説明

洗濯乾燥機

【課題】温風の加熱源として併用するヒータ装置およびヒートポンプ機構の利点を得ながら、乾燥作用後の温風放出による室内環境の改善、ヒートポンプ機構のコンパクト化などを可能とする。
【解決手段】本体内に設けられ、貯水可能な有底筒状の水槽7と、前記水槽内に縦軸周りに回転可能に設けられた有底筒状の回転槽10と、前記水槽7の上下部に連通して設けられた循環経路20と、乾燥運転時の温風を生成するために設けられ、前記循環経路20中に介在されたヒータ装置24および送風装置25と、ヒートポンプ機構26の蒸発器26bおよび凝縮器26aと、前記水槽7内の温風を本体外に放出可能な排気手段と、を具備した構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥運転時の温風を生成するために、ヒートポンプ機構およびヒータ装置を搭載した洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種、乾燥機能を備えた洗濯乾燥機では、有底筒状の水槽内に縦軸周りに回転可能な回転槽を備え、乾燥運転時には水槽を介して回転槽内に温風を供給し、衣類など接触させて乾燥作用をなした後、本体外に排気する所謂排気タイプの洗濯乾燥機が提供されている。これは、横軸周りのドラム式の洗濯乾燥機に対し、縦型の洗濯乾燥機ともいわれ、従来周知の脱水兼用洗濯機にヒータ装置などで加熱された温風を供給する温風発生ユニットを増設することで、特に大型化することなく簡易な構成でありながら洗濯行程から乾燥行程まで一貫して実行できる利便性を有し、しかもヒータ装置により高温度の温風が得られて短時間に乾燥できるなどの利点を有している(例えば、特許文献1参照)。ただし、この排気タイプでは室内に設置した場合には、室内環境が排気により高温多湿となるなどの影響を受け不快な環境状態を招く難点がある。
【0003】
一方、他の温風発生ユニットとして、例えば上記ドラム式の洗濯乾燥機に多く採用されているように、消費電力量が少ないヒートポンプ機構を採用し、且つ乾燥に供する熱エネルギーの効率化を図るべく、所定温度に加熱した温風を水槽を経てドラム内に循環供給可能としている。このヒートポンプ機構は、周知のように冷媒を圧縮機により凝縮器、膨張弁、および蒸発器の順に循環させる冷凍サイクルからなり、これを循環経路の途中部位に、該経路中を流れる空気に対し熱交換作用により冷却除湿する蒸発器、そして加熱する凝縮器を順に配した構成としていて、所謂空気に対し除湿源および加熱源として機能する。
【0004】
しかして、ヒートポンプ機構を採用した温風循環タイプでは、室内環境を損なわず消費電力量が少ない省エネルギー効果とともに比較的低温度で洗濯物を除湿乾燥するため、しわが少ない良質な仕上がり効果が得られるなどの利点を有することから近年多く採用されている。ただし、ヒートポンプ機構のみで乾燥に必要な温度の温風を得るには大型化し重量大であるため(例えば、圧縮機の排除容積が7cc/rev以上)、通常は洗濯乾燥機の底部側に配置することとなり、そのため水槽を介した長い循環経路を要する配管構成を余儀なくされ、延いては洗濯乾燥機自体の大型化を招くことになり、また乾燥運転初期では温度の立ち上りが遅いなど、ヒータ装置に対して幾つかの難点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−113709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記ヒータ装置による排気タイプが有する優れた乾燥性能と、ヒートポンプ機構による循環タイプが有する消費電力量の低減効果を併せて期待できるように、温風を生成する加熱源などとして機能するヒータ装置とヒートポンプ機構の両手段を搭載した構成とすることが考えられる。しかしながら、両手段を同時に稼動することは一般家庭の電気容量をオーバーするおそれがあるため、これらを個々に稼動して乾燥運転することとなり、これでは依然として上記した排気による室内環境への悪影響とか、ヒートポンプ機構の大型化や温度の立ち上がり特性などの問題は解消できない。
