説明

水貯留槽用の構造部材

【課題】構造部材を大型化した場合であっても、構造部材の設置を容易に行うことのできる水貯留槽用の構造部材を提供する。
【解決手段】構造部材は、基台と、その基台の裏面に立設された支持脚とが樹脂材料より一体に成形されたものである。基台を構成する基板16には、環状部17bが立設されている。環状部17bの内側には、環状部17bの内壁間を連結する第1の把持部41が設けられている。第1の把持部41は、並設される一対の側板41aの両端部が環状部17bの内壁に連結されてなり、それら一対の側板41aは架橋部41bによって一体に形成されたものである。こうした第1の把持部41は、環状部17bとの間隙に手を挿入して把持可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み上げた状態で複数配置して使用される水貯留槽用の構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
人口が集中している地域では、建造物、アスファルト舗装等によって地面が覆われることにより、雨水等の地下への浸透が阻害されている。このような状況下では、集中豪雨の発生等によって、いわゆる都市型水害が発生し易い。また、河川の周辺の地域においても水害が発生し易い。そうした水害を防止する対策の一つとして、水貯留槽の設置が有効である。水貯留槽は、その槽内に雨水等を流入させることで、地中に多量の雨水等を一時的に貯留したり、貯留した雨水等を土壌へ浸透させたりする設備である。そうした水貯留槽の貯留空間は、複数の構造部材によって確保されている(例えば特許文献1参照)。こうした構造部材は、基台と同基台の裏面に立設された支持脚とを備え、複数の構造部材を積み上げることで貯留空間を確保するように構成されている。具体的には、基台の表面同士及び裏面同士を合わせるようにして積み上げることにより積層構造体を形成する。
【特許文献1】特開2003−313904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
積層構造体の設置作業においては、所定の位置に配置した構造部材上を作業員が歩行しつつ、その構造部材上に新たな構造部材を作業員が積み上げるといった作業が繰り返される。そうした一連の設置作業は、構造部材を大型化することにより、積層構造体を構成する構造部材の数を減少することができるため、効率化されるようになる。ところが、構造部材の大型化に伴って構造部材の設置が困難となるという問題があった。
【0004】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造部材を大型化した場合であっても、構造部材の設置を容易に行うことのできる水貯留槽用の構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、基台と、該基台の裏面に立設され、前記基台を支持するための支持脚とを備え、積み上げた状態で複数配置されることにより、水貯留槽の貯留空間を確保するための水貯留槽用の構造部材であって、前記構造部材の設置に際して、把持可能な把持部を設けたことを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、構造部材を設置する作業を行う際に、構造部材の把持部を把持して例えば運搬、配置等を行うことができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水貯留槽用の構造部材において、前記基台に形成されるとともに前記基台の表面に開口する環状部の内壁間を連結してなる第1の把持部を含むことを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、環状部の開口から手を挿入して第1の把持部を把持することで、基台の表面を上方にして構造部材を設置することが容易となるため、こうした第1の把持部は、例えば基台の裏面同士を合わせるようにして構造部材を積み上げる際の使用に好適である。また、基台の表面から突出させずに第1の把持部を設けることが可能となるため、基台の表面同士を合わせるようにして構造部材を積み上げるに際して、第1の把持部が障害になることを回避することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水貯留槽用の構造部材において、前記第1の把持部よりも前記基台の裏面側には、前記環状部の内壁間を連結する連結補強部材が設けられていることを要旨とする。
【0009】
