水栓装置
【課題】吐水ヘッド自体に吐水/止水を切り替える操作部を設けるという構造であって、吐水ヘッドの位置に関わらず該操作部への入力により吐水/止水の切替が確実に行われる構造とする。
【解決手段】吐水ヘッド3へ水を供給する流路を開放または閉止する開閉弁と、該開閉弁を通過した水を吐水ヘッド3まで導く流路を内部に有する可撓性のホース5と、当該吐水ヘッド3からの吐水と止水とを切り替えるために使用者が操作を行う切替スイッチ6と、該切替スイッチ6の操作に伴って進退することで開閉弁を開閉動作させるワイヤ7と、吐水ヘッド3を着脱自在に支持し、ホース5およびワイヤ7のそれぞれを挿通させる挿通部21をその内部に有する支持部材2と、を備える。ワイヤ7は、開閉弁から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延び、ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力を、当該ホース5から受けるよう構成されている。
【解決手段】吐水ヘッド3へ水を供給する流路を開放または閉止する開閉弁と、該開閉弁を通過した水を吐水ヘッド3まで導く流路を内部に有する可撓性のホース5と、当該吐水ヘッド3からの吐水と止水とを切り替えるために使用者が操作を行う切替スイッチ6と、該切替スイッチ6の操作に伴って進退することで開閉弁を開閉動作させるワイヤ7と、吐水ヘッド3を着脱自在に支持し、ホース5およびワイヤ7のそれぞれを挿通させる挿通部21をその内部に有する支持部材2と、を備える。ワイヤ7は、開閉弁から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延び、ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力を、当該ホース5から受けるよう構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部に対する操作により開閉弁を開閉する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐水ヘッドを使用者の所望の位置まで引き出して使えるようにするべく、吐水ヘッドに可撓性を有するホースを接続するとともに、吐水ヘッドを支持部材に着脱自在に取り付けた構造の水栓装置が利用されている。
【0003】
このような水栓装置には、開閉弁を開閉させて吐水/止水を切り替えるための操作部(切替スイッチ)が備え付けられている。従来、操作部としては、支持部材に設けられた操作部の押圧操作によってワイヤを介してカウンターの下方に設けられた開閉弁の開閉を行うものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、操作部での操作入力を開閉弁まで確実に伝達して吐水/止水を切り替えるという観点から、例えば操作部から開閉弁の背圧室までチューブを連通させておき、操作部への押圧操作によってチューブの端部を開閉させ、それによって開閉弁の背圧室の圧力を変化させるようにした水栓装置も提案されている(例えば特許文献2参照)。ただし、チューブを利用したこのような水栓装置は、高い耐圧性能が要求されることから構造や材質に制限が加わり、装置が複雑化・大型化する傾向がある。
【0005】
上述のようなチューブを利用した水栓装置以外としては、例えば操作部での操作入力を電気信号に変換して開閉弁に伝達するという水栓装置も考えられる。ただし、電気式とすれば電源や配線アクチュエータなどが必要となるため、やはり構造が複雑化しやすく、コスト高となりやすい。
【0006】
これらチューブや電気信号を利用した水栓装置と比べると、上述のようにワイヤを利用して開閉弁の開閉を行うようにした水栓装置は、チューブに高い耐圧性などが求められるといったことはなく、尚かつ電気信号を利用するための電源などが必要となることもないといった点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−88635号公報
【特許文献2】特開2001−95709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば特許文献1に記載のごとき従来の水栓装置では、吐水ヘッドを片手で掴んで所望位置に移動させる際、同時に吐水/止水を切り替えるには、もう片方の手で支持部材に設けられた操作部を操作することが必要となる。この点、上述のようなワイヤを利用する水栓装置では、使用者が所望の位置に移動させることが可能な吐水ヘッド自体に操作部を設け、該操作部に対する操作入力をワイヤで開閉弁に伝達する構造とすることにより、片手での吐水ヘッドの移動と吐水/止水の切替操作を可能にして利便性を向上させることができると考えられる。
【0009】
しかしながら、使用者が所望の位置に移動させることが可能な吐水ヘッド自体に吐水/止水を切り替える操作部を設けると、操作部から延びるワイヤも吐水ヘッドとともに移動することから、吐水ヘッドの位置によってはワイヤに折れや捩れ(キンク)等が生じ操作部への操作入力を開閉弁まで伝達できなくなり、開閉弁の開閉動作を正しく行えなくなる。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐水ヘッド自体に吐水/止水を切り替える操作部を設けるという構造であって、吐水ヘッドの位置に関わらず該操作部への入力により吐水/止水の切替が確実に行われるようにした水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カウンターの上方で固定される支持部材と、該支持部材に着脱自在に支持されて水を吐出する吐水ヘッドとを有する水栓装置において、カウンターの下方に設けられ、吐水ヘッドへ水を供給する流路を開放または閉止する開閉弁と、該開閉弁を通過した水を吐水ヘッドまで導く流路を内部に有する可撓性のホースと、吐水ヘッドに設けられ、当該吐水ヘッドからの吐水と止水とを切り替えるために使用者が操作を行う切替スイッチと、該切替スイッチの操作に伴って進退することで開閉弁を開閉動作させるワイヤと、吐水ヘッドを着脱自在に支持し、ホースおよびワイヤのそれぞれを挿通させる挿通部をその内部に有する支持部材と、を備え、ワイヤは、開閉弁から切替スイッチにかけてホースに沿って延び、ホースとともに同方向に屈曲したときの反力を、当該ホースから受けるよう構成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、まず、切替スイッチを吐水ヘッドに設け、切替スイッチの操作によって進退するワイヤで開閉弁を開閉動作させることで、吐水/止水を切り替えるための操作を吐水ヘッドの位置において行うことが可能であり、利便性の高い水栓を提供することができる。
