説明

減衰力可変ダンパ

【課題】 シリンダ側に設けられた減衰力可変機構に十分な量の作動油を導入できる減衰力可変ダンパを提供する。
【解決手段】 ダンパ6が縮み側にテレスコピック作動すると、伸び側減衰力バルブ32が閉鎖することから、ピストン側油室16内の作動油が縮み側減衰力バルブ42を押し開けて縮み側排出油路41に流入し、第1,第2縮み側減衰力可変機構43,45および固定オリフィス44を通過する。一方、ピストン17の下降時にはロッド側油室15の容積が増大するため、リザーバ室20内の作動油は、バイパス油路35およびロッドガイド内油路36を経由した後、縮み供給側一方向弁37を開弁させてロッド側油室15に流入する。縮み作動時においては、縮み側減衰力可変機構43にはピストン17の断面積に下降分を乗じた体積の作動油が全量通過し、第2縮み側減衰力可変機構45にも作動油の一部が通過する。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のサスペンションに用いられる減衰力可変ダンパに係り、詳しくはシリンダ側に設けられた減衰力可変機構に十分な量の作動油を導入する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションは、自動車の走行安定性を左右する重要な要素であり、車体に対して車輪を上下動自在に支持させるためのリンク(アームやロッド類)と、撓むことで路面からの衝撃等を吸収するスプリングと、スプリングの振動を減衰させるダンパとを主要構成部材としている。自動車サスペンション用のダンパでは、作動油が充填された円筒状のシリンダと、シリンダ内を軸方向に摺動するピストンと、ピストンが先端に装着されたピストンロッドとを備え、ピストンの作動に伴って作動油を複数の油室間で移動させる複筒式や単筒式の筒型が一般的である。
【0003】
筒型ダンパでは、連通油路や可撓性を有するバルブプレートがピストンに設けられており、連通油路を介して油室間で移動する作動油に対してバルブプレートによって流動抵抗を与えることで減衰力を得ている。しかし、このようなダンパでは減衰特性が一定となることから、路面状態および走行状況に適した乗り心地や走行安定性を得ることができない。そこで、シリンダの上部外周にバイパス路となる補助シリンダを設置するとともに、ピストンにシャッタ式の減衰力可変機構を組み込み、ダンパが伸張状態にあるとき(すなわち、車高が高い状態であるとき)に減衰力を低くする一方、減衰力可変機構によって減衰力を可変制御する減衰力可変ダンパが提案されている(特許文献1参照)。また、ピストンとシリンダ底部とにそれぞれ電磁制御式の減衰力可変機構を組み込み、これら減衰力可変機構を適宜作動させることにより、伸び側および縮み側の減衰力を可変制御する減衰力可変ダンパが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−52340号公報
【特許文献2】特開2007−255705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等は、構造の簡素化や製造コストの低減等を図るべく、伸び作動時に作動油が通過する伸び側連通油路と縮み作動時に作動油が通過する縮み側連通油路とをピストンに設けるとともに、シリンダの下部に縮み側減衰力可変機構(ボトムバルブ)を組み込んでなる複筒式の減衰力可変ダンパの開発を試みた。しかしながら、この減衰力可変ダンパでは、ピストンの縮み作動時に作動油が縮み側連通油路を介してピストン側油室からロッド側油室に流入するため、十分な減衰力可変幅を確保できなかった。すなわち、ピストンの縮み作動時において、シリンダ内の作動油量はピストンロッドが進入した分減少するが、ボトムバルブにはその減少分の作動油しか導入されないことになり、広い減衰力可変幅での減衰力制御を実現することが難しかった。
【0006】
本発明は、このような背景に鑑みなされたもので、シリンダ側に設けられた減衰力可変機構に十分な量の作動油を導入できる減衰力可変ダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、その内部に作動油が封入されたシリンダ(11)と、前記シリンダに往復動自在に保持されて当該シリンダをロッド側油室(15)とピストン側油室(16)とに区画するピストン(17)と、前記ピストンに連結されて前記シリンダから外部に突出したピストンロッド(18)と、前記シリンダの一端に設けられて前記ピストンロッドを摺動自在に支持するロッドガイド(19)と、前記シリンダの外周に設けられ、その内部が当該シリンダと連通する外筒(12)と、前記シリンダと前記外筒との間に画成され、作動油およびガスの貯留に供されるリザーバ室(20)と、前記シリンダにおける前記ロッドガイドと反対側の端部に設けられ、前記ピストンの縮み作動時に前記ピストン側油室から前記リザーバ室に流出する作動油の通過抵抗を変化させることで縮み側減衰力を変化させる縮み側減衰力可変手段(43,45)とを有する減衰力可変ダンパであって、前記シリンダ内に設けられ、前記ピストンの伸び作動時に前記ロッド側油室から流出する作動油に通過抵抗を付与して伸び側減衰力を発生させる伸び側減衰力発生手段(32)と、前記ロッドガイド側に設けられ、前記ピストンの縮み作動時にのみ前記リザーバ室から前記ロッド側油室に流入させる縮み供給側一方向弁(37)と、前記リザーバ室における作動油の貯留部位と前記縮み供給側一方向弁とを連通させるバイパス油路(35)とを備えた。