この構成によれば、第1の把持部が設けられた環状部は、連結補強部材によって補強されるため、第1の把持部を把持して構造部材を持ち上げるに際して、環状部が変形する不具合を抑制することができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水貯留槽用の構造部材において、前記基台の両側部において前記基台の両側縁に沿うように設けられる側部支持脚を備え、前記側部支持脚は、前記基台の両側縁に沿って間隔をおいて配置される複数の支持脚から構成され、前記把持部は、前記側部支持脚を構成する支持脚の間において前記基台に立設される第2の把持部を含むことを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、第2の把持部を把持することで、基台の裏面を上方に向けた状態で運搬及び配置することが容易となるため、こうした把持部は、例えば基台の表面同士を合わせるようにして構造部材を積み上げる際の使用に好適である。そして、基台の裏面を上方に向けた状態で配置した構造部材上にて、積み上げ作業を行うに際して、第2の把持部は、側部支持脚の間の歩行の障害となり難い。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の水貯留槽用の構造部材において、前記基台の両側部において前記基台の両側縁に沿うように設けられる側部支持脚を備え、前記側部支持脚は、前記基台の両側縁に沿って間隔をおいて配置される複数の支持脚から構成され、前記把持部は、前記第1の把持部と、前記側部支持脚を構成する支持脚の間において前記基台に立設される第2の把持部とを含むことを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、第1の把持部及び第2の把持部を使用することで、基台の表面同士及び裏面同士を交互に合わせるようにして構造部材を順次積み上げる作業を円滑に行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構造部材を大型化した場合であっても、構造部材の設置を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
図1(a)及び図1(b)に示すように、水貯留槽用の構造部材11は、平面四角形状の基台12と、その基台12の裏面に立設された支持脚13とが樹脂材料より一体に成形されたものである。この構造部材11は、地中において積層構造体を形成するために用いられる。具体的には、地面を掘削して形成した穴の底面に構造部材11の表面を合わせるように配置した後に、基台12の裏面同士と表面同士とを合わせるようにして構造部材11を順次積み上げることで、積層構造体が形成される。このように形成された積層構造体は、水貯留槽の貯留空間を確保するとともに貯留空間上における地面を支持する機能を果たす。なお、以下の説明における両側部は、図1(a)及び図1(b)に示される構造部材11の基台12において対向する第1側部14及び第2側部15をいう。
【0016】
図1(a)に示すように、基台12は、四角形状の枠を有する基板16とその枠内の表面上に配設されるリブ17とが一体に成形されたものである。基台12の表面は、基板16の枠とリブ17とによって面一となるように形成されている。基板16には、その表裏面に開口する貫通孔16aが複数貫設され、これら貫通孔16aは水の流路及び空気抜きとして機能する。また、基板16には、その表面から突出する嵌合凸部18が所定箇所に複数形成されている。嵌合凸部18の近傍には、その嵌合凸部18を嵌合することのできる嵌合凹部19aがリブ17等によって形成されている。こうした嵌合凸部18及び嵌合凹部19aは、基台12の表面と別の基台12の表面とを合わせるようにして構造部材11を積み上げるに際して嵌合される。具体的には、構造部材11は、その両側部を合わせるようにして積み上げる際に、嵌合凸部18と嵌合凹部19aとが嵌合され、こうした嵌合により、基台12の表面側において構造部材11同士がずれるという不具合が抑制される。また、本実施形態の構造部材11は、両側部が交差するようにして積み上げることもできる。こうした積み上げの場合には、嵌合凸部18は、基板16の所定箇所に形成された嵌合凹部19bに嵌合させることができる。
【0017】
