説明

液晶表示パネル

【課題】外部ITO電極の存在により発生する表示不良を防止する。
【解決手段】コモン電極パターン5が設けられた視認側の第2のガラス基板2には、液晶3とは反対側の面に、接地電位に設定される外部ITO9が設けられている。また、第2のガラス基板2には、セグメント電極パターン4のうちコモン電極パターン5と重ならないように配置される部分であるセグメント電極引き廻し配線4(領域32内のセグメント電極パターン4)間の隙間領域に、コモン電極パターン5の一部であるコモン電極引き廻しダミー配線5が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに関し、特に、静電気による表示不良を防止可能な液晶表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの表面に静電気が発生すると、その静電気により液晶に電圧が印加され、表示不良が生じる。このような表示不良を防止するため、液晶表示パネルの上面に帯電防止層を設け、その帯電防止層に生起した静電気を放電する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された液晶表示パネルでは、上面の偏光板上にInTiOの帯電防止層が設けられる。また、接地パッドに接続されたメタルフレーム(金属フレーム)と帯電防止層とを電気的に接続させている。この結果、液晶表示パネルの上面に生起した静電気は放電され、静電気による表示不良を抑えることができる。
【0003】
図7は、液晶表示パネルの上面に帯電防止層としてITOを設けた構成の例を示す模式的断面図である。図7に示す液晶表示パネルは、セグメント電極パターン54が設けられた第1ガラス基板51と、コモン電極パターン55が設けられた第2ガラス基板52との間に液晶53を挟持する。セグメント電極パターン54およびコモン電極パターン55は、より具体的にはITO(Indium Tin Oxide)により形成される電極およびその引き廻し配線である。第1ガラス基板51の外側の面には、偏光板56および拡散板57が設けられ、また、第1ガラス基板51にはピン62,63が取り付けられている。また、第2ガラス基板52の外側の面には、ITO電極59が設けられ、ITO電極59の上層に偏光板58が設けられている。以下、ITO電極59をコモン電極パターン55やセグメント電極パターン54と区別し、外部ITO59と記す。外部ITO59は、偏光板58より広く形成され、偏光板58が存在しない領域の少なくとも一部に導電性弾性体60が設けられる。さらに、液晶表示パネルの外縁にメタルフレーム61が設けられている。メタルフレーム61は接地され、また、導電性弾性体60を介して外部ITO59に電気的に接続されている。
【0004】
液晶表示パネルの第2ガラス基板52側に静電気が発生したとしても、静電気は外部ITO59から、導電性弾性体60およびメタルフレーム61を介して放電される。図7に例示する構成は、特許文献1に記載された構成と、偏光板および帯電防止層の積層順が異なっているが、帯電防止層(図7に示す例では外部ITO59)からメタルフレームを介して静電気を放電する点で同様である。
【0005】
図7に例示した構成では、外部ITO59からメタルフレーム61を介して放電するが、図7に示す構成だけでは、表示不良を改善できない場合があった。図8は、外部ITOを設けても表示不良が生じる状態の例を示す説明図である。図7と同一の要素には、図7と同一の符号を付す。ただし、図8では、導電性弾性体60、メタルフレーム61、ピン62,63、拡散板57の図示を省略している。
【0006】