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に係る減衰力可変ダンパにおいて、前記伸び側減衰力発生手段(52)は、前記ロッドガイド側に設けられ、前記ピストンの伸び作動時に前記ロッド側油室から前記リザーバ室に作動油を通過させる。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明に係る減衰力可変ダンパにおいて、前記伸び側減衰力発生手段は、前記ロッドガイドに配置され、前記ロッド側油室から前記リザーバ室に流出する作動油の通過抵抗を変化させることで伸び側減衰力を変化させる伸び側減衰力可変手段を含む。
【発明の効果】
【0010】
第1の発明によれば、縮み作動時に縮み側減衰力可変手段に供給される作動油の量を「ピストンの断面積とストローク量との積」と、伸び作動時に伸び側減衰力発生手段に供給される作動油の量と同等以上にすることが可能となるため、縮み側においても十分な力の減衰力可変幅をもって減衰力の可変制御が実現できるようになる。また、伸び作動時においては、伸び供給側一方向弁が開弁してリザーバ室内の作動油が伸び側供給油路を介して流入し、ピストン側油室が負圧になることが防止されるため、リザーバ室内のガス圧を過剰に高める必要がなくなってシール等の構成部材への負荷が低減される。一方、第2の発明によれば、ロッド側油室とピストン側油室とを連通させる油路や伸び側減衰力発生手段をピストンに設ける必要がなくなるため、ピストンとして軸方向寸法が比較的小さい(すなわち、薄い)円板状のものを採用することが可能となる。これにより、縮み作動時や伸び作動時に慣性重量として作用するピストンを軽量化することができ、ダンパマウントのに必要以上に高い剛性が要求されなくなり、ピストンロッドやダンパ本体から入力する衝撃を効果的に減衰できるようになる。また、第3の発明によれば、ピストンに減衰力可変手段を設けることなく、伸び側においても減衰力を変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る自動車用リヤサスペンションの斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る減衰力可変ダンパの縦断面図である。
【図3】第1実施形態の縮み作動時における作動油の流れを示す図である。
【図4】第1実施形態の伸び作動時における作動油の流れを示す図である。
【図5】第1実施形態に係る伸び側減衰力バルブの実態図である。
【図6】第1実施形態に係る縮み供給側一方向弁の実態図である。
【図7】第2実施形態に係る減衰力可変ダンパの縦断面図である。
【図8】第2実施形態の縮み作動時における作動油の流れを示す図である。
【図9】第2実施形態の伸び作動時における作動油の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、自動車のリヤサスペンションを構成する減衰力可変ダンパに本発明を適用した2つの実施形態と一部変形例とを詳細に説明する。なお、実施形態や一部変形例における部材やその位置関係については、図2,図7中の上方を「上」として説明する。
【0013】
[第1実施形態]
≪第1実施形態の構成≫
<サスペンション>
図1に示すように、第1実施形態のリヤサスペンション1は、いわゆるH型トーションビーム式サスペンションであり、左右のトレーリングアーム2,3や、両トレーリングアーム2,3の中間部を連結するトーションビーム4、懸架ばねである左右一対のコイルスプリング5、左右一対のダンパ6等から構成されており、左右のリヤホイール7,8を懸架している。ダンパ6は、縮み側の減衰力が可変制御される減衰力可変型であり、トランクルーム内等に設置されたECU(図示せず)によってその減衰力が可変制御される。
【0014】
<ダンパ>
