説明

海洋生物の養殖用餌

【課題】 陸上で海洋生物の養殖を行う場合、海水の交換はコストがかさみ、排水による塩害が発生する恐れもある。従って水を交換する必要のない閉鎖水域での海洋生物を養殖するシステムが望まれるが、餌の面からは、不足するカルシウム等の成分を補給し、海水の酸性化を防ぎ、かつ海水を汚さない餌で保存性のよいものと、その供給方法の確立が望まれていた。
【解決手段】 餌に焼成カルシウムを混入する。またその餌が水中に沈まない様に浮力を与え、回遊魚や海底に生息するヒラメやカレイが容易に餌と認識できるようにするとともに、余った餌を容易に回収可能にする。
餌の主成分として焼酎粕を使用する。それにニンニク成分と植物性乳酸菌を加え発酵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水槽内などの閉鎖水域で養殖する海洋生物の餌に関する。
【背景技術】
【0002】
近年健康志向と食料確保の問題で魚介類の食用需要が増加しているが、資源と環境保護のため、また国際条約の制約から漁獲量を増やすことが難しくなってきている。
また海洋汚染、地球温暖化による海水温上昇などにより資源が減少していると言う状況に加えて原油価格の上昇により遠洋漁業も採算がとれない状態に陥ってきて、昔から海洋生物を主要な食料源としている日本人にとって、今食料危機の可能性すら叫ばれようとしている。
【0003】
一方に於いて国内内陸部の農村や山村では林業や農業も衰退し、新たな産業を興そうとしてもなかなか定着が難しく、過疎化が進んでいる。
この二つの状況を解決する方法として本願発明者は内陸で海洋生物を養殖する方法を研究し、その実用化を図ろうとしている。
【0004】
内陸部での海洋生物養殖の最大の課題は、いかに海水を長期間交換しないですませられるかと言う点にある。
従来養殖に使用する海水は、かけ流しにするか一定期間で交換をして使用されてきた。
そのために海洋生物の養殖は、漁村近くの湾内か沿岸でしか実用化されていない。
内陸部では海水の供給と廃棄に困難な問題が多く、養殖をしても採算が合わず、事業化が難しかったためである。
【0005】
本願特許の発明者は以前に微生物による海水の浄化システムに関する特許を出願している。このシステムを使用することにより、養殖する海洋生物が排出するアンモニア成分を有効に除去することができた。しかし新たな問題として水が次第に酸性化してくると言う現象が生じた。
これは微生物による浄化が酸化反応であることに原因の一端があると考えられる。
【0006】
従来の海水かけ流し方式と異なり水槽等の閉鎖水域内で海洋生物を養殖するのであるから、この問題の解決も養殖システムの完成には必須である。
本発明は飼料の工夫によりこの問題を解決する方法を明らかにしている。
【0007】
また海洋生物は継続してカルシウム等ミネラルを摂取する必要があるが、海水かけ流し養殖の場合と異なり閉鎖水域での養殖では水中のミネラル成分は限りがあり、どうしても不足する。
この問題も本発明の飼料を使用することにより解決することができる。
【0008】
また閉鎖水域では、余分な餌を水中にいつまでも留まらせないことも重要である。餌を余らせることは費用の点からも無駄であり、それよりも残滓は腐敗しやすく、水質悪化の大きな原因となる。
そのため海洋生物に与える飼料は、餌として認識しやすく、また食しやすい様にする工夫が必要となる。また、もし食べ残しても容易に回収でき、保存が効けば再利用することができ、閉鎖水域での水の汚濁を防ぐことができるばかりでなく、費用の面からも利点がある。
本発明の目的の一つは余分な飼料が水中に留まりにくくすることにもある。
【0009】
本発明は投与された餌が効率よく海洋生物に捕食されるように、餌の形態を工夫し、海洋生物特に回遊魚や海底に生息するヒラメやカレイなどが餌と認識しやすく、食べ残しも少なく、また余った餌を容易に回収可能とすることを目的としている。
【0010】
一方、昨今ブームとなっている焼酎を醸造するときに派生する焼酎粕は処理が難しく資源としての利用が進んでいない。そのため海洋投棄や埋め立て処分をされることが多く、海洋汚染や悪臭公害を発生する原因となっていた。
