説明

液体用の温度制御システム

液体用の温度制御システム(400)は、互いに向かい合って配置されてそれらの間に温度制御区域を画成している2セットの温度制御素子を含む。温度制御区域の内部の導管系は、1つまたは複数の第1のセグメントが、前記2セットの一方に近接しかつそれと熱伝導関係にあり、1つまたは複数の第2のセグメントが、前記2セットのもう一方に近接しかつそれと熱伝導関係にあるように構成されている液体流路(300、302)を画成する。この温度制御システム(400)は、冷液分注デバイスまたはシステム、例えば飲料水または他の飲料用の分注デバイスなどにおいて、液体冷却モジュールまたは液体加熱モジュールとして用いることができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、例えば、冷却された飲料などの飲料を分注するためのデバイスにおいて有用な、液体用の温度制御システム、例えば冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
種々の液体冷却システムが公知である。ある種のシステムには、ペルチェユニットが用いられる。ペルチェユニットは一般に、コンプレッサーよりもエネルギー消費に関しては効率が高いが、冷却能力は低い。
【0003】
US 2006/0075761号(特許文献1)は、蛇行流体管と、独立に制御される熱電式熱伝達モジュールのネットワークと、温度制御モジュールのネットワークとが埋め込まれた蓄熱器を有する、オンデマンド式の冷却または加熱された飲料水のための装置を記載している。1つの好ましい態様は、継ぎ目のない単一のダイカスト製の熱伝導性金属媒質および接続構造のない埋め込まれたパイプとしての蓄熱器を含む。
【0004】
WO 1997007369号(特許文献2)は、小型であり、需要主導型機構に受け入れられる程度に十分に速く液体を冷却することが可能でありながら、それを実際に凍るほど過度には冷却しない、清涼飲料用の機械または同様の液体分注装置に適した冷却ユニットを記載している。この出願は、分注しようとする液体の熱特性および所望の押出量に見合う出力を有するヒートポンプ(典型的にはペルチェ効果デバイス)と、それと結びついた(さらにそれが直接冷却する)必要とされる温度範囲(これは通常、0℃のすぐ上から+5℃前後までであると考えられる)で動作する液相/固相変化性材料の形態にある周囲媒質との組み合わせを利用する冷却システムの使用を提案している。これは液体が過剰冷却される可能性を大幅に減らす。第2に、この出願は、液相/固相変化性材料(15)と熱的に結びつき、必要に応じてポンプのオンまたはオフを効果的に制御するようにヒートポンプと機能的に連結している、サーミスタなどの温度感受性スイッチング素子を提案している。
【0005】
US 5634343号(特許文献3)は、流体を10゜F未満に冷却することのできる熱電冷却器を記載している。記載された冷却器は、熱伝達経路を最大化することでより優れた熱伝導率に可能にし、冷却器の内部に冷却素子の熱収縮および熱膨張に対処するための空間を備えている。
【0006】
US 5285718号(特許文献4)は、飲料浸出セグメントを筐体内部の1つまたは複数の場所に備え付けるための筐体内部にある冷水供給装置を有する飲料浸出器(beverage brewer)と、必要に応じて冷水を供給するためにそれとつなげて配置された水冷却供給装置との組み合わせを記載している。この装置の冷水セグメントは、冷水タンク、その内部の冷却ロッド、加熱された水から温熱を取り除くため、および取り除いた熱を放散のためにヒートシンクに送り出すためのヒートポンプとして動作する冷却モジュールを含む。さまざまな電子的および電気的制御がデバイスのさまざまな構成要素の動作を調節するために提供されており、さらに、入る水を濾過するための濾過用デバイスが含められ、これはフィルター点検が必要な時期であること、または装置の能力が処理の最大水量に達したことを指示するためのさまざまな表示器と連結されている。
【0007】
US 2003188540号(特許文献5)は、以下を含む、飲料分注装置用の流体冷却デバイスを記載している:(a)流体貯留容器;および(b)貯留容器の少なくとも1つの外面上に提供された、冷却面および加熱面を有するひと揃いの熱電デバイスであって、冷却面が流体貯留容器と熱連通状態にあり、その結果、デバイスに電力が供給されると冷却面が貯留容器内の流体の熱エネルギーを低下させる、熱電デバイス。
【0008】
