説明

液体現像剤、液体現像剤の製造方法、および画像形成装置

【課題】記録媒体に定着されたトナー画像の長期保存性に優れ、欠点等のない高解像度のトナー画像を形成することができ、クリーニング性およびリサイクル性に優れた液体現像剤、このような液体現像剤の製造方法、およびこのような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、トナー粒子は、平均粒径が0.7〜3μmであり、下記式(I)で表される粒度分布の幅Sが1.4以下、形状係数SF1が100〜130、形状係数SF2が110〜150であり、絶縁性液体は、不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合に、累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤、液体現像剤の製造方法および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潜像担持体上に形成した静電潜像を現像するために用いられる現像剤には、顔料等の着色剤および結着樹脂を含む材料で構成されるトナーを乾式状態で用いる乾式トナーによる方法と、トナーを電気絶縁性の担体液(絶縁性液体)に分散した液体現像剤(例えば、特許文献1参照)を用いる方法とがある。
乾式トナーを用いる方法は、固体状態のトナーを取り扱うので、取り扱い上の有利さはあるものの、粉体による人体等への悪影響が懸念されるほか、トナーの飛散による汚れ、トナーを分散した際の均一性等に問題がある。また、乾式トナーでは、粒子の凝集が起こり易く、トナー粒子の大きさを十分に小さくするのが困難であり、解像度の高いトナー画像を形成するのが困難であるという問題がある。また、トナー粒子の大きさを比較的小さなものとした場合には、上述したような粉体であることによる問題が更に顕著なものとなる。
【0003】
一方、液体現像剤を用いる方法では、液体現像剤中におけるトナー粒子の凝集が効果的に防止されるため、微細なトナー粒子を用いることが可能であり、また、結着樹脂として、低軟化点(低軟化温度)のものを用いることができる。その結果、液体現像剤を用いる方法では、細線画像の再現性が良く、階調再現性が良好で、カラーの再現性に優れており、また、高速での画像形成方法としても優れているという特徴を有している。
【0004】
ところで、液体現像剤で用いられるトナー粒子の粒度分布が狭いと、一般に、定着後の記録媒体に定着したトナー画像の画像解像度、画像濃度が優れているとされる。また、得られるトナー画像は、欠点が少なく、精細なものとなる。また、現像剤容器から塗布ローラに液体現像剤をくみ出した場合において、トナー粒子が均一であるためにトナー粒子間に空隙が多くでき、多量の絶縁性液体がトナー粒子間に存在するため、トナー画像の現像、転写が効率的に行われる。しかしながら、現像、転写時にトナー粒子間に存在した多量の絶縁性液体は、定着の際においても、トナー粒子の表面に付着している。一般に、従来の炭化水素系やシリコーン系などの不揮発性鉱物油系の絶縁性液体を用いて画像形成を行った場合、このトナー粒子の表面に付着した絶縁性液体が定着時において、トナー粒子同士の接触、結合を妨げる。このため、得られるトナー画像を長期に保存した場合において、トナー画像は、空気や光、摩擦等で劣化しやすい問題があった。
【0005】
一方で、粒度分布の広いトナー粒子を用いると定着強度の低下を抑制することができる。粒度分布の広いトナー粒子はその平均粒径と比べて微小な粒子を多量に有している。このため、粒度分布の広いトナー粒子を液体現像剤に用いると、記録媒体上のトナー画像にて大きなトナー粒子間の空隙に小さなトナー粒子が入り込み、トナー粒子間の隙間が少なくなるため、絶縁性液体はトナー粒子に少量しか付着しない。結果として、記録媒体上でのトナー粒子に付着した絶縁性液体も少なくなり、定着時において、トナー粒子同士の接触、結合が好適におこる。このため、得られるトナー画像を長期に保存した場合において、トナー画像は、空気や、光、摩擦等で劣化しにくいものとなる。しかしながら、現像、転写時においても、トナー粒子に絶縁性液体が少量しか付着していないため、トナー画像の現像、転写が好適に行われず、記録媒体上に欠点等のない、高画質のトナー画像を形成できない問題があった。
【0006】
また、転写ローラ、現像ローラ等の部材は、転写、現像後に残存した液体現像剤を除去することでクリーニングが行われる。このとき、トナー粒子粒度分布が広いと、クリーニングが好適に行われない問題があった。また、一旦利用して残存した液体現像剤を回収し、再利用した際に、複数のトナー粒子が凝集して、粗大粒子が発生しやすい問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平7−152256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、記録媒体に定着されたトナー画像の長期保存性に優れ、欠点等のない高解像度のトナー画像を形成することができ、クリーニング性およびリサイクル性に優れた液体現像剤、このような液体現像剤の製造方法、およびこのような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液体現像剤は、絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、
前記トナー粒子は、平均粒径が0.7〜3μmであり、
下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、
下記式(II)で表される前記トナー粒子の形状係数SF1が100〜130であり、
下記式(III)で表される前記トナー粒子の形状係数SF2が110〜150であり、
前記絶縁性液体は、不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合に、累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
SF1={(ML)/A}×(100π/4) ・・・ (II)
SF2={(CL)/A}×(100/4π) ・・・ (III)
(ただし、A[μm]は、トナー粒子を2次元平面状に投影してできる図形の面積であり、ML[μm]、CL[μm]は、それぞれ、前記図形の最大長、周長である。)
【0010】
本発明の液体現像剤では、前記絶縁性液体の粘度は、5〜1000mPa・sであることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記不飽和脂肪酸のグリセリドは、不飽和脂肪酸成分としてリノール酸を含むものであることが好ましい。
本発明の液体現像剤では、前記不飽和脂肪酸のグリセリドを構成する全脂肪酸成分に対する前記リノール酸の含有率は、15mol%以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の液体現像剤の製造方法は、主として樹脂材料で構成された微粒子を会合させ、会合粒子を得る工程と、
絶縁性液体の一部を用いて、前記会合粒子を解砕し、トナー粒子を得る工程と、
得られた前記トナー粒子を、不飽和脂肪酸のグリセリドを含む液体に分散させる分散工程とを有し、
得られる液体現像剤は、前記絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、前記トナー粒子の平均粒径が0.7〜3μmであり、下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、下記式(II)で表される前記トナー粒子の形状係数SF1が100〜130であり、下記式(III)で表される前記トナー粒子の形状係数SF2が110〜150であり、前記絶縁性液体は、前記不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合に、累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
SF1={(ML)/A}×(100π/4) ・・・ (II)
SF2={(CL)/A}×(100/4π) ・・・ (III)
(ただし、A[μm]は、トナー粒子を2次元平面状に投影してできる図形の面積であり、ML[μm]、CL[μm]は、それぞれ、前記図形の最大長、周長である。)
【0012】
本発明の画像形成装置は、液体現像剤によって形成されたトナー画像が付着した記録媒体に対して、加熱しつつ圧力をかけることにより、前記トナー画像を前記記録媒体上に定着させる定着部を有し、
前記液体現像剤は、絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、前記トナー粒子の平均粒径が0.7〜3μmであり、下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、下記式(II)で表される前記トナー粒子の形状係数SF1が100〜130であり、下記式(III)で表される前記トナー粒子の形状係数SF2が110〜150であり、前記絶縁性液体は、不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合に、累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
SF1={(ML)/A}×(100π/4) ・・・ (II)
SF2={(CL)/A}×(100/4π) ・・・ (III)
(ただし、A[μm]は、トナー粒子を2次元平面状に投影してできる図形の面積であり、ML[μm]、CL[μm]は、それぞれ、前記図形の最大長、周長である。)
【0013】
本発明の画像形成装置では、色の異なる複数の前記液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部から供給された色の異なる複数の前記液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に前記トナー画像を形成する2次転写部とを有することが好ましい。
【0014】
本発明の画像形成装置では、前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記現像ローラ上の液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体と、前記現像ローラに液体現像剤を供給する塗布ローラとを有し、
前記塗布ローラは、その表面に溝が形成されたアニロクスローラであり、前記溝に前記液体現像剤を担持することによって前記現像ローラに前記液体現像剤を供給することが好ましい。
以上の構成を満足することにより、記録媒体に定着されたトナー画像の長期保存性に優れ、欠点等のない高解像度のトナー画像を形成することができ、クリーニング性およびリサイクル性に優れた液体現像剤、このような液体現像剤の製造方法、およびこのような液体現像剤を用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。
≪液体現像剤≫
まず、本発明の液体現像剤について説明する。本発明の液体現像剤は、絶縁性液体中にトナー粒子が分散したものである。
<絶縁性液体>
絶縁性液体について説明する。本発明において、絶縁性液体は、不飽和脂肪酸グリセリドを含むものである。不飽和脂肪酸グリセリドは、脂肪酸とグリセリンとのエステル(グリセリド)であり、脂肪酸成分として不飽和脂肪酸を含むものである。
【0016】
不飽和脂肪酸グリセリドは、得られるトナー画像の長期保存性の向上に寄与することができる成分である。以下、詳細に説明する。不飽和脂肪酸成分は、酸化されることによりそれ自体が硬化することのできる成分である。このため、不飽和脂肪酸グリセリドを含む液体現像剤を用いて、記録媒体上にトナー画像を形成、定着した場合、トナー画像にトナー粒子とともに残存した不飽和脂肪酸グリセリドは、空気中の酸素等によって酸化重合することができ、トナー粒子同士またはトナー粒子と記録媒体とを強固に接着させることができる。また、不飽和脂肪酸グリセリドは、トナー画像の表面を覆いながら酸化重合することができるため、トナー画像表面に硬化した不飽和脂肪酸グリセリドの保護膜を形成することができる。以上のようなことから、トナー画像は、長期にわたって、摩擦等の物理的な外力やや空気、光等による劣化を少ないものとすることができ、長期保存性が優れたものとなる。
【0017】
また、不飽和脂肪酸グリセリドの一部は、定着時における定着温度で酸化されることにより、トナー粒子の定着強度を向上させることができる。また、不飽和脂肪酸グリセリドは、定着時にトナー粒子に含まれる樹脂成分を可塑化させる効果(可塑剤効果)がある。トナー粒子は定着時に、記録媒体上で熱、圧力をかけられた場合において、トナー粒子表面付近にある不飽和脂肪酸グリセリドによって効果的に可塑化する。このため、複数色のトナー粒子を用いて画像を形成する場合には、可塑化したトナー粒子同士が接触して溶融し合うことで、隣接する異なる色のトナー粒子同士を確実に結合させることができる。その結果、異なる色のトナー粒子同士が結合した領域は、各トナー粒子が有する色同士が混ざり合い、それらの中間の色を呈するようになり、目的とする画像の色調をより確実に得ることが可能となる。また、定着時にトナー粒子が可塑化されることにより、トナー画像は、平滑になり、優れた光沢を得ることができる。さらに、不飽和脂肪酸グリセリドは環境に優しい成分であるため、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0018】
グリセリドを構成する不飽和脂肪酸としては特に限定されないが、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、イワシ酸、ドコサヘキサエン酸等(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等の多価不飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸やこれらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
この中でも、不飽和脂肪酸としてリノール酸を用いた場合、得られるトナー画像は、特に長期保存性に優れたものとなる。また、トナー粒子の記録媒体への定着強度が特に優れたものとなる。また、定着時にトナー粒子との親和性が高く、トナー同士の溶融を妨げにくいため目的とする色調の画像を容易に得ることができる。加えて、トナー粒子との親和性が高いため、液体現像剤中にトナー粒子が安定して分散でき、液体現像剤の保存性を特に優れたものにすることができる。
【0020】
また、リノール酸成分としては、例えば、共役二重結合を有する共役リノール酸で構成されたものを用いてもよい。これにより、得られるトナー画像は、特に長期保存性に優れたものとなる。また、記録媒体に対するトナー粒子の定着強度を特に優れたものとすることができる。
不飽和脂肪酸グリセリド全脂肪酸成分に対するリノール酸の含有率は、特に限定されないが、15mol%以上であることが好ましく、25mol%以上であることがより好ましく、45mol%以上であることがさらに好ましい。これに対して、リノール酸の含有率が前記下限値未満であるとトナー粒子の記録媒体への定着強度が低下する可能性があり、液体現像剤の保存時においてトナー粒子が安定して分散できず、液体現像剤の保存性が劣る場合がある。
【0021】
このような不飽和脂肪酸グリセリドは、例えば、紅花油、米油、米ぬか油、菜種油、オリーブ油、カノーラ油、大豆油、アマニ油、ヒマシ油等の植物由来の油脂、牛油等の各種動物由来の油脂等の天然由来の油脂から効率良く得ることができる。
本発明における絶縁性液体中の不飽和脂肪酸グリセリドの含有量は、20〜90wt%であることが好ましく、30〜80wt%であることがより好ましく、40〜70wt%であることがさらに好ましい。絶縁性液体中の不飽和脂肪酸グリセリドの含有量が前記範囲内にあると、形成したトナー画像に残存する不飽和脂肪酸グリセリドが適度なものとなり、得られるトナー画像は、表面に上述したような保護膜が特に好適に形成され、長期保存性に特に優れたものとなる。また、定着時において、不飽和脂肪酸成分の酸化重合反応と不飽和脂肪酸グリセリドによるトナー粒子の可塑化がバランスよく起きる。結果として、トナー画像の記録媒体への定着強度を特に優れたものにでき、目的とする色調の画像を得るのがより容易になる。これに対し、不飽和脂肪酸グリセリドの含有量が前記下限値未満であると不飽和脂肪酸の酸化重合反応起きにくいため、トナー粒子の記録媒体への定着強度が低下する可能性がある。一方、不飽和脂肪酸グリセリドの含有量が前記上限値を超えると、定着時において、不飽和脂肪酸による酸化重合反応が必要以上に起こりトナー粒子の周囲で固化が起こるため、不飽和脂肪酸成分の種類によってはトナー粒子の記録媒体への定着時にトナー粒子同士の溶融ができず、目的とする色調の画像が得るのが困難になる場合がある。
【0022】
また、不飽和脂肪酸グリセリド中に飽和脂肪酸成分が含まれていてもよい。飽和脂肪酸成分を含むことにより、液体現像剤の化学的安定性や絶縁性液体の電気絶縁性をさらに高く保つことが可能になる。
このような飽和脂肪酸成分を構成する飽和脂肪酸としては、例えば、酪酸(C4)、カプロン酸(C6)、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミスチリン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような飽和脂肪酸の中でも、分子内の炭素数が、6〜22のものであるのが好ましく、8〜20のものであるのがより好ましく、10〜18のものであるのがさらに好ましい。このような飽和脂肪酸で構成された飽和脂肪酸成分を含むことにより、前述したような効果はさらに顕著なものとして発揮される。
【0023】
