説明

流動媒体の導電率を誘電測定する入力回路

本発明は、液体の導電率を電磁的(誘電的)に測定する入力回路を開示する。入力回路および誘導コイルは直接結合され、構成は、誘導コイルにおける電流から電圧への転換を達成し、端子電圧がゼロであることを確保する電流電圧変換回路を含む。また、積分回路および分圧回路から成り、電流電圧転換に使用される演算増幅器の飽和を防ぐ役割を果たす、非飽和回路がある。回路はさらに、センサコイルまたはケーブルの開回路エラーを検出するための特徴を含む。その結果、本回路は、高精度、低コスト、および良好な信頼性によって区別される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動媒体、特に液体もしくは溶液の、導電率を誘電測定するための入力回路、ならびにそれに対応する測定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の導電率は電気化学の重要な分析パラメータである。その測定は、化学工業、冶金学、生物学、医学、搗精試験(grain testing)、水の保全、エネルギー資源などの分野における広い用途を有する。導電率の測定方法は、接触式と非接触式の2つの群に分割することができる。
【0003】
非接触式測定は、電磁誘導の原理を適用し、したがって、電磁導電率測定方法または誘電導電率測定方法とも称することができる。測定要素の導電部と測定される液体との間に接触はないため、このタイプのセンサは、固体性が良好であり、耐食性であり、極性がなく、耐用年数が長いという利点を有する。
【0004】
液体の導電率の電磁的測定の基本原理が最初に発明され、実際に適用されて以降、開発の長い歴史がある。例えば、M. J. Relisによる米国特許第2,542,057号は、1951年に基本理論を一般に対して公開した。この参考文献によるセンサは、防食性および絶縁性材料によって覆われた一対の同軸の磁気リングを用いる。2つの磁気リングの内孔によって、液体を通る電流経路が可能になる。電磁誘導の原理によれば、交流電流を励起コイルに供給することによって、励起コイルを支持する磁気リング内に交流磁束が発生し、それによって次に、測定される液体中のループを通る誘導電流が発生する。ループ内で発生した誘導電流は、励起側の磁気リングおよびピックアップ側の磁気リングの両方を通る電流ループとして現れる。この電流ループは磁気リング内に交流磁束を発生させ、それによって誘導コイル内に誘導電流が発生し、それによって次に、誘導コイルにおいて誘導された電圧が生成される。誘導電流は液体の導電率に関連する。誘導コイルの誘導電流および誘導電圧(開路電圧)は液体を通る電流に比例する。したがって、液体の導電率は、誘導電流または誘導電圧の測定から導き出すことができる。液体の導電率Gは、式G=C/Rから計算することができる。式中、Cはセンサセル定数、Rは液体を通るループの等価抵抗である。
【0005】
従来、誘導コイルの誘導電流または誘導電圧は、電気橋絡平衡法(electric bridge balance method)によって測定された。橋絡平衡は、コイル間の望ましくない結合に関連する漂遊磁界または電界の影響を低減する。しかし、この方法は、精度が低く、自動化のレベルが低いという不利な点を有する。現在、現代の電子技術の発展により、この方法はほとんど使用されない。
【0006】
測定の感度および精度を向上するため、またコイルの磁気特性を低減するため、Falmouth Scientificによる1995年の米国特許第5,455,513号A1は、ゼロ電流方法としても知られる電流補償方法を用いるシステムを提案している。誘導コイルの誘導電流は測定デバイスの補償電流と平衡される。それにより、補償電流が誘導電流から差し引かれて、差分信号が生成される。この差分信号は、増幅、同相検出、および統合によって処理されて、液体の導電率に比例する、定電流即ちDC信号としても知られる直流(DC)が提供される。
【0007】
補償電流を発生させるため、フィードバック回路が導入される。その結果、DC信号は、フィードバック抵抗器を介して誘導コイルに供給される位相シフトされた方形波フィードバック信号を導き出すため、スイッチング乗算(switching multiplication)およびさらなる増幅によって処理される。回路は、負フィードバックを提供するように構成されるが、上述の減算において2つの電流が等しくない場合、結果として得られる差分信号によって、ゼロ値の差分信号に対応する平衡に回路を戻すフィードバック動作が生じる。
