説明

液体用紙容器

【課題】高価な金型を使用するインモールド射出成形法によらずに、低コストに供給することができる、紙の使用比率の高いチューブ型液体用紙容器を提案すること。
【解決手段】紙を主体とし、バリア層を有し、少なくとも最外層と最内層に熱可塑性樹脂層を有する積層体を成形してなるチューブ状の紙容器であって、本体胴部は積層体を矩形状に裁断した1枚のブランクスの両側端部を、紙の端面が内容物に接しないように折り込んで熱融着してなり、本体胴部の一端は、平らにつぶされ熱融着されて底シール部を形成し、本体胴部の他の一端は、紙の端面が内容物に接しないように、ドーナツ状の天面部の外周を皿状に成形した鍔部に折り込んで熱融着されて肩シール部を形成し、天面部の開口部には口栓のフランジ部が熱融着されて口栓シール部を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛乳、ジュース、清涼飲料水等の飲料や、練りからし、練りわさび、マヨネーズ、練乳等の高粘度食品、はみがき、白髪染め等のトイレタリー用品、液体洗剤、接着剤、研磨剤等の各種液体等を収納するためのチューブ状液体用紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
主に高粘度の液状物を収納するためのチューブ状の容器としては、アルミニウム等の金属板を深絞りして作る金属製チューブに替わって、プラスチック積層シートを用いたいわゆるラミネートチューブが一般的に使用されている。ラミネートチューブには、内容物の変質を防止するためにアルミニウム箔や蒸着バリアフィルムを用いたガスバリア性のチューブも提案されている。
【0003】
一方、近年地球環境への負荷を低減する観点から、再生産可能な資源である紙を用いた紙容器が注目されており、チューブ状容器に対しても紙を利用する提案が示されている。特許文献1に記載されたチューブ容器は、容器胴部を表裏面が熱可塑性樹脂層からなり、紙を積層した積層シートによる筒状成形体で形成したことを特徴とするチューブ容器である。
【0004】
特許文献1に記載されたチューブ容器は、容器胴部に口栓部を装着する方法として、紙を積層した積層シートによる筒状成形体を射出成形用の金型内のマンドレルに装着し、口頸部と該口頸部の下端部に連続する円錐台形状の肩部とを、ポリエチレン樹脂の射出成形によって成形すると同時に、円錐台形状の肩部の下端部と筒状成形体の上端部とを接合する、所謂インモールド射出成形法を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-137753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のインモールド射出成形法を用いたチューブ容器は、口栓部と胴部の繋ぎ目が目立たず、外観的には優れたものであるが、高価な専用の金型を必要とする上に、生産性においても満足のいくものではなく、しかも容器全体に占めるプラスチックの割合が大きくならざるを得ないため、胴部に紙を用いたとしても、紙を用いた意味が薄れてしまうという基本的な問題があった。
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、高価な金型を使用するインモールド射出成形法によらずに、低コストに供給することができ、紙の使用比率の高いチューブ型液体用紙容器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙を主体とし、バリア層を有し、少なくとも最外層と最内層に熱可塑性樹脂層を有する積層体を成形してなるチューブ状の紙容器であって、前記積層体からなる円筒状の本体胴部と、前記積層体からなるドーナツ状の天面部と、該天面部と熱融着するためのフランジ部を有する合成樹脂製の口栓と、該口栓に嵌合するキャップとを有し、前記本体胴部は前記積層体を矩形状に裁断した1枚のブランクスの両側端部を、紙の端面が内容物に接しないように折り込んで熱
融着し胴部シール部を形成してなり、該円筒状の本体胴部の一端は、平らにつぶされて熱融着されて底シール部を形成しており、本体胴部の他の一端は、紙の端面が内容物に接しないように、前記ドーナツ状の天面部の外周を皿状に成形した鍔部に折り込んで熱融着されて肩シール部を形成しており、前記天面部の開口部には前記口栓のフランジ部が熱融着されて口栓シール部を形成したことを特徴とする液体用紙容器である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、紙を主体とし、バリア層を有し、少なくとも最外層と最内層に熱可塑性樹脂層を有する積層体を成形してなるチューブ状の紙容器であって、前記積層体からなる円筒状の本体胴部と、該本体胴部を熱融着するための熱融着部を有する合成樹脂製の口栓と、該口栓に嵌合するキャップとを有し、前記本体胴部は前記積層体を矩形状に裁断した1枚のブランクスの両側端部を、紙の端面が内容物に接しないように折り込んで熱融着し胴部シール部