説明

浴室壁の補強構造

【課題】 施工が容易で、設置状態の見栄え性が向上する浴室壁の補強構造を提供する。
【解決手段】 浴室1の既存壁面3に室内側から補強壁5をビス4等で固設して補強する構造であって、補強壁5は、床面2から天井までの高さ寸法を有し、既存壁面3との仕上がり段差が目立たないように側端縁には傾斜状の傾斜面取部5aが一体成形され、補強壁5の室内側に手摺り6,水栓7,洗面器台8等を強固に後付けすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する浴室壁の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、壁全体に補強板を設置して既存壁面を補強する方法がある。
【特許文献1】特開2000−274099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているような方法では、浴室のような大空間で1枚の補強板により壁全体を補強するのは困難であり、どうしても既存浴室壁面と補強板との境目の段差が目立ってしまい、補強板の設置状態の意匠性が悪くなってしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、既存浴室壁面との段差が目立たず、すっきりとした設置状態が得られる浴室壁の補強構造を提供せんとするものであり、その請求項1は、既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁は、床から天井までの高さを有し既存浴室壁面との段差が目立たないように側端縁が傾斜状に面取りされていることである。
【0005】
また、請求項2は、既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁の側端縁に前記既存浴室壁面との段差が目立たなくなるような面取り部材を取り付けたことである。
【0006】
また、請求項3は、既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁の少なくとも上端縁の前面を覆うことのできるカバー部材は、前記既存浴室壁面に固定された受け部材に着脱可能に構成されていることである。
【0007】
また、請求項4は、既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁の少なくとも上端縁の前面を覆うことのできるカバー部材を設けるとともに、該カバー部材の裏側に挿入状態となる補強壁の端縁に段部を形成し、前記カバー部材と前記補強壁の表面が面一となるように構成したことである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の補強壁は、床から天井までの高さを有し、既存浴室壁面との段差が目立たないように側端縁が傾斜状に面取りされていることにより、既存浴室壁面に補強壁を固設した状態で、既存浴室壁面と補強壁の仕上げ段差が目立たなくなり、すっきりとした意匠性を呈して補強壁を浴室の壁面に施工できるものとなる。
【0009】
また、補強壁の側端縁に、既存浴室壁面との段差が目立たなくなるような面取り部材を取り付けたことにより、既存浴室壁面と補強壁の仕上げ段差が目立たなくなり、補強壁の側端縁の水密性及び見栄え性が向上し、すっきりとした設置状態が得られるものとなる。
また、補強壁自体は単純な矩形パネルで良く、生産効率が向上するものとなる。
【0010】
また、既存浴室壁面に室内側から固設される補強壁の少なくとも上端縁の前面を覆うことのできるカバー部材は、既存浴室壁面に固定された受け部材に着脱可能に構成されていることにより、補強壁の上端縁等の前面をカバー部材で覆って、施工誤差による天井面と補強壁の上端縁間の隙間等を良好に覆蓋して、すっきりとした設置状態が得られるものとなり、カバー部材は受け部材に対し着脱できるため、施工も容易であり、カバー部材を変えることで補強壁の端縁の意匠,形状を容易に変更できるものとなる。
【0011】
また、既存浴室壁面に室内側から固設される補強壁の少なくとも上端縁の前面を覆うことのできるカバー部材を設けるとともに、カバー部材の裏側に挿入状態となる補強壁の端縁に段部を形成し、カバー部材と補強壁の表面が面一となるように構成したことにより、カバー部材で補強壁の端縁を覆い、施工誤差による隙間等を良好にカバー部材で覆蓋して、すっきりとした設置状態を得ることができ、また、カバー部材と補強壁の表面が面一となるため、極めてすっきりとした設置状態となり、カバー部材の表面を補強壁の表面の意匠と同じにしておけば目立たなくなり、より意匠性に優れた設置状態が得られるものとなる。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、浴室の洗い場壁面に補強壁を設置した状態の斜視構成図である。
浴室1の既存壁面3に室内側から補強壁5をビス4等で固設して、この補強壁5の室内側に手摺り6,水栓7,洗面器台8等を強固に後付けすることができるものであり、補強壁5は床面2から天井までの高さ寸法を有し、露出状態となる図示左側端縁には傾斜状の傾斜面取部5aが一体形成されている。
なお、図2は、傾斜面取部5aの部分の平面拡大構成図である。
【0013】
このように露出する側の側端縁に一体状に傾斜面取部5aを傾斜状に面取りして形成させておけば、浴室の既存壁面3に補強壁5を固設した状態で、この傾斜面取部5aにより既存壁面3と補強壁5との仕上げ段差が目立たなくなり、すっきりとした状態で補強壁5を設置できるものとなり、浴室の意匠性が向上するものとなる。
【0014】
なお、補強壁5は、例えばオレフィン系発泡板等の合板なみの強度を備えたもので構成されており、室内側から既存壁面3に固設するものであるため、後付け施工が容易であり、既存壁面3の裏側に補強を設ける場合に比べて極めて容易に施工できて、既存壁面3を強固に補強することができ、補強壁5の前面に強固に手摺り6,水栓7,洗面器台8等の器具を設置できるものである。
