説明

水中構造物

【課題】地震の影響を受けにくく、施行も簡単な水中構造物を提供する。
【解決手段】海中に設置される第一のゴム製パイプ2とこの第一のゴム製パイプ2内に間隙を介して配置される第二のゴム製パイプ4で構成され、ゴム製パイプ間の間隙には海水5が充填され、第二のゴム製パイプ4の中には空気6と海水5が蓄えられ、第一のゴム製パイプ2の海水5と第二のゴム製パイプ4の中の海水5を循環させて発生させた水流により船舶7が進行方向に搬送されるようにした。更に、各ゴム製パイプの始端と終端をつなげて環状としたり、第一のゴム製パイプ2の下部には発電装置10を備えたり、発電された電力で第二のゴム製パイプ4から第一のゴム製パイプ2へ排水する排水装置9及び第一のゴム製パイプ2から第二のゴム製パイプ4へ環水する環水装置8を駆動して、第一のゴム製パイプ2と第二のゴム製パイプ4の間に充填された海水5で水産物の養殖を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海中に二重構造のゴム製パイプを配設し、外側と内側のパイプの間に海水を入れて海産物の養殖をし、内側のパイプには空気と海水を充填して船舶の運行可能とした水中構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の狭い国土では陸上輸送の効率化に限界があり、特に都市周辺では道路用地の確保が物理的や費用的に困難となってきている。そこで陸上輸送から海上輸送に切り替えることも検討された。しかし、海上輸送の場合は運行が天候左右されるという問題があった。そして、その解決策として、以下のような水中トンネルが提案された。
【0003】
2つの大陸及び2大陸間の海のほぼ中間地点からトンネル工事を行い、中間地点からのトンネル工事はトンネルを構築するために適した深さの水底に底部ライナーを設置し、底部ライナー上に、構造物全長に伸びた穴を有するコンクリート等の構造物を立設する水底輸送トンネルの促進構築方法が知られている(特許文献1)。
【0004】
管体を挿入する既設外管の発進側管端に前記管体がスライド可能なシール機構を設け、後続の中空管体を発進立坑にて前記管体に気中接合し、液中における管体重量がほぼ零となるように浮力調整液体を注入した既設外管内に、前記管体を引き込みまたは押し込んで挿入配管した管体の配管方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
水中構造物に加わる定常流及び振動流の大きさ及び方向を制御手段により計測し、該水中構造物の外面に形成した多数の空気放出孔のうち制御手段により選定した空気放出孔から計測値に基づく所望量の空気を水中構造物の内側から外側の水中に向けて放出する流体力低減方法が知られている(特許文献3)。
【0006】
また、水中構造物の外面に形成した多数の空気放出孔のうち制御手段により選定した空気放出孔から計測値に基づく所望量の空気を水中構造物の内側から外側の水中に向けて放出する水中構造物の流体力低減方法が知られている(特許文献4)。
【0007】
更に、海により離れている二つの大陸を結ぶ水底輸送トンネルの促進構築方法及びその後の補助作業方法であって、二つの各大陸及び二大陸間の海のほぼ中間地点からトンネル工事を行い、中間地点からのトンネル工事はトンネルを構築するために適した深さの水底位置に低部ライナーを設置する水底輸送トンネルの促進構築方法が知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−220988
【特許文献2】特開平10−238655
【特許文献3】特開平11−350510
【特許文献4】特開平10−131220
【特許文献5】特開2001−220988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1においては、水底輸送トンネルは大陸間にしか設置できないので、日本の本州のような細長いひとつの島での建設は難しい。
【0010】