以下の特許および特許出願も、少なくとも部分的にペルチェ冷却機構に依拠している飲料分注装置を開示する:US 2006/096300号;US 5,50,1077号;US 6,237,345号;US 2006/169720号;US 5,285,718号;US 5,209,069号;US 4,664,292号;US 2006/096300号;US 5,501,077号およびUS 6,237,345号(特許文献6〜15)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US 2006/0075761号
【特許文献2】WO 1997007369号
【特許文献3】US 5634343号
【特許文献4】US 5285718号
【特許文献5】US 2003188540号
【特許文献6】US 2006/096300号
【特許文献7】US 5,50,1077号
【特許文献8】US 6,237,345号
【特許文献9】US 2006/169720号
【特許文献10】US 5,285,718号
【特許文献11】US 5,209,069号
【特許文献12】US 4,664,292号
【特許文献13】US 2006/096300号
【特許文献14】US 5,501,077号
【特許文献15】US 6,237,345号
【発明の概要】
【0010】
本発明によって提供されるのは、液体用の温度制御システムである。本システムは、2セットの温度制御素子を含み、各セットは、そのような素子を1つまたは複数含み、互いに向かい合って配置され、それらの間に温度制御区域を画成している。温度制御区域の内部の導管系は、1つまたは複数の第1のセグメントが前記2セットの一方に近接しかつそれと熱伝導関係にあり、1つまたは複数の第2のセグメントが前記2セットのもう一方に近接しかつそれと熱伝導関係にあるように構成されている液体流路を画成する。この温度制御システムは、冷液分注デバイスまたはシステム、例えば飲料水または他の飲料用の冷液分注デバイスなどにおいて、液体冷却モジュールまたは液体加熱モジュールとして用いることができる。
【0011】
本発明は、その態様の1つによって、液体がシステムを通って流れる際にそれを冷却または加熱するための液体温度制御システムを提供する。流れは供給源から出口に向かってもよく、または、冷却もしくは加熱のいずれかに熱制御されたある一定量の液体を後に用いるために維持しているリザーバーから出ては戻る循環性であってもよい。1つの好ましい態様によれば、液体は、分注用の出口から分注される飲用水である。温度制御システムは、例えば、飲用水分注用装置またはデバイスに組み込まれてもよい。本発明の温度制御システムは、液体の温度制御の効率を改善する設計上の特徴を有する。そのような特徴には、温度制御区域を通る液体の蛇行した流れ;ならびに温度制御素子の1セットと熱伝導関係にあるセグメント、および温度制御素子のもう一方のセットと熱伝導関係にある別のセグメントを有することが含まれる。
【0012】
「温度制御」という用語は、本明細書において、加熱または冷却のいずれかのことを指す。
【0013】
本発明の1つの態様の液体温度制御システムは、1つまたは複数の温度制御素子の第2のセットと向かい合って配置された、1つまたは複数の温度制御素子の第1のセットを含む。これらの2セットは、それらの間に、前記第1の素子に近接しかつそれと熱伝導関係にある1つまたは複数の第1のセグメント、および前記第2の素子に近接しかつそれと熱伝導関係にある1つまたは複数の第2のセグメントを有するように構成されている液体流路を画成する流路系を収容する温度制御区域を画成する。
【0014】
本発明のいくつかの態様において、導管系は、液体流入から液体流出へ至る、温度制御区域を通る単一の流路を画成する。他の態様において、導管系は流入と流出とをつなぐ2つまたはそれ以上の流路を画成する。本発明のいくつかの態様によれば、流路は蛇行形状を有する。
【0015】
「温度制御素子」という用語は、本明細書において、ペルチェ素子でのように素子において局所的に生じた熱もしくは低温、または加熱もしくは冷凍ユニットから伝達された熱もしくは低温を、例えば循環性の温度伝達流体などを介して伝達することのできる素子を表すのに用いられる。
【0016】
いくつかの態様において、本発明の液体温度制御システムは液体を冷却することを目的とする。この態様のシステムは「液体冷却システム」と称され得る。他の態様において、液体温度制御システムは、液体を加熱することを目的とする液体加熱システムである。さらに他の態様において、本発明のシステムは、冷却モードから加熱モードに変化しうるハイブリッド型の液体加熱/冷却システムであってもよい。
【0017】
「温度制御区域」という用語は、本明細書において、温度制御素子によって画成され、それらによって加熱または冷却される区域を指して用いられる。温度制御区域は、熱制御素子によって挟まれるかまたは囲まれた区域であってよい。
【0018】
