説明

測定部材及びかぶり深さの測定方法

【課題】コンクリートのかぶり深さを容易に、かつより正確に測定できる測定部材及び測定方法を提供する。
【解決手段】測定部材1は、コンクリートのかぶり深さを測定するための測定部材であって、2つの直尺10、20と、連結部材30と備えている。2つの直尺10、20は、延在方向に目盛11、21が形成されると共に、延在方向に沿って形成された溝を有し、かつ溝が互いに対向するように配置されている。連結部材30は、2つの直尺のそれぞれの溝内に配置されると共に、溝に沿って移動可能であり、かつ2つの直尺10、20を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定部材及びかぶり深さの測定方法に関し、より特定的には、コンクリートのかぶり深さを測定するための測定部材及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄筋コンクリート構造物を構成する鉄筋は、コンクリート表面の所定の深さとなるように埋設されており、それによって、鉄筋が酸化から保護される構成となっている。このため、図20に示すように、コンクリート構造物において、鉄筋RからコンクリートC表面までの最短距離であるかぶり深さHは重要な指標である。かぶり深さHを直尺で測定する場合には、図20に示すように鉄筋Rに到達するような穴をうがち、水平方向の位置を決めるための直尺101、及び鉄筋Rまでの鉛直方向の深さを測定するための直尺102の2本の直尺を用いている。
【0003】
しかし、2本の直尺101、102を用いて測定する場合、測定者が片手で直尺を固定し、もう一方の手でその状態の写真撮影を行おうとすると、2本が互いに分離しているため、うまく固定できずに、迅速な測定が行えない場合がある。また、測定時に、一方の直尺が落下してしまう場合もある。このため、かぶり深さを容易に測定することが困難であるという問題があった。
【0004】
そこで、2本の直尺を連結する技術が考えられる。このような技術として、例えば実開平7−2901号公報(特許文献1)のノギス兼用定規が挙げられる。特許文献1には、図21に示すように、直尺201、202は枢支軸217によって枢支され、ガイド突起215を直線溝205に滑り込ませながら直尺202を右方に動かすと、直尺202を矢印A−Bのごとく平行移動させて平行線定規として使用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−2901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示のノギス兼用定規を、かぶり深さの測定に適用することは困難である。その理由を以下に説明する。
【0007】
特許文献1において、直尺201を水平方向の位置決めに用い、直尺202を鉛直方向の深さの測定に用いると、直尺202が移動可能な方向は矢印A−Bであるので、直尺202を水平方向に移動することはできるが、直尺201を鉛直方向に移動することはできない。このため、図22に示す状態になると、水平方向の位置決めができないため、かぶり深さHを測定することはできない。
【0008】
特許文献1において、直尺202を水平方向の位置決めに用い、直尺201を鉛直方向の深さの測定に用いると、直尺202が移動可能な方向は矢印A−B方向であるので、直尺201を鉛直方向に移動することはできるが、直尺202を水平方向には移動できない。このため、図23に示す状態になると、水平方向において左右いずれか片側(図23では左側)しか位置決めができないため、かぶり深さHを正確に測定することはできない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、コンクリートのかぶり深さを容易に、かつより正確に測定できる測定部材及び測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面における測定部材は、コンクリートのかぶり深さを測定するための測定部材であって、延在方向に目盛が形成され、かつ連結された2つの直尺を備え、2つの直尺の延在方向が同じ方向になるように配置したときに、2つの直尺は延在方向に沿って互いに移動可能であり、かつ2つの直尺のそれぞれの任意の位置で、互いに交差するように回転可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一の局面における測定部材によれば、2つの直尺が延在方向に沿って互いに移動可能であるので、かぶり深さを測定するために適する位置に2つの直尺を配置して、その位置で少なくとも一方を回転することで、互いに直交するように配置できる。2つの直尺の水平方向及び鉛直方向の位置合わせを容易に、かつより正確にできるので、かぶり深さを容易に、かつより正確に測定することができる。
【0012】
本発明の他の局面における測定部材は、コンクリートのかぶり深さを測定するための測定部材であって、延在方向に目盛が形成されると共に、延在方向に沿って形成された溝を有し、かつそれぞれの溝が対向するように配置された2つの直尺と、2つの直尺のそれぞれの溝内に配置されると共に、溝に沿って移動可能であり、かつ2つの直尺を連結する連結部材とを備えている。
