説明

歯磨チューブ用積層材および歯磨き用チューブ容器

【課題】少ない素材種で安価に製造できる歯磨チューブ用積層材を提供する。
【解決手段】内層から外層に向かって、少なくとも最内層、ガスバリア層および最外層とからなり、前記最内層及び最外層がポリプロピレンフィルムであり、前記ガスバリア層が、ガスバリア性ポリプロピレンフィルムまたは蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記最内層とガスバリア層、およびガスバリア層と最外層とがドライラミネート接着されてなることを特徴とする、歯磨チューブ用積層材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用樹脂の種類が簡素化され安価に製造できる歯磨チューブ用積層材、および前記歯磨チューブ用積層材からなる歯磨き用チューブ容器、歯磨き製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チューブ入りの練り歯磨き剤には、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の研磨剤;ラウロイルサルコシンソーダ、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等の発泡剤;ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の保湿剤;アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等の結合材;フッ化物、ビタミンEなどの薬効成分に加えて、矯味矯臭剤として、ペパーミント、スペアミント、L−メントール、L−カルボン、フルーツ系フレーバー、花卉系フレーバー、スパイス系フレーバー、ハーブ系フレーバー、ウッド系フレーバーなどが配合されている。
【0003】
歯磨き用チューブ容器も用途その他に応じて種々のものが開発され、例えば、薬効成分として含有させたビタミンEの吸着を防止した歯磨チューブ用積層材などがある。最内層にポリエチレンを使用するとビタミンEの残存量が低減することに鑑み、最内層と最外層とを、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリエステル樹脂およびホモポリプロピレン樹脂の少なくとも一種の熱可塑性樹脂で構成したものである(特許文献1)。特に、最内層としてホモポリプロピレン樹脂を使用すると、歯槽膿漏予防効果を期待できるビタミンEの保存中の減量が少ないという。実施例1では、PETフィルムに軟質アルミニウム箔をドライラミし、更にこの両面にポリアクリロニトリル樹脂フィルムをドライラミしている。また、実施例2では、最内層から順にホモポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、PETフィルム、金属蒸着PETフィルム、酸コポリマー層、アルミニウム箔、酸コポリマー層、ポリエチレンフィルム、ホモポリプロピレンフィルムを積層している。実施例2では、最内層としてホモポリプロピレンフィルムを使用し、ビタミンEの減量率が10%以内となっている。
【0004】
また、最外層と最内層とが熱可塑性樹脂で構成され、最外層と最内層との間に中間層を有するラミネートシートを用いて接合シール部で筒状のチューブ本体を構成した積層チューブ容器であって、前記最内層にポリアクリロニトリル樹脂(PAN)、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)或いは環状ポリオレフィンスルホン系樹脂(TPO)から選ばれた少なくとも1種の樹脂層を使用した積層チューブ容器もある(特許文献2)。上記した最内層は、ビタミンE、トリクロサンその他類似物の有効成分非吸着層として機能し、ビタミンEやトリクロサンなどの有効成分の安定性を向上させることができるという。実施例では、中間層としてアルミニウム箔を使用している。
【0005】
また、金属、金属酸化物、又は無機物の蒸着層を有する蒸着フィルムの蒸着面に接着剤を介して線状低密度ポリエチレンをドライラミネートした上に、線状低密度ポリエチレンを、該蒸着フィルムの他方の面にポリエチレン/白色エチレン・酢酸ビニル共重合体/ポリエチレンよりなる積層フィルム層を、それぞれ積層したラミネートフィルムをもってチューブ状容器を構成したことを特徴とする復元性のあるラミネートチューブ容器もある(特許文献3)。酸素ガスバリア層としてアルミニウム箔を使用すると、環境に対する負荷が大きいことから、アルミニウム箔を使用せず、かつ上記構成によればチューブの復元性を確保できるという。
【0006】
一方、歯磨き用チューブ容器は、歯磨チューブ用積層材で胴部を形成し、これに肩部と口部とを有する頭部を連設して製造され、胴部と頭部との不連続部の接合が十分でないと内容物の保存性が低下する。歯磨き用チューブ容器に連設される頭部は、成形性、筒状胴部との接着性と共にガスバリア性が要求されるが、熱安定性の高い高密度ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂は、酸素ガスバリア性に欠け、剛性が高いため頭部を手などで押し潰すことができず、内容物が残留する場合がある。また、肩部と口部とからなる頭部をコンプレッション成形する場合には、筒状に成形した胴部材をマンドレルに装着し、そのマンドレルの上面に形成された成形金型に溶融した成形樹脂を環状に吐出させて落下させ、その上にもう一方の成形金型を押し当てて肩部および口部をコンプレッション成形し、同時に胴部材の開口端を熱溶着させるものであるが、成形樹脂がポリエチレンの場合は良好に成形できるが、ポリプロピレンを使用する場合は溶融粘度が低いため環状を保持できず、糸引きを生じやすいなどの問題もある。このような胴部材と肩部と口部とを連設してチューブ容器を製造する方法として、耐熱性および内容物の保存性に優れ、かつ経済性に優れたチューブ容器の製造方法が開示されている(特許文献4)。特許文献4は、筒状に形成した胴部材の一方の開口端に、肩部と口部をコンプレッション成形法により、樹脂の成形と同時に熱溶着させて形成するチューブ容器の製造方法であって、少なくとも肩部と口部を形成する樹脂として、ポリプロピレンにポリエチレンをブレンドした混合樹脂を用い、上部が逆漏斗形状に形成され一方の成形金型となるマンドレルに、筒状に形成した耐熱性の胴部材を装着し、該マンドレルの成形金型上に、前記混合樹脂を環状に溶融押し出して供給する際、補助手段としてエアーの吹きつけ手段を用いて、環状に吐出された溶融混合樹脂を吐出部から切り離して、前記マンドレルの成形金型上に落下させ、次いでその上に、もう一方の成形金型を押し当てて、肩部と口部のコンプレッション成形を行うようにし、かつ、前記混合樹脂のポリエチレンが高密度ポリエチレンであって、その含有量が7〜25重量%であり、かつ、前記混合樹脂のポリプロピレンのMFRが5以上であることを特徴とするチューブ容器の製造方法を開示する。なお、特許文献4記載のチューブ容器は、レトルト殺菌処理可能な耐熱性を有し、内容物の長期保存性に優れるという。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−8352号公報