【0007】
本発明は上記問題を解消するため、温風の加熱源としてのヒータ装置および更に除湿源としての機能も併せ有するヒートポンプ機構の利点を得ながら併用可能とし、排気風の放出による室内環境の改善、ヒートポンプ機構のコンパクト化なども期待できる洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の洗濯乾燥機は、外郭を形成する本体内に設けられ、上面を開閉可能に閉鎖し貯水可能な有底筒状の水槽と、前記水槽内に縦軸周りに回転可能に設けられ、多孔状の周壁を有し上面を開口した有底筒状の回転槽と、前記水槽の上下部に連通して設けられ、該水槽の外側を経由する循環経路と、乾燥運転時の温風を生成するために設けられ、前記循環経路中に介在されたヒータ装置および送風装置と、ヒートポンプ機構の蒸発器および凝縮器と、前記水槽内の温風を本体外に放出可能な排気手段と、を具備したことを特徴とする(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0009】
上記手段によれば、乾燥運転時の温風の加熱源として稼動する加熱温度の高いヒータ装置に加え、少ない消費電力量で除湿および加熱できるヒートポンプ機構を備えたので、両者の利点を有効活用できるとともに、必要に応じ温風(排気風)の一部を本体外に放出することで、空気の入れ替えを行い良好な乾燥性能を維持するとともに室内環境の悪化を改善でき、またヒートポンプ機構はヒータ装置との併用で小能力による小型化が可能で、水槽の上部に設置することが容易となり、これら加熱源を介在した循環経路も短くできコンパクト化が可能な洗濯乾燥機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例を示す洗濯乾燥機の全体構成を概略的に示す縦断側面図
【図2】乾燥運転時の主要部の制御内容を示すタイムチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の洗濯乾燥機を示す一実施例につき、図1、図2を参照して説明する。まず、図1に示す洗濯乾燥機の縦断側面図を参照して、該洗濯乾燥機の構成につき述べると、矩形箱状の外箱1と、その上面に被着されたトップカバー2とで洗濯乾燥機の外殻を形成する本体を構成しており、そのトップカバー2の中央側には、衣類などの洗濯物の投入口3を備え、その上面は開閉可能な外蓋4で閉鎖されている。また、洗濯乾燥機の後方(図示左方)には後部カバー5が上方に突出して形成され、その内部には図示しない給水弁とか制御装置などを設けている他、詳細は後述する温風発生ユニット6を設けている。
【0012】
外箱1内には、実質的に無孔状で上面を開口し有底円筒状をなす水槽7が複数の弾性吊持装置8により揺動可能に弾性支持されている。この水槽7内には、周壁に多数の透孔9を有し縦軸周りに回転可能な有底円筒状をなす回転槽10を同心状に配設しており、その内底部には撹拌体11が正逆回転可能に設けられている。なお、水槽7の上面は開閉可能に閉鎖された構成にあって、すなわち上面開口部は槽カバー12が被着されて閉鎖されるとともに、その略中央部には衣類などの洗濯物の出入口13が開口形成され、これを内蓋14により開閉可能に閉鎖している。
【0013】
そして、水槽7の外底部には、モータ駆動部15が設けられている。このモータ駆動部15のモータとして、例えばアウタロータ形のDCブラシレスモータが採用され、そのロータに連結された中空軸16を介して回転槽10をダイレクトに高速回転駆動し、或は回転軸17を介して前記撹拌体11を正逆回転駆動すべく、これらを選択的に回転駆動する構成としている。また、水槽7の最低部位には途中に弁装置としての排水弁18を有する排水管19が接続され、その先端は外箱1外に臨み所謂本体外に排水可能としている。
【0014】