を形成してなり、該円筒状の本体胴部の一端は、平らにつぶされて熱融着されて底シール部を形成しており、本体胴部の他の一端は、前記口栓の熱融着部に熱融着されて口栓シール部を形成したことを特徴とする液体用紙容器である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記本体胴部が、前記積層体からなる1枚のブランクスの両側端部の裏面が、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた1枚のテープ状の接続部材によって接続されてなり、該接続部材は内容物を目視可能な窓部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記本体胴部が、穿孔された窓孔を有し、該窓孔の内側から、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた窓部材を熱融着して、内容物を目視可能な窓部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る液体用紙容器は、紙を主体とし、バリア層を有し、少なくとも最外層と最内層に熱可塑性樹脂層を有する積層体を成形してなるチューブ状の紙容器であり、総重量の50%以上を紙とすることも可能である。従って地球環境に与える負荷が小さくて済み、また使用後の廃棄に当たっては、紙容器として扱われるため、法制度上有利である。
【0013】
本発明に係る液体用紙容器は、チューブ状の形状であるため、押しつぶして内容物を絞り出すことが可能であり、従って低粘度の液体から高粘度の液体まで幅広い内容物に対して使用することができる。
【0014】
また、バリア層を有する積層体を用いており、しかも紙の端面が一切内容液に接触しない構造であるため、充填に当って適切な滅菌処理を施すことにより常温でも長期保存が可能な包装体とすることができる。
【0015】
形状がチューブ状であるため、一般的なゲーベルトップ型の角形紙容器と比較して、手に持ちやすく、また手から滑り落ちにくい。特に口栓に直接口をつけて飲用するような場合の飲みやすさにおいて、非常に優れている。
【0016】
請求項2に記載した実施態様においては、口栓部が熱融着部を有し、本体胴部を直接口栓部の熱融着部に融着する構造であるため、天面部が不要となる。全体の構造が単純になるため、すっきりした外観の容器とすることができる。
【0017】
本体胴部が、積層体からなる1枚のブランクスの両側端の裏面が、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた1枚のテープ状の接続部材によって接続されてなり、該接続部材が内容物を目視可能な窓部を形成するようにした場合には、容器の外から
内容物の有無または残量を目視で確認することができる。
【0018】
本体胴部が、穿孔された窓孔を有し、該窓孔の内側から、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた窓部材を熱融着して、内容物を目視可能な窓部を形成した場合においても、同様にして容器の外から内容物の有無や残量を目視で確認することができる。
【0019】
キャップの形状を、頭頂部が平坦であるような形状とすることにより、容器を倒立させて立てることが可能となり、高粘度の液体を収納した場合などに、保存中に内容物が口栓方向に下降するので、容器の使い勝手が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る液体用紙容器の一実施態様を示した模式図である。
【図2】図2(1)は、図1のA−A’断面を示した断面模式図であり、図2(2)は、図1のB−B’断面を示した断面模式図である。
【図3】図3(1)は、図1に示した液体用紙容器の本体胴部ブランクスを示した模式図である。図3(2)は本体胴部の、図3(3)は天面部の、図3(4)は口栓のそれぞれ斜視図である。
【図4】図4は、本発明に係る液体用紙容器の他の実施態様を示した模式図である。
【図5】図5(1)は、図4のC−C’断面を示した断面模式図である。図5(2)は、図4のD−D’断面を示した断面模式図である。
【図6】図6(1)は、図4に示した液体用紙容器の本体胴部ブランクスを示した模式図である。図6(2)は本体胴部の、図6(3)は天面部の、図6(4)は口栓のそれぞれ斜視図である。
【図7】図7は、本発明に係る液体用紙容器の他の実施態様を示した模式図である。
【図8】図8(1)は、図7のE−E’断面を示した断面模式図である。図8(2)は、図7のF−F’断面を示した断面模式図である。
【図9】図9(1)は、図7に示した液体用紙容器の本体胴部ブランクスを示した模式図である。図9(2)は本体胴部の、図9(3)は口栓のそれぞれ斜視図である。
【図10】図10は、本発明に係る液体用紙容器の他の実施態様を示した模式図である。
【図11】図11(1)は、図10のG−G’断面を示した断面模式図である。図11(2)は、図10のH−H’断面を示した断面模式図である。