液体冷却システムの文脈においては、温度制御素子および温度制御区域の態様を「冷却素子」および「冷却区域」と称してもよい。
【0019】
「導管系」という用語は、本明細書において、特に、温度制御区域の内部に収容された加熱または冷却しようとする液体の流路の一部であるパイプ、チャネル、または他の導管の系を表して用いられる。導管系はパイプまたは溝様のセグメントで構成されてもよい。
【0020】
「熱伝導関係」という用語は、関係している媒質の間、例えば、冷却素子と導管との間の熱(または低温)の輸送を許容する物理的関係を表すものとする。また、「熱連通」という用語を、時には、そのような熱伝導関係に関連して用いることもできる。
【0021】
「第1の」および「第2の」という用語は、本明細書において、説明の便宜上用いられ、いかなる構造的または機能的な意義も有しない。「第1の」および「第2の」と呼ばれるセット、セグメントその他は、同じであってもよく、または互いに異なってもよい。
【0022】
本発明の温度制御システムはしたがって、温度制御素子によって加熱または冷却(場合による)される導管系を含む。導管系は、温度制御素子と熱伝導性様式で関係している;すなわち温度制御素子が導管系を加熱または冷却し、それにより、その中を流れる液体の温度を変化させる。導管系は、温度制御素子の第1のセットと近接しかつそれと熱伝導関係にあるセグメント、および前記第2のセットとそのような熱伝導関係にあるセグメントを有する。
【0023】
1つの好ましい態様によれば、導管系は、第1および第2のセグメントの少なくともいくつか、時にはすべてが流路に沿って交互に配列されるように構成される。従って、冷却される液体は第1セットの要素に隣接するセグメントの中を流れ、続いて第2セットの要素に隣接するセグメントの中を流れ、以降同様である。
【0024】
本発明の1つの態様によれば、温度制御素子は、向かい合った低温面と高温面とを有する平面状ペルチェ素子などの熱電冷却素子である。ペルチェ素子を本発明の液体加熱システムの場合に用いてもよいが、これは特に本発明の液体冷却システムに用いるのが適切である(その場合にはペルチェ素子の低温面が冷却区域の内面を覆う)。しかし、本発明は、そのような冷却素子の使用には限定されず、他の冷却機構も同じく可能である。別の冷却機構の一例は、冷凍ユニットを利用して冷却剤流体を冷却し、続いてそれを前記冷却素子に移すことである。本発明の液体加熱システムにおいて有用な加熱素子の一例は、例えば、Joule加熱素子(抵抗加熱素子またはオーム加熱素子としても知られる)である。
【0025】
1つの態様によれば、本発明の冷却システムは、冷却区域の一方の側に配置された1つまたは複数のペルチェ素子の第1のセット、および冷却区域の反対側に配置された1つまたは複数のペルチェ素子の第2のセットを含む。前記第1のセットのペルチェ素子は、第2のセットのペルチェ素子と同じであっても異なってもよい。さらに、1セットの中の別々のペルチェ素子はすべて同じでもよく、または異なってもよい(形またはサイズが異なる、力が異なる、低温生成能力が異なる、など)。
【0026】
1つの態様によれば、導管系は、冷却区域を通って延在するいくつかのセグメントを有する、熱伝導性材料、典型的には金属でできたパイプを含む。この態様のシステムは、熱伝導性材料でできた管状の導管セグメントの第1の群および第2の群を含む。第1の群のセグメントは、第1のセットの温度制御素子に近接しかつそれと熱伝導関係にあり、第2の群は、第2のセットの温度制御素子に近接しかつそれと熱伝導関係にある。
【0027】
「管状の導管」という用語は、円形、楕円形、多角形、不規則もしくは非対称性、または任意の他のタイプの断面を有する中空内部を有する、パイプまたは他のタイプの液体の管のことを指す。
【0028】
管状の導管は典型的には矩形の断面を有する。1つの態様において、導管は扁平である。
【0029】
典型的には、各セグメントは温度制御区域の長さ全体にわたる。異なるセグメントは互いに流体連通状態にあり、その結果、液体は温度制御区域を繰り返し流れる。流路は典型的には、第1の群のセグメントおよび第2の群のセグメントが交互になるように構築され、その結果、液体はその流路内で、温度制御素子の一方のセットに近接しかつそれと熱伝導関係にあるセグメントと、温度制御素子のもう一方のセットに近接しかつそれと熱伝導関係にあるセグメントとを交互に通って流れる。1つの態様によれば、管状セグメントの末端は1つまたは複数の連結要素に嵌合され、連結要素はその内部に、前記セグメントを結びつける(つまり、セグメント間の流れ連通をもたらす)流路を画成する。
【0030】