次いで、前記した温風発生ユニット6および温風が循環する経路周辺の構成につき説明する。まず、水槽7の外周囲に形成された循環経路20につき述べると、水槽7上部の槽カバー12の後部には循環経路20を構成するうちの供給ダクト21の下端が連通接続されている。この供給ダクト21は、温風発生ユニット6で生成された温風を水槽7を介して回転槽10内に供給するためのもので、例えば蛇腹状の吸振部21aを有し、その上端が接続される温風発生ユニット6が、トップカバー2或は外箱1の所謂本体側に固定的に設けられているため、水槽7側の振動等が該ユニット6側に伝達されない防振構成としている。
【0015】
これに対し、水槽7の下部側方に連通して垂直に上方に延びた中空筒状のリターンダクト22が、例えば水槽7と一体に樹脂成形されている(勿論、別体に形成して結合する構成でもよい)。この場合、水槽7との連通部位の排出口22aは、水槽7および回転槽10のできるだけ下部側に位置して設けるのが好ましい。これは、温風をできるだけ槽底部まで導き衣類などと温風との接触をよりよくするためである。そして、このリターンダクト22の上端部は、水槽7の上方位置まで延び、やはり蛇腹状の吸振部22bを介して温風発生ユニット6と防振的に連通接続されている。
【0016】
ここで、上記温風発生ユニット6の具体構成につき述べる。まず、温風発生ユニット6としては、前記した供給ダクト21およびリターンダクト22の各上端部と連通接続されるケーシングダクト23を有し、該ケーシングダクト23は、後述するヒータ装置24、送風装置25、ヒートポンプ機構26等を取り付けるためのケーシングを兼ねており、以って水槽7を介在して循環するダクト構成からなる循環経路20が形成されるとともに、温風発生ユニット6は水槽7の上方で後方位置に集中的に配置されている。
【0017】
しかして、ハニカムヒータやシーズヒータなどの電気ヒータからなるヒータ装置24は、ケーシングダクト23のうち前記供給ダクト21が接続される近傍の吹出し側である下流側に配置され、従って該ヒータ装置24の上流側に送風装置25の送風ファン25aが位置して設けられている。この送風装置25の吸気側でもある上流側には、ヒートポンプ機構26を構成するうちの凝縮器26a、蒸発器26bが配置され、圧縮機26cがケーシングダクト23の外側に位置して支持固定されている。このヒートポンプ機構26は、周知のように冷媒を圧縮機26cにより凝縮器26a、図示しない膨張弁、および蒸発器26bの順に循環させる冷凍サイクルからなり、ケーシングダクト23の最も上流側である吸気側に配置した蒸発器26では流れる空気を冷却し、続いて凝縮器26aにて加熱する熱交換作用を有するものである。
【0018】
しかるに、特に除湿源として機能する蒸発器26bでは、空気中の水分が冷却凝縮され水滴となって滴下するため、本実施例では凝縮器26a、蒸発器26bを取り付けるケーシングダクト23の取付台23aは、リターンダクト22側に下降する傾斜面を呈した構成とするとともに、該ケーシングダクト23の下端開口部を形成しており、従って該取付台23a上に滴下した水は伝って流れリターンダクト22の上端開口部に落ちて流下する構成としている。
【0019】
また、リターンダクト22の上部には温度センサ27が設けられ、リターンダクト22を流れる温風(排気風)の温度検知を行い、これに基づき乾燥運転の温度制御をするもので、これは図2の乾燥運転時の制御内容を示すタイムチャートとともに、後の作用説明で詳細に述べる。更に、この温度センサ27の上方に位置するケーシングダクト23の下端開口部には、糸屑などのリントを捕獲するためのフィルタ部材28が設けられており、該ケーシングダクト23内へのリントの侵入を防止しており、つまり該フィルタ部材28は温風発生ユニット6の最上流側に設けられている。
【0020】
なお、本実施例におけるヒートポンプ機構26の圧縮機26cは、排除容積が5cc/rev以下の小能力として小型化を図ったもので、従って斯かるヒートポンプ機構26の単機能では所望の乾燥性能(除湿および加熱性能)を得ることは難しいが、もう一つの温風化の加熱源であるヒータ装置24に対し補助的に設けて、両者による効率的な乾燥作用を得ようとするものである。更に、図1中に示す矢印Aは、乾燥運転時の基本的な温風の流れ方向を示しており、その詳細は後の作用説明で述べるが、例えば矢印Aは、リターンダクト22従って循環経路20を経た循環送風の流れを示し、一方排水管19に流入した流れを示す矢印Bは、排水弁18が開放状態にあることを条件に、温風(これは排気風)の一部を本体外へ放出される流れを示しており、この詳細は後述するが排気手段として機能することを示している。
