説明

洗濯乾燥機

【課題】ファンモータの回転数を制御することによりヒータ電流値を制御して全電流値がブレーカ容量を越えないようにする場合、ヒータ電流を検出する手段を別途格別に設ける必要がなく、コストアップとなることを防ぎ、構造も複雑になることのない洗濯乾燥機を得る。
【解決手段】洗濯兼脱水槽2内に温風を供給するためのヒータ6a、ファンモータ6bとヒータの入口温度を検出する吸気温度センサ9を備えた洗濯乾燥機において、ヒータ入口温度によりファンモータ6bの回転数を可変とすることによりヒータ電流値を制御する制御装置7を設け、洗濯乾燥機全体の消費電流値がブレーカ容量を越えないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電流を制御することで乾燥効率を向上する洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯乾燥機が設置される一般家庭においては、供給されている交流電圧は100Vである。このため、洗濯乾燥能力を高めるために、洗濯乾燥機の消費電力を高めるには、電流を増加させることになるが、電流についても一般家庭においてはブレーカ容量が例えば15アンペアに限定されている。
【0003】
洗濯乾燥能力を高めるため、すなわち乾燥時間を短縮するために、ブレーカ容量の限度いっぱいで電流を使用することになるが、ブレーカが落ちないようにするには、電流制御する必要がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
前記特許文献に記載の技術は、ヒータ電流値(全電流からヒータ電流以外を除く)を検出する電流検出手段と、周囲温度を検出する温度検知手段と電源電圧検知手段と送風手段の駆動源である送風ファンモータの回転検知手段を設け、全電流値が15(A)を越えないよう、運転開始時の周囲温度、電源電圧により、予め定められたヒータ電流値になるよう、送風ファンモータの回転数(送風量)で調節制御するものである。
【特許文献1】特開2004−8275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例は、電流値がブレーカ容量を越えないようにする方法として、乾燥行程において洗濯物に温風を供給するためのヒータ電流値を直接検出して、この電流値をもとにしてファンモータの回転数を制御するものであるため、ヒータ電流値を検出するための電流センサを別途必要とする。
【0006】
このため、部品点数が増え、コストアップとなり、構造も複雑となる。
【0007】
本発明は前記従来例の不都合を解消するものとして、ファンモータの回転数を制御することによりヒータ電流値を制御して全電流値がブレーカ容量を越えないようにする場合、ヒータ電流を検出する手段を別途格別に設ける必要がなく、コストアップとなることを防ぎ、構造も複雑になることのない洗濯乾燥機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、洗濯兼脱水槽内に温風を供給するためのヒータ、ファンモータとヒータの入口温度を検出する温度センサを備えた洗濯乾燥機において、ヒータ入口温度によりファンモータの回転数を可変とすることによりヒータ電流値を制御する制御手段を設け、洗濯乾燥機全体の消費電流がブレーカ容量を越えないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上述べたように本発明の洗濯乾燥機は、ヒータ入口温度すなわちヒータへの吸気温度が上がるとヒータ電流値が下がることに着目して、洗濯乾燥機に備わっているヒータ入口温度を検出する温度センサからのヒータ入口温度検出値をもとにして、ファンモータの回転数を可変とすることで、ヒータ電流値を制御して洗濯乾燥機全体の消費電流がブレーカ容量を越えないようにした。
【0010】
よって、ファンモータの回転数を制御するために、ヒータ電流値を検出するための手段を別途格別に設けることなく、ヒータ電流値を制御でき、コストアップになることや構造が複雑になることを防げる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の洗濯乾燥機の実施形態を示す縦断側面図で、洗濯乾燥機の全体構成を説明すると、水槽1の内底部には回転自在に軸支された洗濯兼脱水槽2が設けられ、この洗濯兼脱水槽2の内底部には洗濯物と洗濯液とを攪拌する回転翼3が回転自在に設けられる。
【0012】