特許文献2においては、海底に沈めておかなければならないので地震が発生すると破壊される畏れがある。
【0011】
特許文献3においては、水中構造物に加わる定常流及び振動流に対応して空気放出孔から水中に向けて空気を放出しているが、構造自体は耐震構造になっていない。
【0012】
特許文献4においては、嵌り込み側構造と受け側構造を利用してトンネル単体を連結しているが、設置については海底を這わせて設置しなければならないので、耐震性に問題がある。
【0013】
特許文献5には、海で隔たっている2つの大陸を結ぶ水底輸送トンネルについての発明であり、海中ではなく地中にトンネルを埋設するトンネルの技術であり、地震などの地殻変動の影響を受けやすい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の耐震性及び施行非容易性などの問題を解決するために、本発明の水中構造物システムでは、海中に設置される第一のゴム製パイプと、この第一のゴム製パイプ内に間隙を介して海面に対して水平に配置される第二のゴム製パイプで構成される水中構造物であって、前記第一のゴム製パイプと第二のゴム製パイプの間隙には海水が充填され、前記第二のゴム製パイプの中には空気と海水が蓄えられ、前記第一のゴム製パイプの海水と第二のゴム製パイプの中の海水を循環させて発生させた水流により、船舶を搬送するようにした。
【0015】
これにより、例えば水中構造物を海底又は海面下100メートルに設置した亜場合、外側のゴム製パイプと内側のゴム製パイプの間には魚介類の回遊水路を形成し、内側のゴム製パイプ内側には空気と海水を入れて日本の国土を循環する環状輸送ルートを確立することができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による水中構造物は、ゴム製パイプを接続するだけで簡単に構築でき、内側のゴム製パイプ内部を運行する船舶は天候に左右されずに日本の国土を循環することができ、また海水流で付勢するので省エネ運行による経済効果が期待でき、付加的には海水流発電によるスマートグリッドへの余剰電力供給が可能となり、海産物の養殖による地球資源の保護と有効活用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による水中構造物の断面図である。
【図2】本発明による水中構造物の設置イメージ図である。
【図3】環水と給水の仕組みを示した概念図である。
【図4】搬送用プールの入口側の閘門を開いた状態を示している図である。
【図5】昇降装置で下降中の搬送用プールを示した図である。
【図6】昇降装置が下端まで下がった状態の図を示している。
【図7】搬送用プールの出口側のゲートを開いた状態を示している図である。
【図8a】船舶が連絡水路経由で水中構造物へ移動する図である。
【図8b】船舶が連絡水路経由で水中構造物へ移動する図である。
【図8c】船舶が連絡水路経由で水中構造物へ移動する図である。
【図9】船舶が連絡水路軽油で水中構造物へ移動する図である。
【図10】港湾に設置された閘門により搬送用プールに船舶の移動を示した図である。
【図11】本発明におけるスマートグリッドシステムを示した図である。
【図12】本発明の第2実施例による水中構造物の往復路を示した図である。
【図13】本発明の第3実施例による水中構造物の往復路を示した図である。
【図14】図13のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
実施例1は、二重構造のゴム製パイプ、即ち、外側の第一のゴム製パイプ2と、内側の第二のゴム製パイプ4で構成された同心円構造の実施例である。
【0019】
図1は、本発明による水中構造物の断面図である。この水中構造物1は、海中に海面に対して水平に設置された二重構造のゴム製パイプ、即ち、外側の第一のゴム製パイプ2と、内側の海面に対して水平な第二のゴム製パイプ4で構成され、外側の第一のゴム製パイプ2と第二のゴム製パイプ4の間隙は海水3で充填されている。
【0020】