コモン電極パターン55とセグメント電極パターン54とが重なる領域71の液晶の印加電圧は、その領域71にあるコモン電極パターンおよびセグメント電極パターンに対して電位を設定することにより制御される。また、セグメント電極パターン54が存在するが、コモン電極パターン55が存在しない領域72では、領域71における所望の表示以外の表示が行われないように液晶が一定の状態を保つことが好ましい。しかし、画像表示のためにセグメント電極パターン54は、適宜、電位が切り替えられる。すると、セグメント電極パターン54と、常時、接地電位である外部ITO59との間に電位差が生じる。図9は、セグメント電極パターン54と外部ITO59との間の電位差の例を示す説明図である。例えば、図9に示すように、液晶表示パネルの駆動時に、セグメント電極パターン54に対して、接地電位(GNDと記す。)および、GND以上の電位(Vとする。)への切り替え制御を行われたとする。すると、セグメント電極パターン54の平均電位はV/2となり、セグメント電極パターン54および外部ITO59の間に電位差が生じる。セグメント電極パターン54および外部ITO59との間に第2ガラス基板52が存在するので、領域72の液晶に電圧V/2が直接印加されるわけではないが、微少な直流電圧が印加されることにより、領域72の液晶は時間の経過とともに光透過状態になってしまう。すなわち、本来、光透過状態となるべきでない箇所が光透過状態になってしまう。
【0007】
図10は、外部ITO59とセグメント電極パターン54との間に生じる電圧に起因して表示不良が生じる液晶表示パネルの例を示す説明図である。なお、図10では、点線は、領域72に発生する電場の電気力線を示している。図10において電気力線が示すように、外部ITO59が設けられていると、外部ITO59とセグメント電極パターン54とが重なる領域72には、外部ITO59およびセグメント電極パターン54に設定する電位の電位差により、電場が発生する。
【0008】
図11は、外部ITO59とセグメント電極パターン54との間に生じる電圧に起因する表示不良を防止する液晶表示パネルの構成例を示す説明図である。図7と同一の要素には、図7と同一の符号を付す。ただし、図11では、導電性弾性体60、メタルフレーム61、ピン62,63、拡散板57の図示を省略している。図11に示す構成では、セグメント電極パターン54が存在するが、コモン電極パターン55が存在しない領域72において、第2ガラス基板52上における液晶側の面にITO電極パターン65を設ける。ITO電極パターン65は、液晶53を介してセグメント電極パターン54に対向するように形成される。以下、ITO電極パターン65を、コモン電極パターン55、セグメント電極パターン54、および外部ITO59と区別し、内部ITOパターン65と記す。
【0009】
内部ITOパターン65は、対向するセグメント電極パターン54と等しい電位に設定される。具体的には、2枚のガラス基板51,52間に液晶を封止するためのシール材(図示略)に電導性ビーズを含め、電導性ビーズを介して、内部ITOパターン65とセグメント電極パターン54とを電気的に接続するトランスファー構造とする。内部ITOパターン65は、対向するセグメント電極パターン54に電気的に接続されていることにより、常に対向するセグメント電極パターン54と等しい電位となる。この結果、領域72において、液晶に電圧が印加されることはなく、図8を参照して説明した表示不良を防止できる。
【0010】
特許文献2には、一方の基板上に信号線を設け、他方の基板上に信号線に対向するダミー電極を設け、ダミー電極と信号線とを接続配線で接続させる液晶パネルが記載されている。
【0011】
【特許文献1】特開平5−188388号公報(段落0009−0021)
【特許文献2】特開2003−161959号公報(段落0013−0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図11に示すように、第2ガラス基板52上に内部ITOパターン65を形成することにより、コモン電極パターン55が存在しない領域72における表示不良の発生を防止することができる。しかし、トランスファー構造でセグメント電極パターン54に接続される内部ITOパターン65を常に形成できるとは限らず、内部ITOパターン65を形成できない場合には、外部ITO59とセグメント電極パターン54との電位差により表示不良が生じる場合がある。
【0013】