支持脚13は基板16の表面に開口する有底四角筒状をなすとともに、基端部から先端部に向かうにしたがって縮径する四角錐台状に形成されている。こうした支持脚13は、基台12の四隅に立設された隅部脚20と、基台12の四側部の中間部に立設された中間脚21と、基台12の中央に立設された中央脚22とから構成されている。本実施形態の中間脚21は基台12の一側部について二本設けられ、中央脚22は四本設けられている。支持脚13の基端部に接続されるリブ17には、切り欠き部17aが形成され、こうした切り欠き部17aは水の流路及び空気抜きとして機能する。
【0018】
隅部脚20の先端部には、凹凸状をなす嵌合部23が形成されている。この嵌合部23は、複数の先端壁23aとそれら先端壁23aを段差状に連ねる立壁23bとから構成されている。中間脚21の先端部及び中央脚22の先端部にも、隅部脚20の嵌合部23と同形状をなす嵌合部23が形成されている。図2に示すように、それら嵌合部23は、基台12の裏面と別の基台12の裏面とを合わせるようにして構造部材11の複数を積み上げるに際して嵌合される。こうした嵌合により、積み上げを終えた構造部材11がずれるという不具合が抑制される。
【0019】
先端壁23aには、空気抜き等を目的として、貫通孔が形成されている。このように嵌合部23に貫通孔を形成する場合には、嵌合部23の強度を確保するという観点から、立壁23bには貫通孔を形成せずに先端壁23aに貫通孔を形成することが好ましい。なお、本実施形態の立壁23bは略垂直な面を形成しているため、積み上げられた構造部材11に対して水平方向に沿って外力が加わった際に、立壁23bの面同士が当接するため、嵌合状態が維持され易い。
【0020】
図1(a)及び図1(b)に示すように、第1側部14には、隅部脚20、中間脚21、及び隅部脚20が基台12の側縁に沿って順に配列されることで、第1側部支持脚24が構成されている。第2側部15においても同様に、隅部脚20、中間脚21、及び隅部脚20が基台12の側縁に沿って順に配列されることで、第2側部支持脚25が構成されている。
【0021】
第1側部支持脚24と第2側部支持脚25との中間部には、それら側部支持脚24、25に沿うようにして中間脚21、中央脚22及び中間脚21が順に配列されることで、中央部支持脚26が構成されている。この中央部支持脚26は、中間脚21、中央脚22及び中間脚21の脚列と、同じ配列の脚列とが並設された二列の脚列から構成されている。一方、第1側部支持脚24は、隅部脚20、中間脚21、及び隅部脚20が順に列をなす一列の脚列から構成され、第2側部支持脚25も同様に一列の脚列から構成されている。このように中央部支持脚26を構成する支持脚13の本数は、第1側部支持脚24を構成する支持脚13の本数及び第2側部支持脚25を構成する支持脚13の本数よりも多く設定されている。これにより、中央部支持脚26の先端面の面積は、第1側部支持脚24の先端面の面積よりも大きく且つ第2側部支持脚25の先端面の面積よりも大きくなるように構成されている。本実施形態では、中央部支持脚26の先端面の面積は、第1側部支持脚24(第2側部支持脚25)の面積の略二倍に設定されている。なお、各側部支持脚24、25及び中央部支持脚26の先端面の面積は、それら支持脚24、25及び26の先端壁における貫通孔の有無には影響しない。すなわち、先端面の面積とは、先端壁23aに貫通孔が存在しないと仮定した場合の先端壁23aの面積に該当する。
【0022】
また、第1側部支持脚24と中央部支持脚26との間隔は、第1側部支持脚24の基端部分の幅よりも広く設定されることで、構造部材11の大型化及び軽量化が図られている。
【0023】
上述したように第1側部支持脚24及び第2側部支持脚25は、複数の支持脚13から構成されている。そして構造部材11は、第1側部支持脚24を構成する中間脚21の間と第2側部支持脚25を構成する中間脚21の間とを通じる第1分割線28によって平面を基準として2つの領域に区画されている。このため、構造部材11は第1分割線28に沿って分割することで略同一形状の二つの分割部材として使用することができる。
【0024】
一方、中央部支持脚26は、中間脚21、中央脚22及び中間脚21の一列と同じ配列の一列とから構成されている。そして構造部材11は、それら列間を通じる第2分割線29によって平面を基準として2つの領域に区画されている。このため、構造部材11は第2分割線29に沿って分割することで略同一形状の二つの分割部材として使用することができる。本実施形態の構造部材11は、最大で四つの分割部材として使用することができる。
【0025】
第1分割線28及び第2分割線29で示した境界部位にスリットを形成したり、その境界部位を薄肉板状に形成したりすることで、その部位を切断し易い構成にすることができる。こうした場合、施工現場であっても、構造部材11を上述した分割部材に分割することが容易となる。