第一のゴム製パイプ2と、第二のゴム製パイプ4は、例えば廃タイヤなどのゴムを溶かして、所定寸法のシートとして再生し、このシートを別に作成した骨格に貼り合わせて製造することができる。ゴムはコンクリート等と比較すると軽いので海中工期が短くて済む。
【0021】
水中構造物1は、海底又は水深100メートル程度の水面下に設置され、例えば日本の国土を周回されれば、環状トンネルとして機能する。長さが長くなっても、外壁がゴムでできているので増設や移設や容易である。また、水温の寒暖や潮流の変化などにより周囲の水圧に変化があっても自動的に内外圧のバランスをとることができる。
【0022】
水中構造物1は、一定間隔で設置されたサポート手段11を持つゴム製のパイプであり、例えば地震などの災害時に衝撃波を受けても破壊され難い。サポート手段11は、ある程度の剛性と柔軟性を持つことが望ましいので、例えば芯をグラスファーバーにして周辺をゴムで固めたような構造でも良い。
【0023】
第一のゴム製パイプ2と第二のゴム製パイプ4での間に貯水された魚介類回遊水路3の海水は循環しているので、取水場所を選ぶことで海水の温度を管理することができる。
【0024】
例えば九州の佐多岬近郊で海水を交換すれば暖かい海水を第二のゴム製パイプ4に注入することができるし、北海道の根室半島近郊で海水を交換すれば冷えた海水を第二のゴム製パイプ4に注入することができる。
【0025】
魚介類回遊水路3の海水温度を管理することで、海産物の養殖に適した温度に保つことができる。沖縄から九州にかけて流れる黒潮にはカツオ・マグロ・ブリ・サバ・イワシ・アジなど多くの魚類が生息していて、日本の沖合い・沿岸漁業をささえている。黒潮の流路は、日本の南岸を直進する流路と、紀州沖にできる大冷水塊のため南側に大きく蛇行する流路があり、大蛇行は数年つづく場合もあり、気象、漁業などに影響をおよぼしている。
【0026】
魚介類回遊水路3に黒潮の海水を注入することにより、魚介類回遊水路3の中でカツオ・マグロ・ブリ・サバ・イワシ・アジなどを養殖すれば、黒潮の大蛇行とは関係なくカツオ・マグロ・ブリ・サバ・イワシ・アジなどを毎年安定して収穫することができるようになる。
【0027】
この養殖による海産物を捕獲するには、第一のゴム製パイプ2に潜水艦が出入りできるゲートを設けて、第一のゴム製パイプ2を囲む海から第一のゴム製パイプ2への出入りを可能とすれば、潜水艦に取り付けた網などで根魚や帆立貝などの海産物を捕獲することができる。
【0028】
後述の通り、第二のゴム製パイプ4には壁面にのみ形成されるリング状の骨格リング12が配置され、第一のゴム製パイプ2から強い水圧がかかった時に第二のゴム製パイプ4がつぶれて水路が閉鎖されることを防いでいる。よって、取水地において、第一のゴム製パイプ2に開口部を設けて外部の海水(例えば黒潮)を取り入れても、第二のゴム製パイプ4内部における船舶7の運行には支障は出ない。
【0029】
第二のゴム製パイプ4には海水5と空気6が充填されていて、環水装置8によって第一のゴム製パイプ2から第二のゴム製パイプ4へ海水3を流し込み、これと同等量の海水5を第二のゴム製パイプ4から第一のゴム製パイプ2に排水する。流水速度については、環水装置8と排水装置9のポンプ出力を制御することにより設定でき、第二のゴム製パイプ4の内壁に流速センサーを取り付けておけば流速を制御することができる。
【0030】
第二のゴム製パイプ4の海水5の上は、タンカーやフェリーなどの船舶7が航行することができる。前述の通り、第二のゴム製パイプ4の海水5は所定方向に流れているので、流れる方向に船舶7を運行すれば、海流方向と進行方向とが異なる場合の海上航行よりも燃料を節約して運行することができる。
【0031】
第一のゴム製パイプ2の底部には一定間隔で複数の水中発電装置10が設置されている。この水中発電装置10は、海流を利用して発電する海流発電装置である。海流の流れる方向は一定ではないので、海流の流れる方向を検出して、常に海流の方向にタービンを向けて発電するようにする。
【0032】
