説明

油圧緩衝器

【課題】メインバルブの開弁圧力を制御するパイロット室を有する油圧緩衝器において、安定した減衰力特性を得られるようにする。
【解決手段】シリンダ内のピストンの摺動によって伸び側油路23に生じる油液の流動をメインバルブ27によって制御して減衰力を発生し、油液の一部をパイロット室28に導入してメインバルブ27の開弁圧力を制御する。シールディスク40のシール部材41をパイロットケース39の円筒部39Aに摺動可能かつ液密的に嵌合してパイロット室28をシールする。円筒部39Aの内周面をテーパ面39Cとすることにより、メインバルブ27が閉弁したとき、シール部材41の弾性によってシール部材41にテーパ面39Cに沿った方向の復元力が作用するので、シール部材41のテーパ面39Cとの間の摩擦による変形を解消することができ、安定した減衰力特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のサスペンション装置に装着される油圧緩衝器に関し、特に、減衰力を発生させるメインバルブの開弁圧力を制御するパイロット室を有する油圧緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車等の車両の懸架装置に装着される筒型の油圧緩衝器は、油液が封入されたシリンダ内にピストンロッドを連結したピストンを摺動可能に嵌装し、ピストン部に油液通路、オリフィス及びディスクバルブ等からなる減衰力発生機構を設けた構造となっている。これにより、ピストンロッドのストロークに伴うシリンダ内のピストンの摺動によって油液通路に生じる油液の流れをオリフィス及びディスクバルブによって制御して減衰力を発生させる。そして、ピストン速度の低速域においては、オリフィスによってオリフィス特性の減衰力を発生させ、ピストン速度の高速域においては、ディスクバルブが撓んで開弁することにより、バルブ特性の減衰力を発生させる。
【0003】
ところが、上記従来の油圧緩衝器では、ピストン速度の低速域の減衰力は、オリフィスの流路面積に依存し、高速域の減衰力は、予め設定されたディスクバルブの開弁圧力に依存することになるため、減衰力特性の設定の自由度が低く、ピストン速度の低速域において小さい減衰力を得ようとすると、高速域の減衰力が不足し、高速域において、大きい減衰力を得ようとすると、低速域の減衰力が過大となってしまうという問題がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1に示されるように、ディスクバルブの背面側にパイロット室(背圧室)を設け、油液の一部をパイロット室に導入し、パイロット室の圧力(背圧)をディスクバルブに対して閉弁方向に作用させて、ディスクバルブの開弁圧力を制御することにより、減衰力特性の設定の自由度を高めるようにした油圧緩衝器が提案されている。
【特許文献1】特開2006−38097号公報
【0005】
特許文献1に記載の油圧緩衝器では、例えば図6に示すように、パイロットケース39の円筒部39Aの内周面に、メインバルブ27(ディスクバルブ)に積層されたシールディスク40の背面側に固着した弾性シール部材41を液密的に摺動嵌合させてパイロット室28を形成している。そして、メインバルブ27の開閉にともなってシール部材41がパイロットケース39の円筒部39Aの内周面を摺動し、メインバルブ27は、その弾性力及びパイロット室28の圧力によって原位置に復帰する。このとき、シール部材41は、その弾性によって原位置(図6中実線参照)に復帰しようとするが、シール部材41とパイロットケース39との間に生じる摩擦力によって僅かに変形が残った状態となる(図6中の仮想線41A、41B参照)。このため、シール部材41のパイロットケース39に対する摺動抵抗及びメインバルブ27の開弁圧力が変動することになり、減衰力特性が不安定になる。
【0006】
そこで、上記特許文献1に記載された油圧緩衝器では、シール部材41の摺動部に複数の環状突起を設けて多段シールを形成することにより、シール性を高めると共に摩擦力を低減して、減衰力特性の安定化を図っている。このように、パイロット室を備えた油圧緩衝器において、シール部材の摩擦によるディスクバルブの開弁特性への影響を低減して安定した減衰力特性を得ることが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、パイロット室をシールするシール部材の摩擦によるディスクバルブの開弁特性への影響を低減して安定した減衰力特性を得ることができる油圧緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、一端が前記ピストンに連結され他端が前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる油液の流れを制御して減衰力を発生させるメインバルブと、該メインバルブの閉弁方向に圧力を作用させるパイロット室とを備え、前記油液の流れの一部を前記パイロット室に導入して前記パイロット室の圧力によって前記メインバルブの開弁を制御する油圧緩衝器において、
