説明

液化燃料ガス気化装置

【課題】低廉化を図りながら、運転する気化部の切り換え時における供給燃料ガスの熱量変動を抑制し得る液化燃料ガス気化装置を提供する。
【解決手段】複数系統の気化部Vの夫々に、運転状態切換手段Cと、気化部Vに運転状態における運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させる少量通流手段Rとが設けられ、複数系統の気化部Vのうちの一部が運転状態となり残りが非運転状態となる形態で、複数系統の気化部V夫々を運転状態と非運転状態とに切り換えるべく、複数系統の運転状態切換手段Cの作動を制御する制御手段2が設けられ、その制御手段2が、運転状態切換手段Cにより気化部Vを運転状態に切り換える前に、当該気化部Vの少量通流手段Rの作動状態を維持し又は当該気化部Vの少量通流手段Rを作動させて、当該気化部Vに運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化燃料ガス供給路を通して供給される液化燃料ガスを気化器にて気化して燃料ガスを燃料ガス送出路に送出する気化部が複数系統設けられた液化燃料ガス気化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる液化燃料ガス気化装置は、例えば、燃料ガスの導管が敷設されていない地域の需要家に燃料ガスを供給するいわゆるサテライト基地にて使用されるものであり、LNG(液化天然ガス)等の液化燃料ガスを液化燃料ガス貯槽にて貯留しておき、その液化燃料ガス貯槽の液化燃料ガスを上述のような気化部にて気化して、天然ガス等の燃料ガスを需要家に供給するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1には記載されていないが、このような液化燃料ガス気化装置では、燃料ガスの供給能力を所望の能力以上に維持できるようにするためや、メンテナンスや故障等、気化部を停止させなくてはならない事態が発生しても需要家に継続して燃料ガスを供給できるようにするために、一般に、上述のような気化部が複数系統設けられている。
そして、複数系統の気化部のうちの一部の気化部を運転して、気化部に液化燃料ガスを通流させて気化器にて気化させることにより、需要家に燃料ガスを供給するようにし、残りの気化部は、気化部に液化燃料ガスを通流させないようにして待機させておき、燃料ガスの供給能力維持、メンテナンスや故障等により、運転中の気化部を停止させる必要が生じたときには、運転中の気化部を停止させるのに合わせて待機中の気化部を運転するようにして、運転する気化部を切り換えることにより、中断することなく需要家に燃料ガスを供給できるようになっている。
【0004】
ところで、運転中の気化部を停止させて待機させると、液化燃料ガス供給路や気化器に液化燃料ガスが残留する。そして、液化燃料ガスには、沸点が異なる複数の成分からなる組成のものがあり、そのような液化燃料ガスでは沸点の低い成分ほど気化し易いので、気化部の待機中に、液化燃料ガス供給路や気化器に残留している液化燃料ガスの組成が変動する場合がある。
例えば、LNGの組成は、メタン(例えば90.38mol%)、エタン(例えば4.55mol%)、プロパン(例えば3.31mol%)、ブタン(例えば1.67mol%)等を含む組成であり、待機中は、沸点が低いメタン(沸点:−161.5℃)やエタン(沸点:−89℃)のいわゆる軽質成分が気化し易く、沸点が高いプロパン(沸点:−42.1度)やブタン(沸点:−0.5℃)のいわゆる重質成分が気化し難いので、待機中に、液化燃料ガス供給路や気化器に残留している液化燃料ガスの組成が重質成分の組成比が大きい組成に変動する。
【0005】
そして、待機中の気化部を運転状態に切り換える起動時に、待機中に残留していて組成が変動している液化燃料ガスが先に気化されて需要家に供給されると、需要家に供給される燃料ガスの熱量が変動することになるので、このような熱量変動を抑制する対策を講じる必要がある。
【0006】
そこで、特許文献1に記載の液化燃料ガス気化装置では、液化燃料ガス供給路に退避用配管を分岐接続し、その退避用配管に、液化燃料ガスを気化器から退避させて貯留する退避用容器を設け、並びに、液化燃料ガス供給路を通る液化燃料ガスの通流経路を、気化器に至る経路と退避用配管に至る経路とに切り換える経路切換手段を設けていた。
そして、気化部の起動時に、経路切換手段により通流経路を切り換えて、液化燃料ガス供給路に残留している液化燃料ガスを液化燃料ガス貯槽からの新たな液化燃料ガスにより退避用配管を通して退避用容器に押し込んで退避させることにより、液化燃料ガス供給路の残留分を液化燃料ガス貯槽からの液化燃料ガスに置換して、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−326048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の液化燃料ガス気化装置では、運転する気化部を切り換える際、待機中の気化部を起動するときは、液化燃料ガス供給路に残留している液化燃料ガスが退避用容器に退避されるだけであって、気化器に残留していた液化燃料ガスは、新たに液化燃料ガス供給路に供給される液化燃料ガスよりも先に気化されて燃料ガス送出管に送出される。従って、待機中に気化器に残留していた液化燃料ガスの組成が変動していると、需要家に供給される燃料ガスの熱量が変動することになるので、その熱量変動を抑制する上で改善の余地があった。
しかも、液化燃料ガス供給路に退避用配管を分岐接続して、その退避用配管に退避用容器及び経路切換手段を設ける構成であるので、構成が複雑化し、液化燃料ガス気化装置の価格が高くなるという問題もあった。
【0009】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低廉化を図りながら、運転する気化部の切り換え時における供給燃料ガスの熱量変動を抑制し得る液化燃料ガス気化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液化燃料ガス気化装置は、液化燃料ガス供給路を通して供給される液化燃料ガスを気化器にて気化して燃料ガスを燃料ガス送出路に送出する気化部が複数系統設けられたものであって、
第1特徴構成は、前記複数系統の気化部の夫々に、
前記気化部に運転用流量の液化燃料ガスを通流させる運転状態と非運転状態とに前記気化部の運転状態を切り換え自在な運転状態切換手段と、
前記気化部に前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させる少量通流手段とが設けられ、
前記複数系統の気化部のうちの一部が前記運転状態となり残りが前記非運転状態となる形態で、前記複数系統の気化部夫々を前記運転状態と前記非運転状態とに切り換えるべく、前記複数系統の運転状態切換手段の作動を制御する制御手段が設けられ、