【0013】
本発明の他の局面における測定部材によれば、2つの直尺において延在方向に形成された溝に沿って移動可能な連結部材が配置されているので、かぶり深さを測定するために適する位置に2つの直尺を配置して、その位置で少なくとも一方の直尺を回転することで、互いに直交するように配置できる。2つの直尺の水平方向及び鉛直方向の位置合わせを容易に、かつより正確にできるので、かぶり深さを容易に、かつより正確に測定することができる。
【0014】
上記一及び他の局面における測定部材において好ましくは、上記2つの直尺のそれぞれの面のうち、2以上の面に目盛が形成されている。
【0015】
目盛が形成されている面が2以上あるので、かぶり深さを測定するための位置合わせがより容易になる。したがって、かぶり深さをより容易に、かつより正確に測定することができる。
【0016】
上記一及び他の局面における測定部材において好ましくは、2つの直尺が直交するように配置したときに、2つの直尺が固定されることを特徴とする。
【0017】
これにより、コンクリート表面が鉄筋よりも下方に位置する場合のかぶり深さを測定する場合において、測定部材の1箇所を支持することで、かぶり深さを測定できる。したがって、コンクリート表面が鉄筋よりも下方に位置する場合のかぶり深さを容易に、かつより正確に測定することもできる。
【0018】
本発明の一の局面におけるかぶり深さの測定方法は、上記いずれかの測定部材を用いてコンクリートのかぶり深さを測定する方法であって、2つの直尺を相対的に移動させて、所定の位置に配置する工程と、所定の位置で2つの直尺の少なくとも一方を回転して、2つの直尺を直交させて、かぶり深さを測定する工程とを備えている。
【0019】
本発明の一の局面におけるかぶり深さの測定方法によれば、かぶり深さを測定するために適する所定の位置に2つの直尺を配置して、その位置で少なくとも一方の直尺を回転することで、2つの直尺を互いに直交するように配置できる。このため、2つの直尺の水平方向及び鉛直方向の位置合わせを容易にできるので、かぶり深さを容易に、かつより正確に測定することができる。
【0020】
本発明の他の局面におけるかぶり深さの測定方法は、上記の測定部材を用いて、1人の測定者が、コンクリート表面が鉄筋よりも下方に位置する場合のかぶり深さを測定する方法であって、一方の手でかぶり深さを示す目盛が見えるように測定部材を保持し、他方の手で記録媒体を用いて目盛を記録することを特徴とする。
【0021】
本発明の他の局面におけるかぶり深さの測定方法によれば、コンクリート表面が鉄筋よりも下方に位置する場合のかぶり深さを測定する場合において、測定部材の1箇所を一方の手で支持した状態で、他方の手で記録媒体により目盛を記録することで、1人の測定者であっても、かぶり深さを容易に、かつより正確に測定できる。したがって、コンクリート表面が鉄筋よりも下方に位置する場合のかぶり深さを容易に、かつより正確に測定することもできる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、かぶり深さを容易に、かつより正確に測定できる測定部材及びかぶり深さの測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における測定部材を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における測定部材を概略的に示し、図1における線分II−IIでの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における測定部材を概略的に示し、図1における線分III−IIIでの断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1における測定部材を概略的に示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1においてかぶり深さを測定する状態を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2においてかぶり深さを測定する状態を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態3における測定部材を概略的に示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態3における測定部材を構成する固定部材を概略的に示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態3における測定部材を概略的に示す底面図である。
