説明

水貯留槽用の構造部材

【課題】筒状脚に嵌合する機能を付与した場合であっても、実用性を高めることのできる水貯留槽用の構造部材を提供する。
【解決手段】構造部材は、基台12と同基台12に立設された筒状脚13とを金型にて一体に樹脂成形されたものである。筒状脚13の先端部には、その先端部同士を嵌合させるための嵌合部14が形成されている。嵌合部14は、第1の先端壁14aと同第1の先端壁14aよりも基端側に位置する第2の先端壁14bとを段差状に連結した凹凸状に形成されている。筒状脚13の側壁15内面には、第2の先端壁14bの内面から基端側へ延びる脚内リブ16が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積み上げた状態で複数配置して使用される水貯留槽用の構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
人口が集中している地域では、建造物、アスファルト舗装等によって地面が覆われることにより、雨水等の地下への浸透が阻害されている。このような状況下では、集中豪雨の発生等によって、いわゆる都市型水害が発生し易い。また、河川の周辺の地域においても水害が発生し易い。そうした水害を防止する対策の一つとして、水貯留槽の設置が有効である。水貯留槽は、その槽内に雨水等を流入させることで、地中に多量の雨水等を一時的に貯留したり、貯留した雨水等を土壌へ浸透させたりする設備である。このような水貯留槽の貯留空間は、複数の構造部材によって確保されている。こうした構造部材は、基台と同基台の裏面に立設された筒状脚とを備え、複数の構造部材を積み上げることで貯留空間を確保するように構成されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の構造部材では、筒状脚の先端部は凹凸状に形成されている。こうした形状をなす筒状脚は、複数の構造部材の積み上げにおいて、筒状脚の先端部同士を突き合わせるように配置されることで、それら先端部同士が嵌合するように構成されている。
【特許文献1】特開2000−352080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の構造部材では、その積み上げにおいて筒状脚の先端部同士を嵌合すべく、筒状脚の先端部には、凹凸状の嵌合部が形成されている。すなわち、その嵌合部は、第1の先端壁と同第1の先端壁よりも基端側に位置する第2の先端壁とそれら先端壁を段差状に連結した凹凸状に形成されている。こうした嵌合部を有する筒状脚は、構造部材の積み上げに際して、積層方向に直交する方向に沿った構造部材のずれが抑制されることで、円滑な施工を実現することができるとともに安定した積層構造体が形成することができる。また、構造部材は、基台と筒状脚とを金型にて一体に樹脂成形することで、製造が容易となり、かつ軽量化を図ることができる。ところで、水貯留槽の上方は、土砂等により覆われるとともに例えば重機によって整備されることで、例えば駐車場、道路等として有効に利用されることがある。このとき、重機等の荷重は、積層構造体に対して圧縮荷重として加わるため、筒状脚は所定の圧縮荷重に耐え得ることが要求される。ところが、上述した嵌合部は凹凸状に形成されているため、圧縮荷重が加わったときに筒状脚の特定の部位に応力が集中し易くなる。例えば、筒状脚の外側から第2の先端壁に対して荷重が加わった際に、第2の先端壁から筒状脚の基端側に延びる側壁に応力が集中し易くなるという問題があった。また例えば、嵌合部の凸部の径は、筒状脚の径よりも小さいため、凸部の強度が確保され易い一方で、第1の先端壁と第2の先端壁との境界部分に応力が集中し易い。このように、筒状脚の先端部に凹凸状の嵌合部を形成することで、円滑な施工を実現することができるものの、そうした構造部材の実用性は未だ十分とは言えない。
【0004】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、筒状脚に嵌合する機能を付与した場合であっても、実用性を高めることのできる水貯留槽用の構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明は、水貯留槽の貯留空間を確保するための水貯留槽用の構造部材であって、前記構造部材は、基台と該基台に立設された筒状脚とを金型にて一体に樹脂成形されてなり、前記筒状脚の先端部には、複数の前記構造部材を積み上げるに際してそれら構造部材の有する筒状脚の先端部同士を嵌合させるための嵌合部が形成され、前記嵌合部は、第1の先端壁と該第1の先端壁よりも基端側に位置する第2の先端壁とそれら先端壁を段差状に連結した凹凸状に形成され、前記筒状脚の側壁内面には、前記第2の先端壁の内面から基端側へ延びる脚内リブが形成されることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、第2の先端壁の内面から基端側へ延びる脚内リブによって、第2の先端壁から基端側へ延びる側壁の剛性が高められる。