説明

液晶配向剤

【課題】大型のLCDTV用液晶配向剤に求められる長期信頼性及び高い電圧保持率(V
HR)、安定した初期傾斜角の維持、液晶配向性及び耐化学性などの優れた長所を有し、
LCD製品の高い表示品質を具現するだけでなく、LCDパネル製造工程において、液晶滴下及び洗浄などの他の工程により配向膜特性が低下しない、優れた液晶配向剤を提供する。
【解決手段】長期間の駆動にも安定した信頼性を有する液晶配向剤、より詳しくは、機能性ジアミン、脂環族酸二無水物及び環状芳香族酸二無水物を反応させて得た、特定のポリアミド酸及び前記ポリアミド酸をイミド化させて得た、特定のポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物、エポキシ官能基を有する化合物及び有機溶媒を含む液晶配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤(Alignment Agent of Liquid Crystal)に関し、特に、長期に
わたる駆動においても、高い電圧保持率を維持し残像の発現を抑えるだけでなく、液晶の初期傾斜角(プレチルト角)を高く安定して維持し、LCDパネルの製造の際における種々の物理化学的ストレスに対して、配向膜表面の特性低下がないことを特徴とする液晶配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示素子は、一般に、透明なITO導電膜付のガラス基板に、液晶配向剤を塗布し、これを熱により硬化して配向膜を形成した後、基板2枚を対向して貼り合わせてから液晶を注入するか、一方の基板に液晶を滴下してから対向基板を貼り合わせて作製され、5世代以上の中大型ラインでは、液晶滴下方式がとられている。一般に使用されている液晶配向剤は、塗布後に配向膜を形成する高分子樹脂を溶媒に溶解した溶液であり、この時の高分子樹脂としては、芳香族酸二無水物と芳香族ジアミンを縮重合したポリアミド酸、または、それを脱水閉環してイミド化したポリイミドが使用されている。
【0003】
ところが、前記のように、芳香族酸二無水物及びジアミンのみを使用する場合、熱安定性、耐薬品性、機械的性質などには優れるものの、電荷移動錯体(charge transfer complex)により、透明性及び溶解性が低下し、電気光学特性が低下する問題点がある。
【0004】
これを解決するために、脂環族酸二無水物単量体、あるいは脂環族ジアミンを取り入れ、前記問題を改善しようとしている(特許文献1;特開平11-84391号公報)。また
、液晶の初期傾斜角の増加と安全性のために、側鎖を有する機能性ジアミン、または側鎖を有する機能性酸二無水物などが導入されている(特許文献2;特開平06-136122号公報)。なお、液晶を表面から垂直に配向し、LCDパネルを構成する垂直配向モード(VA mode)に適用できる垂直配向型配向膜の開発も進んでいる(特許文献3;米国特
許明細書第5,420,233号)。垂直配向モードは、視野角が大きく、ラビング処理
のような配向工程を要せず、大型化が容易であるため、40インチ以上の大型表示素子の場合、多くのパネル業者によって垂直配向モードが適用されている。
【0005】
ところが、垂直配向型液晶表示素子が大型化するにつれ、従来の液晶配向剤では解決しにくい種々の問題が出ている。特に、ポリアミド酸配向剤の場合、LCD工程において、印刷及び200℃内外の硬化段階を経るが(通常、ポリアミド酸の完全なイミド化は、3
00℃以上の高温化で可能である。)、イミド化率が20〜70%程度に過ぎないため、
配向膜表面に、イミド化してない多量のカルボキシル基が存在してしまう。このような未硬化カルボキシ基は、液晶内のイオン不純物を吸着して、電圧保持率(Voltage Holding Ratio)を低下させ、残像の発生を促進することが知られている。ポリイミド配向剤の場合にも、100%のイミド化は不可能であるため、長期にわたる駆動においては、残像が発現してしまう材料的な問題点がある。また、垂直配向を具現するために、側鎖基を有する機能性ジアミン化合物をポリマー主鎖に取り入れた場合には、疎水性(hydrophobic)側鎖が配向膜の表面張力を低め、80〜89゜の高い初期傾斜角を発現する。しかしながら、機能性ジアミンの側鎖基として使用される炭素数6〜24の長鎖アルキル(long alkyl)は、鎖がフレキシブルであるため、液晶滴下のよ
うな物理的衝撃を受けた場合、初期傾斜角が減少し、画面にムラができる問題がある。
【特許文献1】特開平11-84391号公報
【特許文献2】特開平06-136122号公報
【特許文献3】米国特許明細書第5,420,233号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の問題点を充分認識し、特に、残像の形成を抑え、配向膜材料の信頼性を高めることを目的とし、ODF(One Drop Fill)方式の液晶滴下による垂直配向力が低下せず、工程条件の変化に対して、安定した液晶配向剤を提供する技術を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため、本発明は、機能性ジアミン、脂環族酸二無水物及び環状芳香族酸二無水物を反応させて得た、下式1で表されるポリアミド酸、及び前記ポリアミド酸をイミド化させて得た、下式2で表されるポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物、エポキシ官能基を有する化合物及び有機溶媒を含むことを特徴とする液晶配向剤である。
【0008】
【化12】

【0009】
(R1は、下式8で表される芳香族、または下式9で表される脂肪族から選択された1種以上の4価有機基であり、R2は、芳香族ジアミンから誘導された下式10で表される1種
以上の2価有機基、及び機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基である。)
【0010】
【化13】