【図12】図12は、本発明に係る液体用紙容器に用いる積層体の断面構成の一例を示した断面説明図である。
【図13】図13は、本発明に係る液体用紙容器に用いる接続部材および窓部材の断面構成の一例を示した断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に従って、本発明に係る液体用紙容器について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る液体用紙容器1の一実施態様を示した模式図である。図2(1)は、図1のA−A’断面を示した断面模式図であり、図2(2)は、図1のB−B’断面を示した断面模式図である。また図3(1)は、図1に示した液体用紙容器1の本体胴部ブランクス16を示した模式図であり、図3(2)は本体胴部2の、図3(3)は天面部5の、図3(4)は口栓7のそれぞれ斜視図である。
【0022】
本発明に係る液体用紙容器1は、紙を主体とし、バリア層を有し、少なくとも最外層と最内層に熱可塑性樹脂層を有する積層体20を成形してなるチューブ状の紙容器である。図1〜3に示した実施態様においては、積層体20からなる円筒状の本体胴部2と、積層体20からなるドーナツ状の天面部5と、天面部5と熱融着するためのフランジ部7aを有する合成樹脂製の口栓7と、口栓7に嵌合するキャップ8とを有している。
【0023】
本体胴部2は積層体20を矩形状に裁断した1枚のブランクス16の両側端部17a、17bを、図2(1)に示したように紙の端面が内容物に接しないように折り込んで熱融着し胴部シール部11を形成してなり、円筒状の本体胴部2の一端は、平らにつぶされて熱融着されて底シール部12を形成しており、本体胴部2の他の一端は、紙の端面が内容物に接しないように、ドーナツ状の天面部5の外周を皿状に成形した鍔部5bに折り込んで熱融着されて肩シール部13を形成しており、天面部5の開口部5aには口栓7のフランジ部7aが熱融着されて口栓シール部14を形成している。
【0024】
本発明に係る液体容器1は、紙を主体とし、バリア層を有する積層体を用いており、しかも紙の端面が一切内容物に接触しないような構造になっているので、内容物の充填に際して、適当な滅菌処理を行うことにより、常温でも長期保存が可能な包装体とすることができる。
【0025】
図1に示した液体用紙容器1を作成する手順としては、まず積層体20から本体胴部ブランクス16を断裁し、筒状に丸く成形し、両側端部17a、17bを折り曲げて熱融着し胴部シール部11を形成して円筒状の本体胴部2を作成する。
【0026】
一方、積層体20からドーナツ状に打ち抜いた天面部5の外周を皿状に成形して鍔部5bを成形し、天面部5の開口部5aに口栓7を取り付ける。口栓7は、インジェクション成型法によって予め成形しておく。口栓7のフランジ部7aと天面部5とを超音波シール法によって熱融着し、口栓シール部14を形成する。この時天面部5の、容器の内側となる側からフランジ部7aを取り付けることによって、天面部開口部5aの端面が容器の外側になり、紙の端面が内容物に接触することがない。
【0027】
次に、口栓7が熱融着された天面部5を本体胴部2に挿入し、本体胴部2の端部を天面部5の鍔部5bを巻き込むように成形し、熱融着して肩シール部13を形成する。
【0028】
最後に本体胴部2の他の端部を平らにつぶして熱シールし、底シール部12を形成することにより、液体用紙容器1が完成する。底シール部12は、単に押しつぶした状態でもよいが、図2(2)に示したように、180°折り返すことにより、容器の外観や、容器を手に持った時の感触が良くなる。
【0029】
このように容器の作成に当たっては、通常の超音波シール法等による熱融着で成形することができ、インモールド成形法のように特殊な従って高価な金型を使用する必要がないことが本発明に係る液体用紙容器の最大の特徴である。
【0030】
図4は、本発明に係る液体用紙容器1の他の実施態様を示した模式図である。
図5(1)は、図4のC−C’断面を示した断面模式図である。図5(2)は、図4のD−D’断面を示した断面模式図である。また図6(1)は、図4に示した液体用紙容器1の本体胴部ブランクス16を示した模式図であり、図6(2)は本体胴部2の、図6(3)は天面部5の、図6(4)は口栓7のそれぞれ斜視図である。
【0031】
図4〜6に示した実施態様においては、本体胴部2が、積層体20からなる1枚のブランクス16の両側端部17a、17bの裏面が、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた1枚のテープ状の接続部材3によって接続されてなり、接続部材3は内容物を目視可能な窓部6を形成したことを特徴とする。
【0032】
図4〜6に示した実施態様においては、透明な窓部6によって、内容物の有無や残量を目視で確認することができる。従って、開封時に内容物を使い切ってしまうのではなく、開封後もある一定期間継続して使用するような用途の場合には好都合である。