【特許文献2】特開平8−301312号公報
【特許文献3】特許第3562531号
【特許文献4】特許第4043912号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
歯磨チューブ用積層材は、内容物の保護や使用感、商品説明のための印刷層、耐内容物性など要求物性が多い。前記したように歯磨剤は矯味矯臭剤やビタミンなどの有効性物質を含有するが、これらの成分が最内層に吸着され残存量が低減したり、香味矯臭の変化が生じる場合がある。有効成分の吸着に対しては、吸着量を勘案して予め特定成分の添加量を多くして対応することができるが、矯味矯臭の変化を防止することは容易でない。一方、揮発性物質の残存率を高めるには、ガスバリア性を向上させる方法もあるが、廃棄の点からアルミニウム箔を使用せずにガスバリア性を確保できることが好ましい。上記特許文献1、特許文献2記載の歯磨チューブ用積層材は、ビタミンEの吸着を回避できる点で優れるが、ガスバリア層としてアルミニウム箔を使用するものである。従って、歯磨チューブ用積層材としての各種の要求物性を満たすことができ、かつ簡便に廃棄を行うことができる歯磨チューブ用積層材の開発が望まれる。
【0009】
更に、歯磨チューブ用積層材に要求される各種の物性を満たそうとすると層構成が複雑になる。このため層数が多くなり、製造工程も複雑でコストが高くなる要因となっている。例えば、上記特許文献3記載の歯磨チューブ用積層材は、蒸着フィルムの両面にLLDPEをドライラミネートし、前記蒸着フィルムの他方の面に、ポリエチレン/白色エチレン・酢酸ビニル共重合体/ポリエチレンよりなる積層フィルム層を積層するものであり、少なくとも蒸着フィルムのほかに、4種のフィルム層とドライラミネート用接着剤層とが必要となる。従って、使用する材質の種類を少なくし、簡素な構成で安価に製造しうる歯磨チューブ用積層材の開発が望まれる。
【0010】
加えて、歯磨き用チューブ容器は、歯磨チューブ用積層材からなる筒状胴部に、肩部と口部とを有する頭部を連設する必要がある。上記特許文献4は、コンプレッション成形によって頭部を筒状胴部に連設するものであるが、筒状胴部と頭部との相溶性が適合しないと頭部と筒状胴部との接着強度が低下する場合がある。
【0011】
上記現状に鑑み、内容物の吸着がなく、開封から使用終了いたるまで矯味矯臭が変化しない、歯磨チューブ用積層材や歯磨き用チューブ容器の開発が望まれる。
さらに、上記歯磨チューブ用積層材との接着性、ガスバリア性に優れ、かつ素材の種類を簡素化した歯磨き用チューブ容器の開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、歯磨チューブ用積層材について詳細に検討した結果、未延伸ポリプロピレンフィルムを最内層および最外層に使用し、前記最内層と最外層との間に、ガスバリア性ポリプロピレンフィルムをガスバリア層として積層してなる筒状胴部に、ポリプロピレン樹脂で成形した肩部と口部とを有する頭部を連設して歯磨き用チューブ容器を調製し、歯磨剤を充填して40℃、6ヶ月間保存した後の内容物の官能評価を行ったところ、筒状胴部の接着強度および筒状胴部と頭部との接着強度に優れ、かつ極めて官能評価の高いことを見出した。
【0013】
すなわち本発明は、内層から外層に向かって、少なくとも最内層、ガスバリア層および最外層とからなり、前記最内層及び最外層がポリプロピレンフィルムであり、前記ガスバリア層が、ガスバリア性ポリプロピレンフィルムまたは蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記最内層とガスバリア層、およびガスバリア層と最外層とがドライラミネート接着されてなることを特徴とする、歯磨チューブ用積層材を提供するものである。
【0014】
本発明は、前記最内層とガスバリア層との間に、更に不透明層が積層され、前記最内層と不透明層、および不透明層とガスバリア層とがドライラミネート接着されてなることを特徴とする、上記歯磨チューブ用積層材を提供するものである。
【0015】
本発明は、前記ガスバリア層の少なくとも片面に印刷層が形成されていることを特徴とする、上記歯磨チューブ用積層材を提供するものである。
本発明は、前記ガスバリア層は、白色であることを特徴とする、上記歯磨チューブ用積層材を提供するものである。
【0016】
本発明は、上記歯磨チューブ用積層材で成形された筒状胴部の一方の開口端に、ポリプロピレン系樹脂からなり、肩部と口部とを有する頭部が連設され、かつ前記頭部にキャップが装着されてなる、歯磨き用チューブ容器を提供するものである。
【0017】
本発明は、上記歯磨き用チューブ容器に歯磨き剤を充填してなる歯磨き製品を提供するものである。
本発明は、上記歯磨チューブ用積層材で筒状胴部を形成し、前記筒状胴部の一方の開放端に、ポリプロピレン系樹脂からなり、肩部と口部とを有する頭部を射出成型、もしくはコンプレッション成形によって連設することを特徴とする、歯磨き用チューブ容器の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、最内層および最外層にポリプリピレンフィルム、ガスバリア層にガスバリア性ポリプロピレンまたは蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを積層することで、層構成を簡素化でき、このため歯磨チューブ用積層材を簡便かつ安価に調製することができる。また、ポリプロピレンは極めて内容物保存性に優れ、長期に亘り高い官能評価を得ることができる。
【0019】
本発明の歯磨チューブ用積層材は、最内層、ガスバリア層、最外層とがそれぞれドライラミネート接着されたものであり、タンデム式積層材製造装置を使用すれば、装置を一度通過させることで、歯磨チューブ用積層材を簡便に製造することができる。
【0020】
本発明によれば、肩部と口部とを有する頭部にポリプロピレン系樹脂を使用することで、使用材料を簡素化し、かつ簡便に廃棄することができる歯磨き用チューブ容器を安価に製造することができる。
【0021】
更に、本発明の歯磨チューブ用積層材からなる胴部に、ポリプロピレン系樹脂の肩部と口部とを有する頭部を成形すると、接着強度に優れ、かつコンプレッション法でも成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の歯磨き用チューブ容器の部分断面図である。