例えば、セグメント電極パターンとコモン電極パターンとを電気的に接続させてはならないため、シール材を配置する箇所において一方の基板上のセグメント電極パターンと他方の基板上のコモン電極パターンとが交差する場合、そのシール材には電導性ビーズを含めない。その結果、トランスファー構造でセグメント電極パターン54に接続される内部ITOパターン65を第2ガラス基板52に設けることができない場合がある。
【0014】
また、例えば、第2ガラス基板52に内部ITOパターン65を配置しようとしても、その内部ITOパターン65が、他の内部ITOパターン65やコモン電極パターン55に囲まれてしまい、シール材まで引き廻すことができず、トランスファー構造でセグメント電極パターン54に接続させることができない場合がある。
【0015】
以下、具体例を示す。図12は、液晶表示画面の例を示す説明図である。図12に示す各領域81は、コモン電極パターンとセグメント電極パターンとが重なる領域であり、各領域81の液晶の状態を制御して表示を行う。
【0016】
図13は、図12に示す例示する液晶表示パネルにおける各電極パターンおよびシール材の配置例を示す説明図である。なお、図13(a)〜(d)では、いずれも液晶表示パネルの視認側から見た場合の各電極パターンおよびシール材の配置例を示している。図13(a)は、第2ガラス基板52に形成されたコモン電極パターンおよび内部ITOパターンを示す。図13(a)では、コモン電極パターン55,55および内部ITO65〜65が配置される。図13(a)に示す例では、2つのコモン電極パターン55,55が順次選択される。図13(b)は、第1ガラス基板51に形成されたセグメント電極パターン、およびコモン電極パターン55,55に接続される端子54,54を示す。図13(b)に示す例では、各セグメント電極パターン54〜54以外に、第2ガラス基板上のコモン電極パターンおよび内部ITOパターンに対向する対向電極パターン82が設けられている場合を示している。
【0017】
図13(c)は、第2ガラス基板52に形成されたシール材を示す。図13(c)に示すシール材83は、電導性ビーズを含む。また、図13(d)は、第1ガラス基板51に形成されたシール材を示す。図13(d)に示すシール材84は、電導性ビーズを含まない。各ガラス基板51,52を対向させ、電導性ビーズを含むシール材83と、電導性ビーズを含まないシール材84とに囲まれた空間に液晶が封止される。
【0018】
図13(a)に示すコモン電極パターン55と、図13(b)に示すセグメント電極パターン54とを導通状態にしないように、図13(d)に示すシール材84には電導性ビーズが含められない。すると、図13(a)に示す領域91には、内部ITOパターンを配置しても、トランスファー構造で、対向するセグメント電極パターン54に接続させることができない。
【0019】
また、図13(a)に示す領域92は、周囲をコモン電極パターン55,55および内部ITOパターン65に囲まれている。そのため、領域92には、トランスファー構造でセグメント電極パターン54に接続させることができるように、内部ITOパターンを配置することができない。
【0020】
このように、図13(a)に示す領域91,92では、トランスファー構造でセグメント電極パターンに接続される内部ITOパターンを配置できないため、外部ITOとセグメント電極パターンとの電位差により表示不良が発生し得る。
【0021】
このような問題は、表示を視認する視認者側のガラス基板(第2ガラス基板52)にセグメント電極を形成し、背面側のガラス基板(第1ガラス基板51)にコモン電極を形成し、視認者側のガラス基板にITOを形成する場合でも、同様に発生する。
【0022】
そこで、本発明は、トランスファー構造によって対向電極パターンと導通される内部ITO電極パターンを配置しなくても、外部ITO電極の存在により発生する表示不良を防止することができる液晶表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明による液晶表示パネルは、第1の透明電極パターン(例えば、セグメント電極パターン4)が設けられる第1の透明基板(例えば、第1ガラス基板1)と、第2の透明電極パターン(例えば、コモン電極パターン5)が設けられる第2の透明基板(例えば、第2ガラス基板2)との間に液晶を挟持する