説明

測定装置

【課題】スピンドルに取り付けられて高い回転数で回転する極小径丸棒若しくは極小径工具の動的振れを測定可能な極めて実用性に秀れた測定装置の提供。
【解決手段】光源と、光源からの光線を被測定部材へ導くレンズ系と、被測定部材を介して光線を受光する複数のフォトダイオードとを備える光学系を有し、フォトダイオードでの受光量をもとに被測定部材の位置若しくは振れ量を測定する測定装置であって、光学系の光軸方向視において、複数のフォトダイオードにして被測定部材の軸心と交差する辺部が全て直線であり、複数のフォトダイオード間には、被測定部材の軸方向に対して傾斜する少なくとも1つのギャップを設け、このギャップの両端部は被測定部材の外形より外方に位置させ、ギャップを形成するフォトダイオードの辺部以外の被測定部材の軸心と交差する辺部がギャップと平行でないように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電化製品や情報通信機器などの電気・電子機器の高性能化および小型化に伴い、これらの製品に使用されるプリント配線板(PCB)の高密度実装化や金型の小型化、高精度化が要求されている。そして、このような状況に対応するため、ドリルやエンドミル等の回転切削工具も年々小径化が進むと共に、非常に精度の高い切削加工が要求されている。
【0003】
回転切削工具の回転に伴う振れ(動的振れ)は切削加工精度に大きな影響を与えるため、回転切削工具の性能はもとより切削加工に用いられる加工装置のスピンドルの状態、具体的にはスピンドルの動的振れ精度を把握することが重要である。
【0004】
そこで、切削加工に用いられる加工装置のスピンドルにチャックを介してゲージピン(丸棒)を取り付けてスピンドルを回転させ、このゲージピンのチャックから突き出した部分の動的振れを測定することでスピンドルの状態を把握している。
【0005】
例えば、プリント配線板(PCB)加工用の回転切削工具は、シャンク部の外径を3.175mmまたは2mmなどとすることがこの業界で周知の事実であり、これら回転切削工具を取り付ける穴明け機などの加工装置のチャック内径は3.175mmまたは2mmなどとされている。
【0006】
従って、前記ゲージピンの外径は前記加工装置のチャック内径に合わせ、外径3.175mmまたは2mmなどの丸棒としている。その他、例えば特許文献1,2に開示されるようにドリルやエンドミル等の回転切削工具のシャンク部をチャックを介して取り付けてスピンドルと回転切削工具の総合的な動的振れを測定する非接触式の測定装置が提案されている。
【0007】
ところで、高い切削加工精度を得るためには、被削材や回転切削工具の仕様に応じて回転切削工具を適切な切削速度(周速)で回転させる必要があり、回転切削工具の小径化が進んでいる近年では、極小径の回転切削工具(極小径工具)をより高い回転数で回転させる必要がある。一般にスピンドルの回転数が高まるほどその遠心力により回転切削工具が撓み振れ回ることで動的振れが大きくなる傾向にあることが知られている。
【0008】
従って、特にスピンドルを高回転で回転させる場合、チャックから突き出す部分(突出し部)の質量が大きいとその分スピンドルの回転による遠心力が高まり、動的振れが大きくなる傾向にある。
【0009】
このため極小径工具を実際に使用する際の回転数でのスピンドルの状態を把握しようとして極小径工具の工具本体の外径よりも大きな外径のゲージピン(例えば外径3.175mmの丸棒)をスピンドルに取り付けて回転させた場合、前記ゲージピンの突出し部の質量が極小径工具の突出し部の質量よりも大きいことから、ゲージピンの動的振れは極小径工具の動的振れよりも大きくなってしまい、正確な動的振れを把握することができず、また極度に動的振れが大きい場合はスピンドルを壊してしまう危険性がある。
【0010】
一方、ドリルやエンドミル等の極小径工具のシャンク部をチャックを介してスピンドルに取り付けてスピンドルと極小径工具の総合的な動的振れを測定することが望まれる場合もあるが、スピンドルの状態を把握する目的の場合は極小径工具自体の形状誤差の影響をより抑制するため、よりシンプルな形状のゲージピンでの測定が望ましい。
【0011】
この場合、できるだけ突出し部の質量を実際に使用予定の極小径工具の質量に近いものとするため、ゲージピンのシャンク部の外径をチャックの内径に合わせ、先端部の外径を極小径工具の外径に合わせた段付き丸棒状の極小径工具のブランク形状のゲージピン(極小径丸棒)を用いることが望ましい。ここでブランクとは、例えば外周に螺旋状の切り屑排出溝や切れ刃を形成する前の状態の工具(段付き丸棒状)のことである。