1つの態様によれば、温度制御区域は、温度制御素子の第1のセットと熱伝導関係にあるよう配置された第1の熱伝導性壁と、温度制御素子の第2のセットと熱伝導関係にあるよう配置された第2の熱伝導性壁との間、および側壁の間に画成される、液体の入口および出口を備えた熱交換チャンバーを含む。熱伝導性壁は典型的には金属でできている。入口から出口へ至る1つまたは複数の連続した流路を画成するチャネルの配列物が、チャンバー内に形成される。前記チャネルの1つまたは複数である第1の群は、前記第1の壁に隣接しかつそれと熱伝導関係にあり、前記チャネルの1つまたは複数である第2の群は、前記第2の壁に隣接しかつそれと熱伝導関係にある。
【0031】
そのような熱伝導関係のためには、チャネルの一つの面が熱伝導性壁の1つの一部分によって構成されるようにしてチャネルが形成されてもよい。
【0032】
チャネルを、つなぎ合わされたセグメントによる三次元曲線流路として配列させてもよい。本発明のいくつかの態様において、第1の群のチャネルの少なくともいくつかは、流路に沿って第2の群のチャネルと交互に配列される。
【0033】
1つの態様によれば、チャネルは、チャンバー内に配置されたパネルを区分けすることによって形成される。
【0034】
熱伝導性壁は、典型的には、本質的に互いに平行である。1つの態様によれば、熱交換チャンバーは、2つの熱伝導性壁の間に配置され、それに対して本質的に平行に延在し、それにより、チャンバーを第1の壁に隣接する第1の区画と第2の壁に隣接する第2の区画とに区分けする主仕切りパネル(main divider panel)を含む。区画のそれぞれは、主仕切りパネルから熱伝導性壁へ延在し、2つの末端を有する実質的にU字形のチャネルセグメントを画成する補助パネルによって、さらに区分けされる。主区分けパネルの中に、第1の区画内のU字形チャネルセグメントの末端を第2の区画内のU形チャネルセグメントと結びつけて、それによってU字形チャネルセグメントの流路を入口から出口まで形成させる開口部が形成される。その結果、流路は、一方の区画のU形チャネルセグメントおよびもう一方の区画のU形チャネルセグメントによって交互に構成される。
【0035】
本発明によれば、主仕切りパネル、補助仕切りパネル、および側壁は、単一の材料のブロックからできている。
【0036】
温度制御素子が1つまたは複数の熱電素子である本発明の液体冷却システムの場合、本システムは、前記素子によって生じた熱の輸送および放散のためのヒートシンク配列物を含んでもよい。ヒートシンク配列物は、1つまたは複数の熱電素子と熱伝導関係にある熱吸収モジュールと熱放散モジュールとの間に収められた冷却剤流体(これは液体または気体でありうる)を含有する閉回路式の熱輸送導管系を含みうる。冷却剤流体は熱吸収モジュールと熱放散モジュールとの間を循環し、それにより、前記素子によって生じた熱を取り除く。ヒートシンク配列物は典型的には、1つが冷却用熱電素子の第1のセットと関係し、もう1つが冷却用熱電素子の第2のセットと関係している、2つの熱吸収モジュールを含みうる。
【0037】
また、前記温度制御システムを含む液体(例えば、飲料または飲料水)分注用デバイスも本発明によって提供される。一例は、本発明による液体冷却システムおよび/または液体加熱システムを備えた飲料水分注用デバイスである。場合によっては、本発明の複数の液体冷却システムおよび/または加熱システムを、冷却もしくは加熱しようとする液体が一連の2つもしくはそれ以上のそのようなシステムを流れるように連続的に配列するか、または平行した流路として配列するかのいずれかとして、単一のデバイスに含めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明が理解され、それをどのようにして実際に行いうるかが把握されるように、添付の図面を参照しながら、あくまでも非限定的な例として、諸態様を以下に説明する。図面中では、複数の図に登場する同一および同様な構造、要素またはそれらの部分は一般に、それらが登場する図面中に同じまたは同様な参照記号を用いて表示した。図面中に示された構成要素および特徴的なものの寸法は、主として便宜のため、および提示の分かりやすさのために選ばれており、必ずしも原寸に比例していない。添付されている図面は以下である。
【0039】
【図1】本発明のいくつかの態様による例示的な液体冷却システムの斜視図である。
【図2】導管系および付随する液体流動要素の斜視図である。
【図3】図3の導管系の分解組立図である。
【図4】図4Aおよび4Bは、本発明の例示的な態様による例示的な連結部要素をさらに詳細に描写している、図3の例示的な熱交換装置の別の図である。
【図4−5】図4Aおよび4Bならびに図5Aおよび5Bは、本発明の種々の態様によるW:Hアスペクト比を描写している例示的な扁平パイプの略図であり、ここで図4Aおよび4Bはすべてが同じ断面を有する一例を示しており、一方、図5Aおよび5Bは異なるパイプが異なる断面を有する一例を示している。