【0008】
しかし、この方法およびそれに対応する回路は、同調フィルタ増幅器、同相検出器、スイッチング乗算器、および多数の増幅器など、多くの複雑で高価な構成要素を有するので、比較的複雑である。測定範囲を変更するために、通常は、これらすべての構成要素のパラメータを変更しなければならない。
【0009】
入力回路の別の設計が米国特許第4,220,920号に開示されている。この場合、誘導コイルは、結合コンデンサを介して電流電圧変換器として構成された演算増幅器に接続される。コンデンサは、誘導コイルを演算増幅器から分離し、DCオフセットを排除する役割を果たす。これは単純な解決策に見えるが、いくつかの不利な点も有する。第一に、交流をDC結合コンデンサによってある程度減衰することができ、第二に、このコンデンサのサイズは大きく、第三に、DC結合コンデンサを介して演算増幅器の負入力と誘導コイルを接続することによって発振が得られる。したがって、DC結合コンデンサを有さない回路が好ましい。
【0010】
導電率の測定では、測定プロセスの信頼性を改善することもますます重要になっている。慎重に調査しなければ、コイルもしくはケーブル配線の開回路エラーは導電率ゼロ(または非常に低い導電率)であると容易に誤解される可能性がある。米国特許第6,414,493号は、単巻きコイルが2つの磁気リングそれぞれに付加される方法を開示している。特定の付勢を得るため、大きな抵抗器が各コイルと直列に配置される。標準条件下では、この付勢は校正によって補正することができる。しかし、コイルまたはケーブルで開回路エラーが生じると、測定回路は著しい負の導電率を呈し、それによって、この方法を用いて開回路エラーを検出することが可能になる。しかし、コイルをフェライトリングに付加することによって回路はより複雑になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、従来技術の欠点を克服し、特に、流動媒体の導電率の正確で信頼性の高い測定を実現する、より単純でコスト効率の良い回路、およびそれに対応する測定デバイスを提供するという目的を有する。さらなる目的は、異なる測定範囲に対する適合性が高い入力回路を提供することである。本発明の追加の目的は、センサの、特にコイル、ケーブル配線、および/または入力回路のエラーを検出するのに適した入力回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
技術的解決は、独立請求項に記載される特徴を備える入力回路によって提供される。本発明のさらなる実施形態は追加の従属請求項にて開示される。
【0013】
本発明は、励起電流を流動媒体に印加するための励起コイルと、流動媒体を介して励起電流によって発生した誘導電流(inducted current)を受け取るための誘導コイルとを備えるセンサに測定端子を介して接続可能な、流動媒体の導電率を誘電測定する入力回路であって、前記入力回路が、最初に、誘導電流に対応する信号を受け取るために第1の入力を用いて測定端子に接続され、次に、誘導電流を少なくとも部分的に補償する補償電流を供給する役割を果たす第1の出力信号を提供するために、第1のフィードバックループを介して第1の出力に接続される制御回路を備え、前記制御回路が、流動媒体の導電率に対応する第2の出力信号を供給する第2の出力を備える、入力回路を開示する。その結果、制御回路は、第2の出力信号に対応する第2の入力信号を供給するため、制御回路の第2の出力を制御回路の第2の入力に接続する第2のフィードバックループを備え、制御回路は、第2の入力信号が第1の入力信号にほぼ等しいように、第1の出力信号および/または第2の出力信号を制御するように構成される。このように、本発明は、両方のフィードバックループを抵抗器または積分器などの少数の単純で安定な構成要素によって設計できるので、単純な設計という利点を有する。さらに、この設計は高い確度および高い信頼性を提供し、異なる測定範囲に容易に適合させることができる。
【0014】
本発明は、従来技術によって知られている位相シフト測定ではなく振幅測定に基づく。したがって、同相検出器またはスイッチング乗算器などの複雑な構成要素を回避することによって、単純な設計で入力回路を構築することができる。