【0012】
このように、高い切削加工精度を実現するため、スピンドルに取り付けられて高い回転数で回転する極小径丸棒若しくは極小径工具の動的振れを測定することは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平1−306156号公報
【特許文献2】実開2000−47号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、従来の非接触式の測定装置では次のような問題がある。
【0015】
特許文献1には受光素子として電荷結合素子(CCD)を備えて工具の外径や偏心量(動的振れを構成する要素の一つ)を求める装置が開示されている。しかしながら電荷結合素子を用いた場合、検出信号が時系列に出力されるためデータの取り出し時間が長くなってしまうため、高い回転数で回転する丸棒若しくは工具の動的振れを測定することは不可能である。また、分解能は使用する光学系の倍率とCCDの画素ピッチに依存するため、十分な高分解能が得られない場合があるという問題がある。
【0016】
また、特許文献2では受光素子として2つのフォトダイオードを用いており、夫々のフォトダイオードを所定の間隔(ギャップ幅)で離間して(所謂ギャップを設けて)配置し、工具の振れ量や外径を測定する検査装置が開示されている。
【0017】
このギャップはギャップ軸が被測定部材の軸方向と平行に設けられ(ギャップの幅方向が被測定部材の軸方向に直交するように設けられ)、光学系の光軸方向視において、前記被測定部材の軸方向の全域で被測定部材によりギャップを覆っている状態で測定が可能となるものである。ここで「ギャップ軸」とは、ギャップ幅の中点を通りギャップの幅方向に直交する仮想線を示している。
【0018】
従って、このような構成の場合、被測定部材の外径がギャップ幅よりも小さい場合や、回転させられている被測定部材の動的振れが大きい場合など、ギャップを覆うことが出来なくなる場合は正確な測定ができないという問題がある。即ち、ギャップ幅を狭くしていけばその分測定できる範囲は広がるが、現実にはギャップ幅を狭くするにも限界があり、極小径丸棒若しくは極小径工具においては夫々の外径がギャップ幅よりも小さくなる場合があり測定することができないという問題がある。
【0019】
本発明は、上記問題点を解決したものであり、切削加工に用いられる加工装置のスピンドルに取り付けられて高い回転数で回転する極小径丸棒若しくは極小径工具の動的振れを測定可能な極めて実用性に秀れた測定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0021】
光源と、この光源からの光線を被測定部材へ導くレンズ系と、前記被測定部材を介して前記光線を受光する複数のフォトダイオードとを備える光学系を有し、このフォトダイオードでの受光量をもとに前記被測定部材の位置若しくは振れ量を測定する測定装置であって、前記光学系の光軸方向視において、前記複数のフォトダイオードにして前記被測定部材の軸心と交差する辺部が全て直線であり、前記複数のフォトダイオード間には、前記被測定部材の軸方向に対して傾斜する少なくとも1つのギャップが設けられ、このギャップの両端部は前記被測定部材の外形より外方に位置せしめられ、前記ギャップを形成するフォトダイオードの辺部以外の前記被測定部材の軸心と交差する辺部が前記ギャップと平行でないように構成されていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0022】
また、請求項1記載の測定装置において、前記各フォトダイオードは前記光学系の光軸方向視において、多角形状のフォトダイオードであることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0023】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材と前記フォトダイオードとの間にはテレセントリック光学系が設けられていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0024】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材の一部に前記光線を被測定部材の軸方向のみに集束させるレンズを備えたことを特徴とする測定装置に係るものである。