液晶表示パネルであって、視認側となる第2の透明基板の液晶側とは反対側の面に、接地電位に設定される透明電極である外部透明電極(例えば、外部ITO9)が設けられ、第2の透明基板には、第1の透明電極パターンのうち第2の透明電極パターンと重ならないように配置される部分である第1電極引き廻し配線間の隙間領域に、第2の透明電極パターンの一部である第2電極引き廻しダミー配線(例えば、コモン電極引き廻しダミー配線5)が形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明による液晶表示パネルは、第2の透明電極パターンに挟まれる領域内に配置されている第1電極引き廻し配線の合計幅が所定の許容値以内に収まるように、第1の透明電極パターンおよび第2電極引き廻しダミー配線を含む第2の透明電極パターンが形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、視認側の透明基板の液晶側とは反対側の面に、接地電位に設定される透明電極である外部透明電極が設けられ、第1電極引き廻し配線の束の隙間に対向する第2電極引き廻しダミー配線が、第2の透明基板に設けられる第2の透明電極パターンの一部として形成されているので、トランスファー構造によって対向電極パターンと導通される内部ITO電極パターンを配置しなくても、外部ITO電極の存在により発生する表示不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明による液晶表示パネルの構成の例を示す模式的断面図である。図1に示す液晶表示パネルは、セグメント電極パターン4が設けられた第1ガラス基板1と、コモン電極パターン5が設けられた第2ガラス基板2との間に液晶3を挟持する。なお、液晶3は、各ガラス基板1,2およびシール材によって封止されるが、シール材の図示は省略している。
【0027】
液晶表示パネルの種類は、特に限定されない。例えば、TN(Twisted Nematic)モードや、STN(Super-Twisted Nematic)モードであってもよい。また、誘電率異方性が負の液晶を用い、液晶とコモン電極パターン形成層およびセグメント電極パターン形成層との界面に垂直配向膜を設けた液晶表示パネルであってもよい。
【0028】
各ガラス基板1,2は、いずれも透明基板である。以下、表示が視認される側(視認側と記す。)のガラス基板である第2ガラス基板2にコモン電極パターン5が設けられ、背面側に配置される第1ガラス基板1にセグメント電極パターン4が設けられる場合を例にして説明するが、第2ガラス基板2にセグメント電極パターンが設けられ、第1ガラス基板1にコモン電極パターンが設けられていてもよい。
【0029】
コモン電極パターン5およびセグメント電極パターン4は、より具体的にはITOにより形成される電極およびその引き廻し配線である。また、図1に示す液晶表示パネルでは、第2ガラス基板2に設けられるコモン電極パターン5の一部として、ダミーのコモン電極引き廻し配線(以下、コモン電極引き廻しダミー配線と記す。)5が形成されている。コモン電極引き廻しダミー配線5の詳細については、後述する。
【0030】
また、液晶表示パネルの視認側に配置される第2ガラス基板2は、液晶3が存在している側の面とは反対側の面にITO電極9を備える。以下、ITO電極9を外部ITO9と記す。外部ITO9は、例えば、第2ガラス基板2の視認側の面全体に設けられる。
【0031】
外部ITO9の上層には、その外部ITO9よりも狭い範囲に偏光板8が設けられる。また、第1ガラス基板1は、液晶3が存在している側の面とは反対側の面に偏光板6を備える。なお、図示を省略しているが、図7に例示する構成と同様に、背面側の偏光板6上に拡散板が設けられていてもよい。拡散板は、バックライトの光を液晶表示パネルの背面側から拡散して照射する。
【0032】
外部ITO9上において偏光板8が存在しない領域の少なくとも一部に導電性弾性体10が設けられる。さらに、液晶表示パネルの外縁にメタルフレーム11が設けられている。メタルフレーム11は接地され、また、導電性弾性体10を介して外部ITO9に電気的に接続されている。