【0015】
高い確度および高い信頼性は、発生し得るDCオフセットを補償電流で直接補償することによって実現される。したがって、減衰、大型化、または発振などの不利な点を有する結合容量を回避することができる。
【0016】
本発明による入力回路は、流動媒体の低レベルの導電率において特に有利である。これらの状況では、残留している電磁および静電結合が、流動媒体を通る抵抗漏れによって、また流動媒体のフロー中の渦電流の影響によって相互に影響されるので、導電率は一般に線形ではない。本発明によれば、フィードバック補償が、良好な補償をもたらすのには一般に不適切である単一のポイントにおける校正ではなく、連続的な調整に基づくので、これらの非線形の影響を有効に補償することができる。
【0017】
本発明による補償は、操作が簡単で、単純で、かつコスト効率が良い内部補償装置によって実現される。さらに、流動媒体の導電率の測定は、電極または補足の補償回路網を使用せずに行うことができる。
【0018】
本発明の第1の実施形態では、第1のフィードバックループは、一方の側では制御回路の第1の出力に、他方の側では測定端子に接続された第1の抵抗器を備える。
【0019】
さらなる一実施形態では、制御回路は、負入力が制御回路の第1の入力であり、正入力が制御回路の第2の入力であり、出力が制御回路の第1の出力である演算増幅器を備える。このように、本発明の入力回路の第2のフィードバックループは、演算増幅器の飽和を回避するため、測定端子におけるDC成分がゼロであることを確保する役割を果たす、非飽和回路(anti-saturation circuit)として働く。これによって測定の確度と信頼性が改善される。
【0020】
好ましい一実施形態では、誘導コイルからの信号は電流であり、制御回路はこの信号をそれに対応する電圧に変換するように構成される。
【0021】
さらなる一実施形態では、第1の出力の信号は、特に出力電圧が誘導コイルの誘導電流に比例するように構成された第1段の演算増幅器に、第2の出力の信号を供給するために増幅される。
【0022】
さらなる好ましい一実施形態では、第2のフィードバックループは、出力信号の直流(DC)成分にしたがって第2の入力信号を供給し、かつ/または第2のフィードバックループは、入力が制御回路の第2の出力に、また出力が特に第3の抵抗器を介して制御回路の第2の入力に接続された積分回路を備える。好ましくは、積分回路は、負入力が最初に第1のコンデンサを介して出力に接続され、次に第2の抵抗器を介して制御回路の第2の出力に接続され、正入力が接地に接続されている演算増幅器を備える。
【0023】
本発明はさらに、単純な設計、高い確度、および高い信頼性によって区別される、液体の導電率を電磁的(誘電的)に測定する入力回路を開示する。
【0024】
本発明は、センサを液体に浸漬することによって測定される液体の導電率を、電磁的(誘電的)に測定する入力回路を開示する。センサは、一方が励起コイルを有し他方が誘電コイルを有する少なくとも2つのフェライトリングを含む。入力回路は、1つの第1の入力端子、1つの出力端子、および1つのフィードバック端子を有する電流電圧変換回路を含み、第1の入力端子は誘導コイルの第1の端子に接続される。誘導コイルに誘導される電流は電圧に変換され、次に電流電圧回路の第1の出力端子によって出力される。電流電圧変換回路に接続された積分回路は、出力電圧のDC成分によってフィードバック電圧を発生させる。分圧回路は 積分回路を電流電圧変換回路のフィードバック端子に接続する。分圧回路は、電流電圧変換回路のフィードバック端子に適切な電圧を供給する。
【0025】
液体の導電率を電磁的(誘電的)に測定する上述の入力回路のさらなる一実施形態は電流電圧変換回路を備え、電流電圧変換回路は、正入力端子、負入力端子、および出力端子を有する第1の演算増幅器を含む。負入力端子は電流電圧変換回路用の入力端子として作用し、正入力端子は電流電圧変換回路のフィードバック端子として作用し、出力端子は電流電圧変換回路の出力端子として作用する。負入力端子は、第2の端子が接地に接続された誘導コイルの第1の端子に接続される。第1の演算増幅器の出力端子および負端子は、第1の抵抗器を通して接続される。
【0026】
液体の導電率を電磁的(誘電的)に測定する上述の入力回路のさらなる一実施形態は、フィードバック端子を接地に接続するフィルタリングコンデンサを含む。
【0027】