この焼酎粕を加工することにより海洋生物の飼料に活用出来れば、環境問題の解決にもなり、安価な飼料の製造が可能となる。
【0011】
そのため、焼酎粕を使って、海洋生物が好んで食し、ミネラル成分や栄養が豊富で、消化もよく、海洋生物の健康増進に有効で、生長も早く、価格が安く、輸送に適し、日持ちが良い飼料を開発することが望まれていた。
【0012】
以下に本発明の関連分野の公知例を示す。
【特許文献1】 特開昭63−196234
【特許文献2】 特開2003−259814
【特許文献3】 特開平5−194067
【0013】
特許文献1は海産魚介類の養殖用飼料の特許であり、この中にカルシウム成分が含まれる貝化石を微粉末にしたものを添加した飼料に関する記述がなされている。
但しここに記述されているカルシウムは種々のカルシウム化合物を微粉末にしたものであり、本発明に使用する焼成カルシウムとは効果がまったく異なる。またこの文献には焼成カルシウムに関する記述はない。
特許文献2は海水魚の餌で浮力を得るためのカプセルに充填した餌の中に小型の中空のカプセルを挿入した餌の例が開示されている。
特許文献3には焼酎粕に配合飼料や穀物を混ぜた例が記載されている。 しかしこの技術は焼酎醸造元の近隣での家畜への使用に限られ、遠隔地で行われる場合の多い海洋生物の飼料に使う方法は開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
背景技術の項で述べたように本発明の課題は養殖生物のカルシウム不足を補い、水の酸性化の効果がある飼料を実用化することにある。
【0015】
また第二に、与えた餌の食べ残しが少なく、たとえ食べ残しがあっても回収しやすく、費用の点からも無駄がなく、餌の残滓で水質の悪化をさせることの少ない餌を実現することにある。
特にヒラメやカレイなど海底に生息する魚は餌が海底に沈むと見つけることができない。また回遊魚も同様に水中又は水面にある餌しか食べることはない。
従って水底に沈まない餌を実現することが必要となる。
そうすれば食べ残しは少なくなり、たとえ残ったとしても海底に沈まないので回収しやすい。
【0016】
本発明はこれら第一と第二の課題を解決し、閉鎖水域での海洋生物養殖を実用化するために、長期間海水の交換をしないですむ養殖システムを実現することを目的としている。
【0017】
また本発明が解決しようとする第三の課題はその大部分が産業廃棄物として処理されている焼酎粕を海洋生物の飼料として有効活用することにある。
昨今ブームとなっている焼酎は日本で多量に醸造されているが、従来焼酎を取り出した後の焼酎粕は前述のように有益な活用方法がなかった。一部は肥料などに使われるが多くは廃棄物として海洋投棄または埋め立て処分していたのが現状である。しかしそれらの処分方法は資源の有効活用の面と環境保全の面から問題視され、それらの処分を行うことが難しくなってきている。
【0018】
海洋投棄は最近法律で禁止された。
埋め立て処分には処分場の確保が問題であり、さらには廃棄物の分解により悪臭が発生するという問題もある。
肥料化に関しては供給過剰な状況であり、多量に発生する焼酎粕の一部しか利用されていない。
【0019】
焼酎粕の飼料としての活用方法に関しては特許文献3に記載がある。しかし焼酎粕に配合飼料や穀物を混ぜただけでは、餌として消化吸収が悪く、また日持ちが悪いと言う問題がある。従ってこの技術は焼酎醸造元の近隣での家畜への使用に限られ、遠隔地で行われる場合の多い海洋生物の飼料には使うことはできなかった。
本発明の課題の一つは焼酎粕の有効活用をはかり環境公害を防止することにもある。
【課題を解決する手段】
【0020】
閉鎖水域における海洋生物の養殖に使用する餌として、その成分に焼成カルシウムを含む養殖用餌を用いる。
焼成カルシウムは帆立貝や牡蠣の貝殻を高温で焼成したもので、主成分は酸化カルシウム、その特徴は多孔質である。これを微粉末にしたものを用いる。他の、例えばカルシウム製剤としてよく用いられる卵の殻を粉末にしたもの、または貝化石を微粉末にしたものに比べ活性度が高く、食した場合の吸収も良く、また海水に溶けた場合早く酸を中和することができる。
【0021】