【0013】
一方で、切替スイッチを吐水ヘッドに設けたことで、使用者が吐水ヘッドを移動させる際にワイヤに折れや捩れが生じ、切替スイッチにおいて操作を行ってもワイヤがスムーズに進退できず、開閉弁を使用者の所望のとおりに開閉できなくなるというおそれ、特に、支持部材の挿通部を挿通して、カウンター下方の開閉弁を開閉させる場合、支持部材近傍においてワイヤの折れが生じやすくなるおそれがある点に関して、本発明は以下のような特徴を備えることで対処している。すなわち、本発明では、ワイヤを開閉弁から切替スイッチにかけてホースに沿って延びるようにし、ホースとともに同方向に屈曲したときの反力を、ホースから受けるよう構成している。これにより、ワイヤを屈曲させようとする外力が作用しても、ホースがワイヤに及ぼす反力により、このような外力に起因した折れや捩れが軽減される。したがって、ワイヤのスムーズな進退を確保し、開閉弁を確実に開閉させることができる。
【0014】
かかる水栓装置において、ワイヤは、ホースの使用者側の面よりも奥側に配置されたものであることが好ましい。このような水栓装置によると、使用者が吐水ヘッドを手前側に引き出したとき、支持部材の挿通部とホースとの間にワイヤが挟まれ、ワイヤの進退に支障をきたす不具合の発生を抑制し、開閉弁を確実に開閉させることができる。
【0015】
また、ワイヤは、ホースの内部の流路に配置されたものであることがさらに好ましい。こうした場合、簡易な構成によって、ホースの反力をワイヤに及ぼしつつ、ワイヤがホースと開口との間に挟まれる不具合を抑制するとともに、ホース周りへのワイヤの絡まりを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吐水ヘッド自体に吐水/止水を切り替える操作部を設けるという構造であって、吐水ヘッドの位置に関わらず該操作部への入力により吐水/止水の切替が確実に行われるようにした水栓装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る水栓装置の一実施形態を示す全体図である。
【図2】吐水ヘッド収納時における水栓装置の構造例を示す断面図である。
【図3】支持部材から吐水ヘッドを引き出した状態の水栓装置の断面図である。
【図4】止水状態における吐水ヘッドの断面図である。
【図5】吐水状態における吐水ヘッドの断面図である。
【図6】止水状態における開閉弁ユニットの断面図である。
【図7】吐水状態における開閉弁ユニットの断面図である。
【図8】使用者からみて手前方向下側に吐水ヘッドを移動させた際にワイヤに作用する力を説明する図である。
【図9】使用者からみて奥側に吐水ヘッドを移動させた際にワイヤに作用する力を説明する図である。
【図10】ホースの使用者側の面よりも奥側にワイヤが配置された水栓装置の一例を示す側面図である。
【図11】ホースの被覆内にワイヤを挿通させた水栓装置の吐水ヘッドの縦断面図である。
【図12】図11のXII-XII線におけるホース等の横断面図である。
【図13】ワイヤがホースの内部の流路以外の箇所であって該ホースの使用者側の面よりも手前側に設置されている水栓装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1〜図10に本発明にかかる水栓装置1の実施形態を示す。本実施形態の水栓装置1は、支持部材2、吐水ヘッド3、主弁体(開閉弁)4、ホース5、切替スイッチ6、ワイヤ7等を備えている。
【0020】
支持部材2は、水栓装置1の吐水ヘッド3を着脱自在に支持している。この支持部材2は、カウンター8上に設けられた台座11に取り付けられている(図1参照)。台座11には、吐水流量や吐水温度の調節を行うためのハンドルレバー13が設けられている。本実施形態の支持部材2は、ホース5およびワイヤ7のそれぞれを挿通させる挿通部21をその内部に有している(図3等参照)。
【0021】
カウンター8は、水回りの台やテーブル天板など、水栓装置1が設置されうる箇所全般を表すものとして用いられている。例えば本実施形態ではキッチンのシンク12の奥側(使用者からみて遠い側)の天板部がカウンター8に該当する場合を例示しているが(図1参照)、これはあくまでも一例にすぎず、この他、洗面化粧台のボウル周りの台状部分なども本明細書でいうカウンター8に該当しうる。
【0022】
吐水ヘッド3は、支持部材2に着脱自在に支持されており、吐水口33から水を吐出する。この吐水ヘッド3には可撓性のホース5が接続されており、支持部材2によって支持された状態(収納状態)の当該吐水ヘッド3を使用者が引き出し、一例としてキッチンのシンク12において所望の位置や角度で水を吐出させることができるようになっている(図8等参照)。例えば本実施形態の吐水ヘッド3は、ヘッド本体31、該ヘッド本体31を覆うヘッドカバー32などで構成されている(図2、図3参照)。吐水口33には、吐水の流れを整える整流部材34が取り付けられている。また、吐水ヘッド3の一部(例えば収納状態の吐水ヘッド3の上端部)には切替スイッチ6が設けられている。
【0023】
主弁体4は、吐水ヘッド3へ水を供給する流路を開放または閉止するための開閉弁ユニット40を構成している弁で、本実施形態の場合にはカウンター8の下方に設けられている(図1参照)。開閉弁ユニット40は、後述するように流体(水)の流れが生じさせる背圧を利用して主弁体4を開閉させるものであり(図6、図7参照)、給水管15および給湯管16と接続され、さらに流路17を介してホース5の流路50と接続されている(図1参照)。本実施形態では、主弁体4としてダイヤフラム弁を利用している。
【0024】
ホース5は、主弁体4を通過した水を吐水ヘッド3まで導く流路50を内部に有する可撓性の管状部材である(図3等参照)。吐水ヘッド3を支持部材2によって支持した状態(収納状態)のとき、ホース5は支持部材2および台座11内に収容された状態となる(図2参照)。本実施形態のホース5は、第一ホース継手51、第二ホース継手52、かしめ部材53、さらにフランジ部材54を介してその一端がヘッド本体31に接続されている(図4、図5参照)。