また、絶縁性液体は、上述した以外の成分を含むものであってもよい。例えば、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(アイソパー;エクソン化学社の商品名)、シエルゾール70、シエルゾール71(シエルゾール;シエルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ;スピリッツ社の商品名)、低粘度・高粘度流動パラフィン(和光純薬工業)等の鉱物油、飽和脂肪酸のグリセリド、脂肪酸モノエステル、中鎖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル、グリセリン、脂肪酸等の脂肪酸グリセリドの分解物、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
上述した中でも、絶縁性液体の構成成分として脂肪酸モノエステルを用いた場合、以下のような効果が得られる。脂肪酸モノエステルは記録媒体に浸透しやすい成分であるため、トナー粒子の表面付近に付着した脂肪酸モノエステルは、定着時にトナー粒子と記録媒体とが接触した際に、記録媒体に速やかに浸透する。そして、この脂肪酸モノエステルの浸透と共に、定着時の熱で溶融したトナー粒子(トナー粒子を構成する樹脂材料)の一部が記録媒体の内部に浸透し、アンカー効果が働き、定着強度が向上する。さらに、脂肪酸モノエステルの浸透と共に、トナー粒子の表面付近に存在する不飽和脂肪酸グリセリドの一部も浸透し、この状態で酸化重合することにより、トナー粒子はより強固に定着される。また、脂肪酸モノエステルにも不飽和脂肪酸グリセリドと同様の可塑剤効果がある。脂肪酸モノエステルは、不飽和脂肪酸グリセリドよりも低分子量であるため、トナー粒子に浸透しやすく、可塑剤効果がより高い。このため、脂肪酸モノエステルが絶縁性液体に存在する場合、定着時にトナー同士が溶融し合い、目的とする画像の色調をより確実に得ることが可能となる。加えて、脂肪酸モノエステルは、比較的粘度が低いため、後述する液体現像剤製造方法において、所望の粒径、粒度分布のトナー粒子の製造を容易にする。さらに、脂肪酸モノエステルは環境に優しい成分であるため、画像形成装置外への絶縁性液体の漏出や、使用済液体現像剤の廃棄等による絶縁性液体の環境への負荷を低減することができる。その結果、環境に優しい液体現像剤を提供することができる。
【0025】
また、液体現像剤(絶縁性液体)中には、不飽和脂肪酸成分の酸化を防止・抑制する機能を有する酸化防止剤が含まれていてもよい。これにより、液体現像剤中における不飽和脂肪酸成分の不本意な酸化を防止することができる。その結果、液体現像剤(絶縁性液体)の経時的な劣化等を防止することができ、長期間にわたって、トナー粒子の分散性、記録媒体に対する定着強度等を、特に優れたものとすることができる。すなわち、液体現像剤の長期安定性(保存安定性)を特に優れたものとすることができる。
【0026】
絶縁性液体のヨウ素価は、100〜200であるのが好ましく、100〜180であることがより好ましく、110〜170であることがさらに好ましい。これにより、トナー粒子の記録媒体への定着を優れたものとしつつ、目的とする色調の画像を容易に得ることができる。これに対し、絶縁性液体のヨウ素価が前記下限値未満だと不飽和脂肪酸の酸化重合反応起きにくいため、トナー粒子の記録媒体への定着強度が劣る場合がある。一方、絶縁性液体のヨウ素価が前記上限値を超えると多量の不飽和脂肪酸による酸化重合反応が必要以上に起こりトナー粒子の周囲で固化が起こるため、トナー粒子の記録媒体への定着時にトナー粒子同士の溶融ができず、目的とする色調の画像が得るのが困難になる場合がある。
【0027】
絶縁性液体の粘度は、特に限定されないが、5〜1000mPa・sであるのが好ましく、50〜800mPa・sであるのがより好ましく、100〜500mPa・sであるのがさらに好ましい。絶縁性液体の粘度が前記範囲内の値であると、液体現像剤が現像剤容器から塗布ローラにくみ出された場合において、適量の絶縁性液体がトナー粒子に付着し、トナー画像の現像性、転写性を特に優れたものにできる。また、記録媒体上にあるトナー粒子に適量の絶縁性液体が付着しているので、形成したトナー画像の定着強度を特に優れたものにできるとともに、定着時にトナー粒子の可塑化が起きてトナー粒子同士が溶融しやすくなるため、目的とする色調の画像を非常に容易に得ることができる。加えて、トナー粒子の分散性をより高いものとすることができるとともに、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができ、また、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等をより効果的に防止することができる。加えて、トナー粒子の凝集、沈降を防止でき、絶縁性液体中におけるトナー粒子の分散性をより高いものとすることができる。
【0028】
これに対し、絶縁性液体の粘度が前記下限値未満であると、液体現像剤が現像剤容器から塗布ローラにくみ出された場合において、トナー粒子に付着する絶縁性液体が少量となり、トナー画像の転写性、現像性を優れたものにできない場合がある。また、記録媒体上にあるトナー粒子に付着している絶縁性液体が少量であるため、定着時に絶縁性液体の酸化重合反応が十分に起きず、十分な定着強度を得られにくくなる。加えて、後述するような画像形成装置において、塗布ローラ等からの液体現像剤の液だれ等の問題が起こる可能性がある。一方、絶縁性液体の粘度が前記上限値を超えると、多量の絶縁性液体が記録媒体上にトナー粒子に付着し、定着時にトナー粒子同士の溶融が起きず目的とする色調の画像が得るのが困難になる場合がある。また、トナー粒子の分散性を十分高くできず、後述するような画像形成装置において、塗布ローラに液体現像剤をより均一に供給することができない場合がある。ただし、本明細書における粘度とは25℃において測定した値を指すものとする。
上述したような絶縁性液体の室温(20℃)での電気抵抗は、1×10Ωcm以上であるのが好ましく、1×1011Ωcm以上であるのがより好ましく、1×1013Ωcm以上であるのがさらに好ましい。
また、絶縁性液体の誘電率は、3.5以下であるのが好ましい。
【0029】
<トナー粒子>
次にトナー粒子について説明する。
[トナー粒子の構成材料]
本発明の液体現像剤を構成するトナー粒子(トナー)は、少なくとも、結着樹脂(樹脂材料)と着色剤とを含むものである。
【0030】
1.樹脂材料
液体現像剤を構成するトナーは、主成分としての樹脂材料を含む材料で構成されている。
本発明においては、樹脂(バインダー樹脂)は、特に限定されず、例えば、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。この中でも、ポリエステル樹脂は化学構造の類似から、脂肪酸モノエステルおよび不飽和脂肪酸グリセリドとの親和性が非常に高いため、ポリエステル樹脂を用いた場合、液体現像剤中でのトナー粒子の分散性を特に優れたものとすることができる。また、ポリエステル樹脂は、可塑剤効果が発現しやすいため、定着時において、絶縁性液体の脂肪酸成分によって可塑化したトナー粒子が記録媒体に浸透しやすくなる。また、隣接するトナー粒子同士が接触し、溶融しやすくなる。このため、複数色の液体現像剤を用いた場合、複数色のトナー粒子が混ざり合い、トナー画像は、中間の色を呈することができる。結果として、ポリエステル樹脂を樹脂として用いた場合、液体現像剤の保存性を特に優れたものにし、形成して得られた画像の定着強度を特に優れたものにすることができるとともに、目的とする画像の色調を得ることが特に容易になる。
【0031】
樹脂(樹脂材料)の軟化温度は、特に限定されないが、50〜140℃であるのが好ましく、50〜130℃であるのがより好ましく、60〜120℃であるのがさらに好ましい。なお、本明細書で、軟化温度とは、高化式フローテスター(島津製作所製)における測定条件:昇温速度:5℃/min、ダイ穴径1.0mmで規定される軟化開始温度のことを指す。
【0032】
2.着色剤
また、トナーは、着色剤を含んでいる。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、例えば、カーボンブラック、スピリットブラック、ランプブラック(C.I.No.77266)、マグネタイト、チタンブラック、黄鉛、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、キノリンイエロー、タートラジンレーキ、赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、エオシンレーキ、ブリリアントカーミン3B、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、カルコオイルブルー、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ファイナルイエローグリーンG、ローダミン6G、キナクリドン、ローズベンガル(C.I.No.45432)、C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド4、C.I.アシッドレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー9、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー5:1、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー162、ニグロシン染料(C.I.No.50415B)、金属錯塩染料、シリカ、酸化アルミニウム、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
3.その他の成分
また、トナーは、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ワックス、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。
ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セルシン、パラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、フィッシャー・トロプシュワックス等の炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、キャンデリラワックス、綿ロウ、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、モンタンワックス、脂肪酸エステル等のエステル系ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド等のアミド系ワックス、ラウロン、ステアロン等のケトン系ワックス、エーテル系ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
帯電制御剤としては、例えば、安息香酸の金属塩、サリチル酸の金属塩、アルキルサリチル酸の金属塩、カテコールの金属塩、含金属ビスアゾ染料、ニグロシン染料、テトラフェニルボレート誘導体、第四級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、塩素化ポリエステル、ニトロフニン酸等が挙げられる。
磁性粉末としては、例えば、マグネタイト、マグヘマイト、各種フェライト類、酸化第二銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム等の金属酸化物や、Fe、Co、Niのような磁性金属を含む磁性材料で構成されたもの等が挙げられる。
また、トナー粒子の構成材料(成分)としては、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム、シリカ、酸化チタン、酸化鉄、脂肪酸、脂肪酸金属塩、等を用いてもよい。
【0035】
[トナー粒子の形状]
上記のような材料で構成された本発明でのトナー粒子の平均粒径は、0.7〜3μmである。トナー粒子の平均粒径が前記範囲内の値であると、各トナー粒子間での特性のばらつきを小さいものとし、液体現像剤全体としての信頼性を高いものとしつつ、液体現像剤により形成されるトナー画像の解像度を十分に高いものとすることができる。また、トナー粒子の絶縁性液体への分散を良好にし、液体現像剤の保存性を高いものとできる。
【0036】
これに対し、トナー粒子の平均粒径が前記下限値未満であると、各トナー粒子間での特性、組成のばらつきが大きくなり、トナー粒子間の粒径の差がトナー粒子の特性を大きく変化させるものとなる。このため、液体現像剤全体としての信頼性を高いものとできなくなる結果、優れた現像性、転写性が得られず、得られるトナー画像は、欠点、濃度むら等の多いものとなる。また、保存時にトナー粒子の凝集が起こる可能性があり、液体現像剤の保存性を十分なものとできない。
【0037】
一方、トナー粒子の平均粒径が前記上限値を超えると形成されるトナー画像の解像度を十分に高くできない。また、粗大粒子が多くなるため、欠点、濃度むら等が多いものとなる。また、液体現像剤の保存時において、沈降が起こりやすくなり、液体現像剤の保存性を十分なものとできない。
前記トナー粒子の平均粒径は、上述した範囲内であれば良いが、0.8〜2.5μmであるのが好ましく、0.8〜2.0μmであるのがより好ましく、顕著な効果を得ることができる。なお、本明細書では、「平均粒径」とは、体積基準の平均粒径のことを指すものとする。
【0038】
また、本発明において下記式(I)で表されるトナー粒子の粒度分布の幅Sは1.4以下である。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合において累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
【0039】
トナー粒子の粒度分布の幅Sが前記上限値よりも小さいと、各トナー粒子間での粒径のばらつきが少なくなり、現像容器から塗布ローラ等に液体現像剤をくみ出した場合においてトナー粒子間の隙間が大きくなるため、適量の絶縁性液体がトナー粒子に付着し、効率的な転写、現像が可能となる。また、粗大粒子が少なくなることから、得られるトナー画像は、欠点や、すじ、濃度むら等の少ない精細なものとなる。また、定着時にトナー粒子間に適量の絶縁性液体が存在していることによって、優れた定着強度を得ることができる。加えて、各トナー粒子間での粒径のばらつきが少ないため、定着時に圧力および熱がトナー粒子に対して均一にかかりやすくなり、トナー粒子が均一に溶融することによって目的とする色調の画像を得ることができる。さらにトナー粒子が均一に溶融することで、トナー画像の平滑性が優れたものとなり、結果としてトナー画像の光沢が高いものとなる。また、一旦利用した後に、現像ローラ、塗布ローラ等の部材に残存した液体現像剤を回収し、再利用する際に、トナー粒子の凝集体が存在した場合であっても、撹拌等の弱い外力を与えることで、凝集体をトナー粒子として容易にほぐすことができ、再利用(リサイクル)した液体現像剤中に粗大粒子が発生することを好適に防止できる。このため、高精細なトナー画像を、長期にわたって、形成、提供できる。このため、液体現像剤は、リサイクル性に優れたものとなる。
【0040】
上述のように、一般に、粒度分布の狭いトナー粒子を用いた場合には、形成したトナー画像に多くの絶縁性液体が残存する。従来の液体現像剤を用いた場合、この残存した絶縁性液体は、トナー粒子同士の密着を妨げ、トナー画像の長期保存性を劣ったものとする。しかしながら、本発明の液体現像剤は、不飽和脂肪酸グリセリドを含むため、不飽和脂肪酸グリセリドが酸化重合し、トナー粒子と、記録媒体とを強固に接着する。また、トナー画像の表面に、不飽和脂肪酸グリセリドが酸化重合した保護膜を形成する。このため、トナー画像の長期保存性を優れたものとすることができる。
【0041】
これに対し、トナー粒子の粒度分布の幅Sが前記上限値より大きいと各トナー粒子間での粒径のばらつきが大きくなり、現像容器から塗布ローラ等に液体現像剤をくみ出した場合においてトナー粒子間の隙間が小さくなるため、トナー粒子に付着する絶縁性液体の量が足りず、効率的な転写、現像が困難になる。また、粗大粒子が多くなるため、得られるトナー画像は、欠点や、すじ、むら等の多いものとなり、トナー画像を精細なものとすることができない。また、定着時に圧力および熱がトナー粒子に対して均一にかからず、トナー粒子が均一に溶融できないため、目的とする色調の画像を得ることができない。さらにトナー画像の平滑性が悪くなり、結果としてトナー画像の光沢が低いものとなる。また、画像形成後に残存した液体現像剤を回収して、再利用する際に、撹拌等の比較的弱い外力で分散できないトナー粒子の凝集体が多量に発生してしまい、リサイクル性に劣ってしまう。
前記トナー粒子の粒度分布の幅Sは、1.3以下が好ましく、1.2以下がより好ましく、顕著な効果を得ることができる。
【0042】
また、トナー粒子は、下記式(II)で表される前記トナー粒子の形状係数SF1が100〜130となるものである。
SF1={(ML)/A}×(100π/4) ・・・ (II)
ただし、図1(a)に示すように、A[μm]は、測定対象のトナー粒子を2次元平面上に投影してできる図形の面積であり、ML[μm]は、図形の最大長である。また、本発明において、トナー粒子のSF1は、液体現像剤中にあるトナー粒子を無作為に100個以上を観察し、その平均値として求めるものである。
【0043】