液体の導電率を電磁的(誘電的)に測定する上述の入力回路の好ましい一実施形態は、電流電圧変換回路と積分回路を接続する第1段の演算増幅器をさらに含む。
【0028】
液体の導電率を電磁的(誘電的)に測定する上述の入力回路のさらなる一実施形態では、第1段の演算増幅器の出力電圧は誘導コイルの誘導電流に比例する。
【0029】
入力回路のさらなる一実施形態では、積分回路は、正入力端子、負入力端子、および積分回路の出力である出力端子を有し、正入力端子が接地に接続された第2の演算増幅器を含む。積分回路はまた、制御回路の第2の出力を第2の演算増幅器の負入力に接続する第2の抵抗器と、第2の演算増幅器の出力および負入力端子を接続する積分コンデンサとを含む。
【0030】
さらに、液体の導電率を電磁的(誘電的)に測定する入力回路の好ましい実施形態では、積分回路は、積分回路の時間定数が交流励起電流の周期よりもはるかに大きいように構成される。
【0031】
入力回路のさらなる一実施形態では、入力回路は、積分回路の出力を制御回路の第2の入力に接続する第3の抵抗器と、制御回路の第2の入力を接地に接続する第4の抵抗器とを含む。これは、積分回路とさらなる検出回路の出力レベル間での弁別を容易に実現できるようにする分圧器を形成する。
【0032】
さらなる一実施形態では、入力回路はまた、電源を誘導コイルに接続し、DC試験電流を導入する役割を果たす第5の抵抗器と、積分回路に接続された電圧レベル検出器であって、DC試験電流に対応する電圧がその入力において閾値電圧よりも低いとき、誘導コイルおよびそれに対応するケーブル配線が正常に動作していることを示し、また、その入力における電圧が閾値電圧よりも高いとき、誘導コイルまたはケーブル配線の開回路エラーを示すように動作可能である、電圧レベル検出器とを備える、開回路エラー検出回路を含む。
【0033】
さらなる一実施形態では、入力回路はまた、正電源と第5の抵抗器との間に接続されたフィルタリング回路を含む。フィルタリング回路は、正電源を接続し、また第5の抵抗器を介して制御回路の第1の入力に接続する第6の抵抗器と、端子の一方が接地に接続され、他方が第5の抵抗器および第6の抵抗器の共通ノードに接続されたフィルタリングコンデンサとを含む。
【0034】
本発明の入力回路は、演算増幅器の飽和を回避し、測定の確度と信頼性を改善するため、回路出力のDC成分がゼロであることを確保する役割を果たす、上述の積分回路および分圧回路で構成された非飽和回路を含む。それに加えて、本発明の実現例の1つは開回路エラーを検出する機能性を含む。非常に小さなDC電流が演算増幅器の負入力端子で導入される。誘導コイルおよびケーブル配線が正常に動作している場合(誘導コイルおよびケーブルのDC抵抗は非常に小さいので)、小さなDC電流はI−V変換回路を通る代わりに誘導コイルを通って接地へと流れる。非飽和回路の出力電圧は非常に小さい。反対に、誘導コイルまたはそのケーブルに開回路エラーがある場合、付加された小さなDC電流はI−V変換回路に流入する。この場合、非飽和回路の積分器の出力電圧は非常に高い。したがって、非飽和回路の積分器の出力電圧を監視することによって、誘導コイルまたはケーブル配線の開回路エラーを検出することが可能である。
【0035】
既存の最新技術の測定回路と比べて、本発明は次の利点を有する方法を導入する。液体の導電率を精密に測定するため、より単純で低コストの回路を使用する。センサを修正することなく、単純で低コストの回路を使用して、誘導コイルおよび接続ケーブルの開回路エラーを検出し、それによって測定結果の信頼性が非常に高くなる。
【0036】
さらに、本発明は、入力回路が適切なセンサに動作可能に接続され、励起コイルが励起電流を受け取るために電流源に接続され、特に、出力信号を増幅するため、制御回路の第2の出力が主演算増幅器に接続された、電流源と上に開示された入力回路とを有する測定デバイスを開示する。
【0037】
さらなる一実施形態では、測定デバイスは、入力回路に動作可能に接続された誘電導電率センサを備え、センサは流動媒体に、特に液体もしくは溶液に浸漬され、ならびに/あるいは、センサの励起コイルおよび/または誘導コイルは環状心によって、特にフェライトリングもしくは磁気リングによって支持される。
【0038】
以下に、添付図面の図1を参照して本発明の利点および特性をさらに記載する。図面は、導電率を電磁的(誘電的)に測定する基本的方法を表し、本発明によって開示される入力回路の1つの実現例の原理を概略的に示す。