【0011】
【化14】

【0012】
(X1、X2、X3、X4は、それぞれ独立に、-CH3、-F、-Hである。)
【0013】
【化15】

【0014】
【化16】

【0015】
(R3は、前式8で表される芳香族、または前式9で表される脂肪族から選択された1種以上の4価有機基、R4は、芳香族ジアミンから誘導された前式10で表される1種以上の
2価有機基、および機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基であって、特に、R4の0.1〜50モル%は、機能性ジアミンから誘導された2価有機基である。)
本発明で、機能性ジアミンとしては、下式3乃至6の構造を有するジアミンの何れか一つ以上を使用することができる。
【0016】
【化17】

【0017】
(nは、1〜30の整数)
【0018】
【化18】

【0019】
(式4中、Aは、水素原子またはメチル基であり、Bは、-O-、-COO-、-CONH-、-OCO-、または -(CH2)n- (nは、1乃至10の整数)であり、Cは、炭素数1乃至2
0の線形、枝形または環状のアルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であって、その末端には、1〜10のハロゲン原子含有置換基を有しており、さらに-O-、-COO-、-CONH-、及び -OCO-からなる群
から選択された一つ以上のヘテロ原子含有基を含んでいてもよい。)
【0020】
【化19】

【0021】
(式5で、Aは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Bは、単
結合、ベンゼン環状、置換アルキル基を有するベンゼン環状または脂環族環状であり、Cは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Dは、単結合、ベンゼン環状または脂環族環状であり、Rは、炭素数1乃至20の、飽和または不飽和の、線形アルキル基、枝形アルキル基または脂環族環状アルキル基であり、Rのアルキル基は、一つ以上の置換ハロゲン原子を有していてもよい。)
【0022】
【化20】

【0023】
(式6で、Aは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Bは、単
結合、-O-、-COO-、-CONH-、または-OCO-であり、Cは、単結合、-O-、-C
OO-、-CONH-または-OCO-であり、Dは、それぞれ、独立に、炭素数1乃至20
の線形、枝形または環状アルキル基、または、前式2で表される作用基であって、前記Dは、一つ以上の置換ハロゲン原子を有していてもよい。)
前記エポキシ官能基を有する化合物は、エポキシ官能基が2〜4個の化合物の中、1種以上を含むことを特徴とする。
前記エポキシ官能基を有する化合物は、下式7の化合物の何れか一つであることを特徴とする。
【0024】
【化21】

【0025】
(R5は、芳香族または炭素数1〜4の脂環族2価有機基。)
前式1で表されるポリアミド酸は、芳香族ジアミン及び下式11で表されるシロキサン系ジアミンのうちの1種以上を追加的に含んで反応させて得られることを特徴とする。
【0026】
【化22】

【0027】
(nは、1〜10の整数。)
前記ポリアミド酸及びポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物及びエポキシ官能基を有する化合物における固形分含量は、液晶配向剤100重量部当り0.01〜1
5重量部であることを特徴とする。
【0028】
前記エポキシ官能基を有する化合物は、前記ポリアミド酸及びポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物100重量部に対して、0.01〜50重量部の量で含まれる
ことを特徴とする。
【0029】
前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、2-ブトキシエタノ
ール (ブチルセロソルブ)及びジプロピレンモノエチルエーテル(dipropylene
monoethylether)のうちの一つ以上を含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明では、前記液晶配向剤を基板に塗布して得ることを特徴とする液晶配向膜が提供される。
また、本発明では、前記液晶配向膜を含むことを特徴とする液晶表示素子が提供される。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、液晶配向性と垂直配向力に優れ、残留DCが少ないだけでなく、長期駆動に対しても電圧保持率の低下が極めて少ない高信頼性の液晶配向剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明は、機能性ジアミン、脂環族酸二無水物及び環状芳香族酸二無水物を反応させて得た、下式1で表されるポリアミド酸、及びポリアミド酸をイミド化させて得た、下式2で表されるポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物とエポキシ官能基を有する化合物及び有機溶媒を含んでなる液晶配向剤に関するものである。
【0033】
【化23】

【0034】
(R1は、下式8で表される芳香族、または下式9で表される脂肪族から選択された1種以上の4価有機基であり、R2は、芳香族ジアミンから誘導された下式10で表される1種
以上の2価有機基、及び機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基である。)
より具体的には、前記ポリアミド酸は、機能性ジアミン、脂環族酸二無水物及び環状芳香族酸二無水物と、必要に応じて芳香族ジアミンとを反応させて得られ、上記式1の括弧内の構造単位を複数m有している。複数の構造単位は同一でも異なってもよく、異なる場合には共重合体を意味する。複数のR2はそれぞれ、芳香族ジアミンから誘導された下式
10で表される1種以上の2価有機基、及び機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基のいずれかであるが、前記ポリアミド酸は、少なくとも機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基であるR2を含む構造単位を含む。
【0035】
【化24】