【図2】図2は、本発明の歯磨チューブ用積層材の層構成の好ましい態様の一例を示す図であり、最内層から順に少なくとも最内層(10)、ガスバリア層(20)および最外層(30)とが、それぞれドライラミネート接着層(40)により積層されている。なお、ガスバリア層(20)を構成するガスバリア性樹脂層または蒸着層を符号20'で示す。図2では、ガスバリア性樹脂層または蒸着層(20')がガスバリア層(20)の最内層側に積層される態様を示すが、本願発明は、これに限定されるものではない。
【図3】図3は、本発明の歯磨チューブ用積層材の層構成の好ましい態様の一例を示す図であり、図2に示す積層材に、さらに不透明層(50)がドライラミネート接着層(40)を介して積層される層構成を示す。
【図4】図4は、本発明の歯磨チューブ用積層材の層構成の好ましい態様の一例を示す図であり、図3の積層材のガスバリア層(20)に印刷層(60)が形成される態様を示す。
【図5】図5は、本発明の歯磨チューブ用積層材の層構成の好ましい態様の一例を示す図であり、ガスバリア層(20)として遮蔽効果を有する遮蔽性ガスバリア層(25)が使用される態様を示す。
【図6】図6は、頭部(B)にキャップ(C)を装着した本発明の歯磨き用チューブ容器に、内容物が充填され、筒状胴部(A)の開放端がエンドシールされた部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第一は、内層から外層に向かって、少なくとも最内層、ガスバリア層および最外層とからなり、前記最内層及び最外層がポリプロピレンフィルムであり、前記ガスバリア層が、ガスバリア性ポリプロピレンフィルムまたは蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記最内層とガスバリア層、およびガスバリア層と最外層とがドライラミネート接着されてなることを特徴とする、歯磨チューブ用積層材である。
【0024】
また、本発明の第二は、前記歯磨チューブ用積層材で成形された筒状胴部の一方の開口端に、ポリプロピレン系樹脂からなり、肩部と口部とを有する頭部が連設され、かつ前記頭部にキャップが装着されてなる、歯磨き用チューブ容器である。
【0025】
更に、本発明の第三は、前記歯磨き用チューブ容器に歯磨き剤を充填してなる歯磨き製品である。以下、本発明を詳細に説明する。
(1)歯磨き用チューブ容器の構成
本発明の歯磨き用チューブ容器の部分断面図を図1(a)に示す。本発明の歯磨き用チューブ容器は、筒状胴部(A)と前記筒状胴部(A)に連設される頭部(B)とからなる。
【0026】
前記筒状胴部(A)は、本発明の歯磨チューブ用積層材を筒状に成形して製造されたものである。筒状胴部(A)の成形方法には特に限定はなく、歯磨チューブ用積層材の1側辺部と他側辺部とを重ねて溶着させる重ね接合であってもよく、歯磨チューブ用積層材の端部の最内層どうしを熱融着させる突合せ接合であってもよい。なお、図1では、歯磨チューブ用積層材の1側辺部と他側辺部との重ね部(A10)が形成された重ね接合の態様を示す。なお、図1(b)に、図1(a)のX−X’線の断面図を示す。
【0027】
前記頭部(B)は、肩部(B10)と、前記肩部(B10)に連設される口部(B20)とからなる。歯磨き用チューブ容器には、前記口部(B20)に図示しないキャップが装着される。図1(a)では口部(B20)の外周にキャップとの装着用の螺旋が形成されているが、キャップの装着は螺旋に限定されるものではなく、例えばキャップを嵌着できる形状を適宜選択することができる。
【0028】
頭部(B)は、ポリプロピレン系樹脂を成形したものであり、コンプレッション成形法や射出成形法で形成することができる。歯磨チューブ用積層材で筒状胴部(A)を調製し、その開放端に、肩部と口部からなる頭部(B)を連設し、口部にキャップを装着することで、本発明の歯磨き用チューブ容器を製造することができる。
【0029】
前記歯磨き用チューブ容器の筒状胴部(A)の開放端から内容物を充填し、前記開放端を熱溶着してエンドシール部を形成すれば、内容物を充填包装した歯磨き用チューブ容器からなる包装製品を製造することができる。
【0030】
本発明の歯磨き用チューブ容器を構成する筒状胴部(A)は、最内層と最外層とがポリプロピレン層で構成されるため筒状胴部を突合せ接合や重ね接合のいずれでも成形することができる。また、頭部(B)がポリプロピレン系樹脂であれば、筒状胴部(A)と頭部(B)との接着強度が高い。特に、歯磨チューブ用積層材を構成するガスバリア層をガスバリア性ポリプロピレンで調製すれば、層構成を簡素化した、オールポリプロピレンの歯磨き用チューブ容器となる。
【0031】
(2)歯磨チューブ用積層材
本発明で使用する歯磨チューブ用積層材は、図2に示すように、内層から外層に向かって、少なくとも最内層(10)、ガスバリア層(20)および最外層(30)とからなり、前記最内層(10)及び最外層(30)がポリプロピレンフィルムであり、前記ガスバリア層(20)が、ガスバリア性ポリプロピレンフィルムまたは蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記最内層(10)とガスバリア層(20)、およびガスバリア層(10)と最外層(30)とがドライラミネート接着(40)されてなることを特徴とする、歯磨チューブ用積層材である。
【0032】
図3に示すように、前記最内層(10)とガスバリア層(20)との間に、更に不透明層(50)が積層されていてもよく、図4に示すように、前記ガスバリア層(20)の少なくとも片面に印刷層(60)が形成されていてもよい。また、図5に示すように、前記ガスバリア層を構成するフィルムが遮蔽性を有する白色であり、遮蔽性かつガスバリア性を有する、遮蔽性ガスバリア層(25)であってもよい。
【0033】
本発明では、ガスバリア層(20)としてガスバリア性ポリプロピレンフィルムまたは蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、かつ各層をドライラミネート接着剤で積層する点に特徴がある。従来から、例えば、特開2007−144688号公報に開示されるように、最内層と最外層とをポリプロピレンで調製した積層材が存在し、耐熱性の確保が要求されるレトルトパックなどに使用されるが、歯磨剤などの熱処理加工が不要な分野では、ポリプロピレンを最外層や最内層に使用する必要性は少ない。しかしながら、厚さ100μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを最内層(10)および最外層(30)として使用し、層構成を簡素化すべくガスバリア層(20)として酸素透過度が15(cc/m2・d・MPa)のガスバリア性ポリプロピレンフィルムを、ドライラミネート接着により積層して歯磨き用チューブ容器を製造したところ、歯磨剤を充填した40℃、6ヶ月間の官能評価において、極めて優れた評価結果を得られたのである。歯磨剤における官能評価では、複数の矯味矯臭剤のそれぞれの残存率の割合の変化などが官能評価の結果に影響を及ぼすと考えられるが、本発明の歯磨チューブ用積層材はこれらのバランスに優れ、ポリプロピレンフィルムとして想定できない、素晴らしい効果を奏したものと考えら得る。