【0033】
図2に、本発明の液晶表示パネルの上面図の例を示す。ただし、図2(a)は、メタルフレーム11を取り付けていない状態を示し、図2(b)は、メタルフレーム11が取り付けられた状態を示している。図2(a)に示すように、偏光板8は、第2ガラス基板2の面全体に形成される外部ITO9よりも狭く形成される。そして、外部ITO9上において偏光板8が存在しない領域に導電性弾性体10が設けられる。そして、図2(b)に示すように、液晶表示パネルの外縁を覆うようにメタルフレーム11が取り付けられた状態では、接地されているメタルフレーム11と外部ITO9が導電性弾性体10を介して電気的に接続される。これにより、液晶表示パネルの第2ガラス基板2側に発生した静電気は、静電気は外部ITO9から、導電性弾性体10およびメタルフレーム11を介して放電される。なお、図2(a)では、二箇所に導電性弾性体10を設ける場合を例示しているが、導電性弾性体10の配置態様は特に限定されない。例えば、導電性弾性体10として、偏光板8の周囲を囲む導電性ガスケットを配置してもよい。
【0034】
セグメント電極パターン4とコモン電極パターン5とは、所望の表示を行うため、ある領域においては重なるように、またある領域においては重ならないように配置される。以下、セグメント電極パターン4とコモン電極パターン5とが重なる領域31を電極交差領域31と呼ぶ場合がある。電極交差領域31では、その領域に設けられたセグメント電極パターン4およびコモン電極パターン5に設定する電位の電位差を利用して液晶の状態を変化させることにより、表示が行われる。すなわち、電極交差領域31は、点灯状態または消灯状態に切り替えて制御できる領域である。ここで、点灯状態とは、バックライトの光が液晶表示パネルを透過する状態を意味し、消灯状態とはバックライトの光が液晶表示パネルで遮断される状態を意味する。
【0035】
以下、各電極パターンを用途により区別する際には、セグメント電極パターン4のうち電極交差領域31に設けられた部分をセグメント電極4と記す。また、それ以外の部分をセグメント電極引き廻し配線4と記す。同様に、コモン電極パターン5のうち電極交差領域31に設けられた部分をコモン電極5と記す。また、それ以外の部分をコモン電極引き廻し配線5と記す。
【0036】
次に、図3を参照して本発明の液晶表示パネルにおける電極パターンの配置について説明する。図3は、液晶表示パネルに設けられる電極パターンの配置例を示す説明図である。ただし、図3(a)は本発明の電極パターン配置が適用されていない場合の例を示し、図3(b)は本発明の電極パターン配置が適用された場合の例を示している。図3(a)および(b)では、液晶表示パネルの電極パターン部分だけを視認側から見た状態として示している。なお、コモン電極5と重なるセグメント電極4については、電極交差領域31であることがわかるように網掛け模様を変えて図示している。
【0037】
また、図3には、電極交差領域31以外の領域(すなわち、点灯状態または消灯状態に切り替える制御ができない領域)として、セグメント電極パターン4が存在するがコモン電極パターン5が存在しない領域32、およびコモン電極パターン5が存在するがセグメント電極パターン4が存在しない領域33を示している。なお、領域32は、静電対策用に外部ITO9が設けられる本実施形態では、外部ITO9とセグメント電極パターン4とが重なる領域となる。
【0038】
図3(a)に示す例は、コモン電極パターン5間に、セグメント電極パターン4が6本位置し、セグメント電極パターン4群の中央部側パターンと外部ITO9とにより表示不良が発生することがある。図3(b)に示す例では、図3(a)に比べて、コモン電極パターン5とコモン電極パターン5に挟まれる領域内に配置されるセグメント電極引き廻し配線4の幅が狭くとられている。また、コモン電極パターン5に挟まれる領域内に配置されるセグメント電極引き廻し配線4の束の隙間領域に位置するように、コモン電極引き廻しダミー配線5が追加されている。
【0039】