【0025】
切替スイッチ6は、吐水ヘッド3からの吐水/止水を切り替えるために使用者が操作する操作入力部を構成している。この切替スイッチ6は、吐水ヘッド3の一部(例えば収納状態の吐水ヘッド3の上端部)に設けられている。このため、使用者は吐水と止水とを切り替えるための操作を、吐水ヘッド3を掴んでいる手で行うことが可能であり、利便性が高い。このような切替スイッチ6として、本実施形態ではスラストロック機構を備えたものを用いている(図2、図3参照)。
【0026】
切替スイッチ6に用いられているスラストロック機構62は、浴槽の排水栓装置やボールペンなどで利用されているように、切替スイッチ6の支持軸61の進退を繰り返した場合に、進退経路の一端側で支持軸61をロックした状態と、次にこのロックを解除した状態とを交互に繰り返すように動作するものである。本実施形態の切替スイッチ6およびスラストロック機構62は、止水状態(吐水口33から水を吐出しない状態、図4参照)から切替スイッチ6を一回押し込むと、ワイヤ7を所定量引き込むことによって吐水状態(吐水口33から水を吐出させる状態)とし、スラストロック機構62によってこの吐水状態でロックするように構成されている(図5参照)。ここではスラストロック機構62自体の詳細までは説明しないが、構成の概略を一例として示しておくと、遠隔操作する方式、ダイレクトプッシュするような直接的に操作する方式のいずれも、基本的には、支持軸61に固定した固定歯と、その固定歯と直列状に回転可能、尚かつ軸方向に摺動可能に連設した回転歯と、メカボックス内に設けた係止歯とを備えており、支持軸61の上下動の一端側で固定歯との係合により回転歯が回転し、その回転毎に係止歯に対して係脱を繰り返すことで、ワイヤ7を進退させた状態(送り込んだ状態と、引っ張り込んだ状態)を維持する。
【0027】
ワイヤ7は、切替スイッチ6の操作に伴って進退し、主弁体4を開閉動作させる操作入力伝達手段として機能する。本実施形態では、アウターチューブ71内に進退自在に挿通したスパイラル状のメタル製インナーワイヤをこのワイヤ7として用いている(図2等参照)。ワイヤ7の一端は、上述したスラストロック機構62の可動部に接続されている(図2、図3参照)。また、ワイヤ7の他端は、開閉弁ユニット40を構成するパイロットプラグ90のワイヤガイド93に接続されている(図6、図7参照)。
【0028】
アウターチューブ71は、内部にワイヤ7を進退自在に挿通するための筒状部材であり、一例として4フッ化エチレン材から成る樹脂材で構成されて側方への可撓性を有している。アウターチューブ71の一端は、鍔状に外側方向に突出した鍔部71aを介して吐水ヘッド3のヘッド本体31に接続されている(図4、図5参照)。また、アウターチューブ71の他端は、外周面に雄ねじが設けられた金属材からなるアウターエンド71bを介してパイロットプラグ90のプラグ本体91に接続されている(図6、図7参照)。
【0029】
上述した開閉弁ユニット40は、開閉弁(主弁体)4の他、蓋体41、主弁座42、パイロット流路43、そしてパイロットプラグ90などで構成されている。上述したカウンター8内には、水供給源と接続された流路17を有する流路本体14が設置されており、主弁体4は、この流路本体14中の主弁座42に対して接近離反することによって流路17を開閉するように設置されている(図6、図7参照)。この主弁体4の背面には背圧室44となるスペースが形成されており、背圧の大きさに応じて主弁体4が主弁座42に対して接近離反するようになっている。パイロット流路43は、パイロットプラグ90内のパイロット室97とこの背圧室44とを連通させている。
【0030】
パイロットプラグ90は、流路本体14の端部開口に取り付けられて開閉弁ユニット40を構成する(図6、図7参照)。本実施形態のパイロットプラグ90は、プラグ本体91、バイアスばね92、ワイヤガイド93、パイロット弁体94、パイロット弁座95、パイロット孔96などを備えている。パイロット弁体94はパイロット室97をストロークするバルブで、止水時にはパイロット弁座95に密着してパイロット孔96を閉じた状態となっている(図6参照)。また、パイロット弁体94はワイヤガイド93と接続されており、ワイヤ7が引っ張り込まれまたは送り込まれると該ワイヤ7やワイヤガイド93と同量ストロークする。プラグ本体91内に設けられたバイアスばね92は、ワイヤガイド93を介してワイヤ7を押し戻すように(パイロット弁体94をパイロット孔96から遠ざける方向に)付勢している。
【0031】
切替スイッチ6の操作に伴う開閉弁ユニット40での動作について簡単に説明すれば以下のとおりである。まず、止水時においては、パイロットプラグ90のパイロット弁体94がパイロット弁座95に着座した状態となっており、パイロット孔96が閉じられている。また、開閉弁(主弁体)4は主弁座42に着座した状態となっている。このため、水の流路17(流路本体14内の流路17aおよびパイロット弁体91内の流路17bを含む)とパイロット流路43とは分断された状態となっている(図6参照)。このとき、背圧室44における背圧の作用(流路17と背圧室44の差圧による作用)により、主弁体4は主弁座42に着座した状態に保持され、止水状態に保たれる。
【0032】
ここで、止水状態の吐水ヘッド3(図4参照)の切替スイッチ6を押圧操作すると、ワイヤ7が所定量引き込まれ、スラストロック機構62によってその状態にロックされる(図5参照)。この動作に伴い、パイロット弁座95への着座状態にあったパイロット弁体94が引かれ、パイロット孔96が開いて、水の流路17とパイロット流路43とが連通した状態となる。そうすると、背圧室44における背圧が減少し、主弁体4が後退して開弁状態となる。この結果、水が流路本体14等を通る流路17からホース5内の流路50を通過して吐水ヘッド3の吐水口33まで供給される吐水状態となる。この吐水状態において切替スイッチ6をもう一度操作すると、ワイヤ7が所定量送り込まれ、パイロット孔96が閉じ、主弁体4が閉じて止水状態に戻る(図4参照)。
【0033】
