説明

水場出入口の下枠用防水カバー

【課題】
水場出入口の下枠を覆う防水カバーの提供。
【解決手段】
本発明の水場出入口の下枠用防水カバーは、扉や引戸或いは扉や引戸と一体化された枠体が取り付けられた水場出入口の下枠を上方から覆うカバーを防水素材で成形したこと、又、カバーは複数部材から成り、下枠の長さ方向において複数部材の一部を水密に重ね合わせて下枠を上方から覆うこと、又、カバーの下枠の長さ方向両端側には、下枠の両端側から各々側枠に沿って立ち上がって延在する立ち上がり縁部を設けたこと、更には、傾斜面の表面には水場方向に水を流下させる溝を設けたこと等を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室やシャワー室等、水場出入口の下枠を覆うように施される防水カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室やシャワー室等、水場出入口の下枠や下枠に接する床材等(以下、「下枠」ともいう)は、建物の内で最も水に濡れ易い部分の一つであり、水による腐食が最も進み易い部分の一つでもある。
最近の出入口は、アルミ等の錆び難い軽合金素材で出入口枠と扉や引き戸が一体化された枠体構造で提供されているが、それでも、その出入口枠(枠体)は出入口を額縁のように囲む木製の受枠に嵌め込まれて固定されているため、アルミ製枠体(出入口枠)の下枠部を除く出入口の下枠が濡れ易く、水を含んで腐食され易い点に変わりは無い。
【0003】
ここでいう受枠は、少なくともその下枠が水で腐り安い素材で構成されている枠をいい、その一例として木製の受枠を例にして以下説明する。尚、受枠はその枠構成が柱や敷居や床材等による構成かどうかは問わない。
【0004】
このような水場出入口の受枠、特にその下枠は、水場自体が日陰側に設けられる場合が多い上、日々の入浴や水使用によって乾く暇が無く、永年にわたって濡らされた状態に置かれ易いため、建物内でも最も早く腐食が進む。
殊に、湿気を帯びた木材にはシロアリが集り易く、家人の気付かない内に被害が拡大することが多く、又、危険でもある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような問題を解決するため、水場出入口の下枠を覆う防水カバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の水場出入口の下枠用防水カバーの発明は、扉や引戸或いは扉や引戸と一体化された枠体が取り付けられた水場出入口の下枠を上方から覆うカバーを防水素材で成形したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、下枠用防水カバーは、複数部材から成り、下枠の長さ方向において複数部材の一部を水密に重ね合わせて下枠を上方から覆うことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、カバーの下枠の長さ方向両端側には、下枠の両端側から各々側枠に沿って立ち上がって延在する立ち上がり縁部を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項2又は請求項3に記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、カバーは下枠の長さ方向にわたって両端部側と中央部側とに三分割構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、カバーは、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、下枠表面を覆う下枠カバー部に沿って水場と反対側の床面部分を覆う床カバー部を設け、前記下枠カバー部と床カバー部とを連続面としたことを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、下枠カバー部の表面は水場側に下る傾斜面とすると共に、床カバー部との連続面に段差を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、傾斜面の表面には水場方向に水を流下させる溝を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項5乃至請求項7の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバーおいて、溝は引っかき傷状の直線で下枠の長さ方向に無数に設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、請求項5乃至請求項8の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、段差は床面に敷かれるマットの厚さに略等しいことを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明は、請求項5乃至請求項9の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、カバーの両端側の縁部の上縁の全部又は一部を水場或いは水場と反対側との何れか或いは双方に向かって下り傾斜としたことを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明は、請求項2乃至請求項9の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバーにおいて、複数部材のうち少なくとも下枠の中央側をカバーする中央部材は、その表面に設けられた多数の直線的な溝の内、任意の溝において当該中央部材の幅方向に切断可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1乃至請求項11の発明によれば、何れも、水場出入口の下枠が防水カバーで覆われるので、下枠及び下枠に接する床材等の水濡れ及び水濡れによる腐食を防止することができる。
