説明

波長可変ミラーおよび波長可変レーザ

【課題】 広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出すことができる波長可変ミラーと、WDM通信に用いることができる波長可変レーザとを提供すること。
【解決手段】 一対の高反射ミラー5、6の間の液晶層9に一対の透明電極3、4を介して電圧を印加して屈折率を制御し、所定の波長の光を透過させる液晶エタロン20と、第3の高反射ミラー10とを備え、第3の高反射ミラー10の反射面が一対の高反射ミラー5、6の各反射面に対して傾斜し、3つの高反射ミラー5、6、10のうちの少なくとも一つは、入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域で他の波長帯域より反射率が高い構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出すことができる波長可変ミラー、および、波長可変ミラーを用いた波長可変レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信需要の飛躍的な増大に伴う大容量伝送を可能にすべく、波長分割多重通信システム(WDM:Wavelength Division Multiplexing通信システム)の開発が行われている。波長分割多重通信システムは、波長が異なる複数の信号光の波長チャネルを多重化して1本の光ファイバで送信することによって大容量伝送を可能にする通信システムである。
【0003】
このような波長分割多重通信システムの実現には、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を正確に選択できる波長可変ミラーが必要になる。以下、所望の波長の光を選択することを波長選択という。また、WDM通信システム用のレーザ光源として、単一素子で、WDM通信の多数の波長チャネルのうちの所望の単一波長チャネルに波長域を有するレーザ光を出射できる波長可変レーザが望まれていた。
【0004】
このような波長可変レーザとして、従来、光増幅機能を有する利得媒体と、ファイバブラッグ格子によって構成された複数の反射フィルタと、バンドパスフィルタと、単一モード用の光ファイバとで構成され、バンドパスフィルタの伝送ピークであり、かつ、ファイバグラッグ格子による反射ピークでもある、波長ピークの周波数でレーザ発振するレーザを用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1に開示された構成では、広い波長帯域を有するレーザ光に対して波長選択を行うのに、帯域が狭いファイバブラッグ格子を各波長チャネル毎に設け、ファイバブラッグ格子によって反射されたレーザ光中の所定のスペクトルのレーザ光をバンドパスフィルタを用いて選択的に透過させる方法がとられている。しかしながら、この構成では、所望の波長チャネル数だけのファイバグラッグ格子が必要となるため、共振器が長くなってしまい、装置規模が大型化すると共に高価なものになる。
【0006】
また、別の波長可変レーザとして、利得媒体と、回折格子からなる反射格子とを組み合わせた構成のものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に開示された構成では、反射格子を機械的に回転させて波長選択を行うようになっているため、波長制御用の大きな機械的構成部が必要になるという問題を有する。
【0007】
一方、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を可変に波長選択して透過させる素子として、ファブリペローエタロンをなすミラー間キャビティ内に液晶を充填し、液晶に電圧を印加して屈折率を変化させることによって、ミラー間キャビティの光路長を変化させることができる波長可変フィルタ(以下、液晶エタロンという。)が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0008】
ここで、液晶エタロンの透過率は、複数の波長で透過率のピーク(以下、透過率ピークという。)を有することが知られている。この液晶エタロンを波長選択用の素子として用い、利得媒体と共にレーザ共振器内に配置することによって、印加電圧の大きさに応じて所望の波長チャネルのみのレーザ光を選択して出射することが可能な、小型の波長可変レーザを得ることが期待できる。
【0009】
ここで、ITU(International Telecommunication Union)グリッドで規定されるWDM通信の使用波長チャネルの半値全幅は、約0.8nm(100GHz)以下である。また、Lバンド、CバンドおよびSバンドには、それぞれ、1569.80nmから1611.79nmまでの波長帯(帯域幅Δλ=41.99nm)、1529.75nmから1569.59nmまでの波長帯(帯域幅Δλ=39.84nm)、および、1491.69nmから1529.55nmまでの波長帯(帯域幅Δλ=37.86nm)が割り当てられ、各バンドはそれぞれ50の波長チャネルを有する。
【0010】
したがって、液晶エタロンを用いた波長可変レーザが上記の各バンドの波長帯域で利用可能となるためには、液晶エタロンが以下の条件を満たす必要がある。第1の条件は、液晶エタロンを往復した透過光についての透過率ピークの半値全幅が0.8nm以下であることである。第2の条件は、液晶エタロンの透過率ピーク間の波長間隔(FSR:Free Spectrum Range)が各バンドの帯域幅Δλ以上であることである。第3の条件は、液晶エタロンでの損失がレーザ発振を起こすことが可能な程度の低損失であることである。
【0011】
液晶エタロンを往復した透過光の透過率ピークの半値全幅を0.8nm以下とするには、往路のみで透過率ピークの半値全幅δが1.2nm以下であることが必要となる。ここで、エタロンの波長分解能を表す指標として、フィネスF(=FSR/δ)が用いられ、フィネスFが大きいほど分解能が高い。
【0012】
利得媒体として用いられる半導体光増幅素子は、広い波長帯域で利得を有するため、液晶エタロンの透過率ピーク間の波長間隔FSRがWDM通信の各バンドの帯域幅程度の場合、所望のバンド以外の不要な波長チャネルのレーザ光も出射されることになるため、WDM通信用の波長可変レーザとして使用できない。WDM通信の各バンドの波長帯と異なる波長の余分な透過率ピークを出現させないためには、透過率ピーク間の波長間隔FSRが100nm以上で、80以上の大きなフィネスFを有する液晶エタロンが必要となる。
【特許文献1】米国特許6,091,744号公報
【特許文献2】米国特許5,970,076号公報
【特許文献3】特開平2−201944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、このような従来の液晶エタロンでは、液晶エタロンを構成するミラー間キャビティ内で光損失が存在するため、50%以上の透過率ピークを維持して80以上のフィネスFを達成することはきわめて困難である問題があった。そのため、液晶エタロンを用いたWDM通信用の波長可変ミラーおよび波長可変レーザを実現することはきわめて困難であった。
