説明

歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造

【課題】 本発明は、歯車減速機の入力口からグリースが漏れる不具合を防止することができる歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造を提供する。
【解決手段】 本発明は、電動機と歯車減速機を着脱可能に並設し、電動機出力軸の先端部を歯車減速機の入力口から歯車減速機のケース内に導入するとともに、電動機出力軸の先端部に設けられた噛み合い部を歯車減速機のケース内の歯車に噛合させた歯車減速機付電動機であって、前記歯車減速機20の入力口28aが設けられたフランジ部に前記電動機出力軸25を囲むようにオイルシール30を設け、該オイルシール30を介して電動機ケースとの間隙をシールする構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機の回転数を所望の回転数に減速して出力するために歯車減速機付電動機が用いられている。このような歯車減速機付電動機には、電動機と減速機を予め一体に製造する一体型のものと、別個に製造しておき、必要に応じて一体に組付ける分離型のものがある。
しかし、小型の減速機と電動機をしようする場合、減速機の減速比を選べるという利点から分離型のものが広く用いられている。
【0003】
図5は分離型の歯車減速機付電動機を示したもので、電動機100の電動機ケース101の開口端に圧入されたブラケット102の突出端に歯車減速機103のギヤケース104を嵌合し、図示しないボルトにより一体に組付けたものである。
このような歯車減速機付電動機において、回転の伝達を円滑に行うために、電動機出力軸にヘリカル歯切りを施し、減速機のヘリカルギヤに組付ける構造が採用されている。
しかしながら、ヘリカル歯切りされた電動機出力軸の歯筋を通して減速機内のヘリカルギヤに付着しているグリ−スが回転に伴って流れ出し、電動機ケース内に侵入してくる不具合があった。
【0004】
このグリースの侵入を防ぐためにオイルシールを使う方法が知られている。この方法は、図6に示すように、歯車減速機103の側板105に形成された開口穴105aからギヤケース104内に突出した電動機出力軸106の歯切り部106aの基端部にオイルシール109を配置したものである。オイルシール109は電動機ケース101のブラケット102に配置した軸受け107とともに電動機出力軸106の歯切り部106aの基端部に配設されている。この電動機出力軸106にはギヤケース104内でヘリカルギヤ108が噛合している。
【0005】
しかしながら、オイルシール109を使う方法は、電動機出力軸106との接触により、摩擦負荷が加わり低出力電動機では損失の割合が大きくなる。また、電動機出力軸106の歯切り部106aを避けてオイルシール109を設けなければならないので、その長さを考慮した寸法設定が必要になる。
【0006】
そこで、図7に示すように、ヘリカルギヤ108との噛み合い部を残して、電動機出力軸106の歯切り部106aに可撓性チューブ110を被せるようにした先行技術が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実公平6−48210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記先行技術によると、歯車減速機103の入力口となる側板105に形成された開口穴105aが塞がれていないので、グリースが可撓性チューブ110と開口穴105aの隙間から漏れる虞がある。開口穴105aからグリースが漏れると、電動機100と歯車減速機103の間にグリースが溜まり、歯車減速機103を取り外すときにグリースが流れ出るという課題がある。さらに、電動機100と歯車減速機103の間にグリースが溜まると、そのグリースから潤滑油が離油するため、電動機100と歯車減速機103の隙間からのグリース漏れの虞がある。
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、歯車減速機の入力口からグリースが漏れる不具合を防止することができる歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記課題を解決するため、電動機と歯車減速機を着脱可能に並設し、電動機出力軸の先端部を歯車減速機の入力口から歯車減速機のケース内に導入するとともに、電動機出力軸の先端部に設けられた噛み合い部を歯車減速機のケース内の歯車に噛合させた歯車減速機付電動機であって、前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に前記電動機出力軸を囲むようにオイルシールを設け、該オイルシールを介して電動機ケースとの間隙をシールすることにある。
また、本発明は、電動機出力軸の噛み合い部の基端部に円筒部を設け、該円筒部の周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したことにある。
さらに、本発明は、電動機出力軸の円筒部に円筒状部品を装着し、該円筒状部品の周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したことにある。