水槽1の下部には前記洗濯兼脱水槽2と回転翼3を回転駆動する駆動装置4が設けられ、駆動装置4には回転翼3の回転を検出する回転センサ5が、モータ負荷トルク検出手段として設けられる。
【0013】
洗濯兼脱水槽2の上部にはヒータ6aとファンモータ6bからなる加熱装置6が設けられている。
【0014】
駆動装置4や加熱装置6を駆動制御する制御装置7が外箱8に設けられ、制御装置7は制御プログラムを格納したマイコンによって駆動装置4の電源をオンオフする制御素子等で構成される。
【0015】
駆動装置4は、洗濯脱水モータ4aと変速装置4bとで構成され、洗濯脱水モータ4aの回転を変速装置4bで洗濯、脱水、乾燥に利用する。洗濯脱水モータ4aが駆動して変速装置4bが直接回転させる回転翼3の回転に対応したパルスを、変速装置4bの内部にある回転センサ5が発生する。
【0016】
回転センサ5は、例えば回転翼3と連動して回転する円盤の周囲に磁石を複数個設け、ホール素子あるいはリードスイッチで磁石を検知し、この検知に対応したパルスを発生させる。複数のスリットを設けた円盤とフォトセンサの組合せ等でもよい。
【0017】
さらに、加熱装置6の吸気口付近に室内の温度、すなわちヒータの入口温度を検出する吸気温度センサ9を設け、水槽1の上部近傍に洗濯物からの排気温度を検出する排気温度センサ10を設ける。
【0018】
かかる洗濯乾燥機において、乾燥行程においては駆動装置4が駆動して回転翼3が回転し洗濯物を攪拌しながら、加熱装置6を運転して洗濯物の温風を吹き付けた洗濯物に含まれている水分を蒸発させ乾燥させる。
【0019】
この乾燥行程において、ヒータ電流値がブレーカ容量を越えないようにしつつ乾燥効率をアップさせるには、第1実施形態として加熱装置6のヒータ入口温度を吸気温度センサ9で検出し、この吸気温度値によってファンモータ6bの回転数を変化させる。ここでヒータ電流値とは、ブレーカ容量(例えば15A)から洗濯脱水モータ等、ヒータ電流以外の電流(例えば2A)を差引いた値であり、このヒータ電流値(例えば12A)を設定しておく。
【0020】
洗濯乾燥機は家庭では一般的に洗面脱衣所等の狭い場所に設置されており、洗濯乾燥機を運転するとここからの排気熱によって洗面脱衣所の室内温度が徐々に上昇する。この室内温度を乾燥行程において吸気温度(ヒータ入口温度)として吸気温度センサ9で検出する。
【0021】
ここで吸気温度とヒータ入力(W)との関係をみると、図2のグラフに示すように吸気温度が高くなるに従いヒータ入力値(W)は低下する。すなわち、乾燥行程が進行して吸気温度が高くなると、電流値は低下する。
【0022】
この関係にもとづいて、本発明では乾燥行程が進行し吸気温度が上昇してくれば、これに比例して電流値が上がるようにファンモータ6bの回転数を上げる。
【0023】
すなわち、図3のグラフに示すように例えば1200Wのヒータ入力値を得るために、乾燥行程の初期の段階の吸気温度が低い段階では2000rpmの低い回転数でファンモータ6bを回転させ、乾燥行程が進行して吸気温度が65℃の高温に上昇すれば、回転数を上げて3500rpmで回転させる。
【0024】
このようにして吸気温度の上昇に追随してファンモータ6bの回転数を上げることで、図3のグラフに示すように乾燥行程の初期の段階から最後の段階までの間、ヒータ入力値(電流値)を一定、例えば1200Wに保つことができ、ブレーカ容量の範囲内で効率よく乾燥行程を運転できる。
【0025】
第2実施形態では、ヒータ出口温度を排気温度センサ10で検出し、この排気温度値に基づいてファンモータ6bの回転数を可変する。ヒータ出口温度もヒータ入口温度と同様に乾燥行程が進行するにしたがい上昇する。よって、第1実施形態と同様の制御でファンモータ6bの回転数を乾燥行程の進行に伴い徐々にあげていき、電流値がブレーカ容量を越えないように一定に保つ。
【0026】
第1、第2実施形態の場合、洗濯乾燥機が設置される室内の周囲温度(外気温度)が上昇すると、ブレーカの温度も上昇し、電流値が下がることから、第3実施形態として外気温度を温度センサで検出し、この外気温度の値によってブレーカの許容容量を補正し、例えばブレーカの温度が上昇すれば許容電流の設定値を下げる。
【0027】
第4実施形態としては、ファンモータ6bの回転数を制御する場合、共振周波数は避け、制御の信頼性を高める。
【0028】
前記実施形態は温度変化を検出してこの温度値によって電流値が一定に保たれるようにファンモータ6bの回転数を可変したが、第5実施形態は、乾燥行程が進行するにしたがい、負荷トルク検出手段である回転センサ5で検出される洗濯脱水モータ4aの負荷トルクが減少するにしたがい、減少量に応じてヒータ電流を増加させるようにした。