上述したように、ワイヤ7は、吐水ヘッド3の切替スイッチ6における操作入力を、このような開閉弁ユニット40を構成するパイロット弁体94に伝達し、当該パイロット弁体94の動きを介して主弁体4を開閉させる。ここで、本実施形態では、このように切替スイッチ6の操作によって進退して開閉弁を開閉するワイヤ7を、主弁体4から吐水ヘッド3の切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延び、該ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力をホース5から受けるよう、当該ホース5内に配置することとしている(図3等参照)。このような構成の特徴点は以下のとおりである。
【0034】
すなわち、切替スイッチ6を吐水ヘッド3に設けた本実施形態のごとき水栓装置1においては、使用者が吐水ヘッド3を移動させる際、切替スイッチ6への操作入力を主弁体4(開閉弁ユニット40)に伝達するワイヤ7に折れや捩れが生じ、切替スイッチ6において操作を行ってもワイヤ7がスムーズに進退できず、主弁体4を使用者の所望のとおりに開閉できなくなるといったおそれがあるが、本実施形態ではワイヤ7を主弁体4から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延びるようにし、ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力を、ホース5から受けるようにしている。
【0035】
例を挙げて説明すれば、支持部材2から引き出した吐水ヘッド3を使用者が手前方向下側に移動させれば、ワイヤ7にこの方向への曲げ応力が生じる(図8参照)。このとき、仮に、ワイヤ7とホース5とが何ら関わりなく別々に設置されているなどしていれば、ワイヤ7とホース5とは別々に屈曲することから、ワイヤ7に局所的な曲げ応力が作用するなどし、ワイヤ7のスムーズな進退が妨げられるおそれがある。この点、本実施形態ではワイヤ7を主弁体4から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延びるようにし、屈曲時にホース5が生じさせる反力(図8の矢印参照)をワイヤ7にも及ぼすことにより、全体としての曲げ剛性を向上させ、外力に起因してワイヤ7に生じる折れや捩れを軽減させている(図10参照)。
【0036】
以上は、支持部材2から引き出した吐水ヘッド3を使用者が奥側へ移動させた場合も同様である(図9参照)。この場合、ワイヤ7およびホース5に対して奥方向への曲げ応力が生じるが、本実施形態の水栓装置1においては、屈曲時にホース5が生じさせる反力(図9の矢印参照)をワイヤ7にも及ぼすことにより、全体としての曲げ剛性が向上し、ワイヤ7に生じる折れや捩れが軽減する(図10参照)。このように、本実施形態の水栓装置1によれば、吐水ヘッド3の位置や向きに応じてワイヤ7に折れや捩れが生じやすい状況となってもワイヤ7のスムーズな進退を確保し、主弁体4を確実に開閉させることが可能である。
【0037】
また、本実施形態では水栓装置1の好適な構成例として、ワイヤ7をホース5の使用者側の面よりも奥側に配置した場合を示している(図10等参照)。こうすることにより、使用者が吐水ヘッド3を手前側に引き出し、あるいは手前側から支持部材2に戻そうとしたとき、支持部材2の開口(挿通部21の開口部分)とホース5との間にワイヤ7が挟まれ、ワイヤ7の進退に支障をきたすといった不具合が発生するのを抑制し、主弁体4の確実な開閉動作をより実現しやすい。もちろん、このような不具合の発生が抑制されるならば、ワイヤ7をホース5の使用者側の面よりも手前側に配置することもできる(図13参照)。
【0038】
あるいは、図8等に示しているように、ワイヤ7をホース5の内部の流路50に配置することも好ましい。このような水栓装置1によれば、ワイヤ7をホース5に内蔵するという比較的簡易な構成でありながらも、ホース5の反力をワイヤ7に及ぼしつつ、ワイヤ7がホース5と支持部材2の開口(挿通部21の開口部分)との間に挟まれるといった不具合が抑制される。また、こうすることで、使用者が吐水ヘッド3を手前側に引き出し、あるいは手前側から支持部材2に戻そうとしたとき、ホース5周りへワイヤ7が絡まることも抑制される。もちろん、このような不具合の発生が抑制されるならば、ワイヤ7をホース5の内部の流路50以外の箇所へ配置することもできる(図13参照)。
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態ではワイヤ7をホース5の内部の流路50に配置した場合を例示したが(図8等参照)、このほか、ホース5の被覆内にワイヤ7を挿通させるようにすることもできる(図11、図12参照)。この場合は、ホースの被覆がワイヤ7のアウターチューブ71のように機能することとなる。要は、ワイヤ7を主弁体4から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延びるように配置することができればその具体的態様は特に限定されず、このように配置することより、ホース5とともにワイヤ7が屈曲したときの反力をホース5から受けるようにし、外力に起因してワイヤ7に生じる折れや捩れを軽減させることができる。
【0040】
また、上述した実施形態では、切替スイッチ6の具体例として、押圧操作され、スラストロック機構62と連動して進退動作を繰り返す構造のスイッチを例示したがこれも好適例にすぎず、この他、例えば左右方向あるいは上下方向に倒れるレバーなどを切替スイッチ6として用いてもよい。要は、スイッチを操作することによってワイヤ7を所定量進退させて主弁体4を開閉することができる切替スイッチであれば、その具体的な構成が特に限定されることはない。
【符号の説明】
【0041】
1:水栓装置
2:支持部材
3:吐水ヘッド
4:主弁体(開閉弁)
5:ホース
6:切替スイッチ
7:ワイヤ
8:カウンター
21:挿通部
50:(ホース内部の)流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部に対する操作により開閉弁を開閉する水栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐水ヘッドを使用者の所望の位置まで引き出して使えるようにするべく、吐水ヘッドに可撓性を有するホースを接続するとともに、吐水ヘッドを支持部材に着脱自在に取り付けた構造の水栓装置が利用されている。
【0003】
