説明

液晶表示装置及び映像表示装置

【課題】液晶層中に混入しているイオン性不純物を周辺領域に移動させることで表示特性の向上を図ることが可能な液晶表示装置及び映像表示装置を提供する。
【解決手段】透明基板1と、駆動回路基板3と、液晶層4とを備える液晶表示装置1において、透明基板は画素領域及び周辺領域に設けられた透明電極6を有し、駆動回路基板は画素領域に設けられた反射画素電極15と、周辺領域に設けられた周辺領域電極20とを有し、周辺領域電極に印加される駆動電圧の電圧値は、反射画素電極に印加される駆動電圧の電圧値よりも高く、周辺領域電極に印加される駆動電圧の周波数は、反射画素電極に印加される駆動電圧の周波数よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置及び映像表示装置に関する。詳しくは、液晶パネルにおける表示特性の劣化を抑制することができる液晶パネルを有する液晶表示装置及び映像表示装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を構成する液晶パネルは、図4で示す様に、対面配置された第1の基板201と第2の基板202との間に液晶層203を挟持して構成されており、第1の基板の符合Aで示す画素領域(有効画素領域)の対向面側及び第2の基板の対向面側全面には電極204が設けられている。また、電極はそれぞれ配向膜205,206によって覆われており、これらの配向膜によって液晶層に含まれる液晶分子の配向状態が制御されることとなる。更に、第1の基板と第2の基板との間は、画素領域の周辺領域(符合Bで示す領域であり、以下単に「周辺領域」と称する。)に設けられたシール剤207で封止されて液晶層が第1の基板及び第2の基板間に充填封止された状態となっている。
【0003】
ここで、上記の様に構成された液晶パネルにおいては、液晶注入時やその後の駆動時に、シール剤からイオン性不純物Iが溶け出し、液晶パネルの表示特性の劣化を招くことが知られており、この劣化の発生開始時期は、シール剤から画素領域までの距離に依存することも知られていた。
【0004】
そこで、こうした表示特性の劣化を抑制することを目的とした様々な構成の表示装置が提案されている。
例えば、特許文献1には、紫外線照射による表面改質を用いることで、液晶パネルの中央部に位置する画素領域の配向膜の表面エネルギーよりも、周辺領域に位置する配向膜の表面エネルギーを高く設定することで、シール剤から溶け出したイオン性不純物を表面エネルギーの高い周辺領域の配向膜部分に吸着捕獲し、画素領域へのイオン性不純物の拡散を抑制する表示装置が提案されている。また、特許文献2には、周辺領域にイオン吸着性の高い配向膜を設けることにより、特許文献1と同様にして画素領域へのイオン性不純物の拡散を抑制する表示装置が提案されている。更に、特許文献3には、シール剤と画素領域との間に設けたイオン吸着部において、シール剤から溶け出したイオン性不純物を吸着捕獲する能力を向上させた表示装置が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−260406号公報
【特許文献2】特開平7−110479号公報
【特許文献3】特開2005−283693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第1の基板と第2の基板間に充填封止された液晶層に全く不純物が混じっていないことが理想的であるものの、現実的には液晶層を充填封止するまでの過程において、液晶層にイオン性不純物が混入していると考えられ、液晶層中に混入しているイオン性不純物によっても液晶パネルの表示劣化を招くとの知見を得た。
【0007】
例えば、画素領域には駆動電圧が印加されるのに対して周辺領域には駆動電圧が印加されていないことに起因して画素領域と周辺領域との境界領域にイオン性不純物の滞留が発生して液晶パネルの表示劣化を招くことが考えられる。また、例えば、第1の基板の画素領域には電極が設けられているのに対して第1の基板の周辺領域には電極が設けられていないことに起因して第1の基板の画素領域と周辺領域との段差(図4中符合Cで示す段差)が生じることが考えられるが、こうした段差が生じた場合には、段差にイオン性不純物の滞留が発生して液晶パネルの表示劣化を招くことが考えられる。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであって、液晶層中に混入しているイオン性不純物を周辺領域に移動させることで表示特性の向上を図ることが可能な液晶表示装置及び映像表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る液晶表示装置は、透明基板と、該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを備える液晶表示装置において、前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高い。
【0010】