【0014】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出すことができる波長可変ミラーと、WDM通信に用いることができる波長可変レーザとを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の点を考慮して、請求項1に係る発明は、液晶層と、前記液晶層に電圧を印加するための第1の透明電極および第2の透明電極と、所定の波長の光を反射する第1の高反射ミラーおよび第2の高反射ミラーとを有し、所定の波長の光を透過させる液晶エタロンと、所定の波長の光を反射する第3の高反射ミラーとを備え、前記第1の高反射ミラーの反射面と前記第2の高反射ミラーの反射面とが互いに平行であり、前記第3の高反射ミラーの反射面が前記第1の高反射ミラーの反射面および前記第2の高反射ミラーの反射面に対して傾斜し、前記第1の高反射ミラーと前記第2の高反射ミラーと前記第3の高反射ミラーのうちの少なくとも一つは、入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有する構成をなしている。
【0016】
この構成により、入射光が液晶エタロンを往復透過することにより、透過率ピークの半値全幅を狭帯域化できると共に、3枚の高反射ミラーを組み合わせて不必要な透過率ピークで透過する光を除去し実効的にFSRが拡張できるため、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出すことが可能な波長可変ミラーを実現できる。
【0017】
また、請求項2に係る発明は、請求項1において、前記第1の高反射ミラーと前記第2の高反射ミラーが、前記入射光の全波長帯域で光を反射し、前記第3の高反射ミラーは、前記入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有する構成をなしている。
【0018】
この構成により、請求項1の効果に加え、第3の高反射ミラーに反射波長帯と透過波長帯とからなる分光特性を持たせ、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーが入射光の全波長帯域で光を反射させるようにできるため、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーとの分光特性を単純化することが可能で、特性が安定した波長可変ミラーを実現できる。
【0019】
また、請求項3に係る発明は、請求項1において、前記第1の高反射ミラーは、前記入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有し、前記第2の高反射ミラーは、前記入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有し、前記第3の高反射ミラーは、前記入射光の全波長帯域の光を反射する構成を有している。
【0020】
この構成により、請求項1の効果に加え、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーはそれぞれ別個の分光反射率持たせられるため、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーとを組み合わせて波長選択を行う波長帯域を決定することが可能な波長可変ミラーを実現できる。
【0021】
また、請求項4に係る発明は、請求項1から3までのいずれか1項において、前記液晶エタロンは、前記液晶層の液晶を配向させるための第1の配向膜および第2の配向膜を有し、前記第1の高反射ミラーと前記第2の高反射ミラーのうちの少なくとも一方の高反射ミラーは、前記第1または/および第2の配向膜に面する側に、前記液晶の屈折率と同一または近い屈折率を有してフレネル反射を抑制する透明膜が形成されている構成を有している。
【0022】
この構成により、請求項1から3までのいずれか1項の効果に加え、透明膜が液晶の屈折率と同一または近い屈折率を有するため、液晶層界面でのフレネル反射を抑制することが可能な波長可変ミラーを実現できる。さらに、液晶エタロンのミラー間キャビティの光路長を一定としたまま、液晶層の層厚を薄くできるため、温度変化に伴う液晶層の光路長変動に起因する透過率ピークの波長変動を低減できる。
【0023】
また、請求項5に係る発明は、2つの反射面を有する共振器と、光増幅を行う利得媒体とを備え、前記共振器は、請求項1から4までのいずれか1項に記載の波長可変ミラーを有し、前記共振器が有する2つの前記反射面のうち少なくとも1つの前記反射面が、前記波長可変ミラーが有する第3の高反射ミラーの反射面で構成され、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に印加する電圧に応じて選択的に出射光の波長を制御する構成を有している。
【0024】
この構成により、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出せる波長可変ミラーを用いて波長選択を行うことによって、広い波長帯域を有するレーザ発振光からWDM通信に用いる所望の波長チャネルの光を選択的かつ可変に取り出して出射できるため、WDM通信に用いることができる波長可変レーザを実現できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、入射光が液晶エタロンを往復透過することにより透過率ピークの半値全幅を狭帯域化できると共に、3枚の高反射ミラーを組み合わせて不必要な波長帯の透過率ピークで透過する光を除去し実効的にFSRが拡張できるため、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出すことが可能な波長可変ミラーと、係る波長可変ミラーを用いることによってWDM通信に用いることができる波長可変レーザとを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラーの一構成例を示した断面図である。図1において、波長可変ミラー100は、基板1、2、透明電極3、4、高反射ミラー5、6、10、配向膜7、8、液晶層9、シール11、透明誘電体層12、および、反射防止膜13を備え、第1の基板1上に、第1の透明電極3、第1の高反射ミラー5、透明誘電体層12、第1の配向膜7、液晶層9、第2の配向膜8、第2の高反射ミラー6、第2の透明電極4、第2の基板2、および、第3の高反射ミラー10が、この順番で重ねて配置された構成を有する。
【0028】
ここで、基板1、2は、例えば、透明なガラス等からなり、第1の基板1と空気とが接する面上には反射防止膜13が形成されている。また、第2の基板2は、第3の高反射ミラー10が形成される面が第2の透明電極4が形成される面に対して1〜8°程度の傾斜角θで傾斜したウェッジ基板の形状となっている。
【0029】
なお、図1に示す構成では、屈折率がnで膜厚がdsの透明誘電体層12が、第1の高反射ミラー5と第1の配向膜7との間に設けられている例が示されているが、透明誘電体層12を設ける位置は、第2の高反射ミラー6と第2の配向膜8との間に設けるのでも、第1の高反射ミラー5と第1の配向膜7との間、および、第2の高反射ミラー6と第2の配向膜8との間の両方に設けるのでもよい。
【0030】
ただし、いずれの場合でも、透明誘電体層12の光路長(複数箇所に分けて透明誘電体層12を設ける場合は、合計の光路長。)は、予め決められた値(屈折率n×膜厚ds)になっているものとする。以下、透明誘電体層12は、図1に示すように、第1の高反射ミラー5と第1の配向膜7との間に設けられているものとして説明する。
【0031】