【図6】図6A、6Bおよび6Cは、本発明の種々の態様による6種の扁平パイプの一群による、例示的な流路の略図である。
【図7】本発明の1つの態様による液体冷却システムの斜視図である。
【図8】図7におけるVIII-VIII面での断面である。
【図9】図7の冷却システムを、ヒートシンクブロックを省いた上で示しており、ペルチェ素子が付随する熱交換チャンバーを描写している。
【図10】熱交換チャンバーを、それを収納するフレームとともに示している。
【図11】熱交換チャンバーを収納するフレームの分解組立図である。
【図12】図10におけるXII-XII面での断面である。
【図13】図13Aは、図12と同じ面に沿ってのチャネル形成ブロックのみの断片である。図13Bおよび13Cは、チャネル形成ブロックの斜視図であり、図13Aで矢印BおよびCによって指し示されたその面を描写している。
【図14】図14A、14Bおよび14Cは、熱吸収モジュールを示しており、ここで図17Aは図11と同じVIII-VIII面での断面であり、一方、図14Bおよび14Cはこのモジュールの2つの主な要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
態様の詳細な説明
本発明の諸態様は、液体温度制御システムに関する。以下に説明する態様は液体冷却システムに関するものであるが、記載された原理は加熱に対しても(必要な変更を加えた上で)等しく適用しうる。
【0041】
本発明の例示的な態様による温度制御システムの原理および動作は、図面および付随する説明を参照することで、さらによく理解されるであろう。
【0042】
本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明がその適用に際して、以下の具体的な諸態様の説明において述べられた詳細に限定されないことを理解する必要がある。本発明はまた、多種多様なその他の態様も範囲に含み、多くの方式で実施または実行することができる。また、本明細書で使用した言い回しおよび用語は説明を目的としており、限定的であるとみなされるべきでない。
【0043】
ここで図1を参照すると、例えば「オンデマンド式冷水」分注装置への実装に適用しうる例示的な冷却装置200の略図が示されている。装置200は、一般的に示された液体管理用構成要素220、ヒートシンク配列物240と結合している温度制御システム400を含む。
【0044】
図2は、液体管理用構成要素220をさらに詳細に描写している。具体的には、ペルチェ熱電冷却素子250を、6つの扁平パイプ300および302のうち上の3つに直接的な熱連通下で取り付けられていることが見てとれる。また、前記扁平パイプのうち下の3つに直接的な熱連通下で取り付けられている、対応する素子もみられる。冷却用に構成されている描写された例示的な態様では、ペルチェ素子250の低温側がパイプ300および/または302と接触するように、リード線252が電源(描かれていない)と接続されている。ペルチェデバイス250の高温側は図面では上向きである。描写された例示的な液体管理用構成要素は、リザーバー222、リザーバー入口224およびポンプ228も含む。使用中はポンプ228が水をパイプ230および232を通して循環させ、そのためリザーバー222と温度制御システム400との間で交換が起こる。出口ポート226を介してリザーバー222から冷水を引き出すことができる。
【0045】
再び図1を参照すると、ペルチェ熱電冷却素子250(図2B)およびその反対側のもの(図示されず)が、それらの間に、扁平パイプ230および232を収容する冷却区域252を画成している。素子250およびその反対側のものは、扁平パイプ300および302に直接的な熱連通下で取り付けられ、パイプを通って流れる流体を冷却する働きをする。熱電冷却素子は熱吸収モジュール610、および反対側の熱電素子に付随するその対応物(図示されず)と熱連通している。モジュール610は冷却剤流体の供給によって冷却される。冷却剤流体はリザーバー242からパイプ243を介してモジュール610の内腔へと流れ、そこから出てパイプ246および345を通って熱放散ユニット(送風機260として描写)へと流れ、リザーバー242に戻ることで再循環流に至る。冷却流体ポンプ248は再循環経路のどの箇所に設置してもよい。
【0046】
本発明の他の例示的な態様では、モジュール610は、再利用されない冷却流体の流れによって冷却される。
【0047】