水中発電装置10で発電された電力は第一のゴム製パイプ2と第二のゴム製パイプ4での間に設けられた支柱11を経由して第二のゴム製パイプ4に取り付けられた環水装置8と排水装置9に供給される。
【0033】
水中発電装置10で発電された電力は、水中構造物1に関連する電気の供給源として使え、例えば、環水装置8と排水装置9の駆動以外にも、例えば第二のゴム製パイプ4の内側の照明や、地上と船舶7との無線通信中継装置などに使うことができる。
【0034】
水中発電装置10は第二のゴム製パイプ4に対して回動自在に取り付けられ、更に水流センサーが取り付けられていているので、発電タービンは常に水流に直交する角度に調節されている。
【0035】
図2は、本発明による水中構造物の設置イメージ図である。アクセスポイント(ターミナル)は、例えば、銚子港、下田港、新宮港、室戸港、土佐清水港、宮崎港、種子島、奄美大島、糸満港、五島列島、対馬港、境港、輪島港、新潟港、酒田港、男鹿港、小樽港、稚内港、釧路港、八戸港、大船渡港、日立港などを結んで環状路を形成し、現在使われている主要な港湾にアクセスポイントを設置することが考えられる。
【0036】
外国船舶はアクセスポイントまでは従来通り陸地に設けられた港湾施設を使うことになるので天候に左右されるが、アクセスポイントから水中構造物1の中に入れば天候に関係なく高速かつ安全に運行することができるようになる。
【0037】
日本で高速道路による巡回路を作ることは用地買収や山間部の工事困難性などを考えると現実的ではないが、本発明による水中構造物によって日本列島を囲む環状の海洋路を形成することは陸上路建設ほど難しいことではない。
【0038】
図3は、環水と給水の仕組みを示した概念図である。図3(a)は平面図で、図3(b)が正面の断面図である。実線は第二のゴム製パイプ4から第一のゴム製パイプ2との間隙の中の水流を表し、点線は第二のゴム製パイプ4内部の水流を表している。
【0039】
第二のゴム製パイプ4内部の水流はパイプ内で均一であることが望ましく、環水装置8と排水装置9の位置は、流路に対して左右対称に配置することが望ましい。
【0040】
海水5の流水速度を制御するには、中央の制御装置から各ユニットの流速制御装置に設定データを送信し、各ユニットの流速制御が設定された海水5の流水速度になるように循環路を形成する環水装置8と排水装置9を自動制御する。
【0041】
万が一通信不能になった場合には、デフォルトの流水速度になるように自動制御し、後述するスマートグリッドユニットによって警告信号が中央の制御装置に送信される。
【0042】
第一のゴム製パイプ2と第二のゴム製パイプ4とを繋ぐ支柱の内側には、外部の発電機が発電した電力を環水モータと給水モータに供給する電力線が配線されていると同時に、給電線の片方が第一のゴム製パイプ2に沿って配線され、もう片方の給電線が第二のゴム製パイプ4に沿って配線されて最寄りのスマートグリッドユニットに接続される。
【0043】
各ユニットには、壁面にのみ形成されるリング状の骨格リング12が配置され、第一のゴム製パイプ2から第二のゴム製パイプ4に強い水圧がかかっても第二のゴム製パイプ4がつぶれて水路が閉鎖されることを防いでいる。
【0044】
万が一、第二のゴム製パイプ4が破損部にパッチを当てる程度では修復不能なほど破損した場合には、破損部の前後の破損していない第二のゴム製パイプ4の骨格リング12に蓋を取り付けて閉鎖し、破損部の第二のゴム製パイプ4を交換した後、当該骨格リング12の蓋を外せば、破損した第二のゴム製パイプ4を部分的に交換することができる。
【0045】
図4は、アクセスポイントにおいて搬送用プールの入口側の閘門を開いた状態を示している図である。港湾側のローラーゲート14が開くことで、アクセスポイントの海水が搬送用プール13に進入し、同じ水位となるので船舶7はアクセスポイントから搬送用プール13に移動する。
【0046】
船舶7はアクセスポイントから搬送用プール13に移動した後、船舶7を載せたまま搬送用プール13を昇降できる昇降装置20を使って港湾の高さから100メートル下にある水中構造物の位置まで下げてから搬送することになる。