すなわち、そうした脚内リブを形成することにより、筒状脚の外側から第2の先端壁に荷重が加わるに際して、第2の先端壁から基端側へ延びる側壁の変形を防止することが容易である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の水貯留槽用の構造部材において、前記第2の先端壁の内面には前記金型の有する突出しピンを当接するための当接部が突設されることを要旨とする。
【0008】
ところで、上述した筒状脚の先端部は、凹凸状に形成されているため、そうした筒状脚を金型にて樹脂成形するに際して凹凸状の先端部が金型に密着し易くなる。このため、構造部材を離型する際に、筒状脚の先端部が変形し易くなるという問題があった。ここで、上記第2の先端壁は、第1の先端壁に対して段差状に連結されている。こうした第2の先端壁と第1の先端壁とを連結する部位によって第2の先端壁の剛性は高められるとともに、上記脚内リブによって第2の先端壁は側壁に支持される。こうした第2の先端壁に、突出しピンを当接するための当接部を突設することで、突出しピンの押圧力が当接部に加わるに際して、当接部の周辺部位における変形を防止することが容易である。また、第2の先端壁から基端側の領域は、第1の先端壁と第2の先端壁との間の領域よりも、空間が確保され易いことから、そうした当接部を突設することが容易である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の水貯留槽用の構造部材において、前記当接部が前記脚内リブと一体に形成されることを要旨とする。
この構成によれば、脚内リブと一体に形成された当接部によって、第2の先端壁から基端側へ延びる側壁の剛性が更に高められる。このため、筒状脚の外側から第2の先端壁に荷重が加わるに際して、第2の先端壁から基端側へ延びる側壁の変形を防止することが更に容易となる。また、当接部と一体に形成された脚内リブによって、突出しピンの押圧力に対しても、当接部の周辺部位における変形を防止することが更に容易となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、筒状脚に嵌合する機能を付与した場合であっても、実用性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)及び図1(b)に示すように、水貯留槽用の構造部材11は、平面四角形状の基台12と、その基台12の裏面に立設された筒状脚13とから構成されている。この構造部材11は金型にて一体に樹脂成形されることで、生産性が高められるとともに軽量化が図られている。構造部材11は、水貯留槽の貯留空間を確保する積層構造体を形成するために用いられる。具体的には、地面を掘削して形成した穴の底面に構造部材11の表面を合わせるように配置した後に、基台12の裏面同士と表面同士とを合わせるようにして構造部材11を順次積み上げることで、積層構造体が形成される。このように形成された積層構造体は、水貯留槽の貯留空間を確保することに加えて貯留空間上における地面を支持する機能を果たす。
【0012】
図1(a)に示すように、基台12は、四角形状の枠を有する基板とその枠内の表面上に配設される枠内リブとが一体に成形されたものである。基台12の表面は、基板の枠と枠内リブとによって面一となるように形成されている。基板には、その表裏面に開口する貫通孔12aが複数貫設され、これら貫通孔12aは水の流路及び空気抜きとして機能する。また、基板には、その表面から突出する嵌合凸部12bが所定箇所に複数形成されている。嵌合凸部12bの近傍には、その嵌合凸部12bを嵌合することのできる嵌合凹部12cが枠内リブ等によって形成されている。こうした嵌合凸部12b及び嵌合凹部12cは、基台12の表面と別の基台12の表面とを合わせるようにして構造部材11を積み上げるに際して嵌合される。すなわち、構造部材11は、その両側部を合わせるようにして積み上げる際に、嵌合凸部12bと嵌合凹部12cとが嵌合されることで、基台12の表面側において構造部材11同士がずれるという不具合が抑制される。
【0013】