形状係数SF1は、一般に、粒子の真球度の指標として用いられており、SF1が小さいほど粒子が真球に近いものとなる。また、SF1の最小値は、100であり、このとき、粒子は、真球となっている。トナー粒子のSF1の平均が十分に小さいと、転写、現像が特に良好なものとなり、欠点のない鮮明な画像が確実かつ容易に得られる。また、複数のトナー粒子が接触している場合であってもトナー粒子同士の接点が少なくなる。また、トナー粒子の周囲に多くの絶縁性液体を付着させることができる。このため、再利用時(リサイクル時)にトナー粒子同士が凝集していても、撹拌等で弱い外力を加えることにより、凝集体を容易にほぐすことができ、トナー粒子として絶縁性液体中に分散させることができる。このため、液体現像剤はリサイクル性に優れたものとなる。トナー粒子のSF1は、上述した範囲内あればよいが、100〜125であることが好ましく、100〜120であることがより好ましく、上述したような効果をより顕著に得ることができる。
【0044】
また、上記のようにトナー粒子のSF1が十分に小さいものであると、一般に、後述するような画像形成装置において、転写部、現像部にある現像ローラ、感光体等に付着したトナー粒子を除去する際に、トナー粒子は、クリーニングブレードで好適に除去されない。しかしながら、本発明においては、トナー粒子のSF2が下記のような範囲にあることで、現像ローラ、感光体等に付着したトナー粒子は、クリーニングブレード等で容易に除去することができる。
【0045】
トナー粒子は、下記式(III)で表される前記トナー粒子の形状係数SF2の平均が110〜150となるものである。
SF2={(CL)/A}×(100/4π) ・・・ (III)
ただし、図1(b)に示すように、A[μm]は、トナー粒子を2次元平面上に投影してできる図形の面積であり、CL[μm]は、図形の周長である。また、本発明において、トナー粒子のSF2は、液体現像剤中にあるトナー粒子を無作為に100個以上を観察し、その平均値として求めるものである。
【0046】
形状係数SF2は、一般に、粒子の表面にある凹凸の度合いの指標として用いられる値であり、SF2が小さいほど、粒子表面は平滑なものとなり、SF2が大きいほど、粒子表面は凹凸を有するものとなる。このため、トナー粒子の形状係数SF2の平均が前記範囲内にあると、トナー粒子は、適度に微小の凹凸を有する。このため、クリーニング時に、ブレードに引っかかりやすくなり、感光体や中間転写体等から残存したトナー粒子を容易に除去できる。このため、液体現像剤は、クリーニング性に優れたものとなる。また、クリーニング後に再利用した場合においても、凝集等が発生することを好適に防止することができる。また、このように適度に微小の凹凸を有することにより、より多くの絶縁性液体を粒子表面に保持しつつ、トナー粒子同士が過剰に接触することを防止することができる。この結果として、保存時には前記トナー粒子の絶縁性液体への分散を容易にしつつ、複数のトナー粒子が凝集することを好適に防止することができる。このため、前記トナー粒子を含む液体現像剤の保存性を優れたものにできる。また、画像形成後に部材等に残存した液体現像剤を再利用することが容易になる。また、トナー粒子に微小の凹凸があると、トナー粒子の体積あたりの表面積が大きく、トナー粒子表面が絶縁性液体に接する面積が大きい。このため、定着時に絶縁性液体中の不飽和脂肪酸グリセリドや脂肪酸モノエステルが可塑剤としてより効果的に作用し、トナー粒子が特に容易に可塑化する。加えて、トナー粒子が微小の凹凸を有することで、記録媒体上にてトナー粒子同士の接触面積が増え、定着時にトナー粒子同士が溶融しやすくなる。結果として、形成された画像の定着強度を特に優れたものにできる。また、特に高い光沢を得ることでき、目的とする色調の画像を特に容易に得ることが可能になる。トナー粒子のSF2の平均値は、上述した範囲内あればよいが、115〜145であることが好ましく、120〜140であることがより好ましく、上述したような効果をより顕著に得ることができる。
【0047】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子についての下記式(IV)で表される円形度Rの平均値(平均円形度)は、0.85以上であるのが好ましく、0.90〜0.99であるのがより好ましく、0.92〜0.99であるのがさらに好ましい。
R=L/L・・・(IV)
(ただし、式中、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長、L[μm]は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい面積の真円の周囲長を表す。)
これにより、トナー粒子の粒径を十分に小さいものとしつつ、トナー粒子の転写効率、機械的強度を特に優れたものとすることができる。
【0048】
また、液体現像剤を構成するトナー粒子間での平均円形度の標準偏差は、0.15以下であるのが好ましく、0.001〜0.10であるのがより好ましく、0.001〜0.05であるのがさらに好ましい。これにより、各トナー粒子間での帯電特性、定着特性等の特性のばらつきが特に小さくなり、液体現像剤全体としての信頼性がさらに向上する。
本発明で用いるトナー粒子は、前記粒径と粒度分布を満たすものであれば特に限定されず、例えば樹脂と着色材料を含む微粒子を凝集させてなる粒子、樹脂と着色材料を含む微粒子を会合させてなる粒子(以下、会合粒子という。)、モノマー成分を絶縁体性中で重合させることにより絶縁性液体に不溶な樹脂微粒子を形成する重合法等で得られる球状の粒子、樹脂と着色材料を含む水乳化液を噴霧乾燥させて得られる粒子、およびそれらを絶縁体性液体中で粉砕または解砕させて得られる粒子、粉砕法にて得られる粒子等を用いることができる。
【0049】
このなかでも後述するような会合粒子を絶縁性液体中で解砕して得られる粒子(以下、会合解砕粒子という。)は容易に前記粒径、粒度分布、形状係数を満たすことができるため好ましい。
会合解砕粒子は微粒子が複数結合したものを解砕しており、トナー粒子表面に微小の凹凸を有している。このような微小の凹凸を有することにより、より多くの絶縁性液体を粒子表面に保持することができる。このため、保存時には前記トナー粒子の絶縁性液体への分散を容易にし、トナー粒子を含む液体現像剤の保存性を特に優れたものにできる。また、トナー粒子に微小の凹凸があると、トナー粒子の体積あたりの表面積が大きく、トナー粒子表面が絶縁性液体に接する面積が大きい。このため、定着時に可塑化効果をもった絶縁性液体が可塑剤としてより効果的に作用し、トナー粒子が特に容易に可塑化する。加えて、トナー粒子が微小の凹凸を有することで、記録媒体上にてトナー粒子同士の接触面積が増える結果、定着時にトナー粒子同士が溶融しやすくなり、形成された画像の定着強度を特に優れたものにし、特に高い光沢を得ることで目的とする色調の画像を特に容易に得ることが可能になる。
【0050】
≪液体現像剤の製造方法≫
液体現像剤の製造方法の一例として、トナー粒子として会合解砕粒子を用いた場合について説明する。説明する製造方法は主として、樹脂材料で構成された樹脂微粒子を会合させ、会合粒子を得る会合粒子形成工程と、絶縁性液体中において会合粒子を解砕してトナー粒子を得る工程とを有する。
【0051】
<会合粒子の調製>
まず、主として樹脂材料で構成された樹脂微粒子が会合した会合粒子の調製方法の一例について説明する。
会合粒子の調製は、いかなる方法を用いるものであってもよいが、本実施形態では、水系液体で構成された水系分散媒中に、主として樹脂材料(トナー構成材料)で構成された分散質(微粒子)が分散した水系乳化液を得、当該水系乳化液中の分散質を会合させることにより、会合粒子を得る。
【0052】
[水系乳化液]
本実施形態で用いる水系乳化液について説明する。
後述する水系乳化液調製工程で得られる水系乳化液は、水系液体で構成された水系分散媒中に、分散質(微粒子)が微分散した構成となっている。
(水系分散媒(水系液体))
水系分散媒は、水系液体で構成されている。
【0053】
本発明において、「水系液体」とは、水および/または水との相溶性に優れる液体(例えば、25℃における水100gに対する溶解度が30g以上の液体)で構成されたもののことを指す。このように、水系液体は、水および/または水との相溶性に優れる液体で構成されたものであるが、主として水で構成されたものであるのが好ましく、特に、水の含有量が70wt%以上のものであるのが好ましく、90wt%以上のものであるのがより好ましい。このようなものを用いることにより、例えば、水系分散媒中における分散質の分散性を高めることができ、水系乳化液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0054】
また、水系分散媒(水系液体)は、後述する高絶縁性液体との相溶性が低いもの(例えば、25℃における高絶縁性液体100gに対する溶解度が0.01g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、後述する混合液調製工程で得られる混合液中において、分散質の形状を好適に保持することができ、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子の形状をより均一なものとすることができる。
【0055】
水系液体の具体例としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系溶媒、ピリジン、ピラジン、ピロール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、アセトアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等が挙げられる。
【0056】
(分散質(微粒子))
分散質は、液体現像剤中のトナー粒子を構成する成分を含むものであり、少なくとも、主成分としての樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む材料で構成されている。樹脂の前駆体としては、例えば、当該樹脂のモノマー、ダイマー、オリゴマー、プレポリマー等が挙げられる。
【0057】
以下、分散質の構成材料について説明する。
1.樹脂(樹脂材料)
分散質は、主成分としての樹脂を含む材料で構成されている。
樹脂は、特に限定されず、前述のトナー粒子を構成する樹脂およびその前駆体を用いることができる。なお、前述した樹脂には、必要に応じて硬化剤等が含まれていてもよい。
【0058】
2.溶媒
分散質中には、その成分の少なくとも一部を溶解する溶媒が含まれていてもよい。これにより、例えば、水系乳化液中における分散質の流動性を高めることができ、水系乳化液中における分散質を、粒径が比較的小さく、かつ、大きさのばらつきの少ないものとすることができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤中のトナー粒子は、粒子間での大きさ、形状のばらつきが小さく、円形度の大きいものとなる。
【0059】
溶媒としては、分散質を構成する成分の少なくとも一部を溶解するものであればいかなるものであってもよいが、前述した水系液体よりも沸点が低いものを用いるのが好ましい。
また、溶媒は、前述した水系分散媒(水系液体)との相溶性が低いもの(例えば、25℃における水系分散媒100gに対する溶解度が30g以下のもの)であるのが好ましい。これにより、水系乳化液中において、分散質を安定した状態で微分散させることができる。
【0060】
また、溶媒の組成は、例えば、前述した樹脂、着色剤の組成や、水系分散媒の組成等に応じて適宜選択することができる。
例えば、溶媒としては、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−メトキシエタノール、アリルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、2−メトキシエタノール等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、ジデカン、メチルシクロヘキセン、イソプレン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、フルフリルアルコール等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化合物系溶媒、アセチルアセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸イソブチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル等のエステル系溶媒、トリメチルアミン、ヘキシルアミン、トリエチルアミン、アニリン等のアミン系溶媒、アクリロニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ニトロメタン、ニトロエタン等のニトロ系溶媒、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、アクリルアルデヒド等のアルデヒド系溶媒等の有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を混合したものを用いることができる。
【0061】
また、分散質中には、通常、着色剤が含まれている。着色剤としては、例えば、顔料、染料等を使用することができる。このような顔料、染料としては、特に限定されないが、例えば、前述のトナー粒子を構成する材料として例示したものを用いることができる。
水系乳化液中における着色剤の含有量は、特に限定されないが、0.1〜15wt%であるのが好ましく、0.3〜10wt%であるのがより好ましい。着色剤の含有量が前記下限値未満であると、着色剤の種類によっては、十分な濃度の可視像を形成するのが困難になる可能性がある。一方、着色剤の含有量が前記上限値を超えると、最終的に得られるトナーの定着強度や帯電特性が低下する可能性がある。
【0062】
また、分散質中には、ワックスが含まれていてもよい。ワックスは、通常、離型性を向上させる目的で用いられるものである。このようなワックスとしては、特に限定されないが、例えば、前述のトナー粒子を構成する材料として例示したものを用いることができる。
水系乳化液中におけるワックスの含有量は、特に限定されないが、1.0wt%以下であるのが好ましく、0.5wt%以下であるのがより好ましい。ワックスの含有量が多すぎると、最終的に得られる液体現像剤中において、トナー粒子からワックスが遊離し、粗大化して、トナーの転写効率が低下する傾向を示す。
【0063】
ワックスの軟化温度は、特に限定されないが、50〜130℃であるのが好ましく、50〜120℃であるのがより好ましい。
また、水系乳化液中には、これら以外の成分が含まれていてもよい。このような成分としては、例えば、乳化分散剤、帯電制御剤、磁性粉末等が挙げられる。この中でも、乳化分散剤を用いた場合、分散質の分散性が向上するとともに、比較的容易に、水系乳化液中での分散質の形状、大きさのばらつきを特に小さいものとし、また、分散質の形状を略球形状とすることができる。その結果、最終的な液体現像剤を、略球形状で、均一な形状、大きさの揃ったトナー粒子で構成されたものとして得ることができる。ここで、乳化分散剤としては、例えば、乳化剤、分散剤、分散助剤等が挙げられる。
【0064】
分散剤としては、例えば、粘土鉱物、シリカ、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ヒドロキシステアリン酸エステル等の非イオン性有機分散剤、トリステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩等)、ジステアリン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、バリウム塩等)、ステアリン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、鉛塩、亜鉛塩等)、リノレン酸金属塩(例えば、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、オクタン酸金属塩(例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩、コバルト塩等)、オレイン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩等)、パルミチン酸金属塩(例えば、亜鉛塩等)、ナフテン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン塩、鉛塩、亜鉛塩等)、レジン酸金属塩(例えば、カルシウム塩、コバルト塩、マンガン鉛塩、亜鉛塩等)、ポリアクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリメタクリル酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリマレイン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、アクリル酸−マレイン酸共重合体金属塩(例えば、ナトリウム塩等)、ポリスチレンスルホン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩等)等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤等が挙げられる。この中でも、非イオン性有機分散剤またはアニオン性有機分散剤が特に好ましい。
【0065】
水系乳化液中における分散剤の含有量は、特に限定されないが、3.0wt%以下であるのが好ましく、0.01〜1.0wt%であるのがより好ましい。
また、分散助剤としては、例えば、アニオン、カチオン、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
分散助剤は、分散剤と併用するものであるのが好ましい。水系乳化液が分散剤を含むものである場合、水系乳化液中における分散助剤の含有量は、特に限定されないが、2.0wt%以下であるのが好ましく、0.005〜0.5wt%であるのがより好ましい。
【0066】
前記帯電制御剤および前記磁性粉末としては、特に限定されないが、例えば、前述のトナー粒子を構成する材料として例示したものを用いることができる。