【0047】
図5は、昇降装置で下降中の搬送用プールを示した図である。前述の通り、搬送用プール13は船舶が倒れない程度の水位を保つ容器となっているので、船舶は搬送用プール13の海水に浮かんだ状態で水中構造物のレベルまで下降することができる。
【0048】
図6は、昇降装置が下端まで下がった状態の図を示している。連絡水路15との間の出口側のゲート18が開かれるまでは搬送用プールは船舶が倒れない程度の水位を保っている。
【0049】
図7は、搬送用プールの出口側のゲートを開いた状態を示している図である。搬送用プール13は連絡水路の入口側のローラーゲート18aが開かれると、搬送用プール13の水位と連絡水路15の水位が同じになり、進入が可能となる。
【0050】
図8(a)〜(c)は、船舶が連絡水路経由で水中構造物へ移動する図を示している。搬送用プール131と水中構造物1を直接つないでしまうと貯蔵された空気が陸上に放出されてしまうので、空気量の維持と水位の高低差を調整する仕組みが必要になる。
【0051】
図8(a)に示すように、搬送用プール13が水中構造物1のレベルまで下がると、入口側のローラーゲート18aが下降し、連絡水路15と搬送用プール13の水位は等しくなる。
【0052】
次に図8(b)に示すように、船舶7が連絡水路15に格納されると、入口側のローラーゲート18aが上昇して連絡水路15と搬送用プール13の間は閉鎖される。
【0053】
更に図8(c)に示すように、出口側のゲート18bが開き、連絡水路15と第二のゴム製パイプ4の海水5がつながり、連絡水路15と第二のゴム製パイプ4の海水5とは同水位となり、船舶7は連絡水路15から第二のゴム製パイプ4へ移動可能となる。
【0054】
連絡通路15内には海水と空気が存在するが、この空気についてはアクセスポイントに換気口を作り、トンネルで使われている送排気システムを利用することにより前記換気口から連絡水路15経由で第二のゴム製パイプ4内部の空気を連通させることができる。
【0055】
また、第二のゴム製パイプ4内部にもトンネル用換気システムを設置することにより第二のゴム製パイプ4内部に人工的な風を生成し、この風の方向を船舶7の進路方向と同一方向に設定すれば、風によって船舶7を後押しすることができる。
【0056】
図9は、船舶が水中構造物の中に侵入する様子を示している図である。水中構造物1の中を航行する他の船舶に船舶7が進入してくることを知らせるために、信号19は赤信号を点灯させる。
【0057】
図10は、水中構造物の中を航行する船舶を示している図である。既に船舶7は水中構造物1の中を航行しているので、信号19は青信号を点灯させる。
【0058】
図11は、本発明におけるスマートグリッドシステムを示している。本発明による水中構造物システムで日本全体を環状に囲んだ場合に、潮流の強い場所では大電力が発電されるが、流れの弱い場所では十分な電力が発電されない可能性がある。
【0059】
各水中発電機10を並列接続して電力の平均化をすることも考えられるが、もしどこかの水中発電機10に不具合が生じて断線が生じると、システム全体がダウンしてしまう畏れがある。
【0060】
そこで、主要な港のある都市を核としてスマートグリッドシステムに接続し、電力会社が提供する通信機能を持った人工知能搭載の電力系や制御機器等をネットワーク化されたて発電設備のひとつとして機能させることが考えられる。各末端の電力機器が通信網で接続され、自動的に需給調整が可能な電力系統を構築することで電力の需給バランスを最適化されるので、余力のある発電ユニットからはスマートグリッドに電力を供給し、水中発電機10からの電力では電力不足の場合は電力会社から電力を購入することにより日本全国の水中構造物システムを効率良く稼働させることができるようになる。
【0061】
また、どこかの水中発電機10に不具合が生じて部分的に環水装置8と排水装置9が停止しても、不具合はその部分だけにとどまり、他のユニットの環水装置8と排水装置9は正常に動作しているので潮の動きが止まることはない。