【0036】
【化25】

【0037】
(X1、X2、X3、X4は、それぞれ独立に、-CH3、-F、-Hである。)
【0038】
【化26】

【0039】
【化27】

【0040】
(R3は、前式8で表される芳香族、または前式9で表される脂肪族から選択された1種以上の4価有機基、R4は、芳香族ジアミンから誘導された前式10で表される1種以上の
2価有機基、および機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基であって、特に、R4の0.1〜50モル%は、機能性ジアミンから誘導された2価有機基である。)
より具体的には、前式2で表されるポリイミド重合体は、式2の括弧内の構造単位を複数k有している。複数の構造単位は同一でも異なってもよく、異なる場合には共重合体を意味する。複数のR4はそれぞれ、芳香族ジアミンから誘導された前式10で表される1
種以上の2価有機基、及び機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基のいずれかであるが、前記ポリイミド重合体は、少なくとも機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基であるR2を含む構造単位を含む。
本発明で、機能性ジアミンとしては、下式3乃至6の構造を有するジアミンの何れか一つ以上を使用することができる。
【0041】
【化28】

【0042】
(nは、1〜30の整数)
【0043】
【化29】

【0044】
(式4中、Aは、水素原子またはメチル基であり、Bは、-O-、-COO-、-CONH-、-OCO-、または -(CH2)n- (nは、1乃至10の整数)であり、Cは、炭素数1乃至2
0の線形、枝形または環状のアルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であって、その末端には、1〜10のハロゲン原子含有置換基を有しており、さらに-O-、-COO-、-CONH-、及び -OCO-からなる群
から選択された一つ以上のヘテロ原子含有基を含んでいてもよい。)
【0045】
【化30】

【0046】
(式5で、Aは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Bは、単
結合、ベンゼン環状、アルキル基に置き換えられたベンゼン環状または脂環族環状であり、Cは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Dは、単結合、ベンゼン環状または脂環族環状であり、Rは、炭素数1乃至20の、飽和または不飽和の、線形アルキル基、枝形アルキル基または脂環族環状アルキル基であり、Rのアルキル基は、一つ以上の置換ハロゲン原子を有していてもよい。)
【0047】
【化31】

【0048】
(式6で、Aは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Bは、単
結合、-O-、-COO-、-CONH-、または-OCO-であり、Cは、単結合、-O-、-C
OO-、-CONH-または-OCO-であり、Dは、それぞれ、独立に、炭素数1乃至20
の線形、枝形または環状アルキル基、または、前式2で表される作用基であって、前記Dは、一つ以上の置換ハロゲン原子を有していてもよい。)
本発明におけるエポキシ化合物としては、一分子内に2〜4個のエポキシ官能基を有す
る化合物が望ましく、2個のエポキシ基を有する化合物としては、N,N-ジグリシジル
アニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N-ジグリシジルシクロヘキシルアミン、N,N-ジグリシジルメチルシクロヘキシルアミンがあり、4個のエポキシ官能基を有
する化合物としては、ジアミノフェニルにグリシジル官能基4個が繋がれた構造が望ましいが、具体的には、例えば、N,N,N',N'-テトラグリシジル-4,4'-ジアミノフェニルメタン(N,N,N',N'-tetraglycidyl-4,4'-diaminophenylmethane:以下、TGDDMという)、N,N,N',N'-テトラグリシジル-4,4'-ジアミノフェニルエタン(N,N,N',N'-tetraglycidyl-4,4'-diaminophenylethane)、N,N,N',N'-テトラグリシジル-4,4'-ジアミノフェニルプロパン(N,N,N',N'-tetraglycidyl-4
,4'-diaminophenylpropane)、N,N,N',N'-テトラグリシジル-4,4'-ジアミノフェニルブタン(N,N,N',N'- tetraglycidyl-
4,4'-diaminophenylbutane)、N,N,N',N'-テトラグリシジ
ル-4,4'-ジアミノベンゼン(N,N,N',N'- tetraglycidyl-4,4'-diaminobenzene)などがある。
【0049】
本発明で、エポキシ官能基を有する化合物としては、下式7の化合物のうちの一つ以上を使用することが望ましい。
【0050】
【化32】

【0051】
(R5は、芳香族または炭素数1〜4の脂環族2価有機基)
前記エポキシ官能基を有する化合物は、前記ポリアミド酸及びポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物100重量部に対して0.01〜50重量部を使用することが
望ましく、より望ましくは、1〜30重量部である。50重量部を超えると、基板に塗布の際、印刷性や平坦性が低下し、0.01重量部未満では、その効果を殆ど発揮しなくな
る。
【0052】
本発明によるポリアミド酸は、イミド構造の側鎖を有する特定の構造を有し、前記式3〜6で提示された機能性ジアミン、脂環族酸二無水物及び環状芳香族酸二無水物の反応生成物である。また、ここに、芳香族ジアミン及び下式11のようなシロキサン系ジアミンのうちの1種以上を、追加的に含んで反応させて得ることもできる。前記芳香族ジアミン及びシロキサン系ジアミンの使用量は、全ジアミン含量に対して0.01〜99.9モル%、望ましくは、70〜99.5モル%、さらに望ましくは、80〜99モル%である。
【0053】
【化33】