図1(a)及び図1(b)に示すように、筒状脚13は、基板の表面に開口する有底四角筒状をなすとともに、基端部から先端部に向かうにしたがって縮径する四角錐台状に形成されている。こうした筒状脚13を有する構造部材11は、構造部材11の輸送時、保管時等において、構造部材11の表面に対して、更に別の構造部材11の裏面を合わせるようにして積み上げるに際して、基台12の表面の開口から筒状脚13を挿入することができる。すなわち、構造部材11はネスティング可能に構成されているため、複数の構造部材11の基台12同士を筒状脚13の長さよりも接近させた状態にすることができる。このように輸送時、保管時等において、構造部材11の占める容量を小さくすることができる。なお、本実施形態の筒状脚13の外周面は、リブを有しない平面状に形成されているため、その外周面に砂等が付着し難くなるとともにそうしたリブを要因として筒状脚13が破損するという不具合を防止できる。更に、外周面は、リブを有しない平面状に形成されているため、そうしたリブが引っ掛かることなく、円滑なネスティングを実現することができる。
【0014】
本実施形態の筒状脚13は、基台12の四隅に立設された隅部脚と、基台12の四側部の中間部に立設された中間脚と、基台12の中央に立設された中央脚とから構成されている。なお、中間脚は基台12の一側部について二本設けられ、中央脚は四本設けられている。
【0015】
筒状脚13の先端部には、複数の構造部材11を積み上げるに際して、それら構造部材11の有する筒状脚13の先端部同士を嵌合させるための嵌合部14が形成されている。図2に示すように、構造部材11を積み上げる際には、基台12の裏面を上方に向けて配置した構造部材11に対して、基台12の裏面を下方に向けた構造部材11を載置する。このとき、筒状脚13の先端部同士を突き合わせるようにして嵌合部14を嵌合させる。こうした嵌合により、積み上げを終えた構造部材11が積層方向に直交する方向に沿ってずれるという不具合が抑制される。
【0016】
図3〜図5に示すように、隅部脚の嵌合部14は、第1の先端壁14aと、同第1の先端壁14aよりも基端側に位置する第2の先端壁14bと、それら先端壁を段差状に連結する立壁14cとから凹凸状に形成されている。第1の先端壁14aは、筒状脚13の先端部において離間した一対から構成されている。こうした第1の先端壁14aは、筒状脚13の側壁15と立壁14cの先端縁とを連結することで凸部を形成している。第2の先端壁14bは、上記側壁15と立壁14cの基端縁とを連結することで凹部を形成している。こうした嵌合部14の嵌合状態では、上下に配置された一対の筒状脚13において、第1の先端壁14aの外面と第2の先端壁14bの外面同士が当接されるようになる。
【0017】
第1の先端壁14a及び第2の先端壁14bには、空気抜き等を目的として、貫通孔13aが形成されている。このように嵌合部14に貫通孔13aを形成する場合には、嵌合部14の強度を確保するという観点から、立壁14cには貫通孔13aを形成せずに先端壁に貫通孔13aを形成することが好ましい。
【0018】
筒状脚13を構成する側壁15の内面には、第2の先端壁14bの内面から基端側へ延びる脚内リブ16が形成されている。こうした脚内リブ16によって、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の剛性は高められる。脚内リブ16は、全体として柱状をなし、側壁15内面からの突出長さは略一定に形成されるとともに第2の先端壁14bから基端側に近づくにしたがって幅狭となるように形成されている。こうした形状の脚内リブ16とすることで、剛性を高める機能を十分に発揮させることができるとともに、構造部材11の軽量化を図ることもできる。なお、本実施形態の有底四角筒状の筒状脚13においては、4つの側壁15のそれぞれに一本の脚内リブ16が形成されている。
【0019】
また、本実施形態の脚内リブ16では、基板の表面における筒状脚13の開口から、別の構造部材11の筒状脚13が挿入可能となるように、側壁15からの突出長さが設定されている。すなわち、構造部材11がネスティング可能となるように、脚内リブ16は形成されている。
【0020】
このように脚内リブ16を形成することで側壁15の剛性を高める構成において、側壁15よりも第2の先端壁14bを肉厚に形成することが好ましい。このように第2の先端壁14bを形成することで、筒状脚13全体の剛性を容易に高めることができる。
【0021】
第2の先端壁14bの内面には、金型の有する突出しピンを当接するための当接部17が突設されている。ここで、第2の先端壁14bは、第1の先端壁14aに対して立壁14cを介して段差状に連結されている。こうした第2の先端壁14bと立壁14cとを連結する屈曲部位によって第2の先端壁14bの剛性は高められるとともに、上記脚内リブ16によって第2の先端壁14bは側壁15に支持される。こうした第2の先端壁14bに、当接部17を突設することで、突出しピンの押圧力が当接部17に加わるに際して、当接部17の周辺部位における変形を容易に防止することができる。本実施形態の当接部17は、円柱状をなし、第2の先端壁14bの内面から基端側へ延びるように形成されている。また、当接部17は、突出しピンの押圧力が筒状脚13の先端部へ好適に伝達されるべく、立壁14cの高さ寸法よりも短い寸法に形成されている。