前記メインバルブの背面側外周部に環状のシール部材を設け、該シール部材を円筒状のパイロットケースに摺動可能かつ液密的に嵌合して前記パイロット室を形成し、前記パイロットケースの内周面をテーパ面としたことを特徴とする。
請求項2の発明に係る油圧緩衝器は、上記請求項1の構成において、前記テーパ面は、前記メインバルブ側に向かって拡径していることを特徴とする。
請求項3の発明に係る油圧緩衝器は、上記請求項1の構成において、前記テーパは、前記メインバルブ側に向かって縮径していることを特徴とする。
請求項4の発明に係る油圧緩衝器は、上記請求項1の構成において、前記テーパ面は、軸方向中間部から両端側へ向かって縮径していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明に係る油圧緩衝器によれば、ピストンロッドのストロークに対して、ピストンの摺動によって生じる油液の流れをメインバルブによって制御して減衰力を発生させ、このとき、パイロット室の圧力によってメインバルブの開弁を制御する。パイロットケースの内周面をテーパ面としたことにより、メインバルブが閉弁したとき、シール部材の弾性によってシール部材にテーパ面に沿った方向の復元力が作用して、シール部材のテーパ面との間の摩擦による変形を解消するので、シール部材の変形によるメインバルブの開弁特性のばらつきを軽減して安定した減衰力特性を得ることができる。
請求項2の発明に係る油圧緩衝器によれば、シール部材にはメインバルブ側へ向かう方向の復元力が作用する。
請求項3の発明に係る油圧緩衝器によれば、シール部材にはメインバルブ側とは反対方向の復元力が作用する。
請求項4の発明に係る油圧緩衝器によれば、シール部材にはテーパ面の軸方向中間部へ向かう方向の復元力が作用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る油圧緩衝器1は、油液が封入されたシリンダ2の外周部に外筒3を設けた二重筒構造となっており、シリンダ2と外筒3との間に環状油路4が形成されている。シリンダ2の下端部には、ガス室ユニット5が接続されており、ガス室6内に封入された高圧ガスによって、フリーピストン7を介して、シリンダ2内の油液が常時加圧されている。シリンダ2、外筒3及びガス室ユニット5を備えた油圧緩衝器本体の側部には減衰力発生機構8が取付けられている。
【0011】
シリンダ2内には、ピストン9が摺動可能に嵌装され、このピストン9によってシリンダ2内がシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に画成されている。ピストン9には、ピストンロッド10の一端部がナット11によって連結されており、ピストンロッド10の他端側は、シリンダ2及び外筒3の上端部に装着されたロッドガイド12及びオイルシール13に挿通されてシリンダ2の外部へ延出されている。
【0012】
ピストン9には、シリンダ上下室2A、2B間を連通させる伸び側油路14及び縮み側油路15が設けられている。伸び側油路14には、シリンダ上室2Aの圧力が所定圧力に達したとき、開弁してその圧力をシリンダ下室2Bへリリーフする常閉のリリーフ弁16(ディスクバルブ)が設けられ、また、縮み側油路15には、シリンダ下室2Bの圧力が所定圧力に達したとき、開弁してその圧力をシリンダ上室2Aへリリーフする常閉のリリーフ弁17(ディスクバルブ)が設けられている。
【0013】
減衰力発生機構8は、有底円筒状のケース18内にバルブ部材19が嵌合、固定され、このバルブ部材19によって、ケース18内が上室18A及び下室18Bの2室に画成されている。上室18Aは、ケース18の側壁に設けられた油路20、環状油路4及びシリンダ2の上端部側壁に設けられた油路21を介してシリンダ上室2Aに連通されている。下室18Bは、ケース18の側壁に設けられた油路22を介してシリンダ下室2Bに連通されている。バルブ部材19には、上室18Aと下室18Bとを連通させるための伸び側油路23及び縮み側油路24が設けられており、伸び側油路23には、伸び側減衰力発生機構25が設けられ、縮み側油路24には、縮み側減衰力発生機構26が設けられている。