その制御手段が、前記運転状態切換手段により前記気化部を前記運転状態に切り換える前に、当該気化部の少量通流手段の作動状態を維持し又は当該気化部の少量通流手段を作動させて、当該気化部に前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように構成されている点にある。
【0011】
即ち、複数系統の運転状態切換手段の作動が制御されて、複数系統の気化部のうちの一部が運転状態となり残りが非運転状態となる形態で、複数系統の気化部夫々が運転状態と非運転状態とに切り換えられる。
そして、運転状態切換手段により気化部が運転状態に切り換えられる前に、当該気化部の少量通流手段の作動状態が維持される又は当該気化部の少量通流手段が作動されるので、当該気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器を通って運転用流量で液化燃料ガスが通流する前に、当該気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器を通って運転用流量よりも少量の液化燃料ガスが通流する。
【0012】
つまり、例えば、気化部が非運転状態となっている間中、当該気化部の少量通流手段の作動状態が維持される又は当該気化部の少量通流手段が作動されるようにして、気化部が非運転状態となっている間も、当該気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器を通して運転用流量よりも少ない少流量で液化燃料ガスを通流させるようにする。このようにすると、非運転状態の間に液化燃料ガス供給路及び気化器に存在している液化燃料ガスの組成変動を抑制することができるので、非運転状態の気化部を運転状態に切り換えるときに、既に液化燃料ガス供給路及び気化器に存在している液化燃料ガスが、新たに液化燃料ガス供給路に供給される液化燃料ガスによって押し出されて運転用流量で気化器を通流するにしても、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制することができる。
【0013】
あるいは、運転する気化部を切り換えるときは、非運転状態の気化部の少量通流手段を作動させた後に、非運転状態の気化部を運転状態に切り換えると共に運転状態の気化部を非運転状態に切り換えるようにする。このようにすると、少量通流手段が作動している間、非運転状態の気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器に残留していた液化燃料ガスが運転用流量よりも少ない流量で気化器を通流して気化されて、運転状態の気化部の気化器を液化燃料ガスが運転用流量で通流して気化された燃料ガスに混合されるので、非運転状態の気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器に残留していた液化燃料ガスの組成が変動していたとしても、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制することができる。
【0014】
しかも、少量通流手段は、運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを液化燃料ガス供給路及び気化器を通して気化部に通流させるものであり、液化燃料ガスを気化器から退避させて通流させるような通流経路を形成するものではなく、又、退避させた液化燃料ガスを一時貯留するような構成も不要であるので、構成が複雑化するのを回避することができる。
従って、低廉化を図りながら、運転する気化部の切り換え時における供給燃料ガスの熱量変動を抑制し得る液化燃料ガス気化装置を提供することができるようになった。
【0015】
第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記運転状態切換手段が、前記気化部を前記非運転状態に切り換えた状態では、前記気化部に前記運転用流量よりも少量の待機用流量の液化燃料ガスを通流させるように構成され、
前記運転状態切換手段が前記少量通流手段として作動するように構成されている点にある。
【0016】
即ち、運転状態切換手段が非運転状態に切り換えられると、少量通流手段の作動状態が維持される又は少量通流手段が作動することとなって、気化部が非運転状態となっている間中、当該気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器を通して運転用流量よりも少ない流量で液化燃料ガスが通流しているので、非運転状態の間に液化燃料ガス供給路及び気化器に存在している液化燃料ガスの組成変動を抑制することができる。
従って、非運転状態の間に液化燃料ガス供給路及び気化器に存在している液化燃料ガスの組成変動そのものを抑制することができるので、非運転状態の気化部を運転状態に切り換えるときに、既に液化燃料ガス供給路及び気化器に存在している液化燃料ガスが運転用流量で気化器を通流するにしても、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を的確に抑制することができる。
【0017】
第3特徴構成は、上記第2特徴構成に加えて、
前記気化部の前記液化燃料ガス供給路及び前記燃料ガス送出路のいずれかに、開閉弁が設けられ、
前記開閉弁を迂回する流路を形成するように前記液化燃料ガス供給路又は前記燃料ガス送出路に接続され、且つ、前記開閉弁が閉弁された状態で前記気化部に前記待機用流量の液化燃料ガスを通流させる通流制限手段が設けられ、
前記開閉弁が開弁された状態で、その開閉弁と前記通流制限手段とにより、前記気化部に前記運転用流量の液化燃料ガスを通流させるように構成され、
前記制御手段が、前記開閉弁を開弁することにより前記気化部を前記運転状態に切り換え、前記開閉弁を閉弁することにより前記気化部を前記非運転状態に切り換えるように構成され、
前記運転状態切換手段が、前記開閉弁及び前記通流制限手段にて構成されている点にある。
【0018】
即ち、開閉弁が開弁状態のとき及び閉弁状態のときのいずれにおいても、通流制限手段を通って運転用流量よりも少量の待機用流量の液化燃料ガスが通流して、少量通流手段が作動状態となっている。
そして、開閉弁が開弁されると、開閉弁と通流制限手段とを通して気化部に運転用流量の液化燃料ガスが通流されるようになって、気化部が運転状態に切り換えられる。
又、開閉弁が閉弁されると、開閉弁を通る液化燃料ガスの通流が停止されるので、通流制限手段を通して気化部に待機用流量の液化燃料ガスが通流されるようになって、気化部が非運転状態に切り換えられる、即ち、少量通流手段の作動状態が維持されることになる。
つまり、例えば、開閉弁を迂回するように、液化燃料ガス供給路又は燃料ガス送出路に迂回路を接続して、その迂回路にオリフィス等の通流量を絞る手段を設けるだけの構成で、通流制限手段を構成することができるので、アクチュエータを備えた高価な開閉弁等を用いることなく、通流制限手段を低コストで構成することができる。
そして、少量通流手段として作動する運転状態切換手段をこのような通流制限手段を用いて構成することにより、少量通流手段を設けるためのコストを低減することができる。