【0025】
また、請求項1〜3いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材の一部に前記光線を被測定部材の軸方向のみに集束させるレンズと、前記フォトダイオードに向かって前記光線を平行光として照射させるレンズとを備えたことを特徴とする測定装置に係るものである。
【0026】
また、請求項4、5いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材は回転切削工具であることを特徴とする測定装置に係るものである。
【0027】
また、請求項1〜6いずれか1項に記載の測定装置において、同一面積にして同一形状の2つのフォトダイオードが設けられていることを特徴とする測定装置に係るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は上述のように構成したから、切削加工に用いられる加工装置のスピンドルに取り付けられて高い回転数で回転する極小径丸棒若しくは極小径工具の動的振れを測定可能な極めて実用性に秀れた測定装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の測定原理を示す概略説明図及び電圧差を求める計算式である。
【図2】従来例の構成概略説明平面図である。
【図3】従来例の測定原理を示す概略説明図及び電圧差を求める計算式である。
【図4】実施例1の構成概略説明図である。
【図5】実施例1の測定部の構成概略説明斜視図である。
【図6】実施例2の構成概略説明図である。
【図7】実施例2の測定部の構成概略説明斜視図である。
【図8】実施例3の構成概略説明図である。
【図9】実施例3の測定部の構成概略説明斜視図である。
【図10】フォトダイオードの構成例を示す概略説明正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0031】
被測定部材を回転させながら光源(LED:発光ダイオード)から光線を照射してフォトダイオードでの受光量をもとに該被測定部材の振れ量を測定する。図1に本発明の測定原理を示す概略説明図及び電圧差を求める計算式の一例を示す。
【0032】
この際、フォトダイオード間のギャップを(そのギャップ軸が)被測定部材の軸方向に対して傾斜し、このギャップの両端部が(光学系の光軸方向視において)被測定部材の外形より外方に位置せしめられるように配置することで、例えばフォトダイオードを2つ、図1に図示したように配置した場合には、各フォトダイオードの受光量(受光量に応じて生じる電流から電圧に変換する)から振れ量を測定することが可能となる。尚、被測定部材を光源であるLEDからフォトダイオードまでの光路間に配置させない状態においては、フォトダイオードの全域にLEDからの光線が照射されるように設定する。
【0033】
従って、被測定部材の外径がギャップ幅よりも小さい場合や、回転させられている被測定部材の動的振れが大きい場合でも、被測定部材の外径やギャップ幅の大きさに関する制約が飛躍的に緩和され、確実に正確な振れ量の測定を行えることになる。
【実施例1】
【0034】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0035】
実施例1は、光源と、この光源からの光線を被測定部材へ導くレンズ系と、前記被測定部材を介して前記光線を受光する複数のフォトダイオードとを備える光学系を有し、このフォトダイオードでの受光量をもとに前記被測定部材の位置若しくは振れ量を測定する測定装置であって、前記光学系の光軸方向視において、前記複数のフォトダイオードにして前記被測定部材の軸心と交差する辺部が全て直線であり、前記複数のフォトダイオード間には、前記被測定部材の軸方向に対して傾斜する少なくとも1つのギャップが設けられ、このギャップの両端部は前記被測定部材の外形より外方に位置せしめられ、前記ギャップを形成するフォトダイオードの辺部以外の前記被測定部材の軸心と交差する辺部が前記ギャップ(のギャップ軸)と平行でないように構成されているものである。
【0036】