【0021】
次に、上記構成の洗濯乾燥機の作用について説明する。
まず、洗濯乾燥機の運転作用については、周知のように標準的な運転コースでは、モータ駆動部15の駆動に伴い、撹拌体11による洗い行程およびすすぎ行程が実行され、次いで中空軸16を介して回転槽10が高速回転される脱水行程が自動的に行われ、最後に乾燥行程に移行する。
【0022】
以下、乾燥行程につき特に図2に示すタイムチャートに基づき詳細に説明すると、この乾燥行程では例えば撹拌体11が正逆回転され、回転槽10内の衣類などの洗濯物が適度に撹拌される。そして、図2に示すように、運転開始に伴いヒータ装置24が稼動し(ON)、ヒートポンプ機構26はOFF状態に維持され、また排気手段としても機能する排水弁18は開放動作して排水管19が本体外と連通した状態に保持される。なお、送風装置25は運転開始と同時に稼動され送風ファン25aによる空気の吸入と吹出しによる送風作用が連続して行われ、この送風動作は該運転中継続して実行される。
【0023】
この結果、乾燥行程の運転当初は温風発生装置6を構成するうちのヒータ装置24の通電稼動に伴い、送風ファン25aから吹出された空気がヒータ装置24にて加熱され、温風化される(例えば90℃〜100℃)。そして温風は、矢印Aで示すように供給ダクト21から水槽7内に供給される。しかるに水槽7は、上面開口の出入口13が内蓋14で閉鎖されているので、閉鎖された空間を形成している。ただし、この閉鎖状態は内蓋14の周囲には僅かの隙間があるため、密閉状態には至らない。
【0024】
このように、閉鎖空間を形成する水槽7は乾燥室として機能し、供給された温風は回転槽10の上面開口から主に流入し、撹拌されつつある衣類など(図示せず)と接触して水分を奪うなどの乾燥作用を行い、周壁の透孔9から水槽7側に排出される。この乾燥作用に寄与した後の高湿の温風(排気風)の一部は、矢印Bで示すように排水弁18の開放動作に応じて排水管19を利用して本体外に放出される。この放出された分の空気は、水槽7の内蓋14周囲の隙間や、本体の底部たる外箱1の底部、更には本体上部の外蓋4の周囲など各所の隙間から新たな外気を取り込むことで十分補充され、以って一部空気の入替えが行われる。
【0025】
従って、上記本体外への一部排気分を除く多くの温風(排気風)は、水槽7下部の排出口23に流入しリターンダクト22を上方に流れ、ケーシングダクト23を有する温風発生装置6に戻り、ここでヒータ装置24により新たな温風として再生され、矢印Aで示すように循環経路20および水槽7を経た循環流となる。この結果、高湿の排気風の一部を外部に排気しながら(矢印B)、温風を循環供給する乾燥運転が続行されることから、室内環境への高湿空気の放出を抑えながら、一部新規な外気を取り込みつつ効果的に乾燥作用が行われ、従来ヒータ装置24が有していた不具合な事情(周囲環境への影響)を軽減した乾燥運転が実行可能となる。
【0026】
なお、排気するための排水弁18は、断続的に開閉制御されるようにしている。基本的には所望の排気量を得るべく、排水弁18を開放動作させることにあり、従って連続して所定時間開放することも可能である。しかしながら、連続して開放させることは連続して排気(温風)がなされ、これと同量の新たな外気を吸入することとなり、水槽7や循環経路20などの閉鎖空間内の温度が低下する憂いがあり、或は一度に大量の排気と吸気を可能とする構成とか吸排バランスを考慮する必要がある点で難がある。
【0027】
これに対し、本実施例の如く開閉動作を一定時間毎に繰り返すことは、短時間毎の排気量に追従して内蓋14などの隙間から十分で確実な吸気量を補充できるとともに、閉鎖空間内の温度の低下を抑え、高温の温風の発生および維持するに有利であり、以って一部湿気を含んだ排気風の放出と新たな外気との入替えによる乾燥効率の向上が期待できる。