【0022】
本実施形態の当接部17は、脚内リブ16の内側に配置されるとともに脚内リブ16と一体に形成されている。このように脚内リブ16と一体に形成された当接部17によって、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の剛性を更に高めることかできる。なお、本実施形態の当接部17は、脚内リブ16と同数形成されるとともに、いずれの当接部17も脚内リブ16と一体に形成されている。また、当接部17を脚内リブ16よりも内側に配置することで、上述したネスティングにおいて、当接部17に筒状脚13の先端面を当接するように構成することが容易である。これにより、ネスティングに際して、開口から挿入された筒状脚13の側壁15が脚内リブ16に食い込むことを抑制することができる。その結果、ネスティングの状態から構造部材11を円滑に分離することができる。
【0023】
次に、本実施形態の構造部材11の使用状態について説明する。
図2に示されるように積み上げられた構造部材11では、嵌合部14の嵌合により積層方向に直交する方向に沿った構造部材11のずれが抑制される。これにより、円滑な施工を実現することができるとともに安定した積層構造体が形成することができる。
【0024】
このように複数の構造部材11を垂直方向に積み上げることに加えて、設置する水貯留槽の規模に応じて、構造部材11を水平方向に配置することにより、所定の貯留空間を確保すべく積層構造体を形成する。次いで、積層構造体の上面は、例えばシート材等を介して土砂等で覆われる。そして、例えば重機によって整備されることで、積層構造体の上方、すなわち水貯留槽の上方を、例えば駐車場、道路等として有効に利用することができるようになる。このように積層構造体を有効利用するに際して、積層構造体には例えば重機等によって圧縮荷重が加わることになる。このとき、嵌合部14は凹凸状に形成されているため、筒状脚13の特定の部位に応力が集中し易くなる。具体的には、筒状脚13の外側から第2の先端壁14bに対して荷重が加わった際に、第2の先端壁14bから筒状脚13の基端側に延びる側壁15に応力が集中し易い。この点、本実施形態の構造部材11では、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の剛性は、脚内リブ16によって高められる。このため、筒状脚13の外側から第2の先端壁14bに荷重が加わるに際して、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の変形を防止することが容易である。
【0025】
本実施形態の構造部材11は、貯留した水を有効利用する水貯留槽に適用してよいし、水貯留槽内の水を水貯留槽の壁から土壌へ浸透させる機能を有する水貯留槽に適用してもよい。すなわち、水貯留槽とは、少なくとも水を貯留する機能を有する槽であることを示し、水を貯留する機能に加えて水を土壌に浸透させる機能を有する水貯留槽を含む。水貯留槽の水を土壌に浸透させるには、積層構造体と土壌との間に水浸透シートを配置させることで、水貯留槽内への土砂の侵入を抑制するとともにその水浸透シートを通じた水を土壌に浸透させるように構成する。
【0026】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態の構造部材11では、筒状脚13に形成された嵌合部14によって、構造部材11の積み上げに際して、積層方向に直交する方向に沿った構造部材11のずれが抑制される。これにより、円滑な施工を実現することができるとともに安定した積層構造体が形成することができる。また、第2の先端壁14bの内面から基端側へ延びる脚内リブ16によって、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の剛性が高められる。すなわち、そうした脚内リブ16を形成することにより、筒状脚13の外側から第2の先端壁14bに荷重が加わるに際して、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の変形を防止することが容易である。よって、積層構造体の耐荷重性を高めることが容易となる結果、積層構造体の上方を有効利用することができる。このように耐荷重性が高まることから、実用性の高い構造部材11を提供することができる。すなわち、筒状脚13に嵌合する機能を付与した場合であっても、実用性を高めることができる。
【0027】