【0029】
乾燥行程が進行して洗濯物に含まれている水分が減少すると回転翼3に加わる負荷トルクが減少し、回転センサ5でパルス数の変化として検出される。よって、この負荷トルクの減少を捉えて、乾燥行程が進行したものと判断し、減少分だけヒータ電流を増加させてヒータ電流値が乾燥行程の初期の段階からブレーカ容量の範囲で一定に保たれるようにする。
【0030】
前記負荷トルク検出手段は前記のような回転センサ5でもよいが、これに限定されるものではなく、洗濯脱水モータ4aに供給される電流を検知する電流センサとすることもできる。この場合は、乾燥行程の進行に伴う負荷トルクの変化が、電流センサで電流値の変化として検出されるから、この電流値の変化をもって乾燥行程の進行を検知し、これに基づいてヒータ電流を増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の洗濯乾燥機の実施形態を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の洗濯乾燥機における吸気温度とヒータ入力との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の洗濯乾燥機におけるファンモータ回転数毎の吸気温度とヒータ入力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 水槽 2 洗濯兼脱水槽
3 回転翼 4 駆動装置
4a 洗濯脱水モータ 4b 変速装置
5 回転センサ 6 加熱装置
6a ヒータ 6b ファンモータ
7 制御装置 8 外箱
9 吸気温度センサ 10 排気温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯兼脱水槽内に温風を供給するためのヒータ、ファンモータとヒータの入口温度を検出する温度センサを備えた洗濯乾燥機において、ヒータ入口温度によりファンモータの回転数を可変とすることによりヒータ電流値を制御する制御手段を設け、洗濯乾燥機全体の消費電流値がブレーカ容量を越えないようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
洗濯兼脱水槽内に温風を供給するためのヒータ、ファンモータとヒータの出口温度を検出する温度センサを備えた洗濯乾燥機において、ヒータ出口温度によりファンモータの回転数を可変とすることによりヒータ電流値を制御する制御手段を設け、洗濯乾燥機全体の消費電流値がブレーカ容量を越えないようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
洗濯兼脱水槽内に温風を供給するためのヒータ、ファンモータと外気温度を検出する温度センサを備えた洗濯乾燥機において、外気温度によりファンモータの回転数を可変とすることによりヒータ電流値を制御する制御手段を設け、洗濯乾燥機全体の消費電流値がブレーカ容量を越えないようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記ファンモータの回転数制御は、ファンモータの共振周波数を避けて行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の洗濯乾燥機。
【請求項5】
洗濯兼脱水槽内に温風を供給するためのヒータ、ファンモータと、乾燥運転中に衣類を攪拌する洗濯脱水モータ、前記洗濯脱水モータのモータ負荷トルク検出手段を備えた洗濯乾燥機において、乾燥運転の進行に伴い前記モータ負荷トルク検出手段で検出される負荷トルクの減少にともない、減少量に応じてヒータ電流を増加させる制御手段を設けたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
前記負荷トルク検出手段は、電流センサであることを特徴とする請求項5記載の洗濯乾燥機。
【請求項7】
前記負荷トルク検出手段は、回転センサであることを特徴とする請求項5記載の洗濯乾燥機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−289651(P2008−289651A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138006(P2007−138006)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】