説明

液晶表示装置

【課題】本発明は、ガラス基板が押圧されても、押圧位置における液晶層の階調や色調の変化が抑制された高品位の画像表示が可能な液晶表示装置を提供する。
【解決手段】液晶パネル10に重ねてペン入力部34を配置し、画像を表示させた液晶パネル10を入力ペン43で押圧して入力操作を行う。制御部36は、メモリ37に記憶された小領域の補正電圧パターンを、押圧位置を中心とする領域の画素の駆動電圧に加算する補正を行う。これにより、押圧された液晶パネル10の画像表示状態を押圧されないときの画像表示状態に近付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示面を押圧した際に押圧位置の画像表示が乱れる程度を軽減した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示された液晶ディスプレイの表面に直接触れて入力操作を行う手指入力装置が実用化されている。手指入力装置によれば、1つの液晶ディスプレイを用いて画像ボタン、画像ボリウム等の多種類の組み合わせを実現できる。
【0003】
液晶ディスプレイの表面に入力ペンの先端を接触させてコンピュータ操作を行うペン入力装置も実用化されている。ペン入力装置は、手指入力装置よりも高い位置精度で液晶ディスプレイ上のより小さな面積を指示でき、押圧位置とともにペン先の押圧力を検知するものもある。
【0004】
特許文献1には、入力ペンを操作する盤面に多数のループアンテナを配置して、入力ペンの先端から発信される電波を検知するペン入力装置が示される。電波の検知出力が最大となるX方向のループアンテナとY方向のループアンテナとを特定して、押圧位置のX、Y座標を求めている。
【0005】
特許文献2には、ループアンテナを用いた位置検出を行うための入力ペンに押圧力の検知機構を組み込んだペン入力装置が示される。入力ペンの先端チップを押圧力に応じて出入りさせて押圧力に応じて周波数を変化させた電波出力を入力ペンに行わせている。
【0006】
一般的な液晶ディスプレイは、一対のガラス基板の間に形成された5〜10μmのごく狭い隙間に液晶物質を充填している。一対のガラス基板に形成された画素ごとの透明電極に印加する電圧を変化させて液晶物質の複屈折量を制御することにより、ガラス基板に重ねた偏光板を通過する光量を変化させる。
【0007】
そして、液晶層の複屈折量は、液晶層の厚みに応じて変化するので、ガラス基板が押圧されて液晶層が薄くなると、押圧位置の表示階調(透過光量)が変化する。また、液晶層の複屈折量は、液晶分子の傾き角度によって変化するので、ガラス基板が変形して液晶分子の傾き角度が変化すると変形位置の表示階調が変化する。
【0008】
特許文献3には、ガラス基板が押圧されても液晶ディスプレイの押圧位置の表示階調が変化しない手指入力装置が示される。ここでは、液晶ディスプレイの観察側のガラス基板の周囲にスペーサを配置して、スペーサ上に別部材の透明な入力基板を配置している。つまり、入力基板の押圧力がガラス基板に伝わらないようにしている。
【0009】
ところで、液晶ディスプレイの隣接する2つの表示単位(副画素)で1つの画素を構成してほぼフルカラーの表示を実現したハイブリッドカラー液晶表示装置が提案されている。ハイブリッドカラー液晶表示装置は、従来のRGBカラー液晶表示装置に比較して高精細な画像表示が可能で、同一照明光によって30〜50%明るい画像表示が可能である。
【0010】
特許文献4には、ハイブリッドカラー液晶表示装置が示される。ここでは、片方の表示単位には緑色のカラーフィルタを配置して緑色を表示させ、別の片方の表示単位では液晶層の複屈折量を有彩色領域で制御して赤色と青色とを表示させている。
【0011】
特許文献5には、抵抗線膜方式の手指入力装置が示される。
【0012】
【特許文献1】特開昭63−70326号公報
【特許文献2】特許第2602878号公報
【特許文献3】特開平6−301017号公報
【特許文献4】特開2004−258616号公報
【特許文献5】特開平5−242759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
液晶ディスプレイを用いた手指入力装置、ペン入力装置では、液晶層の観察側のガラス基板が押圧されると、液晶層を通過する光の偏向状態が変化する。押圧位置の液晶層が薄くなるとともに、押圧位置のガラス基板の変形が液晶分子の傾き角度を変化させて、押圧位置を中心とする領域の画像表示の階調が変化する。押圧位置では、液晶層に印加される駆動電圧から想定される複屈折量からずれた複屈折量となる。このため、偏向板を通じて観察される液晶層の階調が部分的に変化して画像表示の品位が低下する。