このような水栓装置には、開閉弁を開閉させて吐水/止水を切り替えるための操作部(切替スイッチ)が備え付けられている。従来、操作部としては、支持部材に設けられた操作部の押圧操作によってワイヤを介してカウンターの下方に設けられた開閉弁の開閉を行うものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、操作部での操作入力を開閉弁まで確実に伝達して吐水/止水を切り替えるという観点から、例えば操作部から開閉弁の背圧室までチューブを連通させておき、操作部への押圧操作によってチューブの端部を開閉させ、それによって開閉弁の背圧室の圧力を変化させるようにした水栓装置も提案されている(例えば特許文献2参照)。ただし、チューブを利用したこのような水栓装置は、高い耐圧性能が要求されることから構造や材質に制限が加わり、装置が複雑化・大型化する傾向がある。
【0005】
上述のようなチューブを利用した水栓装置以外としては、例えば操作部での操作入力を電気信号に変換して開閉弁に伝達するという水栓装置も考えられる。ただし、電気式とすれば電源や配線アクチュエータなどが必要となるため、やはり構造が複雑化しやすく、コスト高となりやすい。
【0006】
これらチューブや電気信号を利用した水栓装置と比べると、上述のようにワイヤを利用して開閉弁の開閉を行うようにした水栓装置は、チューブに高い耐圧性などが求められるといったことはなく、尚かつ電気信号を利用するための電源などが必要となることもないといった点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−88635号公報
【特許文献2】特開2001−95709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば特許文献1に記載のごとき従来の水栓装置では、吐水ヘッドを片手で掴んで所望位置に移動させる際、同時に吐水/止水を切り替えるには、もう片方の手で支持部材に設けられた操作部を操作することが必要となる。この点、上述のようなワイヤを利用する水栓装置では、使用者が所望の位置に移動させることが可能な吐水ヘッド自体に操作部を設け、該操作部に対する操作入力をワイヤで開閉弁に伝達する構造とすることにより、片手での吐水ヘッドの移動と吐水/止水の切替操作を可能にして利便性を向上させることができると考えられる。
【0009】
しかしながら、使用者が所望の位置に移動させることが可能な吐水ヘッド自体に吐水/止水を切り替える操作部を設けると、操作部から延びるワイヤも吐水ヘッドとともに移動することから、吐水ヘッドの位置によってはワイヤに折れや捩れ(キンク)等が生じ操作部への操作入力を開閉弁まで伝達できなくなり、開閉弁の開閉動作を正しく行えなくなる。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、吐水ヘッド自体に吐水/止水を切り替える操作部を設けるという構造であって、吐水ヘッドの位置に関わらず該操作部への入力により吐水/止水の切替が確実に行われるようにした水栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、カウンターの上方で固定される支持部材と、該支持部材に着脱自在に支持されて水を吐出する吐水ヘッドとを有する水栓装置において、カウンターの下方に設けられ、吐水ヘッドへ水を供給する流路を開放または閉止する開閉弁と、該開閉弁を通過した水を吐水ヘッドまで導く流路を内部に有する可撓性のホースと、吐水ヘッドに設けられ、当該吐水ヘッドからの吐水と止水とを切り替えるために使用者が操作を行う切替スイッチと、該切替スイッチの操作に伴って進退することで開閉弁を開閉動作させるワイヤと、吐水ヘッドを着脱自在に支持し、ホースおよびワイヤのそれぞれを挿通させる挿通部をその内部に有する支持部材と、を備え、ワイヤは、開閉弁から切替スイッチにかけてホースに沿って延び、ホースとともに同方向に屈曲したときの反力を、当該ホースから受けるよう構成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明によれば、まず、切替スイッチを吐水ヘッドに設け、切替スイッチの操作によって進退するワイヤで開閉弁を開閉動作させることで、吐水/止水を切り替えるための操作を吐水ヘッドの位置において行うことが可能であり、利便性の高い水栓を提供することができる。
【0013】
一方で、切替スイッチを吐水ヘッドに設けたことで、使用者が吐水ヘッドを移動させる際にワイヤに折れや捩れが生じ、切替スイッチにおいて操作を行ってもワイヤがスムーズに進退できず、開閉弁を使用者の所望のとおりに開閉できなくなるというおそれ、特に、支持部材の挿通部を挿通して、カウンター下方の開閉弁を開閉させる場合、支持部材近傍においてワイヤの折れが生じやすくなるおそれがある点に関して、本発明は以下のような特徴を備えることで対処している。すなわち、本発明では、ワイヤを開閉弁から切替スイッチにかけてホースに沿って延びるようにし、ホースとともに同方向に屈曲したときの反力を、ホースから受けるよう構成している。これにより、ワイヤを屈曲させようとする外力が作用しても、ホースがワイヤに及ぼす反力により、このような外力に起因した折れや捩れが軽減される。したがって、ワイヤのスムーズな進退を確保し、開閉弁を確実に開閉させることができる。
【0014】
かかる水栓装置において、ワイヤは、ホースの使用者側の面よりも奥側に配置されたものであることが好ましい。このような水栓装置によると、使用者が吐水ヘッドを手前側に引き出したとき、支持部材の挿通部とホースとの間にワイヤが挟まれ、ワイヤの進退に支障をきたす不具合の発生を抑制し、開閉弁を確実に開閉させることができる。
【0015】
また、ワイヤは、ホースの内部の流路に配置されたものであることがさらに好ましい。こうした場合、簡易な構成によって、ホースの反力をワイヤに及ぼしつつ、ワイヤがホースと開口との間に挟まれる不具合を抑制するとともに、ホース周りへのワイヤの絡まりを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吐水ヘッド自体に吐水/止水を切り替える操作部を設けるという構造であって、吐水ヘッドの位置に関わらず該操作部への入力により吐水/止水の切替が確実に行われるようにした水栓装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る水栓装置の一実施形態を示す全体図である。
【図2】吐水ヘッド収納時における水栓装置の構造例を示す断面図である。