【0014】
伸び側減衰力発生機構25と縮み側減衰力発生機構26とは、同様の構造であるから、以下、伸び側減衰力発生機構25を例にとって図1を参照して説明し、縮み側減衰力発生機構26の詳しい説明は省略する。
【0015】
図1に示すように、伸び側減衰力発生機構25は、伸び側油路23からの油液の圧力を受けて開弁して減衰力を発生するメインバルブ27(ディスクバルブ)と、メインバルブ27の背面側に設けられ、その圧力をメインバルブ27の閉弁方向に作用させるパイロット室28とを備えている。パイロット室28は、オリフィス油路29及びポート31を介して上流側の伸び側油路23に連通されており、また、スプール弁30の環状溝30aは、ポート31と32とを連通し、逆止弁33を介して、下流側の下室18Bにパイロット室28を連通するようにしている。
【0016】
そして、ソレノイドアクチュエータ34(図2参照)によってスプール弁30を移動させ、ポート31、32間の流路面積を変化させることにより、上下室18A、18B間の流路面積を直接調整すると共に、これによってパイロット室28の圧力を調整してメインバルブ27の開弁圧力を制御するようになっている。
【0017】
縮み側減衰力発生機構26は、上述の伸び側減衰力発生機構25と同様、スプール弁30の環状溝30aの重複具合によってポート35、36間の流路面積を変化させることにより、上下室18A、18B間の流路面積を直接調整すると共に、これによってパイロット室37の圧力を調整して、縮み側油路24の圧力を受けて開弁するメインバルブ38の開弁圧力を制御するようになっている。
【0018】
次に、パイロット室28のシール構造について図1及び図3を参照して説明する。
図1及び図3に示すように、パイロット室28は、バルブ部材19に隣接して配置された略有底円筒状のパイロットケース39と、メインバルブ27の背面側に積層された可撓性のシールディスク40によって形成されている。シールディスク40の背面側外周部には、環状のシール部材41が固着されている。シールディスク40は、シール部材41がパイロットケース39の円筒部39Aの内周面に摺動可能かつ液密的に嵌合され、また、シールディスク40の内周部が、パイロットケース39の底部中央に突出された内側円筒部39Bとバルブ部材19との間で、メインバルブ27と共にクランプされてパイロット室28をシールしている。シール部材41は、フッ素ゴム等の弾性を有するゴム、合成樹脂等とすることができ、シールディスク40に接着又は焼付等によって固着されている。
【0019】
パイロットケース39の円筒部39Aの内周面は、底部側から開口部側(メインバルブ27側)に向かって軸方向に対して傾斜角θで拡径するテーパ面39Cを形成している。これにより、円筒部39Aに嵌合されたシール部材41がその弾性力F0によってテーパ面39Cに押圧されたとき、テーパ面39Cに沿ってメインバルブ27側へ向う方向の復元力F1(=F0sinθ)が生じるようになっている。そして、テーパー面39Cの位置(代表寸法Dと傾斜角θ)は、復元力F1がシール部材41とテーパ面39Cとの間に生じる摩擦力F(=μF0cosθ:μは摩擦係数)よりも大きくなるように設定されている。
【0020】
以上のように構成した本実施形態の作用について次に説明する。
ピストンロッド10の伸び行程時には、シリンダ2内のピストン9の摺動にともない、シリンダ上室2A側の油液が油路21、環状油路4及び油路20を通って減衰力発生機構8の上室18Aへ流れ、上室18Aから伸び側油路23を介して下室18Bへ流れ、更に、下室18Aから油路22を通ってシリンダ下室2Bへ流れて、伸び側減衰力発生機構25によって減衰力が発生する。このとき、ピストンロッド10がシリンダ2から退出した分だけガス室6内の高圧ガスが膨張してシリンダ2内の容積変化を補償する。
【0021】
伸び側減衰力発生機構25では、ピストン速度の低速域においては、オリフィス油路29及びスプール弁30によって調整されるポート31、32間の流路面積により、オリフィス特性の減衰力が発生し、ピストン速度が上昇すると、メインバルブ27が開いてバルブ特性の減衰力が発生する。そして、ソレノイドアクチュエータ34によってスプール弁30を移動させ、ポート31、32間の流路面積を調整することにより、オリフィス特性を調整すると共に、パイロット室28の圧力を調整してバルブ特性を調整することができる。なお、シリンダ上室2Aの圧力が所定圧力に達すると、ピストン9のリリーフ弁16が開弁し、シリンダ上室2Aの圧力をシリンダ下室2Bへリリーフして、減衰力の過度の上昇を防止する。