【0033】
図4に示した液体用紙容器1を作成する手順としては、図6(1)に示したように、積層体20から切り出した本体胴部ブランクス16の側端部17aの裏面に、接続部材3の一側端を熱シールする。次に図6(2)に示したように、本体胴部ブランクス16を丸めてもう一方の側端部17bと接続部材3のもう一方の側端部を熱シールし、円筒状の本体胴部2を形成する。この時、接続部材3の両側端は、胴部シール部11を形成し、中央部が窓部6となる。
【0034】
一方、積層体20からドーナツ状に打ち抜いた天面部5の外周を皿状に成形して鍔部5bを成形し、天面部5の開口部5aに口栓7を取り付ける。口栓7のフランジ部7aと天面部5とを超音波シール法等によって熱融着し、口栓シール部14を形成する。
【0035】
次に、口栓7が熱融着された天面部5を本体胴部2に挿入し、本体胴部2の端部を天面部5の鍔部5bを巻き込むように成形し、熱融着して肩シール部13を形成する。
【0036】
最後に本体胴部2の他の端部を平らにつぶして熱シールし、底シール部12を形成することにより、液体用紙容器1が完成する。
【0037】
図7は、本発明に係る液体用紙容器1の他の実施態様を示した模式図である。
図8(1)は、図7のE−E’断面を示した断面模式図である。図8(2)は、図7のF−F’断面を示した断面模式図である。また図9(1)は、図7に示した液体用紙容器1の本体胴部ブランクス16を示した模式図であり、図9(2)は本体胴部2の、図9(3)は口栓7のそれぞれ斜視図である。
【0038】
図7〜9に示した実施態様においては、積層体20からなる円筒状の本体胴部2と、本体胴部2を熱融着するための熱融着部7bを有する合成樹脂製の口栓7と、口栓7に嵌合するキャップ8とを有し、本体胴部2は積層体20を矩形状に裁断した1枚のブランクス16の両側端部17a、17bを、紙の端面が内容物に接しないように折り込んで熱融着し胴部シール部11を形成してなり、円筒状の本体胴部2の一端は、平らにつぶされて熱融着されて底シール部12を形成しており、本体胴部2の他の一端は、口栓7の熱融着部7bに熱融着されて口栓シール部14を形成したことを特徴とする。
【0039】
この実施態様においては、天面部が存在せず、本体胴部2の一端が口栓7の熱融着部7bに直接熱シールされている。このため口栓まわりの構造が単純であり、外観的にすっきりした印象を与えるものとなる。
【0040】
図7〜9に示した実施態様においては、さらに本体胴部2は、穿孔された窓孔6aを有し、窓孔6aの内側から、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた窓部材4を熱融着して、内容物を目視可能な窓部6を形成したことを特徴とする。
窓孔6aの位置や形状は任意であるので、窓部6の位置や形状もまた任意に設計できる。また本体胴部2の上端や下端を避けた位置に設けることができるので、本体胴部2の端部の処理に当たって、特別の配慮をする必要がなく、密封性も安定するという利点がある。
【0041】
図7〜9に示した液体用紙容器1の作成方法については、本体胴部ブランクス16に窓孔6aを穿孔した後、窓孔6aに窓部材4を熱シールする。次に、本体胴部ブランクス16を筒状に丸く成形し、両側端部17a、17bを折り曲げて熱融着し胴部シール部11を形成して円筒状の本体胴部2を作成する。
【0042】
円筒状になった本体胴部2の一方の端部に口栓7を挿入し、口栓の熱融着部7bと本体胴部端部とを超音波融着法等により熱融着して、口栓シール部14を形成する。最後に本体胴部2の他の端部を平らにつぶして熱融着し、底シール部12を形成することにより、液体用紙容器1が完成する。
【0043】
なお窓部材4については、前記接続部材3と同様の構成でよい。これについては、後に詳しく述べる。
【0044】
図10は、本発明に係る液体用紙容器1の他の実施態様を示した模式図である。
図11(1)は、図10のG−G’断面を示した断面模式図であり、図11(2)は、図10のH−H’断面を示した断面模式図である。
【0045】
図10〜11に示した実施態様は、図7〜9に示した実施態様から窓部6を取り除いた構成となっているので、細かい説明は省略する。
【0046】
図12は、本発明に係る液体用紙容器1に用いる積層体20の断面構成の一例を示した断面説明図である。また図13は、本発明に係る液体用紙容器1に用いる接続部材3および窓部材4の断面構成の一例を示した断面説明図である。
【0047】
図12の例では、紙層21の表面側全面に熱可塑性樹脂層である表面樹脂層22が設けられており、表面樹脂層22の表面には、印刷によるインキ層23が設けられている。インキ層23は、絵柄に応じて全面であったり、部分的であったりする。紙層21の裏面側には、接着層24を介してバリア層25が全面に亘って設けられ、バリア層25の裏面側には、接着剤層26を介して熱可塑性樹脂層であるシーラント層27が同様に全面に亘って設けられている。
