説明

法面崩落箇所の修復工法

【課題】崩落法面の修復作業を安全に行うことのできる法面崩落箇所の修復工法を提案すること。
【解決手段】法面崩落箇所の修復工法Sは、土砂崩落によって発生した法面崩壊箇所に地盤改良施工機10を搬入する機材搬入工程S3と、崩壊法面2に、セメント系固化材を用いて地盤改良を施して、地盤改良体3を連続的に構築する地盤改良体施工工程S4、S5と、地盤改良体3の硬化後に崩落土砂を含む堆積土4を搬出する堆積土搬出工程S6とを含んでいる。地盤改良施工機10として、オーガー13を備えたバックホー11を使用し、地盤改良体施工工程S4では、オーガー13により所定の間隔で崩落法面2を削孔しながらセメント系固化材のスラリーを注入して削孔部分の原位置土と混合攪拌して、崩落法面を形成している地盤部分に所定厚さおよび深さの地盤改良体3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震、豪雨などによって土砂崩落が発生した道路などにおける法面の復旧工事を、二次災害を発生させることなく、作業員の安全を確保した状態で行うことのできる法面崩落箇所の修復工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路、鉄道などにおいて法面が崩壊すると、崩落土砂によって道路などが塞がれ、あるいは二次災害の発生の危険性が高いために通行止めになるので、迅速に復旧作業を行う必要がある。復旧作業は一般に、重機および機材を崩落現場に搬入し、崩落法面に土砂崩落防護壁などを仮設し、しかる後に、崩落土砂などの堆積土を搬出して、崩落法面の修復作業を行い、修復作業終了後に、崩落土砂を含む残土を現場から搬出するという手順で行われる。
【0003】
特許文献1には、道路側面法面の崩落事故現場に、速やかに仮設落石防護柵の設置および撤去を迅速かつ容易に行い得るようにした落石防護仮設方法が開示されている。また、特許文献2には、崩壊した法面の補修を、アンカーを用いて、工期、コスト等を極力抑えて行うことのできる法面の修景方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−156336号公報
【特許文献2】特開2006−233561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、崩落法面の修復作業においては、法面再崩落などによる二次災害の発生を抑制し、復旧作業時の作業員の安全を確保する必要がある。しかしながら、従来における法面崩落箇所の復旧作業は、崩落法面に仮設の防護柵あるいは防護壁を設置した状態で堆積土の搬出、崩落法面の修復が行われるので、法面が再崩落して二次災害が発生する危険性が依然として残っている。特に、フトンかご等を用いた従来の崩落法面の修復作業では、作業員が掘削床に入って作業を行う必要があり、また、床掘作業により残土が多量に発生するので、作業に時間が掛かり、二次災害が発生する危険性がある。
【0006】
本発明の課題は、従来に比べて安全に崩落法面の修復作業を行うことのできる法面崩落箇所の修復工法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の法面崩落箇所の修復工法は、
土砂崩落によって発生した法面崩壊箇所に地盤改良施工機を搬入する機材搬入工程と、
崩壊法面に、セメント系固化材を用いて地盤改良を施して、地盤改良体を連続的に構築する地盤改良体施工工程と、
前記地盤改良体の硬化後に崩落土砂を含む堆積土を搬出する堆積土搬出工程とを含むことを特徴としている。
【0008】
ここで、前記地盤改良施工機として、オーガーをブーム先端に取り付けたバックホーを使用し、前記地盤改良体施工工程では、オーガーにより所定の間隔で崩落法面を削孔しながらセメント系固化材のスラリーを注入して削孔部分の原位置土と混合攪拌して、前記崩落法面を形成している地盤部分に所定厚さおよび深さの地盤改良体を形成すればよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の修復工法では、セメント系固化材を用いて崩落法面に地盤改良体を連続的に構築する土留めを先に行い、しかる後に、崩落土砂を崩落現場から搬出するようにしている。最初に土留めを行うことにより、二次災害の発生の危険性の無い状態で堆積土の搬出作業などを行うことができるので極めて安全である。
【0010】
また、バックホーに搭載したオーガーを用いて崩落法面を削孔してセメント系固化材を注入して混合攪拌して改良体を施工しているので、狭い場所、不陸のある場所での作業も容易にできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した崩落法面の修復工法の手順を示す工程図である。
【図2】図1の修復工法の主要工程を示す説明図である。
【図3】図1の修復工法に用いる施工管理システムを示す概略構成図である。
【図4】図1の修復工法に用いる地盤改良施工機の仕様例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明を適用した崩落法面の修復工法の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る崩落法面の修復工法は、バックホーを用いて構成した地盤改良施工機により、セメント系固化材を用いた地盤改良体を法面崩落箇所に連続的に構築して、二次災害を防止すると共に崩落法面の修復を行うものである。