【0022】
ピストンロッド10の縮み行程時には、シリンダ2内のピストン9の摺動にともない、シリンダ下室2B側の油液が油路22を通って減衰力発生機構8の下室18Bへ流れ、下室18Bから縮み側油路24等を介して上室18Aへ流れ、さらに、上室18Aから油路20、環状油路4及び油路21を通ってシリンダ上室2Aへ流れて、縮み側減衰力発生機構26によって減衰力が発生する。このとき、ピストンロッド10がシリンダ2内へ侵入した分だけガス室6内の高圧ガスが圧縮されてシリンダ2内の容積変化を補償する。
【0023】
縮み側減衰力発生機構26では、ピストン速度の低速域においては、オリフィス油路(図示せず)、スプール弁30によって調整されるポート35、36間の流路面積により、オリフィス特性の減衰力が発生し、ピストン速度が上昇すると、メインバルブ38が開いてバルブ特性の減衰力が発生する。そして、ソレノイドアクチュエータ34によってスプール弁30を移動させ、ポート35、36間の流路面積を調整することにより、オリフィス特性を調整すると共に、パイロット室37の圧力を調整してバルブ特性を調整することができる。なお、シリンダ下室2Bの圧力が所定圧力に達すると、ピストン9のリリーフ弁17が開弁し、シリンダ下室2Bの圧力をシリンダ上室2Aへリリーフして、減衰力の過度の上昇を防止する。
【0024】
パイロットケース39の円筒部39Aの内周面を傾斜角θのテーパ面39Cとしたことにより、シール部材41には、その弾性力によって、常時、テーパ面39Cに沿ってメインバルブ27側へ向う方向の復元力F1が作用する。そして、この復元力F1は、シール部材41とテーパ面39Cとの間に生じる摩擦力よりも大きいので、メインバルブ27が閉弁したとき、シール部材41は、摩擦力に勝って復元力F1により原位置に復帰される。このとき、復元力F1はシール部材41とテーパ面39Cとの接触面全域に生じるので、摩擦力によってシール部材41の接触面に局所的な変形が生じた場合でも、復元力F1によって変形を解消することができる。
【0025】
このようにして、メインバルブ27の閉弁時には、摩擦力による変形を解消してシール部材41を原位置に復帰させることができるので、シール部材41の摺動抵抗及びメインバルブ27の開弁特性のばらつきを抑えて安定した減衰力特性を得ることができる。
【0026】
次に、本発明の他の実施形態について図4及び図5を参照して説明する。なお、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同一の符号を付して、異なる部分についてのみ詳細に説明する。
【0027】
本発明の第2実施形態では、図4に示すように、パイロットケース39の円筒部39Aの内周面は、上記第1実施形態とは反対に底部側から開口部側(メインバルブ27側)に向かって軸方向に対して傾斜角θ´で縮径するテーパ面39Dを形成している。これにより、円筒部39Aに嵌合されたシール部材41がその弾性力F0によってテーパ面39Dに押圧されたとき、テーパ面39Dに沿ってパイロットケース39の底部側(メインバルブ27とは反対方向)へ向う方向の復元力F1´(=F0sinθ´)が生じるようになっている。そして、傾斜角θ´は、復元力F1´がシール部材41とテーパ面39Dとの間に生じる摩擦力F(=μF0cosθ´ μは摩擦係数)よりも大きくなるように設定されている。
【0028】
このように構成したことにより、シール部材41には、その弾性力F0によって、常時、テーパ面39Dに沿ってパイロットケース39の底部へ向う方向の復元力F1´が作用する。そして、この復元力F1´は、シール部材41とテーパ面39Dとの間に生じる摩擦力よりも大きいので、メインバルブ27が閉弁したとき、シール部材41は、復元力F1´によって摩擦力による変形が解消されて原位置に復帰される。これにより、上記第1実施形態と同様、メインバルブ27の閉弁時には、シール部材41を原位置に復帰させることができ、シール部材41の摺動抵抗及びメインバルブ27の開弁特性のばらつきを抑えて安定した減衰力特性を得ることができる。
【0029】