以下に、波長可変ミラー100の作成方法について説明する。まず、第1の基板1の、反射防止膜13が形成された面と対向する面に、第1の透明電極3、第1の高反射ミラー5、透明誘電体層12、および、第1の配向膜7をこの順番で形成する。次に、第2の基板2の、第3の高反射ミラー10が形成された面と対向する面に、第2の透明電極4、第2の高反射ミラー6、および、第2の配向膜8をこの順番で形成する。
【0032】
ここで、第2の基板2は、第2の透明電極4が形成される面と第3の高反射ミラー10が形成される面とが、1〜8°程度の傾斜角θをなすように、予め傾斜加工されているものとする。図2は、上記で説明したように作製した波長可変ミラー100を図1に示すZ軸方向から見たときの図である。図2に示すように、透明電極3、4は、不図示の外部の電源に接続するための領域を有し、この領域上には、高反射ミラー5、6、および、透明誘電体層12が形成されていないものとする。さらに、配向膜7、8は、液晶分子を配向させる領域に設けられているものとする。
【0033】
次に、第1の配向膜7および第2の配向膜8を形成した後、第1の基板1側の透明誘電体層12上に、ギャップ制御材が混入された不図示の接着剤を印刷でパターニングしてシール11を形成し、第2の基板2側の第2の高反射ミラー6とシール11とが接触するように重ねあわせ、圧着して液晶を保持させるための空セルを作製する。
【0034】
ここで、シール11の厚さは、セルに保持される液晶の厚さがdLCとなる厚さとなっている。上記で空セルが作製されした後、シール11の一部に設けられた不図示の注入口から、常光屈折率n、異常光屈折率n(ただし、n≠n)を有する液晶を注入する。注入が完了したら、この注入口を封止して液晶層9をセルを密閉する。
【0035】
なお、第2の透明電極4、第2の高反射ミラー6、および、第2の配向膜8が上記のように片面に形成された平行平面基板と、第3の高反射ミラー10が片面に形成されたウェッジ基板とを別々に作製し、両基板を透明接着材を用いて接着固定して第2の基板2としてもよい。
【0036】
ここで、配向膜7、8は、液晶層9の液晶分子の配向が一方向に揃うように配向処理されている。配向膜7、8として、ポリイミドなどの配向材を基板に塗布しその表面をラビングにより配向処理した配向膜、SiO膜などの無機膜を基板面に対して斜め蒸着した配向膜、または、有機物を基板に塗布した後紫外線などを照射することにより配向能を発現させる光配向膜などを用いるのでもよい。
【0037】
液晶層9は、配向膜7、8によって配向膜界面における液晶分子の配向が一方向に揃い、第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に印加される矩形波の交流電圧により、液晶層9の液晶分子の配向が変化し、液晶層9の実質的な屈折率が変化する。その結果、印加電圧の大きさに応じて液晶層9の光路長が変化する。ここで、液晶層9の実質的な屈折率とは、入射光の偏光方向に対する液晶層の平均屈折率を意味し、液晶層の光路長を液晶層厚dLCで割った値をいう。
【0038】
一般に、液晶は誘電率異方性を有し、液晶分子の長軸方向の比誘電率ε//と液晶分子の短軸方向の比誘電率εとが異なる。誘電率異方性△ε(=ε//−ε)が正の場合、電圧が印加されていない状態で基板面に平行な方向(例えば、図1に示すX軸方向等)に分子配向させたホモジニアス配向液晶は、電圧印加に伴い液晶分子の配向がZ軸方向に変化し、X軸方向の偏波面の直線偏光である異常光偏光の入射光に対して、液晶層9の実質的な屈折率がnからnまで変化する。
【0039】
一方、誘電率異方性△εが負の場合、電圧が印加されていない状態で基板面に垂直な方向(図1に示すZ軸方向)に分子配向させた垂直配向液晶は、電圧印加に伴い液晶分子の配向が、基板面に平行な方向(例えば、図1に示すX軸方向等)に変化し、液晶層9の実質的な屈折率がnからnまで変化する。ここで、液晶層9は、印加電圧に応じて実質的に屈折率変化が生じる材料で構成されていればよく、ネマティック液晶、スメクティック液晶等の液晶の他に、液晶モノマーを高分子化した高分子液晶や、LiNbO等の電気光学結晶等を用いて形成されるのでもよい。
【0040】
透明誘電体層12としては、透明誘電体層12と液晶層9との界面におけるフレネル反射を抑制するため、透明誘電体層12の屈折率nが液晶層9の屈折率に略等しくなるよう、屈折率nがnからnまでの間のいずれかの値をとる透明誘電体層12を用いる。透明誘電体層12用の材料としては、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、感光性樹脂等の有機材料を用いるのでも、SiO、Al、SiO(但し、x,yはOとNの元素比率を示す)等の無機材料を用いるのでもよい。また、高分子液晶等の複屈折材料を用いるのでもよい。
【0041】
透明電極3、4としては、ITO(酸化インジウム・スズ)、ZnO(酸化亜鉛)、SnO(酸化スズ)等のWDM通信の使用波長域で光吸収の少ない透明導電膜を用い、透明導電膜を例えば5nmから20nm程度の範囲内の膜厚となるように極力薄く成膜するのが、光吸収損失を低減できて好適である。
【0042】
高反射ミラー5、6、10は、いずれも、以下の使用波長域で光吸収の低い高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜とを交互に積層した光学多層膜からなるものとする。ここで、高屈折率誘電体としては、Ta、Nb、HfO、TiO、ZrO、Al、Si、Ge等が用いられ、低屈折率誘電体としては、SiO、MgF、NaAlF等が用いられる。いずれの誘電体の膜も、真空蒸着法やスパッタ法等の一般的な成膜方法で形成できる。
【0043】
第1の高反射ミラー5と第2の高反射ミラー6は、間隔Gおいて互いに平行になるように配置される。液晶エタロン20の分光特性は、第1の高反射ミラー5の反射率Rと第2の高反射ミラー6の反射率R、第1の高反射ミラー5と第2の高反射ミラー6との間のキャビティ(以下、ミラー間キャビティという。)の光路長L、および光吸収係数αによって決定される。ここで、光吸収係数αは、ミラー間キャビティ内を占める材料に起因する光吸収以外に、界面反射や光散乱による光損失をも含む係数である。
【0044】
第1の高反射ミラー5と第2の高反射ミラー6とは、同一の構成の誘電体多層膜からなり、ITUグリッドで規定されるWDM通信用の波長帯(すなわち、上記のLバンド、CバンドおよびSバンド)において、光吸収が無視できると共に、反射率Rと反射率Rとがほぼ同じ値で波長依存性のほとんど無い一定の反射率とみなせるものとする。以下、WDM通信用の波長帯における反射率Rと反射率Rとは等しいものとし、その値をRとする。
【0045】
このとき、波長λの入射光に対する液晶エタロン20の透過率T(λ)は、以下の式(1)によって表される。
T(λ)=(1−R)×E/{(1−R×E)+4×R×E×S} (1)
ここで、
E=exp(−α×G) (2)
S=sin(2π×L/λ) (3)
である。
【0046】
液晶エタロン20の透過率ピークを与える波長λは、上記の式(1)中のS(式(3)参照。)がゼロになる点として与えられ、以下の式(4)によって表される。
λ=2×L/m (4)
ここで、mは自然数である。
【0047】
ミラー間キャビティの光路長Lは、第1の配向膜7と第2の配向膜8の膜厚が液晶層9および透明誘電体層12に比して充分薄いため、実質的に透明誘電体層12の光路長と液晶層9の光路長との和とみなすことができる。液晶層9に電圧VLCを印加したときの液晶層9の実質的な屈折率をn(VLC)とすると、ミラー間キャビティの光路長Lは、以下の式(5)によって表される。
L=n(VLC)×dLC+n×d=N(V)×G (5)