【0028】
一方、リターンダクト22は外周囲を空気層で囲まれていることから、リターンダクト22の内外で温度差を生じ易く、しかも上下方向に長くて表面積が大きい形状をなしていることから、該ダクト22を介した熱交換作用が期待でき、斯かる場合にはリターンダクト22を通過する排気風を冷却し、水分を凝縮して除湿する作用効果が期待でき、一層効率的な乾燥性能を得ることができる。
【0029】
加えて、運転当初は図2に示す排気温度の特性曲線からも分るように、実質的に外気温度に等しい温度からの立上げとなるため、全体の温風温度としては未だ最適温度には至らない。しかしながら、ヒータ装置24による温度の立上げはヒートポンプ機構26に比して優れていることから、衣類などの乾燥作用を順調に開始することができ、効率的な乾燥作用が早期に実現できる。
【0030】
ところで、上記排気温度はリターンダクト22内に設けた温度センサ27により検出されるのであるが、この排気温度は乾燥運転(衣類などの乾燥状態)が進行するに伴い、生成される温風温度の上昇とともに、飽和蒸気圧が上昇しリターンダクト22側の排気風も高温となる。そこで、本実施例ではこの排気温度が予め設定した所定温度に達したことを温度センサ27により検知したとき、ヒータ装置24、ヒートポンプ機構26、および排水弁18の各稼動パターン(所謂、乾燥態様)が切り替わる制御手段としており、その所定温度を複数段に設定することで、乾燥行程中における切り替えられた運転区分を図2中に、例えば符号イ、ロ、ハ、二、ホ、ヘ、ト、チ、リを付して説明する。
【0031】
具体的に、例えば上記説明した運転初期の運転区分イでは、進行に伴い飽和蒸気圧が上昇し高温となった排気風が所定温度t1に達したことを温度センサ27が検知したとき、運転区分ロに移行するようにしている。そして、この運転区分ロでは、ヒータ装置24への通電が断たれて消勢(OFF)する一方、ヒートポンプ機構26が稼動(ON)され、排水弁18は消勢されて排水管19を閉塞した状態とする。従って、該区分ロにおける乾燥態様は、温風化の加熱源が前段のヒータ装置24に代わってヒートポンプ機構26が担うことになり、この場合、温風の流れは図1中に示す矢印A方向の循環流のみとなり、本体外への排気風の放出はない。
【0032】
しかして、ヒートポンプ機構26を経て生成された温風は、上記同様に衣類などと接触して乾燥作用を行い、リターンダクト22から温風発生ユニット6に戻り、再びヒートポンプ機構26にて温風化される。すなわち、乾燥作用に寄与した温風は、湿気を含んだ排気風としてリターンし、周知の如く冷媒の気化熱で低温化された蒸発器26bにて熱交換され、高温多湿の排気風が冷却されることで該排気中の水分が凝縮され除湿される。この冷却により凝縮して生じた水滴は、傾斜面をなす取付台23aに滴下して流れ、リターンダクト22内に落ちて流下し、水槽7底部に至り排水弁18が開放動作したときに排水管19を通じて本体外に排出される。
【0033】
このように除湿された後の排気風は、凝縮器26aに至りここで高温高圧の冷媒と熱交換され、排気風は加熱されて再び温風化され、供給ダクト21を経て水槽7内に供給され乾燥作用が継続実行される。この繰り返しが連続的に行われ、所謂温風の循環供給による乾燥運転が進行する。
【0034】
ところで、上記した運転区分ロにおけるヒートポンプ機構26による温風化は、ヒータ装置24に比し加熱温度が低下するので、図2に示す排気温度は運転区分ロに切り替わった後、しばらくして下降する温度傾向を示し飽和蒸気圧は低下する。そして、その排気温度が所定温度s1に達したことを温度センサ27が検知したとき、次の運転区分ハに移行するようにしている。このときの所定温度s1は、前段の所定温度t1より低温度に設定されている(s1<t1℃)。
【0035】