具体的には、実施例1は、図4,5に図示したように、被測定部材としてのゲージピン(丸棒)を図1(及び図10(a))に示したフォトダイオードを用いて測定するものであり、特に、極小径(外径0.3mm以下)の被測定部材を高速回転させながら測定する際に有用である。
【0037】
実施例1においては同一面積にして多角形状の2つのフォトダイオード、具体的には直角三角形状で同一形状のフォトダイオードを一対設けた構成にし、前記フォトダイオードの斜辺を所定の間隔(ギャップ幅)で離間して配置せしめることで、その対向する斜辺間にギャップを形成している。つまり、図1における領域イ及び領域エ部分を含む1つのフォトダイオード、領域ア及び領域ウ部分を含む1つのフォトダイオードを対向させて配置している。
【0038】
尚、図1中、図1(a)が一対のフォトダイオードと被測定部材との関係を光学系の光軸方向視で表した概略説明図で、前記フォトダイオードにして前記被測定部材の軸心と交差する辺部のうち前記ギャップを形成する辺部(直角三角形状のフォトダイオードの斜辺)以外の辺部(直角三角形状のフォトダイオードの斜辺と1頂点を共有する辺部)が前記ギャップ(のギャップ軸)と平行でないように構成されていることを明示したものであり、図1(b)がフォトダイオードと被測定部材の位置による、電圧差の変化を表したグラフである。
【0039】
図1に示した測定原理を具体的に説明する。被測定部材がx方向(径方向)に移動し被測定部材軸心位置Xmが変化すると、2つのフォトダイオード間において光線を受光する面積差が変化することにより電圧差も変化する。面積差に変換係数Keを乗ずることで電圧差を表したものが式(1)である。このため被測定部材軸心位置Xmが変化すると被測定部材のx方向(径方向)の位置に相当する電圧差を測定でき、また、その位置に相当する電圧差の最大値と最小値との差から振れ量に相当する電圧差(前記、位置に相当する電圧差の差)を算出することができる。
【0040】
例えば、被測定部材の軸心位置Xmがフォトダイオードの中央位置(x方向中央位置=L/2の位置)に在り回転していない時、若しくは回転していても振れ量がゼロである時、夫々のフォトダイオード間の面積差はゼロであり、よって計算式(1)により電圧差はゼロとなる。被測定部材の位置が変われば、それに応じて前記電圧差も変化し、被測定部材の位置がわかる。被測定部材が回転していて振れ量がゼロでなければ、その分被測定部材の軸心位置がx方向に移動することで電圧差が変化し、この電圧差の最大値と最小値との差から振れ量に相当する電圧差を算出し、よってx方向の位置の差である振れ量を測定することが可能となる。
【0041】
この原理を利用して電圧差から振れ量を求めるため、式(1)を変形した式(2)に電圧差などをあてはめて算出することができる。ここで、式(2)にあてはめる電圧差Vが振れ量に相当する電圧差であれば算出されるXmは被測定部材の振れ量であるし、例えば式(2)にあてはめる電圧差Vが位置に相当する電圧差であれば算出されるXmは被測定部材の軸心位置である。用途に応じて位置または振れ量を表示する測定装置とすれば良い。その他、Lはフォトダイオードの長さ、Aはフォトダイオードの高さ、rは被測定部材の半径、Keは受光単位面積あたりの、受光量に応じて生じる電流を電圧に変換する係数である。つまり、受光面積を電圧に変換する係数である。
【0042】
【数1】

【0043】
【数2】

【0044】
尚、前記斜辺間に形成されたギャップの大きさ(幅)は、少しでも離間していればそれで良く、その上限についても理論上の制約はない。光学系の光軸方向視において、前記被測定部材が前記フォトダイオードの高さ(A)の全域で光源(LED)からの光線を遮るように前記被測定部材を光路間に配置すれば良い。
【0045】
また、図1(a)に示したフォトダイオードの位置をx方向には固定し、y方向に移動させる分には、実質的にギャップ幅が異なることになるが、式(1)の関係は維持され、よって式(2)をそのまま適用できるため、実際の製作時にはギャップ幅を厳密に調整する必要がなく非常に実用的である。x方向に移動させた形態を採る場合には式(1)の関係が崩れ、よって式(2)を適用できないため、フォトダイオードの配置に応じた計算式を適用させることで測定可能となる。
【0046】
また、このギャップは、両端部が光学系の光軸方向視(ギャップ正面視)において被測定部材の外形より外方に位置せしめられていれば当該ギャップ軸(ギャップ幅の中点を通りギャップの幅方向に直交する仮想線)をどのような傾斜角度に設定してもよい。本実施例においては60°に設定している。