【図10】本発明の実施の形態4における連結部材を概略的に示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態4の測定部材において、第1及び第2の直尺の延在方向が同じ方向になるように配置したときの第2の直尺と連結部材との関係を概略的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態4の測定部材において、第1及び第2の直尺の延在方向が同じ方向になるように配置したときの第2の直尺と連結部材との関係を概略的に示し、図11における線分XII−XII線に沿った断面図である。
【図13】本発明の実施の形態4の測定部材において、第1及び第2の直尺が直交するように配置したときの第2の直尺と連結部材との関係を概略的に示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態4の測定部材において、第1及び第2の直尺が直交するように配置したときの第1及び第2の直尺と、連結部材との関係を概略的に示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態4の測定部材において、第1の直尺と連結部材との関係を概略的に示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態4の測定部材において、第1の直尺と連結部材との関係を概略的に示し、図15における線分XVI−XVI線に沿った断面図である。
【図17】本発明の実施の形態5における測定部材を構成する連結部材を概略的に示す斜視図である。
【図18】発明の実施の形態5の測定部材において、第1及び第2の直尺の延在方向が同じ方向になるように配置したときの第2の直尺と連結部材との関係を概略的に示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態5の測定部材において、第1及び第2の直尺が直交するように配置したときの第2の直尺と連結部材との関係を概略的に示す断面図である。
【図20】2本の直尺を用いてかぶり深さを測定する状態を示す模式図である。
【図21】特許文献1に開示のノギス兼用定規を示す図である。
【図22】特許文献1に開示のノギス兼用定規を用いてかぶり深さを測定する状態を示す模式図である。
【図23】特許文献1に開示のノギス兼用定規を用いてかぶり深さを測定する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0025】
(実施の形態1)
図1〜図4を参照して、本発明の一実施の形態である測定部材を説明する。図1〜図4に示すように、本実施の形態における測定部材1は、コンクリートのかぶり深さを測定するための測定部材であって、第1の直尺10と、第2の直尺20と、連結部材30とを備えている。第1及び第2の直尺10、20は、連結部材30により連結されている。
【0026】
図1及び図2に示すように、第1及び第2の直尺10、20のそれぞれには、延在方向に目盛11、21が形成されている。図1に示すように、第1及び第2の直尺10、20のそれぞれの面のうち、2以上の面に目盛11、21が形成されていることが好ましい。
【0027】
図2に示すように、第1及び第2の直尺10、20は、延在方向に沿って形成された溝12、22を有している。溝12、22は、第1及び第2の直尺10、20から連結部材30を外れにくくする観点から、第1及び第2の直尺10、20の両端には形成されていない。つまり、第1及び第2の直尺10、20は、両端から間隔を隔てた位置の間を延在方向に沿って延びるように形成されている。溝12、22は、面の長手方向の略中央に形成されている。
【0028】
図1及び図3に示すように、それぞれの溝12、22が対向するように、第1及び第2の直尺10、20は、配置されている。
【0029】
第1及び第2の直尺10、20の断面形状は特に限定されないが、例えば矩形であり、正方形であることが好ましい。
【0030】
なお、本実施の形態における第1及び第2の直尺10、20は、略同じ形状であるが、異なる形状であってもよい。
【0031】
図3に示すように、連結部材30は、第1の取付部31と、第2の取付部32と、接続部33とを有している。第1の取付部31は、第1の直尺10の溝12内に配置され、例えば円柱または角柱である。第2の取付部32は、第2の直尺20の溝22内に配置され、例えば円柱または角柱である。接続部33は、第1の取付部31と、第2の取付部32とを接続し、例えば棒状である。
【0032】
図1及び図3に示すように、第1及び第2の直尺10、20の溝12、22において、第1及び第2の直尺10、20の互いに対向した表面に形成された大きさよりも、底面の大きさの方が大きい。また、連結部材30を上方から見たときの第1及び第2の取付部31、32の平面の外周縁は、接続部33の平面の外周縁よりも大きい。溝12、22の表面側には連結部材30の接続部33が位置し、溝12、22の底面側には連結部材30の第1及び第2の取付部31、32が位置する。本実施の形態の測定部材1はこのような構成であるので、連結部材30により、第1及び第2の直尺10、20は、連結されている。
【0033】