【0014】
特に、液晶層の複屈折量を有彩色領域で制御して画素をカラー表示させる場合、押圧位置を中心とする領域の画素は、濃度変化と色調変化との両方を生じるため、色の違いで画像表示の変化が目立ってしまう。
【0015】
特に、入力ペンの押圧力を検知して押圧力に応じた入力操作が行われる場合、意図的な押圧によってペン先が接触する小さな面積に大きな応力が発生して画像表示を変化させてしまう。
【0016】
本発明は、ガラス基板が押圧されても、押圧位置における液晶層の階調や色調の変化が抑制されて高品位の画像表示が可能な液晶表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、液晶層を挟んで配置された一対の基板部材と、前記一対の基板部材に配置されて、表示単位ごとの前記液晶層に駆動電圧を印加可能な電極手段と、前記電極手段に前記表示単位ごとの駆動電圧を印加して画像表示させる駆動手段とを備えたものである。そして、前記基板部材上の押圧位置を検知する位置検知手段を備え、前記駆動手段は、検知された前記押圧位置における前記駆動電圧を、押圧されない表示状態に近付ける方向に調整する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の液晶表示装置では、画像表示するための元の駆動電圧に対する電圧調整によって、押圧位置における液晶層の見かけの階調変化や色調変化を相殺する。これにより、液晶層は、押圧の影響を軽減した階調や色調を表示して、高品位の画像表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の液晶表示装置の実施形態である液晶表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の液晶表示装置は、以下に説明する実施形態の限定的な構成には限定されない。表示単位ごとに電圧を印加して画素表示を行う限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実現可能である。
【0020】
本実施形態では、RGBカラーフィルタ方式カラー液晶表示装置と、ハイブリッドカラー液晶表示装置とを説明する。しかし、本発明は、無彩色(グレースケール)の画像表示を行う液晶表示装置や、単色のカラー階調表示を行う液晶表示装置でも利用できる。液晶層の照明方法は、バックライトを用いた透過型でもよく、観察側からの入射光を反射して利用する反射型でもよい。透過型と反射型とを組み合わせた半透過型としてもよい。
【0021】
なお、特許文献1〜5に示される液晶表示装置の製造方法、駆動方法、ペン入力装置等については、繰り返しの煩雑を回避すべく、一部図示を省略して詳細な説明も省略する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の液晶装置の断面構成の説明図、図2は液晶装置の組み立て構造の説明図、図3はガラス基板を入力ペンで押圧した状態の説明図である。
【0023】
図1に示すように、液晶パネル10は、配向層16A、16Bによって垂直配向処理を施した2枚のガラス基板14A、14Bを重ね合わせパネル化し、多数のスペーサ19によって間隔を設定されている。ほぼ5μmの間隔に液晶層17が充填されている。液晶層17の液晶材料として、誘電率異方性Δεが負である液晶材料を用いる。このような液晶材料としてはメルク社製MLC−6608(登録商標)が知られている。また、第1実施形態では、本実施の一形態ではガラス基板14A、14Bの垂直配向処理としてポリイミドによる有機膜を用いるが、SiOx等の無機層による垂直配向処理を施してもよい。
【0024】
観察側のガラス基板14Aには、RGBのカラーフィルタ層20が配置されて、隣接する3つの表示単位で1つの画素のカラー表示を行う。画素形状やカラーフィルタ構成は実施形態に応じて変化させてもよい。カラーフィルタ層20下には、透明な導電体材料を用いた共通電極15が配置されている。
【0025】
反対側のガラス基板14Bは、画素電極18の下に薄膜トランジスタ(TFT)が配置されて、アクティブマトリクス基板を構成している。画素電極18は、アルミ電極を用いた反射型構成とした。画素電極18は、表示領域11ごとに分割されて、薄膜トランジスタによって独立した駆動電圧が印加される。ガラス基板14Bには、後述するソース線とゲート線とが立体交差して格子状に配列され、ソース線とゲート線との各交点に薄膜トランジスタ素子が配置される。
【0026】