ここで、周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値が、画素領域電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高いことによって、液晶層中に混入しているイオン性不純物を画素領域から周辺領域に移動させる能力(掃き出し能力)が向上し、イオン性不純物を画素領域から周辺領域に効果的に吐き出すことが可能となる。
以下、この点について詳細に説明を行う。
【0011】
イオン性不純物が滞留することによって生じる液晶パネルの表示劣化の1つとしてシミが挙げられるが、液晶パネルの画素領域中における「シミが発生した総面積」と画素領域に印加した「駆動電圧の電圧値」との関係を図5(a)に示す。なお、図5(a)で示すグラフは、画素領域に形成された画素領域電極に対して駆動周波数が60Hzの駆動電圧を印加し、周辺領域に形成された周辺領域電極には駆動電圧を印加していない場合の画素領域電極に印加した駆動電圧の電圧値とシミ総面積との関係を表しており、図5(a)中符合Xは駆動電圧を1時間印加した場合、図5(a)中符合Yは駆動電圧を2時間印加した場合を表している。また、ここでの1画素は16μm四方である。
【0012】
図5(a)から、駆動電圧が高電圧になるほどシミ総面積が増大していることが分かる。ここで、シミ総面積はシミ物質の移動速度であると考えることができるために、駆動電圧が高電圧になるに伴ってシミ物質の移動速度が向上していることが分かる。従って、駆動電圧が高電圧になるに伴ってイオン性不純物の移動速度が向上すると考えられるために、周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値が、画素領域電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高いことによって、即ち、周辺領域におけるイオン性不純物の移動速度を画素領域におけるイオン性不純物の移動速度よりも高速とすることによって、イオン性不純物を画素領域から周辺領域に効果的に吐き出すことが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る液晶表示装置は、透明基板と、該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを備える液晶表示装置において、前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高い。
【0014】
ここで、周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数が、画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高いことによって、液晶層中に混入しているイオン性不純物を画素領域から周辺領域に移動させる能力(掃き出し能力)が向上し、イオン性不純物を画素領域から周辺領域に効果的に吐き出すことが可能となる。
以下、この点について詳細に説明を行う。
【0015】
先ず、画素領域に形成された画素領域電極に対して電圧値が5V、駆動周波数が60Hzの駆動電圧を印加し、周辺領域に形成された周辺領域電極には駆動電圧を印加していない状態を1時間継続した状態を初期状態とし、続いて、画素領域電極及び周辺領域電極に対して電圧値が5Vである駆動電圧を15時間印加した場合における、初期状態からのシミ移動画素(シミ移動距離)と画素領域電極及び周辺領域電極に印加した駆動電圧の周波数との関係を図5(b)に示す。なお、ここでの1画素は16μm四方である。
【0016】
図5(b)から、駆動電圧が高周波数になるほどシミ移動画素(シミ移動距離)が増大していることが分かる。ここで、シミ移動画素(シミ移動距離)はシミ物質の移動速度であると考えることができるために、駆動電圧が高周波数になるに伴ってイオン性不純物の移動速度が向上していることが分かる。従って、駆動電圧が高周波数になるに伴ってイオン性不純物の移動速度が向上すると考えられるために、周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数が、画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高いことによって、即ち、周辺領域におけるイオン性不純物の移動速度を画素領域におけるイオン性不純物の移動速度よりも高速とすることによって、イオン性不純物を画素領域から周辺領域に効果的に吐き出すことが可能となる。
【0017】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る映像表示装置は、透明基板と、該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを有する液晶表示装置を備え、該液晶表示装置によって変調された光を用いて映像表示を行なう映像表示装置において、前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高い。