【0062】
中央管制室21は通信ネットワーク22によって各港湾の管理システム23と接続されている。
【0063】
各港湾の管理システム23は複数ある管轄の水中構造物1に接続され、各水中構造物1の稼働状態をモニターすることができる。
【0064】
また、各港湾の管理システム23は、各地方のスマートグリッド25と接続され、各水中構造物1から受け取った余剰電力をスマートグリッド25に供給することができる。
【0065】
もし所轄の水中構造物1の水中発電装置10による発電電力が水中構造物1の排水装置9と環水装置8を動かすのに十分でない場合には、接続24によりスマートグリッド25を経由して電力を購入し、水中構造物1の稼働に支障がでないように管理する。
【0066】
また、風の強い漁港においては、前記スマートグリッドシステムに風力発電の設備26を併設することにより、発電した余剰電力をスマートグリッドシステム経由で販売することが可能となる。
【実施例2】
【0067】
実施例2は、二重構造のゴム製パイプにおいて、内側のパイプを複数にして、内部の潮の流れを反対にしたものである。ゴム製パイプの内部には障害物がないので、船舶が自力で走行する以上の速度で航行することが可能となり、内部のゴム製パイプが1本でも数時間で日本列島を1周することが可能となるが、双方向とすることで出発地と目的地の位置関係によっては更に運行時間の短縮が可能となる。
【0068】
図12は、本発明の第2実施例による水中構造物の断面図である。第1実施例との違いは、第二のゴム製パイプ4が中央分離手段27によって分離されている点である。第1実施例では内部の海水は一方通行であったが、中央分離手段27によって分離することにより双方向の運行ができるようになる。
【0069】
第二のゴム製パイプ4は中央分離手段27によって完全に分離されている必要はなく、海面上の空気層は共通にしておいても良いが、アクセスポイントへの昇降装置は別々の昇降装置20を備える必要があり、それぞれの昇降装置20に送排気システムを取り付けることによりそれぞれの装置の負荷を軽減することができる。第二のゴム製パイプ4は中央分離手段27によって分離されているので、環水装置8と排水装置9は左右対照には取り付けられないので、側面と底部に取り付ければ海水5の流れを作ることができる。
【実施例3】
【0070】
図13は、本発明の第3実施例による水中構造物の断面図である。この水中構造物1は、海中に二重構造のゴム製パイプ群、即ち、外側には第一のゴム製パイプ2が、内側には複数の第二のゴム製パイプ4が配置され、外側の第一のゴム製パイプ2と第二のゴム製パイプ4の間隙は海水3で充填されている。
【0071】
実施例2における水中構造物1は、複数の第二のゴム製パイプ4が一定間隔でサポート手段28によって支持されている。本実施例では、鉛直方向のサポート手段28が二つの第二のゴム製パイプ4を連結し、水平方向のサポート手段28がそれぞれの第二のゴム製パイプ4と第一のゴム製パイプ2を連結している。
【0072】
左右の第二のゴム製パイプ4はサポート手段28を介して連結手段29によって接続されている。連結手段29も剛性と柔軟性を持つことが望ましいが、サポート手段28ほどの剛性は必要ないので、例えばゴム製としても良い。
【0073】
複数の第二のゴム製パイプ4への出入りは第1実施例と同様に、それぞれの搬送用プール13と昇降装置20を使ってアクセスポイントから出入りすることができる。
【0074】
複数の第二のゴム製パイプ4は一対の双方向構造には限定されず、交通量によって組み合わせを決めることができるので、例えば3本の流路を使う場合に、時計まわりに2本、反時計まわりに1本といった構成も可能であり、循環路を形成する環水装置8と排水装置9を構成するポンプのモータを正逆方向に回転制御すれば、適宜に潮流方向を変更できる。
【0075】