そこで、本実施例における上記所定温度t1およびs1の設定条件等につき説明すると、運転区分ロでは上記温度変化を考慮して所定温度s1は、前段の所定温度t1に対し「−10℃」に設定されている(s1=t1−10℃)。従って、例えば所定温度t1が40℃に設定されている場合(t1=40℃)、所定温度s1は「40℃−10℃=30℃」に設定される(s1=30℃)。なお、図2中に付した符号t系(t1〜t4)は、温風の加熱源がヒータ装置24である運転区分であることを示し、同符号s系(s1〜s4)は、同加熱源がヒートポンプ機構26である運転区分であることを示し、依って図2から明らかなように各加熱源は交互に切り替えられ稼動するよう制御される。
【0036】
しかして、所定温度s1を検知し運転区分ハに移行すると、稼動パターン(乾燥態様)が切り替わり、ヒートポンプ機構26が消勢され、ヒータ装置24が再び稼動されるとともに、排水弁18が断続的に開放され排水管19が水槽7と本体外とを連通し排気可能な状態に切り替わり、排気手段として機能する。従って、この運転区分ハではヒータ装置24による温風は、温度の立ち上りが早くて熱効率もよいことから逸早く温度上昇する。この場合、前段の運転区分ロでは温度が若干低下する傾向にあるもののヒートポンプ機構26による空気の加熱作用が行われていること、および当然ながら運転開始時に比し閉鎖空間内の温度も全体に上昇していることから、同じヒータ装置24による加熱乾燥の運転区分イよりもはるかに高温の温風化が可能となり、この高温の温風の循環供給と一部吸排気による入替え作用と併せて一層効果的な乾燥作用が実行される。
【0037】
従って、上記運転区分ハにおける乾燥運転は、該乾燥運転が進行し排気温度による所定温度t2が検知されるまで続行される。この所定温度t2は、当然前段の所定温度s1より高温設定であることはもとより、更に先の所定温度t1よりも高温度に設定されている。例えば本実施例では、所定温度t2は所定温度t1より「+10℃」の高温設定としており(t2=t1+10℃)、従って所定温度t1が40℃に設定してあるので、所定温度t2は50℃に設定されている。
【0038】
このように、ヒータ装置24の稼動状態からヒートポンプ機構26の稼動に切り替わる所定温度t1〜t4までは、順次設定温度を高めていき、最大90℃を限度に設定した温度制御としている。従って、例えば終盤の運転区分トにおける乾燥運転が進行し、所定温度t4以降がいずれも最大限の90℃に設定されている場合には、その間のヒートポンプ機構26による運転区分(例えば、図2中の「s4」参照)では飽和蒸気圧の低下による温度低下が生ずるため、最大限の同一温度を所定温度としても検知制御可能で、以降図示する所定温度t5および更に以降の図示しない乾燥終了まで制御可能である。
【0039】
戻って、上記所定温度t2が検知され、乾燥運転が運転区分ニに移行すると、既述の運転区分ロと同様にヒートポンプ機構26を除湿源および加熱源とした温風が生成され、排気温度はしばらくして下降する温度傾向を示し飽和蒸気圧は低下する。ところが、この運転区分ニまでは所定温度t1からt2へと順次設定温度が高められ、閉鎖空間内の絶対温度も上昇していて、先の運転区分ロにおける乾燥運転よりはるかに高温の温風が生成されている。従って、ヒートポンプ機構26による除湿性能等は温度上昇に比例して向上することから、これまで最も高温の所定温度t2に達して飽和蒸気圧が高められた状態でヒートポンプ機構26に切り替わることで、該ヒートポンプ機構26を効率よく稼動することができ、先の運転区分ロに比して一層除湿および加熱性能を高めた乾燥運転が実行できる。
【0040】
そして、この運転区分ニにおける飽和蒸気圧が低下し所定温度s2が検知されると運転区分ホに移行し、前記同様のヒータ装置24が稼動し一部吸排気を伴う乾燥運転が開始される。この場合の稼動パターンが切り替わる所定温度s2も先の所定温度s1(30℃)より高温度(例えば、40℃)に設定され、閉鎖空間内の温度上昇に見合って順次高温度に設定されている。従って、同一稼動パターンにおける切り替わり時の開始温度も順次高くなり、この運転区分ホにおいても当然これまでよりも更に高温の温風が生成され循環供給されることで、一層衣類などの乾燥作用が強力に進められる。
