説明

浄化装置

【課題】簡単な構成でスペース効率が良く、フィルタの洗浄などの手間がかからず、フィルタ交換などによるゴミも発生せず、確実に水の汚染を抑制し殺菌浄化し、過電流が加わっても安全な浄化装置を提供する。
【解決手段】各々絶縁被覆された2本の銅線14を、被処理水を流す一本の管体12の外側にそれぞれ多層に巻回してコイル部16a,16bを形成する。複数のコイル部16a,16bに接続された交流電源を入切可能に設けられた電源スイッチ装置24と、2つのコイル部16a,16bに接続され過電流保護回路30が設けられた出力制御器32を備える。2つのコイル部16a,16bは管体12と共に絶縁体20により被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鯉などの養殖池や家庭の鑑賞魚用の池などの汚れた水を処理して水質を維持する浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鯉の養殖池や家庭の観賞魚の池の水は、飼育する魚の食べ残しの餌や排泄物、水垢、藻などにより時間の経過とともに細菌に汚染され水質が悪化する。そのため、水質を改善することが必要になるが、頻繁に池の水の入れ替え及び清掃を行うのは非効率であり、薬品などによる水質処理は、取り扱いが難しく魚の生育にも影響を及ぼしかねない。さらに、環境に悪影響を及ぼす可能性もある。そのため、池の汚れた水を浄化装置により処理し、浄化した水を循環使用されるのが一般的である。また、池の水を浄化する浄化装置の処理方法には、いろいろな材質や構造を持つフィルタにより、水を濾過して浄化するのが一般的である。
【0003】
一方、水を循環させる配管は、汚染された水を流すため、水の中の汚染物質により配管壁内に、汚染物質によるスケールや微生物による有機物等が付着する。このスケールの付着防止処理を行う方法として、配管外周に電線をコイル状に巻き付けて、専用の電源により周波数が変化する電流をコイルに流し、コイル周辺に対して、時間的に変化する電界と磁界を発生させる電磁界処理装置により水に電磁界処理を行う方法が知られている。また、水を電磁界処理することにより、水質を改善し、錆や配管の詰まり、アンモニア臭等を防止する処理方法なども知られている。
【0004】
また、特許文献1では、配管に2本の電線を巻き付けてコイルを形成し、その電線の一方の各端部は、商用電源に接続されて、他方の各端部に接続された電気器具を作動させると、商用交流電流がコイルに流れ、配管を流れる水に磁界を印加して浄化する装置が開示されている。
【特許文献1】特開2006−7060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術において、池の水を浄化する方法として一般的であるフィルタを使用し水を濾過する方法は、水を濾過するフィルタを定期的に洗浄または交換する必要があり、コストがかかる。また、フィルタを用いる浄化装置は、幾重にも重ねたフィルタと水を循環させる配管及びポンプにより形成されるため、ポンプを駆動するモータの出力がある程度必要であり、エネルギー効率及びスペース効率がよくない。さらに、フィルタの洗浄作業や寿命の尽きたフィルタはゴミとして廃棄することになり、材質によっては、細かな分別作業などが必要であり洗浄作業と共に手間がかかるものである。
【0006】
そのほか、水を循環させる配管内部にも水の汚染物質によるスケールや有機物が付着するため、配管内部の定期的なスケール等の除去作業が必要である。このスケールの付着については、特許文献1に開示される電磁界処理を行うことで防止することが可能であるが、コイルに過電流が印加されると発熱により発火または破損する可能性があった。また、配管に巻き付けた電線は一重に巻き付けられているため、電磁界強度が大きくなく、十分な効果を発揮することができない場合があった。
【0007】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたもので、簡単な構成でスペース効率が良く、フィルタの洗浄などの手間がかからず、フィルタ交換などによるゴミも発生せず、確実に水の汚染を抑制し殺菌浄化し、過電流が加わっても安全な浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、各々絶縁被覆された2本の電線を、被処理水を流す一本の管体の外側にそれぞれ巻回してコイル部を形成し、前記コイル部に交流電流を流し、前記コイル部を流れる電流により誘起される電磁界を、前記管体内を流れる被処理水に印加する浄化装置において、交流電源側に接続される2本の電線を前記管体の外側の別々の位置に多層に巻回して形成された複数のコイル部と、前記複数のコイル部に接続された前記交流電源を入切可能に設けられた電源スイッチ装置と、前記2つのコイル部に接続され過電流保護回路が設けられた出力制御器とを備え、前記2つのコイル部は前記管体と共に絶縁体により被覆されている浄化装置である。