【0048】
紙層21としては、坪量200g/m〜400g/m、密度0.6g/cm〜1.1g/cm程度の紙パック原紙等を使用することができる。
【0049】
表面樹脂層22は、熱溶融させたポリエチレン樹脂を紙層21の表面に押出ラミネート加工によって形成する。印刷時にインキ層23の密着性を向上させるために、表面樹脂層22の表面には、コロナ処理を施すことが好ましい。
【0050】
バリア層25は、必要とされるガスバリア性の程度によって選択される。高度のバリア性を要求されない場合には、例えばポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)樹脂フィルム単体でもよい場合がある。通常はアルミナ蒸着やシリカ蒸着、アルミ蒸着等を施したPETフィルム等のガスバリアフィルムを使用する。蒸着層の厚さは、5〜100nmであり、PETフィルムの厚さは、6〜25μmである。蒸着面は、シーラント層2
7側を向いていても、紙層21側を向いていても良い。また蒸着PETフィルムではなく、アルミニウム箔とPETフィルムをドライラミネートしたフィルムでもよい。この場合のアルミニウム箔の厚さは5〜15μm、PETフィルムの厚さは、6〜25μmである。
【0051】
シーラント層27としては、熱可塑性樹脂の単層若しくは多層フィルムが使用される。シーラント層27の材質としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0052】
紙層21とバリア層25を貼り合わせるための接着層24としては、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エステルの三元共重合体、エチレン−アクリル酸−メタクリル酸エステルの三元共重合体、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステルの三元共重合体、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸エステルの三元共重合体等が好ましく使用できる。この場合の接着層24の厚さは、10〜60μmであり、接着強度を向上させるために、紙層21やバリア層25の表面にコロナ処理やオゾン処理を施しても良い。
【0053】
バリア層25とシーラント層27を貼り合わせるための接着剤層26としては、公知のドライラミネート用接着剤やノンソルラミネート用接着剤を使用することができる。塗布量としては、0.5〜5.0g/m程度である。ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂による押出しラミネート加工によって貼り合わせることもできる。
【0054】
図13は、接続部材3および窓部材4の断面構成の一例を示した断面説明図である。接続部材3および窓部材4としては、透明バリアフィルム28の表裏面に透明熱可塑性樹脂層29を設けたものを使用することができる。透明バリアフィルム28としては、バリア層25に用いたアルミナ蒸着やシリカ蒸着PETを用いることができる他、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレートフィルム等のガスバリア性フィルムや、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層を施したPETフィルム等が使用できる。
【0055】
透明熱可塑性樹脂層29としては、積層体20のシーラント層27、表面樹脂層22のいずれとも熱融着可能な材質であることが必要であり、シーラント層27に用いられる材質が同様に用いられる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0056】
透明バリアフィルム28と透明熱可塑性樹脂層29の貼り合わせに用いる接着剤層26は、積層体20における接着剤層26と同様のドライラミネート用接着剤やノンソルラミネート用接着剤を使用することができる。
【0057】
接続部材3および窓部材4は、通常広巾で連続的に作成した、元となる積層シートをスリット加工によってテープ状に加工して使用され、最終的に所定の長さに切断される。
以下実施例に基づいて本発明に係る紙容器についてさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0058】
下記構成の積層体を用いて、図4〜6に示したような構造の容量1リットルのチューブ状の液体用紙容器を試作した。
(積層体の構成)
紙層・・・・・・坪量320g/mの紙パック原紙
表面樹脂層・・・PE樹脂、厚さ18μm
接着層・・・・・EMAA(エチレンメタクリル酸共重合体)、厚さ30μm
バリア層・・・・PET12μm+シリカ蒸着(厚さ30nm)
接着剤・・・・・ドライラミネート用接着剤(ウレタン系)、塗布量3g/m
シーラント層・・LLDPE、厚さ55μm
(口栓の材質) PE樹脂
(接続部材の構成)