また、水系乳化液中には、上記のような材料のほかに、例えば、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化セリウム等が添加されていてもよい。
また、水系乳化液中には、分散質以外の成分が、不溶分として分散していてもよい。例えば、水系乳化液中には、シリカ、酸化チタン、酸化鉄等の無機系微粉末、脂肪酸、脂肪酸金属塩等の有機系微粉末等が分散していてもよい。
【0067】
以上説明したような本発明に用いる水系乳化液においては、分散質が液状であるため、分散質はその表面張力により、円形度(真球度)の大きい形状になる傾向を示す。したがって、最終的に得られる液体現像中のトナー粒子は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のばらつきが特に小さいものとなる。
水系乳化液中における分散質の含有率は、特に限定されないが、5〜55wt%であるのが好ましく、10〜50wt%であるのがより好ましい。これにより、水系乳化液中における分散質同士の結合(凝集)をより確実に防止しつつ、トナー粒子(液体現像剤)の生産性を特に優れたものとすることができる。
水系乳化液中の分散質(液状の分散質)の平均粒径は、特に限定されないが、0.01〜3μmであるのが好ましく、0.1〜2μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の大きさを最適なものとすることができる。
【0068】
[水系乳化液調製工程]
上述したような水系乳化液は、例えば、以下のようにして調製することができる(水系乳化液調製工程)。
まず、前述した水系液体に、必要に応じて分散剤を添加した水性溶液を用意する。
一方、前述したようなトナーの主成分となる樹脂またはその前駆体(以下、これらを総称して、「樹脂材料」とも言う)を含む樹脂液を調製する。樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料に加えて前述した溶媒を用いてもよい。また、樹脂液は、樹脂材料を加熱することにより得られる溶融した液体であってもよい。また、樹脂液の調製には、例えば、樹脂材料、着色剤等のトナー用材料を混練して得られた混練物を用いてもよい。このような混練物を用いることにより、トナーの構成材料中に、互いに分散または相溶し難い成分を含む場合であっても、混練を施すことにより、得られる混練物中においては、各成分が十分に相溶、微分散した状態とすることができる。特に、前述したような溶媒に対する分散性が比較的低い顔料(着色剤)を用いた場合、溶媒に分散する前に予め混練が施されることにより、顔料粒子の周囲を樹脂成分等が効果的にコーティングすることとなり、これにより、溶媒への顔料の分散性が向上し(特に溶媒への微分散が可能となり)、最終的に得られるトナーの発色性も良好となる。このようなことから、トナーの構成材料中に、前述した水系乳化液の水系分散媒に対する分散性に劣る成分や水系乳化液の分散媒に含まれる溶媒に対する溶解性に劣る成分が含まれる場合であっても、水系乳化液における分散質の分散性を特に優れたものとすることができる。
【0069】
次に、上記樹脂液を、撹拌した状態の水性溶液中に、徐々に滴下しながら加えていくことにより、水系分散媒中に、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液が得られる。このような方法で、水系乳化液を調製することにより、水系乳化液中における分散質の円形度をさらに高めることができる。その結果、最終的に得られる液体現像中のトナー粒子は、円形度が特に高く、各粒子間での形状のばらつきが特に小さいものとなる。なお、樹脂液の滴下を行う際、水性溶液および/または樹脂液を加熱しておいてもよい。また、樹脂液の調製に溶媒を用いた場合、例えば、上記のような滴下を行った後に、得られた水系乳化液を加熱したり、減圧雰囲気下に置くことにより、分散質中に含まれる溶媒の少なくとも一部を除去してもよい。
また、上記の操作の代わりに、攪拌した状態の樹脂液中に水溶性溶液を徐々に滴下しながら加えていってもよい。水溶性溶液を加えられることで、樹脂液が転相乳化し、上記の操作で得られる水系乳化液と同様の、水系分散媒中に、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液が得られる。
【0070】
[会合粒子形成工程]
次に、上記のようにして得られた水系乳化液に、電解質を添加し、分散質を会合させ、会合粒子を形成する(会合粒子形成工程)。
添加する電解質としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸などの酸性物質、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニュウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化カルシュウム、酢酸ナトリウム等の有機、無機の水溶性の塩等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、硫酸ナトリウムや硫酸アンモニウム等の1価のカチオンの硫酸塩は、均一な会合を進める上で好適に用いることができる。
【0071】
なお、電解質等を添加する前に、ヒドロキシアパタイト等の無機分散安定剤や、イオン性、非イオン性界面活性剤を分散安定剤として添加してもよい。分散安定剤(乳化剤)の存在下で電解質を添加することにより、不均一な会合を防止することができる。
このような分散安定剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、各種プルロニック系等の非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。中でも、アニオン性、非イオン性の界面活性剤は、少量の添加量であっても分散安定性に効果があり、好適に用いることができる。非イオン性界面活性剤の曇点は40℃以上であることが好ましい。
【0072】
添加する電解質の量は、水系乳化液中の固形分100重量部に対し、0.5〜15重量部であることが好ましく、1〜12重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることがさらに好ましい。電解質の添加量が前記下限値未満であると、分散質の会合が十分に進行しない場合がある。また、電解質の添加量が前記上限値を超えると、分散質の会合が不均一となり、粗大粒子が発生する可能性があり、最終的に得られるトナー粒子の大きさにばらつきが生じる可能性がある。
【0073】
そして、会合させた後、濾過・乾燥を行うことにより、会合粒子を得る。
得られる会合粒子の平均粒径は、1〜10μmであるのが好ましく、1〜7μmであるのがより好ましい。これにより、最終的に得られるトナー粒子の粒径を適度なものとすることができる。また、会合粒子の平均粒径がこのような範囲のものであると、乾燥の際に、乾燥が容易であるとともに、乾燥の際に、会合粒子が凝集し、粒子が粗大化するのを防止することができる。
【0074】
<解砕工程>
次に、上記のようにして得られた会合粒子を、液体現像剤を構成する絶縁性液体中で解砕する(解砕工程)。これにより、絶縁性液体中に十分に小さい大きさのトナー粒子が安定して分散し、トナー粒子の粒度分布の幅が十分に狭い液体現像剤を提供することができる。
【0075】
より詳しく説明すると、解砕して比較的小さいトナー粒子とした場合であっても、絶縁性液体中で解砕しているので、凝集等によって粗大化したトナー粒子が発生するのを防止することができる。また、微粒子(分散質)に由来するトナー粒子の表面の凹凸に絶縁性液体を保持することができ、その結果、トナー粒子の分散性を高いものとすることができる。
【0076】
また、会合粒子を解砕することによりトナー粒子を得るので、従来の粉砕法や湿式粉砕法と比較して、微粉(目的の大きさの粒子よりも極端に小さい粒子)の発生を効果的に防止することができる。その結果、最終的に得られる液体現像剤の帯電特性等の特性の低下を効果的に防止することができる。
【0077】
なお、比較的小さい会合粒子を調製して、該会合粒子を解砕せずにトナー粒子として絶縁性液体に分散し、液体現像剤とすることも考えられるが、この場合、会合粒子を乾燥させる際に、粒子が小さいため、凝集等を起こしやすく、トナー粒子の大きさにばらつきが生じてしまう。
また、絶縁性液体の一部を用いて解砕する場合、解砕した後に、解砕に用いた液体と同じ液体を絶縁性液体として添加するものであってもよいし、また、解砕した後に、解砕に用いた液体とは異なる液体を絶縁性液体として添加するものであってもよい。後者の場合、最終的に得られる液体現像剤の粘度等の特性を容易に調整することができる。
以上、本発明の液体現像剤の実施形態としてトナー粒子に会合解砕粒子を用いた場合について説明したが、樹脂と着色材料を含んだ分散質の分散液を吐出させ、吐出液を乾燥させて粒子を得る方法でトナー粒子を製造してもよい。
【0078】
≪画像形成装置≫
次に、本発明の画像形成装置の好適な実施形態について説明する。本発明の画像形成装置は上述したような液体現像剤を用いるものであり、トナー粒子が付着した記録媒体に対して加熱しつつ圧力をかけることによりトナー粒子を記録媒体に定着させる機構を有する。また、本実施形態において、画像形成装置は、上述したような本発明の液体現像剤を用いて記録媒体上にカラー画像を形成するものである。
【0079】
図2は、本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図、図3は、図2に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図、図4は、図2に示す画像形成装置が備える塗布ローラを示す斜視概念図、図5は、図4に示す塗布ローラの拡大模式図、図6は、現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図、図7は、図2に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【0080】
画像形成装置1000は、図2、図3に示すように、4つの現像部30Y、30M、30C、30Kと、中間転写部40と、2次転写ユニット(2次転写部)60と、定着部(定着装置)F40と、4つの液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kとを有している。
現像部30Y、30M、30Cは、それぞれ、イエロー系液体現像剤(Y)、マゼンダ系液体現像剤(M)、シアン系の液体現像剤(C)で、潜像を現像し、各色に対応したカラーの単色像を形成する機能を有している。また、現像部30Kは、ブラック系液体現像剤(K)で、潜像を現像し、ブラック(黒)の単色像を形成する機能を有している。
【0081】
現像部30Y、30M、30C、30Kの構成は同様であるので、以下、現像部30Yについて説明する。
現像部30Yは、図3に示すように、像担持体の一例としての感光体10Yと、感光体10Yの回転方向に沿って、帯電ローラ11Yと、露光ユニット12Yと、現像ユニット100Yと、感光体スクイーズ装置101Yと、1次転写バックアップローラ51Yと、除電ユニット16Yと、感光体クリーニングブレード17Yと、現像剤回収部18Yとを有している。
【0082】
感光体10Yは、円筒状の基材とその外周面に形成された感光層を有し、中心軸を中心に回転可能であり、本実施の形態においては、図2中の矢印で示すように時計回りに回転する。
感光体10Yは、後述する現像ユニット100Yにより液体現像剤が供給され、表面に液体現像剤の層が形成されるものである。
【0083】
帯電ローラ11Yは、感光体10Yを帯電するための装置であり、露光ユニット12Yは、レーザを照射することによって帯電された感光体10Y上に潜像を形成する装置である。この露光ユニット12Yは、半導体レーザ、ポリゴンミラー、F−θレンズ等を有しており、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサ等の不図示のホストコンピュータから入力された画像信号に基づいて、変調されたレーザを帯電された感光体10Y上に照射する。
【0084】
現像ユニット100Yは、感光体10Y上に形成された潜像を、本発明の液体現像剤を用いて現像するための装置である。なお、現像ユニット100Yの詳細については後述する。
感光体スクイーズ装置101Yは、現像ユニット100Yより回転方向下流側に、感光体10Yに対向して配置されており、感光体スクイーズローラ13Yと、該感光体スクイーズローラ13Yに押圧摺接して表面に付着した液体現像剤を除去するクリーニングブレード14Yと、除去された液体現像剤を回収する現像剤回収部15Yとで構成される。この感光体スクイーズ装置101Yは、感光体10Yに現像された現像剤から余剰なキャリア(絶縁性液体)および本来不要なカブリトナーを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げる機能を有する。感光体スクイーズローラ13Yに付着したトナー粒子1は、後述する現像剤圧縮ローラ22Y等によって、密集した状態となっている。しかしながら、上述したような液体現像剤を用いることによって、クリーニングブレード14Yによってトナー粒子1を、感光体スクイーズローラ13Yから容易に除去することができる。
【0085】
1次転写バックアップローラ51Yは、感光体10Yに形成された単色像を、後述する中間転写部40に転写するための装置である。
除電ユニット16Yは、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に中間転写像が転写された後に、感光体10Y上の残留電荷を除去する装置である。
感光体クリーニングブレード17Yは、感光体10Yの表面に当接されたゴム製の部材で、1次転写バックアップローラ51Yによって中間転写部40上に像が転写された後に、感光体10Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。感光体10Yに付着したトナー粒子1は、後述する現像剤圧縮ローラ22Y等によって、密集した状態となっている。しかしながら、上述したような液体現像剤を適用することにより、感光体クリーニングブレード17Yによってトナー粒子1を、感光体10Yから容易に除去することができる。
【0086】
現像剤回収部18Yは、感光体クリーニングブレード17Yにより除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
中間転写部40は、エンドレスの弾性ベルト部材であり、ベルト駆動ローラ41とテンションローラ42との間に巻き掛けて張架され、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kで感光体10Y、10M、10C、10Kと当接しながら駆動ローラ41により回転駆動される。
【0087】
この中間転写部40に、1次転写バックアップローラ51Y、51M、51C、51Kにより、現像部30Y、30M、30C、30Kで形成された各色に対応した単色像が順次転写され、各色に対応した単色像が重ね合わされる。これにより、中間転写部40にフルカラー現像剤像(中間転写像)が形成される。
中間転写部40には、このように複数の感光体10Y、10M、10C、10Kに形成した単色像を順次2次転写して重ね合わせて担持し、一括して紙、フィルム、布等の記録媒体F5に2次転写する。そのため、2次転写行程において記録媒体F5にトナー像を転写するに当たって、記録媒体F5表面が繊維質などによって平滑でないシート材であっても、この非平滑なシート材表面に倣って2次転写特性を向上させる手段として、弾性ベルト部材を採用している。
【0088】
ベルト駆動ローラ41と共に中間転写部40を張架するテンションローラ42側には、中間転写部クリーニングブレード46、現像剤回収部47からなるクリーニング装置が配置されている。
中間転写部クリーニングブレード46は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、中間転写部40上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。中間転写部47上に付着した液体現像剤は、一般に、固形分の多いものとなっており、除去しづらいものとなっている。しかしながら、上述したようなクリーニング性に優れた液体現像剤を用いることで、中間転写部47上に付着した液体現像剤を確実に中間転写部クリーニングブレード46で除去することができる。
【0089】
現像剤回収部47は、中間転写部クリーニングブレード46により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
また、1次転写バックアップローラ51Yより中間転写部40の移動方向下流側に、中間転写部スクイーズ装置52Yが配されている。
この中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40上に転写された液体現像剤が望ましい分散状態に至っていない場合に、転写された液体現像剤から余剰の絶縁性液体を除去する手段として設けられている。
【0090】
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部スクイーズローラ53Yと、中間転写部40を挟んで中間転写部スクイーズローラ53Yと対向配置される中間転写部スクイーズバックアップローラ54Yと、中間転写部スクイーズローラ53Yに押圧摺接して表面をクリーニングする中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yおよび現像剤回収部15Mから構成される。