【図3】支持部材から吐水ヘッドを引き出した状態の水栓装置の断面図である。
【図4】止水状態における吐水ヘッドの断面図である。
【図5】吐水状態における吐水ヘッドの断面図である。
【図6】止水状態における開閉弁ユニットの断面図である。
【図7】吐水状態における開閉弁ユニットの断面図である。
【図8】使用者からみて手前方向下側に吐水ヘッドを移動させた際にワイヤに作用する力を説明する図である。
【図9】使用者からみて奥側に吐水ヘッドを移動させた際にワイヤに作用する力を説明する図である。
【図10】ホースの使用者側の面よりも奥側にワイヤが配置された水栓装置の一例を示す側面図である。
【図11】ホースの被覆内にワイヤを挿通させた水栓装置の吐水ヘッドの縦断面図である。
【図12】図11のXII-XII線におけるホース等の横断面図である。
【図13】ワイヤがホースの内部の流路以外の箇所であって該ホースの使用者側の面よりも手前側に設置されている水栓装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1〜図10に本発明にかかる水栓装置1の実施形態を示す。本実施形態の水栓装置1は、支持部材2、吐水ヘッド3、主弁体(開閉弁)4、ホース5、切替スイッチ6、ワイヤ7等を備えている。
【0020】
支持部材2は、水栓装置1の吐水ヘッド3を着脱自在に支持している。この支持部材2は、カウンター8上に設けられた台座11に取り付けられている(図1参照)。台座11には、吐水流量や吐水温度の調節を行うためのハンドルレバー13が設けられている。本実施形態の支持部材2は、ホース5およびワイヤ7のそれぞれを挿通させる挿通部21をその内部に有している(図3等参照)。
【0021】
カウンター8は、水回りの台やテーブル天板など、水栓装置1が設置されうる箇所全般を表すものとして用いられている。例えば本実施形態ではキッチンのシンク12の奥側(使用者からみて遠い側)の天板部がカウンター8に該当する場合を例示しているが(図1参照)、これはあくまでも一例にすぎず、この他、洗面化粧台のボウル周りの台状部分なども本明細書でいうカウンター8に該当しうる。
【0022】
吐水ヘッド3は、支持部材2に着脱自在に支持されており、吐水口33から水を吐出する。この吐水ヘッド3には可撓性のホース5が接続されており、支持部材2によって支持された状態(収納状態)の当該吐水ヘッド3を使用者が引き出し、一例としてキッチンのシンク12において所望の位置や角度で水を吐出させることができるようになっている(図8等参照)。例えば本実施形態の吐水ヘッド3は、ヘッド本体31、該ヘッド本体31を覆うヘッドカバー32などで構成されている(図2、図3参照)。吐水口33には、吐水の流れを整える整流部材34が取り付けられている。また、吐水ヘッド3の一部(例えば収納状態の吐水ヘッド3の上端部)には切替スイッチ6が設けられている。
【0023】
主弁体4は、吐水ヘッド3へ水を供給する流路を開放または閉止するための開閉弁ユニット40を構成している弁で、本実施形態の場合にはカウンター8の下方に設けられている(図1参照)。開閉弁ユニット40は、後述するように流体(水)の流れが生じさせる背圧を利用して主弁体4を開閉させるものであり(図6、図7参照)、給水管15および給湯管16と接続され、さらに流路17を介してホース5の流路50と接続されている(図1参照)。本実施形態では、主弁体4としてダイヤフラム弁を利用している。
【0024】
ホース5は、主弁体4を通過した水を吐水ヘッド3まで導く流路50を内部に有する可撓性の管状部材である(図3等参照)。吐水ヘッド3を支持部材2によって支持した状態(収納状態)のとき、ホース5は支持部材2および台座11内に収容された状態となる(図2参照)。本実施形態のホース5は、第一ホース継手51、第二ホース継手52、かしめ部材53、さらにフランジ部材54を介してその一端がヘッド本体31に接続されている(図4、図5参照)。
【0025】
切替スイッチ6は、吐水ヘッド3からの吐水/止水を切り替えるために使用者が操作する操作入力部を構成している。この切替スイッチ6は、吐水ヘッド3の一部(例えば収納状態の吐水ヘッド3の上端部)に設けられている。このため、使用者は吐水と止水とを切り替えるための操作を、吐水ヘッド3を掴んでいる手で行うことが可能であり、利便性が高い。このような切替スイッチ6として、本実施形態ではスラストロック機構を備えたものを用いている(図2、図3参照)。
【0026】
切替スイッチ6に用いられているスラストロック機構62は、浴槽の排水栓装置やボールペンなどで利用されているように、切替スイッチ6の支持軸61の進退を繰り返した場合に、進退経路の一端側で支持軸61をロックした状態と、次にこのロックを解除した状態とを交互に繰り返すように動作するものである。本実施形態の切替スイッチ6およびスラストロック機構62は、止水状態(吐水口33から水を吐出しない状態、図4参照)から切替スイッチ6を一回押し込むと、ワイヤ7を所定量引き込むことによって吐水状態(吐水口33から水を吐出させる状態)とし、スラストロック機構62によってこの吐水状態でロックするように構成されている(図5参照)。ここではスラストロック機構62自体の詳細までは説明しないが、構成の概略を一例として示しておくと、遠隔操作する方式、ダイレクトプッシュするような直接的に操作する方式のいずれも、基本的には、支持軸61に固定した固定歯と、その固定歯と直列状に回転可能、尚かつ軸方向に摺動可能に連設した回転歯と、メカボックス内に設けた係止歯とを備えており、支持軸61の上下動の一端側で固定歯との係合により回転歯が回転し、その回転毎に係止歯に対して係脱を繰り返すことで、ワイヤ7を進退させた状態(送り込んだ状態と、引っ張り込んだ状態)を維持する。
【0027】
ワイヤ7は、切替スイッチ6の操作に伴って進退し、主弁体4を開閉動作させる操作入力伝達手段として機能する。本実施形態では、アウターチューブ71内に進退自在に挿通したスパイラル状のメタル製インナーワイヤをこのワイヤ7として用いている(図2等参照)。ワイヤ7の一端は、上述したスラストロック機構62の可動部に接続されている(図2、図3参照)。また、ワイヤ7の他端は、開閉弁ユニット40を構成するパイロットプラグ90のワイヤガイド93に接続されている(図6、図7参照)。
【0028】