【0013】
図1に示すように、崩落法面の修復工法Sは、崩落現場の事前調査S1、調査結果に基づくセメント系固化材の配合試験S2、地盤改良施工機を含む重機・機材の崩落現場への搬入S3、崩落法面にセメント系固化材を用いた地盤改良体を連続的に構築する改良工S4、地盤改良体整形S5、堆積土搬出S6、重機・機材搬出S7の各工程からなる。
【0014】
事前調査S1においては、図2(a)に示すような崩落現場1の地盤の地形、地質などに基づき必要な地盤強度などが求められる。セメント系固化材の配合試験S2では必要とされる地盤改良体が得られるようにセメント系固化材の配合を求める。セメント系固化材の配合については、たとえば、「セメント系固化材による地盤改良マニュアル」(社団法人セメント協会)などに基づき行うことができる。改良工S4および改良体整形S5によって図2(b)に示すように崩落法面2に連続した改良体土留め(地盤改良体)3が形成される。この後に、図2(c)に示すように崩落土砂を含む堆積土4が現場から搬出される。
【0015】
図3に示すように、崩落法面の修復工法に用いる地盤改良施工機10は汎用作業機械であるバックホー11をベースマシンとしており、このバックホー11のブーム12の先端には掘削用のオーガー13が搭載されている。なお、地盤改良施工機10の標準仕様は、たとえば、図4に示すものとすることができる。
【0016】
再び、図3を参照して説明すると、修復工法に用いる施工管理システム20は、シーケンサー21を中心に構成されており、シーケンサー21には、オーガー13に搭載されているトルク計、回転計および傾斜計を含む計器22から検出値がシーケンサー21に取り込まれる。シーケンサー21は、地盤改良体施工時における施工状態(トルク、回転数、傾斜角など)を、タッチパネル式の表示器23にリアルタイムで表示すると共にメモリー24に記憶保持する。また、タッチパネル23aからの入力指令に基づきプリンター25を介して出力する。メモリー24に記憶保持された施工情報はパーソナルコンピューター26に取り込み可能であり、また、そこに接続されている表示画面上に出力可能である。
【0017】
また、シーケンサー21は、流量計27によって、不図示のセメントミルク供給源から供給されてオーガー13による削孔内に注入されるセメントミルクの流量をモニターしており、予め設定された流量となるように供給を制御する。
【0018】
以上説明したように、本実施の形態に係る崩落法面の修復工法では、ベースマシンとして汎用機械のバックホー11を用いた地盤改良施工機10を使用し、崩落土砂の搬出前に、崩落法面の土留め工事を行うようにしている。従来のように改良工専用機を用いる場合に比べて、バックホー11を用いた地盤改良施工機10は機動性に富んでいるので狭い場所や不陸のある場所でも施工が容易である。また、従来の工法(フトンかご等)に比べ、床掘作業が不要であるので残土の搬出処理量を低減でき、作業員を掘削床に入れることがないので安全性が高い。さらには、施工管理システムにより、リアルタイムな施工管理を行っているので、セメント系固化材を用いた地盤改良体を適切に構築できる。
【符号の説明】
【0019】
S 崩落法面の修復工法
S1 事前調査
S2 配合試験
S3 重機・機材搬入
S4 改良工
S5 改良体整形
S6 堆積土搬出
S7 重機・機材搬出
1 崩落現場
2 崩落法面
3 改良体土留め(地盤改良体)
4 堆積土
10 地盤改良施工機
11 バックホー
12 ブーム
13 オーガー
20 施工管理システム
21 シーケンサー
22 オーガーの計器
23 表示器
24 メモリー
25 プリンター
26 パーソナルコンピューター
27 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂崩落によって発生した法面崩壊箇所に地盤改良施工機を搬入する機材搬入工程と、
崩壊法面に、セメント系固化材を用いて地盤改良を施して、地盤改良体を連続的に構築する地盤改良体施工工程と、
前記地盤改良体の硬化後に崩落土砂を含む残土を搬出する残土排出工程とを含むことを特徴とする法面崩落箇所の修復工法。
【請求項2】
前記地盤改良施工機として、オーガーがブーム先端に取り付けられたバックホーを使用し、
前記地盤改良体施工工程では、オーガーにより所定の間隔で崩落法面を削孔しながらセメント系固化材のスラリーを注入して削孔部分の原位置土と混合攪拌して、前記崩落法面を形成している地盤部分に所定厚さおよび深さの地盤改良体を形成することを特徴とする請求項1に記載の法面崩落箇所の修復工法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−185210(P2010−185210A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29631(P2009−29631)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(509042482)株式会社平林工業 (3)
【Fターム(参考)】