説明

水生動物用飼料及びその製造方法

【課題】焼酎粕は昨今の焼酎ブームにより大量発生しているが、固液分離が難しいため従来は肥料にするか海洋投棄するしか方法がなかった。
【解決手段】焼酎粕に蚕蛹粉末・大豆粉末・脱脂粉乳・動物性蛋白質・材料凝固剤等を加えて攪拌し、加熱し水分を減少させる。更に乳酸菌またはイースト菌を加え発酵させプロバイオテックすする事により栄養豊富で免疫力のある水生動物の飼料と成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性動物に給餌する道具と給餌方法及びその餌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水生動物に給仕する方法としては、空中から餌を投入するか、下記特許文献1に示す様に餌の入った容器を水中に投入し、そこからもれ出てくる餌を供給する方法がある。
【0003】
一方、焼酎を取り出した後の焼酎粕は有益な活用方法がなく,一部は肥料などに使われるが多くは廃棄物として海洋投入または埋め立て処分しているのが現状である。
【0004】
それに対して下記特許文献2の様に飼料化する試みがなされているが、事業化されるには至っていない。
【特許文献1】特開平11−318263
【特許文献2】特開平−5194067
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
養殖をしている魚などの水生動物に給餌する場合、適当な量を供給するのは難しく、過大に与えると残渣が残り水質を汚染し、過少では成長が遅くなるという問題があった。
【0006】
特にひらめ等は底に沈んだ餌は食べず、水中にあるものしか捕食しないためどうしても底に残渣が溜まる傾向がある。
【0007】
従来の様に空中からばらまくように給餌すると、「餌に含まれる窒素のうち魚の体内に取り込まれるのは、そのわずか25%に過ぎない。残りは糞尿などいろいろな有機物になって水中に溶け込む」(国際養殖産業会)事になり、それは残渣とともに底に滞留してしまう。
【0008】
これは養殖用水槽では水質汚濁の原因となり、海洋や沼沢では環境汚染を生じる原因となる。
【0009】
このように糞尿や残餌から発生するアンモニア・亜硝酸などが多くなると、水中の富栄養化が進行する。
【0010】
内湾養殖での赤潮の発生率が高いのはこれが原因である。
【0011】
これまでヒラメによる食性や生態の調査から見ると、ヒラメは海底で生活しているが、撒かれた餌は水中の落下過程でしか捕食せず、落下し海底にある餌は食べることがない。
【0012】
したがって1回分の量の餌を供給しても実際に食する餌は不十分であり、養殖水生動物の成長を妨げる事になる。
【0013】
一方、焼酎粕は昨今の焼酎ブームにより大量発生しているが、固液分離が難しいため従来は肥料にするか海洋投棄するしか方法がなかった。
【0014】
しかし海洋投棄は環境汚染の問題があり、近々禁止される事が決まっている。
【0015】
埋め立て処分には処分場の確保が問題であり、さらには廃棄物の分解により悪臭が発生するという問題もある。
【0016】
肥料化に関しては供給過剰な状況であり、多量に発生する焼酎粕の一部しか利用できていない。
【0017】
また、特許文献2に示すように動物の飼料として使う方法も試みられているが、焼酎を造る時に行う1次発酵後の粕に配合飼料や穀物を混ぜただけでは、餌として消化吸収が悪く、また保存性が悪いと言う問題があった。
【0018】
焼酎粕は水分が95%を占めて流動性が高く、また固液分離が困難なため運搬が難しい。
【0019】
焼酎粕新しい利用技術分野開拓の一環として養殖魚の餌料として再利用されることが期待されているが、従来の方法では産業上の利用に至っているものは無い。
【課題を解決するための手段】
【0020】
半練状態の水生動物用餌を粒状に丸めたもの、またはペレット状態の水生動物の餌を、糸の先端につけ、水面から所定の深さにつるして給餌する。
【0021】
前記糸の先端は瘤状になっており、捕食された餌は容易に外れるが、自然には外れにくくしてある。
【0022】
また焼酎粕の利用方法として、焼酎粕に、蚕蛹粉末、魚粉を添加し、加熱後乳酸菌またはイースト菌を加え2次発酵させ、水生動物水生動物用飼料への転化を行う。
【発明の効果】
【0023】
この給餌方法により餌は常に水中にあるので、養殖魚はいつでも必要なだけ、確実に捕食する事ができ、個体差を減らすことができる。
【0024】
また残餌が発生する心配がなく、水質汚濁も少ないので、自然界に於いては環境悪化を防ぐともに、水槽に於いては水の交換の手間が省ける。
【0025】
1回で2,3度分の捕食分が供給できるので、1〜2日おきに給餌をすれば良く、この面でも労働の集約も実現できる。
【0026】
また、処分が難しかった焼酎粕を、水生動物の飼料とする事によって、廃棄物を有効活用する効果がある。
【0027】
従来の食品産業から発生する廃棄物は有機性であり有害物資をほとんど含まないという利点があるが、水分が95%も含まれ、固液分離が難しく、飼料としてはあまり活用されていなかった。