また、前記養殖用餌は、焼酎粕、油、糠、ケルプ化石、蚕蛹粉を含み、それを乳酸菌またはイースト菌または酵母を加えて発酵させ、プロバイオテックス化したものを用いる。
【0022】
更に前記養殖用餌を魚が一口で食べられる大きさに餌ユニットとしてまとめ、前記餌ユニットの内部に適量の空気を封入し、外周を食用密封材で覆い、浮力を持たせ供給した時に水底に沈まない様にする。
食用密封材はコラーゲンペプチドが好適であるがゼラチン等も用いることができる。
【0023】
また浮力を持たせる別の方法として、内部に麩やマシュマロなどの様な発泡食材を挿入して餌ユニットをつくることにより比重を軽くしても良い。
【0024】
更に餌を水底に沈ませない方法として、餌ユニットに糸の一端を封入し、又は糸を貫通させ、その糸を利用して前記餌ユニットをつるす方法も考えられる。餌ユニットは外周を食用密封材で覆い、餌が水中に溶け出して海水を汚濁することを防ぐのが好ましい。また餌の中に前記食用密封材を混入して固めることにより餌の流出を防ぐ方法もある。
【0025】
焼酎粕は植物性蛋白質、炭水化物や繊維、更に多くのビタミン類が含まれている。成分から見れば海洋生物飼料の原料として好適である。
但し海洋生物養殖用の飼料としては動物性蛋白質、カルシウム等が不足である。
動物性蛋白質補充のためには蚕蛹を粉末にしたものを添加するのが良い。蚕蛹の粉末は安価であり、動物性蛋白質が豊富で、また魚類も好んで食する。釣りの練り餌に蚕蛹の粉末を用いることはあるが、これは魚を成長させるためのものではなく、その臭気で魚を寄せるために用いる。しかし成長のための餌としてこれを常食させると海洋生物の肉には独特の臭いが残ってしまう。
【0026】
また前記焼酎粕は水分やアルコール成分を多く含む。これを内陸部で飼料として使用するためには長時間の保存と長距離の輸送を可能にする必要がある。その方法の一つとして焼酎粕にニンニクを加える方法がある。 その抗菌作用により雑菌の繁殖を抑え、保存性と輸送性を高める事ができる。
ニンニクは裁断して加えるか、粉末にして加えてもよく、ニンニク成分を食用油やアルコールで抽出して、その抽出液を加えても良い。またニンニクをすりおろし、そのまま又は濾したものを加えてもよい。
【0027】
しかしニンニクは独特の臭気があり、これを嫌う海洋生物もあり、またこれを食する海洋生物にニンニクの臭気が残る事がある。
【0028】
これを解決するため、焼酎粕に蚕蛹粉またはニンニクを添加した後乳酸菌またはイースト菌または酵母菌を加え発酵させる。それにより蚕蛹やニンニクの臭気を気にならない程度まで消すことができる。
特に飼料にニンニクを加えた場合使用する乳酸菌は植物性乳酸菌を使用するのが好ましい。ニンニクには抗菌作用があるが、植物性乳酸菌はその中で発酵をすることができる。
糖分を加える事により乳酸菌発酵を促進させることができる。糖分としてはトレハロース、プルラン、グアガムなどが好適である。
【0029】
また飼料の成分として海藻の一種であるケルプ等が海底に堆積してできたケルプ化石を粉末にして加えることもできる。これは海藻由来の成分であるため特にアワビ、サザエなど貝類養殖の餌に好適である。この場合、加える乳酸菌は動物性乳酸菌でも良いが特に植物性乳酸菌が好適である。これにトレハロースなど糖類を加えると発酵が一段と進み、日持ちがよく、消化のよい飼料ができる。
【発明の効果】
【0030】
閉鎖水域における海洋生物の養殖に使用する餌として、その成分に焼成カルシウムを含む養殖用餌を用いることにより、多孔質の酸化カルシウムである焼成カルシウムは海洋生物の体内に吸収され易い。従って閉鎖水域での養殖時に不足しがちなカルシウムを効果的に摂取させる効果がある。
【0031】
また養殖生物体内で吸収されずに体外に排出されたカルシウム成分は水と反応してアルカリ性を示し、水の酸性化を防ぐ。これは長期間海水の交換をしないですむ養殖システムを実現するのに必要な条件である。
【0032】
この効果を確認するために、本願の発明者は水槽内で養殖しているアワビに対して、2008年8月1日から9日までの間、従来の餌を与え続けた状態で毎日水の酸性度を測り、その後8月10日から従来の餌に焼成カルシウムを加え、更に水槽内の水の酸性度を測定した。
実験の結果を示す。