(2)第2の先端壁14bは、第1の先端壁14aに対して立壁14cを介して段差状に連結されている。このため、第2の先端壁14bと立壁14cとを連結する屈曲部位によって第2の先端壁14bの剛性は高められるとともに、脚内リブ16によって第2の先端壁14bは側壁15に支持される。こうした第2の先端壁14bに、当接部17を突設することで、突出しピンの押圧力が当接部17に加わるに際して、当接部17の周辺部位における変形を防止することが容易である。従って、構造部材11の樹脂成形に際しても十分な実用性を得ることができる。
【0028】
(3)本実施形態の当接部17は、脚内リブ16と一体に形成されているため、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の剛性が更に高められる。このため、筒状脚13の外側から第2の先端壁14bに荷重が加わるに際して、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の変形を防止することが更に容易となる。また、当接部17と一体に形成された脚内リブ16によって、突出しピンの押圧力に対しても、当接部17の周辺部位における変形を防止することが更に容易となる。従って、構造部材11の実用性を更に高めることができる。
【0029】
また、当接部17と脚内リブ16とを間隔をおいて形成する場合には、金型に肉薄の部位を形成する等、金型の製作が困難となり易くなるとともに、そうした肉薄の部位によって成形される部位は、成形時に破損し易くなる。これに対して、本実施形態では当接部17が脚内リブ16と一体に形成されているため、金型に肉薄部位を形成することを回避することができる。その結果、金型の設計が単純なものとなり、金型の製作が容易となるとともに成形時に破損し難くなる。
【0030】
(4)筒状脚13を基端部から先端部に向かうにしたがって縮径する錐台状に形成することで、筒状脚13はネスティング可能に構成されている。このように構成すると、輸送時、保管時等において、構造部材11の占める容量を小さくすることができるため、取り扱い性に優れる構造部材11が提供されるものの、積層構造体を形成した際には、筒状脚13の縮径構造により、嵌合部14に荷重が集中することになる。こうした構造部材11に上記脚内リブ16を形成することで側壁15の変形を好適に防止することができる。
【0031】
(5)本実施形態の有底四角筒状の筒状脚13においては、4つの側壁15のそれぞれに一本の脚内リブ16が形成されている。このように筒状脚13に複数の脚内リブ16を形成することで、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の変形を防止することが更に容易となる。
【0032】
(6)側壁15よりも第2の先端壁14bを肉厚に形成することによって、突出しピンの押圧力で第2の先端壁14bが白化又は変形したり、破損したりするという不具合を防止することが容易である。
【0033】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成してもよい。
・脚内リブ16の形状は特に限定されず、例えば四角柱状、三角柱状等の形状に変更してもよい。また、前記脚内リブ16は、図4及び図5に示されるように、側壁15の内周に沿った脚内リブ16の横幅寸法は、側壁15からの突出長さ寸法と略同一又はその突出長さ寸法よりも広く設定されている。例えば、その横幅寸法を突出長さ寸法よりも狭く形成してもよい。また例えば、脚内リブ16の横幅寸法を筒状脚13の隅部まで拡幅した形状に変更してもよい。
【0034】
・脚内リブ16の長さは特に限定されず、第2の先端壁14bの内面と側壁15とを連結するように形成されていればよい。
・嵌合部14の凹凸形状等に応じて脚内リブ16の本数を適宜変更してもよい。例えば、図6(a)に示される筒状脚13には、第1の先端壁14aと第2の先端壁14bとが左右に一対形成されるとともに脚内リブ16が一本形成されている。また例えば、図6(b)示される筒状脚13の嵌合部14では、第1の先端壁14aの周囲に第2の先端壁14bが形成されている。この嵌合部14には脚内リブ16が二本形成されている。こうした場合であっても、第2の先端壁14bから基端側へ延びる側壁15の変形、及び、当接部17の周辺部位における変形を防止することが容易である。
【0035】
・前記実施形態の嵌合部14は、同形状をなす上下一対の嵌合部14を嵌合させるように構成しているが、異なる形状をなす上下一対の嵌合部14を嵌合させるように構成してもよい。
【0036】
・第2の先端壁14bに突設される当接部17を省略してもよい。
・第1の先端壁14aを半球状に変更することで、前記立壁14cを省略してもよい。
・当接部17の形状は特に限定されず、例えば四角柱状等の形状に変更してもよい。
【0037】