【0047】
尚、被測定部材の軸方向に対するギャップ軸の傾斜角度が0°に限りなく近い場合(被測定部材の軸方向と平行に近い場合)は、前記ギャップの両端部を被測定部材の外形より外方に位置せしめることが難しく、これを実現させるためには必然的にフォトダイオードの高さを大きくしなければならず現実的でない。フォトダイオードを十分な高さに設定しなければ、ギャップの両端部が被測定部材の外形より内方に位置することになってしまい、これは、図3に示した従来例の範囲と考えられ、従来の問題は解決しない。被測定部材の軸方向に対するギャップ軸の傾斜角度は、現実的には|30|°以上|90|°以下である。尚、前記傾斜角度はギャップ軸が傾斜する方向を問わずどちらに傾斜しても良いため、前記の通り絶対値で表現している。また、フォトダイオードの正面視形状(光軸方向視形状)もどのような形状としてもよく、多角形状とすれば容易に製作できるため生産面で有利である。
【0048】
実施例1においては、光源(LED)からの光は、絞り(ピンホール)を通ってコリメートレンズ1により平行光にされ、被測定部材を介してフォトダイオードに照射される。また、被測定部材が光源であるLEDからフォトダイオードまでの光路間に配置されていない状態では、フォトダイオードの全域にLEDからの光線が照射されるように設定されている。尚、LEDの発光量は、図5には図示していないが、レンズの照射領域内に設置されるフォトセンサ及び光量制御回路によって一定の値に調整される。
【0049】
フォトダイオードは受光量に応じて電流を発生し、この電流をアンプで電圧に変換且つ増幅し、各種の回路を用いてゲージピンの外径、位置及び振れ量を測定する。以下、図4に基づいてゲージピンの外径、位置及び振れ量を測定する具体的手法について説明する。
【0050】
ゲージピンの外径は、アンプ(1)からの信号を、加算回路(3)で各フォトダイオードのゲージピンにより遮られた影の部分の面積に相当する電圧を加算することで得ることができる。A/D変換回路は、得た値をアナログ値からデジタル値に変換する。
【0051】
ゲージピンの振れ量は、ゲージピンの位置を測定し、その位置情報より各種回路を用いることで測定することができる。即ち、アンプ(1)からの信号を、減算回路(2)で各フォトダイオード間の電圧差を算出し、この電圧差がゲージピンの位置に相当し、最大値保持回路(4)で(位置の)最大値に相当する電圧差(以下「最大値」と略記する)が保持され、最小値保持回路(5)で(位置の)最小値に相当する電圧差(以下「最小値」と略記する)が保持され、この最大値と最小値との差を減算回路(6)で算出して得られた値がゲージピンの振れ量に相当する電圧差V(前記、位置に相当する電圧差の差)である。その後、A/D変換回路で、アナログ値からデジタル値に変換し、更に、上述のようにして得られたゲージピンの外径の半分の値をrとして前記振れ量に相当する電圧差Vと前記rとを振れ量Xmを求める式(2)にあてはめて振れ量取得演算回路(7)で算出することでより正確な振れ量を得ることができる。得られた振れ量は振れ量表示器に表示される。
【0052】
即ち、フォトダイオード間のギャップをそのギャップ軸が被測定部材の軸方向に対して傾斜し、このギャップの両端部が光学系の光軸方向視において被測定部材の外形より外方に位置せしめられるように配置した場合、計算式(1)には比例項に半径rが含まれるため、被測定部材の外径が変わると図1に示すx方向の被測定部材の軸心位置が同じ場合であっても計算式(1)で算出される電圧差Vが変わり、よって図1(b)に示す電圧差の傾きが変わりその都度校正が必要となる。しかしながら上記の通り被測定部材の外径を測定できるため、上記のようにして測定した外径から得られた半径rを式(2)にあてはめることで、校正を行わずとも理論値に近い値を計算で求めることができる。
【0053】
尚、前記振れ量に相当する電圧差に替えて、減算回路(2)で得られた前記位置に相当する電圧差を式(2)にあてはめれば算出されるXmはゲージピンの軸心位置である。この得られたゲージピン(被測定部材)の位置を表示器に表示させることで、位置測定または位置確認用の測定装置に適用できることは言うまでもない。
【0054】