【0015】
なお、図3の変更例に示すように、補強壁5は矩形パネルで構成しておき、別体の面取部材9を補強壁5の側端縁に取り付けて構成することもでき、この面取部材9は平面三角形状断面に形成されており、補強壁5を既存壁面3に固設した後に、補強壁5の側端縁にこの面取部材9を取り付けて、この面取部材9により既存壁面3との仕上がり段差を目立たないようにすることができるものとなる。また、この面取部材9により補強壁5の側端縁の水密性が確保されるものとなる。
【0016】
なお、補強壁5を既存壁面3に設置する際に、図4に示すように、補強壁5の上端や下端にカバー部材10,10を設けて、このカバー部材10,10により補強壁5と天井面との隙間を覆蓋させることができ、カバー部材10により施工誤差による隙間等を良好に吸収させて、補強壁5の設置状態を極めてすっきりとしたものとすることができるものである。
【0017】
なお、図5に示すように、カバー部材10の裏面に突起を突出させておき、この突起が係合される係合部を備えた受け部材11を予め天井近くの既存壁面3にビス等で固設しておけば、この受け部材11に対してカバー部材10を着脱することができるものとなり、カバー部材10により、天井と補強壁5の上端縁間の施工誤差による隙間等を吸収して、隙間をカバー部材10で良好に隠蔽させて、すっきりとした設置状態が得られるものとなり、このカバー部材の意匠及び形状の異なるものを用意しておけば、後から意匠,形状の異なるカバー部材10を受け部材11に取り付けて、補強壁5の周縁の意匠性を変更させることが容易なものとなる。
【0018】
また、図6に示すように、裏側へ突出する基部10aをビス等で既存壁面3に固設した時に、カバー部材10と既存壁面3間に隙間Sが形成されるような断面形状のカバー部材10としておき、このカバー部材10の裏側の隙間S内に挿入可能な段部5bを補強壁5側に形成させておけば、この段部5bが隙間S内に嵌まり込んで施工された状態では、カバー部材10の表面と補強壁5の表面が略面一状となり、すっきりとした設置状態が得られるものとなる。
しかも、補強壁5の表面の意匠と同一の表面意匠をカバー部材10に施しておけば、カバー部材10が補強壁5と一体感をなして、設置状態の意匠性が向上したものとなる。
このように、カバー部材10により施工誤差による天井間との隙間等を良好に吸収して、極めてすっきりとした状態で補強壁5を施工できるものとなる。
【0019】
なお、図7の平面構成図で示すように、浴室1の既存壁面3全体を、例えば2枚に分割された補強壁5Aと5Bを用いて覆蓋することもでき、このような場合に、補強壁5A側の側端縁には面一状に表面段部5cを形成させておき、この表面段部5cの裏側には隙間Sが形成され、この隙間S内に挿入可能な裏面段部5dを他方の補強壁5Bの側端縁に形成させておけば、一方側の補強壁5Aの表面段部5cの裏側に他方側の補強壁5Bの裏面段部5dを挿入させて、あいじゃくり構造で良好に2枚の補強壁5A,5Bを既存壁面3の全面を覆うように設置できるものである。
表面段部5cと裏面段部5dにより横方向の施工誤差を良好に吸収させることができ、一対の補強壁5A,5Bを間口全体に亘りジャストフィットさせて施工できるものとなり、1枚もののパネルでは搬入が困難であるが、このように2枚に分離してあれば、良好に現場の浴室内に搬入して施工を容易に行なうことができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】浴室の既存壁面に補強壁を設置した状態の斜視構成図である。
【図2】補強壁の要部拡大平面構成図である。
【図3】補強壁の側端縁に面取部材を取り付けた状態の要部平面概略構成図である。
【図4】補強壁の上端縁等をカバー部材で隠蔽させた状態の縦断面構成図である。
【図5】カバー部材を着脱可能な構造とした場合の補強壁の上端側の要部拡大縦断面構成図である。
【図6】さらにカバー部材を補強壁の表面と面一状に設置した状態の要部縦断面構成図である。
【図7】補強壁を2枚重ね合わせて施工した状態の平面概略構成図である。
【符号の説明】
【0021】
1 浴室
2 床面
3 既存壁面
4 ビス
5(5A,5B) 補強壁
5a 傾斜面取部
5b 段部
5c 表面段部
5d 裏面段部
6 手摺り
7 水栓
8 洗面器台
9 面取部材
10 カバー部材
10a 基部
11 受け部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁は、床から天井までの高さを有し既存浴室壁面との段差が目立たないように側端縁が傾斜状に面取りされていることを特徴とする浴室壁の補強構造。
【請求項2】
既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁の側端縁に前記既存浴室壁面との段差が目立たなくなるような面取り部材を取り付けたことを特徴とする浴室壁の補強構造。
【請求項3】
既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁の少なくとも上端縁の前面を覆うことのできるカバー部材は、前記既存浴室壁面に固定された受け部材に着脱可能に構成されていることを特徴とする浴室壁の補強構造。
【請求項4】
既存浴室壁面に室内側から補強壁を固設して補強する構造であって、前記補強壁の少なくとも上端縁の前面を覆うことのできるカバー部材を設けるとともに、該カバー部材の裏側に挿入状態となる補強壁の端縁に段部を形成し、前記カバー部材と前記補強壁の表面が面一となるように構成したことを特徴とする浴室壁の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−23518(P2007−23518A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203731(P2005−203731)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】