【0034】
しかも、ポリプロピレンフィルムは、特開平5−8352号公報や特開平8−301312号公報に開示されるように、ビタミンEやトリクロサンなどの吸着率が極めて低い。本願発明では、最外層および最内層に使用されるポリプロピレンと同種のガスバリア性ポリプロピレンフィルムを使用することで材料の種類を簡素化でき、各層をラミネート接着することで製造工程を簡素化でき、しかも、内容物の保存性および官能性評価に優れた歯磨き用チューブ容器が得られるのである。ガスバリア層として、蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した場合も同様の官能評価の結果であった。このようなことは、従来、全く知られていないことであった。なお、高いガスバリア性を確保するために、より酸素透過度の高いフィルムを積層する方法もあるが高価であり、かつ高いガスバリア性フィルムを使用した場合に官能試験に優れるとは限らない。本発明は、安価であり、実際に高い官能評価が得られる高特性の歯磨チューブ用積層材を製造できる点で極めて優れる。
【0035】
(i)ポリプロピレンフィルム
本発明の歯磨チューブ用積層材を構成する最外層(30)、最内層(10)として使用するポリプロピレンフィルムは、未延伸ポリプロピレンフィルムである。ヒートシール層として機能すればよく、特に制限はない。従って、ポリプロピレンとしては、アタクチックポリプロピレンやシンジオタクチックポリプロピレンなどがあるが、ホモポリプロピレンであっても、ランダムコポリマーポリプロピレンやブロックコポリマーポリプロピレンであってもよい。最外層と最内層との双方をポリプロピレンフィルムにしたため、各種の溶着方法で筒状胴部を製造することができ、製造工程の選択範囲を広く設定することができる。
【0036】
一方、ヒートシール層として機能するためには、熱接着温度が120〜280℃であることが好ましい。また、筒状胴部の高い接着強度を確保するためには、破断強度(MPa)がMD/TD=40以上/30以上であることが好ましい。従って、プロピレンと共重合されるコモノマーとしては、エチレン、ブテン、ヘキセン、4−メチルペンテン、オクテンなどがあり、上記特性の範囲で適宜選択して使用することができる。
【0037】
ポリプロピレンフィルムの厚さは最外層、最内層共に100〜200μm、より好ましくは100〜150μmである。ただし、最内層と最外層とは、同じ種類、同じ厚さのポリプロピレンフィルムであっても異なるポリプロピレンフィルムであってもよい。上記範囲であれば、筒状胴部の形成や筒状胴部と頭部との連設において高い接着強度を確保でき、内容物の高い保存性を確保できるからである。
【0038】
(ii)ガスバリア性ポリプロピレンフィルム
本発明でガスバリア層(20)として使用するガスバリア性ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、ポリプロピレンフィルムにガスバリア性樹脂層が塗工されたフィルムがある。図2では、ガスバリア層(20)に積層されるガスバリア性樹脂層を符号20’で示した。
【0039】
ガスバリア性樹脂層としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂や、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などを例示することができる。上記樹脂の塗工方式は、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、スプレーコーター、公知の方式から適宜選択可能である。上記ポリプロピレンフィルムに上記ガスバリア性樹脂を、上記酸素透過度となるように塗工し、ガスバリア性プロピレンフィルムとして使用することができる。
【0040】
ガスバリア性ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレンフィルムとしては、2軸延伸ポリプロピレンフィルムを好適に使用することができる。厚さは、10〜100μm、好ましくは10〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0041】
ガスバリア性ポリプロピレンフィルムは、酸素透過度(cc/m2・d・MPa)が70以下、より好ましくは50以下である。この範囲で、歯磨剤を充填した場合の官能試験に優れるからである。
【0042】
なお、市販品を使用することもできる。たとえば、東セロ株式会社のポリビニルアルコールコートA−OPなどが例示できる。
(iii)蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム
本発明でガスバリア層として使用する蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに無機系酸化物や両性金属類の酸化物等の薄膜層を形成したものがある。
【0043】
蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを構成するポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを好適に使用することができる。厚さは、10〜100μm、好ましくは10〜50μm、より好ましくは10〜30μmである。
【0044】
上記のフィルムに、無機元素、酸素、水素のうち1種以上の元素と炭素との化合物または炭素単体と、前記無機元素の酸化物とを含有する蒸着膜を設ける。その蒸着膜を構成する無機酸化物としては、例えば、酸化珪素、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジュウム、酸化チタン、酸化アルミニュウム、酸化マグネシュウム等を挙げることができる。すなわち、前記無機元素は、珪素、スズ、亜鉛、インジュウム、チタン、アルミニュウム、マグネシュウム等であり、そのうち、珪素が最も好適である。
【0045】