測定日 pH 飼料
8月 1日 7.8 従来の飼料
8月 2日 7.7 従来の飼料
8月 3日 7.8 従来の飼料
8月 4日 7.7 従来の飼料
8月 5日 7.8 従来の飼料
8月 6日 7.8 従来の飼料
8月 7日 7.8 従来の飼料
8月 8日 7.8 従来の飼料
8月 9日 7.8 従来の飼料
8月10日 7.8 焼成カルシウムを添加した飼料
8月11日 7.9 焼成カルシウムを添加した飼料
8月12日 8.0 焼成カルシウムを添加した飼料
8月13日 8.1 焼成カルシウムを添加した飼料
8月14日 8.2 焼成カルシウムを添加した飼料
8月15日 8.2 焼成カルシウムを添加した飼料
【0033】
実験の条件
実験の場所 栃木県那須塩原市 室内
バクテリアによる浄化水槽を使用 海水の交換無
水温 約20度
室温 18度〜24度
水槽内の水量 約 500 リットル
養殖生物 アワビ稚貝 200 匹
焼成カルシウム 1回 10g 寒天40gに溶かし飼料に混入
飼料の供給 毎日1回 23時
測定 毎日 10 時
実験者 本願特許発明者
実験の結果 従来の飼料を与え続けていた状態でpH値は7.7〜7.8であったが、8月10日より焼成カルシウムを加えた飼料を与えはじめた。その結果翌11日よりpH値が上がり始め、その後ほぼ8.2を保っている。この様に海水の酸性化を防ぐ効果が表れている。
この実験に使用したアワビではpH8.2の環境がもっとも好ましいとされ、酸性化してpH7.8以下になると貝殻が軟化し白化して食欲がなくなり成長も止まることが確認されている。
【0034】
また、現在処分に困っている焼酎粕を有効活用し、安価な蚕蛹粉を添加することにより動物性蛋白質の不足を補い、ニンニク成分を加えることにより輸送中、保存中の腐敗を防ぎ、乳酸菌等を加え発酵させることにより、更に腐敗しにくく、保存性が高まり、臭気を防げ、内陸で養殖するための条件である輸送性も良い飼料を提供できる。
この方法が普及すれば焼酎粕の海洋投棄や埋め立て処分が必要なくなり、環境問題の解決の一助となる。
【0035】
更に、餌を一口で食せられる大きさの餌ユニットにして、内部に空気又は比重の軽い発泡性食材などを封入して浮力を与え、水底に沈まない様にすることにより、魚が餌として認識しやすく食べやすく、与えた餌の食べ残しが少なくなり、たとえ食べ残しがあっても回収しやすくなる。 そのため餌の残滓で水質の悪化をさせることが少なく、費用の点からも無駄がない。
【0036】
この方法で造った飼料は、原料がすべて本来食品として用いるもののみなのであり、プロバイオテックス化しているため、化学薬品や抗生物質などを使用しなくても養殖生物の健康を維持し生長を促進する効果が期待できる。
従って養殖生物の健康のみならず、養殖生物を食するひとの健康にも良い影響を与える。
【発明を実施するための最良の方法】
【0037】
図1に本発明の実施例の工程図を示す。これは海洋生物の飼料のうち特に回遊魚または海底に棲息する魚向けに、浮力を持たせた餌ユニットの製造工程を中心に作られているが、例えばアワビやサザエ等貝類の餌にするためには工程の途中主に浮力を付与する工程を省けばよい。
【0038】
遠心分離により半練状態にした焼酎粕に焼成カルシウムを粉末状にして加え、更に必要に応じてケルプ化石の微粉末、糠、蚕蛹、ニンニクから抽出した成分を含む油を加え、攪拌し、過熱し、半固体状の飼料にする。
これを冷却した後植物性乳酸菌、トレハロース(糖類の一種)、プルラン(多糖類の一種)、グアガム粉末を加え、適度な温湿度環境に置き醗酵熟成させる。 発酵熟成させた飼料をプロバイオテックス飼料と称する。
【0039】
植物性乳乳酸菌としてはラクトバチルス・プランタルム菌、ラクトバチルス・プレビス菌、ペテオコッカス・ハロスフィルス菌、テトラジェノコツカス・ハロフイルス菌、ペデイオコツカス・ペントサセウス菌のいずれか、またはそれらの複数の乳酸菌を混合して用いる。
特にニンニク成分を加えたときはニンニク成分の抗菌作用に対して耐性のあるラクトバチルス・プランタルム菌を用いると良い。
【0040】
プロバイオテックス飼料に乾燥アミや乾燥魚粉末を混入しても良い。