ここで、Vは第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に外部の交流電源より印加される交流電圧の実効値で、N(V)は間隔Gのミラー間キャビティの平均屈折率を示す。
【0048】
液晶エタロン20の透過率ピーク間の波長間隔FSR(以下、単に透過率ピーク間隔という。)およびフィネスF(=FSR/δ)は、以下の式(6)および式(7)によって表される。
FSR=λ/(2×L) (6)
F=π×(R×E)0.5 /(1−R×E) (7)
ここで、Eは上記の式(2)で表される。
【0049】
したがって、透過率ピークの半値全幅δ(=FSR/F)は、以下の式(8)によって表される。
δ=λ×(1−R×E)/{2π×L×(R×E)0.5} (8)
ここで、Eは上記の式(2)で表される。
【0050】
また、波長λの透過率ピークにおける透過率の最大値である最大透過率Tmaxは、以下の式(9)によって表される。
Tmax=(1−R)×E/(1−R×E) (9)
ここで、WDM通信の使用波長チャネルの半値全幅は、約0.8nm(100GHz)である。また、WDM通信のLバンド、CバンドおよびSバンドには、それぞれ、1569.80nmから1611.79nmまでの波長帯(帯域幅Δλ=41.99nm)、1529.75nmから1569.59nmまでの波長帯(帯域幅Δλ=39.84nm)、および1491.69nmから1529.55nmまでの波長帯(帯域幅Δλ=37.86nm)が割り当てられ、各バンドはそれぞれ50の波長チャネルを有する。
【0051】
各バンドの波長帯で利用可能な波長可変レーザを得るためには、液晶エタロンを往復する透過光についての透過率ピークの半値全幅が0.8nm以下で、かつ、各バンドの帯域幅Δλ以上の透過率ピーク間隔を有する液晶エタロンが必要となる。液晶エタロンを往復する透過光の透過率ピークの半値全幅を0.8nm以下とするには、往路のみで透過率ピークの半値全幅δが1.2nm以下であることが必要となる。
【0052】
ここで、上記の式(8)に基づいて、ITUグリッドで規定されるWDM通信の各バンド(以下、WDM通信の各バンドをWDMバンドという。)の波長帯で透過率ピークの半値全幅δを1.2nm以下とするためには、キャビティ内の光損失を低減すると共に、光路長Lを長く、反射率Rを高くする必要があることがわかる。また、上記の式(6)に基づいて、光路長Lを長くすると透過率ピーク間隔FSRが減少し複数の波長で透過率ピークが生じることがわかる。
【0053】
そのため、WDMバンドの波長帯で単一の透過率ピークが発生するように、透過率ピーク間隔FSRがWDMバンドの帯域幅△λ以上になるように光路長Lを設定する。WDMバンドの帯域幅△λは最大42nm程度であるため、透過率ピーク間隔FSRを42nmとすると、光吸収係数αがゼロのときの液晶エタロン20のフィネスF(=FSR/δ)は、35以上となる必要がある。
【0054】
透過率ピークの半値全幅δが1.2nm以下、かつ、透過率ピーク間隔FSRが42nm以上の液晶エタロン20を得るには、第1の高反射ミラー5と第2の高反射ミラー6の反射率Rを92%以上とする必要がある。上記のように、反射率Rを92%以上の高い値にする必要があるが、反射率Rが高いほど光吸収係数αの値が僅かであっても最大透過率Tmaxが低下するため、反射率Rの値が問題となる。
【0055】
ここで、WDM通信の波長帯における反射率Rは、92%以上95%以下であることが好ましい。反射率Rの値をこのようにとると、上記の式(7)に基づいて、フィネスFが35から60程度の液晶エタロン20とし、ミラー間キャビティ内の光損失を0.5%以下に抑制することによって、80%以上の最大透過率Tmaxが得られる。
【0056】
なお、透過率ピークの半値全幅δが1.2nmで、フィネスFが35から60までの間のいずれかの値のとき、透過率ピーク間隔FSRは42nmから72nmまでの間のいずれかの値をとる。透過率ピーク間隔FSRを42nmから72nmまでの範囲内にするには、上記の式(6)に基づいて、ミラー間キャビティの光路長Lを15μmから30μm程度までの範囲内にすればよい。
【0057】
ここで、液晶エタロン20の透過波長をWDMバンドの各波長帯の全波長域で変えられるようにするために必要な光路長Lの変化量は、上記の式(5)に基づいて決定される。すなわち、液晶層9の実質的な屈折率n(VLC)は、第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に印加する電圧Vにより変化し、この変化は、等価的にミラー間キャビティ内の媒質の平均屈折率N(V)の変化として表される。WDMバンドの波長帯で透過率ピーク間隔FSR(=42nm)程度にわたって、透過ピークの波長λを変化させるのに必要な平均屈折率N(V)の変化割合は、FSR/λに相当し、僅か3%程度である。
【0058】
液晶層9は固体材料に比して屈折率の温度変化および体積熱膨張率が大きいため、ミラー間キャビティを液晶層9のみで構成した場合、透過率ピークの波長λが温度変化に伴い変動しやすい。また、液晶の複屈折量△n(=n―n)は0.1から0.3程度であり、10V以下の印加電圧で液晶の平均屈折率(n+n)/2の10%前後の大きな屈折率変化割合で屈折率が変化する。したがって、図1に示すように、ミラー間キャビティ内の媒質を液晶層9と透明誘電体層12とで構成し、平均屈折率N(V)の屈折率変化割合が3%程度となるように液晶層9を薄くすることが好ましい。その結果、透過率ピークの波長λの温度変化も減少する。
【0059】
また、液晶層9と透明誘電体層12との界面でのフレネル反射を低減するため、透明誘電体層12の屈折率nを液晶層9に電圧を印加しないときの屈折率と略等しくすることが好ましい。このとき、平均屈折率N(V)の屈折率変化割合を3%程度とするためには、液晶層9の層厚dLCをキャビティ間隔Gの1/2から1/4程度とすればよい。
【0060】
第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に印加する電圧Vのうち、液晶層9に印加される電圧VLCは、透明誘電体層12の比誘電率εと液晶の比誘電率εLCを用いて、以下の式(10)によって表される。
LC/V=ε/(ε+εLC) (10)
したがって、透明誘電体層12の比誘電率εが大きいほど液晶層9に有効に電圧が印加されるため、低い電圧で大きな屈折率変化(すなわち、透過率ピークの波長変化)を得ようとする場合は、比誘電率εの大きな透明誘電体層12を用いるのが好ましい。一方、印加電圧Vに対する透過率ピークの波長変化を緩やかにして波長制御性を向上させるには、比誘電率εの比較的小さな透明誘電体層12を用いるのが好ましい。
【0061】
上記の液晶エタロン20を波長可変フィルタとして用いる場合、WDMバンドの波長帯以外にも透過率ピーク間隔FSRの波長間隔で透過率ピークが発生するため、上記の液晶エタロン20をそのままWDM通信用の波長選択素子として用いることはできない。特に、半導体光増幅素子を利得媒体として用いる波長可変レーザにおいて、レーザ共振器内に液晶エタロン20を配置した場合、半導体光増幅素子は100nm程度の広い波長幅で利得を有するため、所望のWDMバンドの波長帯内の波長チャネルの発振光以外に波長帯外の波長の発振光も発生してしまい、WDM通信用の波長可変レーザとしては使用できない。
【0062】