【0039】
本発明によって開示される液体の導電率の電磁的測定方法では、誘導コイルの誘導電流が直接測定される。本発明の回路は、大きなDC結合コンデンサを省略して、直接結合方法を使用する。基礎的なI−V変換を実現するため、フィードバック抵抗器を備えた演算増幅器を使用する。また、演算増幅器の飽和を回避するため、非飽和回路も使用する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】電流生成回路、センサ、および本発明による入力回路の一実施形態を有する、液体の導電率を誘電的に測定する単純化された回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、液体の導電率の誘電的測定に適した、非常に単純化された回路を示す。回路は、電流生成回路、センサ、および単純化された電気的スキーマとしての本発明による入力回路の一実施形態を備える。この実施形態では、制御回路は、制御回路の第1の入力で受け取られる信号を変換するI−V変換回路を備える。
【0042】
回路は、誘導電流に対応する信号を受け取る第1の入力7と、制御回路8の第2の入力と、第1の出力信号を供給する第1の出力9と、流動媒体の導電率に対応する第2の出力信号を供給する第2の出力10とを有する。
【0043】
センサは、励起コイルL1、第1のフェライトリングT1、第2のフェライトリングT2、および誘導コイルL2を含む。測定される液体を通るループは3として特定され、その等価抵抗はRである。液体の導電率を電磁的に測定する基本原理は、センサの励起コイルL1に特定の振幅の交流電圧1を供給し、この実施例ではR1およびU1で構成されるI−V変換回路として具体化される制御回路を使用して、誘導コイルL2の交流誘導電流を交流電圧に転換するというものである。電流電圧変換回路I−Vの演算増幅器の仮想の接地接続によって、誘導コイルの端子電圧がゼロであることが確保されるが、これは、正および負入力の電位が等しいというのが演算増幅器の基本特性であるためである。正入力は非反転入力としても知られ、一方、負入力は反転入力として知られている。次に、第1段の演算増幅器5および主演算増幅器6の両方を通して、かつ整流後に、測定される液体の導電率に比例するDC電圧が得られる。A/D変換および適切な演算処理の後、導電率は結果として得られる。
【0044】
R1およびU1は基本的な電流電圧変換回路を形成する。誘導コイルL2と、I−V変換回路のU1の出力とは直接接続される。第1段の演算増幅器5の利得がAであり、主演算増幅器6の利得がAであると仮定すると、CPUは、通常、A/D変換器に対して十分な精度をもつ信号を送達するため、測定される液体にしたがって適切な利得を決定する。この場合、第1段の演算増幅器は省略することができ、つまりA=Aである。別の方法では、第1段の演算増幅器の出力電圧Vは次式の通りである。
【0045】
=IL2×R×A
式中、IL2はL2における電流を表す。I−V変換回路に直接結合するため、誘導コイルおよびケーブルのDC抵抗は非常に小さく、したがって、演算増幅器の出力は飽和へと容易に駆動される可能性があり、それによって回路が正常に信頼性高く動作しなくなる。したがって、第2の抵抗器R2、積分コンデンサC2、第2の演算増幅器U2、第3および第4の抵抗器R3、R4、ならびにフィルタリングコンデンサC2で構成された非飽和回路が必要である。それらの中で、R2、C1、U2は積分回路を形成する。その時定数(R2×C1)は非常に大きく、即ち励起周期よりもはるかに大きい。励起周波数は例えば5kHzである。積分回路は第1段の演算増幅器(5)の出力電圧V5を積分する。V5にDC成分が、例えば負成分が存在する場合、積分回路U2の出力は増加する。U2の出力電圧はR3、R4によって分割される。分割ノードはU1の正入力端子に接続され、それによってU1の出力におけるDC成分が増加する。これは負フィードバックである。V5のDC成分が0となるまでプロセスは継続する。要約すると、これは、DC成分をゼロに保つAC増幅器に適した非飽和回路である。C2は、U1の入力のノイズをさらに低減する役割を果たすが、要求がより低い用途の場合、またコスト削減のために省略することができる。R3、C2、およびR4で構成された時定数はR2×C1よりもはるかに小さくなければならず、そうでなければ非飽和回路は自己発振するであろうことに留意されたい。R4、R3で構成された分圧回路はR2×C1を限定して保ち、つまり、コンデンサC1は比較的小型で低コストのものであることができる。時定数R2×C1は非常に大きいので、励起電圧の周波数を有する交流成分に対する非飽和回路の影響は無視することができる。