中間転写部スクイーズ装置52Yは、中間転写部40に1次転写された現像剤から余剰なキャリアを回収し、顕像内のトナー粒子比率を上げると共に、本来不要なカブリトナーを回収する機能を有する。現像剤回収部15Mは、中間転写部40の移動方向下流側に配置されたマゼンタの感光体スクイーズローラのクリーニングブレード14Mで回収されるキャリアの回収機構を中間転写部スクイーズローラ53Yの中間転写部スクイーズクリーニングブレード55Yにも兼用するものである。このように2色目以降の像担持体スクイーズ装置の現像剤回収部15(M、C、K)において、その前の色の1次転写バックアップローラ51(Y、M、C)より中間転写部40の移動方向下流側に配置された中間転写部スクイーズ装置52(Y、M、C)の現像剤回収部として兼用することにより、それらの間隔を一定に規制することができ、構造を簡潔にして小型化を図ることができる。
【0091】
2次転写ユニット60は、2次転写ローラ61が中間転写部40を挟んでベルト駆動ローラ41と対向配置され、さらに2次転写ローラ61のクリーニングブレード62、現像剤回収部63からなるクリーニング装置が配置される。
2次転写ユニット60では、中間転写部40上に色重ねして形成された中間転写像が2次転写ユニット60の転写位置に到達するタイミングに合せて、記録媒体F5を搬送、供給し、その記録媒体F5に中間転写像が2次転写される。
2次転写ユニット60により記録媒体F5上に転写されたトナー像(転写像)F5aは、後述する定着部F40に送られ、定着が行われる。
【0092】
クリーニングブレード62は、2次転写ローラ61によって記録媒体F5上に像が転写された後に、2次転写ローラ61上に付着した液体現像剤を掻き落として除去する機能を有している。2次転写ローラ61上に付着した液体現像剤は、一般に、固形分の多いものとなっており、除去しづらいものとなっている。しかしながら、上述したようなクリーニング性に優れた液体現像剤を用いることで、2次転写ローラ61上に付着した液体現像剤を確実にクリーニングブレード62で除去することができる。
現像剤回収部63は、クリーニングブレード62により除去された液体現像剤を回収する機能を有している。
【0093】
次に、現像ユニット100Y、100M、100C、100Kについて、詳細に説明する。なお、以下の説明では、代表的に、現像ユニット100Yについて説明する。
現像ユニット100Yは、図3に示すように、液体現像剤貯留部31Yと、塗布ローラ32Yと、規制ブレード33Yと、現像剤攪拌ローラ34Yと、現像ローラ20Yと、現像ローラクリーニングブレード21Yと、現像剤圧縮ローラ(圧縮手段)22Yとを有し
ている。
【0094】
液体現像剤貯留部31Yは、感光体10Yに形成された潜像を現像するための液体現像剤を貯留する機能を備えたものである。
塗布ローラ32Yは、液体現像剤を現像ローラ20Yへ供給する機能を備えたものである。
この塗布ローラ32Yは、図4に示すように、鉄等金属性のローラの表面に溝32Yaが均一かつ螺旋状に形成されニッケルメッキが施された、いわゆるアニロクスローラを呼称されるものであり、その直径は約25mmである。本実施形態では、図4に示すように、塗布ローラ32Yの回転方向D2に対して斜めに複数の溝32Yaが、いわゆる切削加工や転造加工等によって形成されている。
【0095】
この塗布ローラ32Yは、時計回りに回転しながら液体現像剤に接触することによって、溝32Yaに、液体現像剤貯留部31Y内の液体現像剤を担持して、該担持した液体現像剤を現像ローラ20Yへ搬送する。したがって、塗布ローラ32Yは溝32Yaが形成されているX方向の幅で現像ローラ20Yに液体現像剤を塗布することができる。
なお、溝ピッチ(図5中のX方向において、溝32Yaを形成する山と山の周期)は、必要な液体現像剤の膜厚に応じておよそ55〜250μmとするのが好ましい。本実施形態では、溝ピッチPが約80μm、山の幅が約40μm、溝32Yaの上部の幅PI1が約50μm、底面部の幅PI2が約30μm、溝32Yaの深さHeが約20μm、山32Ybの高さHcが約30μmとなるように構成され、山32Ybの中央部から溝32Yaの底部へと単調に向う傾斜部SLが形成されている。また、本実施形態では、山32Yb部の表面粗さRzをR1a≒1.0μm、溝32Ya部の表面粗さRzをR2a≒1.0μmとなるように構成している。
【0096】
規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Yの表面に当接して、塗布ローラ32Y上の液体現像剤Dの量を規制する。すなわち、当該規制ブレード33Yは、塗布ローラ32Y上の余剰液体現像剤を掻き取って、現像ローラ20Yに供給する塗布ローラ32Y上の液体現像剤D、を計量する役割を果たす。この規制ブレード33Yは、弾性体としてのウレタンゴムからなり、鉄等金属製の規制ブレード支持部材より支持されている。また、規制ブレード33Yは、前述した鉛直面Aから見て、塗布ローラ32Yが回転して液体現像剤Dから進出する側(すなわち、鉛直面Aから見て図3中左側)に設けられている。なお、規制ブレード33Yのゴム硬度は、JIS−Aで約77度であり、規制ブレード33Yの、塗布ローラ32Y表面への当接部の硬度(約77度)は、後述する現像ローラ20Yの弾性体の層の塗布ローラ32Y表面への圧接部の硬度(約85度)よりも低くなっている。
【0097】
現像剤攪拌ローラ34Yは、液体現像剤を一様分散状態に攪拌する機能を備えたものである。これにより、複数個のトナー粒子1が凝集した場合であっても、トナー粒子1同士を好適に分散させることができる。特に、前述したような液体現像剤を適用することにより、容易かつ確実にトナー粒子1同士の分散を行うことができる。また、一旦利用した液体現像剤を再利用する場合でも、好適にトナー粒子1を分散させることができる。
【0098】
液体現像剤貯留部31Y内において、液体現像剤の中のトナー粒子はプラスの電荷を有し、液体現像剤は、現像剤撹拌ローラ34Yにより撹拌されて一様分散状態になり、塗布ローラ32Yが回転することによって、液体現像剤貯留部31Yから汲み上げられ、規制ブレード33Yによって液体現像剤量が規制されて現像ローラ20Yに供給される。
【0099】
現像ローラ20Yは、感光体10Yに担持された潜像を液体現像剤により現像するために、液体現像剤を担持して感光体10Yと対向する現像位置に搬送する。
現像ローラ20Yは、その表面に、前述した塗布ローラ32Yから液体現像剤を供給することにより、液体現像剤層201Yを形成するものである。
この現像ローラ20Yは、鉄等金属製の内芯の外周部に、導電性を有する弾性体の層を備えたものであり、その直径は約20mmである。また、弾性体の層は、二層構造になっており、その内層として、ゴム硬度がJIS−A約30度で、厚み約5mmのウレタンゴムが、その表層(外層)として、ゴム硬度がJIS−A約85度で、厚み約30μmのウレタンゴムが備えられている。そして、現像ローラ20Yは、前記表層が圧接部となって、弾性変形された状態で塗布ローラ32Yおよび感光体10Yのそれぞれに圧接している。
【0100】
また、現像ローラ20Yは、その中心軸を中心として回転可能であり、当該中心軸は、感光体10Yの回転中心軸よりも下方にある。また、現像ローラ20Yは、感光体10Yの回転方向(図3において時計方向)と逆の方向(図3において反時計方向)に回転する。なお、感光体10Y上に形成された潜像を現像する際には、現像ローラ20Yと感光体10Yとの間に電界が形成される。
【0101】
現像剤圧縮ローラ22Yは、現像ローラ20Yに担持された液体現像剤のトナーを圧縮状態にする機能を備えた装置である。言い換えると、現像剤圧縮ローラ22Yは、前述した液体現像剤層201Yに対してトナー粒子1と同極性の電界を印加することにより、図6に示すように、液体現像剤層201Y中において、現像ローラ20Yの表面近傍にトナー粒子1を偏在させる機能を備えた装置である。このようにトナー粒子を偏在させることにより、現像濃度(現像効率)を向上させることができ、その結果、品質の高い鮮明な画像を得ることができる。
【0102】
この現像剤圧縮ローラ22Yには、クリーニングブレード23Yが設けられている。
このクリーニングブレード23Yは、現像剤圧縮ローラ22Yに付着した液体現像剤を除去する機能を有している。
また、現像ユニット100Yは、現像ローラ20Yの表面に当接されたゴム製の現像ローラクリーニングブレード21Yを有している。この現像ローラクリーニングブレード21Yは、前記現像位置で現像が行われた後に、現像ローラ20Y上に残存する液体現像剤を掻き落として除去するための装置である。現像ローラクリーニングブレード21Yにより除去された液体現像剤は、液体現像剤貯留部31Y内に回収され、再利用される。
【0103】
ところで、現像剤圧縮ローラ22Yによって、現像ローラ20Yの表面近傍に偏在させたトナー粒子1は、密集した状態となる。しかしながら、前述したようなトナー粒子1の粒度分布の狭い液体現像剤を用いることにより、トナー粒子1が密集した状態であっても、現像ローラ20Y、現像剤圧縮ローラ22Yに付着した液体現像剤を容易に回収することができる。また、回収後に、密集したトナー粒子1を容易に均一分散させることができるため、好適に再利用することができる。これは、トナー粒子1同士の間に、十分な絶縁性液体が存在でき、容易に再分散させることができるためであると考えられる。
【0104】
また、図2、図3に示すように、画像形成装置1000は、液体現像剤および絶縁性液体を現像部30Yに補給する液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kを有する。液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kの構成は同様であるので、以下、液体現像剤補給部80Yについて説明する。
液体現像剤補給部80Yは、補給絶縁性液体貯留部81Yと、補給液体現像剤貯留部82Yと、搬送手段83Y、84Yとを有している。
【0105】
補給絶縁性液体貯留部81Yは、主として絶縁性液体を貯留し、搬送手段83Yによって、現像部30Yの液体現像剤貯留部31Yに絶縁性液体を補給する。また、補給液体現像剤貯留部82Yには、液体現像剤が貯留されており、搬送手段84Yによって液体現像剤貯留部31Yに液体現像剤を補給する。補給液体現像剤貯留部82Yに貯留された液体現像剤の組成は、液体現像剤貯留部31Yに貯留された液体現像剤と同様であっても良いし、異なるものであっても良い。例えば、補給液体現像剤貯留部82Yに貯留された液体現像剤の固形分を比較的高いものとすることにより、液体現像剤貯留部31Yの液体現像剤の固形分の調整を容易にすることができる。すなわち、高固形分の液体現像剤と、絶縁性液体とを適宜必要な量供給することで、液体現像剤貯留部31Yの液体現像剤の固形分の調整を容易にすることができる。
【0106】
また、画像形成装置1000は、各現像剤回収部(15、18、47、63)に回収された液体現像剤中の絶縁性液体を再利用する再利用装置を有している。
この再利用装置は、各現像剤回収部から、回収された液体現像剤を搬送する搬送路70と、搬送された液体現像剤の固形分(トナー粒子等)を除去するフィルタ手段77と、当該フィルタ手段77により固形分が除去された絶縁性液体を貯留する絶縁性液体貯留部74と、絶縁性液体貯留部74に貯留している絶縁性液体を液体現像剤補給部80Y、80M、80C、80Kの各補給絶縁性液体貯留部に供給する搬送手段78とを備えている。
【0107】
搬送路70には、ポンプ76が設けられており、このポンプ76により、各現像剤回収部に回収された液体現像剤を絶縁性液体貯留部74に搬送する。
絶縁性液体貯留部74に貯留された絶縁性液体は、搬送手段78により、各補給絶縁性液体貯留部に適宜搬送され、再利用される。
また、フィルタ手段77に除去された固形分は、図示せぬフィルタ状態の検知手段により検知される。そして、その検知結果に基づいてフィルタ手段77を交換する。これにより、フィルタ手段77のフィルタリング機能を安定して維持することができる。また、本発明の液体現像剤は、トナー粒子の粒度分布が狭く、微粉が少ない。このため、フィルタ手段77によって確実に固形分を除去することができ、絶縁性液体貯留部74に貯留された絶縁性液体に含まれる固形分、微粉を特に少ないものとすることができる。このため、再利用による絶縁性液体の劣化を少ないものとすることができ、好適に絶縁性液体を再利用することができる。
【0108】
次に、定着部について説明する。
定着部F40は、前述した現像部、転写部等において形成された未定着のトナー画像F5aを、記録媒体F5上に定着させるものである。
定着部F40は、図7に示すように、熱定着ローラF1と、加圧ローラF2と、耐熱ベルトF3と、ベルト張架部材F4と、クリーニング部材F6と、フレームF7と、スプリングF9とを有している。
【0109】
熱定着ローラ(定着ローラ)F1は、パイプ材で構成されたローラ基材F1bと、その外周を被覆する弾性体F1cと、ローラ基材F1bの内部に、加熱源としての柱状ハロゲンランプF1aとを有しており、図に矢印で示す反時計方向に回転可能になっている。
熱定着ローラF1の内部には、加熱源を構成する2本の柱状ハロゲンランプF1a、F1aが内蔵されており、これらの柱状ハロゲンランプF1a、F1aの発熱エレメントは、それぞれ異なった位置に配置されている。そして、各柱状ハロゲンランプF1a、F1aが選択的に点灯されることにより、後述する耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1に巻き付いた定着ニップ部位と、後述するベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接する部位との異なる条件下や、幅の広い記録媒体と幅の狭い記録媒体との異なる条件下等での温度コントローラが容易に行われるようになっている。
【0110】
加圧ローラF2は、熱定着ローラF1と対向するように配されており、後述する耐熱ベルトF3を介して、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5に対して圧力を加えるよう構成されている。
また、加圧ローラF2は、パイプ材で構成されたローラ基材F2bと、その外周を被覆する弾性体F2cとを有し、図に矢印で示す時計方向に回転可能になっている。
【0111】
また、熱定着ローラF1の弾性体F1cの表層にはPFA層が設けられている。これにより、各弾性体F1c、2cの厚みは異なるが、両弾性体F1c、2cは略均一な弾性変形をして、いわゆる水平ニップが形成され、また、熱定着ローラF1の周速に対して、後述する耐熱ベルトF3または記録媒体F5の搬送速度に差異が生じることもないので、極めて安定した画像定着が可能となる。
【0112】
耐熱ベルトF3は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4の外周に張架されて移動可能とされ、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との間に挟圧されるエンドレスの環状のベルトである。
この耐熱ベルトF3は、0.03mm以上の厚みを有し、その表面(記録媒体F5が接触する側の面)をPFAで形成し、裏面(加圧ローラF2およびベルト張架部材F4と接触する側の面)をポリイミドで形成した2層構成のシームレスチューブで形成されている。なお、耐熱ベルトF3は、これに限定されず、ステンレス管やニッケル電鋳管等の金属管、シリコーン等の耐熱樹脂管等の他の材料で形成することもできる。
【0113】
ベルト張架部材F4は、熱定着ローラF1と加圧ローラF2との定着ニップ部よりも記録媒体F5搬送方向上流側に配設されるとともに、加圧ローラF2の回転軸F2aを中心として矢印P方向に揺動可能に配設されている。
ベルト張架部材F4は、記録媒体F5が定着ニップ部を通過しない状態において、耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架するように構成されている。記録媒体F5が定着ニップ部に進入する初期位置で定着圧力が大きいと進入がスムーズに行われなくて、記録媒体F5の先端が折れた状態で定着される場合があるが、このように耐熱ベルトF3を熱定着ローラF1の接線方向に張架する構成にすることで、記録媒体F5の進入がスムーズに行われる記録媒体F5の導入口部が形成でき、安定した記録媒体F5の定着ニップ部への進入が可能となる。
【0114】
ベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3の内周に嵌挿されて加圧ローラF2と協働して耐熱ベルトF3に張力fを付与する略半月状のベルト摺動部材(耐熱ベルトF3はベルト張架部材F4上を摺動する)である。このベルト張架部材F4は、耐熱ベルトF3が熱定着ローラF1と加圧ローラF2との押圧部接線Lより熱定着ローラF1側に巻き付けてニップを形成する位置に配置される。突壁F4aはベルト張架部材F4の軸方向一端または両端に突設されており、この突壁F4aは、耐熱ベルトF3が軸方向端の一方に寄った場合に、この耐熱ベルトF3がこの突壁F4aに当接することで耐熱ベルトF3の端への寄りを規制するものである。突壁F4aの熱定着ローラF1と反対側の端部とフレームとの間にスプリングF9が縮設されていて、ベルト張架部材F4の突壁F4aが熱定着ローラF1に軽く押圧され、ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に摺接して位置決めされる。
【0115】
ベルト張架部材F4が熱定着ローラF1に軽く押圧される位置がニップ初期位置とされ、また、熱定着ローラF1に加圧ローラF2が押圧する位置がニップ終了位置とされる。
定着部F40において、未定着のトナー画像F5aが形成された記録媒体F5は、上記ニップ初期位置から定着ニップ部に進入して耐熱ベルトF3と熱定着ローラF1との間を通過し、ニップ終了位置から抜け出ることで、記録媒体F5上に形成された未定着のトナー画像F5aが定着され、その後、熱定着ローラF1への加圧ローラF2の押圧部の接線方向Lに排出される。
【0116】