アウターチューブ71は、内部にワイヤ7を進退自在に挿通するための筒状部材であり、一例として4フッ化エチレン材から成る樹脂材で構成されて側方への可撓性を有している。アウターチューブ71の一端は、鍔状に外側方向に突出した鍔部71aを介して吐水ヘッド3のヘッド本体31に接続されている(図4、図5参照)。また、アウターチューブ71の他端は、外周面に雄ねじが設けられた金属材からなるアウターエンド71bを介してパイロットプラグ90のプラグ本体91に接続されている(図6、図7参照)。
【0029】
上述した開閉弁ユニット40は、開閉弁(主弁体)4の他、蓋体41、主弁座42、パイロット流路43、そしてパイロットプラグ90などで構成されている。上述したカウンター8内には、水供給源と接続された流路17を有する流路本体14が設置されており、主弁体4は、この流路本体14中の主弁座42に対して接近離反することによって流路17を開閉するように設置されている(図6、図7参照)。この主弁体4の背面には背圧室44となるスペースが形成されており、背圧の大きさに応じて主弁体4が主弁座42に対して接近離反するようになっている。パイロット流路43は、パイロットプラグ90内のパイロット室97とこの背圧室44とを連通させている。
【0030】
パイロットプラグ90は、流路本体14の端部開口に取り付けられて開閉弁ユニット40を構成する(図6、図7参照)。本実施形態のパイロットプラグ90は、プラグ本体91、バイアスばね92、ワイヤガイド93、パイロット弁体94、パイロット弁座95、パイロット孔96などを備えている。パイロット弁体94はパイロット室97をストロークするバルブで、止水時にはパイロット弁座95に密着してパイロット孔96を閉じた状態となっている(図6参照)。また、パイロット弁体94はワイヤガイド93と接続されており、ワイヤ7が引っ張り込まれまたは送り込まれると該ワイヤ7やワイヤガイド93と同量ストロークする。プラグ本体91内に設けられたバイアスばね92は、ワイヤガイド93を介してワイヤ7を押し戻すように(パイロット弁体94をパイロット孔96から遠ざける方向に)付勢している。
【0031】
切替スイッチ6の操作に伴う開閉弁ユニット40での動作について簡単に説明すれば以下のとおりである。まず、止水時においては、パイロットプラグ90のパイロット弁体94がパイロット弁座95に着座した状態となっており、パイロット孔96が閉じられている。また、開閉弁(主弁体)4は主弁座42に着座した状態となっている。このため、水の流路17(流路本体14内の流路17aおよびパイロット弁体91内の流路17bを含む)とパイロット流路43とは分断された状態となっている(図6参照)。このとき、背圧室44における背圧の作用(流路17と背圧室44の差圧による作用)により、主弁体4は主弁座42に着座した状態に保持され、止水状態に保たれる。
【0032】
ここで、止水状態の吐水ヘッド3(図4参照)の切替スイッチ6を押圧操作すると、ワイヤ7が所定量引き込まれ、スラストロック機構62によってその状態にロックされる(図5参照)。この動作に伴い、パイロット弁座95への着座状態にあったパイロット弁体94が引かれ、パイロット孔96が開いて、水の流路17とパイロット流路43とが連通した状態となる。そうすると、背圧室44における背圧が減少し、主弁体4が後退して開弁状態となる。この結果、水が流路本体14等を通る流路17からホース5内の流路50を通過して吐水ヘッド3の吐水口33まで供給される吐水状態となる。この吐水状態において切替スイッチ6をもう一度操作すると、ワイヤ7が所定量送り込まれ、パイロット孔96が閉じ、主弁体4が閉じて止水状態に戻る(図4参照)。
【0033】
上述したように、ワイヤ7は、吐水ヘッド3の切替スイッチ6における操作入力を、このような開閉弁ユニット40を構成するパイロット弁体94に伝達し、当該パイロット弁体94の動きを介して主弁体4を開閉させる。ここで、本実施形態では、このように切替スイッチ6の操作によって進退して開閉弁を開閉するワイヤ7を、主弁体4から吐水ヘッド3の切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延び、該ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力をホース5から受けるよう、当該ホース5内に配置することとしている(図3等参照)。このような構成の特徴点は以下のとおりである。
【0034】
すなわち、切替スイッチ6を吐水ヘッド3に設けた本実施形態のごとき水栓装置1においては、使用者が吐水ヘッド3を移動させる際、切替スイッチ6への操作入力を主弁体4(開閉弁ユニット40)に伝達するワイヤ7に折れや捩れが生じ、切替スイッチ6において操作を行ってもワイヤ7がスムーズに進退できず、主弁体4を使用者の所望のとおりに開閉できなくなるといったおそれがあるが、本実施形態ではワイヤ7を主弁体4から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延びるようにし、ホース5とともに同方向に屈曲したときの反力を、ホース5から受けるようにしている。
【0035】
例を挙げて説明すれば、支持部材2から引き出した吐水ヘッド3を使用者が手前方向下側に移動させれば、ワイヤ7にこの方向への曲げ応力が生じる(図8参照)。このとき、仮に、ワイヤ7とホース5とが何ら関わりなく別々に設置されているなどしていれば、ワイヤ7とホース5とは別々に屈曲することから、ワイヤ7に局所的な曲げ応力が作用するなどし、ワイヤ7のスムーズな進退が妨げられるおそれがある。この点、本実施形態ではワイヤ7を主弁体4から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延びるようにし、屈曲時にホース5が生じさせる反力(図8の矢印参照)をワイヤ7にも及ぼすことにより、全体としての曲げ剛性を向上させ、外力に起因してワイヤ7に生じる折れや捩れを軽減させている(図10参照)。
【0036】
以上は、支持部材2から引き出した吐水ヘッド3を使用者が奥側へ移動させた場合も同様である(図9参照)。この場合、ワイヤ7およびホース5に対して奥方向への曲げ応力が生じるが、本実施形態の水栓装置1においては、屈曲時にホース5が生じさせる反力(図9の矢印参照)をワイヤ7にも及ぼすことにより、全体としての曲げ剛性が向上し、ワイヤ7に生じる折れや捩れが軽減する(図10参照)。このように、本実施形態の水栓装置1によれば、吐水ヘッド3の位置や向きに応じてワイヤ7に折れや捩れが生じやすい状況となってもワイヤ7のスムーズな進退を確保し、主弁体4を確実に開閉させることが可能である。