【0046】
上述の回路に基づいて、開回路エラーを検出する機能性を、第5の抵抗器R5、フィルタリングコンデンサC3、および第6の抵抗器R6で構成される回路を付加する単純な設計の改善によって実現することができる。電圧レベル検出器U3は、誘導コイルおよびケーブル配線の開回路エラーを検出するように設定される。R6およびC3は低域フィルタを形成し、R5は大きな抵抗器である。誘導コイルおよびケーブルが適切な連続性を有する場合、コイルのDC抵抗は非常に小さいので、わずかなDC電流がI−V変換回路の代わりにコイルを流れる。したがって、積分回路U2のDC出力はほぼゼロとなる。しかし、誘導コイルL2または配線ケーブルに開回路があると、R5を流れるDC電流はR1を通して続き、したがってU1の出力は負となる。この場合、演算増幅器5の出力のDC成分を常にゼロポイントに保つ非飽和回路が効果を現す。したがって、U1の出力のDC成分はゼロポイントで保たれる。結果として、積分回路U2の出力は次式の通りである。
【0047】
【数1】

【0048】
例えば、Vc=3.3V、R6=100kΩ、R5=1MΩ、R1=20kΩ、R4=2KΩ、R3=100kΩ、Vu2=3.0Vの値を仮定すると、積分回路U2の出力に接続された電圧レベル検出器U3によって、U2の出力の大幅な変化を簡単に検出することができる。U3の入力における低電圧は、コイルおよびケーブル配線が正常に動作していることを意味する。反対に、高電圧は、誘導コイルまたはケーブル配線の開回路エラーを示唆する。電圧レベル検出器U3は、高い入力電圧レベルと低い入力電圧レベルとを弁別するため、閾値電圧を有することができる。レベル検出器U3の出力は、例えば警告を発するのに使用することができる。電圧レベル検出器U3はゲート回路であることができる。直列に接続された2つのゲート74HC14などから成る、シュミット回路のようなデバイスを使用することが好ましい。
【0049】
R3およびR4によって形成された分圧器の別の利点は、レベル検出器U3によるU2の出力レベル間の弁別をより簡単に実現できることである。
【0050】
R6およびC3は、電源Vcによって導入される可能性があり、I−V変換回路に影響を与える可能性があり、したがって測定に対する負の影響を有する、励起周波数に関連する電気ノイズを遮断する低域フィルタを形成する。R6およびC3の低域フィルタは状況を修復するはずである。しかし、強い必要性がなければ、この低域フィルタは省略することができる。誘導コイルまたはケーブル配線に開回路エラーがある場合、電圧レベル検出器U3の入力は、この場合は次式に近い。
【0051】
【数2】

【0052】
付加されるDC電流は非常に小さく、例えば3μA(3.3V/1.1M)で、コイルを飽和させることは決してないので、測定の確度は影響されない。
【0053】
本発明の好ましい一実施形態では、上述のパラメータに加えて、選択することができる他の成分値は、特に、R2=2.2MΩ、C1=100nF、C2=10nF、C3=100nF、A1=10、A=1〜100である。
【0054】
上述の説明に使用される用語、記号、表現、および例は、いかなる意味でも本発明の範囲を限定しようとするものではなく、単に本発明の特定の態様を例証する役割を果たす。
【0055】
上述の実施形態は、単に本発明の好ましい実施形態を表す。当業者であれば、上述の説明に基づいて様々に等価の置換えおよび修正を行うことができる。しかしながら、本発明の実施形態に基づくこれらの置換えおよび修正はすべて、本発明の趣旨、および添付の特許請求の範囲にて規定される範囲内にある。
【符号の説明】
【0056】
3 液体
4 測定端子
5 第1段の演算増幅器
6 主演算増幅器
7、8 入力
9、10 出力
A1、A 利得
C センサセル定数
C1、C2、C3 コンデンサ
G 導電率
I−V 電流電圧変換回路
L1 励起コイル
L2 誘導コイル
R 液体の抵抗
R1、R2、R3、R4、R5、R6 抵抗器
T1、T2 フェライトリング
U1 演算増幅器、I−V変換回路