観察側のガラス基板(カラーフィルタ基板)14Aと偏光板12との間には、位相補償板として広帯域λ/4板(可視光領域で1/4波長条件をほぼ満たすことができる位相補償板)が配置されている。これにより、画素電極18に駆動電圧を印加して反射型表示を行う際に、電圧無印加時には暗状態となり、電圧印加時には明状態となるようなノーマリブラック構成となる。
【0027】
なお、第1実施形態では、薄膜トランジスタ(TFT)を配置したアクティブマトリクス基板を用いた反射型の液晶パネル10を用いて説明するが、単純マトリクス基板を用いたパネルや反射機能を備えない透過型液晶パネルを用いても同様な結果が得られる。
【0028】
図2に示すように、液晶パネル10は、表示領域11をマトリックス配置した表示領域31に隣接させて、ソース線側駆動回路32とゲート線側駆動回路33とを配置している。液晶パネル10には、表示領域11のピッチでソース線32Lとゲート線33Lとが井桁状に配列しており、ソース線32Lとゲート線33Lとの各交点に表示領域11を駆動する薄膜トランジスタが配置されている。
【0029】
制御部36は、ゲート線側駆動回路33とソース線側駆動回路32とを制御して液晶パネル10に画像を表示させる。制御部36は、ゲート線側駆動回路33に駆動信号を出力してゲート線33Lを順次走査させ、走査に応じたゲート線33L上の多数の薄膜トランジスタをオン状態とする。制御部36は、ソース線側駆動回路32に駆動信号と駆動電圧とを出力して、ゲート線33Lの走査に同期したタイミングで、多数のソース線32Lに、それぞれ表示データに応じた駆動電圧を出力させる。駆動電圧は、オン状態の薄膜トランジスタを通じて図1に示す画素電極18に印加される。共通電極15と画素電極18とが、液晶層17に電界を及ぼして駆動電圧の大小に応じた光変調を行うことにより、表示領域31に任意の画像を出力できる。
【0030】
制御部36は、メモリ37から小領域の補正電圧分布を補正回路38に出力させて、押圧位置を中心とする階調が影響される領域の駆動電圧を調整する。補正回路38で調整された駆動電圧がソース線側駆動回路32に入力される。
【0031】
液晶パネル10の表示領域31に重ねてペン入力部34が配置されている。ペン入力部34は、透明な薄いシート状で、入力ペン43のペン先から出力された電磁波を検知する多数のアンテナ34X、34Yが配列されている。入力位置座標算定部35は、多数のアンテナ34X、34Yの出力を検知して、ペン入力部34の平面における入力ペン43のペン先位置を制御部36に出力する。制御部36は、駆動信号の一部を書き替えて、入力されたペン先位置をポインタを画像表示する。
【0032】
入力位置座標算定部35の出力は、制御部36に入力されて画像表示とリンクさせることにより、ペン入力デバイスによる位置検出機能を備えた液晶表示装置1が機能する。なお、第1実施形態で用いることができるペン入力部34としては、電磁誘導方式や抵抗膜方式のペン型入力デバイス等が知られている。ペン入力部34は、表示領域31の観察側に配置されているが、抵抗膜方式では表示領域31に対して観察側に配置してもよいし、電磁誘導方式では液晶パネル10内、もしくは液晶パネル10背面に配置してもよい。
【0033】
図3に、ペン入力によって液晶パネル10に圧力が加わった場合のパネル断面を模式的に示す。入力ペン43のペン先を液晶パネル10(ペン入力部34)に押し当てることで、二枚のガラス基板14A、14Bに挟持された液晶層17の厚さが、接触点を中心に減少する。ガラス基板14Aの変形によって、接触点を中心とする領域の液晶分子の配向状態も変化する。これにより、接触点を中心とする領域に表示された画像の濃度が押圧前と違ってくる。
【0034】
そこで、押圧の影響が及ぶ領域内の表示領域11に対する補正電圧をメモリ37に記憶させておき、接触点を中心とする領域の表示領域11に補正電圧を適用する。検出されたXY座標位置を中心とする領域の表示領域11に印加される駆動電圧に補正電圧を加算して、押圧状態の表示単位の階調を押圧前の階調に近付ける。駆動電圧を上げるか下げるかは、液晶層17の材料、配向モード、偏光板の配置、駆動モードの組み合わせによって定まる。第1実施形態では、次のように実験して補正電圧のマップを定めた。
【0035】
ペンを用いない場合の液晶層17に印加される駆動電圧をV1とする。このとき、パネル透過率をT1とする。次に、この表示状態の液晶パネル10に入力ペン43のペン先を接触させて圧力を加えると、液晶層17の厚さが減少変動して、パネル透過率Tは、増加もしくは減少変動する。この増加もしくは減少変動したパネル透過率Tを押圧前の透過率T1と一致させるために、ペン入力時には、駆動電圧V1に補正電圧Vdiffを加えた駆動電圧V2を液晶層17に印加する。補正電圧Vdiffは、液晶層17の厚さの変動量が大きくなると絶対値が大きくなり、元の印加電圧V1が大きいと絶対値が大きくなる。