具体的には、重ね合わせて見た場合にコモン電極パターン5とコモン電極パターン5の間に位置するように配置されるセグメント電極引き廻し配線4による配線幅αが所定の許容値以内となるように、セグメント電極パターン4およびコモン電極パターン5(コモン電極引き廻しダミー配線5を含む。)が形成されている。なお、配線幅αは、複数のセグメント電極引き廻し配線4が配置される場合には、その複数のセグメント電極引き廻し配線4の各幅を合計した値を用いるものとする。すなわち、配線幅αは、換言すると、コモン電極パターン5に挟まれる領域内に配置されるセグメント電極引き廻し配線4の合計幅である。
【0040】
ここで、あるコモン電極パターン5とあるコモン電極パターン5とに挟まれる領域内に配置させるセグメント電極引き廻し配線4の本数が多く、それら各セグメント電極引き廻し配線4の幅を縮小させるだけではその領域内の配線幅αが許容値以内にならない場合には、図3(b)に示す例のように、それらセグメント電極引き廻し配線4の束の間に割り入るようにコモン電極引き廻しダミー配線5を設ける。コモン電極引き廻しダミー配線5を設けることによりコモン電極パターン5が存在しない領域が細分化され、細分化された領域内においてそれぞれのセグメント電極引き廻し配線4による配線幅αを許容値以内に収める。
【0041】
コモン電極引き廻しダミー配線5は、第2ガラス基板5上における液晶側の面にコモン電極パターン5の一部として形成されるITO電極パターンであって、セグメント電極引き廻し配線4の束を分けさせるためのITO電極パターンである。コモン電極引き廻しダミー配線5の一端は、コモン電極パターン5のいずれかとつながるように形成されることにより、そのコモン電極パターン5と等しい電位に設定され、他端は終端となっている。例えば、最も近くに配置されているコモン電極パターン5に接続して、そのコモン電極パターン5と常に等しい電位に設定されるようにしてもよい。
【0042】
図4に、本発明の電極パターン配置が適用された液晶表示パネルの模式的断面図を示す。なお、図4では、点線は、外部ITO9とセグメント電極パターン4との電位差により領域32に発生する電場の電気力線を示している。前述の図10と比べて図4に示す液晶表示パネルでは、コモン電極引き廻しダミー配線5を設けてコモン電極パターン5に挟まれる領域32が細分化されることによって、電気力線が各領域32それぞれにおいて周りのコモン電極パターン5に引き寄せられて、細分化された各領域32の液晶にかかる本数が減っている。これは、図10に示す例と比べて、領域32の液晶に加わる電圧が低下することを意味している。
【0043】
また、図5は、本発明の液晶表示パネルに設けられる電極パターンの他の配置例を示す説明図である。ただし、図5(a)は本発明の電極パターン配置が適用されていない場合の例を示し、図5(b)は本発明の電極パターン配置が適用された場合の例を示している。また、図5も図3と同様に、液晶表示パネルの電極パターン部分だけを視認側から見た状態として示している。
【0044】
図5(b)に示すように、コモン電極パターン5に挟まれる領域内に配置されるセグメント電極引き廻し配線4の束に対して、複数のコモン電極引き廻しダミー配線5を設ける場合もある。図5(b)に示す例では、あるコモン電極パターン5とあるコモン電極パターン5とに挟まれる領域内に、9本のセグメント電極引き廻し配線4を配置させる場合に、その9本からなるセグメント電極引き廻し配線4の束を、3本からなるセグメント電極引き廻し配線4の束に分ける。この結果、3つの配線束に分けられる。それらの配線束と配線束の間に計2本のコモン電極引き廻しダミー配線5を配置している。
【0045】
また、図6に示すように、あるコモン電極パターン5とあるコモン電極パターン5とに挟まれる領域内に配置するセグメント電極引き廻し配線4の本数が少なく、各セグメント電極引き廻し配線4の幅を縮小させれば、その領域内における配線幅αを許容値以内に収めることができる場合には、コモン電極引き廻しダミー配線5を追加しなくてもよい。例えば、セグメント電極引き廻し配線4の幅を、その領域内における配線幅αを許容値以内に収めることができる値に設定すればよい。なお、セグメント電極引き廻し配線4の幅を縮小させることにより領域32の幅が狭まった分は、その両脇に位置するコモン電極パターン5のいずれかまたは両方のコモン電極引き廻し配線5部分となる領域を広げればよい。