尚、図2,3に図示した従来構成の測定装置(2つのフォトダイオードをギャップ幅だけ離間して配置し、ギャップ軸が被測定部材の軸方向と平行に設けられている装置)においては、電圧差Vを求める式(3)若しくはこの式(3)を変形した、被測定部材軸心位置(若しくは被測定部材の振れ量)Xmを求める式(4)に半径rが比例項として含まれない。このため、被測定部材の外径が変わっても、それ(外径の違い)が電圧差Vや振れ量Xmに影響を及ぼさないため校正を必要としないという利点はあるが、被測定部材がギャップを覆うことが出来なくなる場合があるため、正確な測定ができないという問題は解決されない。具体的には、前記したような問題を回避するため、ギャップ幅をできるだけ小さく(ギャップ幅≒0mmに)できたとしても、位置測定においては、ギャップ軸を中心として被測定部材の外径分の範囲でしか測定できず、よって振れ量も被測定部材の外径分の量を超えるほどの振れ量は測定できないという問題がある。
【0055】
【数3】

【0056】
【数4】

【0057】
また、実施例1(及び後述する実施例2,3)においては、上述の通り同一面積且つ直角三角形状で同一形状のフォトダイオードを一対設けた構成(図10(a))としているが、上記ギャップ、フォトダイオード及び被測定部材に係る条件を満たす構成であればどのような形状のものを採用してもよく、2つ以上の傾斜するギャップが設けられていてもよい。フォトダイオードの構成に応じた計算式でXmを算出すれば良いのである。
【0058】
フォトダイオードの構成としては、例えば図10(b)〜(d)のような構成を採用できる。図中符号Oは被測定部材を略示した仮想線である。また、フォトダイオードの(水平方向)長さは被測定部材の外径+α(想定される最大振れ量分)があればよく、高さはできるだけ低くするのが望ましい(少なくとも被測定部材の長さ以下)。一般に被測定部材の軸方向における測定位置が異なると振れ量が異なり、先端側の振れ量が大きく、根元側(被測定部材の被把持部に近い側)が小さい傾向がある。このためフォトダイオードの高さが高すぎると、その分被測定部材の軸方向における振れ量の値が平均化し、所望の値が得られない可能性があるためである。
【0059】
また、図10(b)においては、領域イ及び領域エを含むフォトダイオードの面積と、領域ア及び領域ウを含むフォトダイオードの面積とが同一となるように設定されており、図10(a)と同様、各フォトダイオードの被測定部材により区切られる領域ア〜エに基づき、(イ+エ)−(ア+ウ)の計算式より同様に振れ量を求めることができる。また、図10(c)は、3つのフォトダイオードで構成されたものであり、領域ア及び領域エを含むフォトダイオードの面積と領域ウ及び領域カを含むフォトダイオードの面積とが同一となるように設定されており、更に前記2つのフォトダイオードの面積の和(領域ア、エを含むフォトダイオードの面積と領域ウ、カを含むフォトダイオードの面積との和)と領域イ及び領域オを含むフォトダイオードの面積とが同一となるように設定されている。領域ア〜カに基づき、(イ+オ)−((ア+エ)+(ウ+カ))の計算式より同様に振れ量を求めることができる。また、図10(d)は、4つのフォトダイオードで構成されたものであり、夫々のフォトダイオードの面積が同一となるように設定されている。領域ア〜クに基づき、((イ+カ)+(ウ+キ))−((ア+オ)+(エ+ク))の計算式より同様に振れ量を求めることができる。尚、各フォトダイオードの形状が同一形状であると、生産面で有利である。また、図10(b)は単純な形状である四角形状のフォトダイオードを所定角度傾斜させるだけで容易に実現できる。
【0060】
つまり、図10(a)〜(d)に示したフォトダイオードの構成は、本願発明を実施し得る実用性の高い構成を例示したもので、図10(a)〜(d)は夫々、生産の容易性やコスト面も考慮し、複数のフォトダイオードの組み合わせにより、受光面の面積が、受光面の総面積の2分の1ずつとなるように構成したものである。
【0061】
実施例1は上述のように構成したから、被測定部材を回転させながらLEDから光線を照射してフォトダイオードでの受光量をもとに該被測定部材の振れ量を測定する際、被測定部材を光源であるLEDからフォトダイオードまでの光路間に配置させない状態においては、フォトダイオードの全域にLEDからの光線が照射されるように設定し、また、フォトダイオード間のギャップをそのギャップ軸が被測定部材の軸方向に対して傾斜し、このギャップの両端部が光学系の光軸方向視において被測定部材の外形より外方に位置せしめられるように配置することで、各フォトダイオードの受光量から振れ量を測定することが可能となる。
【0062】