【0036】
補正電圧Vdiffは、液晶層17の厚さの変動量と元の印加電圧V1との組み合わせに対して、ほぼ一対一で対応する。そのため、ペン入力時の変動量の平面分布と補正電圧と元の印加電圧V1との関係をルックアップテーブル上に作成してメモリ37に保存することで、液晶パネル10の任意の場所における補正電圧Vdiffを取り出すことができる。
【0037】
このように、予め保存したルックアップテーブルを用いて表示画像の補正を行う方法は、液晶パネル10内に特別な補助シール部や画素間の隔壁構造と言ったセル厚変動を抑えるための特別な構造物を作成する必要がない。このため、既存の液晶パネル10をそのまま用いることができる。
【0038】
また、液晶パネル10の前面に保護板を入れてペン先の押圧力が液晶パネル10の押圧点にかからないようにする方式では、保護板と隙間との距離だけ画像表示面とペン先との距離が開く。これにより、斜めから観察した際の視差が生じてペン先による位置指定に誤差が生じる可能性がある。しかし、第1実施形態では、画像表示面とペン先が接触しているため、このような視差を低減できる。
【0039】
ペン入力部34としては、特許文献5に示される抵抗膜方式や、その他の各種電磁誘導方式を用いてもよい。
【0040】
ルックアップテーブルは、入力ペン43の先端位置の相対座標と駆動信号レベルとを入力として、補正信号Vdiffを出力としたテーブルである。ルックアップテーブル作成時には、まず、最高階調(または最低階調)の駆動電圧V1をすべての表示領域11に印加して、一律な階調の画像を液晶パネル10の全面に表示させる。次に、入力ペン43のペン先を液晶パネル10に押し当てる。入力ペン43を液晶パネル10に押し当てる圧力は、押し当て時に十分液晶層17の厚さが変化し、それ以上圧力を大きくしても液晶層17の厚さの減少がない値に設定するとよい。次に、輝度計を用いてペンが押し当てられている接触点周囲の輝度分布を測定する。この際、輝度分布の測定範囲は、輝度変動がないと認められる範囲で十分である。
【0041】
次に駆動電圧V1の信号レベルをΔvずつ減少(増加)させて、再び同様に接触点周囲の輝度分布を測定する。Δvの値としては、ソース線側駆動回路32のDAコンバータの入力分解能に合わせるとよい。このように、駆動電圧レベルを順次変化させて、入力ペン43の押し当てにより輝度変動が生じる領域内に定めた複数の領域で輝度測定を行う。
【0042】
次に、駆動電圧レベルの異なる輝度測定結果を比較して、駆動電圧Vpで輝度変動が生じた領域内の複数の領域について、押し当て前の元の輝度と等しくなる駆動電圧Vuを求める。そして、複数の領域における駆動電圧Vpと駆動電圧Vuとの差分を補正信号Vdiffとしてルックアップテーブルに保存する。この作業を繰り返すことで、ペン先を中心とする輝度変動領域におけるルックアップテーブルを作成してメモリ37に保存する。
【0043】
図2に示すように、実際の使用時において、入力位置座標算定部35から制御部36に入力ペン43の押圧位置が入力されると、制御部36は、補正すべき領域の階調をメモリ37に入力して、階調に応じた補正信号Vdiffを補正回路38に供給させる。補正回路38は、駆動信号および駆動電圧に同期したタイミングでソース線側駆動回路32に補正信号Vdiffを出力して入力ペン43のペン先を中心とする領域に補正信号Vdiffを適用する。ソース線側駆動回路32は、ペン先を中心とする領域の表示領域11に対して、それぞれの駆動電圧に補正信号Vdiffを加算して、表示領域11の液晶層17に印加する。
【0044】
言い換えれば、補正回路38は、入力位置座標算定部35で検出された位置情報に基づいて表示画像のどこにメモリ37の補正信号Vdiffを適用するかを決定する。補正回路38から出力された補正信号Vdiffは、ソース線側駆動回路32に入力される駆動電圧を調整して、表示単位の表示階調を補正する。これによりペン入力時のセル厚変動による表示画像の劣化を低減できる。
【0045】
<第2実施形態>
図4は第2実施形態の液晶表示装置の制御部における制御のフローチャートである。第2実施形態の液晶表示装置は、入力ペン43が押圧力の検知機構を備えている以外は第1実施形態と同様に構成されている。従って、図1、図2も併せて参照して説明を行う。
【0046】
図2に示すように、第2実施形態の液晶表示装置は、入力ペン43のペン先がばね付勢に逆らって引き込み方向に移動可能である。ペン先の移動は、入力ペン43の内部に配置されたフェライトコアをコイル内で移動させて、コイルを用いた発振回路の出力周波数を変化させる。
【0047】