図3は、入口ポート416と出口ポート418との間の液体流路を画成している例示的な導管系402の分解組立図である。これは複数の扁平パイプセグメント(この例示的な態様では6つ)300および302を含む。描写された態様において、パイプ302はそれらの内腔が連続した流路を形成するように直接接続されている。
【0048】
例示的な連結部要素410は流体入口ポート416および流体出口ポート418を含む。内部連結部要素412および外部連結部要素414で構成される連結器要素410は、パイプ300/302の内腔間で流れ連通を得るための1つの例示的な方式である。これらのポートのそれぞれはパイプの1つの内腔と流れ連通にある。内部連結部要素422および外部連結部要素424を有する連結器要素420が、パイプセグメントのもう一方の末端に提供される。パイプ300/302を通る流路は、ポート416から418までに、描写された6つのパイプ300および302ならびにキャップ410および420を通る連続した蛇行路である。ポート416および418とパイプセグメントの1つとの間、ならびにパイプセグメント間の流れ連通は、連結部要素410および420の内部の適切なチャネル配列物により提供される。
【0049】
本発明のいくつかの例示的な態様において、扁平パイプセグメント300、302は、幅と高さ(W:H)のアスペクト比が少なくとも2:1であることを特徴とする内腔を有する。任意で、Wを大きくすることで、ペルチェユニット250と接触する表面がより多くなる。図4はパイプ300および302を断面が実質的に矩形であるとして描写しているが、図4A、4B、5Aおよび5Bは、他の断面形状を用いても大きなW:H比を達成しうることを示している。
【0050】
本発明の異なる例示的な態様によれば、連結部要素の中のチャネル配列物により提供される、パイプの内腔を通る連続した流路を、異なるように構成することができる。
【0051】
図6A、6Bおよび6Cは、概略断面図として示された、6つのパイプの配列物を通る3つの例示的な流路を描写している。そこには3通りの例示的な流路が矢印によって自明な様式で描写されている。
【0052】
本発明のもう1つの態様について、図7〜14Cを参照しながら説明する。
【0053】
液体冷却システム500は温度制御モジュール502を含み、それは液体入口504および液体出口506を有し、2つの熱吸収モジュール510および512に挟まれており、すべての構成要素は1つにまとめられており、ネジ514によって1つにまとめられている。図8および9に見てとれるように、モジュール510および512のそれぞれとモジュール502との間には、2セットの冷却素子520および522が配置され、それぞれが、この例示的な態様では、電源モジュール(図示されず)に接続されたリード線526が付随している2つのペルチェ素子524を含む。2つのペルチェ素子を備えるセットは単なる一例に過ぎず、冷却素子のセットには、1つまたは任意の数の複数のペルチェ素子が含まれうることに留意すべきである。この特定の例ではペルチェ素子はすべて同じであるが、いくつかの他の態様において、ペルチェ素子が形状、寸法、さらにはそれらの冷却能力の点で互いに異なってもよいことが理解されるであろう。
【0054】
2セットの冷却素子は、それらの間に、熱交換チャンバー532を収容する冷却区域530を画成している。液体入口504および出口506は、チャンバー532の内部と流れ連通状態にある。
【0055】
チャンバー532は、図13A〜13Cに示されている、チャネル形成ブロック550と一体化している第1および第2の熱伝導性壁534および536ならびに側壁538および540の間に画成されており、これらについては以下でさらに説明する。
【0056】
チャネル形成ブロック550および2つの熱伝導性壁534、536は、図11の分解組立図に見てとれ、560と総称される共動留め部材によってスナップ式に取り付けられる2つのフレーム要素552および554によって1つにまとめられている。チャネル形成ブロック550は2つの周縁溝562および564を各側面に1つずつ有し、それらはOリング566、568を収容する。図12に見てとれるように、壁534、536とブロック550との間に流体密封係合が得られ、それにより、ブロック550の内部に閉鎖的な流体密封チャンバーが画成される。
【0057】
図13A、13Bおよび13Cに見てとれるように、ブロック550はその内面570および572の両方においてパターンが形成されている。熱伝導性壁534、536の間にひとたび嵌合されると、このパターン入り表面は三次元曲線流路を画成するが、それについては以下でさらに説明する。
【0058】