従って、運転する気化部の切り換え時における供給燃料ガスの熱量変動を抑制し得る液化燃料ガス気化装置をより一層低廉化することができるようになった。
【0019】
第4特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、
前記運転状態切換手段が、前記気化部を前記非運転状態に切り換えた状態では、前記気化部を通しての液化燃料ガスの通流を停止するように構成され、
前記制御手段が、前記運転状態切換手段により非運転状態の気化部を前記運転状態に切り換える前に、当該気化部の少量通流手段を作動させ、その作動後、設定時間が経過すると、当該気化部を前記運転状態切換手段により前記運転状態に切り換え、その切り換えと同時に又はその切り換え後に当該気化部を再び前記非運転状態に切り換える前に、当該気化部の少量通流手段の作動を停止するように構成されている点にある。
【0020】
即ち、運転する気化部が切り換えられるときは、非運転状態の気化部の少量通流手段が作動された後、設定時間が経過すると、非運転状態の気化部が運転状態に切り換えられると共に、運転状態の気化部が非運転状態に切り換えられ、そのように作動された少量通流手段は、それが設けられている気化部が運転状態に切り換えられるのと同時、又は、運転状態に切り換えられた後に再び非運転状態に切り換える前に、作動が停止される。
ちなみに、前記設定時間は、例えば、液化燃料ガス供給路及び気化器に残留していた液化燃料ガスの全量を運転用流量よりも少量の流量にて気化部を通流させて気化させた後、燃料ガス送出路に送出するのに要する時間以上に設定されることになる。
【0021】
つまり、非運転状態の気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器に残留していた液化燃料ガスは、運転用流量よりも少ない流量で気化器を通流して気化されて、運転状態の気化部の気化器を運転用流量で通流して気化された燃料ガスに混合されるので、非運転状態の気化部の液化燃料ガス供給路及び気化器に残留していた液化燃料ガスの組成が変動していたとしても、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制することができる。
そして、気化部が非運転状態に切り換えられると、その気化部を通しての液化燃料ガスの通流が停止されることになるので、非運転状態に切り換えた気化部の修理やメンテナンスを容易に行えるようにすることができる。
【0022】
第5特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、
前記気化部の前記液化燃料ガス供給路及び前記燃料ガス送出路のいずれかに、閉弁状態への切り換えが可能な流量調整弁が設けられ、
前記制御手段が、前記気化部に前記運転用流量の液化燃料ガスを通流させるように前記流量調整弁の作動を制御することにより、前記気化部を前記運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させ、前記気化部に前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように前記流量調整弁の作動を制御することにより、前記少量通流手段を作動させ、前記流量調整弁を閉弁することにより、前記気化部を前記非運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させるように構成され、
前記運転状態切換手段及び前記少量通流手段が、前記流量調整弁にて構成されている点にある。
【0023】
即ち、流量調整弁の開度が気化部に運転用流量の液化燃料ガスを通流させることが可能な開度に調整されると、気化部が運転状態に切り換えられると共に、少量通流手段の作動を停止される。又、流量調整弁の開度が気化部に運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させることが可能な開度に調整されると、少量通流手段が作動される。又、流量調整弁が閉弁されると、気化部が非運転状態に切り換えられると共に、少量通流手段の作動が停止される。
つまり、1個の流量調整弁により、運転状態切換手段及び少量通流手段を構成することができる。
従って、運転する気化部の切り換え時における供給燃料ガスの熱量変動を抑制し得る液化燃料ガス気化装置をより一層低廉化することができるようになった。
【0024】
第6特徴構成は、上記第4特徴構成に加えて、
前記気化部の前記液化燃料ガス供給路及び前記燃料ガス送出路のいずれかに、開弁状態で前記運転用流量の液化燃料ガスを前記気化部に通流可能な主開閉弁が設けられ、
その主開閉弁を迂回するように前記液化燃料ガス供給路又は前記燃料ガス送出路に接続されたバイパス路に、開弁状態で前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを前記気化部に通流可能な少量通流開閉弁が設けられ、
前記制御手段が、前記主開閉弁を開弁し且つ前記少量通流開閉弁を閉弁することにより、前記気化部を前記運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させ、前記主開閉弁を閉弁し且つ前記少量通流開閉弁を開弁することにより、前記少量通流手段を作動させ、前記主開閉弁及び前記少量通流開閉弁を共に閉弁することにより、前記気化部を前記非運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させるように構成され、
前記運転状態切換手段及び前記少量通流手段が、前記主開閉弁及び前記少量通流開閉弁により構成されている点にある。
【0025】
即ち、主開閉弁が開弁され且つ少量通流開閉弁が閉弁されると、気化部を運転用流量の液化燃料ガスが通流するようになって、気化部が運転状態に切り換えられると共に、少量通流手段の作動が停止される。又、主開閉弁が閉弁され且つ少量通流開閉弁が開弁されると、気化部を運転用流量よりも少量の液化燃料ガスが通流するようになって、少量通流手段が作動される。又、主開閉弁及び少量通流開閉弁が共に閉弁されると、気化部を通しての液化燃料ガスの通流が停止されて、気化部が非運転状態に切り換えられると共に、少量通流手段の作動が停止される。
つまり、気化部の運転状態と非運転状態との切り換え、並びに、少量通流手段の作動と作動停止の切り換えを主開閉弁及び少量通流開閉弁を用いて迅速に行うことができる。
従って、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制しながら、運転する気化部の切り換えをより一層迅速に行うことができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る液化燃料ガス気化装置のフロー図
【図2】第1実施形態に係る液化燃料ガス気化装置の制御動作のタイムチャートを示す図
【図3】第1実施形態に係る液化燃料ガス気化装置における気化部の運転状態切換に伴う液化燃料ガスの通流量変化を説明する図
【図4】第2実施形態に係る液化燃料ガス気化装置のフロー図