【0009】
前記絶縁体は、熱収縮性樹脂から形成されているものである。また、前記過電流保護回路は、前記出力制御器に一体に設けられ、または、前記過電流は、前記コイル部に一体に設けられているものでも良い。
【発明の効果】
【0010】
この発明の浄化装置によれば、設置スペースを取らず配管効率が良く、被処理水の殺菌や消毒、有機物の付着防止や分解等の機能を発揮し、フィルタの洗浄などの手間がかからないものである。さらに、フィルタ交換などによるゴミも発生せず、消費電力も極めて少なく、効率的に水の汚染を防止することができる上、確実に過電流防止動作が行われ、安全性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の浄化装置の一実施形態について、図1を基にして説明する。この実施形態の浄化装置10は、鯉の養殖池などの水質悪化を抑制する浄化装置として使用されるものである。浄化装置10は、図1に示すように、水道の配管などに使用される適宜な長さの直管状磁性体金属製の管体12に、2本の銅線14が巻回されている。2本の銅線14は、エナメル等の絶縁体で被覆され、管体12の外側に同じ巻回し方向で各々管体を2分するように、ほぼ同数の多層に巻回され、2つのコイル部16a,16bを形成している。2つのコイル部16a,16bは、管体12のほぼ中央部に適宜な間隔を空けて形成されている。コイル部16a,16bの各一端部は、後述する出力制御器34で互いに繋がっている。従って、後述するコイル部16a,16bにより生成される磁界は、互いに逆向きの磁界である。
【0012】
各コイル部16a,16b及び管体12全体は、熱可塑性樹脂等から成る絶縁体20により水密状態に被覆されている。そして、絶縁体20に被覆された管体12、及びコイル部16a,16bは、塩化ビニール製などの熱収縮性樹脂の絶縁体である外筒22に収納され、両端部18a,18bに連結された図示しない管継ぎ部が、開口した状態に設けられている。
【0013】
2つのコイル部16a,16bの、例えばコイル部16aから延びたコイル巻始めとなる銅線14の端部、及びコイル部16bから延びたコイル終端となる銅線14の端部は、各々管体12の端部から露出されている。そして、銅線14の各端部には、起動スイッチが設けられた電源スイッチ装置24が接続されている。この電源スイッチ装置24には、商用電源のコンセントへ接続可能なプラグが端部に取り付けられた電源コードが設けられている。また、この浄化装置10と連動する電動器具などへ接続される接続線26も設けられている。
【0014】
一方、コイル部16aから延びたコイル終端となる銅線14の端部、及びコイル部16bから延びたコイル巻始めとなる銅線14の端部も、各々管体12の開口部から露出されている。そして、銅線14の各端部は、ヒューズやブレーカなどの過電流保護素子28を備えた過電流保護回路30及び出力制御回路32から成る出力制御器34を介して接続されている。なお、出力制御器34は、コネクタにより接続するものでも良い。
【0015】
次に、この実施形態の浄化装置10の動作作用について説明する。図1に示すように、管体12に一対の銅線14を多層に巻回して、2つのコイル部16a,16bを形成し、銅線14の一方の端部は、電源スイッチ装置24に接続する。また、電源スイッチ装置24から延びる接続線26には、連動可能にポンプなどの電機器具が接続され、銅線14の他方の端部には、出力制御器34が接続される。
【0016】
まず、電源スイッチ装置24のスイッチを入れると、商用交流電流が銅線14によるコイル部16a,16bを流れ、同時に、器具接続線26に接続されたポンプのモータも動作する。2つのコイル部16a,16bに交流電流が流れると、2つのコイル部16a,16bのそれぞれの内側にある管体12内部に、磁場36と電場38が発生する。そして、管体12内部を流れる流体は、発生した磁場36と電場38により電磁界処理されることになる。この時、図1の管体12の開口部18aから流れ込む流体は、電磁界処理されて管体12の開口部18bから流れ出てくることになる。
【0017】
次に、この浄化装置10の使用方法について説明する。まず、図1に示す浄化装置10を、例えば鯉の養殖池の水を循環させ浄化させる配管途中に接合し設置する。そして、電源スイッチ装置24から延びる電源プラグを図示しないコンセントなどの商用電源に接続する。次に、電源スイッチ装置24から延びる器具接続線26は、水を循環させる図示しないポンプのモータ端子へ接続して、電源スイッチ装置24のスイッチを入れる。すると、商用電源から流れる交流電流によりポンプ駆動用のモータが作動し、管体内を池の水が循環するとともに、コイルに電流が流れて、2つコイル部16a,16bのそれぞれの内側にある管体12内部には、磁場36と電場38を発生させる。