透明熱可塑性樹脂層・・・PE樹脂、厚さ20μm
接着剤・・・・・・・・・ドライラミネート用接着剤
バリア層・・・・・・・・PET12μm+シリカ蒸着(厚さ30nm)
透明熱可塑性樹脂層・・・PE樹脂、厚さ20μm
<比較例>
【0059】
従来の同じ容量のゲーベルトップ型口栓付紙容器を比較例として、比較試験を行った。使用した積層体の構成は、実施例1に用いたものと同じである。
(評価項目)
ラミネート強度(口栓部):天面部と口栓フランジ部との熱融着強度(N/15mm)
ラミネート強度(接続部材):本体胴部と接続部材との熱融着強度(N/15mm)
落下試験:80cmの高さから落下させ、液漏れしないかどうかを確認
輸送試験:5000km相当のトラック輸送試験
持ちやすさ:片手での持ちやすさ
注ぎやすさ:片手での注ぎやすさ
搾りやすさ:内容物の搾り出しやすさ
【0060】
【表1】

【0061】
表1の結果のように、本発明に係る紙容器は、従来のゲーベルトップ型紙容器に比較して、容器としての基本的な性能を維持したまま、持ちやすさ、注ぎやすさ、搾りやすさ等の機能性が向上し、さらに窓部から内容物の量を確認することができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・液体用紙容器
2・・・本体胴部
3・・・接続部材
4・・・窓部材
5・・・天面部
5a・・・天面部開口部
5b・・・鍔部
6・・・窓部
6a・・・窓孔
7・・・口栓
7a・・・フランジ部
7b・・・熱融着部
8・・・キャップ
11・・・胴部シール部
12・・・底シール部
13・・・肩シール部
14・・・口栓シール部
16・・・本体胴部ブランクス
17a、17b・・・本体胴部ブランクス側端部
20・・・積層体
21・・・紙層
22・・・表面樹脂層
23・・・インキ層
24・・・接着層
25・・・バリア層
26・・・接着剤層
27・・・シーラント層
28・・・透明バリアフィルム
29・・・透明熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とし、バリア層を有し、少なくとも最外層と最内層に熱可塑性樹脂層を有する積層体を成形してなるチューブ状の紙容器であって、前記積層体からなる円筒状の本体胴部と、前記積層体からなるドーナツ状の天面部と、該天面部と熱融着するためのフランジ部を有する合成樹脂製の口栓と、該口栓に嵌合するキャップとを有し、前記本体胴部は前記積層体を矩形状に裁断した1枚のブランクスの両側端部を、紙の端面が内容物に接しないように折り込んで熱融着し胴部シール部を形成してなり、該円筒状の本体胴部の一端は、平らにつぶされて熱融着されて底シール部を形成しており、本体胴部の他の一端は、紙の端面が内容物に接しないように、前記ドーナツ状の天面部の外周を皿状に成形した鍔部に折り込んで熱融着されて肩シール部を形成しており、前記天面部の開口部には前記口栓のフランジ部が熱融着されて口栓シール部を形成したことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項2】
紙を主体とし、バリア層を有し、少なくとも最外層と最内層に熱可塑性樹脂層を有する積層体を成形してなるチューブ状の紙容器であって、前記積層体からなる円筒状の本体胴部と、該本体胴部を熱融着するための熱融着部を有する合成樹脂製の口栓と、該口栓に嵌合するキャップとを有し、前記本体胴部は前記積層体を矩形状に裁断した1枚のブランクスの両側端部を、紙の端面が内容物に接しないように折り込んで熱融着し胴部シール部を形成してなり、該円筒状の本体胴部の一端は、平らにつぶされて熱融着されて底シール部を形成しており、本体胴部の他の一端は、前記口栓の熱融着部に熱融着されて口栓シール部を形成したことを特徴とする液体用紙容器。
【請求項3】
前記本体胴部は、前記積層体からなる1枚のブランクスの両側端部の裏面が、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた1枚のテープ状の接続部材によって接続されてなり、該接続部材は内容物を目視可能な窓部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器。
【請求項4】
前記本体胴部は、穿孔された窓孔を有し、該窓孔の内側から、透明バリアフィルムの表裏面に透明熱可塑性樹脂層を設けた窓部材を熱融着して、内容物を目視可能な窓部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の液体用紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−25471(P2012−25471A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168112(P2010−168112)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】