【0018】
ここで、周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値が、画素領域電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高いことによって、液晶層中に混入しているイオン性不純物を画素領域から周辺領域に移動させる能力(掃き出し能力)が向上し、イオン性不純物を画素領域から周辺領域に効果的に吐き出すことが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る映像表示装置は、透明基板と、該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを有する液晶表示装置を備え、該液晶表示装置によって変調された光を用いて映像表示を行なう映像表示装置において、前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高い。
【0020】
ここで、周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数が、画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高いことによって、液晶層中に混入しているイオン性不純物を画素領域から周辺領域に移動させる能力(掃き出し能力)が向上し、イオン性不純物を画素領域から周辺領域に効果的に吐き出すことが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明を適用した液晶表示装置及び映像表示装置では、液晶層中に混入しているイオン性不純物を周辺領域に移動させることができ、表示特性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は本発明を適用した液晶表示装置における液晶パネル部分を説明するための模式図であり、ここで示す液晶パネル1は、互いに対面配置された透明基板2及び駆動回路基板3と、これら透明基板と駆動回路基板との間に液晶を注入することによって形成された液晶層4と、これら透明基板と駆動回路基板との端縁部を封止するシール剤5とを備えている。
【0023】
ここで、透明基板は、例えばガラス基板からなり、このガラス基板の対向面上に、光透過性を有する透明電極6が全面にわたって形成されている。この透明電極は、例えば酸化すず(SnO)と酸化インジウム(In)との固溶体物質であるITO(Indium−Tin Oxide)等の透明な導電材料からなり、画素領域及び周辺領域で共通な電位(例えば7.5V)が印加されるように構成されている。なお、透明電極は共通電極の一例である。
【0024】
また、図2で示す様に、駆動回路基板の画素領域は、例えばC−MOS(Complementary−Metal Oxide Semiconductor)型やnチャンネルMOS型のFET(Field Effect Transistor)7と、液晶層に電圧を供給する補助容量であるコンデンサ8とからなるスイッチング駆動回路9を、シリコン基板上に画素毎にマトリクス状に複数配列して形成されたものである。また、このシリコン基板上には、各FETのソース電極と電気的に接続された信号線10と、各FETのゲート電極と電気的に接続された走査線11とが互いに直交する方向に複数並んで形成されている。さらに、画素領域の外側の周辺領域には、各信号線に表示電圧を印加する信号ドライバ(データドライバ)13と、各走査線に選択パルスを印加する走査ドライバ14とがロジック部として形成されている。なお、スイッチング駆動回路は、液晶層の駆動電圧に対応した耐圧がトランジスタに要求されるため、一般的にロジック部よりも高い耐圧プロセスで作製される。
【0025】
また、シリコン基板上の画素領域には、各FETのドレイン電極と電気的に接続された略矩形状の反射画素電極15(画素領域電極の一例)が画素毎にマトリクス状に複数配列して形成されている。この反射画素電極は、可視領域で高い反射率を有する、例えばアルミニウム(Al)、具体的には、LSIプロセスで配線に用いられる銅(Cu)やシリコン(Si)を数重量%以下だけ添加したアルミニウム(Al)を主成分とする金属膜からなる。この反射画素電極は、透明基板側から入射した光を反射する機能及び液晶層に対して電圧を印加する機能とを有しており、さらに反射率を上げるため、誘電体ミラーのような多層膜をAl膜上に積層したものであっても良い。なお、この反射画素電極の厚みは、50nm〜500nm程度である。さらに、シリコン基板上の周辺領域には、周辺領域電極20が形成されている。なお、周辺領域電極については、反射画素電極と同一プロセスで形成されており、周辺領域電極を構成する材料や周辺領域電極の膜厚等は反射画素電極と同様である。
【0026】