【図5】第2実施形態に係る液化燃料ガス気化装置の制御動作のタイムチャートを示す図
【図6】第2実施形態に係る液化燃料ガス気化装置における気化部の運転状態切換に伴う液化燃料ガスの通流量変化を説明する図
【図7】第3実施形態に係る液化燃料ガス気化装置のフロー図
【図8】第3実施形態に係る液化燃料ガス気化装置の制御動作のタイムチャートを示す図
【図9】需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
〔第1実施形態〕
先ず、第1実施形態を説明する。
図1に示すように、液化燃料ガス気化装置は、液化燃料ガスを貯留する液化燃料ガス貯槽1と、その液化燃料ガス貯槽1から供給される液化燃料ガスを気化して需要家に供給する2系統の気化部Vと、この液化燃料ガス気化装置の運転を制御する制御部2(制御手段に相当する)と、その制御部2に各種制御指令を指令する操作部3等を備えて構成されている。
そして、各気化部Vは、液化燃料ガス供給路4を通して供給される液化燃料ガスを気化器5にて気化して燃料ガスを燃料ガス送出路6に送出するように構成されている。
尚、以下の説明及び図面においては、2系統の気化部Vを区別するために、一方をA系統と称し、他方をB系統と称して、気化部を示す符号「V」に夫々添え字「a」、「b」を付す。
【0028】
2系統の気化部Vの液化燃料ガス供給路4は、液化燃料ガス貯槽1から液化燃料ガスが送出される元供給路7に接続され、その元供給路7には、2系統の気化部Vへの液化燃料ガスの供給を一括して断続する元開閉弁8が設けられている。2系統の気化部Vの燃料ガス送出路6は、合流送出路9に接続され、この合流送出路9を通して燃料ガスが各需要家(図示省略)に対して送出される。
ちなみに、この実施形態では、液化燃料ガス貯槽1には液化燃料ガスとしてLNG(液化天然ガス)が貯留され、各需要家には合流送出路9を通して燃料ガスとして天然ガスが供給される。
【0029】
気化器5は、空温式、温水式、オープンラック式等、種々の周知のもののいずれかを用いることができる。各気化器5は、周知であるので、詳細な説明及び図示を省略して簡単に説明する。
空温式の気化器5は、伝熱フィン付の複数の伝熱管の両端を一対のヘッダにより連結して構成され、一対のヘッダが上下方向に並ぶ姿勢で配置される。そして、液化燃料ガスを下側のヘッダから複数の伝熱管の下部に供給して各伝熱管を上方に向けて流動させ、その流動の間に空気との熱交換により気化させて、燃料ガスを上側のヘッダから送出する構成となっている。複数の伝熱管に送風する送風機を備えた強制通風式や、送風機を備えない自然通風式のものがある。
【0030】
温水式の気化器5は、湯水を貯留する貯水槽と、その貯水槽内の湯水を加熱する加熱手段と、その貯水槽内に配設されたコイル状の伝熱管等を備えて構成される。そして、液化燃料ガスを伝熱管を通して流動させて、貯水槽内の温水との熱交換により気化させる構成となっている。
オープンラック式の気化器5は、複数の伝熱管がパネル状に並べられた複数の伝熱パネルが立ち姿勢で横方向に並設され、それら複数の伝熱パネルの外面に沿って海水を膜状に流下させる海水ヘッダを備えて構成される。そして、液化燃料ガスを各パネルの複数の伝熱管の下部から供給して各伝熱管を上方に向けて流動させ、その流動の間に伝熱パネルの外面を流下する海水との熱交換により気化させて、燃料ガスを伝熱管の上部から送出する構成となっている。
【0031】
本発明では、2系統の気化部Vの夫々に、気化部Vに運転用流量の液化燃料ガスを通流させる運転状態と非運転状態とに気化部Vの運転状態を切り換え自在な運転状態切換手段Cと、気化部Vに運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させる少量通流手段Rとが設けられている。
そして、制御部2が、運転する気化部Vを切り換える切換タイミングになると、2系統の気化部Vのうちの一方が運転状態となり他方が非運転状態となる形態で、2系統の気化部V夫々を運転状態と非運転状態とに切り換えるべく、2系統の運転状態切換手段Cの作動を制御し、且つ、運転状態切換手段Cにより気化部Vを運転状態に切り換える前に、当該気化部Vの少量通流手段Rの作動状態を維持し、当該気化部Vに運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように構成されている。
【0032】
この第1実施形態では、運転状態切換手段Cが、気化部Vを非運転状態に切り換えた状態では、気化部Vに運転用流量よりも少量の待機用流量の液化燃料ガスを通流させるように構成され、運転状態切換手段Cが少量通流手段Rとして作動するように構成されている。
【0033】
この運転状態切換手段Cについて、説明を加える。
図1に示すように、この第1実施形態では、各気化部Vの液化燃料ガス供給路4に、運転切換用開閉弁(開閉弁に相当する)10が設けられ、運転切換用開閉弁10を迂回する流路を形成するように液化燃料ガス供給路4に接続され、且つ、運転切換用開閉弁10が閉弁された状態で気化部Vに待機用流量の液化燃料ガスを通流させる通流制限手段Oが設けられている。
通流制限手段Oは、具体的には、運転切換用開閉弁10を迂回するように液化燃料ガス供給路4に接続された迂回路11と、その迂回路11に設けられたオリフィス12とを備えて構成されている。
つまり、運転切換用開閉弁10が開弁状態のとき及び閉弁状態のときのいずれにおいても、オリフィス12を通って運転用流量よりも少量の待機用流量の液化燃料ガスが通流して、少量通流手段Rが作動状態となっている。
ちなみに、オリフィス12を通して通流させることができる液化燃料ガスの流量(待機用流量)は、運転切換用開閉弁10を通して通流させることができる液化燃料ガスの流量の例えば1/8〜1/12程度に設定され、この実施形態では1/9程度に設定されている。
【0034】
そして、運転切換用開閉弁10が開弁された状態で、その運転切換用開閉弁10とオリフィス12とにより、気化部Vに運転用流量の液化燃料ガスが通流され、運転切換用開閉弁10が閉弁された状態で、オリフィス12により、気化部Vに待機用流量の液化燃料ガスが通流されることになる。
つまり、制御部2が、運転切換用開閉弁10を開弁することにより気化部Vを運転状態に切り換え、運転切換用開閉弁10を閉弁することにより気化部Vを非運転状態に切り換える、即ち、少量通流手段Rの作動状態を維持するように構成されている。
要するに、運転状態切換手段Cが、運転切換用開閉弁10及び通流制限手段Oにて構成されている。
【0035】
各気化部Vの気化器5における燃料ガスの送出口には、その送出口から送出される燃料ガスの温度を検出する送出口温度センサ13が設けられている。
例えば、気化器5の表面に形成される氷層が過度に拡がる等の要因により、気化器5の気化能力が低下すると、送出口温度センサ13の検出温度が低下するので、送出口温度センサ13の検出温度に基づいて、気化器5の気化能力低下を検知することができる。