従って、被測定部材の外径がギャップ幅よりも小さい場合や、回転させられている被測定部材の動的振れが大きい場合でも、被測定部材の外径やギャップ幅の大きさに関する制約が飛躍的に緩和され、確実に正確な振れ量の測定を行えることになる。
【0063】
よって、実施例1は、切削加工に用いられる加工装置のスピンドルに取り付けられて高い回転数で回転する極小径丸棒の動的振れを測定可能な極めて実用性に秀れた測定装置となる。
【実施例2】
【0064】
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
【0065】
実施例2は、図6,7に図示したように、実施例1の被測定部材とフォトダイオードとの間にテレセントリック光学系を設けたものであり、実施例1と同様に被測定部材としてのゲージピン(丸棒)を測定するものである。
【0066】
テレセントリック光学系は、結像レンズ(球面レンズ)2と絞りとで構成されるもので、これによりフォトダイオードに向かって被測定部材の像が結像されることになる。テレセントリック光学系を該テレセントリック光学系とフォトダイオードとの距離が固定されるように追加すると、被測定部材と前記テレセントリック光学系との距離が変化してもフォトダイオード上に結像される被測定部材の像(影)の大きさが変わることはないため、被測定部材の光軸方向の位置決めを厳密に行わなくても、より容易にして正確な測定が可能となる。よって、実施例2は実施例1に比し、より精度の高い測定が可能なものとなる。
【0067】
その余は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0068】
本発明の具体的な実施例3について図面に基づいて説明する。
【0069】
実施例3は、図8,9に図示したように、実施例2の構成にレンズ3,4を追加したものであり、被測定部材としてドリルなどの、外周に螺旋状の切り屑排出溝や切れ刃を有する回転切削工具を測定するものである。尚、図9では被測定部材を簡略化のため丸棒状に図示している。
【0070】
ここで、レンズ3は、被測定部材の一部に前記光線を被測定部材の軸方向のみに集束させる(被測定部材の測定する範囲を狭くする)円筒形レンズであり、レンズ4はレンズ3で照射範囲を狭くした光を平行光に戻す円筒形レンズである。
【0071】
被測定部材の測定する範囲を狭くするレンズ3を用いることで、回転切削工具の軸心と略直交する略線状の光を回転切削工具に照射可能となり、軸方向の測定範囲を可及的に狭くすることができ、外周に溝が存在するドリル等であっても振れ量を正確に測定可能となる(測定される振れ量は軸方向の測定範囲の平均値となるため、軸方向の測定範囲が広いと外周に溝が存在するドリル等では誤差が生じる。)。
【0072】
以下、図8に基づいて回転切削工具の外径、位置及び振れ量を測定する具体的手法について説明する。
【0073】
回転切削工具の外径は、アンプ(1)からの信号を、加算回路(3)で各フォトダイオードの回転切削工具により遮られた影の部分の面積に相当する電圧を加算し、最大値保持回路(7)で最大値を保持することで得ることができる。即ち、ドリル等の回転切削工具の場合は、溝の部分があるため、ゲージピンと異なり、外周のある部分(溝がない部分)の最大値を保持する必要がある。A/D変換回路は、得た値をアナログ値からデジタル値に変換する。
【0074】
回転切削工具の振れ量は、回転切削工具の位置を測定し、その位置情報より各種回路を用いることで測定することができる。即ち、アンプ(1)からの信号を、減算回路(2)で各フォトダイオード間の電圧差を算出し、この電圧差が回転切削工具の位置に相当し、減算回路(9)で最大値保持回路(7)に保持される最大径に相当する電圧(以下「最大径」と略記する)と瞬時値との差を算出し、サンプルホールド回路(4)において、前記差を比較回路(10)で最大径と比較して最大径との差が所定の基準値より大きい場合(ドリル等の外周がない場所、即ち溝の部分と判断される場合)にはサンプリングを行わず直前の値がホールドされ、最大径との差が所定の基準値より小さい場合(ドリル等の外周がある場所と判断される場合)にはサンプリング(電圧差の値を随時出力)され、サンプリングされた電圧差は、最大値保持回路(5)で(位置の)最大値に相当する電圧差(以下「最大値」と略記する)が保持され、最小値保持回路(6)で(位置の)最小値に相当する電圧差(以下「最小値」と略記する)が保持され、この最大値と最小値との差を減算回路(8)で算出して得られた値が回転切削工具の振れ量に相当する電圧差V(前記、位置に相当する電圧差の差)である。その後、A/D変換回路で、アナログ値からデジタル値に変換し、更に、上述のようにして得られた回転切削工具の外径の半分の値をrとして前記振れ量に相当する電圧差Vと前記rとを振れ量Xmを求める式(2)にあてはめて振れ量取得演算回路(11)で算出することでより正確な振れ量を得ることができる。得られた振れ量は振れ量表示器に表示される。尚、前記した所定の基準値とは、回転切削工具の外径に起因して任意に設定可能な基準値である。