本発明の第3実施形態では、図5に示すように、パイロットケース39の円筒部39Aの内周面は、軸方向中間部から底部側(一端側)へ向かって軸方向に対して傾斜角θで縮径するテーパ面39Eを形成し、また、開口部側(他端側)へ向かって軸方向に対して傾斜角θ´で縮径するテーパ面39Fを形成している。これにより、円筒部39Aに嵌合されたシール部材41は、その弾性力F0によってテーパ面39E、39Fに押圧されたとき、テーパ面39Eでは、上記第1実施形態と同様、パイロットケース39の開口部側へ向かう方向の復元力F1が生じ、テーパ面39Fでは、上記第2実施形態と同様、パイロットケース39の底部側へ向う方向の復元力F1´が生じるようになっている。そして、テーパ面39E、39Fの傾斜角θ、θ´は、復元力F1、F1´がシール部材41とテーパ面39E、39Fとの間に生じる摩擦力よりも大きくなるように設定されている。
【0030】
このように構成したことにより、上記第1及び第2実施形態と同様、メインバルブ27が閉弁したとき、シール部材41は、摩擦力による変形に対して復元力F1及びF1´が作用することによって原位置に復帰される。これにより、メインバルブ27の閉弁時には、シール部材41を原位置に復帰させることができ、シール部材41の摺動抵抗及びメインバルブ27の開弁特性のばらつきを抑えて安定した減衰力特性を得ることができる。
【0031】
なお、テーパ面39C乃至39Fは、上記第1乃至第3実施形態では、傾斜角θが一定のものであるが、このほか、メインバルブ27が閉弁位置にあるとき、摩擦力に打勝ってシール部材41を原位置に復帰させるのに充分な復元力F1を発生できるものであればよく、軸方向位置によって傾斜角θが異なる凸面状又は凹面状の曲面を含むものである。また、上記第1乃至第3実施形態では、減衰力発生機構を油圧緩衝器本体の側部に配置したものについて説明しているが、本発明は、これに限らず、減衰力発生機構をピストン部に配置したものにも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る油圧緩衝器の伸び側減衰力発生機構を拡大して示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る油圧緩衝器の縦断面図である。
【図3】図1に示す伸び側減衰力発生機構のパイロット室のシール構造を拡大して示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るパイロット室のシール構造を拡大して示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るパイロット室のシール構造を拡大して示す図である。
【図6】従来の油圧緩衝器のパイロット室のシール構造を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 油圧緩衝器、2 シリンダ、9 ピストン、10 ピストンロッド、27、38 メインバルブ、28、37 パイロット室、41 シール部材、39C〜39F テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油液が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に嵌装されたピストンと、一端が前記ピストンに連結され他端が前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる油液の流れを制御して減衰力を発生させるメインバルブと、該メインバルブの閉弁方向に圧力を作用させるパイロット室とを備え、前記油液の流れの一部を前記パイロット室に導入して前記パイロット室の圧力によって前記メインバルブの開弁を制御する油圧緩衝器において、
前記メインバルブの背面側外周部に環状のシール部材を設け、該シール部材を円筒状のパイロットケースに摺動可能かつ液密的に嵌合して前記パイロット室を形成し、前記パイロットケースの内周面をテーパ面としたことを特徴とする油圧緩衝器。
【請求項2】
前記テーパ面は、前記メインバルブ側に向かって拡径していることを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項3】
前記テーパは、前記メインバルブ側に向かって縮径していることを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器。
【請求項4】
前記テーパ面は、軸方向中間部から両端側へ向かって縮径していることを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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