次にこれにコラーゲンペプチド、ゼラチンを単独でまたは組み合わせて混入する。これによりプロバイオテックス飼料を半固体状態にするとともに水中に解けにくくすることができる。
海洋生物が貝類の場合この状態のプロバイオテックス半固体飼料を適当な大きさに分け供給する。
【0041】
次に海洋生物が魚の場合、一口で食する大きさの餌ユニットにまとめて供給する。
図11に示すように餌の外形の大きさに応じた凹部21を有する凹側木型10を造り、その中にプロバイオテックス半固体飼料11を挿入し、凸側木型12で上から押し、窪み25を造る。 窪み25の内側にコラーゲンペプチドなどの食用密封材15を塗布する。
型からはずすと餌ユニット17の片側24が成形されたことになる。
同様なものを2つ造り内部に空間が確保されるように上下に会わせ、刷毛14でその合わせ目と外周に食用密封材15を塗布し中の空気を密封し、餌ユニット17としてまとめる。
【0042】
このとき窪み25の中に麩13を挿入してもよい。麩13を挿入することにより餌ユニットに成形後に外部から多少圧力が加わってもつぶれて浮力を失うことはない。
【0043】
また図13に示す様に、プロバイオテックス半固体飼料11を平らに延ばし、表面に食用密封材15を塗布し、丸棒29を使って円筒形に丸める。円筒形の端部の一方を図13に示すように封止し、丸棒29を抜き、他の端部も封止する。封止部分に食用密封材を塗布して空気が漏れないようにする。
【0044】
この場合も中に麩13を挿入することができる。図9に示す様に、プロバイオテックス半固体飼料11を平らに延ばしその中に麩13を置き、のり巻き状(円筒形に丸める)、俵状(円筒形に丸め端部を別の円形をしたプロバイオテックス半固体飼料で塞ぐ)、餃子状(中心に麩を置きプロバイオテックス半固体飼料11を二つ折りにし、3辺を食用密封材で封止する)または春巻状(中心に麩を置きプロバイオテックス半固体飼料11で包み込み、端部を折り曲げて封止する)にまとめ、いずれの場合もその合わせ目と外周に食用密封材を塗布する。
【0045】
この様に醗酵した餌を魚が一口で食することが可能な大きさの餌ユニット15にまとめる。
このとき餌ユニットの内部に封入する空気又は麩の量を加減して、水底に沈まず、水中または水面に漂う様に前記餌ユニット15の比重を調整する。
【他の実施例】
【0046】
プラバイオテックス半固体飼料をカプセルに詰めて餌ユニットにする方法がある。このとき餌ユニットに浮力を付加するために、カプセル満杯に詰めずに空間を残した状態で封止する。
空間の量を加減することによりカプセル全体としての浮力を調整することができる。
【0047】
またプロバイオテックス半固体飼料を羊または牛などの腸に詰める方法もある。このときは腸の中に意図して空気を混入することで浮力を与えることができる。腸詰をソウセイジ状に封止する時に端部および外周に食用密封材を塗布すると更に好ましい。
また腸の内部に麩13または中空のカプセルを挿入して全体の比重を軽くし、浮力を確保しても良い。
【0048】
プロバイオテックス半固定飼料をそのまま水にさらすとその成分が海洋生物に捕食される前に水中に溶け出し、水を汚染することがある。
従って、腸詰めやカプセルに入れるとき以外は表面を食用密封材でコーティングするが、最初からプロバイオテックス半固体飼料11にコラーゲンペプチドなどを混入したものを使用することができる。こうすることにより水の汚染は少なくなる。
【0049】
餌を水底に沈ませない方法として、図2乃至図3に示す様に、前記餌ユニットに適当な長さに切断した糸3の一端を封入し、又は糸3を貫通させ、その糸3を利用して前記餌ユニットを水槽内につるす方法も考えられる。その状態を図5乃至図6に示す。
【0050】
このとき単に糸を貫通させるだけでは吊るしたときに抜け落ちる可能性がある。図3に示す様に糸を餌ユニット内部でまげることにより抜け落ちを防止することができる。
【0051】
また、餌ユニット17の外周を食用密封材15で覆う方法として、少量生産の時は図10に示す様に食用密封材を刷毛で塗るか、図10に示す様に挟む道具で挿み、食用密封材に漬ける方法をとっても良い。また量産する場合は図14に示す様に輪付き部を利用してチェーンベルトに吊るして食用密封材槽6に入れたコラーゲンペプチドに漬けることにより効率よく塗布できる。