【0041】
斯くして、以降の乾燥運転も上記した如く交互に切り替わる稼動パターンに基づき進行するもので、詳細な説明は省略するが、各稼動パターンが切り替わる所定温度t3およびs3も順次高温度に設定され、乾燥運転の終盤近くでは最大限の設定温度(例えば、所定温度90℃)まで、この温度制御パターンに基づき継続して行われる。
【0042】
なお、ヒートポンプ機構26の稼動時における所定温度は、その前段のヒータ装置24の稼動時に検知される所定温度に対し、飽和蒸気圧が低下することを考慮して低温度に設定され、従って以降の所定温度s3およびs4も、これと同様の温度設定とすればよい。そして、乾燥運転の特に加熱乾燥の終了は、例えば上記最大限の所定温度を検知してから時間制御に基づき停止するなど、種々の制御手段が考えられる。
【0043】
上記実施例によれば、次のような効果を奏する。
乾燥運転時の温風の加熱源として加熱温度の高いヒータ装置24に加え、消費電力量が少なく特に高い除湿能力が得られるヒートポンプ機構26を備えたので、両者の利点を有効活用できるとともに、必要に応じ温風(排気風)の一部を排気手段たる排水管19を利用して本体外に放出することで、空気の入れ替えができ良好な乾燥性能を発揮するとともに、多量の湿気による室内環境の悪化を改善でき、またヒートポンプ機構26はヒータ装置24との併用で小能力による小型化が可能で、水槽7の上部に設置することが容易となり、循環経路20も効率よく短くできコンパクト化が可能な洗濯乾燥機を提供できる。
【0044】
特に、ヒータ装置24の稼動時に、本体外に排気風の一部を放出可能としたので、良好な乾燥性能を維持でき、一方ヒートポンプ機構26の稼動時には温風を循環させ、飽和蒸気圧の低下を抑えることで、両者の加熱源および除湿源としての利点を巧みに利用した有効活用ができる。しかも、排気風の放出可否を切り替える弁装置として、既存の排水弁18を利用したので容易で、且つ簡易な構成にて実施できるとともに、排水弁18を所定間隔を置いて開閉制御し、本体外と連通するようにしたので、連続して排気しつつ空気の入替えを行う場合の飽和蒸気圧の低下を防ぎながら、安定した乾燥性能が維持できる。
【0045】
一方、加熱源たるヒートポンプ機構26とヒータ装置24は交互に稼動するようにしたので、ヒータ装置24で素早く温度上昇を図り、その高温化に基づきヒートポンプ機構26を効率よく活用するパターンを継続でき、効率よく乾燥運転できるとともに、これら加熱源の切り替えは、衣類などの乾燥に寄与した後の排気温度が、予め設定された所定温度に達したことを温度センサ27で検知したときに切り替えるようにしたので、乾燥状態の進展に応じて設定でき、効率のよい加熱乾燥が実行可能である。更には、上記排気温度による所定温度は、徐々に上昇する温度設定値としているので、特に飽和蒸気圧を徐々に高めた状態からヒートポンプ機構26を効率よく活用でき、従って加熱および除湿性能を高めた効率のよい乾燥運転が期待できる。
【0046】
また、ヒータ装置24は送風装置25の吹出し側である下流側に配置し、一方ヒートポンプ機構26は同吸気側の上流側に配置したので、送風装置24が高温のヒータ加熱に晒されることなく設計製造を容易にするとともに、送風装置25を挟むようにヒータ装置24とヒートポンプ機構26とを大略逆U字状に配置できることから温風発生ユニット6としてこれら三者をコンパクトに組立構成でき、従って縦型の洗濯乾燥機における水槽7の上方位置、例えば主にトップカバー2内に容易に設けることができ、しかも循環経路20を効率よく短くできるなど、簡易な構成にて実用に供し得る洗濯乾燥機を提供できる。
【0047】
そして、ヒートポンプ機構26は、上記したようにヒータ装置24と併用され、交互に稼動されて効率よく活用できるとともに、水槽7の上方位置にコンパクトに配置できることから、該ヒートポンプ機構26の圧縮機26cは排除容積5cc/rev以下の小能力の小型化が可能で、上記コンパクトなユニット化や上方位置への設置が一層容易となりコスト的にも有利な洗濯乾燥機を提供できる。