入力位置座標算定部35は、アンテナ34X、34Yを通じて検知した入力ペン43の出力電磁波の周波数を検知して、入力ペン43のペン先が液晶パネル10を押圧する力を検知する。このような筆圧検知機能を持つペン入力デバイスとしては、特許文献2で示される電磁誘導方式のペン型入力デバイスを利用できる。
【0048】
メモリ37は、最大の押圧力を想定した押圧位置を中心とする複数の領域における押圧時と押圧前の階調差のルックアップテーブルを記憶して、制御部36に直接接続されている。第2実施形態におけるルックアップテーブルは、8ビット256階調の表示領域11の駆動電圧に加算される補正階調量(例えば−10階調)を押圧の影響が及ぶ小領域のすべての表示領域11について255通り(元の階調値ごと)に定めている。この小領域の中心位置を押圧位置に重ねて元の階調値に応じた補正階調量を加算することにより、液晶パネル10上の押圧位置を中心とする小領域の階調が補正される。
【0049】
制御部36は、液晶パネル10に表示される元の画像データを、メモリ37のルックアップテーブルを加算することにより補正画像データを形成し、押圧力に応じた補正も行う。そして、補正画像データから駆動電圧を生成してソース線側駆動回路32に入力することにより、調整された画像表示を行う。
【0050】
図4に示すように、制御部36は、液晶パネル10に表示すべき画像データを取り込む(S11)。そして、位置座標算定部35から入力ペン43の指示位置が入力されているか否かを判断する(S12)。指示位置が入力されていなければ、画面の押圧に係る調整が不要なので、元の画像データのまま画像出力を行う(S17)。しかし、指示位置が入力されている場合は、メモリ37のルックアップテーブルから押圧領域の元の画像データの階調に応じた階調補正量を読み込む(S13)。
【0051】
そして、位置座標算定部35から入力された押圧力を読み取り(S14)、最大押圧力と押圧力との比を階調補正量に乗じることにより、押圧領域の階調補正量を押圧力に応じて補正する(S15)。そして、補正された押圧領域の階調補正量を元の画像データに加算して補正画像データを生成し(S16)、補正画像データを用いて画像表示を行う(S17)。補正画像データを走査線に分解して、表示領域11ごとの駆動電圧の階調値を演算し、駆動信号に同期したタイミングで、走査線上の一列の表示領域11の階調値をソース線側駆動回路に送出する。
【0052】
なお、メモリ37のルックアップテーブルは、ペン入力位置からの相対位置と表示される階調レベルと筆圧情報との組み合わせに対して、補正信号Vdiffを出力するものとしてもよい。この場合、第1実施形態に説明したように、押圧位置を中心とする複数の領域について、ルックアップテーブルを参照してそれぞれの補正信号Vdiffを用いて、同様な画像濃度の調整を行うことができる。ルックアップテーブルには、補正領域内での相対位置と元の階調レベルと筆圧情報との組み合わせに対する補正信号Vdiffを入力しておく。そして、実際の使用時においては、補正領域内での相対位置と元の階調レベルと筆圧情報とを指定して、必要な補正信号Vdiffが得られるようにしておく。
【0053】
第2実施形態の液晶表示装置によれば、入力ペン43の位置情報だけでなく筆圧情報も用いるので、ペン入力時の筆圧変動によって液晶層17の厚みが変動した場合でも、表示画像の劣化を低減でき、第1実施形態よりもさらに表示画像の劣化を低減できる。
【0054】
<第3実施形態>
図5は第3実施形態の液晶表示装置の1つの画素における表示単位の配置の説明図、図6は1つの画素の断面構成の説明図である。図7は液晶層の印加電圧と色調変化の関係の線図、図8は原色表示セルと補色表示セルとにおける表示の説明図である。第3実施形態は、第1実施形態とは画素のフィルタ配置が異なるハイブリッドカラー液晶表示装置である。しかし、それ以外の液晶パネル50および回路の構成や駆動方法は第1実施形態とほぼ同じなので、図2も併せて参照して説明する。
【0055】
図5に示すように、第3実施形態の液晶パネル50は、マゼンタ色のカラーフィルタ層70Mを配置した補色表示領域52と、緑色のカラーフィルタ層70Gを配置した原色表示領域53とを隣接配置した画素510を用いて画像表示を行う。画素51は、補色表示領域52の表示色と原色表示領域53の表示色とを加法混色して多数の色数(色相と階諧)を表示する。
【0056】
図6に示すように、液晶パネル50は、観察側のガラス基板64Aから入射した照明光(外光)を、反対側のガラス基板64Bに形成された反射電極68M、68Gで折り返してガラス基板64Aから観察側へ射出させる。ガラス基板64Aには、液晶パネル50のすべての表示領域52、53に共通な共通電極65が配置される。ガラス基板64Bには、表示領域52、53ごとに分割された反射電極68M、68Gが配置されている。
