説明

水圧駆動式流路切替バルブ

【課題】複数系統の送・排水による水流制御が可能であるとともに、停電などによる開閉トラブルや防爆性の問題のない流路切替バルブを得る。
【解決手段】バルブ本体および該バルブ本体内に形成したロッド穴に沿って摺動移動可能な流路切り替えロッドからなり、バルブ本体内部には両端に通水路を有したピストン室を、流路切り替えロッドの移動方向に沿って給水路および複数の排水路を各々形成するとともに、流路切り替えロッドには前記ピストン室内を摺動移動するピストンが一体に設けられ、流路切り替えロッドの内部には、一端を前記給水路に、流路切り替えロッドの移動に伴って他端を複数の排水路のいずれにも対向可能に開口させた通水路が設けられている。これにより構造が簡素化され、複数系統の流路切替え制御をも可能であり、停電などの電力トラブルがあったっ場合においてもバルブの切り替え動作に支障が無く、防爆のための構造を別途付加する必要もない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば地下水調査の装置などに用いられる流路切替バルブに関し、複数系統の送・排水による水流制御が可能であるとともに、開閉トラブルや防爆性の問題を解消した利便性の高い流路切替バルブを提供することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
流路切替バルブとしては、これまでに例えばヒートポンプ式空調装置のような流体を取扱うシステムに於いて、従来個々に配置されていた電磁式切替バルブを一体化することによりシステム全体を小型化し、さらに、それをモータ駆動によるロータリ切替バルブとすることにより、切替時のみの通電によって切替可能とし、省電力化を図るようにしたものが知られている。
【0003】
具体的には配管を接続し流路を形成するために径方向に穿孔される複数個の穴が軸方向及び周方向の所定の位置に配置されているハウジングと、前記ハウジングに固定される回転用駆動手段と、前記ハウジングの内部に固定される筒状体であって前記ハウジングの前記複数個の穴と連通するように径方向に穿孔される複数個の穴が軸方向及び周方向の所定の位置に配置されていると共に、それらの穴同士が選択的に軸方向及び周方向の溝によって連通されることによって流路を形成するスプールと、前記スプールの中心の円筒形空間に挿入され流路を形成するために径方向に穿孔される複数個の穴が軸方向及び周方向の所定の位置に配置されていると共に、前記回転用駆動手段によって回転駆動されて所定の位置に停止することにより前記スプールの複数個の穴を選択的に連通させる流路を形成するロータとを備えるようにした構造のもの(特開平6−194007号公報参照)である。
【0004】
また例えば携行ポリ缶等の容器に、ガソリン、灯油又は、水等の液体を、当該容器に注入及び、当該容器より吐出する両方の行為を、ポンプを差し替る事なく実施出来るように
するために、回転翼の回転方向が一定方向である従来の簡易ポンプの流路に、流路切替バルブを取付け、流体の流れ方向を変更する事によって、吐出、注入の両機能を持たせるようにした流路切替バルブも知られている(実開平7−4888号公報参照)。
【0005】
さらに図6にあらわしたように、バルブの本体1内にピストン路1aを形成するとともに、該ピストン路1aに沿って1本の送水ラインaと、2本の排水ラインcおよびdを形成し、さらに上記したピストン路1aには本体1との間にシール材3・3を介して一方の開口部を送水ラインaのエリア内に、また本体との間にシール材4a・4b・4cを介して他方の開口部を排水ラインc・dのエリア内に、それぞれ臨ませることができる送水ラインbを内部に形成したピストン2を挿通し、本体1内においてピストン2を水圧駆動により作動させ、送水ラインaをピストン2の送水ラインbを介して排水ラインcに連絡〔図6(A)〕し、又は排水ラインdに連絡〔図6(B)〕して送水ルートを切り替えるようにした水圧駆動方式の流路切替バルブも考えられている。
【特許文献1】特開平6−194007号公報
【特許文献2】実開平7−4888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した図6に記した水圧駆動方式のものは、単一系統の制御構造であるために複数の系統についてそれぞれ別々に制御することができない難点があり、また特許文献1・2に開示されたものをはじめとした在来構造の殆どのバルブは電気的制御を基本とするものであるために、停電などの電気的トラブル発生によりバルブの開閉がただちに停止されて駆動不能になる危険がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明にあっては、電気的なトラブル発生による危険や、防爆に対する配慮の必要がなく、しかも必要に応じて複数系統の制御をも可能とするなど取り扱い性に優れた水流切り替えバルブを開発したものであって、具体的にはバルブ本体および該バルブ本体内に形成したロッド穴に沿って摺動移動可能な流路切り替えロッドからなり、バルブ本体内部には両端に通水路を有したピストン室を、また流路切り替えロッドの移動方向に沿って給水路および複数の排水路をそれぞれ形成するとともに、流路切り替えロッドには前記ピストン室内を摺動移動するピストンが一体に設けられ、さらに流路切り替えロッドの内部には、一端を前記給水路に、また流路切り替えロッドの移動に伴って他端を複数の排水路のいずれにも対向可能に開口させた通水路が設けられていることを特徴とした水圧駆動式流路切替バルブに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バルブ本体内部には両端に通水路を有したピストン室を有し、通水路を通じてピストンを移動させる構造としたために、電力を用いる必要が無く、したがって停電などの電力トラブルがあった場合においてもバルブの切り替え動作に支障が無く、またたとえば地下水調査の装置などの流路切替バルブとして用いた場合には発火などの危険がないため防爆のための構造を別途付加する必要が無く、簡便に使用することができる。