クリーニング部材F6は、加圧ローラF2とベルト張架部材F4との間に配置されている。
このクリーニング部材F6は耐熱ベルトF3の内周面に摺接して耐熱ベルトF3の内周面の異物や摩耗粉等をクリーニングするものである。このように異物や摩耗粉等をクリーニングすることで、耐熱ベルトF3をリフレッシュし、前述の摩擦係数の不安定要因を除去している。また、ベルト張架部材F4に凹部F4fが設けられており、耐熱ベルトF3から除去した異物や摩耗粉等を収納するよう構成されている。
【0117】
また、定着部F40は、記録媒体F5にトナー画像F5aを定着させた後に、熱定着ローラF1の表面に付着(残存)した絶縁性液体を除去する除去ブレード(除去手段)F12を有している。なお、この酸化重合促進剤除去ブレードF12は、絶縁性液体を除去するとともに、定着の際に熱定着ローラF1上に移行したトナー等も同時に除去することができる。
【0118】
なお、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2とベルト張架部材F4とにより張架して加圧ローラF2で安定して駆動するには、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3との摩擦係数をベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3との摩擦係数より大きく設定するとよい。しかし、摩擦係数は、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2との間あるいは耐熱ベルトF3とベルト張架部材F4との間への異物の侵入や、耐熱ベルトF3と加圧ローラF2およびベルト張架部材F4との接触部の摩耗などによって不安定になる場合がある。
【0119】
そこで、加圧ローラF2と耐熱ベルトF3の巻き付け角よりベルト張架部材F4と耐熱ベルトF3の巻き付け角が小さくなるように、また、加圧ローラF2の径よりベルト張架部材F4の径が小さくなるように設定する。これにより、耐熱ベルトF3がベルト張架部材F4を摺動する長さが短くなり、経時変化や外乱などに対する不安定要因から回避でき、耐熱ベルトF3を加圧ローラF2で安定して駆動することができるようになる。
熱定着ローラF1により加える熱(定着温度)は、具体的には、80〜200℃であるのが好ましく、100〜180℃であるのがより好ましい。
【実施例】
【0120】
[1]液体現像剤の製造
(実施例1)
<絶縁性液体を構成する液体の調製>
絶縁性液体として用いる、主として不飽和脂肪酸グリセリドを含む液体および主として不飽和脂肪酸メチルエステルを含む液体を以下のようにして調製した。
【0121】
まず、粗大豆油を以下のようにして精製し、精製した大豆油を得た。
はじめに、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法により粗大豆油を粗精製した。
次に、粗精製した粗大豆油(第1の粗精製油):300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
【0122】
次に、フラスコを振り、上記の粗大豆油(第1の粗精製油)と沸騰した水とを混合した。
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷凍庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結していない成分を別のフラスコに移した。
この凍結していない成分に対して、再度、上記と同様の操作を繰り返し、得られた凍結していない成分を取り出し、粗製油脂(第2の粗精製油)を得た。
【0123】
次に、フラスコ内に、前述のようにして得られた粗製油脂(第2の粗精製油):100体積部と、主として含水ケイ酸アルミニウムで構成された活性白土:35体積部とを混合・撹拌した。
次に得られた混合物を加圧下(0.18MPa)で、48時間保存し、活性白土を完全に沈殿させた。
その後、沈殿物を除去し、精製した大豆油(以下、単に大豆油という。)を得た。なお、大豆油には主にリノール酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、大豆油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうち53mol%であった。
【0124】
次に、この大豆油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上の大豆油脂肪酸メチルエステルを得た。このようにして得られた脂肪酸モノエステルは、主にオレイン酸メチル、リノール酸メチル、α−リノレン酸メチル等の不飽和脂肪酸モノエステルと、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル等の飽和脂肪酸モノエステルとを主として構成されたものており、不飽和脂肪酸脂肪酸モノエステルはこのうち84%であった。
【0125】
<着色剤マスター溶液の調製>
まず、ポリエステル樹脂(軟化温度:125℃、ガラス転移点:60.5℃、酸価:7.7)と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0126】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物の粉末に固形分含有量が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。
【0127】
<樹脂液の調製>
上記着色剤マスター溶液:133重量部にメチルエチルケトン:140重量部および前記ポリエステル樹脂:60重量部を加えて、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で混合し、樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0128】
<水系乳化液の調製>
マックスブレンド攪拌翼を有する円筒型の2Lセパラブルフラスコに上述の樹脂液を500重量部、メチルエチルケトンを45.5重量部入れ、樹脂液の固形分含有量を55%とした。
次いでフラスコ内の樹脂液に1規定アンモニア水:41.7重量部(前記ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の総量に対するモル当量比は1.1)を加えて、スリーワンモーター(新東科学社製)により、攪拌羽の回転数を210rpm(攪拌翼の周速:0.71m/s)として十分に攪拌し、その後攪拌を維持しながら、脱イオン水:133重量部を加えた。フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して133重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こし、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液を得た。
【0129】
<会合による会合粒子の製造>
次に、フラスコ内の攪拌を継続しつつ、水系乳化液に1規定アンモニア水と水との総量が593重量部となるように脱イオン水:285重量部を加えた。次いで、水系乳化液に対して、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製):2.6重量部を脱イオン水:30重量部に希釈して添加した。
【0130】
その後、水系乳化液の温度を25℃に保ちつつ、攪拌の回転数を150rpm(攪拌翼の周速:0.54m/s)として、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液:300重量部を滴下し、分散質の会合体の粒径を3.5μmとした。滴下後、分散質の会合体の粒径が5.0μmに成長するまで攪拌を続け会合操作を終了した。
得られた会合体分散液に対して、減圧下で有機溶剤を留去することにより乾燥し、会合粒子を得た。
なお、各実施例、比較例でのそれぞれの粒子の平均粒径は体積基準平均粒径であり、これらの粒子の平均粒径および粒度分布はMastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。
【0131】
<液体現像剤の調製>
上記の方法で得られた会合粒子:40g、大豆油脂肪酸メチルエステル:60g、大豆油:100g、ポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース11200」):1g及びステアリン酸アルミニウム(日本油脂製):0.5gをセラミック製ポット(内容積600ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:3mm)を体積充填率30%になるようにセラミック製ポットに入れた。卓上ポットミルにて回転速度220rpmで200時間解砕を行い、ポット内の分散液をジルコニアボールと分離して取り出し液体現像剤を得た。
【0132】
(実施例2)
粗菜種油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製した菜種油(以下、単に菜種油という。)を得た。なお、菜種油には主にオレイン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、菜種油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、オレイン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、52mol%、24mol%であった。
【0133】
次に、この菜種油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上の菜種油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、菜種油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、菜種油:100gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0134】
(実施例3)
粗ヒマシ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したヒマシ油(以下、単にヒマシ油という。)を得た。なお、ヒマシ油には主にオレイン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、ヒマシ油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、オレイン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、92mol%、3mol%であった。
【0135】
次に、このヒマシ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のヒマシ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、ヒマシ油:100gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0136】
(実施例4)
卓上ポットミルでの解砕時間を80時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例5)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:1mmのジルコニアボールを用い、解砕時間を240時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0137】
(実施例6)
粗アマニ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したアマニ油(以下、単にアマニ油という。)を得た。なお、アマニ油には主にα−リノレン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、アマニ油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、α−リノレン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、18mol%、15mol%であった。
【0138】
次に、このアマニ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のアマニ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、アマニ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、アマニ油:80gと大豆油:20gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0139】
(実施例7)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、アマニ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、アマニ油:100gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例8)
粗ヤシ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したヤシ油(以下、単にヤシ油という。)を得た。なお、ヤシ油には主にラウリン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれていた。また、ラウリン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、47mol%、1mol%であった。
【0140】
次に、このヤシ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のヤシ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、ヤシ油脂肪酸メチルエステル:60gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0141】
(実施例9)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:96g、大豆油:64gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例10)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:6.5g、大豆油:50g、流動パラフィン:103.5gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0142】
(実施例11)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:23g、大豆油:137gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例12)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:50g、大豆油:30g、流動パラフィン:80gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0143】
(実施例13)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:120g、大豆油:40gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例14)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:15g、大豆油:130g、流動パラフィン:15gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0144】
(実施例15)
まず、自己分散型樹脂としての、側鎖に多数の−SO基(スルホン酸Na基)を有するポリエステル樹脂(ガラス転移点:55℃、軟化温度:123℃):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0145】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0146】
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
この水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整しながら攪拌した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が0.2μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
【0147】
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は30.5wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は0.15μmであった。
【0148】
上記のようにして得られた懸濁液を吐出口から圧電パルスで吐出量を調節しながら吐出し、液滴の分散媒を除去した後に、引き続き熱処理を行うことで、凹凸のなく球状で、粒子径のばらつきのないトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子:40gと、絶縁性液体としての大豆油脂肪酸メチルエステル:60gおよび大豆油:100gと、分散剤としてのポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース11200」):1gと、帯電制御剤としてのステアリン酸マグネシウム:0.5gとを用意した。