【0057】
ガラス基板64A上には、表示領域52、53の往復透過光から特定複屈折量範囲の光を選択透過させる偏光板62と広帯域λ/4板63とが配置される。位相補償板としての広帯域λ/4板63は、可視光領域で1/4波長条件をほぼ満たすことができる位相補償板である。広帯域λ/4板63によって、反射型での表示の際に、電圧無印加時には暗状態となり、電圧印加時には明状態となるようなノーマリブラック構成となる。
【0058】
ガラス基板64Aには、マゼンタ色のカラーフィルタ層70M、緑色のカラーフィルタ層70Gが平坦に配置され、液晶層67との界面が配向層66Aで覆われている。
【0059】
ガラス基板64Bには、ソース線32Lとゲート線33Lとが格子状に配列される。ソース線32Lとゲート線33Lとの各交点に表示領域52、53ごとの薄膜トランジスタ(TFT)69M、69Gを配置して、層間絶縁層69Hで絶縁してある。
【0060】
層間絶縁層69H上に、拡散反射性を付与したアルミ電極の反射電極68M、68Gが配置されている。反射電極68M、68Gは、平坦化層68Hによって覆われ、平坦化層68H上に配向層66Bが形成されている。
【0061】
ガラス基板64Aの配向層66Aとガラス基板64Bの配向層66Bとの間に液晶層67が配置される。液晶層67は、共通電極65と、反射電極68M、68Gとの間に印加された電圧に応じて光学的性質(複屈折量)を変化させる。補色表示領域52の液晶層67は、偏光板62を通じて無彩色の階調光が得られる無彩色領域に加えて、出力光の色相が変化する有彩色領域でも複屈折量を制御される。しかし、原色表示領域53の液晶層67は、偏光板62を通じて無彩色の階調光が得られる無彩色領域で専ら複屈折量を制御される。
【0062】
液晶層67の複屈折量は、共通電極64Aと反射電極68M、68Gとの間に印加された電圧に応じて、図7に示すように変化する。補色表示領域52および原色表示領域53は、0V〜3Vの電圧範囲に定めた256段階の階調電圧によって、偏光板62を通じた液晶層67の透過率をほぼ連続的に変化させる。このとき、図8に示すように、原色表示領域53は、緑色のカラーフィルタ層70Gが緑色の光だけを選択透過するので、黒〜緑の単色連続階調を表示する。また、補色表示領域52は、マゼンタ色のカラーフィルタ層70Mがマゼンタ色の光だけを選択透過するので、黒〜マゼンタ色の単色連続階調を表示する。従って、補色表示領域52によるマゼンタ色光と、原色表示領域53による緑色光との加法混色によって、画素10が黒〜白の連続階調(グレースケール)を表示する。
【0063】
一方、補色表示領域52は、図7に示すように、3.8Vの定電圧が反射電極68Mに印加されると、偏光板62を通じて赤色光を選択出力する。また、5Vの定電圧が反射電極68Mに印加されると、偏光板62を通じて青色光を選択出力する。従って、画素10は、図8に示すように、原色表示領域53による緑色の階調出力光、補色表示領域52による赤色または青色の単色出力光、および緑色の階調出力光と赤色または青色の単色出力光とを加法混色した各種の中間色を表示可能である。赤、緑、青の三原色の混色によるカラー表示が可能となる。
【0064】
なお、液晶パネル50の画素51は、黒から白にいたる連続階調表示、及び黒から緑への連続階調表示、黒からマゼンタへいたる連続階調表示は可能であるが、赤と青に関しては離散的な階調表示のみとなる。しかし、実用上は、赤と青に関して複数画素範囲内での発光数を異ならせるディザリング処理を行うことで連続階調表示に遜色がない表示品位を得られる。
【0065】
液晶層67の厚さは5ミクロンとする。このとき、共通電極65に対して反射電極68M、68Gに±5V電圧を印加した時の複屈折量は約300nmとなっている。このような液晶パネル50について、電圧を変化させることによって画像を表示させると、原色表示領域53に関しては、3V以下の領域では駆動電圧に応じた透過率変化を示し連続階調特性が得られる。一方、補色表示領域52に関しては、5V印加時には青色、3.8V印加時には赤色表示となるため、第3実施形態の液晶パネル50が三原色表示であることがわかる。
【0066】
液晶パネル50の二枚のガラス基板64A、64Bにより挟持される液晶層67の複屈折量Rは、平均複屈折Δneffと液晶層の厚さdによりR=Δneff ・dであらわされる。また、Δneffは、反射電極68M、68Gに駆動電圧を印加することで変調される。このとき、液晶パネル50を通過する光量は、複屈折量Rの値に応じた値となる。
【0067】