【0026】
図1(a)に示すように、基板16の各領域の略中央には、第1の把持部41が設けられている。第1の把持部41は、図2(a)及び図2(b)に示すように、円環状をなす環状部17bの内側に設けられている。環状部17bは、リブ17の一部分として、基板16に立設され、基台12の表面に開口している。そして、第1の把持部41は、環状部17bの内壁間を連結して構成される。
【0027】
第1の把持部41は、並設される一対の側板41aの両端部が環状部17bの内壁に連結されるとともに、それら一対の側板41aが架橋部41bによって一体に形成され、手で握ることのできる形状をなしている。こうした第1の把持部41は、環状部17bとの間隙に手を挿入して把持可能に構成されている。図2(a)及び図2(b)に示すように、第1の把持部41よりも基台12の裏面側には、環状部17bの内壁間を連結する連結補強部材17cが設けられている。連結補強部材17cは、環状部の内壁に沿った半円形の板状をなし、連結補強部材17cが環状部17bに一対設けられている。連結補強部材17cには、貫通孔が複数貫設され、これら貫通孔は水の流路及び空気抜きとして機能する。なお、図1(a)に示すように各第1の把持部41の延びる方向(長手方向)は、基台12の対角線の延びる方向と異なり、かつ基台12の側縁の延びる方向と異なることで、基台12の隅方向から把持し易いように構成されている。また、第1の把持部41の延びる方向には環状部17bを介してリブが接続され、第1の把持部41の連結部位の強度が高められている。
【0028】
図1(b)に示すように、第1側部支持脚24を構成する隅部脚20と中間脚21との間において、基板16の裏面には側面視四角形状の第2の把持部42が立設されている。第2側部支持脚25を構成する隅部脚20と中間脚21との間においても、略同一形状の第2の把持部42が立設されている。図3に示される第2の把持部42は、基板16の表面に開口する中空状をなすとともに基板16と一体に形成されている。第2の把持部42は、四角筒状をなす支持台43と、支持台43の先端両側部から突出する支持部44と、支持部44を連結する本体部45とから構成されている。本体部45は、並設される一対の側板45aの両端部が支持部44に連結されるとともに、それら一対の側板45aが架橋部45bによって一体に形成されることで、手で握ることのできる形状をなしている。こうした本体部45は、支持台43との間隙に手を挿入して把持可能に構成されている。
【0029】
支持台43は、基端部から先端部に向かうにしたがって幅及び厚さが小さくなるように形成されている。そして、構造部材11の輸送時、保管時等において、構造部材11の表面に対して、その構造部材11と異なる構造部材11の裏面を合わせるようにして積み上げるに際して、支持台43の開口から第2の把持部42が部分的に挿入されるように構成されている。
【0030】
図1(b)に示すように、中央部支持脚26を構成する中間脚21と中央脚22との間において、基板16の裏面には側面視四角形状の第3の把持部46が立設されている。第3の把持部46は、図3に示される第2の把持部42と略同一形状をなしている。
【0031】
上述した第2の把持部42は、隅部脚20と中間脚21との間隙を通じる水の流れを制限する機能も発揮する。第3の把持部46も同様に、中間脚21と中央脚22との間隙を通じる水の流れを制限する機能も発揮する。
【0032】
第2の把持部42及び第3の把持部46を、それら基端から先端までの長さと支持脚13の長さとが略同一となるように形成した場合には、構造部材11の裏面同士を重ね合わせるようにして積み上げた際に、第2の把持部42の先端面同士及び第3の把持部46の先端面同士が当接されるようになる。このように構成した場合、上方からの荷重に対する耐荷重性が高まる。
【0033】
図1(b)に示すように、第1側部支持脚24と中央部支持脚26との間に位置する基板16の裏面と、支持脚13、第2の把持部42及び第3の把持部46の側面との境界部分には、その境界部分を塞ぐように傾斜する傾斜面31が形成されている。第2側部支持脚25と中央部支持脚26との間に位置する基板16の裏面と、支持脚13第2の把持部42及び第3の把持部46の側面との境界部分にも同様に、その境界部分を塞ぐように傾斜する傾斜面31が形成されている。
【0034】
次に、本実施形態の構造部材11の使用状態について説明する。