これらの成分を乳化分散機(エム・テクニック社製)を用いて回転数10000rpmで液温が樹脂のガラス転移温度以上にならないよう注意しながら分散させた。
なお、得られた液体現像剤中における、トナー粒子の平均粒径は1.03μmであった。
【0149】
(実施例16)
トナー樹脂としてポリエステル樹脂の代わりにエポキシ樹脂(軟化温度:80.5℃、ガラス転移点:55℃、酸価:12)とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例17)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルを用いず、大豆油の量を160gとした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0150】
(比較例1)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油の代わりに、流動パラフィン:160gを用いた以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例2)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル:160gを用い、大豆油を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0151】
(比較例3)
卓上ポットミルでの解砕時間を40時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例4)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:1mmのジルコニアボールを用い、解砕時間を300時間とした以外は、前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例5)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:5mmのジルコニアボールを用いて解砕した以外は前記実施例1と同様にして液体現像剤を製造した。
【0152】
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造条件および物性を表1に示した。なお、表中、不飽和脂肪酸の種類の項目においてオレイン酸をOL、リノール酸をLN、α−リノレン酸をLLと示す。また、トナー粒子のSF1、SF2に関しては、次のように測定を行った。まず、液体現像剤中のトナー粒子に関して、FE−SEM(S−800、日立製作所製)を用い、トナー粒子の像を100回無作為にサンプリングした。次に、得られたトナー粒子の像について画像解析装置(LUSEX3、ニレコ社製)を用いて解析を行ない、トナー粒子の平均のSF1、SF2を算出した。
【0153】
【表1】

【0154】
[2]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、以下のような評価を行った。
[2.1]微細文字印字性能
図2〜図7に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤によるの単色の2ポイントの文字を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着を行った。
【0155】
その後、得られたトナー画像(2ポイントの文字)を目視して、以下の5段階の基準に従い評価した。
A :2ポイントの文字が非常に鮮明に視認できる。
B :2ポイントの文字が鮮明に視認できる。
C :2ポイントの文字がわずかにぼやけて視認できる。
D :2ポイントの文字がぼやけて視認できる。
E :2ポイントの文字が視認できない。
【0156】
[2.2]欠点、すじ、濃度むら評価
図2〜図7に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定のパターンの単色の画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着を行った。
その後、得られたトナー画像を目視して、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0157】
A :トナー画像上に欠点、すじ、濃度むらが認められない。
B :トナー画像上に、欠点、すじ、濃度むらがほとんど認められない。
C :トナー画像上に、欠点、すじ、濃度むらが所々認められる。
D :トナー画像上に、欠点、すじ、濃度むらが多く認められる。
E :トナー画像上に、欠点、すじ、濃度むらが顕著に認められる。
【0158】
[2.3]トナー画像の長期安定性(安定期間)
図2〜図7に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの単色の画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着ローラの設定温度を150℃として、熱定着を行った。定着直後に、トナー画像の画像濃度をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定した。その後、気温15〜35℃、湿度50〜70%、日照下の雰囲気下で、放置した。一ヶ月ごとに、トナー画像の非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定した。画像形成特後の画像濃度と比較して、トナー画像の残存率が85%以上である期間を、トナー画像の安定期間とし、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0159】
A :トナー画像の安定期間が24ヶ月以上。
B :トナー画像の安定期間が18ヶ月以上24ヶ月未満。
C :トナー画像の安定期間が12ヶ月以上18ヶ月未満。
D :トナー画像の安定期間が6ヶ月以上12ヶ月未満。
E :トナー画像の安定期間が6ヶ月未満。
【0160】
[2.4]クリーニング性、リサイクル性
図2〜図7に示すような画像形成装置を用いて、前記各実施例および前記各比較例で得られた液体現像剤による所定パターンの単色の画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着ローラの設定温度を150℃として、熱定着を行った。このような画像形成を48時間連続して行った。その後、画像形成装置内部を観察し、感光体、現像ローラ、中間転写部等の部材に付着したトナー粒子を観察し、以下の5段階の基準に従い評価した。
【0161】
A :感光体、現像ローラ、中間転写部等の部材に、トナー粒子は確認できない。
B :感光体、現像ローラ、中間転写部等の部材にトナー粒子がかすかに確認できる。
C :感光体、現像ローラ、中間転写部等の部材にトナー粒子がわずかに確認できる。
D :感光体、現像ローラ、中間転写部等の部材にトナー粒子が確認できる。
E :感光体、現像ローラ、中間転写部等の部材に大量のトナー粒子が確認できる。
【0162】
また、液体現像剤貯留槽にある液体現像剤について、液体現像剤中のトナーの様子を目視にて確認し、以下の5段階の基準に従い評価した。
A :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がまったく認められない。
B :トナー粒子の浮遊および凝集沈降がほとんど認められない。
C :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がわずかに認められるが、液体現像剤として
問題の無い範囲である。
D :トナー粒子の浮遊または凝集沈降がはっきりと認められる。
E :トナー粒子の浮遊および凝集沈降が顕著に認められる。
【0163】
また、絶縁性液体貯留槽にある絶縁性液体について、絶縁性液体の様子を目視にて確認し、以下の5段階の基準に従い評価した。
A :絶縁性液体に濁りはまったく認められない。
B :絶縁性液体に濁りがほとんど認められない。
C :絶縁性液体に濁りがわずかに認められるが問題のない範囲である。
D :絶縁性液体に濁りがはっきりと認められる。
E :絶縁性液体に濁りが顕著に認められる。
これらの結果を表2に示す。
【0164】
【表2】

【0165】
表2から明らかなように、本発明の液体現像剤は、クリーニング性およびリサイクル性に優れていた。また、本発明の液体現像剤は、微細な文字、画像を形成するのに適したものであった。また、本発明の液体現像剤を用いて形成したトナー画像は、長期安定性に優れ、欠点、すじ、濃度むら等の少ないものであった。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
【0166】
また、実施例1の液体現像剤を用い、所定パターンの単色の画像を記録紙(セイコーエプソン社製、上質紙 LPCPPA4)上に形成し、熱定着ローラの設定温度を110℃として、熱定着を行った。定着後、記録紙のトナー画像が形成された部分の断面を切り出し、電子顕微鏡にて断面の観察を行った。図8に、観察によって得られた写真を示す。観察された記録媒体2の断面では、記録媒体(記録紙)2の繊維間にトナー粒子1が浸透して定着している様子が観察された。脂肪酸モノエステル(大豆油脂肪酸メチル)が、トナー粒子1に対して可塑剤効果を発現し、このような比較的低温の定着温度にも関わらず、トナー粒子1を記録媒体2の繊維と好適に絡めて定着できたと考えられる。
さらに、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【0167】
[3]液体現像剤の製造
(実施例18)
<絶縁性液体を構成する液体の調製>
絶縁性液体として用いる、主として不飽和脂肪酸グリセリドを含む液体および主として不飽和脂肪酸メチルエステルを含む液体を以下のようにして調製した。
【0168】
まず、粗大豆油を以下のようにして精製し、精製した大豆油を得た。
はじめに、溶剤として、メタノール、ジエチルエーテル、石油エーテル、アセトン等を用いた低温結晶法により粗大豆油を粗精製した。
次に、粗精製した粗大豆油(第1の粗精製油):300体積部をフラスコに投入し、その後、フラスコ内に沸騰した水:100体積部を注いでフラスコに栓をした。
【0169】
次に、フラスコを振り、上記の粗大豆油(第1の粗精製油)と沸騰した水とを混合した。
次に、フラスコ内の混合液が、3層に分離するまで、フラスコを静置した。
完全に分離が確認された後、フラスコを冷凍庫に移し、24時間放置した。
その後、凍結していない成分を別のフラスコに移した。
【0170】
この凍結していない成分に対して、再度、上記と同様の操作を繰り返し、得られた凍結していない成分を取り出し、粗製油脂(第2の粗精製油)を得た。
次に、フラスコ内に、前述のようにして得られた粗製油脂(第2の粗精製油):100体積部と、主として含水ケイ酸アルミニウムで構成された活性白土:35体積部とを混合・撹拌した。
【0171】
次に得られた混合物を加圧下(0.18MPa)で、48時間保存し、活性白土を完全に沈殿させた。
その後、沈殿物を除去し、精製した大豆油(以下、単に大豆油という。)を得た。なお、大豆油には主にリノール酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、大豆油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうち53mol%であった。
【0172】
次に、この大豆油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上の大豆油脂肪酸メチルエステルを得た。このようにして得られた脂肪酸モノエステルは、主にオレイン酸メチル、リノール酸メチル、α−リノレン酸メチル等の不飽和脂肪酸モノエステルと、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル等の飽和脂肪酸モノエステルとを主として構成されたものであった。
【0173】
<着色剤マスター溶液の調製>
まず、ポリエステル樹脂(軟化温度:125℃、Tg:60.5℃、酸価:7.7)と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3)との混合物(質量比50:50)を用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0174】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
得られた混練物の粉末に固形分含有量が30質量%となるようにメチルエチルケトンを加え、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で湿式分散して着色剤マスター溶液を調製した。
【0175】
<樹脂液の調製>
上記着色剤マスター溶液:133重量部にメチルエチルケトン:140重量部および前記ポリエステル樹脂:60重量部を加えて、アイガーモーターミル(米国アイガー社製:M−1000)で混合し、樹脂液を作製した。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0176】
<水系乳化液の調製>
マックスブレンド攪拌翼を有する円筒型の2Lセパラブルフラスコに上述の樹脂液を500重量部、メチルエチルケトンを45.5重量部入れ、樹脂液の固形分含有量を55%とした。
次いでフラスコ内の樹脂液に1規定アンモニア水:41.7重量部(前記ポリエステル樹脂が有するカルボキシル基の総量に対するモル当量比は1.1)を加えて、スリーワンモーター(新東科学社製)により、攪拌羽の回転数を210rpm(攪拌翼の周速:0.71m/s)として十分に攪拌し、その後攪拌を維持しながら、脱イオン水:133重量部を加えた。フラスコ内の溶液の温度を25℃に調整し、攪拌を継続しながら、上記樹脂液に対して133重量部の脱イオン水を滴下して転相乳化を起こし、樹脂材料を含む分散質が分散した水系乳化液を得た。
【0177】
<会合による会合粒子の製造>
次に、フラスコ内の攪拌を継続しつつ、水系乳化液に1規定アンモニア水と水との総量が593重量部となるように脱イオン水:285重量部を加えた。次いで、水系乳化液に対して、アニオン型乳化剤であるエマール0(花王社製):2.6重量部を脱イオン水:30重量部に希釈して添加した。
【0178】
その後、水系乳化液の温度を25℃に保ちつつ、攪拌の回転数を150rpm(攪拌翼の周速:0.54m/s)として、3.5%の硫酸アンモニウム水溶液:300重量部を滴下し、分散質の会合体の粒径を3.5μmとした。滴下後、分散質の会合体の粒径が5.0μmに成長するまで攪拌を続け会合操作を終了した。
得られた会合体分散液に対して、減圧下で有機溶剤を留去することにより乾燥し、会合粒子を得た。
なお、各実施例、比較例でのそれぞれの粒子の平均粒径は体積基準平均粒径であり、これらの粒子の平均粒径および粒度分布はMastersizer 2000粒子解析装置(Malvern Instruments Ltd.製)にて測定を行った。
【0179】
<液体現像剤の調製>
上記の方法で得られた会合粒子:40g、大豆油脂肪酸メチルエステル:60g、大豆油:100g、ポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース11200」):1g及びステアリン酸アルミニウム(日本油脂製):0.5gをセラミック製ポット(内容積600ml)に入れ、さらにジルコニアボール(ボール直径:3mm)を体積充填率30%になるようにセラミック製ポットに入れた。卓上ポットミルにて回転速度210rpmで120時間解砕を行い、ポット内の分散液をジルコニアボールと分離して取り出し液体現像剤を得た。
【0180】
(実施例19)
粗菜種油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製した菜種油(以下、単に菜種油という。)を得た。なお、菜種油には主にオレイン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、菜種油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、オレイン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、58mol%、24mol%であった。
【0181】
次に、この菜種油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上の菜種油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、菜種油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、菜種油:100gを用いた以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
【0182】
(実施例20)
粗ヒマシ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したヒマシ油(以下、単にヒマシ油という。)を得た。なお、ヒマシ油には主にオレイン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、ヒマシ油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、オレイン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、92mol%、3mol%であった。 次に、このヒマシ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のヒマシ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、ヒマシ油:100gを用いた以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