また、連結部材30は、溝12、22に沿って(図3における矢印Mの方向に)移動可能である。つまり、図1のように第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるように(第1及び第2の直尺10、20を重ねるように)配置したときに、連結部材30により2つの直尺10、20は延在方向に沿って互いに移動可能である。このため、第1及び第2の直尺10、20は、互いに自由にスライドする。
【0034】
また、第1及び第2の直尺10、20の任意の位置で、互いに交差するように回転可能である。このため、図4に示すように、第1及び第2の直尺20の任意の位置で、第1及び第2の直尺10、20を直交させることができる。つまり、第1及び第2の直尺20の任意の位置で、第1及び第2の直尺10、20を上方から見たときに直角になるように配置できる。
【0035】
なお、本実施の形態における第1及び第2の直尺10、20は、略同じ形状であるが、異なる形状であってもよい。
【0036】
続いて、図1〜図5を参照して、測定部材1を用いてコンクリートのかぶり深さを測定する方法を説明する。
【0037】
まず、図1〜図3に示す第1及び第2の直尺10、20を相対的に移動させて、所定の位置に配置する。本実施の形態では、第1及び第2の直尺10、20を延在方向(図2における矢印Mの方向)に移動して、所定の位置に配置する。
【0038】
次に、図4に示すように、所定の位置で第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転することで、図5に示すように、かぶり深さHを測定する。具体的には、図4に示すように、第1及び第2の直尺10、20が直交する位置まで第1及び第2の直尺10、20を回転する。この状態で図5に示すように、第1の直尺10の両端をコンクリートCの表面に載置し、鉄筋Rが露出した最も深い部分まで第2の直尺20を鉛直方向に移動する。第2の直尺20の目盛21を読み取ることで、かぶり深さHを測定することができる。
【0039】
本実施の形態では、コンクリートCが相対的に上側に位置し、鉄筋Rが相対的に下側に位置する場合のかぶり深さHを測定する場合を説明している。このため、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに固定されていない場合であっても、第1の直尺10はコンクリートCの表面で保持されると共に、第2の直尺20の端部が鉄筋Rで保持されるため、1人の測定者によってかぶり深さHを測定することもできる。この場合、手を使わずに、かぶり深さHを示す目盛が見えるように測定部材1を載置し、手を使って、記録媒体(例えばカメラ)を用いて目盛21を記録(例えば写真撮影)することにより、かぶり深さHの測定値を記録することもできる。これにより、目盛が記録媒体に残る(例えば写真に写る)ので、測定値を記録することができる。この場合、1人の測定者で測定及び記録が可能であるので、測定経費を低減することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態における測定部材1は、延在方向に目盛11、21が形成され、かつ連結された第1及び第2の直尺10、20を備え、第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるように配置したときに、第1及び第2の直尺10、20は延在方向に沿って互いに移動可能であり、かつ第1及び第2の直尺10、20のそれぞれの任意の位置で、互いに交差するように回転可能であることを特徴としている。
【0041】
本実施の形態における測定部材1によれば、第1及び第2の直尺10、20が延在方向に沿って互いに移動可能であるので、かぶり深さHを測定するために適する位置に第1及び第2の直尺10、20を配置して、その位置で少なくとも一方を回転することで、互いに直交するように配置できる。このため、コンクリート構造体に形成された穴の形状等に応じて、第1及び第2の直尺10、20の水平方向及び鉛直方向の位置合わせを容易に、かつ正確にできるので、かぶり深さHを容易に、かつ正確に測定することができる。
【0042】
また、第1及び第2の直尺が連結されているので、一方の直尺の紛失及び落下を防止できるので、測定の簡便を図り、迅速にかぶり深さHを測定することができる。
【0043】
また、本実施の形態における測定部材1は、延在方向に目盛11、21が形成されると共に、延在方向に沿って形成された溝12、22を有し、かつ溝12、22が互いに対向するように配置された第1及び第2の直尺10、20と、第1及び第2の直尺10、20のそれぞれの溝12、22内に配置されると共に、溝12、22に沿って移動可能であり、かつ第1及び第2の直尺10、20を連結する連結部材30とを備えている。
【0044】
本実施の形態における測定部材1によれば、第1及び第2の直尺10、20において延在方向に形成された溝12、22に沿って移動可能な連結部材30が配置されているので、かぶり深さHを測定するために適する位置に第1及び第2の直尺10、20を配置して、その位置で少なくとも一方の直尺を回転することで、互いに直交するように配置できる。このため、第1及び第2の直尺10、20の水平方向及び鉛直方向の位置合わせを容易にできるので、かぶり深さHを容易に測定することができる。