図14は、図12のA−A断面図である。上段の第二のゴム製パイプ4は図面上で右から左方向に潮流が流れ、下段の第二のゴム製パイプ4は図面上で左から右方向に潮流が流れている。上下の第二のゴム製パイプ4はサポート手段28を介して連結手段29によって接続されている。更に、上段の第二のゴム製パイプ4は画面上部でサポート手段28によって第一のゴム製パイプ2と接続されている。また、下段の第二のゴム製パイプ4は画面下部でサポート手段28によって第一のゴム製パイプ2と接続されている。
【0076】
水中構造物は海底や水面下、例えば水面下100メートルに設置するので洋上変化の影響は受けにくいが、もし嵐などで第一のゴム製パイプ2が外乱を受けた場合には、複数の第二のゴム製パイプ4も影響を受けて揺動することが考えられる。しかし、この場合でも3本のサポート手段28によって複数の第二のゴム製パイプ4は引っ張られているので、外乱が収まり時間が経てば複数の第二のゴム製パイプ4の位置は、3本のサポート手段28の張力のバランスがとれる位置に場所で安定する。
【産業上の利用可能性】
【0077】
海上の天候に左右されず順調な航行を可能とする海中の輸送ルートを提供すると共に、平坦な洋上を航海することによる燃費の節約が可能となり資源の節約になるだけでなく、大小ゴム製パイプの間に形成した魚介類回遊水路により天然のアワビや帆立貝更には天然の鮭や鯨などの養殖が可能となるので日本の水産業も安定した水産資源を確保できるようになる。
【符号の説明】
【0078】
1…水中構造物
2…第一のゴム製パイプ
3…魚介類回遊水路
4…第二のゴム製パイプ
5…海水
6…空気
7…船舶
8…環水装置
9…排水装置
10…水中発電装置
11…サポート手段
12…骨格リング
13…搬送用プール
14…港湾側のローラーゲート
15…連絡水路
16…他の船舶
17…支柱
18…連絡水路のローラーゲート
19…信号
20…昇降機構
21…中央管制室
22…通信ネットワーク
23…管理システム
24…接続
25…スマートグリッド
26…風力発電の設備。
27…中央分離手段
28…サポート手段
29…連結手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
海中に設置される第一のゴム製パイプと、この第一のゴム製パイプ内に間隙を介して海面に対して水平に配置される第二のゴム製パイプで構成される水中構造物であって、前記第一のゴム製パイプと第二のゴム製パイプの間隙には海水が充填され、前記第二のゴム製パイプの中には空気と海水が蓄えられ、前記第一のゴム製パイプの海水と第二のゴム製パイプの中の海水を循環させて発生させた水流により、船舶が進行方向に搬送されることを特徴とする水中構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の水中構造物において、前記一対のゴム製パイプの始端と終端がつながっていることを特徴とする水中構造物。
【請求項3】
請求項1に記載の水中構造物において、第一のゴム製パイプの下部には水中発電装置が備えられ、この発電された電力で、第二のゴム製パイプから第一のゴム製パイプへ排水する排水装置と、第一のゴム製パイプから第二のゴム製パイプへ環水する環水装置とを駆動することを特徴とする水中構造物。
【請求項4】
請求項1に記載の水中構造物において、第一のゴム製パイプと第二のゴム製パイプの間に充填された海水で水産物の養殖を行うことを特徴とする水中構造物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−31670(P2012−31670A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173280(P2010−173280)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【特許番号】特許第4592824号(P4592824)
【特許公報発行日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(510210368)
【Fターム(参考)】