【0018】
請求項2や請求項4の発明によれば、出入口のサイズ即ち下枠の長さに応じて、現場にて即応することができ、施工作業を効率的に行うことができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、下枠の両端側において、当該両端部と当る受枠の垂直な側枠部の下方の水濡れ及び水濡れによる腐食を防止することができる。
【0020】
請求項5乃至請求項11の発明によれば、何れも、下枠に接する床面部分の水濡れ及び水濡れによる腐食をも防止することができる。
【0021】
請求項6及び請求項9の発明によれば、何れも、防水カバー表面の少なくとも一部を水場方向に下る傾斜面とすることによって、防水カバー表面の水を速やかに水場に流下させることができると共に、傾斜面とすることによって生ずる段差の高さを、脱衣場に敷かれる吸水マットの厚さに略等しくしておくことで、防水カバーが施された出入口の少なくとも跨ぎ領域を段差の無い平面とすることができる。
【0022】
請求項7、請求項8及び請求項11の発明によれば、何れも、防水カバー表面の水を更に速やかに水場に流下させることができると共に、溝を下枠の長さ方向に直行する下枠の幅方向に直線状に設けることによって容易に幅方向に切断することができ、下枠の長さに応じた防水カバーを手際よく加工することができる。
【0023】
請求項10の発明によれば、縁部の上縁の水をも、速やかに流下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態として浴室の出入口への実施例を図に基づいて説明する。
【実施例】
【0025】
この実施例は、浴室の出入口に施された三分割構成の防水カバーの例であり、図1は脱衣室の床側から浴室(水場)側を観た出入口の左下隅側の部分断面斜視図、図2は断面側面図、図3は一部平面図、図4はV型溝の断面概念図、図5は凹凸型溝の断面概念図、図6は波型溝の断面概念図である。
尚、図示の防水カバーの素材の厚さは実際には十分に薄いものであるが、その形状や構造の明確化のため各部位において図では強調して表現している。又、出入口の扉或いは引戸(懸架式引戸)は省略している。
【0026】
図1乃至図3において、出入口を浴室に向かって観た状態を正面として以下説明する。
図では、浴室出入口の受枠を構成する左側枠11と下枠12との各々の一部が図示されており、天井側上枠及び右側枠は図示されていない。下枠12は脱衣室の床部13の出入口に沿った床部分である。
受枠(11、12)には、図示されていない扉或いは引戸と一体化された枠体(出入口枠)が浴室側から出入口を縁取るように嵌め込まれている。符号21が枠体を構成する左側枠部、22が下枠部である。枠体を構成する他の上枠部及び右側枠部は図示されていない。
【0027】
図示の下枠用防水カバー3(以下、単に防水カバー或いはカバーともいう)は、下枠12(下枠部22)の長手方向即ち、出入口の横幅方向のカバー領域を3分割して、3つの構成部材で覆う三分割構成とされており、下枠12の長さ方向においてこれら複数部材の一部が互いに一部水密に重ね合うようにして下枠12(下枠部22)を上方から覆っている。
【0028】
図では、三分割構成のうち、中央部材31と左側部材32の一部とが表されており、左側部材と対称の形状である右側部材は図示されていない。
尚、この例のカバー3は三分割構成であるが、これに限らず3分割以上の複数部剤構成としてもよいし、単体(単一部材)構成でも、或いは2分割構成、例えば、中央で重なる左右一対の対称構造としてもよい(何れも図示せず)。
又、カバー用の防水素材としては合成樹脂や金属板等適宜な素材であればよく、限定されない。
【0029】
三分割構成の各構成部材即ち図示された左側部材32と中央部材31及び図示されていない右側部材においては、各々、下枠部22の表面を覆う下枠カバー部33に沿って浴室(水場)と反対側の床面部分を覆う床カバー部34を設け、これらの下枠カバー部33と床カバー部34とを連続させて連続面35とした上、この実施例では更に、下枠カバー部33の表面を水場側に下る傾斜面とすると共に、下枠カバー部33と連なる床カバー部34との連続面35を略垂直として、下枠カバー部33と連なる床カバー部34とに段差(図では連続面35)を設けた。
【0030】
この連続面35の段差は床面に敷かれるマット4、例えば吸水マット等の敷物の厚さに略等しくしておく。
このように、段差(35)を敷物の厚さに等しい程度の落差としておくことで、本発明の防水カバー3が施される出入口の少なくとも跨ぎ領域を段差の無い平面とすることができる。
【0031】
下枠カバー部33の傾斜面33の表面には、当該表面に付着した水を水場方向に流下させる溝36を設けている。実施例の溝36は当該表面を爪で引っかいたような引っかき傷状の直線で、下枠カバー部33の幅方向に向け、下枠の長さ方向に平行に無数に設けてあるが、作図上一部を示し他は省略してある。
【0032】
又、下枠カバー部33と連なる床カバー部34の表面にも、前記の溝36の延長線上の位置に、当該溝36と同様の溝37を設けている。この溝37は前記の溝36と相俟って、当該下枠カバー部33及び床カバー部34即ち中方部材を、現場の出入口幅に合わせた必要な長さに切断するための目安とされると共に、当該切断線に位置する溝36、37を切断用のガイド溝として活用でき、現場の切断作業を効率化させる。
【0033】
この溝37もまた、溝36と同様に、引っかき傷状の直線で、床カバー部34の幅方向に向け、下枠の長さ方向に平行に無数に設けてあるが、作図上一部を示し他は省略してある。
尚、溝36、37は引っかき傷状に限らず、図4乃至図6に示すように、断面がV字型、凹凸型、波型等やその他適宜の形状であってもよい。
【0034】
この実施例では、左側部材32と中央部材31及び図示されていない右側部材の内の、少なくとも下枠の中央側をカバーする中央部材31について、その表面に設けられた多数の直線的な溝36、37を設けることで、これを切断用のガイド溝として、任意の溝において当該中央部材31の幅方向への切断を容易且つ可能としているが、これに限らず、左側部材32や図示されていない右側部材にこのような溝36、37を設けてガイド溝としてもよい。この場合、溝36は水場方向への水切溝としても機能する。