そのため、波長可変ミラー100は、このような所望のWDMバンドの波長帯外の波長の発振光を生成させないように、第3の高反射ミラー10に以下の光学特性を持たせている。すなわち、第3の高反射ミラー10は、WDMバンドの波長帯内の波長に対しては反射率が発振閾値条件を満たすように高い反射率Rをとり、それ以外の波長域では発振閾値条件を満たさない程度の低い反射率Rをとる分光反射率を有する。係る分光反射率は、第3の高反射ミラー10を光学多層膜ミラーとすることによって実現されている。
【0063】
その結果、波長可変ミラー100は、液晶エタロン20を透過した光を第3の高反射ミラー10で反射させ、再び液晶エタロン20を透過させる構成を有し、所望のWDMバンドの波長帯内で印加電圧Vに応じて反射率ピークの波長を変化させ、かつ、この反射率ピークの半値全幅を狭くできるようになる。また、このように構成された波長可変ミラー100は、所望のWDMバンドの波長帯以外の波長光をほとんど反射しないものとなる。ここで、液晶エタロン20の往路透過光の透過率ピークの半値全幅δが1.2nm程度でも、往復透過することにより透過率ピークの半値全幅はδ/√2=0.8nm程度に狭帯域化され、ITUグリッドで規定されるWDM通信の使用波長チャネルの半値全幅100GHz程度となる。
【0064】
第1の高反射ミラー5の反射面および第2の高反射ミラー6の反射面と、第3の高反射ミラー10の反射面とは、傾斜角θを成すため、液晶エタロン20の第1の高反射ミラー5の反射面および第2の高反射ミラー6の反射面で反射された光と、第3の高反射ミラー10で反射された光の進行方向は異なる。図3に、第3の高反射ミラー10の反射面に対して垂直入射となるように波長可変ミラー100に平行光を入射させたときに、第3の高反射ミラー10で反射されて入射光と同じ光路を経て波長可変ミラー100から出射する光線を実線で、液晶エタロン20の第1の高反射ミラー5の反射面および第2の高反射ミラー6の反射面等で反射されて波長可変ミラー100から出射する光線を破線で示す。
【0065】
第1の高反射ミラー5と第3の高反射ミラー10とによる多重反射光、および、第2の高反射ミラー6と第3の高反射ミラー10とによる多重反射光も同様に、第3の高反射ミラー10で反射された光とは、進行方向が異なる。したがって、第3の高反射ミラー10に垂直に入射し、入射光と同じ光路に反射された光のみを分離して取り出すことができ、波長選択ができる波長可変ミラーの機能が実現できる。
【0066】
第1の高反射ミラー5および第2の高反射ミラー6は、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜とを、それぞれの光学膜厚がWDMバンドの波長帯の中心波長λに対してλ/4程度となるように交互に積層したものとして構成され、広い波長帯域で反射率Rが92%以上95%以下の分光特性を有するものである。
【0067】
一方、第3の高反射ミラー10は、WDMバンドの帯域幅Δλにわたり高い反射率Rを有し、このWDMバンドの周辺波長域で光を透過させる低い反射率Rを有する分光特性とする。例えば、Mを3以上の奇数とし、高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜とをそれぞれの光学膜厚が、M×λ/4程度となるように高屈折率誘電体膜と低屈折率誘電体膜とを交互に積層することにより、所望の分光反射率が得られる。
【0068】
高屈折率誘電体膜の屈折率、低屈折率誘電体膜の屈折率、反射率Rの波長帯域(以下、反射波長帯という。)の帯域幅、および、反射波長帯における反射率Rに応じて、Mの適した値および多層膜の層数が定まる。なお、以下では、反射率がRの波長帯域を透過波長帯という。
【0069】
半導体光増幅素子を利得媒体とする波長可変レーザでは、第3の高反射ミラー10を共振器用ミラーとして用いて、WDMバンドの波長帯内の波長チャネルの発振光のみを得るためには、第3の高反射ミラー10の反射波長帯の反射率Rが80%以上で、透過波長帯の反射率Rが20%程度以下となるようにすることが好ましい。なお、第3の高反射ミラー10は、反射波長帯と透過波長帯の境界域の10nm程度の波長幅で反射率が急激に変化する分光特性となっている。また、反射率Rを95%以下とすることにより、第3の高反射ミラー10から光を取り出し光量を検出し、利得媒体の利得制御に利用できる。
【0070】
以下に、本発明の波長可変ミラー100の作用について説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラー100を構成する液晶エタロン20の光学特性を説明するための図である。図4(A)は、波長可変ミラー100を構成する液晶エタロン20の分光透過率の一例を示す図である。また、図4(B)は、波長可変ミラー100を構成する第3の高反射ミラー10の分光反射率の一例を示す図である。さらに、図4(C)は、図4(A)に示す分光透過率と、図4(B)に示す分光反射率と、図4(A)に示す分光透過率との積に相当する、波長可変ミラー100の分光反射率を示す図である。
【0071】
図4(A)に示すように、液晶エタロン20単独では、透過率ピーク間隔FSRの波長間隔で透過率ピークが発生し単一の透過光を選択することはできない。しかし、図4(B)に示す分光反射率を有する第3の高反射ミラー10と、図4(A)に示す分光透過率を有する液晶エタロン20とを一体化して、波長可変ミラー100とすることにより、図4(C)に示す分光反射率を有することとなる。すなわち、図4(C)に示すように、反射率ピークが存在する波長域は、WDMバンドの帯域幅△λに相当する波長λから波長λまでの領域に限定される。
【0072】
また、光が液晶エタロン20中を往復することにより、反射率ピークの半値全幅がδ/√2に狭められ、大幅な波長分解能の向上となる。また、波長可変ミラー100としての光損失は、液晶エタロン20のフィネスFが35から60程度と比較的小さなため、キャビティ内に光損失が残留しても抑制できる。さらに、第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に印加する電圧に応じて、反射率ピークの波長をλからλ程度までの範囲で変化させることができる。
【0073】
なお、本発明の第1の実施の形態では、波長可変ミラー100を構成する3つの高反射ミラー5、6、10のうち、第3の高反射ミラー10が、WDMバンドの帯域幅Δλの特定の波長域の光を反射し、この反射波長帯の周辺の波長域の光を透過する分光特性を有する構成としたが、必ずしもこの構成に限定されるものではなく、他の構成でもよい。
【0074】
すなわち、以下の第1の他の構成でもよい。第1の他の構成では、第1の高反射ミラー5と第2の高反射ミラー6のうちのいずれか一方が、WDMバンドの帯域幅Δλ(42nm程度)の波長域において、反射率Rが92%以上95%以下で、かつ、この周辺の波長域では反射率Rが20%程度以下の分光特性を有する。一方、第3の高反射ミラー10は、その反射率Rが少なくともWDMバンドの帯域幅Δλ(42nm程度)の波長域において80%から95%程度であればよく、その周辺の波長域での反射率に制約はない。
【0075】
上記の第1の他の構成を有する波長可変ミラーでは、WDMバンドの波長帯の外の波長域の入射光は、液晶エタロン20の第1の高反射ミラー5または第2の高反射ミラー6により大半が反射され、第3の高反射ミラー10にほとんど到達しない。その結果、所望の波長チャネルの光を選択できる波長可変ミラーが得られる。
【0076】