水貯留槽の設置作業時において、図4に示すように構造部材11を積み上げるに際して、第1の把持部41を把持することで、基台12の表面を上方に向けた状態で構造部材11を容易に運搬及び配置することができる。一方、第2の把持部42又は第3の把持部46を把持することで、基台12の裏面を上方に向けた状態で構造部材11を容易に運搬及び配置することができる。また、第1の把持部41及び第2の把持部42を利用することで、構造部材11を容易に裏返すことができるため、基台12の表裏面を積み上げの態様に応じた向きに円滑に変更することができる。本実施形態では、第1の把持部41及び第2の把持部42がそれぞれ複数設けられているため、構造部材11を裏返す作業の作業性は極めて良好である。
【0035】
基台12の裏面を上方に向けた状態で配置した構造部材11上にて、積み上げ作業を行うに際して、上述のように配置された第2の把持部42及び第3の把持部46は、各側部支持脚24、25と中央部支持脚26との間の歩行の障害となり難い。
【0036】
また、構造部材11を積み上げる際には、支持脚13の先端面同士を突き合わせるようにして嵌合部23を嵌合させる。こうした構造部材11の積み上げに際して、作業員は、所定の位置に配置した構造部材11上を歩行しつつ、さらにその構造部材11上に新たな構造部材11を積み上げる。このとき、積み上げを終えた構造部材11がずれるという不具合は、嵌合部23の嵌合によって抑制される。
【0037】
また、各支持脚13は同形状をなすとともに、中央部支持脚26を構成する支持脚13の本数は、第1側部支持脚24を構成する支持脚13の本数及び第2側部支持脚25を構成する支持脚13の本数よりも多く設定されている。すなわち、中央部支持脚26の先端面の面積は、第1側部支持脚24の先端面の面積よりも大きく且つ第2側部支持脚25の先端面の面積よりも大きいため、こうした中央部支持脚26によって、基台12の中央部は安定して支持され易くなる。このため、単一の構造部材11上に作業員が乗った際において、構造部材11の中央部分における過剰な沈み込みが抑制される。
【0038】
このように構造部材11上に新たな構造部材11を積み上げる作業が繰り返されることで、積層構造体が形成される。ここで、図5に示すように、本実施形態の構造部材11は、一対の構造部材11を第1及び第2側部支持脚25が隣り合うようにして配置して、それら構造部材11に跨って構造部材11を積み上げることもできる。このように積み上げて構成された積層構造体では、支持脚13の嵌合を利用して一対の構造部材11を別の構造部材11で連結する構造となるため、積層構造体の安定性を高めることができる。また、上述したように第1及び第2側部支持脚25を構成する中間脚21は、それぞれ一対設けられている。このため、図6に示すように四つの構造部材11に跨って構造部材11を積み上げることもできる。
【0039】
図5及び図6に示されるように構造部材11を積み上げる場合には、上段に配置された構造部材11の周囲には、構造部材11を分割した分割部材を配置することで、ブロック状の積層構造体を形成することができる。図5の態様では、二分割した分割部材を上段に配置された構造部材11の両隣に配置させることでブロック状の積層構造体を形成することができる。また、図6の態様では、二分割した分割部材を上段に配置された構造部材11の周囲において合計6個配置させることでブロック状の積層構造体を形成することができる。
【0040】
一方、基台12の表面は、基板16の枠とリブ17とによって面一となるように形成されているため、構造部材11の表面同士を重ね合わせるようにして構造部材11を積み上げるに際しては、基板16の枠同士、及びリブ17同士を当接させることができる。こうした当接によって、積層構造体について、耐荷重性を向上することができるとともに、安定化を図ることができる。なお、構造部材11の表面同士を重ね合わせるようにして構造部材11を積み上げるに際しては、隣接して配置される一対又は四つの構造部材11に跨って構造部材11を積み上げることができる。
【0041】
そして、積層構造体を設置した水貯留槽上の整地等が行われることで、水貯留槽の設置が完了する。なお、水貯留槽には、槽内に水を流入するための流入管が水貯留槽の上部又は下部に接続されている。また、槽内から水を排出させる排出管が水貯留槽の下部に接続されている。また、必要に応じて水貯留槽内の水を強制的に排出させるためにポンプを設けてもよい。
【0042】