【0028】
本発明を実施し、半固体化し、プロバイオテックス化することにより、従来活用が難しく、廃棄するにも多大な費用が掛かり、環境汚染にも問題の多かった焼酎粕を水生動物の飼料として有効に活用することが可能になる。
【0029】
この餌料は栄養豊富なだけではなく、乳酸菌またはイースト菌を加え発酵させることにより、魚の腸内菌層のバランスを改善し、免疫活性化の働きを促進するという有益な作用をもたらすため、魚は狭い水槽内でも病原菌の増殖による感染の拡大を抑制される。
【0030】
ヒラメの養殖実験では2年半病気にならず、これは2次発酵に使用した菌の効果により魚類の免疫が活性化している事によると見られる。
【0031】
更に半固体化することにより、糸につるす時に成型したり、箱詰めをし、運搬、保存するのを容易にする。
【0032】
イースト菌又は乳酸菌で2次発酵させることで長期間の保存が可能になる。
【発明を実施する為の最良の方法】
【0033】
半練状態の水生動物用餌を粒状に丸めたもの、またはペレット状態の水生動物の餌を、先端を小さな瘤状にし、所定の長さにした釣り糸の先端に、魚の一口サイズの大きさに成型して取り付け、釣り糸を水中に吊し給餌する。
【0034】
これにより残餌が発生する心配がなく、1回の給餌で2,3度、捕食することで養殖魚のそれぞれの個体に確実に給餌できる。
【0035】
この餌は団子形状とし、成型しやすいが水中で溶けにくい堅さに仕上る。
【0036】
釣り糸の先についた団子状の餌は魚が食べたとき餌だけを食べ、釣り糸は簡単に外れる。
【0037】
また、釣り糸の先端を小さな瘤状にすることで、団子状の餌を割り、その中に釣り糸の先端を入れ、固める。
【0038】
餌は下記の原料及び製造方法を用いたものを使用する事ができる。
【0039】
焼酎粕に蚕蛹粉末・大豆粉末・脱脂粉乳・動物性蛋白質・材料凝固剤等を加えて攪拌する。
【0040】
これらを加えるのは粗蛋白質成分を補助する役目もある。
【0041】
電熱、ガスの炎等一般的熱源による加熱またはマイクロ波による照射加熱による蒸発工程を加え全体の水分を少なくする。
【0042】
加熱後、乳酸菌またはイースト菌の繁殖しやすい所定の温度まで下がった後に乳酸菌またはイースト菌を投入する。
【0043】
その後発酵過程を経ていわゆるプロバイオテックス餌料に生成する。
【0044】
前記プロバイオテックス餌料は、まだ半凝固状態なのでふすま・乾燥魚粉末・煎り大豆粉末などを加えて練り上げ、成形しやすい堅さに仕上げる。
【0045】
これにより、箱詰めや容器入れが可能になり保存・輸送などに対応でるようになる。
【0046】
また、水棲動物に給餌し易いように小粒丸状態や団子状態に成型仕上げる事も可能である。
【0047】
毎年大量に排出される焼酎粕は固液分離が困難な為、農・水産業資源として再資源化が困難で、廃棄する割合が高かったが、前述のように水生動物飼料化する事により資源の有効活用と環境汚染の防止を図ることができる。
【産業上の利用の可能性】
【0048】
生け簀又は水槽で水生動物の養殖を行う場合、餌の供給の労力が軽減され、また水質の悪化が防げるため、水交換の労力も軽減される。
【0049】
また水生動物の早い成長が得られる。その為淡水動物のみならず海洋動物の養殖でも立地条件が緩和される。
【0050】
更に水生動物の早い成長が得られるため、生簀等の効率的な運用ができる。
【0051】
これらの相乗的な効果で、今まで不可能に近かった内陸で海洋生物の養殖も可能となる。
【0052】
今まで廃棄に経費を掛けていたが、製品を販売する事もできる。
【0053】
またこの原料及び工程は安価であるために事業化が可能である。
【0054】
更に、この飼料は栄養価が高く、通常の飼料で飼育するより約半分の期間で養殖動物の出荷が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】 本発明による餌料製造工程図である。
【図2】 本発明の釣り糸方式による給餌システムである。
【符号の説明】
【0056】
14.棒
15.釣り糸
16.練り餌
17.魚
18.釣り糸先端部の瘤状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼酎粕、蚕蛹粉末、魚粉よりなり、水分蒸発により半固形状態に加工され乳酸菌またはイースト菌を投入した水生動物用飼料。
【請求項2】
一般的熱源による加熱またはマイクロ波による照射加熱による蒸発工程を備える特許請求項1の水生動物飼料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−236368(P2007−236368A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103599(P2006−103599)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(591057647)
【Fターム(参考)】