【産業上の利用の可能性】
【0052】
本発明を実施することにより、栄養豊富で消化の良く、養殖動物の成長を促進することが可能で、日持ちも良く、更に安価な海洋生物の飼料が実現できる。
この餌の内部に含まれる焼成カルシウムは特に内陸で行う海洋生物の養殖に使用する海水の酸性化を防ぐので、本発明者の別の発明である微生物による海水の濾過システムと併用することにより長期間海水の交換をしなくても済む、海洋生物養殖システムを実現する。
【0053】
これにより、いつでも、どこでも需要のある時に海洋生物を出荷できるので、たとえば禁漁期など品薄のときでも出荷可能とる。
また海岸から離れた土地でも海洋生物の養殖が可能になるため、例えば山村などでも新しい産業として起こすことができ、過疎化対策としても有効である。
本発明により焼酎粕を海洋生物の飼料へ転化することが可能になり、資源の有効活用と環境汚染の防止を図ることができるので、焼酎醸造の問題点の解決にも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】飼料製造工程図
【図2】糸付き餌ユニット
【図3】糸抜け防止加工をした餌ユニット
【図4】食用密封材浸漬装置
【図5】ネット式自動給餌システム
【図6】ワイヤー式自動給餌システム
【図7】木型による成型方法を示す図
【図8】木型を使用して成形した麩入餌ユニット
【図9】麩入餌ユニットの他の実施例を示す図
【図10】麩入餌ユニットの食用密封材塗布の他の実施例を示す図
【図11】木型による成型方法を示す図
【図12】木型を使用して成形した空気封入餌ユニット
【図13】空気封入餌ユニットの他の実施例を示す図
【符号の説明】
【0055】
1 輪付き糸
2 糸を付けられた餌ユニット
3 糸
4 吊り下げ金具
5 自動送りチェーンベルト
6 食用密封材槽
7 封止された餌ユニット
8 ネット
9 ワイヤーおよびロープ
10 凹側木型
11 プロバイオテックス半固体飼料
12 凸側木型
13 麩
14 刷毛
15 食用密封材(コラーゲンペプチド)
16 平にのばしたプロバイオテックス半固体飼料
17 餌ユニット
18 食用密封材容器
19 挟む道具
21 凹部
24 成形された餌ユニットの片側
25 窪み
26 合わせ目
29 丸棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖水域における海洋生物の養殖に使用する餌であって、その成分に焼成カルシウムを含む養殖用餌。
【請求項2】
前記養殖用餌は、焼酎粕、蚕蛹粉を含み、乳酸菌または植物性乳酸菌またはイースト菌または酵母を加えて発酵させたことを特徴とする、請求項1に記載の養殖用餌。
【請求項3】
前記養殖用餌に、ニンニクまたはニンニク抽出成分を加え、乳酸菌または植物性乳酸菌またはイースト菌または酵母を加えて発酵させたことを特徴とする、請求項1乃至2に記載の養殖用餌。
【請求項4】
前記養殖用餌は魚が一口で食べられる大きさに餌ユニットとしてまとめられ、前記餌ユニットの内部に適量の空気を封入し、外周を食用密封材で覆ったことを特徴とする、請求項1乃至3に記載の養殖用餌。
【請求項5】
前記養殖用餌は魚が一口で食べられる大きさに餌ユニットとしてまとめられ、前記餌ユニットの内部に発泡食材を挿入したことを特徴とする、請求項1乃至4に記載の養殖用餌。
【請求項6】
前記養殖用餌は魚が一口で食べられる大きさに餌ユニットとしてまとめられ、前記餌ユニットに糸の一端を封入し、又は糸を貫通させ、前記餌ユニットの外周を食用密封材で覆ったことを特徴とする、請求項1乃至5に記載の養殖用餌。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−46050(P2010−46050A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238632(P2008−238632)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(591057647)
【Fターム(参考)】