【0054】
(nは、1〜10の整数。)
酸二無水物及びジアミン化合物を共重合してポリアミド酸を製造する方法としては、従来、ポリアミド酸の製造が可能な方法として知られている方法であれば、制限なく適用することができる。本発明のポリアミド酸に、前記機能性ジアミンが含まれることによって、初期傾斜角の調節が容易になり、優れた配向性を示すこととなる。機能性ジアミンの含量によって初期傾斜角が調節されるので、液晶ディスプレイのモードによっては、ジアミン化合物として、芳香族ジアミン、またはシロキサン系ジアミンを全く含めず、機能性ジアミンのみを使用してポリアミド酸を製造し、液晶配向膜として使用することも可能である。芳香族ジアミン、またはシロキサン系ジアミンの使用は、選択的である。従って、ポリアミド酸のうち、前式3〜6で表される機能性ジアミンの含量は、全体のジアミン単量体の中、0.1〜50モル%、望ましくは、0.5〜30モル%、より望ましくは、1〜20モル%を占める。
【0055】
本発明のポリアミド酸の製造の際に使用される芳香族ジアミンとしては、前式10の2価有機基を誘導しうる芳香族ジアミン、たとえば、パラフェニレンジアミン(p-PDA)
、4,4-メチレンジアニリン(MDA)、4,4-オキシジアニリン(ODA)、メタビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(m-BAPS)、パラビスアミノフェノキシジフェニ
ルスルホン(p-BAPS)、2,2-ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、2,2-ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HF-BAPP)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明のポリアミド酸の製造の際に使用される環状芳香族酸二無水物は、厚さ0.1μ
m程度に塗布された配向膜が、液晶の一方向配向性を誘導するために適用されるラビング工程に耐えることができ、200℃以上の高温加工の工程に対する耐熱性を維持し、優れた耐薬品性が発現されることができるようにする。
【0057】
このような環状芳香族酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、フタル酸水素二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボキシル酸二無水物(BTDA)、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6-FDA)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記環状芳香族酸二無水物の含量は、使用される酸二無水物の全量に対し、10〜95モル%、さらに望ましくは、50〜90モル%である。環状芳香族酸二無水物の含量が、10モル%未満の場合には、配向膜の機械的特性及び耐熱性などが低くなり、80モル%を超える場合には、電圧保持率のような電気的特性が低下してしまう。
【0059】
本発明のポリアミド酸の製造の際に使用される脂環族酸二無水物は、一般有機溶媒に対する不溶性、電荷移動錯体(Charge transfer complex)による可視光線領域での低い透過性、分子構造的に高い極性による電気光学特性の低下などの問題点を補完する。
【0060】
前記脂環族酸二無水物としては、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボキシル酸無水物(DOCDA)、ビシクロオクテン-2,
3,5,6-テトラカルボキシル酸二無水物(BODA)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシル酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボ
キシル酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボキシル酸二
無水物(CHDA)、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二
無水物、1,2,3,4-テトラカルボキシシクロペンタン二無水物などがあるが、これ
に限定されるものではない。その含量は、使用される酸二無水物の全量に対し、5〜90モル%であり、望ましくは、10〜50モル%である。
【0061】
本発明によるポリアミド酸は、一般に使用されるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、
γ-ブチロラクトン(GBL)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)などのような非プロトン性極性溶媒に非常に良好
な溶解性を示す。このように優れた溶解性は、脂環族酸二無水物の導入と分子構造的な側面で、2つのアミン基(アミノ基)が大きな立体的反撥力を持って3次元的に存在する、前記機能性ジアミンの効果が大きいものと考えられる。最近、液晶表示素子の大型化、高解像度化及び高品質化によって配向剤の印刷性が非常に重要視されている状況で、このような溶媒に対する優れた溶解性は、液晶配向膜への適用時、基板に対する印刷性に良い影響を与える。ポリアミド酸の合成反応は、有機溶媒中で、通常、0〜150℃で行われ、望ましくは、0〜100℃で行われる。
【0062】
本発明の有機溶媒は、前記ポリアミド酸を溶解させることができるものであれば、別に制限なく単独または混合して使用することができ、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、フェノール系溶媒、たとえば、メタクレゾール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどを挙げることができる。
【0063】
また、前記有機溶媒のほかに、貧溶媒である、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、炭化水素類、またはハロゲン化炭化水素類を、ポリアミド酸が析出されない限度内で適正の割合で併用して使用することができるが、これは、これらの貧溶媒が、配向剤溶液の表面エネルギーを低め、塗布の際、ぬれ広がり性と平坦性を良くするからである。この時、貧溶媒の割合は、溶媒全体に対して1〜80重量部で使用することが望ましく、さらに望ましくは、5〜70重量部である。貧溶媒としては、具体的に、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール、アセトン、
メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸エステル、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールフェニルメチルエーテル、エチレングリコールフェニルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエチル、ジエチレングリコールジメチルエチル、ジエチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-
ペンタノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ
酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロ
ピオン酸メチル、メチルメトキシブタノール、エチルメトキシブタノール、メチルエトキシブタノール、エチルエトキシブタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,4-ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-
ジクロロベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを挙げることができる。
【0064】
本発明のポリアミド酸は、数平均分子量が10,000乃至500,000g/mol
の範囲であり、イミド化が進んでいる場合、イミド化率あるいは構造によって、ガラス転移温度は、200乃至350℃の範囲を有する。
【0065】
また、本発明では、前記ポリアミド酸を部分、または全体でイミド化させ、前式2のよ
うな可溶性ポリイミドの形態で製造した後、これを単独で使用して液晶配向膜を製造する、あるいは前記ポリアミド酸と可溶性ポリイミドとを混合して液晶配向膜を製造することができる。ポリアミド酸をイミド化する方法としては、3通りが広く知られている。第一は、熱的イミド化(thermal imidization)であって、ポリアミド酸溶
液を基板に塗布し、それを50〜250℃条件のオーブンやホットプレート(hot plate)上で、熱的にイミド化する方法である。しかしながら、100℃未満の温度では
、イミド化が殆ど進行しないため、150〜240℃の温度範囲が望ましく、この時のイミド化は、ポリアミド酸の種類によって、40〜80%程度の割合で進行される。
【0066】
第二は、化学的イミド化(chemical imidizaion)であって、ポリア
ミド酸溶液にイミド化触媒及び脱水剤を添加し、熱的イミド化より比較的低い温度でイミド化を進行させる方法である。この時、前記のポリアミド酸溶液に、イミド化触媒として、ピリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミン類を使用し、脱水剤としては、酢酸無水物などの酸無水物を使用する。ポリアミド酸の繰り返し単位1モルに対して脱水剤2モルが反応し、イミド閉環反応を行うこととなるが、イミド化反応の温度条件によって閉環割合が変わってくるため、適正の温度、触媒、脱水剤を使用するからこそ、所望のイミド化率のポリイミドを得ることができる。通常、イミド化反応温度は、30〜150℃であり、高いイミド化率のポリイミドを得るために、80℃未満の反応温度では、触媒と脱水剤を3モル以上過量投入し、100℃以上の反応温度では、3モル以下を投入するのが望ましい。
【0067】
第三は、テトラカルボン酸二無水物とジイソシアネイト(diisocyanate)化合物を縮合重合する方法である。ジイソシアネイト化合物としては、ポリアミド酸の重合の際に使用されるジアミン類と同様、芳香族または脂肪族ジイソシアネイト化合物であれば、いずれでも使用することができる。具体的には、例えば、パラフェレンジイソシアネイト(p-phenylene diisocynate(PPDI))、1,6-ヘキサメチ
レンジイソシアネイト(1,6-Hexamethylene diisocyanate(HDI))、トルエンジイソシアネイト(Toluene diisocyanate(TDI))、1,5-ナフタレンジイソシアネイト(1,5-Naphthalene diisocyanate(NDI))、イソホロンジイソシアネイト(Isophorone diisocyanate(IPDI)、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネイト(4,4-Dip
henylmethane diisocyanate(MDI))、シクロヘキシルメタンジイソシアネイト(Cyclohexylmethane diisocyanate(H1
2MDI))などがある。これら芳香族または脂肪族ジイソシアネイト化合物を単独、または2種以上混合し、テトラカルボン酸二無水物と縮合重合してポリイミドを得ることができ、この方法での反応温度は、通常50〜200℃、あるいは90〜170℃が望ましい。
【0068】
発明の目的で明らかになったように、本液晶配向剤は、前記のポリアミド酸またはポリイミドの何れか一つ、またはその混合物を前式7で表されるエポキシ化合物と混合して液晶配向剤を構成することにその特徴がある。前記ポリアミド酸及びポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物、及びエポキシ官能基を有する化合物における固形分含量は、0.01〜15重量%が望ましい。
【0069】
本発明では、前記液晶配向剤を基板に塗布して液晶配向膜を得ることができ、この液晶配向膜を用いて液晶表示素子を得ることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例により、より詳しく説明するが、下記の実施例は、説明の目的のためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。
〔合成例1〕
【0071】
【化34】