【0183】
(実施例21)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの量を120gとし、大豆油の量を40gとした以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例22)
卓上ポットミルでの解砕時間を96時間とした以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
【0184】
(実施例23)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:1mmのジルコニアボールを用い、解砕時間を168時間とした以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例24)
粗アマニ油を実施例1の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したアマニ油(以下、単にアマニ油という。)を得た。なお、アマニ油には主にα−リノレン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、アマニ油中の不飽和脂肪酸グリセリドは98wt%であった。また、α−リノレン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、18mol%、15mol%であった。
【0185】
次に、このアマニ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のアマニ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、アマニ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、アマニ油:80gと大豆油:20gを用いた以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
【0186】
(実施例25)
まず、自己分散型樹脂としての、側鎖に多数の−SO基(スルホン酸Na基)を有するポリエステル樹脂(ガラス転移点:55℃、軟化温度:123℃):80重量部と、着色剤としてのシアン系顔料(大日精化社製、ピグメントブルー15:3):20重量部とを用意した。これらの各成分を20L型のヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー製造用の原料を得た。
【0187】
次に、この原料(混合物)を2軸混練押出機を用いて混練した。2軸混練押出機の押出口から押し出された混練物を冷却した。
上記のようにして冷却された混練物を粗粉砕し、平均粒径:1.0mm以下の粉末とした。混練物の粗粉砕にはハンマーミルを用いた。
次に、混練物の粗粉砕物:100重量部をトルエン:250重量部に添加し、超音波ホモジナイザー(出力:400μA)を用いて、1時間処理することにより、混練物の自己分散型樹脂が溶解した溶液を得た。なお、この溶液中において、顔料は均一に微分散していた。
【0188】
一方、イオン交換水:700重量部からなる水系液体を用意した。
この水系液体をホモミキサー(特殊機化工業社製)で攪拌回転数を調整しながら攪拌した。
このような攪拌状態の水系液体中に、上記溶液(混練物のトルエン溶液)を滴下した。これにより、平均粒径が0.2μmの分散質が均一に分散した水系乳化液が得られた。
その後、温度:100℃、雰囲気圧力:80kPaの条件下で、水系乳化液中のトルエンを除去し、さらに、室温まで冷却することにより、固形微粒子が分散した水系懸濁液を得た。得られた水系懸濁液中には、実質的にトルエンは残存していなかった。得られた水系懸濁液の固形分(分散質)濃度は30.5wt%であった。また、懸濁液中に分散している分散質(固形微粒子)の平均粒径は0.15μmであった。
【0189】
上記のようにして得られた懸濁液を吐出口から圧電パルスで吐出量を調節しながら吐出し、液滴の分散媒を除去した後に、引き続き熱処理を行うことで、凹凸のなく球状で、粒子径のばらつきのないトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子:40gと、絶縁性液体としての大豆油脂肪酸メチルエステル:60gおよび大豆油:100gと、分散剤としてのポリアミン脂肪族縮重合体(日本ルーブリゾール社製、商品名「ソルスパース11200」):1gと、帯電制御剤としてのステアリン酸マグネシウム:0.5gとを用意した。
これらの成分を乳化分散機(エム・テクニック社製)を用いて回転数10000rpmで液温が樹脂のガラス転移温度以上にならないよう注意しながら分散させた。
なお、得られた液体現像剤中における、トナー粒子の平均粒径は1.03μmであった。
【0190】
(実施例26)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルを用いず、大豆油の量を160gとした以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
(実施例27)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、アマニ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、アマニ油:100gを用いた以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
【0191】
(実施例28)
粗オリーブ油を実施例18の大豆油と同様の操作にて精製し、精製したオリーブ油(以下、単にオリーブ油という。)を得た。なお、オリーブ油には主にオレイン酸を主成分とする脂肪酸グリセリドが含まれており、オリーブ油中の不飽和脂肪酸グリセリドは99wt%であった。また、オレイン酸成分、リノール酸成分は全脂肪酸成分のうちそれぞれ、73mol%、11mol%であった。
【0192】
次に、このオリーブ油の一部とメタノールとのエステル交換反応を行い、この反応により生じたグリセリンを取り除くことにより、主として脂肪酸モノエステルで構成された液体を得た。さらに、この液体を精製することにより、脂肪酸モノエステルの含有率が99.9wt%以上のオリーブ油脂肪酸メチルエステルを得た。
以下、絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステルの代わりに、オリーブ油脂肪酸メチルエステル:60gを用い、大豆油の代わりに、オリーブ油:100gを用いた以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
【0193】
(比較例6)
絶縁性液体として、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油の代わりに、流動パラフィン:160gを用いた以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例7)
卓上ポットミルでの解砕時間を40時間とした以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
【0194】
(比較例8)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:1mmのジルコニアボールを用い、解砕時間を300時間とした以外は、前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
(比較例9)
卓上ポットミルでの解砕において、ボール直径:5mmのジルコニアボールを用いて解砕した以外は前記実施例18と同様にして液体現像剤を製造した。
以上の各実施例および各比較例について、液体現像剤の製造条件および物性を表3に示した。なお、表中、不飽和脂肪酸の種類の項目においてオレイン酸をOL、リノール酸をLN、α−リノレン酸をLLと示す。
【0195】
【表3】

【0196】
[4]評価
上記のようにして得られた各液体現像剤について、[2]と同様の評価を行った。
各実施例、比較例の液体現像剤について、得られた評価を表4に示す。
【0197】
【表4】

【0198】
表4から明らかなように、本発明の液体現像剤は、クリーニング性およびリサイクル性に優れていた。また、本発明の液体現像剤は、微細な文字、画像を形成するのに適したものであった。また、本発明の液体現像剤を用いて形成したトナー画像は、長期安定性に優れ、欠点、すじ、濃度むら等の少ないものであった。これに対し、各比較例の液体現像剤では、満足な結果が得られなかった。
さらに、着色剤として、シアン系顔料の代わりに、ピグメントレッド122、ピグメントイエロー180、カーボンブラック(デグサ社製、Printex L)を用いた以外は、上記と同様に液体現像剤の製造、評価を行ったところ、上記と同様の結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】形状係数SF1、SF2の求め方を説明する図である。
【図2】本発明の液体現像剤が適用される画像形成装置の一例を示す模式図である。
【図3】図2に示す画像形成装置の一部を拡大した拡大図である。
【図4】図2に示す画像形成装置が備える塗布ローラを示す斜視概念図である。
【図5】図4に示す塗布ローラの拡大模式図である。
【図6】現像ローラ上の液体現像剤層内におけるトナー粒子の状態を示す模式図である。
【図7】図2に示す画像形成装置に適用される定着装置の一例を示す断面図である。
【図8】脂肪酸モノエステルを含む液体現像剤によって画像形成された記録媒体の断面写真である。
【符号の説明】
【0200】
1…トナー粒子 2…記録媒体 1000…画像形成装置 10Y、10M、10C、10K…感光体 11Y…帯電ローラ 12Y…露光ユニット 13M、13Y…感光体スクイーズローラ 14M、14Y…クリーニングブレード 15M、15Y…現像剤回収部 16Y…除電ユニット 17Y…感光体クリーニングブレード 18Y…現像剤回収部 20Y、20M、20C、20K…現像ローラ 201Y…液体現像剤層 21Y…現像ローラクリーニングブレード 22Y…現像剤圧縮ローラ 23Y…現像剤圧縮ローラクリーニングブレード 30Y、30M、30C、30K…現像部 31Y…液体現像剤貯留部 32Y…塗布ローラ 32Ya…溝 32Yb…山 33Y…規制ブレード 34Y…撹拌ローラ 40…中間転写部 41…ベルト駆動ローラ 42…テンションローラ 46…中間転写部クリーニングブレード 47…現像剤回収部 51Y、51M、51C、51K…1次転写バックアップローラ 52Y、52M、52C、52K…中間転写部スクイーズ装置 53Y…中間転写部スクイーズローラ 54Y…中間転写部スクイーズバックアップローラ 55Y…中間転写部スクイーズローラクリーニングブレード 60…2次転写ユニット 61…2次転写ローラ 62…2次転写ローラクリーニングブレード 63…現像剤回収部 70…搬送路 74…絶縁性液体貯留部 76…ポンプ 77…フィルタ手段 78…搬送手段 80Y、80M、80C、80K…液体現像剤補給部 81Y…補給絶縁性液体貯留部 82Y…補給液体現像剤貯留部 83Y、84Y…搬送手段 100Y…現像ユニット 101Y…感光体スクイーズ装置 F40…定着部(定着装置) F1…熱定着ローラ(加熱ローラ) F1a…柱状ハロゲンランプ F1b…ローラ基材 F1c…弾性体 F12…除去ブレード F2…加圧ローラ F2a…回転軸 F2b…ローラ基材 F2c…弾性体 F3…耐熱ベルト F4…ベルト張架部材 F4a…突壁 F4f…凹部 F5…記録媒体 F5a…トナー画像 F6…クリーニング部材 F7…フレーム F9…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、
前記トナー粒子は、平均粒径が0.7〜3μmであり、
下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、
下記式(II)で表される前記トナー粒子の形状係数SF1が100〜130であり、
下記式(III)で表される前記トナー粒子の形状係数SF2が110〜150であり、
前記絶縁性液体は、不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする液体現像剤。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合に、累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
SF1={(ML)/A}×(100π/4) ・・・ (II)
SF2={(CL)/A}×(100/4π) ・・・ (III)
(ただし、A[μm]は、トナー粒子を2次元平面状に投影してできる図形の面積であり、ML[μm]、CL[μm]は、それぞれ、前記図形の最大長、周長である。)
【請求項2】
前記絶縁性液体の粘度は、5〜1000mPa・sである請求項1に記載の液体現像剤。
【請求項3】
前記不飽和脂肪酸のグリセリドは、不飽和脂肪酸成分としてリノール酸を含むものである請求項1または2に記載の液体現像剤。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸のグリセリドを構成する全脂肪酸成分に対する前記リノール酸の含有率は、15mol%以上である請求項3に記載の液体現像剤。
【請求項5】
主として樹脂材料で構成された微粒子を会合させ、会合粒子を得る工程と、
絶縁性液体の一部を用いて、前記会合粒子を解砕し、トナー粒子を得る工程と、
得られた前記トナー粒子を、不飽和脂肪酸のグリセリドを含む液体に分散させる分散工程とを有し、
得られる液体現像剤は、前記絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、前記トナー粒子の平均粒径が0.7〜3μmであり、下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、下記式(II)で表される前記トナー粒子の形状係数SF1が100〜130であり、下記式(III)で表される前記トナー粒子の形状係数SF2が110〜150であり、前記絶縁性液体は、前記不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする液体現像剤の製造方法。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合に、累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
SF1={(ML)/A}×(100π/4) ・・・ (II)
SF2={(CL)/A}×(100/4π) ・・・ (III)
(ただし、A[μm]は、トナー粒子を2次元平面状に投影してできる図形の面積であり、ML[μm]、CL[μm]は、それぞれ、前記図形の最大長、周長である。)
【請求項6】
液体現像剤によって形成されたトナー画像が付着した記録媒体に対して、加熱しつつ圧力をかけることにより、前記トナー画像を前記記録媒体上に定着させる定着部を有し、
前記液体現像剤は、絶縁性液体と、前記絶縁性液体中に分散したトナー粒子とを含み、前記トナー粒子の平均粒径が0.7〜3μmであり、下記式(I)で表される前記トナー粒子の粒度分布の幅Sが1.4以下であり、下記式(II)で表される前記トナー粒子の形状係数SF1が100〜130であり、下記式(III)で表される前記トナー粒子の形状係数SF2が110〜150であり、前記絶縁性液体は、不飽和脂肪酸のグリセリドを含むことを特徴とする画像形成装置。
S=〔D(90)−D(10)〕/D(50) ・・・ (I)
(ただし、トナー粒子を小さい粒径から粒度分布の測定をした場合に、累積体積にて全体の体積のX%の地点での粒径をD(X)とする。)
SF1={(ML)/A}×(100π/4) ・・・ (II)
SF2={(CL)/A}×(100/4π) ・・・ (III)
(ただし、A[μm]は、トナー粒子を2次元平面状に投影してできる図形の面積であり、ML[μm]、CL[μm]は、それぞれ、前記図形の最大長、周長である。)
【請求項7】
色の異なる複数の前記液体現像剤を貯留する液体現像剤貯留部と、
前記液体現像剤貯留部から供給された色の異なる複数の前記液体現像剤を用いて、各色に対応した前記単色像を形成する複数の現像部と、
複数の前記現像部で形成された複数の前記単色像が順次転写され、転写された複数の前記単色像を重ね合わせてなる中間転写像を形成する中間転写部と、
前記中間転写像を前記記録媒体に転写し、前記記録媒体上に前記トナー画像を形成する2次転写部とを有する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記現像部は、少なくとも、表面に前記液体現像剤の層を形成する現像ローラと、前記現像ローラ上の液体現像剤を転写することにより前記単色像を形成する感光体と、前記現像ローラに液体現像剤を供給する塗布ローラとを有し、
前記塗布ローラは、その表面に溝が形成されたアニロクスローラであり、前記溝に前記液体現像剤を担持することによって前記現像ローラに前記液体現像剤を供給する請求項6または7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−209655(P2008−209655A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46263(P2007−46263)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】