【0046】
以下、実際に液晶表示パネルを用いて行った実験結果から求めた配線幅αの許容値を一例として提示する。発明者は、以下に示すように、一定の動作条件の下、コモン電極パターン5に挟まれる領域内に配置されるセグメント電極引き廻し配線4の合計幅である配線幅αを0.15mm以下にすると、表示不良が生じないことを確認した(下記(1)参照。)。
【0047】
以下に、動作確認結果の一例を示す。
(1)配線幅α=0.15mm,駆動電圧=8V,温度=65℃では、2時間経過しても表示不良は確認されなかった。
【0048】
また、以下に示す条件の下では、表示不良を確認した。
(2)配線幅α=0.25mm,駆動電圧=6.3V,温度=50℃では、30分経過したときにわずかに表示不良が確認された。
(3)配線幅α=0.30mm,駆動電圧=6.3V,温度=50℃では、30分経過したときに表示不良が確認された。
【0049】
ここで、駆動電圧は、セグメント電極パターンおよびコモン電極パターンの各電極パターンに設定する電位の最大値と最小値の差をいう。また、本実験は、誘電率異方性が負の液晶であって、液晶とコモン電極パターン形成層およびセグメント電極パターン形成層との界面に垂直配向膜を設けた液晶表示パネルを用いて行った。また、液晶表示パネルは、表示デューティ(Duty)を1/8、バイアス(Bias)を1/4で駆動させた。
【0050】
例えば、上記(1)で示すような駆動条件をもつ液晶表示パネルの場合には、配線幅αの許容値として0.15mmを設定してもよい。その上で、パターンずれ等を考慮し、同極間の引き廻し配線間に0.05mm、異極間の引き廻し配線間には0.075mmの隙間を設けることを前提に、例えば、各セグメント電極引き廻し配線4の最小幅を0.05mmとしてもよい。この場合、1つの領域32内に配置するセグメント電極引き廻し配線4の本数は3本に制限される。従って、4本以上のセグメント電極引き廻し配線4を配置したい場合には、セグメント電極引き廻し配線4を多くても3本配置するごとにコモン電極引き廻しダミー配線5を引き入れればよい。
【0051】
また、実験の結果により、外部ITO9とセグメント電極パターン4との電位差による表示不良は、室温よりも高温で発生しやすく、さらに駆動電圧が高いと発生することがわかった。例えば、Dutyが高く、駆動電圧が高い場合には、配線幅αの許容値をより狭く設定する必要がある。逆にDutyが低く、駆動電圧が低い場合には、配線幅αの許容値を広く設定することが可能である。さらに、液晶のしきい値電圧も表示不良に関与していることが判明した。液晶のしきい値電圧が高い場合には配線幅αの許容値をより広く、液晶のしきい値が低い場合には配線幅αの許容値をより狭く設定することが可能である。
【0052】
このように、液晶表示パネル全体において、全ての配線幅αが所定の許容値以内に収まるように、コモン電極引き廻しダミー配線5を含むコモン電極パターン5およびセグメント電極パターン4を配置することによって、セグメント電極パターン4とコモン電極パターン5とが重ならない各領域32の液晶に加わる外部ITO9とセグメント電極パターン4との電位差により生じる電圧を低下させることができるので、この電位差により消灯状態であるべき箇所が点灯状態になってしまうといった表示不良を防止することができる。
【0053】
なお、上記説明では、視認側のガラス基板である第2ガラス基板2にコモン電極パターン5が設けられ、背面側に配置される第1ガラス基板1にセグメント電極パターン4が設けられる液晶表示パネルに本発明の電極パターン配置を適用させる例に示したが、第2ガラス基板2にセグメント電極パターンが設けられ、第1ガラス基板1にコモン電極パターンが設けられる液晶表示パネルに対しても同様に適用可能である。このような場合には、セグメント電極パターンに挟まれる領域内に配置されるコモン電極パターンの合計幅を所定の許容値以内に収めるように、ダミーのセグメント電極引き廻し配線であるセグメント電極引き廻しダミー配線を含むセグメント電極パターンおよびコモン電極パターンを形成すればよい。