こうした水貯留槽内に流入する水には、土砂が含まれていることが多く、水貯留槽内に流入した土砂は、積層構造体の最下段に堆積する。積層構造体の最下段を構成する構造部材11は、基板16の裏面を上方に向けて配置されている。このため、基板16の裏面上に土砂が堆積し易く、所定の期間をおいて堆積した土砂を除去する作業が必要となる。土砂を除去するには、高圧水流を利用して基板16の両側縁に沿った方向へ土砂を洗い出す。具体的には、自走可能な高圧洗浄機を用いて積層構造体を洗浄する。高圧洗浄機は、第1側部支持脚24と中央部支持脚26との間に位置する基板16の裏面上を自走可能に構成されている。こうした高圧洗浄機を基板16の両側縁に沿った方向へ走行させると、土砂は高圧洗浄機の走行する方向とは反対の方向へ洗い出される。このとき、基板16の裏面には、傾斜面31が形成されているため、高圧洗浄機のノズルが基板16の裏面と支持脚13の基端との境界部位に引っ掛かるという不具合を抑制することができる。基板16の裏面に堆積する土砂は傾斜面31によって中央に寄せ集められ、そうした土砂を効率よく取り除くことができる。
【0043】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態の構造部材11では、第1の把持部41、第2の把持部42又は第3の把持部46を把持して構造部材11を運搬し、その構造部材11を所定の位置に配置することができる。このため、構造部材11を大型化した場合であっても、構造部材11の設置を容易に行うことができる。また、貫通孔16aを多数形成することで強度の低下した構造部材11において、第1の把持部41を設けることで、第1の把持部41を構造部材11自体の補強材としても機能させることができる。
【0044】
(2) 環状部17bの開口から手を挿入して第1の把持部41を把持することで、基台12の表面を上方にして設置することが容易となるため、こうした第1の把持部41は、例えば基台12の裏面同士を合わせるようにして構造部材11を積み上げる際の使用に好適である。また、第1の把持部41は、基台12に形成される環状部17bの内壁間を連結して構成されている。この構成によれば、基台12の表面から突出させずに第1の把持部41を設けることが可能となる。このため、基台12の表面同士を合わせるようにして構造部材11を積み上げるに際して、第1の把持部41が障害になることを回避することができる。
【0045】
(3) 環状部17bには、その内壁間を連結する連結補強部材17cが設けられることで、環状部17bが補強されるため、第1の把持部41を把持して構造部材11を持ち上げるに際して、環状部17bが変形する不具合を抑制することができる。
【0046】
(4) 第2の把持部42を把持することで、基台12の裏面を上方にして設置することが容易となるため、こうした把持部42、46は、例えば基台12の表面同士を合わせるようにして構造部材11を積み上げる際の使用に好適である。第2の把持部42は、各側部支持脚24、25と中央部支持脚26との間の歩行の障害となり難いため、積み上げ作業の作業性は十分に確保される。また、第1の把持部41及び第2の把持部42を使用することで、基台12の表面同士及び裏面同士を交互に合わせるようにして構造部材11を順次積み上げる作業を円滑に行うことができるようになる。また、第1の把持部41及び第2の把持部42を利用することで、基台12の表裏面を積み上げの態様に応じた向きに円滑に変更することができる。
【0047】
(5) 積み上げを終えた構造部材11がずれるという不具合は、各側部支持脚24、25及び中央部支持脚26の嵌合によって抑制される。また、中央部支持脚26の先端面の面積は、第1側部支持脚24の先端面の面積よりも大きく且つ第2側部支持脚25の先端面の面積よりも大きいため、こうした中央部支持脚26によって、基台12の中央部は安定して支持され易くなる。このため、単一の構造部材11上に作業員が乗った際において、構造部材11の中央部分における過剰な沈み込みが抑制される。従って、構造部材11を大型化及び軽量化した場合であっても、所定の位置に配置した構造部材11の安定性を高めることが容易である。よって、積層構造体の設置作業を円滑に行うことのできる構造部材11が提供される。また、図2に示すように構造部材11を、その両側部を合わせるようにして積み上げる際に、各側部支持脚24、25と、中央部支持脚26との間から嵌合部23を視認することができるため、嵌合部23同士が確実に嵌合されているか否かを確認することができる。
【0048】