【0072】
1-(3,5-ジアミノフェニル)-3-オクタデシル-コハク酸イミドの製造
撹拌機、窒素注入装置付の1L反応器に窒素ガスを徐々に通過させながら3,5-ジニ
トロアニリン36.8g(0.20モル)を反応溶媒の酢酸200mlに溶解させた後、窒素ガスを通過させながら2-オクタデセン-1-イルコハク酸無水物70g(0.20モル)を入
れ、24時間還流させた。反応溶液を常温に冷却し、析出した固体を得て、これをメタノールで再結晶し、64.8gの1-(3,5-ジニトロフェニル)-3-(1-オクタデセン)-コ
ハク酸イミド(収率65%)を製造した。このようにして得られた1-(3,5-ジニトロフ
ェニル)-3-(1-オクタデセン)-コハク酸イミド51.5g(0.10モル)をNMPとエタ
ノール(1/3体積比)500mlに溶解させた後、Pd/C(5%)触媒(炭素粒子の表面に
金属パラジウム5%を塗布した触媒)2.0gと共に水素化反応器に入れた後、50℃で2
時間還元反応を行った。反応混合物を濾過した後、反応溶媒を減圧蒸溜した。ヘキサン/
エチルアセテート共溶媒の中から再結晶し、前式3で表される機能性ジアミンの1-(3,5-ジアミノフェニル)-3-オクタデシル-コハク酸イミド27.0gを得た。
〔合成例2〕
【0073】
1-(3,5-ジアミノフェニル)-3-オクタデシル-コハク酸イミド1.3523g(0.0
030モル)とパラフェニレンジアミン0.9585g(0.005モル)を撹拌機、窒素注入装置付の100ml反応器に投入し、NMP11.1gを追加して完全に溶かした後、ピ
ロメリット酸二無水物(PMDA)2.4489g(0.0112モル)を投入して2時間常温で反応した後、NMP79.3gをさらに投入し、固形分5wt%のポリアミド酸溶液9
5.2gを得た(以下、PAA-PMDA-1という)。
〔合成例3〕
【0074】
合成例1から得られた1-(3,5-ジアミノフェニル)-3-オクタデシル-コハク酸イミ
ド1.6020g(0.0035モル)とパラフェニレンジアミン1.1355g(0.010
5モル)を攪拌機、窒素注入装置付の100ml反応器に投入し、NMP12.8gを追加して完全に溶かした後、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボキシル酸二無水物(CBDA)2.7455g(0.0133モル)を投入して2時間常温で反応した後、NMP88.8gをさらに投入し、固形分5wt%のポリアミド酸溶液106.91gを得た(以下、
PAA-CBDA-1という)。
〔合成例4〕
【0075】
1-(3,5-ジアミノフェニル)-3-オクタデシル-コハク酸イミド1.3003g(0.0028モル)とパラフェニレンジアミン0.9216g(0.0085モル)を攪拌機、窒素
注入装置付の100ml反応器に投入し、NMP11.1gを追加して完全に溶かした後
、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物(TCCP)
2.5474g(0.0114モル)を投入して8時間常温で反応した後、NMP79.5g
をさらに投入し、固形分5wt%のポリアミド酸溶液95.39gを得た(以下、PAA-
TCCP-1という)。
〔合成例5〕
【0076】
1-(3,5-ジアミノフェニル)-3-オクタデシル-コハク酸イミド1.1443g(0.0025モル)と4,4-メチレンジアニリン(MDA)1.4870g(0.0075モル)を攪拌機、窒素注入装置付の100ml反応器に投入し、NMP11.4gを追加して完全に
溶かした後、1,2,4-トリカルボキシ-3-メチルカルボキシシクロペンタン二無水物(TCCP)2.2417g(0.0114モル)を投入して8時間常温で反応した後、NMP81.2gをさらに投入し、固形分5wt%のポリアミド酸溶液97.46gを得た(以下、PAA-TCCP-2という)。
〔合成例6〕
【0077】
合成例4と同様の方法により重合して得られたPAA-TCCP-1溶液(固形分5wt
%)100gを過量のメタノールに添加して沈殿、分離濾過及び洗浄して乾燥し、高分子
固形粉4.5gを得た後、これを攪拌機、窒素注入装置付の100ml反応器に投入し、
NMP40.5gを追加して完全に溶かした。撹拌と共に反応器の温度を100℃まで上
昇させ、その温度を維持しながら、ピリジン(pyridine)2.3gと無水酢酸(Acetic anhydride)3.0gを投入した後、5時間脱水閉環し、イミド化反応
を進行した。
【0078】
反応を完了した後、さらに過量のメタノールを添加し、沈澱分離濾過及び洗浄し乾燥して高分子固形粉4.0gを得て、これをさらにNMP76.0gに溶かして固形分5wt%のポリイミド溶液80.0gを得た(以下、PI-TCCP-1という)。
〔合成例7〕
【0079】
合成例5と同様の方法により重合して得られたPAA-TCCP-2溶液(固形分5wt
%)100gに過量のメタノールを添加して沈澱、分離濾過及び洗浄し乾燥して高分子固
形粉4.7gを得た後、これを攪拌機、窒素注入装置付の100ml反応器に投入し、NMP42.3gを追加して完全に溶かした。撹拌と共に反応器の温度を100℃まで上昇さ
せ、その温度を維持しながら、ピリジン(pyridine)2.4gと無水酢酸(acetic anhydride)3.1gを投入した後、5時間脱水閉環してイミド化反応を進
行した。
【0080】
反応を完了した後、さらに過量のメタノールを添加し、沈澱分離濾過及び洗浄し乾燥して高分子固形粉4.1gを得て、これをさらにNMP77.9gに溶かして固形分5.0w
t%のポリイミド溶液82.0gを得た(以下、PI-TCCP-2という)。
〔実施例1〕
【0081】
前記合成例2から得られた固形分5.0wt%のPAA-PMDA-1溶液50gにエポ
キシ化合物TGDDM(Vantico社)0.25g(全固形分含量の10%)をNMP4.75gに溶かしたものを添加して12時間撹拌した後、孔径0.1μmのフィルターで濾
過し、固形分5.0wt%の配向膜溶液を得た(以下、AL-PAA-PMDA-1という)。前記の方法により製造された配向膜溶液を10cm×10cmの大きさのITOガラスのITO面上に塗布し、一定の条件下でスピンコートして0.1μmの厚さで均一に被覆し
た後、ホットプレート上で70℃での脱溶媒過程と、210℃での硬化過程を経て試料とした。目視と光学顕微鏡により、調製した試料のぬれ広がり特性と曲げ特性を観察し、配向膜溶液の印刷性を評価した。印刷性の評価結果は、下記の表1に示した。
【0082】
配向膜溶液の液晶配向性、耐化学性、初期傾斜角及び電気・光学特性を評価するために、前記試料とは異なる液晶セルを作製して使用した。液晶セルの製造は、次のようである。
【0083】
規格化された大きさのITOガラス基板に、1.5cm×1.5cmの大きさの四角形ITOパターンと電圧印加のための電極ITOパターンのみを残し、他の部分のITOを除去するために、フォトリソグラフィー工程を用いてパターン化した。パターン化したITO面の基板に配向膜溶液を塗布し、スピンコートして0.1μmの厚さに被覆した後、7
0℃と210℃で硬化した。続いて、ラビング機を用いて一定の深さ、一定の速度でラビングした2個の基板を、ラビング方向が相互反対方向(VA モード用)/90°になるようにした後、4.75μmのセルギャップを維持したまま四角形ITOのパターンが上下一
致するように接合した。このような方法により作られたセルに液晶を注入した後、直交偏光された光学顕微鏡により、液晶配向性を観察し、結果を下記の表1にまとめた。初期傾斜角の評価のための液晶セルは、セルギャップを50μmに維持するよう、前記の方法とは異なって別に製造した。
【0084】
配向剤溶液による液晶の初期傾斜角を測定するために、50μmセルギャップの液晶セルを製造し、結晶回折法(Crystal rotation method)を利用した。測定の結果は、下記の表1に表した。