そこで、予め、所定の設定温度が設定されて、制御部2に記憶されている。そして、制御部2が、送出口温度センサ13の検出温度が設定温度よりも低くなると、運転する気化部Vを切り換える切換タイミングになったと判別するように構成されている。ちなみに、前記設定温度は、例えば気化能力低下を検知するための温度に設定される。
【0036】
次に、図2に示すタイムチャートに基づいて、制御部2の制御動作について、説明を加える。但し、図2に示すタイムチャートでは、元開閉弁8の制御動作については省略している。
制御部2は、操作部3から運転開始指令が指令されると、元開閉弁8を開弁し、2系統の気化部Vのうち予め運転開始用気化部として定められているA系統の気化部Vaの運転切換用開閉弁10を開弁して、A系統の気化部Vaを運転状態に切り換え、並びに、B系統の気化部Vbの運転切換用開閉弁10を閉弁状態に維持して、B系統の気化部Vbを非運転状態に維持する。
【0037】
制御部2は、このようにA系統の気化部Vaを運転状態に維持している間に、そのA系統の気化部Vaの送出口温度センサ13の検出温度が設定温度よりも低くなって切換タイミングになったと判別すると、A系統の気化部Vaの運転切換用開閉弁10を閉弁して、A系統の気化部Vaを非運転状態に切り換え、並びに、B系統の気化部Vbの運転切換用開閉弁10を開弁して、B系統の気化部Vbを運転状態に切り換える。
【0038】
制御部2は、このようにB系統の気化部Vbを運転状態に維持している間に、そのB系統の気化部Vbの送出口温度センサ13の検出温度が設定温度よりも低くなって切換タイミングになったと判別すると、B系統の気化部Vbの運転切換用開閉弁10を閉弁して、B系統の気化部Vbを非運転状態に切り換え、並びに、A系統の気化部Vaの運転切換用開閉弁10を開弁して、A系統の気化部Vaを運転状態に切り換える。
【0039】
図示を省略するが、制御部2は、操作部3から運転停止指令が指令されると、元開閉弁8を閉弁し、運転状態に維持している気化部Vの運転切換用開閉弁10を閉弁して、非運転状態に切り換えることにより、運転を停止する。
【0040】
図3は、上述のように、2系統の気化部Vが運転状態と非運転状態とに切り換えられたときの各気化部Vを通流する液化燃料ガスの流量の変動を示す。
尚、運転切換用開閉弁10の開閉による液化燃料ガスの流量の増減変化には、多少の遅れが生じるが、図3はそのような流量変化の遅れを考慮していない。
【0041】
図3に示すように、A系統の気化部Vaが運転状態に切り換えられている状態では、A系統の気化部Vaでは、運転切換用開閉弁10及びオリフィス12を通して液化燃料ガスが運転用流量Qdで気化器5に供給されて気化され、B系統の気化部Vbでは、オリフィス12を通して液化燃料ガスが待機用流量Qwで気化器5に供給されて気化され、A系統の気化部Vaの燃料ガス送出路6を通流する燃料ガスとB系統の気化部Vbの燃料ガス送出路6を通流する燃料ガスが合流送出路9に合流されて、その合流送出路9を通して需要家に供給される。
一方、B系統の気化部Vbが運転状態に切り換えられている状態では、B系統の気化部Vbでは、運転切換用開閉弁10及びオリフィス12を通して液化燃料ガスが運転用流量Qdで気化器5に供給されて気化されることになり、A系統の気化部Vaでは、オリフィス12を通して液化燃料ガスが待機用流量Qwで気化器5に供給されて気化されることになる。
【0042】
つまり、この第1実施形態の液化燃料ガス気化装置では、気化部Vが非運転状態となっている間中、当該気化部Vの液化燃料ガス供給路4及び気化器5を通って運転用流量Qdよりも少量の待機用流量Qwで液化燃料ガスが通流しているので、非運転状態の間に液化燃料ガス供給路4及び気化器5に存在している液化燃料ガスの組成変動を抑制することができる。
従って、非運転状態の間に液化燃料ガス供給路4及び気化器5に存在している液化燃料ガスの組成変動そのものを抑制することができるので、非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換えるときに、既に液化燃料ガス供給路4及び気化器5に存在している液化燃料ガスが運転用流量Qdで気化器5を通流するにしても、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を的確に抑制することができる。
【0043】
以下、第2及び第3の各実施形態を説明するが、各実施形態は、運転状態切換手段C及び少量通流手段Rの別の実施形態を説明するものであって、液化燃料ガス気化装置の全体構成は上記の第1実施形態と同様であるので、各実施形態では、主として、運転状態切換手段C及び少量通流手段Rについて説明する。
【0044】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態を説明する。
この第2実施形態では、制御部2が、運転状態切換手段Cにより気化部Vを運転状態に切り換える前に、当該気化部Vの少量通流手段Rを作動させて、当該気化部Vに運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように構成されている。
更に、運転状態切換手段Cが、気化部Vを非運転状態に切り換えた状態では、気化部Vを通しての液化燃料ガスの通流を停止するように構成され、制御部2が、運転状態切換手段Cにより非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換える前に、当該気化部Vの少量通流手段Rを作動させ、その作動後、設定時間Tが経過すると、当該気化部Vを運転状態切換手段Cにより運転状態に切り換え、その切り換えと同時に、当該気化部Vの少量通流手段Rの作動を停止するように構成されている。
【0045】
図4に基づいて、運転状態切換手段C及び少量通流手段Rについて説明を加える。
この第2実施形態では、各気化部Vの液化燃料ガス供給路4に、閉弁状態への切り換えが可能な流量調整弁14が設けられている。
そして、制御部2が、気化部Vに運転用流量の液化燃料ガスを通流させるように流量調整弁14の作動を制御することにより、気化部Vを運転状態に切り換え且つ少量通流手段Rの作動を停止させ、気化部Vに運転用流量よりも少量の起動用流量の液化燃料ガスを通流させるように流量調整弁14の作動を制御することにより、少量通流手段Rを作動させ、流量調整弁14を閉弁することにより、気化部Vを非運転状態に切り換え且つ少量通流手段Rの作動を停止させるように構成されている。
つまり、運転状態切換手段C及び少量通流手段Rが、流量調整弁14にて構成されている。
【0046】
ちなみに、前記起動用流量は、例えば、運転用流量の1/4程度に設定される。又、前記設定時間は、液化燃料ガス供給路4及び気化器5に残留していた液化燃料ガスの全量を起動用流量にて気化器5を通流させて気化させた後、燃料ガス送出路6に送出するのに要する時間(例えば、1〜5分)に設定されている。
【0047】
次に、図5に示すタイムチャートに基づいて、制御部2の制御動作について、説明を加える。但し、図5に示すタイムチャートでは、元開閉弁8の制御動作については省略している。