【0054】
すなわち、視認側の第2ガラス基板に設けられるITO電極パターンを視認側電極パターンとし、反視認側の第1ガラス基板に設けられるITO電極パターンを反視認側電極パターンとすると、視認側電極パターンに挟まれる領域内に配置される反視認側電極パターンの合計幅を所定の許容値以内に収めるように、ダミーの視認側電極引き廻し配線を含む視認側電極パターンおよび反視認側電極パターンを形成すればよい。
【0055】
なお、本発明の電極パターン配置は、トランスファー構造で対向電極パターンと導通される内部ITO電極パターンを設ける電極パターン配置と組み合わせて適用させることも可能である。例えば、可能な限りトランスファー構造で対向電極パターンと導通される内部ITO電極パターンを設けた上で、トランスファー構造によっては内部ITO電極パターンを設けることができない箇所に、本発明の電極パターン配置を適用させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、静電気による表示不良の発生防止が求められる液晶表示装置に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による液晶表示パネルの例を示す説明図。
【図2】本発明の液晶表示パネルの上面図の例を示す上面図。
【図3】本発明の液晶表示パネルに設けられる電極パターンの配置例を示す説明図。
【図4】本発明の電極パターン配置が適用された液晶表示パネルの模式的断面図。
【図5】本発明の液晶表示パネルに設けられる電極パターンの他の配置例を示す説明図。
【図6】本発明の液晶表示パネルに設けられる電極パターンの他の配置例を示す説明図。
【図7】液晶表示パネルの上面に帯電防止層としてITOを設けた構成の例を示す模式的断面図。
【図8】外部ITOを設けても表示不良が生じる状態の例を示す説明図。
【図9】セグメント電極と外部ITOとの間の電位差の例を示す説明図。
【図10】外部ITOとセグメント電極との間に生じる電圧に起因する表示不良が生じる液晶表示パネルの例を示す説明図である。
【図11】外部ITOとセグメント電極との間に生じる電圧に起因する表示不良を防止する液晶表示パネルの構成例を示す説明図。
【図12】液晶表示画面の例を示す説明図。
【図13】液晶表示パネルにおける各電極パターンおよびシール材の配置例を示す説明図。
【符号の説明】
【0058】
1 第1ガラス基板
2 第2ガラス基板
3 液晶
4 セグメント電極パターン
セグメント電極
セグメント電極引き廻し配線
5 コモン電極パターン
コモン電極
コモン電極引き廻し配線
コモン電極引き廻しダミー配線
9 ITO電極(外部ITO)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明電極パターンが設けられる第1の透明基板と、第2の透明電極パターンが設けられる第2の透明基板との間に液晶を挟持する液晶表示パネルであって、
視認側となる前記第2の透明基板の液晶側とは反対側の面に、接地電位に設定される透明電極である外部透明電極が設けられ、
前記第2の透明基板には、前記第1の透明電極パターンのうち前記第2の透明電極パターンと重ならないように配置される部分である第1電極引き廻し配線間の隙間領域に、第2の透明電極パターンの一部である第2電極引き廻しダミー配線が形成されている
ことを特徴とする液晶表示パネル。
【請求項2】
第2の透明電極パターンに挟まれる領域内に配置されている第1電極引き廻し配線の合計幅が所定の許容値以内に収まるように、第1の透明電極パターンおよび第2電極引き廻しダミー配線を含む第2の透明電極パターンが形成されている
請求項1に記載の液晶表示パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−20000(P2010−20000A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179278(P2008−179278)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】