・前記当接部17は、脚内リブ16と一体に形成されているが、図7(a)に示すように当接部17を脚内リブ16と別体に形成してもよい。さらに当接部17を突設する位置は、第2の先端壁14bの内面の範囲内で変更してもよい。
【0038】
・前記筒状脚13の形状を、三角錐台状、六角錐台状等の角錐台状の他に、円錐台状に変更してもよい。
・前記筒状脚13の筒部分を段差状に形成することで、筒状脚13を基端部から先端部に向かうにしたがって縮径するように形成してもよい。
【0039】
・基台12に対する筒状脚13の本数は、特に限定されない。一台の基台12に対して一本の筒状脚13を一体に形成してもよい。
・図7(b)及び(c)に示すように、当接部17又は脚内リブ16を連結する連結リブ22を形成してもよい。こうした連結リブ22により、第2の先端壁14bを更に補強することができる。また、ネスティングに際して、開口から挿入された筒状脚13の先端面に当接するように連結リブ22を形成することで、筒状脚13の先端面に加わる力が、連結リブ22によって分散されるようになる。このため、当接部17に先端面が食い込むことが抑制される結果、ネスティング状態から構造部材11をより円滑に分離することができる。
【0040】
・前記基台12の形状を、平面八角形状等の形状に変更してもよい。
・前記脚内リブ16は、基板の表面における筒状脚13の開口から、別の構造部材11の筒状脚13が挿入可能とすべく、側壁15からの突出長さが設定されている。すなわち、構造部材11は、その筒状脚13においてネスティング可能に構成されているが、ネスティング不能となるように脚内リブ16を形成してもよい。
【0041】
・前記第1の先端壁14a及び第2の先端壁14bには、貫通孔13aが形成されているが、貫通孔13aを省略してもよい。
・前記構造部材11は、雨水を貯留して水害を防止する水貯留槽に限らずに、農業用水の水貯留槽、防火用水用の水貯留槽、噴水用の水を貯留する水貯留槽等に適用することもできる。
【0042】
上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・前記筒状脚はネスティング可能に構成され、前記ネスティングに際して前記当接部は前記筒状脚の先端面に当接されるように構成した水貯留槽用の構造部材。この構成によれば、ネスティングの状態から構造部材を円滑に分離することができる。
【0043】
・前記脚内リブは、側壁内面からの突出長さは略一定に形成されるとともに第2の先端壁から基端側に近づくにしたがって幅狭となるように形成されている水貯留槽用の構造部材。この構成によれば、剛性を高める機能を十分に発揮させることができるとともに、構造部材の軽量化を図ることもできる。
【0044】
・前記側壁よりも前記第2の先端壁を肉厚に形成した水貯留槽用の構造部材。この構成によれば、筒状脚全体の剛性を容易に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】(a)及び(b)は、本実施形態における水貯留槽用の構造部材を示す斜視図。
【図2】積み上げた状態の構造部材を示す斜視図。
【図3】構造部材を示す部分平面図。
【図4】図3におけるA−A線部分断面図。
【図5】図3におけるB−B線部分断面図。
【図6】(a)及び(b)は、構造部材の変形例を示す部分断面図。
【図7】(a)、(b)及び(c)は、構造部材の変形例を示す部分平面図。
【符号の説明】
【0046】
11…構造部材、12…基台、13…筒状脚、14…嵌合部、14a…第1の先端壁、14b…第2の先端壁、15…側壁、16…脚内リブ、17…当接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水貯留槽の貯留空間を確保するための水貯留槽用の構造部材であって、前記構造部材は、基台と該基台に立設された筒状脚とを金型にて一体に樹脂成形されてなり、前記筒状脚の先端部には、複数の前記構造部材を積み上げるに際してそれら構造部材の有する筒状脚の先端部同士を嵌合させるための嵌合部が形成され、前記嵌合部は、第1の先端壁と該第1の先端壁よりも基端側に位置する第2の先端壁とそれら先端壁を段差状に連結した凹凸状に形成され、前記筒状脚の側壁内面には、前記第2の先端壁の内面から基端側へ延びる脚内リブが形成されることを特徴とする水貯留槽用の構造部材。
【請求項2】
前記第2の先端壁の内面には前記金型の有する突出しピンを当接するための当接部が突設されることを特徴とする請求項1に記載の水貯留槽用の構造部材。
【請求項3】
前記当接部が前記脚内リブと一体に形成されることを特徴とする請求項2に記載の水貯留槽用の構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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