(6) 支持脚13は、基台12の表面に開口する有底筒状をなすとともに基端部から先端部に向かうにしたがって縮径する四角錐台状に形成されている。この構成によれば、構造部材11の輸送時、保管時等において、構造部材11の表面に対して、その構造部材11と異なる構造部材11の裏面を合わせるようにして積み上げるに際して、基台12の表面の開口から支持脚13を挿入することができる。すなわち、ネスティング可能な構成であるため、複数の構造部材11の基台12同士を支持脚13の長さよりも接近させた状態として輸送、保管等を行うことができる。従って、輸送時、保管時等において、構造部材11の占める容量を小さくすることができる。また、各側部支持脚24、25と、中央部支持脚26との間にフォークリフトのフォークを挿入可能に構成することもできるため、フォークリフトを用いて効率よく運搬することもできる。
【0049】
(7) 中央部支持脚26は、中間脚21、中央脚22及び中間脚21の脚列と、同じ配列の脚列とが並設された二列の脚列から構成されている。図3に示すように、本実施形態の構造部材11は、一対の構造部材11を第1及び第2側部支持脚25が隣り合うようにして配置して、それら構造部材11に跨って構造部材11を積み上げることもできる。このとき、積み上げる構造部材11の中央部支持脚26の嵌合部23は、前記一対の構造部材11において、隣り合う第1及び第2側部支持脚25の嵌合部23のいずれにも嵌合するように構成されている。このように積み上げて構成された積層構造体では、支持脚13の嵌合を利用して一対の構造部材11を別の構造部材11で連結する構造となるため、積層構造体の安定性を高めることができる。
【0050】
(8) 構造部材11は、第1側部支持脚24を構成する中間脚21の間と第2側部支持脚25を構成する中間脚21の間とを通じる第1分割線28によって平面を基準として略同一形状をなす2つの領域に区画されている。このため、構造部材11は第1分割線28に沿って分割することで略同一形状の二つの分割部材として使用することができる。図3に示すように、隣接して配置された状態の構造部材11を跨ぐようにして別の構造部材11を積み上げることで、積層構造体の強度を高めるに際して、積み上げた構造部材11に隣接する部位おいて、分割部材を配置することができる。
【0051】
(9) 積層構造体の土砂を除去するには、高圧水流を利用して基台12の両側縁に沿った方向へ土砂を洗い出す方法が有効である。このとき、第2の把持部42及び第3の把持部46は、支持脚13間の水の流れを制限する。このため、基台12の両側縁に直交する方向へ水が流れることが制限される。従って、基台12の両側縁に沿った方向へ土砂が導かれ易くなるため、積層構造体から土砂を効率的に洗い出すことが可能である。
【0052】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・ 前記環状部17bの形状を、四角環状、六角環状等に変更してもよい。
・ 図2(b)に示すように前記第1の把持部41は、その表面が環状部17bの表面と面一となるように設けられているが、第1の把持部41を環状部17bの開口から奥まった位置に設けてもよい。
【0053】
・ 前記第2の把持部42及び第3の把持部46の少なくとも一方を省略してもよい。
・ 例えば、嵌合凸部18を把持可能な環状に形成することで、第4の把持部を構成してもよい。また例えば、第2の把持部42と同形状の第4の把持部を、前記基台12の表面から突出するように設けてもよい。このとき、構造部材11の積み上げを阻害しないように、基台12の所定位置に第4の把持部が挿入される挿入孔を形成する。第4の把持部を設ける場合、前記第1の把持部41、第2の把持部42及び第3の把持部46を省略してもよい。
【0054】
・ 前記第1の把持部41の数、第2の把持部42の数、及び第3の把持部46の数を変更してもよい。
・ 前記第1側部支持脚24は、隅部脚20、中間脚21及び隅部脚20から構成されている。第1側部支持脚24を、それら隅部脚20、中間脚21及び隅部脚20が一体化した形状に形成してもよい。第2側部支持脚25も同様に、隅部脚20、中間脚21及び隅部脚20が一体化した形状に形成してもよい。
【0055】
・ 前記中央部支持脚26は、中間脚21、中央脚22及び中間脚21から構成されている。中央部支持脚26を、それら中間脚21、中央脚22及び中間脚21が一体化した形状に形成してもよい。つまり、側部支持脚24、25の嵌合を阻害しない範囲で、中央部支持脚26の外周寸法を適宜設定することにより、中央部支持脚26の先端面の面積を、第1側部支持脚24の先端面の面積よりも大きく且つ第2側部支持脚25の先端面の面積よりも大きく設定することで、上記(5)に記載した作用効果を得ることもできる。
【0056】
・ 前記第1側部支持脚24の先端面の面積と、第2側部支持脚25の先端面の面積とは異なるように構成してもよい。