図2に示すペン入力部34を液晶パネル50に重ねて入力ペン43で画面上を押圧すると、液晶層67の厚さが変動する。液晶層67の厚さが変動すると、複屈折量Rは液晶層67の厚さに比例するため、厚さの変動量に応じて表示画像にムラが生じる可能性がある。そのため、第1実施形態または第2実施形態のような補正のためのルックアップテーブルを設けて、元の駆動電圧とは異なる調整された駆動電圧を反射電極68M、68Gに印加する。これにより、ハイブリッドカラー表示を行う液晶パネル50とメモリ37のルックアップテーブルを用いた駆動電圧の補正制御との組み合わせが効果を奏する。つまり、入力ペン43による押圧を受けても、押圧されない場合に近い高品位で乱れの少ない画像表示が可能となる。
【0068】
<比較例の液晶表示装置>
ネマティック液晶表示装置において、一つ一つの画素に薄膜トランジスタ(TFT)のような能動素子を配置した、アクティブマトリクスといわれる液晶パネルが実用化されている。現在、このアクティブマトリクス型の液晶表示装置に用いられるネマティック液晶のモードとして、ツイステッドネマチック(Twisted Nematic:TN)モードが広く用いられている。また、最近ではVAモードあるいは垂直配向モードと呼ばれるTNモードに比べて比較的視野角の広い液晶モードも用いられている。
【0069】
また、VAモードを基本としてカラーフィルタによる呈色と複屈折の干渉による呈色とを組み合わせたハイブリッドモードが、光の利用効率のよいモードとして特許文献4に示されている。
【0070】
このような液晶パネルにペン入力方式による位置検出装置を積層させると、ペン入力時の圧力により、液晶パネルが加圧されて液晶層の厚さが変動し、または、液晶層内の液晶配向に乱れが生じ、液晶層を通過する光の変更状態が変動することがありうる。その結果として表示画像の輝度レベルが想定値からずれてしまい、表示品位が劣化することがありうる。結果として表示画像の品位が劣化することがありうる。
【0071】
<発明との対応>
第1実施形態の液晶表示装置1は、液晶層17を挟んで配置された一対のガラス基板14A、14Bと、一対のガラス基板14A、14Bに配置されて、表示領域11ごとの液晶層17に駆動電圧を印加可能な画素電極18と、画素電極18に表示領域11ごとの駆動電圧を印加して画像表示させるソース線側駆動回路32とを備える。そして、ガラス基板14A、14B上の押圧位置を検知するペン入力部34を備え、ソース線側駆動回路32は、検知された押圧位置における駆動電圧を、押圧されない表示状態に近付ける方向に調整する。
【0072】
液晶表示装置1では、画像表示するための元の駆動電圧に対する電圧調整によって、押圧位置における液晶層17の見かけの階調変化や色調変化を相殺する。これにより、液晶層17は、押圧の影響を軽減した階調や色調を表示して、高品位の画像表示を行うことができる。
【0073】
第3実施形態のハイブリッドカラー液晶表示装置は、隣接する2つの表示領域52、53で1つの画素51を構成し、少なくとも一方の表示領域52で液晶層67の複屈折量を有彩色領域で制御する。これにより、画素51をカラー表示させる。
【0074】
液晶表示装置1は、液晶層17の観察側に配置されたガラス基板14Aに、ガラス基板14A上の押圧位置を検知するペン入力部34を備える。そして、液晶層17に駆動電圧を印加して画像表示を行うとともに、検知された前記押圧位置の駆動電圧を、押圧されない表示状態に近付ける方向に調整するソース線側駆動回路32を備える。
【0075】
液晶表示装置1では、元々押圧位置を検知するために設けてあるペン入力部34の出力を用いて、補正を行う中心位置を定めるので、押圧位置を検知するための手段を別途設ける必要がない。
【0076】
液晶表示装置1のペン入力部34は、前記押圧位置の押圧力を検知する入力ペン43のペン先構造を有する。そして、ソース線側駆動回路32は、検知された押圧力に応じて前記駆動電圧の調整量を変化させ、押圧力が大きい場合には小さい場合よりも前記調整量を増す。これにより、押圧力に応じた調整をしない場合に比較して、より正確な、つまり押圧されない状態に近い画像表示が可能となる。
【0077】
液晶表示装置1の制御部36、メモリ37、補正回路38、ソース線側駆動回路32は、画像表示を行う駆動電圧に応じて駆動電圧の調整量を変化させる。そして、駆動電圧が大きい場合には小さい場合よりも調整量を増す。
【0078】
液晶表示装置1の制御部36、メモリ37、補正回路38、ソース線側駆動回路32は、前記押圧位置を中心として外側へ向かって前記調整量を段階的に減少させる。
【0079】