前記の樹脂のフィルムの表面に、上記の蒸着膜を形成する方法には、例えば、物理蒸着法および化学蒸着法等を挙げることができる。物理蒸着法としては、高真空下で蒸発源を抵抗加熱、高周波誘導加熱や電子ビ−ム加熱等により加熱して、蒸発、昇華させることで、フィルム上に上記無機酸化物等の蒸着膜を形成することができる。蒸発源としては、上記と同様の酸化物を利用することができる。このような蒸発源を用いて蒸着する際に、酸素が遊離して不足するのを補うために、外部より酸素を導入しプラズマ等で酸素を活性化して蒸発粒子を酸化させる方法もとることができる。
【0046】
このような物理蒸着法でもよいが、下記のような化学蒸着法を用いると、蒸着膜が、フィルムの柔軟性に追従して形成されるので、柔軟なフィルムが得られ、ピンホールやクラックの発生が防止されて一層好適である。例えば、蒸着膜を構成する無機酸化物が酸化珪素の場合、その蒸着膜の層を形成する有機珪素化合物は、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルメチルジシロキサン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのなかから選択することができ、好ましくは、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンである。
【0047】
いずれも液体である上記有機珪素化合物を気化させ、酸素と、不活性ガスであるヘリウムやアルゴンとを混合した原料ガスを、蒸着膜を付着するフィルムが設置されているプラズマ化学蒸着機の真空チャンバ−内に吹き込み、高周波または電磁波により珪素をプラズマ化し、酸素により酸化しながら厚さが約60〜500Åの蒸着膜を形成する。このようにして形成された蒸着膜には、珪素、酸素、水素のうち1種以上の元素と炭素との化合物または炭素単体と、珪素の酸化物等が含有される。例えば、C−H結合をもつ化合物、Si−H結合をもつ化合物、または、炭素単体がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を含む場合がある。具体的に例を挙げると、メチル基等のアルキル基をもつハイドロカーボン、または、シリル基、シリレン基をもつハイドロシリカ、更には、シラノール等の水酸基をもつ誘導体がある。このガスバリア層に含有される化合物の種類や量は、原料ガスの組成、蒸着条件を変化させることにより制御することができる。
【0048】
この蒸着膜において、上記した珪素、酸素、水素のうち1種以上の元素と炭素との化合物または炭素単体と、珪素の酸化物化合物の含有率は、0.1〜40wt%、特に5〜20wt%が好ましい。この含有率が、0.1wt%未満であると、ガスバリア層の耐衝撃性、延展性が不充分となり、屈曲等によってクラックの発生が生じえて、高いガスバリア性を保つことができなくなる。逆に、40wt%を超えると、ガスバリア性が低下して好ましくない。また、蒸着膜に含まれる上記の炭素、水素、珪素及び酸素のなかから1種以上の元素から成る化合物の濃度は、蒸着膜の表面を高く、表面から基材フィルムとの界面に向かって減少するように形成すると、最もクラックが発生しやすい表面で耐衝撃性が向上し、基材フィルムと蒸着膜との接着は強固なものになって好ましい。
【0049】
また、この蒸着膜を有するフィルムとしては、全光線透過率75%以上、酸素透過率10cc/m2・day・atm以下、水蒸気透過率10g/m2・day・atm以下のものが望ましい。なお、酸化珪素の蒸着膜を例にしてその膜性状を説明すると、酸化珪素の蒸着膜は、SiO、Si3O4、Si23、SiO2等の混合物で膜を構成し、その組成は、SiOx(x=1〜2)で表され、その性状は、ガラス状になっているものである。なお、無機酸化物の薄膜層としては、酸化珪素による場合が着色が極めて少なくしかも良好なバリヤー性能が得られ、好適である。
【0050】
本発明では、蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムとして市販品を使用することもできる。例えば、三菱化学社製、商品名「テックバリア」などを好適に使用することができる。
【0051】
(iv)不透明層
本発明では、ガスバリア層と最内層との間に不透明層を積層することが好ましい。本発明において不透明層とは、歯磨き用チューブ容器の外観から内容物を遮蔽できる不透明性を有する層を意味する。本発明の歯磨チューブ用積層材は、ガスバリア層としてアルミニウム箔を使用せず、このため最外層および最内層、ガスバリア層が全て透明なフィルムで構成されうる。従って、内容物を外部から遮蔽するために不透明層を積層することが好ましい。
【0052】
このような不透明層は、内容物を遮蔽できればよいが、好ましくは使用する材質の種類を簡素化すべく、ポリオレフィン系樹脂からなることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系樹脂に酸化チタンを混練した乳白樹脂フィルム、パール顔料を混練したパール樹脂フィルムなどがある。
【0053】
不透明層の厚さは、上記目的を達成できればよく、特に制限はない。一般には、10〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
なお、別個に不透明層を形成することなく、前記ガスバリア層を構成するポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートに酸化チタンやパール顔料などを混練して遮蔽機能を付加し、ガスバリア層と不透明層とを併用させた遮蔽性ガスバリア層としてもよい。
【0054】
(v)印刷層
歯磨チューブ用積層材を構成するいずれかの層に印刷層を形成することができる。より好ましくは、前記ガスバリア層のいずれか片面に印刷層を形成する。好ましくは、最内層側に印刷層を形成する。印刷層と最内層とがドライラミネーション接着層を介して隣接するため、印刷層の印字を明瞭にして積層することができる。
【0055】
印刷層は、予め、前記ガスバリア層の印刷層形成側に表面処理を行った後に形成することが好ましい。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理、その他等の前処理などがある。また、予め、プライマーコート剤、アンダーコート剤、アンカーコート剤等を任意に塗布し、表面処理とすることもできる。
【0056】
印刷層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0057】
印刷方法は、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
(vi)ドライラミネート接着層
