することで、耕耘作業時の耕耘跡の見栄えを良好にすることができる。
耕耘作業時用連結受具28を培土板20の下部に設けることで、ウエイトを兼ねることができ、培土板の培土作用が良好になる。
【0031】
規制棒31の高さ位置を調節できることで、培土作業時の培土板20の回動角度を任意に設定可能となり、所望の畝Uの形状にすることができる。また、規制棒31の一端に尾輪32を装着することで、移動時に簡単に尾輪32を接地して利用できる。
【0032】
次に、図6〜図8の実施の形態について説明する。
図6〜図8は図3〜図5にそれぞれ略対応するものであり、技術思想的にも耕耘カバー体を培土作業時に持ち上げる内容は共通している。相違点は図3〜図5の耕耘カバー体Cと図6〜図8の耕耘カバー体Dの形状の違いである。
【0033】
すなわち、耕耘カバー体Dは背面視で略長方形状の板で形成し、かつその一部が培土板20の後方にオーバーラップしている。そして、耕耘カバー体Dの左右中央部に縦長の切欠き部41を形成する。培土作業時に耕耘カバー体Dを持ち上げたとき、規制棒31が耕耘カバー体Dに当接しないで切欠き部41に入り込む。そして、耕耘カバー体Dを培土作業用連結受具35に固定すると、規制棒31が耕耘カバー体Dを貫通する姿勢となる。
【0034】
効果については前述の図3〜図5の構成と略同様である。
【符号の説明】
【0035】
10 耕耘爪
11 耕耘上部カバー
20 培土体(培土板)
21 耕耘板
22 連結体(連結板)
31 規制棒
33 規制棒ホルダ
35 連結受具(培土作業用連結受具)
B 耕耘後部カバー
C 耕耘カバー体
D 耕耘カバー体(別実施例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘爪(10)の上方を覆う耕耘上部カバー(11)の後端に背面視で逆台形状の培土体(20)と、横軸芯に前後方向に回動する耕耘カバー体(C,D)を設け、培土体(20)と耕耘カバー体(C,D)とを連結する耕耘作業時と、培土体(20)と耕耘カバー体(C,D)の連結を解除し、かつ耕耘カバー体(C,D)を上方に回動して位置固定する培土作業時とを選択可能に構成した歩行型耕耘機。
【請求項2】
培土作業時に耕耘カバー体(C,D)を固定する位置を回動支点よりも高い位置であることを特徴とする請求項1記載の歩行型耕耘機。
【請求項3】
培土体(20)は横軸芯に前後方向に前後方向に回動する構成とし、培土作業時に作業反力で後方に回動する培土体(20)の動作を規制する規制棒(31)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2いずれか記載の歩行型耕耘機。
【請求項4】
規制棒(31)は規制棒ホルダ(33)で上下スライドする構成とし、規制棒ホルダ(33)には培土作業時に耕耘カバー体(C,D)を固定する連結受具(35)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3いずれか記載の歩行型耕耘機。
【請求項5】
耕耘カバー体(D)は背面視で横長の長方形状とし、かつ培土体(20)の後方にあってオーバーラップする構成とし、耕耘カバー体(D)に切欠き部(41)を設け、培土作業時に耕耘カバー体(D)を上方に回動すると規制棒(31)が切欠き部(41)を貫通することを特徴とする請求項2から請求項4いずれか記載の歩行型耕耘機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115190(P2012−115190A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266788(P2010−266788)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】