尚、予め、流量調整弁14の調整目標開度として、気化部Vに運転用流量Qdの液化燃料ガスを通流させるための運転用開度Wd、及び、気化部Vに起動用流量Qsの液化燃料ガスを通流させるための起動用開度Wsが設定されて、制御部2に記憶されている。
【0048】
制御部2は、操作部3から運転開始指令が指令されると、元開閉弁8を開弁し、2系統の気化部Vのうち予め運転開始用気化部として定められているA系統の気化部Vaの流量調整弁14の開度を運転用開度Wdに調整して、A系統の気化部Vaを運転状態に切り換え、並びに、B系統の気化部Vbの流量調整弁14を閉弁状態に維持して、B系統の気化部Vbを非運転状態に維持する。
【0049】
制御部2は、このようにA系統の気化部Vaを運転状態に維持している間に、そのA系統の気化部Vaの送出口温度センサ13の検出温度が設定温度よりも低くなって切換タイミングになったと判別すると、A系統の気化部Vaの流量調整弁14の開度を運転用開度Wdに維持して、A系統の気化部Vaを運転状態に維持した状態で、B系統の気化部Vbの流量調整弁14の開度を起動用開度Wsに調整し、その後、設定時間Tが経過すると、A系統の気化部Vaの流量調整弁14を閉弁して、A系統の気化部Vaを非運転状態に切り換え、並びに、B系統の気化部Vbの流量調整弁14の開度を運転用開度Wdに調整して、B系統の気化部Vbを運転状態に切り換える。
【0050】
制御部2は、このようにB系統の気化部Vbを運転状態に維持している間に、そのB系統の気化部Vbの送出口温度センサ13の検出温度が設定温度よりも低くなって切換タイミングになったと判別すると、B系統の気化部Vbの流量調整弁14の開度を運転用開度Wdに維持して、B系統の気化部Vbを運転状態に維持した状態で、A系統の気化部Vaの流量調整弁14の開度を起動用開度Wsに調整し、その後、設定時間Tが経過すると、B系統の気化部Vbの流量調整弁14を閉弁して、B系統の気化部Vbを非運転状態に切り換え、並びに、A系統の気化部Vaの流量調整弁14の開度を運転用開度Wdに調整して、A系統の気化部Vaを運転状態に切り換える。
【0051】
図示を省略するが、制御部2は、操作部3から運転停止指令が指令されると、元開閉弁8を閉弁し、運転状態に維持している気化部Vの流量調整弁14を閉弁して、非運転状態に切り換えることにより、運転を停止する。
【0052】
図6は、上述のように、2系統の気化部Vが運転状態と非運転状態とに切り換えられたときの各気化部Vを通流する液化燃料ガスの流量の変動を示す。
尚、流量調整弁14の開度調整による液化燃料ガスの流量の増減変化には、多少の遅れが生じるが、図6はそのような流量変化の遅れを考慮していない。
【0053】
図5及び図6に示すように、非運転状態の気化部Vが運転状態に切り換えられる前に、その非運転状態の気化部Vの流量調整弁14の開度が起動用開度Wsに調整されて、換言すれば、少量通流手段Rが作動されて、非運転状態の気化部Vの気化器5に起動用流量Qsの液化燃料ガスが通流する。
そして、その非運転状態の気化部Vの少量通流手段Rが作動された後、設定時間Tが経過すると、非運転状態の気化部Vが運転状態に切り換えられると共に、運転状態の気化部Vが非運転状態に切り換えられ、そのように作動された少量通流手段Rは、それが設けられている気化部Vが運転状態に切り換えられるのと同時に、作動が停止される。
従って、非運転状態の気化部Vの液化燃料ガス供給路4及び気化器5に残留していた液化燃料ガスは、気化器5を運転用流量Qdよりも少ない起動用流量Qsで通流して気化されて、運転状態の気化部Vの気化器5を液化燃料ガスが運転用流量Qdで通流して気化された燃料ガスに混合されるので、非運転状態の気化部Vの液化燃料ガス供給路4及び気化器5に残留していた液化燃料ガスの組成が変動していたとしても、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制することができる。
【0054】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態を説明する。
この第3実施形態でも、上記の第2実施形態と同様に、制御部2が、運転状態切換手段Cにより気化部Vを運転状態に切り換える前に、当該気化部Vの少量通流手段Rを作動させて、当該気化部Vに運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように構成されている。
更に、運転状態切換手段Cが、気化部Vを前記非運転状態に切り換えた状態では、気化部Vを通しての液化燃料ガスの通流を停止するように構成され、制御部2が、運転状態切換手段Cにより非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換える前に、当該気化部Vの少量通流手段Rを作動させ、その作動後、設定時間Tが経過すると、当該気化部Vを運転状態切換手段Cにより運転状態に切り換え、その切り換えと同時に、当該気化部Vの少量通流手段Rの作動を停止するように構成されているが、運転状態切換手段C及び少量通流手段Rの具体構成が、上記の第2実施形態と異なる。
【0055】
図7に基づいて、運転状態切換手段C及び少量通流手段Rについて説明を加える
この第3実施形態では、各気化部Vの液化燃料ガス供給路4に、開弁状態で運転用流量の液化燃料ガスを気化部Vに通流可能な主開閉弁15が設けられ、その主開閉弁15を迂回するように液化燃料ガス供給路4に接続されたバイパス路17に、開弁状態で運転用流量よりも少量の起動用流量の液化燃料ガスを気化部Vに通流可能な少量通流開閉弁16が設けられている。
そして、制御部2が、主開閉弁15を開弁し且つ少量通流開閉弁16を閉弁することにより、気化部Vを運転状態に切り換え且つ少量通流手段Rの作動を停止させ、主開閉弁15を閉弁し且つ少量通流開閉弁16を開弁することにより、少量通流手段Rを作動させ、主開閉弁15及び少量通流開閉弁16を共に閉弁することにより、気化部Vを非運転状態に切り換え且つ少量通流手段Rの作動を停止させるように構成されている。
つまり、運転状態切換手段C及び少量通流手段Rが、主開閉弁15及び少量通流開閉弁16により構成されている。
【0056】
次に、図8に示すタイムチャートに基づいて、制御部2の制御動作について、説明を加える。但し、図8に示すタイムチャートでは、元開閉弁8の制御動作については省略している。
制御部2は、操作部3から運転開始指令が指令されると、元開閉弁8を開弁し、2系統の気化部Vのうち予め運転開始用気化部として定められているA系統の気化部Vaの主開閉弁15を開弁し、少量通流開閉弁16の閉弁状態を維持して、A系統の気化部Vaを運転状態に切り換え、並びに、B系統の気化部Vbの主開閉弁15及び少量通流開閉弁16を閉弁状態に維持して、B系統の気化部Vbを非運転状態に維持する。
【0057】
制御部2は、このようにA系統の気化部Vaを運転状態に維持している間に、そのA系統の気化部Vaの送出口温度センサ13の検出温度が設定温度よりも低くなって切換タイミングになったと判別すると、A系統の気化部Vaの主開閉弁15の開弁状態を維持して、A系統の気化部Vaを運転状態に維持した状態で、B系統の気化部Vbの少量通流開閉弁16を開弁し、その後、設定時間Tが経過すると、A系統の気化部Vaの主開閉弁15を閉弁して、A系統の気化部Vaを非運転状態に切り換え、並びに、B系統の気化部Vbの主開閉弁15を開弁すると共に少量通流開閉弁16を閉弁して、B系統の気化部Vbを運転状態に切り換える。