液晶表示装置1の制御部36、メモリ37、補正回路38、ソース線側駆動回路32は、複数の領域についてそれぞれ前記調整量を記録したメモリ37を有する。そして、ソース線側駆動回路32は、メモリ37に記録された前記複数の領域の前記調整量を、ガラス基板14A上の押圧位置を中心とする該当する領域の画像表示を行う前記駆動電圧に加算する。これにより、押圧位置を中心とする所定領域に前記複数の領域の前記調整量を適用するだけで必要な調整を行うことができ、液晶パネル10のすべての座標位置を押圧位置とした調整量を準備しておく必要が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第1実施形態の液晶装置の断面構成の説明図である。
【図2】液晶装置の組み立て構造の説明図である。
【図3】ガラス基板を入力ペンで押圧した状態の説明図である。
【図4】第2実施形態の液晶表示装置の制御部における制御のフローチャートである。
【図5】第3実施形態の液晶表示装置の1つの画素における表示単位の配置の説明図である。
【図6】1つの画素の断面構成の説明図である。
【図7】液晶層の印加電圧と色調変化の関係の線図である。
【図8】原色表示セルと補色表示セルとにおける表示の説明図である。
【符号の説明】
【0081】
1 液晶表示装置
10、50 液晶パネル
11、52、53 表示単位(表示領域、補色表示領域、原色表示領域)
12 偏光板
14A、14B、64A、64B 基板部材(ガラス基板)
15、65 共通電極
16A、16B 配向層
17、67 液晶層
18、68M、68G 電極手段(画素電極、反射電極)
19 スペーサ
20、70M、70G カラーフィルタ層
31 表示領域
32 駆動手段(ソース線側駆動回路)
33 ゲート線側駆動回路
34 ペン入力部
35 入力位置座標算定部
36 制御部
37 記録手段(メモリ)
38 補正回路
43 入力ペン
69M、69G 薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を挟んで配置された一対の基板部材と、
前記一対の基板部材に配置されて、表示単位ごとの前記液晶層に駆動電圧を印加可能な電極手段と、
前記電極手段に前記表示単位ごとの駆動電圧を印加して画像表示させる駆動手段と、を備えた液晶表示装置において、
前記基板部材上の押圧位置を検知する位置検知手段を備え、
前記駆動手段は、検知された前記押圧位置における前記駆動電圧を、押圧されない表示状態に近付ける方向に調整することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
隣接する2つの前記表示単位で1つの画素を構成し、少なくとも一方の前記表示単位で前記液晶層の複屈折量を有彩色領域で制御することにより、前記画素をカラー表示させることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
液晶層の観察側に配置された基板部材に、前記基板部材上の押圧位置を検知する位置検知手段を備えた液晶表示装置において、
前記液晶層に駆動電圧を印加して画像表示を行うとともに、検知された前記押圧位置の前記駆動電圧を、押圧されない表示状態に近付ける方向に調整する駆動手段を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
前記位置検知手段は、前記押圧位置の押圧力を検知する押圧力検知手段を有し、
前記駆動手段は、検知された押圧力に応じて前記駆動電圧の調整量を変化させることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、画像表示を行う前記駆動電圧に応じて前記駆動電圧の調整量を変化させ、前記駆動電圧が大きい場合には小さい場合よりも前記調整量を増すことを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記押圧位置を中心として外側へ向かって前記調整量を段階的に減少させることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の液晶表示装置。
【請求項7】
複数の領域についてそれぞれ前記調整量を記録した記録手段を有し、
前記駆動手段は、前記記録手段に記録された前記複数の領域の前記調整量を、前記基板部材上の押圧位置を中心とする該当する領域の画像表示を行う前記駆動電圧に加算することを特徴とする請求項6記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−218986(P2007−218986A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36610(P2006−36610)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】