そして、反射画素電極及び周辺領域電極と透明電極との間に、後述する液晶層が介在するように構成されている。また、上述した透明基板と駆動回路基板との互いに対向する対向面には、それぞれ透明電極及び反射画素電極を被覆する配向膜16、17が形成されている。これら配向膜は、液晶層の液晶分子を所定の方向に配向させるため、例えば表面にラビング処理が施されたポリイミド等の高分子膜や、酸化珪素(SiO)等の無機材料を上記シリコン基板に対して斜め方向から蒸着させた斜方蒸着膜等からなる。
【0027】
また、液晶層は、負の誘電異方性を有するネマスティック液晶を上述した配向膜によって垂直配向させた、いわゆる垂直配向液晶であり、電圧が印加されると、液晶分子が所定の方向にチィルトし、そのとき生じる複屈折により光の透過率を変化させることで階調表示を行なう。
【0028】
ここで、垂直配向とは、液晶の初期の分子配向が基板に対して垂直に配列された状態のことをいう。しかしながら、液晶分子が完全に垂直配向した場合、電圧の印加によって液晶分子がランダムな方向に傾き、明暗のムラが生じることとなる。従って、液晶分子の傾斜する方向を一様とするため、この液晶分子の長軸を基板の法線に対して傾けるプレチィルト角を一定の方向(一般的には、デバイスの対角方向)に僅かに与えて垂直配向させる必要がある。また、プレチィルト角があまり大きいと、垂直配向性が劣化し、黒レベルが上昇してコントラストを低下させたり、V−T(駆動電圧−透過率)曲線に影響を与えたりすることとなる。従って、一般的にはプレチィルト角を1°〜7°の角度範囲で制御している。
【0029】
また、シール剤は、エポキシ系樹脂等からなり、透明基板と駆動回路基板との間にガラスビーズ(図示せず)を適当な数だけ分散させた後に、数μm程度の厚みで配向膜の間を封止する様に形成されている。なお、シーズ剤は、これら配向膜の側面を覆う様に形成することも可能である。
【0030】
ところで、上記した液晶パネルでは、反射画素電極にはハイレベル(Hレベル)として12.5V、ローレベル(Lレベル)として2.5Vの2値の電圧値をとり、駆動周波数が60Hzである第1の駆動電圧が印加され、周辺領域電極にはHレベルとして15V、Lレベルとして0Vの2値の電圧値をとり、駆動周波数が70Hzである第2の駆動電圧が印加されている。
【0031】
ここで、液晶層中に含まれるイオン性不純物を画素領域から周辺領域に吐き出す能力は、(1)駆動電圧の電圧値、(2)駆動電圧の周波数に大きく依存するために、本実施例では、周辺領域電極には透明電極との電位差が5Vとなる駆動電圧を印加し、反射画素電極には透明電極との電位差が7.5Vとなる駆動電圧を印加することで、周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値を反射画素電圧に印加する駆動電圧の電圧値よりも大きくすると共に、周辺領域電極には駆動周波数が70Hzの駆動電圧を印加し、反射画素電極には駆動周波数が60Hzの駆動電圧を印加することで、周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数を反射画素電極に印加する駆動電圧の周波数よりも大きくすることとしているものの、必ずしも、駆動電圧の電圧値及び駆動電圧の周波数の双方について周辺領域電極が反射画素電極と比べて高くなる様に構成する必要は無い。
【0032】
即ち、周辺領域電極に印加する駆動電圧の駆動周波数と反射画素電極に印加する駆動電圧の駆動周波数が同一であったとしても、周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値が反射画素電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高ければ液晶層中に含まれるイオン性不純物を画素領域から周辺領域に吐き出す能力は向上すると考えられ、また、周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値と反射画素電極に印加する駆動電圧の電圧値が同一であったとしても、周辺領域電極に印加する駆動電圧の駆動周波数が反射画素電極に印加する駆動電圧の駆動周波数よりも高ければ液晶層中に含まれるイオン性不純物を画素領域から周辺領域に吐き出す能力は向上すると考えられるために、必ずしも駆動電圧の電圧値及び駆動電圧の周波数の双方について周辺領域電極が反射画素電極と比べて高くなる様に構成する必要は無い。
【0033】
以上の様に構成された液晶表示装置では、反射画素電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値を高くすると共に、反射画素電極に印加する駆動電圧の駆動周波数よりも周辺領域電極に印加する駆動周波数を高くして、画素領域よりも周辺領域のイオン不純物掃き出し能力を向上させることで、液晶パネルの表示劣化の一因であるイオン性不純物を画素領域外に吐き出すことができ、液晶パネルの表示品位の信頼性の向上が実現する。
【0034】
図3は本発明を適用した映像表示装置の一例である反射型液晶プロジェクタを説明するための模式図であり、ここで示す反射型液晶プロジェクタ100は、いわゆる3板方式として赤、緑、青の3原色に対応した3つのライトバルブに図1に示す液晶パネルを有する反射型液晶表示装置を使用し、スクリーン(図示せず)上に拡大投影されたカラー映像を表示する投射型の映像表示装置である。