【0085】
言及した配向膜の電気・光学特性は、4.75μmセルギャップの液晶セルを用いて、
電圧−透過度曲線、電圧保持率、残留DC電圧を測定し、比較評価した。各電気・光学特性を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0086】
電圧−透過度の曲線は、重要な電気・光学特性の一つであって、LCDモジュールの駆動電圧を決める特性の一つであり、液晶セルに電圧を印加しながら透過度を測定し、最も明るい状態の光量を100%、最も暗い状態の光量を0%にして標準化した曲線である。電圧保持率は、能動駆動方式のTFT-LCDにおいて、非選択期間で外部電源とフロー
ティングされた状態の液晶層が、充電された電圧を維持する程度を言い、100%に近い値が理想的である。残留DC電圧は、イオン化された液晶層の不純物が配向膜に吸着され、外部から印加された電圧がなくても液晶層にかけられている電圧を言い、低いほど良い。
【0087】
測定方法としては、フリッカーを利用する方法とDC電圧による液晶層の電気容量変化曲線(C-V)を利用する方法などが普遍的である。液晶セルを用いた配向膜の電気・光学
特性の結果を、下記の表2と図1に示した。
【0088】
また、長期駆動の際、配向膜の信頼性を評価するために、高温で500時間以上電圧を印加した後、電圧保持率の低下程度を測定し、これを図3に示した。
〔実施例2〕
【0089】
合成例3から得られた固形分5.0wt%のPAA-CBDA-1溶液50gに、エポキ
シ化合物TGDDM0.25g(全固形分含量の10%)をNMP4.75gに溶かしたものを添加し、12時間撹拌した後、孔径0.1μmのフィルターで濾過し、固形分5.0wt%の配向剤溶液を得た(以下、AL-PAA-CBDA-1という)。前記実施例1と同様の
方法により、印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。
電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図1に示した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図3で比較した。
〔実施例3〕
【0090】
合成例4から得られた固形分5.0wt%のPAA-TCCP-1溶液50gに、エポキ
シ化合物TGDDM0.25g(全固形分含量の10%)をNMP4.75gに溶かしたものを添加し、12時間撹拌した後、孔径0.1μmのフィルターで濾過し、固形分5.0wt%の配向剤溶液を得た(以下、AL-PAA-TCCP-1という)。前記実施例1と同様の
方法により、印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図1で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図3で比較した。
〔実施例4〕
【0091】
合成例5から得られた固形分5.0wt%のPI-TCCP-1溶液50gに、エポキシ
化合物TGDDM0.25g(全固形分含量の10%)をNMP4.75gに溶かしたものを添加し、12時間撹拌した後、孔径0.1μmのフィルターで濾過し、固形分5.0wt%の配向剤溶液を得た(以下、AL-PI-TCCP-1という)。前記実施例1と同様の方法
により印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図1で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図3で比較した。
〔実施例5〕
【0092】
合成例6から得られた固形分5.0wt%のPI-TCCP-2溶液50gに、エポキシ
化合物TGDDM0.25g(全固形分含量の10%)をNMP4.75gに溶かしたものを添加し、12時間撹拌した後、孔径0.1μmのフィルターで濾過し、固形分5.0wt%の配向剤溶液を得た(以下、AL-PI-TCCP-2という)。前記実施例1と同様の方法
により印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度の曲線は、図1で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図3で比較した。
〔比較例1〕
【0093】
エポキシ化合物を添加しないことを除き、実施例1と同様の配向剤溶液を製造した(以
下、R-PAA-PMDA-1)。また、前記実施例1と同様の方法により、印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図2で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図4で比較した。
〔比較例2〕
【0094】
エポキシ化合物を添加しないことを除き、実施例2と同様の配向剤溶液を製造した(以
下、R-PAA-CBDA-1)。また、前記実施例1と同様の方法により、印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図2で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図4で比較した。
〔比較例3〕
【0095】
エポキシ化合物を添加しないことを除き、実施例3と同様の配向剤溶液を製造した(以
下、R-PAA-TCCP-1)。また、前記実施例1と同様の方法により、印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図2で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図4で比較した。
〔比較例4〕
【0096】
エポキシ化合物を添加しないことを除き、実施例4と同様の配向剤溶液を製造した(以
下、R-PI-TCCP-1)。また、前記実施例1と同様の方法により、印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図2で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図4で比較した。
〔比較例5〕
【0097】
エポキシ化合物を添加しないことを除き、実施例5と同様の配向剤溶液を製造した(以
下、R-PI-TCCP-2)。また、前記実施例1と同様の方法により、印刷性、液晶配向性、初期傾斜角を測定し、これらを下記の表1に示した。電気・光学特性の結果は、下記の表2にまとめ、電圧−透過度曲線は、図2で比較した。また、信頼性の評価のための電圧保持率の低下程度は、図4で比較した。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、実施例1〜5から得られた配向膜の電圧−透過度曲線である。
【図2】図2は、比較例1〜5から得られた配向膜の電圧−透過度曲線である。
【図3】図3は、実施例1〜5から得られた配向膜の信頼性の評価のための、電圧保持率の低下曲線である。
【図4】図4は、比較例1〜5から得られた配向膜の信頼性の評価のための、電圧保持率の低下曲線である。
【図5】図5は、合成例1から製造された機能性ジアミンのFT−IRスペクトルである。
【図6】図6は、合成例1から製造された機能性ジアミンの1H−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性ジアミン、脂環族酸二無水物及び環状芳香族酸二無水物を反応させて得た、下式1で表されるポリアミド酸、及び前記ポリアミド酸をイミド化させて得た、下式2で表されるポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物、エポキシ官能基を有する化合物及び有機溶媒を含むことを特徴とする液晶配向剤;
【化1】