またさらに、電動機出力軸が支持された電動機ケースに円筒状の突起部を突設し、該突起部の外周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したことにある。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、歯車減速機と電動機ケースとの間隙をシールするので、グリースが歯車減速機と電動機ケースとの間隙から漏れ出すのを防ぐことができる。
請求項2に記載の発明によれば、電動機出力軸の噛み合い部の基端部に円筒部を設け、該円筒部の周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したので、グリースが歯車減速機から漏れ出すのを防ぐことができる。
請求項3に記載の発明によれば、電動機出力軸の円筒部に円筒状部品を装着し、該円筒状部品の周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したので、グリースが歯車減速機から漏れ出すのを防ぐことができる。また、歯車減速機の取替えの際に、グリースが流れ出すのを防止できる。さらに、円筒状部品を用いることで電動機の出力軸を長くする必要がないので、小型化に貢献できる。
請求項4に記載の発明によれば、電動機出力軸の噛み合い部を除く先端部に円筒状部品を装着し、かつ歯車減速機の入力口に、円筒状部品の周面に摺接するオイルシールを設けたので、グリースが歯車減速機から漏れ出すのを防ぐことができる。また、歯車減速機の取替えの際に、グリースが流れ出すのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図示の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造を示す部分断面図、図2は図1の歯車減速機の入力口部分を拡大して示す断面図である。
【0012】
図1および図2において、歯車減速機付電動機1は、電動機10と、電動機10に着脱自在に組み付けられた歯車減速機20で構成されている。
【0013】
電動機10は、電動機ケース11の内部に図示しない固定子および回転子が設けられ、回転子を支持する回転軸の一端部が回転動力を取り出す電動機出力軸12として外部に導出されている。この電動機出力軸12は先端部に円筒状の小径部12aが設けられ、小径部の先に歯車減速機20内の歯車に噛合するヘリカルギヤ12bが設けられている。電動機出力軸12の小径部12aは、軸受け13を介して電動機ケース11の片側に設けられた電動機フランジ14に支持されており、軸受け13より先の小径部12aには円筒状部品15が装着されている。
【0014】
歯車減速機20は、減速機ケース21内に歯車22,23,24を内蔵し、出力軸25から減速した回転動力を取り出すもので、歯車22と23は同軸に構成されている。歯車22と23を支持する軸26は軸受け27を介して減速機フランジ28と減速機ケース21に支持されており、歯車24を支持した出力軸25は軸受け29を介して減速機ケース21に支持されている。減速機フランジ28には、電動機出力軸12の先端部のヘリカルギヤ12b部分が導入される入力口28aが設けられており、この入力口28aを通して挿入されたヘリカルギヤ12bに、ヘリカルギヤが設けられた歯車22が噛合している。
【0015】
減速機フランジ28の外面には入力口28aの周囲にフランジ部としてボス部28bが設けられており、このボス部28bの内周面に前記円筒状部品15の外周面をシールするオイルシール30が設けられている。オイルシール30は円筒状部品15の外周面に摺接して歯車減速機20内部のグリースの漏れを防いでいる。
【0016】
電動機10と歯車減速機20は、電動機ケース11と減速機ケース21相互をボルト41およびナット42を介して着脱可能に締結されて一体に組み立てられている。
【0017】
次に前記歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造の作用を説明する。
電動機出力軸12の先端部はハスバ歯車12bになっており、歯筋のねじれ方向と逆に回転させるとポンプの様に歯車減速機20の中からグリースを排出するような現象を発生させる。グリースは電動機出力軸12のヘリカルギヤ12bの歯溝に沿って電動機10側に移動する。しかしながら、歯車減速機20の入力口28a部にオイルシール30を設け、電動機出力軸12には、円筒状部品15を設けているので、歯溝に沿って流れてくるグリースはオイルシール30および円筒状部品15により塞き止められる。
【0018】
また、電動機出力軸12をオイルシール30で直接支持するためには、電動機出力軸12の不完全歯切り部分を避けるため軸を長く設計する必要があるが、円筒状部品15を用いる事により不完全歯切り部分を避ける必要がなく、電動機10の出力軸12を極力短い状態で組み立てる事が可能であり、小型化に貢献できる。
さらに、電動機出力軸12をオイルシール30で支持した構造で、減速機20を組み付けようとすると、電動機出力軸12の歯車部分でオイルシール30を傷つける危険性が高いが、円筒状部品15を用いる事でオイルシール30内径と軸歯車外径との間隔を大きくとる事が可能になり、オイルシール30を傷つける可能性を低くする事が出来る。また、円筒状部品15を用いる事で、電動機の出力軸を長くする必要が無く、小型化に貢献する。
【0019】
図3は、図1および図2と同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して示す、本発明の変形例であり、この場合、円筒状部品15を用いずに円筒状の小径部12aに直接、オイルシール30を密着させたものである。