図2に示すように、本実施形態のダンパ6は複筒式であり、ダンパ本体13と、ピストン17と、ピストンロッド18と、ロッドガイド19と、ボトムピース21と、中間筒22と、アイピース23と、カバー24と、バンプストップ25とを主要構成要素としている。ダンパ本体13は、どちらもロッドガイド19およびアイピース23に上下端が支持されたシリンダ11とアウタチューブ12とを同軸に配置してなるもので、その内部に作動油およびガス(比較的低圧の窒素ガス)が封入されている。ピストン17は、作動油が充填されたシリンダ11に摺動自在に保持されており、ピストンロッド18と伴に上下(すなわち、伸び側および縮み側)に移動する。ピストンロッド18は、上下一対のブッシュ28とナット29とを介して、その上部ねじ軸18aが車体側部材であるダンパベース30(ホイールハウス上部)に連結されている。ロッドガイド19は、ピストンロッド18を摺動自在に支持するとともに、ピストンロッド18の外周面に摺接するロッドシール26を備えている。アイピース23は、ダンパ本体13およびボトムピース21を支持するとともに、車輪側部材であるトレーリングアーム2,3の上面にボルト27を介して連結されている。
【0015】
中間筒22は、シリンダ11とアウタチューブ12との間に配置されており、その上端側がロッドガイド19に固着される一方、下端側はアイピース23との間に間隙を有している。本実施形態の場合、ダンパ本体13における中間筒22の下方に位置する空間と、アウタチューブ12と中間筒22とによって画成される空間とによってリザーバ室20が構成されている。リザーバ室20は、所定量の作動油を貯留するとともに、その上部(中間筒22とアウタチューブ12との間であってロッドガイド19側)にガスが封入されている。そして、シリンダ11と中間筒22との間にはリザーバ室20と接続するバイパス油路35が画成され、このバイパス油路35に作動油が充填されている。
【0016】
ピストン17には、ロッド側油室15とピストン側油室16とを連通させるピストン内連通油路31と、ピストン内連通油路31に設けられてロッド側油室15側からピストン側油室16側に向けてのみ作動油を通過させる伸び側減衰力バルブ32(伸び側減衰力発生手段)とが設けられている。伸び側減衰力バルブ32はピストン17の伸び作動時にロッド側油室15からピストン側油室16に向けて流れる作動油によって開弁させられ、ピストン内連通油路31を通過した作動油に通過抵抗を付与することで所定の伸び側減衰力を発生させる。なお、図2〜図4においては、伸び側減衰力バルブ32をチェックバルブおよびオリフィスによって模式的に示したが、図5に示すようなディスクバルブを伸び側減衰力バルブ32として採用すればよい。
【0017】
ロッドガイド19には、バイパス油路35とロッド側油室15とを連通するロッドガイド内油路36(バイパス油路)と、ロッドガイド内油路36に設けられてリザーバ室20側からロッド側油室15側にのみ作動油を通過させる縮み供給側一方向弁37とが設けられている。なお、図2〜図4においては、縮み供給側一方向弁37をチェックバルブによって模式的に示したが、図6に示すようなディスクバルブを縮み供給側一方向弁37として採用すればよい。
【0018】
ボトムピース21には、ピストン側油室16とリザーバ室20とを連通する縮み側排出油路41と、縮み側排出油路41に設けられてピストン側油室16側からリザーバ室20側にのみ作動油を通過させる縮み側減衰力バルブ42と、縮み側減衰力バルブ42の開弁圧力を変化させる第1縮み側減衰力可変機構43と、縮み側排出油路41に設けられて作動油に通過抵抗を付与して所定の縮み側減衰力を発生する固定オリフィス44と、縮み側排出油路41の流路面積(オリフィス径)を変化させて伸び側減衰力を増減させる第2縮み側減衰力可変機構45(可変オリフィス)とが設けられている。また、ボトムピース21には、ピストン側油室16とリザーバ室20とを連通する伸び側供給油路48と、伸び側供給油路48に設けられてリザーバ室20側からピストン側油室16側にのみ作動油を通過させる伸び供給側一方向弁49とが設けられている。なお、図2〜図4においては、縮み側減衰力バルブ42および伸び供給側一方向弁49をチェックバルブによって模式的に示したが、これらは伸び側減衰力バルブ32と同様にディスクバルブを採用すればよい。
【0019】
≪第1実施形態の作用≫
自動車が走行を開始すると、ECUは、前後Gセンサや横Gセンサ、上下Gセンサから得られた車体の加速度や、車速センサから入力した車体速度、車輪速センサから得られた各車輪の回転速度等に基づき、ダンパ6の目標縮み側減衰力を設定して第1,第2縮み側減衰力可変機構に駆動電流を供給する。以下、図3,図4を参照して、縮み作動時および伸び作動時における作動油の流れを説明する。なお、図3,図4においては、煩雑になることを防ぐべく、ロッドガイド19やピストン17、ボトムピース21等のハッチングを省略している。
【0020】
<縮み作動時>