U2 演算増幅器、集積回路
U3 電圧レベル検出器
V5、VU2 出力電圧
Vc 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起電流を流動媒体に印加するための励起コイル(L1)と、前記流動媒体を介して前記励起電流によって発生した誘導電流を受け取るための誘導コイル(L2)とを備えるセンサに測定端子(4)を介して接続可能な、流動媒体の導電率を誘電測定する入力回路であって、前記入力回路が、最初に、前記誘導電流に対応する信号を受け取るために第1の入力(7)を用いて前記測定端子(4)に接続され、次に、前記誘導電流を少なくとも部分的に補償する補償電流を供給する役割を果たす第1の出力信号を提供するために、第1のフィードバックループを介して第1の出力(9)に接続される制御回路を備え、前記制御回路が、前記流動媒体の導電率に対応する第2の出力信号を供給する第2の出力(10)を備える、入力回路において、
前記制御回路が、前記第2の出力信号に対応する第2の入力信号を供給するため、前記制御回路の前記第2の出力(10)を前記制御回路(8)の第2の入力に接続する第2のフィードバックループを備え、前記制御回路が、前記第2の入力信号が第1の入力信号にほぼ等しいように、前記第1の出力信号および/または前記第2の出力信号を制御するように構成されたことを特徴とする、入力回路。
【請求項2】
請求項1に記載の入力回路において、前記第1のフィードバックループが、一方の側では前記制御回路の前記第1の出力(9)に、他方の側では前記測定端子(4)に接続された第1の抵抗器(R1)を備えることを特徴とする入力回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の入力回路において、前記制御回路が、負入力(−)が前記制御回路の前記第1の入力(7)であり、正入力(+)が前記制御回路の前記第2の入力(8)であり、出力が前記制御回路の前記第1の出力(9)である演算増幅器(U1)を備えることを特徴とする入力回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の入力回路において、前記誘導コイル(L2)からの信号が電流であり、前記制御回路が前記信号をそれに対応する電圧に変換するように構成されたことを特徴とする入力回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の入力回路において、前記第1の出力(9)の前記信号を増幅することによって、特に出力電圧が前記誘導コイル(L2)の前記誘導電流に比例するように構成された第1段の演算増幅器(5)に、前記第2の出力(10)の前記信号を供給することを特徴とする入力回路。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の入力回路において、前記第2のフィードバックループが、前記出力信号の直流(DC)成分にしたがって前記第2の入力信号を供給するように構成され、かつ/または前記第2のフィードバックループが、入力が前記制御回路の前記第2の出力(10)に、また出力が特に第3の抵抗器(R3)を介して前記制御回路の前記第2の入力(8)に接続された積分回路(U2、C1、R2)を備えることを特徴とする入力回路。
【請求項7】
前記導電率がセンサを液体に浸漬することによって測定され、前記センサが、一方が励起コイルを有し他方が誘電コイルを有する少なくとも2つのフェライトリングを用いる、請求項1から6のいずれか一項に記載の入力回路であって、
1つの第1の入力端子(7)、1つの第1の出力端子(9)、および1つのフィードバック端子(8)を有し、前記第1の入力端子(9)が前記誘導コイル(L2)の前記第1の端子(4)に接続され、前記誘導コイル(L2)に誘導される電流が電圧に変換され、次に電流電圧回路の前記第1の出力端子(9)によって出力され、前記出力電圧が前記誘導電流に比例する、電流電圧変換回路と、
前記電流電圧変換回路に接続され、前記出力電圧の前記DC成分によってフィードバック電圧を発生させる積分回路と、
前記積分回路と前記電流電圧変換回路の前記フィードバック端子(8)とを接続して、利用可能な適切な電圧を作り出し、前記電流電圧変換回路の前記フィードバック端子(8)に供給する分圧回路とを備える、入力回路。
【請求項8】
請求項6または7に記載の入力回路において、