ブロック550は主仕切りパネル574を有し、それは本質的にチャンバーを、パネル574の両側においてパネルと熱伝導性壁534、536との間で2つの区画に区分けする。主仕切りパネル574から各々の壁534、536に向かって2つの補助パネル576および578が並んで延在し、このうち前者は側壁538から反対側の壁に向かって間隙を残すように延在し;後者は側壁間に完全に延在する。これらの補助パネルはブロック550の内面のパターンを形作って、U字形チャネルセグメント580を画成するが、それらはそれぞれ、ブロックの2つの面においてU字形チャネルセグメントの末端間に流れ連通を提供する開口部584をそれぞれが有する2つの末端582を備えている。
【0059】
そのようにして形成された三次元蛇行流路が、図13A〜13Cに矢印によって自明な様式で示されている。すなわち、見てとれるように、2つの区画内のそのようなセグメントが交互になるように、連続したU字形チャネルセグメントの流路が形成されている。
【0060】
入口504および出口506は、入口および出口から開口部584へと至る直線状のものである(U字形でない)2つの各々の末端チャネルセグメント586および588と流れ連通状態にある。
【0061】
ここで、本発明の1つの態様による熱吸収モジュール510(モジュール512と同一)を示している図14A〜14Cを参照する。このモジュールは、冷却剤流体入口592および冷却剤流体出口594を画成しているブロック590を含み、それはブロック590における凹み598および金属ブロック602のパネル600によって画成される内腔596と流れ連通状態にある。ブロック590は凹み598の周縁をなぞる溝604を有し、それはOリング606を収容し、これはパネル600と共動して内腔596を流体密封様式に封止する。金属ブロック602は典型的には銅でできており、図14A中のブロック矢印によって表されているように、内腔596を通って流れる冷却剤液体に対して広い熱交換表面を提供する、多数のスパイク610を含む。
【0062】
組み立てられると、図8に見てとれるように、パネル600はペルチェ素子520の外面に対して載せられ、それにより、生じた熱がスパイクに運ばれ、それは続いて、例えば、図1に示されたような種類の、冷凍ユニット内を流れる冷却剤流体によって取り除かれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに向かい合って配置された2セットの温度制御素子を含む、液体用の温度制御システムであって、該セットのそれぞれが1つまたは複数の温度制御素子を含み、この2セットがそれらの間に温度制御区域を画成しており;温度制御区域内の導管系が、1つまたは複数の第1のセグメントが前記2セットの素子の一方に近接しかつそれと熱伝導関係にあり、1つまたは複数の第2のセグメントが前記2セットの素子のもう一方に近接しかつそれと熱伝導関係にあるように構成されている液体流路を画成している、温度制御システム。
【請求項2】
以下を含む、液体がシステムを通って流れる際に液体の温度を調節するための温度制御システム:
1つまたは複数の温度制御素子の第2のセットと向かい合って配置された1つまたは複数の温度制御素子の第1のセットであって、該第1および第2のセットがそれらの間に温度制御区域を画成している、第1のセット;
温度制御区域内の液体流路を画成している導管系であって、該液体流路が、1つまたは複数の第1のセグメントが該第1のセットに近接しかつそれと熱伝導関係にあり、1つまたは複数の第2のセグメントが該2のセットに近接しかつそれと熱伝導関係にあるように構成されている、導管系。
【請求項3】
導管系が、液体流入から液体流出へ至る温度制御区域を通る単一の流路を画成している、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
導管系が、流入および流出をつなぐ2つまたはそれ以上の流路を画成している、請求項1または2記載のシステム。
【請求項5】
流路が蛇行形状を有する、請求項1〜4のいずれか一項記載のシステム。
【請求項6】
流路が第1および第2のセグメントを交互に有するように、導管系が構成されている、請求項1〜5のいずれか一項記載のシステム。
【請求項7】
温度制御素子が熱電冷却素子である、請求項6記載のシステム。
【請求項8】
熱電冷却素子が向かい合った低温面と高温面とを有する平面状ペルチェ素子であり、該素子の低温面が温度制御区域の内側を覆っている、請求項7記載のシステム。
【請求項9】
温度制御区域の片側に配置された1つまたは複数のペルチェ素子の第1のセット、および温度制御区域の反対側に配置された1つまたは複数のペルチェ素子の第2のセットを含む、請求項7または8記載のシステム。
【請求項10】