本発明では、最外層とガスバリア層、ガスバリア層と最内層とをドライラミネート接着する。また、不透明層が積層される場合には、ガスバリア層と不透明層、不透明層と最内層とをドライラミネート接着する。その際、予め各層にプライマーを塗布してプライマー層を形成し、ついで該プライマー層の面にラミネート用接着剤を介してヒートシール層などの基材をドライラミネート積層法を用いて積層することができる。
【0058】
ドライラミネート接着は、レトルト容器を構成する積層材を調製する際に使用されることが多く、歯磨チューブ用積層材を構成する全ての層をドライラミネート接着する例は少ない。しかしながら、本発明では、上記した最内層、ガスバリア層、最外層をそれぞれドライラミネート接着することで、極めて良好な、歯磨剤の官能試験結果を得ることができた。
【0059】
本発明で使用するラミネート用接着剤としては、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤がある。
【0060】
より好ましくは、例えば、トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアナートなどの芳香族ポリイソシアナート、またはヘキサメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナートなどの脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアナートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール、その他のヒドロキシル基含有化合物との反応によって得られるポリエーテルポリウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン系樹脂、ポリアクリレートポリウレタン系樹脂を主成分とするものである。これらによれば、柔軟性と屈曲性に富む薄膜を形成することができ、その引っ張り伸長度を向上させ、ポリプロピレンフィルムやガスバリア層に対し、柔軟性、屈曲性などを有する被膜として作用し、ラミネート加工、印刷加工などの加工適性を向上させることができる。
【0061】
これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、その性状はフィルム、シート状、粉末状、固形状などのいずれでもよい。更に、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。
【0062】
ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0063】
(vii)積層材の層構成
本発明の歯磨チューブ用積層材の好ましい態様を図2に示す。図2では、最内層から順に少なくとも最内層(10)、ガスバリア層(20)および最外層(30)とが、いずれもドライラミネート接着層(40)を介して積層されている。なお、ガスバリア層(20)を構成するガスバリア性樹脂層または蒸着層を符号20'で示す。
【0064】
また、図3に、図2記載の積層材に、更に不透明層(50)が積層され、前記最内層(10)と不透明層(50)、および不透明層(50)とガスバリア層(20)とがドライラミネート接着層(40)を介して積層される歯磨チューブ用積層材の層構成を示す。
【0065】
また、図4に、図3に示す積層材において、前記ガスバリア層(20)に印刷層(60)が形成される態様を示す。
また、図5に、ガスバリア層(20)として遮蔽効果を有する遮蔽性ガスバリア層(25)が使用される態様を示す。図5において、更に印刷層が形成されてもよい。なお、図2〜図5では、ガスバリア性樹脂層または蒸着層(20’)がガスバリア層(20)の最内層側に積層される態様を示すが、本願発明は、これに限定されるものではない。
【0066】
本発明では、ガスバリア層(20)としてガスバリア性ポリプロピレンを使用する場合には、オールポリプロピレンの歯磨チューブ用積層材となる。最内層(10)と最外層(30)とがポリプロピレンであるため、筒状胴部の作成が容易であり、かつポリプロピレンは接着強度が高いため、内容物の保存性に優れる。
【0067】
なお、従来の層構成の一例は、後記する比較例に示すように、厚さ80μmのポリエチレンフィルム/厚さ25μmのポリエチレン溶融樹脂層/厚さ12μmのPETフィルム/印刷層/厚さ25μmのポリエチレン溶融樹脂層/厚さ100μmの乳白ポリエチレンフィルム/ドライラミネート接着層/厚さ12μmのシリカ蒸着PETフィルム/厚さ25μmのエチレンメタクリレート樹脂層/厚さ80μのポリエチレンフィルムである。最内層および最外層にポリエチレンフィルムを使用し、ガスバリア層としてシリカ蒸着PETフィルムを使用し、不透明層とガスバリア層との積層以外は、全てポリエチレン樹脂またはエチレンメタクリレート樹脂による溶融接着で積層されている。レトルトのような加熱処理が不要であるため、溶融樹脂層を介して隣接するフィルムが積層されているが、層構成が複雑で積層工程も容易でない。このため、安価な製造も困難であった。本発明によれば、最内層、最外層およびガスバリア層の3層のみで安価かつ簡便に歯磨チューブ用積層材を提供することができる。
【0068】
なお、上記によって調製された歯磨チューブ用積層材は、厚さが200〜500μm、より好ましくは200〜350μmである。
(viii)歯磨チューブ用積層材の製造方法
本発明の歯磨チューブ用積層材は、各層をドライラミネート接着して製造される。例えば、図2に示す層構成では、ガスバリア層(20)と最内層(10)、最外層(30)とをタンデム式積層装置に導入し、各層をドライラミネート接着する。これにより、タンデム式積層装置に前記各フィルムを一回通過させるだけで、3層の積層体からなる歯磨チューブ用積層材を製造することができる。
【0069】
なお、ガスバリア層(20)に印刷層(60)が形成される場合には、予めガスバリア層に印刷層を形成し、ついで、このガスバリア層と最内層、最外層とをタンデム式積層装置に導入し、各層をドライラミネート接着する。これにより、タンデム式積層装置に前記各フィルムを一回通過させるだけで、3層の積層体からなる歯磨チューブ用積層材を製造することができる。
【0070】
また、不透明層が積層される場合には、予めガスバリア層と不透明層とをドライラミネート接着すれば、上記と同様にタンデム式積層装置に前記各フィルムを通過させて4層の積層体からなる歯磨チューブ用積層材を製造することができる。
【0071】
(5)頭部
本発明では、上記歯磨チューブ用積層材からなる筒状胴部に肩部と口部とを有する頭部を連設する。前記頭部は、肩部と口部とを有すれば、その構成に特に限定はない。また、成形方法にも特に制限はなく、コンプレッション成形や射出成形によって成形することができる。
【0072】