ダンパ6が縮み側にテレスコピック作動すると、図3に示すように、ピストン17がシリンダ11内を所定の速度をもって下降する。すると、伸び側減衰力バルブ32が閉鎖することから(ピストン17がロッド側油室15とピストン側油室16とを液密に区画することから)、ピストン側油室16内の作動油が縮み側減衰力バルブ42を押し開けて縮み側排出油路41に流入し、第2縮み側減衰力可変機構45および固定オリフィス44を通過する。一方、ピストン17の下降時にはロッド側油室15の容積が増大するため、リザーバ室20内の作動油は、バイパス油路35およびロッドガイド内油路36を経由した後、縮み供給側一方向弁37を開弁させてロッド側油室15に流入する。
【0021】
本実施形態の場合、縮み作動時においては、縮み側減衰力可変機構43にはピストン17の断面積に下降分を乗じた体積の作動油が全量通過し、第2縮み側減衰力可変機構45にも作動油の一部が通過する。その結果、広い減衰力可変幅をもって縮み側減衰力を増減させることが可能となり、目標縮み側減衰力に対応する縮み側減衰力を得ることで車体のロール動の効果的な抑制や乗り心地の向上等が実現される。また、縮み作動時に作動油をバイパス油路35から供給するためにロッド側油室15が負圧にならず、ピストン17の円滑な下降動が実現されるだけでなく、ロッド側油室15内でのキャビテーション等が生じにくくなる。そのため、リザーバ室20に封入するガスの圧力を下げることか可能となり、ロッドシール26の負担やピストンロッド18のフリクションが軽減される。
【0022】
<伸び作動時>
一方、ダンパ6が伸び側にテレスコピック作動すると、図4に示すように、ピストン17がシリンダ11内を所定の速度をもって上昇する。すると、縮み供給側一方向弁37が閉鎖することから、ロッド側油室15内の作動油は、ピストン内連通油路31に流入した後、伸び側減衰力バルブ32を開弁させてピストン側油室16に流入する。一方、ピストン17の上昇時にはシリンダ11の容積がピストンロッド18の退出分だけ増大するため、リザーバ室20内の作動油は、伸び側供給油路48を経由した後、伸び供給側一方向弁49を開弁させてピストン側油室16に流入する。これにより、ピストン17の円滑な上昇動が実現されるとともに、ピストン側油室16内でのキャビテーション等も防止される。
[第2実施形態]
≪第2実施形態の構成≫
第2実施形態も、図7に示すように、上述した第1実施形態と略同様の全体構成を有しているが、ピストン17やロッドガイド19の構造が異なっている。すなわち、第2実施形態の場合、ピストン17は、軸方向長さが比較的短い円板状を呈しており、その内部に連通油路等が形成されていない。また、ロッドガイド19には、バイパス油路35に連通するロッドガイド内排出油路51と、ロッドガイド内排出油路51に設けられてロッド側油室15側からバイパス油路35側にのみ作動油を通過させる伸び側減衰力バルブ52(伸び側減衰力発生手段)とが設けられている。伸び側減衰力バルブ52はピストン17の伸び作動時にロッド側油室15側からバイパス油路35に向けて流れる作動油によって開弁させられ、ロッドガイド内排出油路51を通過した作動油に通過抵抗を付与することで所定の伸び側減衰力を発生させる。また、ロッドガイド19には、伸び側減衰力バルブ52を磁力吸引する電磁コイル(減衰力可変手段)が組み込まれており、この電磁コイルへの通電量を制御することで伸び側減衰力が変化する。なお、図7〜図9においては、伸び側減衰力バルブ52をチェックバルブおよびオリフィスによって模式的に示したが、第1実施形態と同様にディスクバルブを伸び側減衰力バルブ52として採用すればよい。
【0023】
≪第2実施形態の作用≫
<縮み作動時>
ダンパ6が縮み側にテレスコピック作動すると、図8に示すように、ピストン17がシリンダ11内を所定の速度をもって下降する。すると、ピストン17がロッド側油室15とピストン側油室16とを液密に区画することから、ピストン側油室16内の作動油が縮み側減衰力バルブ42を押し開けて縮み側排出油路41に流入し、第2縮み側減衰力可変機構45および固定オリフィス44を通過する。一方、ピストン17の下降時にはロッド側油室15の容積が増大するため、リザーバ室20内の作動油は、バイパス油路35およびロッドガイド内油路36を経由した後、縮み供給側一方向弁37を開弁させてロッド側油室15に流入する。これにより、第1実施形態と同様に、ピストン17の円滑な下降動が実現されるとともに、ロッド側油室15内でのキャビテーション等も防止される。
【0024】
<伸び作動時>