また、第2の他の構成として、例えばCバンドの波長帯の波長チャネルを選択するために、第1の高反射ミラー5と第2の高反射ミラー6とを以下のようにするのでもよい。すなわち、第1の高反射ミラー5の分光特性を、Cバンドの波長帯を含みCバンドより長波長側の帯域(帯域幅Δλが例えば42nm程度またはこれ以上とする。以下、第1の長波長帯域という。)での反射率Rが92%以上95%以下で、Cバンドより短波長側の帯域(以下、第1の短波長帯域という。)での反射率Rが20%程度以下とする。これによって、上記の第1の長波長帯域では反射波長帯が得られ、上記の第1の短波長帯域では透過波長帯が得られる。
【0077】
そして、第2の高反射ミラー6の分光特性を、Cバンドの波長帯を含みCバンドより短波長側の帯域(帯域幅Δλが例えば42nm程度またはこれ以上とする。以下、第2の短波長帯域という。)での反射率Rが92%以上で95%以下で、Cバンドより長波長側の帯域(以下、第2の長波長帯域という。)での反射率Rが20%程度以下とする。
【0078】
これによって、上記の第2の短波長帯域では反射波長帯が得られ、上記の第2の長波長帯域では透過波長帯が得られる。この場合も、第3の高反射ミラー10は、その反射率Rが少なくともCバンドの波長帯の帯域幅(42nm程度)の波長域において80%から95%程度であればよく、その周辺の波長域での反射率に制約はない。
【0079】
上記の第2の他の構成を有する波長可変ミラーでも、WDMバンドの波長帯の外の波長域の入射光は、液晶エタロン20の第1の高反射ミラー5または第2の高反射ミラー6により大半が反射され、第3の高反射ミラー10にほとんど到達しない。その結果、所望の波長の光を選択できる波長可変ミラーが得られる。
【0080】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラーは、入射光が液晶エタロンを往復透過することにより、透過率ピークの半値全幅を狭帯域化できると共に、3枚の高反射ミラーを組み合わせて不必要な透過率ピークで透過する光を除去し実効的にFSRが拡張できるため、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出すことができる。
【0081】
また、第3の高反射ミラーに反射波長帯と透過波長帯とからなる分光特性を持たせ、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーが入射光の全波長帯域で光を反射させるようにできるため、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーとの分光特性を単純化できる。
【0082】
また、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーはそれぞれ別個の分光反射率持たせられるため、第1の高反射ミラーと第2の高反射ミラーとを組み合わせて波長選択を行う波長帯域を決定できる。
【0083】
また、透明膜である透明誘電体層が液晶の屈折率と同一または近い屈折率を有するため、液晶層界面でのフレネル反射を抑制できる。さらに、液晶層を薄くできるため、温度変化に対する透過率ピークの変動が減少する。
【0084】
(第2の実施の形態)
以下では、本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラーを用いた波長可変レーザについて説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザ200の構成を示す模式図である。本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザ200は、波長可変ミラー100と、波長可変ミラー100を制御するための交流電源16と、レーザ共振器用の光出力ミラー14と、光増幅用の利得媒体15とを備える。
【0085】
利得媒体15は、波長可変ミラー100と光出力ミラー14との間に設けられ、例えば、半導体光増幅素子によって構成される。光出力ミラー14は、波長可変域であるWDMバンドの波長帯で、光を部分的に透過させ、部分的に反射する分光特性を有する。ここで、波長可変ミラー100の第1の高反射ミラー5が利得媒体15側に面するとともに、第3の高反射ミラー10と光出力ミラー14とによってレーザ共振器が構成されるように、これらの反射面を略平行に配置する。また、交流電源16は、矩形波形の交流電圧を発生し、発生した交流電圧が波長可変ミラー100の第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に印加されるようになっている。
【0086】
なお、必要に応じて、レーザ発振波長をモニタするために、利得媒体15と波長可変ミラー100との間に不図示のファブリペロ−エタロンフィルタを配置してもよい。また、利得媒体15として半導体光増幅素子を用いるとき、半導体光増幅素子との結合効率を所定値以上に確保するため、集光レンズ等をレーザ共振器内に配置してもよい。さらに、利得媒体15の光出力ミラー14側の面を、光出力ミラー14の反射面と同様の反射を起こさせる面とし、光出射ミラー14を省いて波長可変レーザ200を小型化してもよい。
【0087】
以下、本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザ200の作用について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザ200の光学特性を説明するための図である。図6(A)は、波長可変レーザ200を構成する利得媒体15で得られる利得の波長依存性の一例を示す図である。また、図6(B)は、波長可変ミラー100の分光反射率を示す図である。さらに、図6(C)は、波長可変レーザ200のレーザ出射光の分光スペクトルを示す図である。利得媒体はWDMバンドの波長帯である波長λから波長λの領域を含む広い波長帯域で発振閾値より高い利得を有する。
【0088】
波長可変ミラー100を波長可変レーザ200の共振器用のミラーとして用いることにより、波長λからλの領域に限定して発振閾値を超える利得が得られるようにできる。その結果、波長可変レーザ200は、所望のWDMバンドの波長帯の波長のみのレーザ光を出射することとなる。ここで、波長可変ミラー100を構成する第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に交流電源16が発生した交流電圧を印加し、その印加電圧を調整することにより、図6(B)に示す透過率ピークの波長が変化するため、レーザ出射光の波長を波長λから波長λまでの範囲内で変化させることができる。
【0089】
このように、本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザ200では、従来の波長可変レーザに比して、可動部のない波長可変ミラー100を共振器用のミラーとして用いるため、小型・軽量化が図れるとともに、安定した動作と高い信頼性が得られる。また、波長可変ミラー100に用いられる液晶は、比較的低電圧で駆動し、電流がほとんど流れないため低消費電力で動作できる。
【0090】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザは、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出せる波長可変ミラーを用いて波長選択を行うことによって、広い波長帯域を有するレーザ発振光からWDM通信に用いる所望の波長チャネルの光を選択的かつ可変に取り出して出射できるため、WDM通信に用いることができる。