【0058】
制御部2は、このようにB系統の気化部Vbを運転状態に維持している間に、そのB系統の気化部Vbの送出口温度センサ13の検出温度が設定温度よりも低くなって切換タイミングになったと判別すると、B系統の気化部Vbの主開閉弁15の開弁状態を維持して、B系統の気化部Vbを運転状態に維持した状態で、A系統の気化部Vaの少量通流開閉弁16を開弁し、その後、設定時間Tが経過すると、B系統の気化部Vbの主開閉弁15を閉弁して、B系統の気化部Vbを非運転状態に切り換え、並びに、A系統の気化部Vaの主開閉弁15を開弁すると共に少量通流開閉弁16を閉弁して、A系統の気化部Vaを運転状態に切り換える。
【0059】
図示を省略するが、制御部2は、操作部3から運転停止指令が指令されると、元開閉弁8を閉弁し、運転状態に維持している気化部Vの主開閉弁15を閉弁して、非運転状態に切り換えることにより、運転を停止する。
【0060】
上述のように、2系統の気化部Vが運転状態と非運転状態とに切り換えられるのに伴って、各気化部Vを通流する液化燃料ガスの流量が変動する形態は、上記の第2実施形態において説明した図6と略同様であるので、説明及び図示を省略する。
この第3実施形態の液化燃料ガス気化装置でも、上記の第2実施形態の液化燃料ガス気化装置と同様に、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制することができる。
【0061】
次に、図9に基づいて、非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換える前に少量通流手段Rを作動させることにより、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制することができる点について説明する。
尚、図9は、需要家に供給される燃料ガスの時間経過に伴う熱量変動を示し、実線は、少量通流手段Rを作動させた場合の熱量変動を示し、二点鎖線は、少量通流手段Rを作動させない場合の熱量変動を示す。ちなみに、図9の縦軸は、基準の組成のLNGを気化させた天然ガスの発熱量(基準発熱量)を100として、その基準発熱量に対する比率を示す。
【0062】
図9に示すように、非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換える前に少量通流手段Rを作動させない場合は、非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換えると、液化燃料ガス供給路4及び気化器5に残留していた液化燃料ガスが運転用流量Qdで気化器5を通流して気化されるので、発熱量が急激に上昇して、約1分後にピークに達して、基準発熱量の115%程度になる。以降、急激に低下して、基準発熱量よりも低くなった後、基準発熱量になる。発熱量は、基準発熱量の92%程度にまで低下する。
非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換える前に、少量通流手段Rを約4分間作動させると、発熱量が徐々に上昇して、約4分後にピークに達するが、そのピークの発熱量は基準発熱量の104%程度である。以降、発熱量は、徐々に低下して、基準発熱量よりも低くなった後、基準発熱量になるが、発熱量の低下は、基準発熱量の99%程度に止まる。
従って、非運転状態の気化部Vを運転状態に切り換える前に少量通流手段Rを作動させることにより、需要家に供給される燃料ガスの熱量変動を抑制できることが分かる。
【0063】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ) 上記の第1〜第3の各実施形態では、気化部Vを2系統設けたが、3系統以上設けても良い。この場合は、複数系統の気化部Vのうちの一部が運転状態となり残りが非運転状態となる形態で、複数系統の気化部V夫々を運転状態と非運転状態とに切り換えることになる。
【0064】
(ロ) 上記の第1〜第3の各実施形態では、各気化部Vに気化器5を1台設けたが、各気化部Vに複数の気化器5を並列状態で設けても良い。
【0065】
(ハ) 運転状態切換手段Cを、気化部Vを非運転状態に切り換えた状態では、気化部Vに運転用流量よりも少量の待機用流量の液化燃料ガスを通流させるように構成して、運転状態切換手段Cを少量通流手段Rとして作動するように構成する場合、運転状態切換手段Cの構成は、上記の第1実施形態において説明した構成に限定されるものではない。
例えば、各気化部Vの液化燃料ガス供給路4及び燃料ガス送出路6のいずれかに、流量調整弁を設けて、運転状態切換手段Cをこの流量調整弁にて構成しても良い。
この場合は、制御部2を、気化部Vに運転用流量の液化燃料ガスを通流させるように前記流量調整弁の作動を制御することにより、気化部Vを運転状態に切り換え且つ少量通流手段Rの作動を停止させ、気化部Vに待機用流量の液化燃料ガスを通流させるように前記流量調整弁の作動を制御することにより、気化部Vを非運転状態に切り換え且つ少量通流手段Rを作動させるように構成する。
【0066】
(ニ) 少量通流手段Rの作動を停止させるタイミングは、上記の第2及び第3の各実施形態では、当該少量通流手段Rが設けられている気化部Vを運転状態に切り換えるのと同時点に設定したが、当該少量通流手段Rが設けられている気化部Vを運転状態に切り換えた後に再び非運転状態に切り換える前の時点に設定しても良い。
【0067】
(ホ) 上記の第1実施形態では、運転切換用開閉弁10を気化部Vの液化燃料ガス供給路4に設けたが、燃料ガス送出路6に設けても良い。この場合、通流制限手段Oは、運転切換用開閉弁10を迂回する流路を形成するように、燃料ガス送出路6に接続して設ける。
【0068】
(ヘ) 通流制限手段Oの構成は、上記の第1実施形態において説明した構成、即ち、迂回路11とオリフィス12とから成る構成に限定されるものではない。例えば、迂回路11を、運転用流量よりも少量の待機用流量の液化燃料ガスを通流させることが可能な流路横断面積を有する管路にて形成して、その迂回路11により通流制限手段Oを構成しても良い。
【0069】
(ト) 上記の第2実施形態では、流量調整弁14を気化部Vの液化燃料ガス供給路4に設けたが、燃料ガス送出路6に設けても良い。
【0070】
(チ) 上記の第3実施形態では、主開閉弁15を、気化部Vの液化燃料ガス供給路4に設けたが、燃料ガス送出路6に設けても良い。この場合は、バイパス路17は、主開閉弁15を迂回するように燃料ガス送出路6に接続して、そのバイパス路17に、少量通流開閉弁16を設ける。
【0071】