以下を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載のシステム:温度制御素子の第1のセットと熱伝導関係にあるよう配置された第1の熱伝導性壁と、温度制御素子の第2のセットと熱伝導関係にあるよう配置された第2の熱伝導性壁と、側壁との間に画成された熱交換チャンバー;液体入口および液体出口;入口から出口へ至る1つまたは複数の連続した流路を画成する前記チャンバー内に形成されたチャネルの配列物であって、該チャネルの1つまたは複数である第1の群が該第1の壁に近接しかつそれと熱伝導関係にあり、該チャネルの1つまたは複数である第2の群が該第2の壁に近接しかつそれと熱伝導関係にある、配列物。
【請求項11】
チャネルが、チャンバー内に配置されたパネルを区分けすることによって形成される、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
第1の群のチャネルの少なくともいくつかが、流路に沿って第2の群のチャネルと交互に配列される、請求項10または11記載のシステム。
【請求項13】
熱伝導性壁が本質的に互いに平行である、請求項10〜12のいずれか一項記載のシステム。
【請求項14】
熱交換チャンバーが、2つの熱伝導性壁の間に配置され、かつそれに対して本質的に平行に延在し、チャンバーを第1の壁に隣接する第1の区画と第2の壁に隣接する第2の区画とに区分けする主仕切りパネル(main divider panel)を含み;区画のそれぞれが、主仕切りパネルから熱伝導性壁へ延在し、かつ2つの末端を有する実質的にU字形のチャネルセグメントを画成する補助パネルによって区分けされ;主区分けパネルの中に、第1の区画内のU字形チャネルセグメントの末端を第2の区画内のU字形チャネルセグメントの末端と結びつけて、それによってU字形チャネルセグメントの流路を入口から出口まで形成させる開口部がある、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
主仕切りパネル、補助仕切りパネル、および側壁が、単一の材料のブロックからできている、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
それぞれが矩形断面を有し、かつ温度制御区域を通って延在する、熱伝導性材料でできた管状の導管セグメントの第1の群および第2の群を含むシステムであって、第1の群のセグメントが第1のセットの温度制御素子の近位にありかつそれと熱伝導関係にあり、第2の群が第2のセットの温度制御素子の近位にありかつそれと熱伝導関係にある、請求項1〜9のいずれか一項記載のシステム。
【請求項17】
導管セグメントが金属でできている、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
流路が第1および第2の群のセグメントを交互に含む、請求項16または17記載のシステム。
【請求項19】
管状のセグメントの末端が連結部要素に嵌合され、該連結部要素がその内部に、該セグメント同士を結びつける流路を画成している、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
温度制御素子が熱電素子である、請求項10〜19のいずれか一項記載のシステム。
【請求項21】
温度制御素子がペルチェ素子である、請求項20記載のシステム。
【請求項22】
熱電素子に、該素子によって生じた熱の輸送および放散のためのヒートシンク配列物が付随している、請求項20または21記載のシステム。
【請求項23】
ヒートシンク配列物が、1つまたは複数の熱電素子と熱伝導関係にある熱吸収モジュールと熱放散モジュールとの間に収められた冷却剤流体を含有する閉回路式の熱輸送導管系を含む、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか一項記載の液体冷却システムを含む、温度制御された液体を分注するためのデバイス。
【請求項25】
液体が飲料である、請求項24記載のデバイス。
【請求項26】
液体が飲料水である、請求項25記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2013−504731(P2013−504731A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528499(P2012−528499)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000740
【国際公開番号】WO2011/030339
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511094750)シュトラウス ウォーター リミテッド (2)
【Fターム(参考)】