【0009】
さらに流路切り替えロッドの内部に設けた通水路を給水路として用いるために構造が簡素化され、故障のおそれがきわめて少なく、またバルブ本体に排水路を3箇所以上形成した場合においては複数系統の流路切替え制御をも可能とするなどの作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下において本発明の具体的な内容を図1〜3に示されている本発明の第1実施例に基づいて説明すると、各図において11はバルブ本体、19は該バルブ本体11内に上下方向に向けて設けたロッド穴15に沿って移動可能な流路切り替えロッドをあらわしている。バルブ本体11の内部には上下方向両端に通水路13および14を有したピストン室12が設けられており、また流路切り替えロッド19の移動方向(上下方向)に沿って給水路16および複数の排水路17・18がそれぞれ形成されている。
【0011】
また流路切り替えロッド19には前記ピストン室12内を摺動移動するピストン21が一体に設けられ、さらに流路切り替えロッド19の内部には、上記したピストン21の部分を跨いで一端の開口20aをシール材22a・22bを介して流路切り替えロッド19がどの位置にあっても前記給水路16に常時通じ、また他端の開口20bをシール材22d・22eおよび22f・22gを介して閉止または複数の排水路17・18のいずれかに対向可能に開口させた通水路20が設けられている。なお23はピストン室12内においてピストンを上方に押し上げる方向に付勢させたバネをあらわしている。
【0012】
上記の構成において、図1に示した状態は通水路13を開放するとともに通水路14からピストン室12内に水などの液体を送水してピストン21を上端にまで押し上げて流路切り替えロッド19を最上方位置に移動させたことにより、給水路20の他端開口20bをシール材22dと22eとの間に位置させて給水路16・20を「閉止」状態にしてある。なおこの場合に通水路14からの送水に代えてピストン室12内のバネ12の付勢力のみによってピストン21を上方に移動させるようにしてもよい。
【0013】
つぎに図1の閉止状態から給水路16・20を排水路17に通じさせる場合においては、図2にあらわしたように、通水路14を開放し、通水路13からピストン室12内に水などの液体を送水してピストン21を僅かに下降させて流路切り替えロッド19を矢印方向に少しだけ移動させる。これに伴って給水路20の他端開口20bがシール材22eと22fにより囲まれた排水路17と対向する位置に達し、これにより給水路16・20を排水路17に連通させることができる。
【0014】
さらに図2に示した給水路16・20を排水路17に連通させた状態から排水路18に切り替えて通じさせる場合においては、図3にあらわしたように、通水路13からピストン室12内への送水量をさらに増し、ピストン21をバネ23の付勢力に抗してさらに下降させ、流路切り替えロッド19を矢印方向にさらに移動させる。これによって給水路20の他端開口20bがシール材22fと22gにより囲まれた排水路18と対向する位置に達し、給水路16・20を排水路18に連通させることができる。
【0015】
なお上記した送水路16・20の閉止、および排水路17または18への連通切り替え位置の検出については、単に通水路13、または14からの通水量を一定量に規制することによりおこなってもよいが、ピストン室12内に取り付けたバネ23の付勢力を利用し、通水路13・14を開放した状態でバネ23の付勢力のみによるときには「閉止」(図1の状態)としてもよい。
【0016】
また通水路14を開放するとともに通水路13から液体を通水し、バネ23の弱い付勢力によって通水路13からの水圧上昇により自動的に停止してピストン21をその位置に停止させることにより給水路16・20を排水路17に連通(図2の状態)し、さらに通水路13からの水圧をさらに上昇させてバネ23の付勢力に抗してピストン21をさらに移動させることにより給水路16・20を排水路18に連通(図3の状態)させるなど、上記のようにバネ23の付勢力を併用するようにしてもよい。
【0017】
さらに図4及び図5には本発明の第2実施例が示されている。これらの図面において、バルブ本体11、およびバルブ本体11内に上下方向に向けて設けたロッド穴15に沿って移動可能な流路切り替えロッド19の各基本的な構成については既述した第1実施例のものと同様であるので相違点についてのみ以下において説明をすると、バルブ本体11には排水路17・18aのほかにシール材22hおよび22iを介して排水路18b・18cの合計4路の排水路が設けられている。