【0035】
具体的に、この反射型液晶プロジェクタは、照明光を出射する光源であるランプ101と、ランプからの照明光を赤色光(R),緑色光(G),青色光(B)に分離する分離光学手段であるダイクロイック色分離フィルタ102及びダイクロイックミラー103と、分離された赤色光(R),緑色光(G),青色光(B)をそれぞれ変調して反射する光変調手段であるRライトバルブ104R,Gライトバルブ104G及びBライトバルブ104Bと、変調された赤色光(R),緑色光(G),青色光(B)を合成する合成光学手段である合成プリズム105と、合成された照明光をスクリーンに投射する投射手段である投射レンズ106とを備えている。
【0036】
ここで、ランプは、赤色光(R)、緑色光(G)及び青色光(B)を含む白色光を照射するものであり、例えばハロゲンランプや、メタルハロゲンランプ、キセノンランプ等からなる。
【0037】
また、ランプとダイクロイック色分離フィルタとの間の光路中には、ランプから出射された照明光の照度分布を均一化するフライアイレンズ107や、照明光のP,S偏光成分を一方の偏光成分(例えばS偏光成分)に変換する偏光変換素子108、照明光を集光させるコンデンサレンズ109等が配置されている。
【0038】
ダイクロイック色分離フィルタは、ランプから照射された白色光を青色光(B)とその他の色光(R,G)とに分離する機能を有し、分離された青色光(B)とその他の色光(R,G)とを互いに逆向きに反射させる様に構成されている。
【0039】
また、ダイクロイック色分離フィルタとBライトバルブとの間には、分離された青色光(B)をBライトバルブに向けて反射させる全反射ミラー110が配置され、ダイクロイック色分離フィルタとダイクロイックミラーとの間には、分離されたその他の色光(R,G)をダイクロイックミラーに向けて反射させる全反射ミラー111が配置されている。
【0040】
ダイクロイックミラーは、その他の色光(R,G)を赤色光(R)と緑色光(G)とに分離する機能を有し、分離された赤色光(R)をRライトバルブに向かって透過させ、分離された緑色光(G)をGライトバルブに向かって反射させる。
【0041】
また、各ライトバルブ104R,104G,104Bと合成プリズムとの間には、それぞれ分離された各色光R,G,Bを各ライトバルブに導くR,G,B偏光ビームスプリッタ112R,112G,112Bが配置されている。これらR,G,B偏光ビームスプリッタは、入射した各色光R,G,BをP偏光成分とS偏光成分とに分離する機能を有し、一方の偏光成分(例えばS偏光成分)をR,G,Bライトバルブに向かって反射させ、他方の偏光成分(例えばP偏光成分)を合成プリズムに向かって透過させる。
【0042】
R,G,Bライトバルブは、図1に示す液晶パネルを有する反射型液晶表示装置からなり、各偏光ビームスプリッタによって導かれた一方の偏光成分(例えばS偏光成分)の光を映像信号に応じて偏光変調させながら、その偏光変調された光を各偏光ビームスプリッタに向かって反射させる。
【0043】
合成プリズムは、いわゆるクロスキューブプリズムであり、各偏光ビームスプリッタを通過した他方の偏光成分(例えばP偏光成分)の各色光R,G,Bを合成する機能を有し、合成された光を投射レンズに向かって出射する。
【0044】
投射レンズは、合成プリズムからの光をスクリーンに向かって拡大投影する機能を有している。
【0045】
以上の様に構成される反射型液晶プロジェクタでは、ランプから出射された白色光がダイクロイック色分離フィルタ及びダイクロイックミラーによって赤色光(R),緑色光(G),青色光(B)に分離される。これら分離された赤色光(R),緑色光(G),青色光(B)は、S偏光成分の光であり、各偏光ビームスプリッタを通って各ライトバルブへと入射される。各ライトバルブに入射された赤色光(R),緑色光(G),青色光(B)は、各ライトバルブの各画素に印加される駆動電圧に応じて偏光変調された後、各偏光ビームスプリッタに向かって反射される。そして、これら変調された赤色光(R),緑色光(G),青色光(B)は、P偏光成分の光のみが各偏光ビームスプリッタを透過し、合成プリズムによって合成され、この合成された光が投射レンズによってスクリーン上に拡大投射される。
【0046】
以上の様にして、この反射型液晶プロジェクタでは、ライトバルブによって変調された光に応じた映像をスクリーン上に拡大投影することでカラー映像表示を行なう。
【0047】
ところで、各ライトバルブを構成する反射型液晶表示装置は、上述した様に、液晶パネルの表示劣化の一因であるイオン性不純物を画素領域外に吐き出すことができることから、ここで示す反射型プロジェクタにおいても表示品位の信頼性の向上が実現する。
【0048】
なお、本実施例では反射型プロジェクタのようにスクリーンに投射する投射型の映像表示装置を例に挙げて説明を行ったが、本発明は反射型液晶表示装置を直接見るような直視型の映像液晶表示装置にも広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を適用した液晶表示装置における液晶パネル部分を説明するための模式図である。