【0045】
(実施の形態2)
本実施の形態における測定部材は、基本的には実施の形態1の測定部材1と同様であるが、連結部材30が所定の力を加えると第1及び第2の直尺10、20が互いに相対的に移動可能であるが、所定の力を加えないと両者が固定されている点において異なる。
【0046】
具体的には、図1〜図3において、連結部材30の第1の取付部31の外径は、第1の直尺10の溝12の幅とほぼ同じであり、連結部材30の第2の取付部32の外径は、第2の直尺20の溝22の幅とほぼ同じである。このため、所定の力未満(相対的に軽い力)を加えても連結部材30は第1及び第2の直尺10、20の溝12、22内を移動しない一方、所定の力以上(相対的に重い力)を加えると、連結部材30は第1及び第2の直尺10、20の溝12、22内を摺動する。
【0047】
本実施の形態のかぶり深さを測定する方法は、基本的には実施の形態1と同様であるが、上述した測定部材を用いて測定する点において異なる。
【0048】
具体的には、第1及び第2の直尺10、20の少なくともいずれか一方に所定の力(相対的に重い力)を加えて、延在方向に移動して、所定の位置に配置する。
【0049】
次に、所定の力(相対的に重い力)を加えて、所定の位置から第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を直交する位置まで回転し、この状態で第1の直尺10をコンクリートCの表面に接触するように配置する。その後、第2の直尺20に所定の力(相対的に重い力)を加えて、鉄筋Rが露出した部分まで第2の直尺20の端部を移動する。この状態で第2の直尺20への力の印加を中止すると、第2の直尺20は固定される。このため、第1の直尺10を保持することで、第2の直尺20の目盛21を読み取ることができ、かぶり深さHを測定することができる。
【0050】
本実施の形態では、図6に示すように、コンクリートCが相対的に下側に位置し、鉄筋Rが相対的に上側に位置する場合のかぶり深さHを測定する。この場合であっても、第2の直尺20は第1の直尺10に対して固定されているので、一方の手で第1の直尺10を保持し、他方の手で記録媒体を用いて目盛21を記録することで、1人の測定者によって測定することもできる。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態における測定部材1は、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置するときに、固定される。これにより、測定時に第1及び第2の直尺10、20が固定しているので、精度を高めてかぶり深さHを測定することができる。また、測定可能なかぶりの選択肢をより広げることができる。
【0052】
(実施の形態3)
本実施の形態3における測定部材は基本的には実施の形態1と同様であったが、本実施の形態における測定部材2は、図7〜図9に示す固定部材35をさらに備えている点において異なる。
【0053】
図7〜図9に示すように、固定部材35は、台座36と、脚部37とを有している。台座36は平面形状が矩形であり、台座36の各頂点から突出するように脚部37が接続されている。本実施の形態では、隣り合う脚部37の距離a、b(図8参照)は、第1及び第2の直尺10、20の幅c、d(図7参照)と略同一であり、好ましくはa=b=c=dである。また、各脚部37は、対向する脚部同士が互いに平行となる摺接面を有しており、その摺接面は各脚部において直角をなしている。
【0054】
図9に示すように、固定部材35の脚部37の摺接面は、第1及び第2の直尺10、20が直角に固定する。第1及び第2の直尺10、20が直交していない場合には、固定部材35の脚部37を第1及び第2の直尺10、20に挟み込むことができないため、固定部材35により水平方向及び鉛直方向をより正確に位置決めすることができる。
【0055】
固定部材35は、第1及び第2の直尺10、20のいずれか一方に、紐などの接続部材(図示せず)で接続されていてもよい。この場合、固定部材35の紛失及び落下を防止できる。
【0056】
本実施の形態におけるかぶり深さの測定方法は、基本的には実施の形態1と同様であったが、第1及び第2の直尺10、20を延在方向に移動して、所定の位置に配置し、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転する。第1の直尺10の両端がコンクリートCの表面に接するように第1の直尺10を配置し、第2の直尺20の端が鉄筋Rの露出部分に接するように第2の直尺20を配置して、第1及び第2の直尺10、20の位置決めを行う。次に、図7〜図9に示すように、第1及び第2の直尺10、20において重なり合った部分を固定部材35の台座36で覆うように配置するとともに、固定部材35の脚部37で第1及び第2の直尺10、20を挟み込む。これにより、第1及び第2の直尺10、20を任意の位置で直角に固定できる。この状態で、第2の直尺20の目盛21を読み取ることにより、かぶり深さHを測定することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態における測定部材2は、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに、第1及び第2の直尺10、20同士が固定される固定部材35をさらに備えている。