例えば、ポリプロピレン樹脂単体で成型する場合は、インジェクション成型法が好適である。インジェクション成型法によれば、ポリプロピレン樹脂単体で頭部が成形できるため、歯磨き用チューブ容器を全てポリプロピレンで調製することができる。
【0073】
一方、ポリプロピレン系樹脂を使用して、コンプレッション成形によって頭部を成形することもできる。ポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレンを主成分とし、これに他の成分を配合した樹脂である。
【0074】
このようなポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンを50〜93質量%、高密度ポリエチレン樹脂を7〜50質量%、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂を0〜25質量%含有する樹脂を例示することができる。
【0075】
なお、コンプレッション成形の方法は、例えば、特許第4043912号に開示されている方法に順次て行うことができる。
(7)歯磨き用チューブ容器の製造方法
本発明の歯磨き用チューブ容器は、上記歯磨チューブ用積層材からなる筒状胴部に上記頭部を連設してなる。前記筒状胴部は、歯磨チューブ用積層材の1側辺部上に他側辺部を1.0〜3.0mm、より好ましくは1.0〜2.0mmに重ねて形成することができる。ただし、歯磨チューブ用積層材の両端を合掌状に貼り合わせる突き合わせ接着でもよく、更には、歯磨チューブ用積層材の端部の両端の内面にテープ貼りする方法であってもよい。
【0076】
上記筒状胴部は、歯磨チューブ用積層材の端部を熱融着して形成することができる。筒状胴部を形成する際の熱融着方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、高周波シール等の既知の方法で行うことができる。
【0077】
次いで、この筒状胴部に肩部と口部とからなる頭部を連設し、歯磨き用チューブ容器を製造することができる。
上部が逆漏斗形状に形成され一方の成形金型となるマンドレルに、上記した筒状胴部の開放端を装着し、該マンドレルの成形金型上に、前記樹脂を環状に溶融押し出して供給して前記マンドレルの成形金型上に落下させ、次いでその上に、もう一方の成形金型を押し当てて、肩部と口部とのコンプレッション成形を行う。これにより、頭部と筒胴胴部との接着強度に優れる歯磨き用チューブ容器を製造することができる。
【0078】
次いで、口部にキャップを取り付けて、筒状胴部の開放端から歯磨剤を所定量充填し、前記開放端を熱溶着してエンドシール部を形成すれば、内容物を充填した歯磨き用チューブ容器を得ることができる。口部(B20)にキャップ(C)を装着した歯磨き用チューブ容器に内容物が充填され、筒状胴部の開放端がエンドシールされた部分断面図を図6に示す。
【実施例】
【0079】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(1)実施例1
20μmのガスバリアコーティング延伸ポリプロピレンフィルム(酸素透過度15cc/m2・d・MPa)のコーティング面にグラビア印刷を行い、印刷層を形成した。
【0080】
ついで、ウレタン系2液硬化型接着剤を用いて100μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層した。また前記延伸ポリプロピレンフィルムの非印刷面にウレタン系2液硬化型接着剤を用いて100μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、3層の積層フィルムを作製した。
【0081】
(2)実施例2
20μmのガスバリアコーティング延伸ポリプロピレンフィルム(酸素透過度15cc/m2・d・MPa)のコーティング面にグラビア印刷を行い、印刷層を形成した。
【0082】
次いで、ウレタン系2液硬化型接着剤を用いて30μmの乳白延伸ポリプロピレンフィルムを積層した。また、前記乳白延伸ポリプロピレンフィルムにウレタン系2液硬化型接着剤を用いて100μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層した。さらに先の積層フィルムのガスバリアOPPの非印刷面にウレタン系2液硬化型接着剤を用いて100μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、4層の積層フィルムを作製した。
【0083】
(3)実施例3
12μmのPETフィルムの片面にシリカ蒸着層を設けたガスバリアPETフイルム(酸素透過度1cc/m2・d・MPa)の蒸着面にグラビア印刷により印刷層を形成した。
【0084】
ついで、ウレタン系2液硬化型接着剤を用いて30μmの乳白延伸ポリプロピレンフィルムを積層した。また、前記乳白延伸ポリプロピレンフィルムにウレタン系2液硬化型接着剤を用いて100μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層した。さらに先の積層フィルムのガスバリアPETフィルムの非印刷面にウレタン系2液硬化型接着剤を用いて100μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層し、4層の積層フィルムを作製した。
【0085】
(4)実施例4
実施例1で調製した積層フィルムを120mm巾に断裁しその両側を、幅1.8mmで重ね合わせ、ヒートシールにより温度250℃で溶着し、筒状胴部を作製し、150mmの長さでカットした。
【0086】
その筒状胴部の一方の開放端に、ポリプロピレン樹脂を用いてインジェクション成型法によりラミチューブの肩部と口部からなる頭部を成型し、歯磨き用チューブ容器を製造した。
【0087】
(5)実施例5
実施例2で調製した積層フィルムを120mm巾に断裁しその両側を幅1.8mmで重ね合わせ、ヒートシールにより温度250℃で溶着し、筒状胴部を作製し、150mmの長さでカットした。
【0088】
その筒状胴部の一方の開放端に、ポリプロピレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂を、50:20:30の割合で混合し、コンプレッション成型法によりラミチューブの肩部と口部からなる頭部を成型し、歯磨き用チューブ容器を製造した。
【0089】
(6)実施例6
実施例3で調製した積層フィルムを120mm巾に断裁しその両側を幅1.8mmで重ね合わせ、ヒートシールにより温度250℃で溶着し、筒状胴部を作製し、150mmの長さでカットした。
【0090】