【0035】
このようなガイド溝(36、37)によって、表面の水を更に速やかに流下させることができると共に、溝を下枠の長さ方向に直行する下枠の幅方向に直線状に設けることによって、これを目安として容易に幅方向に切断することができ、下枠の長さに応じた防水カバーを手際よく現場において加工し施工できる。
【0036】
更に、この実施例のカバー3では、下枠12の長さ方向両端側即ち、左側部材32と図示されていない右側部材との各々の端には、下枠12の両端側から各々側枠21に沿って立ち上がって延在する立ち上がり縁部38を設けてある。
【0037】
しかも、この、両端側の各々の縁部38の上縁には、当該上縁に付着した水が残らず、速やかに流下するように、上縁の全部又は一部を水場或いは水場と反対側との何れかに向かって下がる下り傾斜39としてある。
【0038】
このように、左側部材32と図示されていない右側部材との各々の端に縁部38を設けることによって、下枠12の両端部側における水の浸入を確実に防止することができ、これらの両端部と当る受枠の垂直な側枠部11の下方の水濡れ及び水濡れによる腐食を効果的に防止することができる。
【0039】
以上のように、この実施例によれば、水場出入口の下枠が防水カバー3で覆われるので、水場出入口の下枠の水濡れ及び水濡れによる腐食を効果的に防止することができる。
又、防水カバーを複数部材で構成することによって、現場毎に異なる出入口の横幅サイズ即ち下枠12(下枠部22)の長さに応じて、現場で即応することができ、施工作業を効率的に行うこともできる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、上記実施例で示した浴室と脱衣室との出入口のみならず、シャワー室や炊事場等広く水場の出入口の下枠の水濡れを防止する防水カバーとして活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】脱衣場側から水場側を観た出入口の左下隅側の部分図である。
【図2】断面側面図である。
【図3】一部平面図である。
【図4】V型溝の断面概念図である。
【図5】凹凸型溝の断面概念図である。
【図6】波型溝の断面概念図である。
【符号の説明】
【0042】
11 左側枠(受枠)
12 下枠(受枠)
13 床部
21 左側枠部(枠体)
22 下枠部(枠体)
3 下枠用防水カバー
31 中央部材(防水カバー)
32 左側部材(防水カバー)
33 下枠カバー部(防水カバー)
34 床カバー部(防水カバー)
35 連続面(段差)
36 溝(ガイド溝)
37 溝(ガイド溝)
38 縁部(防水カバー)
39 下り傾斜(縁部)
4 マット(敷物)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉や引戸或いは扉や引戸と一体化された枠体が取り付けられた水場出入口の下枠を上方から覆うカバーを防水素材で成形したことを特徴とする水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項2】
カバーは、複数部材から成り、下枠の長さ方向において複数部材の一部を水密に重ね合わせて下枠を上方から覆うことを特徴とする請求項1に記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項3】
カバーの下枠の長さ方向両端側には、下枠の両端側から各々側枠に沿って立ち上がって延在する立ち上がり縁部を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項4】
カバーは下枠の長さ方向にわたって両端部側と中央部側とに三分割構成されたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項5】
カバーは下枠表面を覆う下枠カバー部に沿って水場と反対側の床面部分を覆う床カバー部を設け、前記下枠カバー部と床カバー部とを連続面としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項6】
下枠カバー部の表面は水場側に下る傾斜面とすると共に、床カバー部との連続面に段差を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項7】
傾斜面の表面には水場方向に水を流下させる溝を設けたことを特徴とする請求項6に記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項8】
溝は引っかき傷状の直線で下枠の長さ方向に無数に設けたことを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項9】
段差は床面に敷かれるマットの厚さに略等しいことを特徴とする請求項5乃至請求項8の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項10】
カバーの両端側の縁部の上縁の全部又は一部を水場或いは水場と反対側との何れか或いは双方に向かって下り傾斜としたことを特徴とする請求項5乃至請求項9の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバー。
【請求項11】
複数部材のうち少なくとも下枠の中央側をカバーする中央部材は、その表面に設けられた多数の直線的な溝の内、任意の溝において当該中央部材の幅方向に切断可能であることを特徴とする請求項2乃至請求項9の何れかに記載の水場出入口の下枠用防水カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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