(R1は、下式8で表される芳香族、または下式9で表される脂肪族から選択された1種以上の4価有機基であり、R2は、芳香族ジアミンから誘導された下式10で表される1種
以上の2価有機基、及び機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基である。)
【化2】

【化3】

(X1、X2、X3、X4は、それぞれ独立に、-CH3、-F、-Hである。)
【化4】

【化5】

(R3は、前式8で表される芳香族、または前式9で表される脂肪族から選択された1種以上の4価有機基、R4は、芳香族ジアミンから誘導された前式10で表される1種以上の
2価有機基、および機能性ジアミンから誘導された1種以上の2価有機基であって、R4
の0.1〜50モル%は、機能性ジアミンから誘導された2価有機基である。)。
【請求項2】
前記機能性ジアミンが、下式3乃至6の構造を有するジアミンの何れか一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤;
【化6】

(nは、1〜30の整数)
【化7】

(式4中、Aは、水素原子またはメチル基であり、Bは、-O-、-COO-、-CONH-、-OCO-、または -(CH2)n- (nは、1乃至10の整数)であり、Cは、炭素数1乃至2
0の線形、枝形または環状のアルキル基、炭素数6乃至30のアリール基、アリールアルキル基、またはアルキルアリール基であって、その末端には、1〜10のハロゲン原子含有置換基を有しており、さらに-O-、-COO-、-CONH-、及び -OCO-からなる群
から選択された一つ以上のヘテロ原子含有基を含んでいてもよい。)
【化8】

(式5で、Aは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Bは、単
結合、ベンゼン環状、置換アルキル基を有するベンゼン環状または脂環族環状であり、Cは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Dは、単結合、ベンゼン環状または脂環族環状であり、Rは、炭素数1乃至20の、飽和または不飽和の、線形アルキル基、枝形アルキル基または脂環族環状アルキル基であり、Rのアルキル基は、一つ以上の置換ハロゲン原子を有していてもよい。)
【化9】

(式6で、Aは、単結合、-O-、-COO-、-CONH-または-OCO-であり、Bは、単
結合、-O-、-COO-、-CONH-、または-OCO-であり、Cは、単結合、-O-、-C
OO-、-CONH-または-OCO-であり、Dは、それぞれ、独立に、炭素数1乃至20
の線形、枝形または環状アルキル基、または、前式2で表される作用基であって、前記Dは、一つ以上の置換ハロゲン原子を有していてもよい。)。
【請求項3】
前記エポキシ官能基を有する化合物が、エポキシ官能基を2〜4個有する化合物のうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記エポキシ官能基を有する化合物が、下式7の化合物の何れか一つであることを特徴とする請求項3に記載の液晶配向剤;
【化10】

(R5は、芳香族または炭素数1〜4の脂環族2価有機基。)。
【請求項5】
前式1で表されるポリアミド酸が、芳香族ジアミン及び下式11で表されるシロキサン系ジアミンのうちの1種以上を追加的に含んで反応させて得られることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤;
【化11】

(nは、1〜10の整数。)。
【請求項6】
前記ポリアミド酸及びポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物、及びエポキシ官能基を有する化合物における固形分含量が、液晶配向剤100重量部当り0.01〜
15重量部であることを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記エポキシ官能基を有する化合物が、前記ポリアミド酸及びポリイミド重合体の何れか一つ、またはその混合物100重量部に対して、0.01〜50重量部の量で含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
前記有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、2-ブトキシエタノ
ール(ブチルセロソルブ)及びジプロピレンモノエチルエーテル(dipropylene
monoethylether)のうちの一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に
記載の液晶配向剤。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載の前記液晶配向剤を基板に塗布して得ることを特徴とする液晶配向膜。
【請求項10】
請求項9に記載の液晶配向膜を含むことを特徴とする液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−183564(P2007−183564A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−241870(P2006−241870)
【出願日】平成18年9月6日(2006.9.6)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】