【0091】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラー100および本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザ200の具体的な実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例】
【0092】
「例1」
本実施例1では、第2の基板2を、平行平面基板と傾斜角θが3°のウェッジ基板とで構成した。そして、第3の高反射ミラー10を液晶エタロン20とは別個に作製し、第3の高反射ミラー10と液晶エタロン20とを作製した後に、これらを光学接着材を用いて接着して一体化し、波長可変ミラー100とする。以下、第2の基板2を構成する平行平面基板を第2の平行平面基板といい、第2の基板2を構成するウェッジ基板を第2のウェッジ基板という。
【0093】
まず、第1の基板1および第2の平行平面基板として平行平板の石英を用い、第1の基板1および第2の平行平面基板の片面に膜厚10nmのITO膜を成膜し、第1の透明電極3および第2の透明電極4とする。さらに、第1の基板1の他方の面に反射防止膜13を形成する。
【0094】
次に、第1の基板1および第2の平行平面基板における透明電極3、4が形成された面に、波長λが1550nmで、屈折率が2.10のTaと、屈折率が1.45のSiOとを交互に真空蒸着法により成膜して光学多層膜を形成し、第1の高反射ミラー5および第2の高反射ミラー6とする。ここで、電源を印加するための透明電極3、4の一部の領域には成膜しない(図2参照)。光学多層膜の各膜の光学膜厚をλ/4程度とすることで、1500nmから1600nmの広い波長帯域で反射率が92.5%程度となる。
【0095】
次に、第1の基板1の第1の高反射ミラー5が形成された面に、プラズマCVD法により、屈折率nが1.60、非誘電率εが5、膜厚dが10μmのSiO膜を透明誘電体層12として形成する。
【0096】
次に、第1の基板1上に形成された透明誘電体層12の表面および第2の平行平面基板上に形成された第2の高反射ミラー6の表面における光入射有効領域に、ポリイミドを膜厚5nm程度となるように塗布して硬化させる。ポリイミドの膜が硬化したら、図1に示すX軸方向にラビング処理して第1の配向膜7および第2の配向膜8とする。
【0097】
次に、第2の平行平面基板上に形成された第2の高反射ミラー6の表面に、直径6.1μmのギャップ制御材が混入された接着材を印刷でパターニングしてシール11を形成する。シール11を形成したら、第1の基板1上の透明誘電体層12の表面とシール11とが接触するように第1の基板1と第2の平行平面基板とを重ね合わせて圧着し、第2の高反射ミラー6と透明誘電体層12との間隔dLCが6.1μmの空セルを作製する。その結果、第1の高反射ミラー5と第2の高反射ミラー6との間隔Gは、16.1μmとなる。
【0098】
その後、液晶を空セルの不図示の注入口から注入し、その注入口を封止して液晶層9を形成し、図1および図2に示す液晶エタロン20とする。
【0099】
図7は、本発明の実施例1に係る波長可変ミラー100を構成する液晶エタロン20の光学特性を説明するための図である。図7(A)は、上記で説明した方法で作製された液晶エタロン20の、分光透過率の計算結果示す図である。図7(A)には、第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に交流電源を用いて矩形波の交流電圧Vを印加するときの透過率ピークの波長λの変化も示されている。図7(A)に示すように、液晶エタロン20は、透過率ピーク間隔FSRが約45nm、透過率ピークの半値全幅δが1.2nm程度、最大透過率Tmaxが約90%の分光特性を有する。
【0100】
液晶エタロン20の最大透過率Tmaxは、第1の高反射ミラー5、第2の高反射ミラー6、ミラー間キャビティ内の液晶層9等による光損失、第1の透明電極3および第2の透明電極4の光吸収等によって制限される。また、印加電圧Vを0Vから17Vまで変化させることにより、図7(A)中に記号a〜eを用いて示すように、透過率ピークの波長λが1570nmから1525nmまで変化する。
【0101】
しかし、図7(A)中には、透過率ピーク間隔FSRの波長間隔で他の透過率ピークも存在する。ここで、記号a〜eは、それぞれ、印加電圧Vを0V、4V、8V、12V、16Vとしたときの透過率ピークの位置を示す。また、透過率ピークの波長λは、印加電圧Vを連続的に変化させることによって連続的に変化する。
【0102】
次に、傾斜角θが3°のウェッジ付き石英基板である第2のウェッジ基板の片面に、波長λが1550nmで、屈折率が2.10のTaと、屈折率が1.45のSiOとを交互に真空蒸着法により成膜して光学多層膜を形成し、第3の高反射ミラー10とする。第3の高反射ミラー10は、WDM通信のCバンドにほぼ対応する1530nmから1565nmまでの波長域で反射率Rが80%から96%となり、この波長域の周辺(1500nmから1520nmまでの波長域および1575から1600nmまでの波長域)で反射率Rが20%以下となるように各層の膜厚を設計する。ここで、反射率Rを100%としていないのは、波長可変ミラーの透過光の光量を検知し、レーザ発振状態をモニタするためである。
【0103】
具体的には、各層の光学膜厚をλ/4の奇数倍(7から15倍程度)の厚膜とすることにより、反射率Rの反射波長帯の狭帯域化と、反射率Rの透過波長帯を有する分光特性が得られる。実際には、反射率Rの反射波長帯および反射率Rの透過波長帯における反射率の波長依存性を平坦化するために、各層の膜厚を調整したり、層間に薄膜層を付加して分光特性を調整する。表1に、23層膜から成る第3の高反射ミラー10の多層膜構成の一例を示す。また、図7(B)に、この第3の高反射ミラー10の分光反射率の計算結果を示す。
【0104】
【表1】

【0105】
次に、液晶エタロン20の第2の平行平面基板と第3の高反射ミラー10の第2のウェッジ基板とを光学接着剤を用いて接着固定し、波長可変ミラー100とする。図7(C)は、上記のように作製した波長可変ミラー100に、第3の高反射ミラー10の反射面に対して垂直入射となるよう平行光が入射され、第3の高反射ミラー10で反射されて入射光と同じ光路を経て波長可変ミラー100から出射するときの、分光反射率の計算結果を示す図である。
【0106】
図7(C)に示す分光反射率は、液晶エタロン20を往路で透過し、第3の高反射ミラー10で反射され、液晶エタロン20を復路で透過する光についてのものであるため、図7(A)に示す分光透過率と、図7(B)に示す分光反射率と、図7(A)に示す分光透過率とを掛け合わせたものに相当する。また、反射率ピークの半値全幅は0.8nm程度に狭帯域化され、ITUグリッドで規定されるWDM通信の使用波長チャネルの半値全幅100GHz相当となる。
【0107】
印加電圧Vを0Vから17Vまで変化させると、図7(C)に記号b〜eを付したピークと包絡線とで示すように、1525nmから1565nmまでの波長域で、60%以上の反射率の反射率ピークが得られ、印加電圧の連続な変化に応じて反射率ピークの波長も連続的に変化する。また、1500nmから1520nmまでの波長域および1570nmから1600nmまでの波長域で出現する反射光の反射率ピークは、反射率が20%以下に抑制されている。
【0108】
したがって、1525nmから1565nmまでの波長域において、反射率ピークの反射率が60%以上80%以下で、反射率ピークの半値全幅が0.8nm程度と狭い分光特性を有し、印加電圧に応じて反射率ピークの波長が変化する波長可変ミラー100が実現される。