【0037】
また、本実施形態では水栓装置1の好適な構成例として、ワイヤ7をホース5の使用者側の面よりも奥側に配置した場合を示している(図10等参照)。こうすることにより、使用者が吐水ヘッド3を手前側に引き出し、あるいは手前側から支持部材2に戻そうとしたとき、支持部材2の開口(挿通部21の開口部分)とホース5との間にワイヤ7が挟まれ、ワイヤ7の進退に支障をきたすといった不具合が発生するのを抑制し、主弁体4の確実な開閉動作をより実現しやすい。もちろん、このような不具合の発生が抑制されるならば、ワイヤ7をホース5の使用者側の面よりも手前側に配置することもできる(図13参照)。
【0038】
あるいは、図8等に示しているように、ワイヤ7をホース5の内部の流路50に配置することも好ましい。このような水栓装置1によれば、ワイヤ7をホース5に内蔵するという比較的簡易な構成でありながらも、ホース5の反力をワイヤ7に及ぼしつつ、ワイヤ7がホース5と支持部材2の開口(挿通部21の開口部分)との間に挟まれるといった不具合が抑制される。また、こうすることで、使用者が吐水ヘッド3を手前側に引き出し、あるいは手前側から支持部材2に戻そうとしたとき、ホース5周りへワイヤ7が絡まることも抑制される。もちろん、このような不具合の発生が抑制されるならば、ワイヤ7をホース5の内部の流路50以外の箇所へ配置することもできる(図13参照)。
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態ではワイヤ7をホース5の内部の流路50に配置した場合を例示したが(図8等参照)、このほか、ホース5の被覆内にワイヤ7を挿通させるようにすることもできる(図11、図12参照)。この場合は、ホースの被覆がワイヤ7のアウターチューブ71のように機能することとなる。要は、ワイヤ7を主弁体4から切替スイッチ6にかけてホース5に沿って延びるように配置することができればその具体的態様は特に限定されず、このように配置することより、ホース5とともにワイヤ7が屈曲したときの反力をホース5から受けるようにし、外力に起因してワイヤ7に生じる折れや捩れを軽減させることができる。
【0040】
また、上述した実施形態では、切替スイッチ6の具体例として、押圧操作され、スラストロック機構62と連動して進退動作を繰り返す構造のスイッチを例示したがこれも好適例にすぎず、この他、例えば左右方向あるいは上下方向に倒れるレバーなどを切替スイッチ6として用いてもよい。要は、スイッチを操作することによってワイヤ7を所定量進退させて主弁体4を開閉することができる切替スイッチであれば、その具体的な構成が特に限定されることはない。
【符号の説明】
【0041】
1:水栓装置
2:支持部材
3:吐水ヘッド
4:主弁体(開閉弁)
5:ホース
6:切替スイッチ
7:ワイヤ
8:カウンター
21:挿通部
50:(ホース内部の)流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンターの上方で固定される支持部材と、該支持部材に着脱自在に支持されて水を吐出する吐水ヘッドとを有する水栓装置において、
前記カウンターの下方に設けられ、前記吐水ヘッドへ水を供給する流路を開放または閉止する開閉弁と、
該開閉弁を通過した水を前記吐水ヘッドまで導く流路を内部に有する可撓性のホースと、
前記吐水ヘッドに設けられ、当該吐水ヘッドからの吐水と止水とを切り替えるために使用者が操作を行う切替スイッチと、
該切替スイッチの操作に伴って進退することで前記開閉弁を開閉動作させるワイヤと、
前記吐水ヘッドを着脱自在に支持し、前記ホースおよび前記ワイヤのそれぞれを挿通させる挿通部をその内部に有する前記支持部材と、
を備え、
前記ワイヤは、前記開閉弁から前記切替スイッチにかけて前記ホースに沿って延び、前記ホースとともに同方向に屈曲したときの反力を、当該ホースから受けるよう構成されていることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記ワイヤは、前記ホースの使用者側の面よりも奥側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記ワイヤは、前記ホースの内部の流路に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の水栓装置。
【請求項1】
カウンターの上方で固定される支持部材と、該支持部材に着脱自在に支持されて水を吐出する吐水ヘッドとを有する水栓装置において、
前記カウンターの下方に設けられ、前記吐水ヘッドへ水を供給する流路を開放または閉止する開閉弁と、
該開閉弁を通過した水を前記吐水ヘッドまで導く流路を内部に有する可撓性のホースと、
前記吐水ヘッドに設けられ、当該吐水ヘッドからの吐水と止水とを切り替えるために使用者が操作を行う切替スイッチと、
該切替スイッチの操作に伴って進退することで前記開閉弁を開閉動作させるワイヤと、
前記吐水ヘッドを着脱自在に支持し、前記ホースおよび前記ワイヤのそれぞれを挿通させる挿通部をその内部に有する前記支持部材と、
を備え、
前記ワイヤは、前記開閉弁から前記切替スイッチにかけて前記ホースに沿って延び、前記ホースとともに同方向に屈曲したときの反力を、当該ホースから受けるよう構成されていることを特徴とする水栓装置。
【請求項2】
前記ワイヤは、前記ホースの使用者側の面よりも奥側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の水栓装置。
【請求項3】
前記ワイヤは、前記ホースの内部の流路に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の水栓装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−76212(P2013−76212A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215159(P2011−215159)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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