(リ) 複数系統の気化部Vのうちの一部が運転状態となり残りが非運転状態となる形態で、複数系統の気化部V夫々を運転状態と非運転状態とに切り換える切換タイミングは、上記の第1〜第3の各実施形態において例示したタイミング、即ち、送出口温度センサ13の検出温度に基づいて、運転状態の気化部Vの気化能力低下を検知したタイミングに限定されるものではない。例えば、設定時間が経過する毎に設定しても良い。あるいは、運転する気化部Vの切り換えを指令する手動操作式の気化部切換スイッチを設けて、その気化部切換スイッチにより気化部切り換えが指令されると、切換タイミングになった判別するように構成しても良い。
【0072】
(ヌ) 本発明は、LNGを気化対象とする液化燃料ガス気化装置の他に、LNG以外の種々の液化燃料ガス(但し、沸点が異なる複数の成分からなる組成のもの)を気化対象とする液化燃料ガス気化装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、低廉化を図りながら、運転する気化部の切り換え時における供給燃料ガスの熱量変動を抑制し得る液化燃料ガス気化装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0074】
2 制御部(制御手段)
4 液化燃料ガス供給路
5 気化器
6 燃料ガス送出路
10 運転切換用開閉弁(開閉弁)
14 流量調整弁
15 主開閉弁
16 少量通流開閉弁
17 バイパス路
V 気化部
C 運転状態切換手段
O 通流制限手段
R 少量通流手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化燃料ガス供給路を通して供給される液化燃料ガスを気化器にて気化して燃料ガスを燃料ガス送出路に送出する気化部が複数系統設けられた液化燃料ガス気化装置であって、
前記複数系統の気化部の夫々に、
前記気化部に運転用流量の液化燃料ガスを通流させる運転状態と非運転状態とに前記気化部の運転状態を切り換え自在な運転状態切換手段と、
前記気化部に前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させる少量通流手段とが設けられ、
前記複数系統の気化部のうちの一部が前記運転状態となり残りが前記非運転状態となる形態で、前記複数系統の気化部夫々を前記運転状態と前記非運転状態とに切り換えるべく、前記複数系統の運転状態切換手段の作動を制御する制御手段が設けられ、
その制御手段が、前記運転状態切換手段により前記気化部を前記運転状態に切り換える前に、当該気化部の少量通流手段の作動状態を維持し又は当該気化部の少量通流手段を作動させて、当該気化部に前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように構成されている液化燃料ガス気化装置。
【請求項2】
前記運転状態切換手段が、前記気化部を前記非運転状態に切り換えた状態では、前記気化部に前記運転用流量よりも少量の待機用流量の液化燃料ガスを通流させるように構成され、
前記運転状態切換手段が前記少量通流手段として作動するように構成されている請求項1に記載の液化燃料ガス気化装置。
【請求項3】
前記気化部の前記液化燃料ガス供給路及び前記燃料ガス送出路のいずれかに、開閉弁が設けられ、
前記開閉弁を迂回する流路を形成するように前記液化燃料ガス供給路又は前記燃料ガス送出路に接続され、且つ、前記開閉弁が閉弁された状態で前記気化部に前記待機用流量の液化燃料ガスを通流させる通流制限手段が設けられ、
前記開閉弁が開弁された状態で、その開閉弁と前記通流制限手段とにより、前記気化部に前記運転用流量の液化燃料ガスを通流させるように構成され、
前記制御手段が、前記開閉弁を開弁することにより前記気化部を前記運転状態に切り換え、前記開閉弁を閉弁することにより前記気化部を前記非運転状態に切り換えるように構成され、
前記運転状態切換手段が、前記開閉弁及び前記通流制限手段にて構成されている請求項2に記載の液化燃料ガス気化装置。
【請求項4】
前記運転状態切換手段が、前記気化部を前記非運転状態に切り換えた状態では、前記気化部を通しての液化燃料ガスの通流を停止するように構成され、
前記制御手段が、前記運転状態切換手段により非運転状態の気化部を前記運転状態に切り換える前に、当該気化部の少量通流手段を作動させ、その作動後、設定時間が経過すると、当該気化部を前記運転状態切換手段により前記運転状態に切り換え、その切り換えと同時に又はその切り換え後に当該気化部を再び前記非運転状態に切り換える前に、当該気化部の少量通流手段の作動を停止するように構成されている請求項1に記載の液化燃料ガス気化装置。
【請求項5】
前記気化部の前記液化燃料ガス供給路及び前記燃料ガス送出路のいずれかに、閉弁状態への切り換えが可能な流量調整弁が設けられ、
前記制御手段が、前記気化部に前記運転用流量の液化燃料ガスを通流させるように前記流量調整弁の作動を制御することにより、前記気化部を前記運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させ、前記気化部に前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを通流させるように前記流量調整弁の作動を制御することにより、前記少量通流手段を作動させ、前記流量調整弁を閉弁することにより、前記気化部を前記非運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させるように構成され、
前記運転状態切換手段及び前記少量通流手段が、前記流量調整弁にて構成されている請求項4に記載の液化燃料ガス気化装置。
【請求項6】
前記気化部の前記液化燃料ガス供給路及び前記燃料ガス送出路のいずれかに、開弁状態で前記運転用流量の液化燃料ガスを前記気化部に通流可能な主開閉弁が設けられ、
その主開閉弁を迂回するように前記液化燃料ガス供給路又は前記燃料ガス送出路に接続されたバイパス路に、開弁状態で前記運転用流量よりも少量の液化燃料ガスを前記気化部に通流可能な少量通流開閉弁が設けられ、
前記制御手段が、前記主開閉弁を開弁し且つ前記少量通流開閉弁を閉弁することにより、前記気化部を前記運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させ、前記主開閉弁を閉弁し且つ前記少量通流開閉弁を開弁することにより、前記少量通流手段を作動させ、前記主開閉弁及び前記少量通流開閉弁を共に閉弁することにより、前記気化部を前記非運転状態に切り換え且つ前記少量通流手段の作動を停止させるように構成され、
前記運転状態切換手段及び前記少量通流手段が、前記主開閉弁及び前記少量通流開閉弁により構成されている請求項4に記載の液化燃料ガス気化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−137608(P2011−137608A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298317(P2009−298317)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(501246488)株式会社クリエイティブテクノソリューション (10)
【Fターム(参考)】