【0075】
実施例3においては、測定方法が特に有用である、被測定部材としてドリルなどの、外周に螺旋状の切り屑排出溝や切れ刃を有する回転切削工具について例示したが、上記測定方法はゲージピン(丸棒)についても同様に可能なものであり、前述したようにゲージピンの軸方向の測定範囲を可及的に狭くすることができるため、軸方向の所望の位置における振れ量をより正確に測定することが可能となる。
【0076】
以上のようにして、極小径ドリル等の振れ量を正確に測定することが可能となる。
【0077】
その余は実施例1と同様である。
【0078】
また、実施例3におけるサンプルホールド回路はあくまで一例であり、この構成に限らず(サンプルホールド回路を用いずに)、回転切削工具の外径を同時に求められれば、他の方法を用いてもよいし、別の測定装置であらかじめ外径を正しく測定できていれば、より簡単な構成で振れを測定できることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、この光源からの光線を被測定部材へ導くレンズ系と、前記被測定部材を介して前記光線を受光する複数のフォトダイオードとを備える光学系を有し、このフォトダイオードでの受光量をもとに前記被測定部材の位置若しくは振れ量を測定する測定装置であって、前記光学系の光軸方向視において、前記複数のフォトダイオードにして前記被測定部材の軸心と交差する辺部が全て直線であり、前記複数のフォトダイオード間には、前記被測定部材の軸方向に対して傾斜する少なくとも1つのギャップが設けられ、このギャップの両端部は前記被測定部材の外形より外方に位置せしめられ、前記ギャップを形成するフォトダイオードの辺部以外の前記被測定部材の軸心と交差する辺部が前記ギャップと平行でないように構成されていることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の測定装置において、前記各フォトダイオードは前記光学系の光軸方向視において、多角形状のフォトダイオードであることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材と前記フォトダイオードとの間にはテレセントリック光学系が設けられていることを特徴とする測定装置。
【請求項4】
請求項1,2いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材の一部に前記光線を被測定部材の軸方向のみに集束させるレンズを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材の一部に前記光線を被測定部材の軸方向のみに集束させるレンズと、前記フォトダイオードに向かって前記光線を平行光として照射させるレンズとを備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項6】
請求項4、5いずれか1項に記載の測定装置において、前記被測定部材は回転切削工具であることを特徴とする測定装置。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の測定装置において、同一面積にして同一形状の2つのフォトダイオードが設けられていることを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−13947(P2013−13947A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146693(P2011−146693)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000115120)ユニオンツール株式会社 (44)
【Fターム(参考)】