この変形例の場合も、歯車減速機20から漏れるグリースは、円筒状の小径部12aに摺接するオイルシール30によって漏れることが防止できる。
【0020】
図4は、本発明の他の変形例であり、この場合も、図1および図2と同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して説明する。
この場合、電動機出力軸12の周囲の電動機フランジ14の外面に円周方向に沿って凹部14bを形成し、電動機出力軸12の周囲に設けられたボス部14cの外周面14dに一定間隔で半径方向に対向するボス部(フランジ部)28cを減速機フランジ28の外面に設けたものである。この減速機フランジ28のボス部28c内周面にボス部14cの外周面14dに摺接するオイルシール31を配設したものである。また、電動機フランジ14のボス部14cの内周面には、円筒状の小径部12aに直接、摺接するオイルシール32を設けたものである。
この変形例の場合も、歯車減速機20から漏れるグリースは、円筒状の小径部12aに摺接するオイルシール31およびボス部14cの外周面14dとボス部28cの内周面との間に介在されたオイルシール32によって外部に漏れることが防止できる。
【0021】
このように、前記実施の形態によれば、歯車減速機20を交換する時に、減速機20と電動機10の間に溜まったグリースが流れ出るという事を防止でき、減速機20を使用者が自由に交換できるという機能を最大限に生かす事が可能となる。さらに、電動機10と減速機20の間にグリースが溜まると、そのグリースから潤滑油が離油するため隙間からのグリース漏れの危険性があるが、本案では減速機20からグリースが出る事を防止するため、グリース漏れ防止効果を高める事も可能である。
【0022】
なお、本発明は、前記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜、変更して実施し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態による歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造を示す断面図である。
【図2】図1の部分拡大断面図である。
【図3】本発明の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造の変形例を示す断面図である。
【図5】従来の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造を示す断面図である。
【図6】従来の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造を示す部分拡大断面図である。
【図7】従来の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 歯車減速機付電動機
10 電動機
11 電動機ケース
12 電動機出力軸
13 軸受け
14 電動機フランジ
15 円筒状部品
20 歯車減速機
21 減速機ケース
22,23,24 歯車
25 出力軸
26 軸
27 軸受け
28 減速機フランジ
29 軸受け
30,31,32 オイルシール
41 ボルト
42 ナット
12a 小径部
14a 開口部
28a 入力口
28b,28c ボス部(フランジ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と歯車減速機を着脱可能に並設し、電動機出力軸の先端部を歯車減速機の入力口から歯車減速機のケース内に導入するとともに、電動機出力軸の先端部に設けられた噛み合い部を歯車減速機のケース内の歯車に噛合させた歯車減速機付電動機であって、前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に前記電動機出力軸を囲むようにオイルシールを設け、該オイルシールを介して電動機ケースとの間隙をシールすることを特徴とする歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造。
【請求項2】
前記電動機出力軸の噛み合い部の基端部に円筒部を設け、該円筒部の周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したことを特徴とする請求項1に記載の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造。
【請求項3】
前記電動機出力軸の円筒部に円筒状部品を装着し、該円筒状部品の周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したことを特徴とする請求項2に記載の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造。
【請求項4】
前記電動機出力軸が支持された電動機ケースに円筒状の突起部を突設し、該突起部の外周面に摺接するように前記オイルシールを前記歯車減速機の入力口が設けられたフランジ部に配設したことを特徴とする請求項1に記載の歯車減速機付電動機のグリース漏れ防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−154998(P2007−154998A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350814(P2005−350814)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】