その筒状胴部の一方の開放端に、ポリプロピレン樹脂と直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂を、50:10:40の割合で混合し、コンプレッション成型法によりラミチューブの肩部と口部からなる頭部を成型し、歯磨き用チューブ容器を製造した。
【0091】
(7)比較例1
100μmの乳白PEFと12μmのシリカ蒸着PETをウレタン系2液硬化型接着剤にて積層した。
【0092】
次いで、前記シリカ蒸着PET面にウレタン系2液硬化型アンカーコート剤を塗布後、エチレンメタクリレート25ミクロンを押し出し、80μmのPEFを積層した。その後、先のラミネート原反の乳白PEF面にポリエチレンを25μm押し出し、グラビア印刷にて印刷層を設けた12μmのPETフィルムの印刷面に積層し、さらにPETフィルムの非印刷面にポリエチレン25μmを押し出し、80μmのPEFを積層し、積層材を製造した。
【0093】
(8)比較例2
比較例1で製造した積層材を120mm巾に断裁し、その両側を、幅1.8mmで重ね合わせ、ヒートシールにより溶着して筒状胴部を作製し、150mmの長さでカットした。その筒状胴部の一方の開放端に、高密度ポリエチレン樹脂を用いて、コンプレッション成型法によりラミチューブの肩部と口部からなる頭部を成型し、歯磨き用チューブ容器を製造した。
【0094】
(9)接着強度の評価
(i)胴部
実施例1〜3、比較例1で製造した積層フィルムを120mm巾に断裁しその両側を、幅1.8mmで重ね合わせ、ヒートシールにより溶着して筒状胴部を作製し、150mmの長さでカットした。この筒状胴部の前記幅1.8mmの溶着部分に直角に15mm幅の切込みを入れた。前記切り込みをいれた15mm幅の部分を引っ張り試験機のチャックに固定し、スピード300mm/sec.で引っ張り、破断する際の強度を測定した。結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1〜3で製造した積層材は、比較例1で製造した積層材に比べ、接着強度が高かった。
【0095】
【表1】

(ii)頭部
実施例4〜6、比較例2で製造した歯磨き用チューブ容器と頭部と筒状胴部との溶着部に直角に15mm幅の切込みを入れた。前記切り込みをいれた15mm幅の部分を引っ張り試験機のチャックに固定し、スピード300mm/sec.で引っ張り、破断する際の強度を測定した。結果を表2に示す。表2に示すように、実施例4〜6で製造した歯磨き用チューブ容器は、比較例2で製造した歯磨き用チューブ容器に比べ、接着強度が高かった。
【0096】
【表2】

(10)有効成分の残存試験
実施例4〜6および比較例2の歯磨き用チューブ容器にイソプロピルメチルフェノールを有効成分とする歯磨剤を充填し、40℃、6ヶ月保存した。イソプロピルメチルフェノールの規定値に対する残存率を測定した。実施例4では98.2%、比較例2では94.5%であった。実施例5、実施例6についても実施例4と同等の残存率であった。表3に結果を示す。残存率は、◎:残存率95〜105%、○:残存率90〜95%及び105〜110%、×:残存率90%未満及び110を超える残存率(%)で表記した。
【0097】
【表3】

(11)官能試験
実施例4〜6および比較例2の歯磨き用チューブ容器にイソプロピルメチルフェノールを有効成分とする歯磨剤を充填し、40℃、6ヶ月保存した後の香味安定性を評価し、官能試験とした。表4に結果を示す。香味安定性は、◎:非常に良好、○:良好、×:劣化が認められる、で表記した。いずれの場合も良好な結果であったが、実施例4、実施例5は実施例6、比較例2より更に良い結果であった。
【0098】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、簡素な層構成によって官能評価に優れる歯磨チューブ用積層材、前記歯磨チューブ用積層材からなる歯磨き用チューブ用容器を製造することができる。層構成が簡易であるため、製造工程が簡易であり、安価に製造することができ、有用である。
【符号の説明】
【0100】
10・・・最内層、
20・・・ガスバリア層、
20’・・・ガスバリア層(20)を構成するガスバリア性樹脂層または蒸着層、
25・・・遮蔽性ガスバリア層、
30・・・最外層、
40・・・ドライラミネート接着層、
50・・・不透明層、
60・・・印刷層
A・・・筒状胴部、
B・・・頭部、
C・・・キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層から外層に向かって、少なくとも最内層、ガスバリア層および最外層とからなり、
前記最内層及び最外層がポリプロピレンフィルムであり、
前記ガスバリア層が、ガスバリア性ポリプロピレンフィルムまたは蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、前記最内層とガスバリア層、およびガスバリア層と最外層とがドライラミネート接着されてなることを特徴とする、歯磨チューブ用積層材。
【請求項2】
前記最内層とガスバリア層との間に、更に不透明層が積層され、
前記最内層と不透明層、および不透明層とガスバリア層とがドライラミネート接着されてなることを特徴とする、請求項1記載の歯磨チューブ用積層材。
【請求項3】
前記ガスバリア層の少なくとも片面に印刷層が形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の歯磨チューブ用積層材。
【請求項4】
前記ガスバリア層は、白色であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の歯磨チューブ用積層材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の歯磨チューブ用積層材で成形された筒状胴部の一方の開口端に、ポリプロピレン系樹脂からなり、肩部と口部とを有する頭部が連設され、かつ前記頭部にキャップが装着されてなる、歯磨き用チューブ容器。
【請求項6】
請求項5記載の歯磨き用チューブ容器に歯磨き剤を充填してなる歯磨き製品。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の歯磨チューブ用積層材で筒状胴部を形成し、
前記筒状胴部の一方の開放端に、ポリプロピレン系樹脂からなり、肩部と口部とを有する頭部をコンプレッション成形によって連設することを特徴とする、歯磨き用チューブ容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−144290(P2012−144290A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5725(P2011−5725)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】