ダンパ6が伸び側にテレスコピック作動すると、図9に示すように、ピストン17がシリンダ11内を所定の速度をもって上昇する。すると、ピストン17が伸び側においてもロッド側油室15とピストン側油室16とを液密に区画することから、ロッド側油室15内の作動油は、ロッドガイド内排出油路51に流入した後、伸び側減衰力バルブ52を開弁させてバイパス油路35に流入する。一方、ピストン17の上昇時にはシリンダ11の容積がピストンロッド18の退出分だけ増大するため、リザーバ室20内の作動油は、伸び側供給油路48を経由した後、伸び供給側一方向弁49を開弁させてピストン側油室16に流入する。これにより、ピストン17の円滑な上昇動が実現されるとともに、ピストン側油室16内でのキャビテーション等も防止される。
【0025】
本実施形態の場合、ピストン17は、軸方向長さが比較的短い円板状のものであるため、その慣性質量やシリンダ11との摺動抵抗が第1実施形態のものや通常のものに較べて小さくなり、ダンパ6の作動性が大幅に向上するとともに、ダンパベース30等への入力も低減される。
【0026】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらに限られるものではない。例えば、上記実施形態はトーションビーム式リヤサスペンションに用いられる減衰力可変ダンパに本発明を適用したものであるが、本発明は、ストラット式やダブルウッシュボーン式サスペンションの減衰力可変ダンパ、フロントサスペンション用の減衰力可変ダンパ、複筒式の減衰力可変ダンパ等にも当然に適用可能である。また、上記実施形態では、縮み側のみに減衰力可変機構を備えるものとしたが、伸び側にも減衰力可変機構を備えるようにしてもよいし、減衰力可変機構として磁性流体や磁気粘性流体を用いるものを採用してもよい。また、各一方向弁や減衰力可変機構の設置部位についても、上記実施形態の態様に限られるものではなく、設計上あるいは製造上の都合等に応じて自由に変更可能である。その他、ダンパの具体的構成や各部材の具体的形状等についても、本発明の主旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0027】
6 ダンパ
11 シリンダ
12 アウタチューブ
15 ロッド側油室
16 ピストン側油室
17 ピストン
18 ピストンロッド
19 ロッドガイド
20 リザーバ室
21 ボトムピース
22 中間筒
31 ピストン内連通油路
32 伸び側減衰力バルブ
35 バイパス油路
36 ロッドガイド内油路
37 縮み供給側一方向弁
41 縮み側排出油路
42 縮み側減衰力バルブ
43 第1縮み側減衰力可変機構
44 固定オリフィス
45 第2縮み側減衰力可変機構
48 伸び側供給油路
49 伸び供給側一方向弁
51 ロッドガイド内排出油路
52 伸び排出側一方向弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その内部に作動油が封入されたシリンダと、
前記シリンダに往復動自在に保持され、当該シリンダをロッド側油室とピストン側油室とに区画するピストンと、
前記ピストンに連結され、前記シリンダから外部に突出したピストンロッドと、
前記シリンダの一端に設けられ、前記ピストンロッドを摺動自在に支持するロッドガイドと、
前記シリンダの外周に設けられ、その内部が当該シリンダと連通する外筒と、
前記シリンダと前記外筒との間に画成され、作動油およびガスの貯留に供されるリザーバ室と、
前記シリンダにおける前記ロッドガイドと反対側の端部に設けられ、前記ピストンの縮み作動時に前記ピストン側油室から前記リザーバ室に流出する作動油の通過抵抗を変化させることで縮み側減衰力を変化させる縮み側減衰力可変手段と
を有する減衰力可変ダンパであって、
前記シリンダ内に設けられ、前記ピストンの伸び作動時に前記ロッド側油室から流出する作動油に通過抵抗を付与して伸び側減衰力を発生させる伸び側減衰力発生手段と、
前記ロッドガイド側に設けられ、前記ピストンの縮み作動時にのみ前記リザーバ室から前記ロッド側油室に流入させる縮み供給側一方向弁と、
前記リザーバ室における作動油の貯留部位と前記縮み供給側一方向弁とを連通させるバイパス油路と
を備えたことを特徴とする減衰力可変ダンパ。
【請求項2】
前記伸び側減衰力発生手段は、前記ロッドガイド側に設けられ、前記ピストンの伸び作動時に前記ロッド側油室から前記リザーバ室に作動油を通過させることを特徴とする、請求項1に記載された減衰力可変ダンパ。
【請求項3】
前記伸び側減衰力発生手段は、前記ロッドガイドに配置され、前記ロッド側油室から前記リザーバ室に流出する作動油の通過抵抗を変化させることで伸び側減衰力を変化させる伸び側減衰力可変手段を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された減衰力可変ダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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