【0018】
またピストン室12内には弾発力は同じだが長さの異なるバネ23aから23dまで4種のバネが装入されており、長さが最も長いバネ23aは排水路17に、バネ23bは排水路18aに、バネ23cは排水路18bに、バネ23dは排水路18cに、それぞれ対応させている。すなわち図4に示すようにピストン21がピストン室12内において上端に位置した状態においては流路切り替えロッド19がバルブ本体11のロッド穴15内において最上端に位置し、給水路20の他端開口20bはシール材22dと22eとの間に位置するので給水路16・20が「閉止」の状態となっている。
【0019】
そこで、通水路14を開放するとともに、通水路13からピストン室12内に液体を送水していくとピストン21は次第に下降してバネ23aの上端部に当接し、バネによる弾発力が加わったところで流路切り替えロッド19の他端開口20bはシール材22eと22fとの間に位置して排水路17に対向連通する。通水路13からピストン室12内にさらに送水圧を増して送水していくとピストン21はバネ23aの弾発力に抗しつつ次第に下降してバネ23bの上端部に当接し、バネによる弾発力が2倍となったところで通水路13からの給水圧力オーバーにより停止し、流路切り替えロッド19の他端開口20bはシール材22fと22gとの間に位置して排水路18aに対向連通する(図5の状態)。
【0020】
さらに、通水路13からの送水圧を増すと、ピストン21はバネ23a・23bに抗しつつ下降してバネ23cの上端部に当接し、バネによる弾発力が3倍となったところで通水路13からの給水圧力オーバーにより停止し、流路切り替えロッド19の他端開口20bはシール材22gと22hとの間に位置して排水路18bに対向連通する。
【0021】
同様にさらに、通水路13からの送水圧を増すと、ピストン21はバネ23a・23b・23cに抗しつつ下降してバネ23dの上端部に当接し、バネによる弾発力が4倍となったところで通水路13からの給水圧力オーバーにより停止し、流路切り替えロッド19の他端開口20bはシール材22hと22iとの間に位置して排水路18cに対向連通させることができる。なお上記した通水路13からの送水量の加減については、水圧センサなどの水圧感知手段を備えた送水手段を取り付けるなどの方法により実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例である水圧駆動式流路切替バルブの断面図。
【図2】本発明の第1実施例である水圧駆動式流路切替バルブの断面図。
【図3】本発明の第1実施例である水圧駆動式流路切替バルブの断面図。
【図4】本発明の第2実施例である水圧駆動式流路切替バルブの断面図。
【図5】本発明の第2実施例である水圧駆動式流路切替バルブの断面図。
【図6】従来の水圧駆動式流路切替バルブの断面図。
【符号の説明】
【0023】
11 バルブ本体
12 ピストン室
13 通水路
14 通水路
15 ロッド穴
16 給水路
17 排水路
18a 排水路
18b 排水路
18c 排水路
19 流路切り替えロッド
20 給水路
20a 流路切り替えロッド19の一端開口
20b 流路切り替えロッド19の他端開口
21 ピストン
22 シール材
23 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ本体および該バルブ本体内に形成したロッド穴に沿って摺動移動可能な流路切り替えロッドからなり、バルブ本体内部には両端に通水路を有したピストン室を、また流路切り替えロッドの移動方向に沿って給水路および複数の排水路をそれぞれ形成するとともに、流路切り替えロッドには前記ピストン室内を摺動移動するピストンが一体に設けられ、さらに流路切り替えロッドの内部には、一端を前記給水路に、また流路切り替えロッドの移動に伴って他端を複数の排水路のいずれにも対向可能に開口させた通水路が設けられていることを特徴とした水圧駆動式流路切替バルブ。
【請求項2】
流路切り替えロッド内に設けた通水路の給水路に向けた一端側の開口部が給水路をはさんで流路切り替えロッドの移動方向両側に介在させた1対のシール材間に常時位置するように構成されているところの請求項1に記載の水圧駆動式流路切替バルブ。
【請求項3】
流路切り替えロッド内に設けた通水路の排水路に向けた他端側の開口部が流路切り替えロッドの移動に伴って複数の排水路のいずれにも対向可能に設けられているところの請求項1に記載の水圧駆動式流路切替バルブ。
【請求項4】
バルブ本体のピストン室内には、流路切り替えロッドのピストンをロッドの移動方向に向けて常時付勢するバネが装入されているところの請求項1に記載の水圧駆動式流路切替バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−69860(P2008−69860A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248889(P2006−248889)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000206196)大成基礎設計株式会社 (12)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】