【0109】
本発明の実施例1では、波長可変ミラー100が、分光透過率の印加電圧依存性が図7(A)に示す液晶エタロン20と、分光反射率が図7(B)に示す第3の高反射ミラー10とによって構成される例について説明したが、必ずしもこの構成に限定されるものではなく、他の構成でも電圧依存性を有する種々の分光反射特性を実現できる。いずれの場合も、液晶エタロン20を単独で用いた場合に透過率ピーク間隔FSRの間隔で発生する所望のWDMバンドの波長帯外の波長光を、反射率に大きな波長依存性を有する第3の高反射ミラー10を用いることによって抑制できる。
【0110】
「例2」
以下では、図5に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラー100または本発明の実施例1に係る波長可変ミラー100を、本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザ200の波長可変ミラーとして搭載した実施例について説明する。
【0111】
レーザ共振器用の光出力ミラー14として、1500nmから1600nmまでの波長域で、反射率が10%前後で大半の光を透過する分光特性を有するものを用いる。また、利得媒体15として、図6(A)に示すように、1500nmから1600nmまでの波長域で高い利得を有する半導体光増幅素子を用いる。
【0112】
利得媒体15としての半導体光増幅素子に電流を注入し注入電流を増加させると、利得媒体15の利得が増加してレーザ共振器内の光損失と利得媒体15の利得とによって決まるレーザ発振閾値に達し、レーザ発振が起こり、レーザ発振光が光出力ミラー14から出射する。レーザ発振閾値は、図7(C)に示す波長可変ミラー100の分光反射率に依存し、反射率が60%のときにレーザ発振するように注入電流を設定しておくと、反射率が60%以上の波長域ではレーザ発振するが、反射率が60%未満の波長域ではレーザ発振しない。
【0113】
図8は、波長可変ミラー100を構成する第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に印加する電圧Vを変化させたときのレーザ出力光の波長変化の計算値を示す図である。図8に基づいて、WDM通信のCバンドの波長帯に対応する1525nmから1565nmまでの波長域において、半値全幅100GHz相当の波長幅0.8nm程度の単一波長のレーザ出力光が得られ、波長可変ミラー100の印加電圧に応じてレーザ出力光の波長が1525nmから1565nmまで変化する波長可変レーザ200が実現できることが示される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る波長可変ミラーおよび波長可変レーザは、広い波長帯域の入射光から所望の波長の光を選択的かつ可変に取り出すことできるという効果と、WDM通信用のレーザ光源として使用できるという効果が有用な波長可変ミラーおよび波長可変レーザ等として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラーの一構成例を示した断面図
【図2】図1に示す波長可変ミラーを図1に示すZ軸方向から見たときの図。
【図3】第3の高反射ミラーの反射面に対して垂直入射となるように波長可変ミラーに平行光を入射させたときに、各部から反射される光の光路を説明するための図
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る波長可変ミラーを構成する液晶エタロンの光学特性を説明するための図
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザの構成を示す模式図
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る波長可変レーザの光学特性を説明するための図
【図7】本発明の実施例1に係る波長可変ミラーを構成する液晶エタロンの光学特性を説明するための図
【図8】波長可変ミラーを構成する第1の透明電極3と第2の透明電極4との間に印加する電圧Vを変化させたときのレーザ出力光の波長変化の計算値を示す図
【符号の説明】
【0116】
1、2 基板
3、4 透明電極
5、6、10 高反射ミラー
7、8 配向膜
9 液晶層
11 シール
12 透明誘電体層
13 反射防止膜
14 光出力ミラー
15 利得媒体
16 交流電源
20 液晶エタロン
100 波長可変ミラー
200 波長可変レーザ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層と、前記液晶層に電圧を印加するための第1の透明電極および第2の透明電極と、所定の波長の光を反射する第1の高反射ミラーおよび第2の高反射ミラーとを有し、所定の波長の光を透過させる液晶エタロンと、
所定の波長の光を反射する第3の高反射ミラーとを備え、
前記第1の高反射ミラーの反射面と前記第2の高反射ミラーの反射面とが互いに平行であり、前記第3の高反射ミラーの反射面が前記第1の高反射ミラーの反射面および前記第2の高反射ミラーの反射面に対して傾斜し、
前記第1の高反射ミラーと前記第2の高反射ミラーと前記第3の高反射ミラーのうちの少なくとも一つは、入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有することを特徴とする波長可変ミラー。
【請求項2】
前記第1の高反射ミラーと前記第2の高反射ミラーは、前記入射光の全波長帯域で光を反射し、前記第3の高反射ミラーは、前記入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有する請求項1に記載の波長可変ミラー。
【請求項3】
前記第1の高反射ミラーは、前記入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有し、前記第2の高反射ミラーは、前記入射光の波長帯域のうちの所定の一部の波長帯域での反射率が、前記入射光の波長帯域のうちの他の波長帯域での反射率に比して高い分光反射率を有し、前記第3の高反射ミラーは、前記入射光の全波長帯域の光を反射する請求項1に記載の波長可変ミラー。
【請求項4】
前記液晶エタロンは、前記液晶層の液晶を配向させるための第1の配向膜および第2の配向膜を有し、前記第1の高反射ミラーと前記第2の高反射ミラーのうちの少なくとも一方の高反射ミラーは、前記第1または/および第2の配向膜に面する側に、前記液晶の屈折率と同一または近い屈折率を有してフレネル反射を抑制する透明膜が形成されている請求項1から3までのいずれか1項に記載の波長可変ミラー。
【請求項5】
2つの反射面を有する共振器と、
光増幅を行う利得媒体とを備え、
前記共振器は、請求項1から4までのいずれか1項に記載の波長可変ミラーを有し、前記共振器が有する2つの前記反射面のうち少なくとも1つの前記反射面が、前記波長可変ミラーが有する第3の高反射ミラーの反射面で構成され、前記第1の透明電極と前記第2の透明電極との間に印加する電圧に応じて選択的に出射光の波長を制御することを特徴とする波長可変レーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−19514(P2006−19514A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195855(P2004−195855)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】