【0018】
この実施形態の浄化装置10によれば、浄化装置10の2つのコイル部16a,16bは、銅線14を多層に巻回して形成されるため、より強い磁場を発生し高い浄化力が発揮されるものである。また、ポンプなどの電機器具への電源供給も、電源スイッチ装置24から同時に供給可される。また、出力制御器34に一体に形成された過電流保護回路30により、過電流が防止され安全である。そして、専用電源のスペースが必要ないためスペース効率がよく、さらに、設置した後は洗浄や定期点検などのメンテナンスも不要であり、手間のかからないものである。その他、出力制御器34に一体に設けられた過電流保護回路30は、一体化せずに別途設けても良い。
【0019】
また、図2に示すように、出力制御回路32を電源スイッチ装置24に内蔵させ、コイル部16bを形成する銅線14の他方の端部に、過電流防止のヒューズやブレーカなどの過電流保護素子28をコイル部16bと一体に取り付けても良い。この場合、構成はよりシンプルになり、スペース効率がよく、コストも低減できるものである。また、過電流保護素子28を電源スイッチ装置24に内蔵させて、コイル部16bの端部を直結しても良い。
【0020】
なお、この発明の浄化装置に用いられる管体には、金属管以外に、塩化ビニール管を用いてもよく、その場合、管体12の外側に磁性体金属製の筒を被せることにより、過熱を抑え、磁気効果を高めることができる。さらに、管体の太さや長さも適宜選択可能である。また、管体に巻回してコイル部を形成する銅線の太さは適宜選択可能である。また、コイル部の巻数も上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設定可能である。
【0021】
そのほか、管体外側に多重に銅線が巻回されてコイル部が形成されていればよいため、2つのコイル部の隙間部分で管体が湾曲していても良く、管体全体が湾曲していても良い。また、この発明により処理する水は、真水以外に海水やその他の水や液体も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態の浄化装置を示す概略構成図である。
【図2】この実施形態の浄化装置の変形例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
10 浄化装置
12 管体
14 銅線
16a,16b コイル部
20 絶縁体
24 電源スイッチ装置
28 過電流保護素子
30 過電流保護回路
32 出力制御回路
34 出力制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々絶縁被覆された2本の電線を、被処理水を流す一本の管体の外側にそれぞれ巻回してコイル部を形成し、前記コイル部に交流電流を流し、前記コイル部を流れる電流により誘起される電磁界を、前記管体内を流れる被処理水に印加する浄化装置において、交流電源側に接続される2本の電線を前記管体の外側の別々の位置に多層に巻回して形成された複数のコイル部と、前記複数のコイル部に接続された前記交流電源を入切可能に設けられた電源スイッチ装置と、前記2つのコイル部に接続され過電流保護回路が設けられた出力制御器とを備え、前記2つのコイル部は前記管体と共に絶縁体により被覆されていることを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
前記絶縁体は、熱収縮性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載の浄化装置。
【請求項3】
前記過電流保護回路は、前記出力制御器に一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の浄化装置。
【請求項4】
前記過電流保護回路は、前記コイル部に一体に設けられていることを特徴とする請求項1記載の浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−209892(P2007−209892A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32474(P2006−32474)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(592014366)
【Fターム(参考)】