【図2】駆動回路基板及びスイッチング駆動回路の構成を示す模式図である。
【図3】本発明を適用した映像表示装置の一例である反射型液晶プロジェクタを説明するための模式図である。
【図4】従来の液晶パネルを説明するための模式図である。
【図5】シミ総面積と画素領域に印加した駆動電圧の電圧値との関係及びシミ移動距離と画素領域に印加した駆動電圧の駆動周波数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 液晶パネル
2 透明基板
3 駆動回路基板
4 液晶
5 シール剤
6 透明電極
7 FET
8 コンデンサ
9 スイッチング駆動回路
10 信号線
11 走査線
13 信号ドライバ
14 走査ドライバ
15 反射画素電極
16、17 配向膜
20 周辺領域電極
100 反射型液晶プロジェクタ
101 ランプ
102 色分離フィルタ
103 ダイクロイックミラー
104R Rライトバルブ
104G Gライトバルブ
104B Bライトバルブ
105 合成プリズム
106 投射レンズ
107 フライアイレンズ
108 偏光変換素子
109 コンデンサレンズ
110,111 全反射ミラー
112 偏光ビームスプリッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、
前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを備える液晶表示装置において、
前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、
前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、
前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高い
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
透明基板と、
該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、
前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを備える液晶表示装置において、
前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、
前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、
前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高い
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】
前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高い
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
透明基板と、該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを有する液晶表示装置を備え、該液晶表示装置によって変調された光を用いて映像表示を行なう映像表示装置において、
前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、
前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、
前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の電圧値は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の電圧値よりも高い
ことを特徴とする映像表示装置。
【請求項5】
透明基板と、該透明基板と所定の間隙を介して対面配置された駆動回路基板と、前記透明基板及び前記駆動回路基板の間隙内に保持された液晶層とを有する液晶表示装置を備え、該液晶表示装置によって変調された光を用いて映像表示を行なう映像表示装置において、
前記透明基板は、画素領域及び周辺領域に設けられた共通電極を有し、
前記駆動回路基板は、画素領域に設けられた画素領域電極と、周辺領域に設けられた周辺領域電極とを有し、
前記周辺領域電極に印加する駆動電圧の周波数は、前記画素領域電極に印加する駆動電圧の周波数よりも高い
ことを特徴とする映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−279172(P2007−279172A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102612(P2006−102612)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】