【0048】
なお、本発明は上記し且つ図面に示した実施例に限定されることなく、例えば排気風の一部を本体外に放出する排気手段として既存の排水管を利用したが、これとは別に専用の排気管や弁装置を設けてもよく、この場合は、排気量に見合った排気手段が得られる点で有利であり、弁装置も断続的な開閉制御でなく連続した開放状態にて本体外に排気することも可能である。また、排気温度は乾燥運状態に応じて顕著な温度変化を示すことから温度制御が容易であるが、これに対応する時間を実験等にて求め時限制御するようにしてもよいなど、実施に際して本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できるものである。
【符号の説明】
【0049】
図面中、1は外箱(本体)、6は温風発生ユニット、7は水槽、10は回転槽、12は槽カバー、18は排水弁(弁装置)、19は排水管、20は循環経路、21は供給ダクト、22はリターンダクト、23はケーシングダクト、24はヒータ装置、25は送風装置、26はヒートポンプ機構、26aは凝縮器、26bは蒸発器、および26cは圧縮機を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成する本体内に設けられ、上面を開閉可能に閉鎖し貯水可能な有底筒状の水槽と、
前記水槽内に縦軸周りに回転可能に設けられ、多孔状の周壁を有し上面を開口した有底筒状の回転槽と、
前記水槽の上下部に連通して設けられ、該水槽の外側を経由する循環経路と、
乾燥運転時の温風を生成するために設けられ、前記循環経路中に介在されたヒータ装置および送風装置と、ヒートポンプ機構の蒸発器および凝縮器と、
前記水槽内の温風を本体外に放出可能な排気手段と、
を具備したことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
排気手段は、ヒータ装置が通電稼動したとき本体外と連通し温風を放出可能としたことを特徴とする請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
排気手段は、本体外と連通および遮断する弁装置を備え、該弁装置は所定間隔を置いて本体外と連通すべく開放動作するようにしたことを特徴とする請求項2記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
乾燥運転において、ヒートポンプ機構とヒータ装置とを交互に稼動して温風の加熱源としたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の洗濯乾燥機。
【請求項5】
ヒートポンプ機構とヒータ装置の稼動は、温風により衣類などの乾燥に寄与した後の排気温度が所定温度に達したことに基づき切り替わるようにしたことを特徴とする請求項4記載の洗濯乾燥機。
【請求項6】
ヒータ装置からヒートポンプ機構の稼動に切り替わる所定温度は、乾燥運転の進行に伴い徐々に上昇する温度設定値としたことを特徴とする請求項5記載の洗濯乾燥機。
【請求項7】
送風装置の上流側にヒートポンプ機構を配置し、送風装置の下流側にヒータ装置を配置したことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の洗濯乾燥機。
【請求項8】
ヒートポンプ機構およびヒータ装置は、水槽より上方位置に設けたことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の洗濯乾燥機。
【請求項9】
ヒートポンプ機構を構成する圧縮機は、排除容積が5cc/rev以下であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−207449(P2010−207449A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57851(P2009−57851)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】