・ 前記中央部支持脚26の嵌合部23の形状と、第1側部支持脚24の嵌合部23の形状又は第2側部支持脚25の嵌合部23の形状とを異なるように構成してもよい。
【0057】
・ 前記中央部支持脚26を省略してもよい。
・ 前記支持脚13の形状を、三角錐台状、六角錐台状等の角錐台状の他に、円錐台状に変更してもよい。
【0058】
・ 前記支持脚13の筒部分を段差状に形成することで、支持脚13を基端部から先端部に向かうにしたがって縮径するように形成してもよい。
・ 前記支持脚13の内部にリブを形成することで、支持脚13の強度を高めることもできる。この場合、基板16の表面における支持脚13の開口から、別の構造部材11の支持脚13が挿入可能にリブを形成することで、ネスティング可能に構造部材11を構成することが好ましい。
【0059】
・ 前記支持脚13の側壁等に積層構造体としての強度を維持できる範囲において貫通孔を設けてもよい。
・ 前記基台12の形状を、平面八角形状等の形状に変更してもよい。
【0060】
・ 水貯留槽において、積層構造体と土壌との境界部分には、コンクリート製の仕切壁、樹脂製の仕切壁、防水シート等を配置させることができる。
・ 前記構造部材11は、水貯留槽内の水を水貯留槽の壁から土壌へ浸透させる機能を有する水貯留槽に適用してもよい。すなわち、水貯留槽とは、少なくとも水を貯留する機能を有する槽であることを示し、水を貯留する機能に加えて水を土壌に浸透させる機能を有する水貯留槽を含む。こうした水貯留槽の場合、積層構造体と土壌との間に水浸透シートを配置させることで、その水浸透シートを通じた水は土壌に浸透される。
【0061】
・ 前記構造部材11は、雨水を貯留して水害を防止する水貯留槽に限らずに、農業用水の水貯留槽、防火用水用の水貯留槽、噴水用の水を貯留する水貯留槽等に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(a)及び(b)は、本実施形態における水貯留槽用の構造部材を示す斜視図。
【図2】(a)は、第1の把持部の周辺を示す斜視図、(b)は、(a)における2b−2b線断面図。
【図3】第2の把持部の周辺を示す斜視図。
【図4】積み上げた状態の構造部材を示す斜視図。
【図5】積み上げた状態の構造部材を示す斜視図。
【図6】積み上げた状態の構造部材を示す斜視図。
【符号の説明】
【0063】
11…構造部材、12…基台、13…支持脚、17b…環状部、17c…連結補強部材、24…第1側部支持脚、25…第2側部支持脚、41…第1の把持部、42…第2の把持部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、該基台の裏面に立設され、前記基台を支持するための支持脚とを備え、積み上げた状態で複数配置されることにより、水貯留槽の貯留空間を確保するための水貯留槽用の構造部材であって、前記構造部材の設置に際して、把持可能な把持部を設けたことを特徴とする水貯留槽用の構造部材。
【請求項2】
前記把持部は、前記基台に形成されるとともに前記基台の表面に開口する環状部の内壁間を連結してなる第1の把持部を含むことを特徴とする請求項1に記載の水貯留槽用の構造部材。
【請求項3】
前記第1の把持部よりも前記基台の裏面側には、前記環状部の内壁間を連結する連結補強部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の水貯留槽用の構造部材。
【請求項4】
前記基台の両側部において前記基台の両側縁に沿うように設けられる側部支持脚を備え、前記側部支持脚は、前記基台の両側縁に沿って間隔をおいて配置される複数の支持脚から構成され、
前記把持部は、前記側部支持脚を構成する支持脚の間において前記基台に立設される第2の把持部を含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水貯留槽用の構造部材。
【請求項5】
前記基台の両側部において前記基台の両側縁に沿うように設けられる側部支持脚を備え、前記側部支持脚は、前記基台の両側縁に沿って間隔をおいて配置される複数の支持脚から構成され、
前記把持部は、前記第1の把持部と、
前記側部支持脚を構成する支持脚の間において前記基台に立設される第2の把持部とを含むことを特徴とする請求項2に記載の水貯留槽用の構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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