前記積分回路(U2、C1、R2)が、
正入力(+)、負入力(−)、および前記積分回路(U2、C1、R2)の前記出力である出力端子を有し、前記正入力(+)が接地に接続された第2の演算増幅器(U2)と、
前記制御回路の前記第2の出力(10)および前記第2の演算増幅器(U2)の前記負入力(−)を接続する第2の抵抗器(R2)と、
前記第2の演算増幅器(U2)の前記出力および前記負入力(−)を接続する積分コンデンサ(C1)とを備えることを特徴とする入力回路。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一項に記載の入力回路において、前記積分回路(U2、C1、R2)が、その時間定数が前記励起電流の周期よりも大きいように構成されることを特徴とする入力回路。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか一項に記載の入力回路において、
前記積分回路の前記出力および前記制御回路の前記第2の入力(8)を接続する第3の抵抗器(R3)と、
前記制御回路の前記第2の入力(8)および接地を接続する第4の抵抗器(R4)とを備えることを特徴とする入力回路。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の入力回路において、前記回路が、前記制御回路の前記第2の入力(8)と接地との間に接続されたフィルタリングコンデンサ(C2)を含むことを特徴とする入力回路。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の入力回路において、前記入力回路が開回路エラー検出回路を含み、前記開回路エラー検出回路が、
DC試験電流を導入するため、電源(Vc)を前記誘導コイル(L2)に接続する第5の抵抗器(R5)と、
前記積分回路に接続された電圧レベル検出器(U3)であって、前記DC試験電流に対応する電圧がその入力において閾値電圧よりも低いとき、前記誘導コイル(L2)およびそれに対応するケーブル配線が正常に動作していることを示し、また、その入力における前記電圧が前記閾値電圧よりも高いとき、前記誘導コイル(L2)または前記ケーブル配線の開回路エラーを示すように動作可能である、電圧レベル検出器(U3)とを備えることを特徴とする入力回路。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の入力回路において、
前記入力回路が前記電源(Vc)および前記第5の抵抗器を接続するフィルタリング回路を含み、前記フィルタリング回路が、
第5の抵抗器(R5)を介して正電源(Vc)を前記制御回路の前記第1の入力に接続する第6の抵抗器(R6)と、
端子の一方が接地に接続され、他方が前記第5の抵抗器(R5)および前記第6の抵抗器(R6)の共通ノードに接続されたフィルタリングコンデンサ(C3)とを備えることを特徴とする入力回路。
【請求項14】
電流源と請求項1から13のいずれか一項に記載の入力回路とを有する測定デバイスにおいて、前記入力回路が適切なセンサに動作可能に接続され、前記励起コイル(L1)が前記励起電流を受け取るために電流源に接続され、特に、前記出力信号を増幅するため、前記制御回路の前記第2の出力(10)が主演算増幅器(6)に接続された測定デバイス。
【請求項15】
請求項14に記載の測定デバイスにおいて、前記入力回路に動作可能に接続された誘電導電率センサを備え、前記センサが前記流動媒体に、特に液体もしくは溶液に浸漬され、ならびに/あるいは、前記センサの前記励起コイル(L1)および/または前記誘導コイル(L2)が環状心によって、特にフェライトリングもしくは磁気リングによって支持される測定デバイス。

【図1】
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【公表番号】特表2011−528109(P2011−528109A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517793(P2011−517793)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005076
【国際公開番号】WO2010/006751
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】