【0058】
本実施の形態の測定部材2によれば、第1及び第2の直尺10、20が直交した状態でも、第1及び第2の直尺10、20をさらに移動することができるので、適切な位置決めをしてから固定部材35で固定することができる。それに加えて、第1及び第2の直尺10、20が互いに直交していないと、固定部材35で固定することができない。このため、かぶり深さHをより正確に測定することができる。
【0059】
また、本実施の形態における測定部材2は、コンクリートC表面が鉄筋Rよりも下方に位置する場合のかぶり深さHも、コンクリートC表面が鉄筋Rよりも上方に位置する場合のかぶり深さHも測定可能である。このため、測定可能な選択肢が多くなる。
【0060】
(実施の形態4)
本実施の形態における測定部材は、基本的には実施の形態1の測定部材1と同様であるが、第2の直尺20の溝22の形状及び連結部材の形状が異なる。
【0061】
具体的には、本実施の形態の連結部材40は、図10に示すように、第1の取付部41と、第2の取付部42と、接続部43とを有している。本実施の形態の連結部材40は、基本的には実施の形態1の連結部材30と同様であり、異なる点を中心に説明する。
【0062】
本実施の形態の第1の取付部41は、第1の直尺10の溝12内に配置され、例えば角柱である。
【0063】
さらに本実施の形態の第2の取付部42は、第2の直尺20の溝22内に配置され、例えば中央部が上方に向けて突出する略円柱形状である。図10に示すように、第2の取付部42の側面は、相対的に厚みの小さい部分42aと、相対的に厚みの大きい部分42bとを有している。厚みの小さい部分42aは、第2の取付部42の上面において接続部43を中心軸として180度の位置に2箇所あり、厚みの大きい部分42bは、第2の取付部42の上面において接続部43を中心軸として厚みの小さい部分42aと90度の位置にあって、かつ180度の位置に2箇所ある。第2の取付部42の上面は、厚みの小さい部分42aから厚みの大きい部分42bに向けて厚みが大きくなるテーパ状である。
【0064】
本実施の形態の接続部43は、第1の取付部41と、第2の取付部42とを接続し、例えば棒状である。
【0065】
図11及び図12に示すように、連結部材40の第2の取付部42における相対的に厚みの小さい部分42aのそれぞれが、第2の直尺20の溝22の幅方向に位置するときに、第2の取付部42が溝22内を延在方向に沿って移動可能である形状、即ち、幅方向中央部が深く、幅方向両端方向へ向かって浅くなるような形状を溝22は有している。そして、第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるように配置した時には、図12に示すように、連結部材40の第2の取付部42において厚みの小さい部分42aが溝22の幅方向両端側に位置し、厚みの大きい部分42bが溝22の幅方向中央部に位置する。
【0066】
一方、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置した時には、図13及び図14に示すように、連結部材40の第2の取付部42において厚みの大きい部分42bが溝22の幅方向両端部に位置し、厚みの小さい部分42aが溝22の幅方向中央部に位置する。連結部材40の第2の取付部42が固定されるので、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに、第1及び第2の直尺10、20が固定される。
【0067】
なお、第1の直尺10、連結部材40の第1の取付部41及び接続部43は、実施の形態1とほぼ同様である。このため、図13及び図14に示すように、第1の10の延在方向に沿って形成された溝12内に連結部材40の第1の取付部41が配置されると共に、溝に沿って第1の取付部41は移動可能である。
【0068】
続いて、図5、図6及び図9〜図16を参照して、本実施の形態における測定部材を用いてかぶり深さを測定する方法について説明する。
【0069】
まず、第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるようにそれぞれを配置し、第1及び第2の直尺10、20を延在方向に移動して、所定の位置に配置する。所定の位置とは、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転したときに、図5または図6に示すように、コンクリートC表面に第1の直尺10を当接するとともに、第2の直尺20において第1の直尺10と交差する位置から端部までの距離がかぶり深さHになるような位置である。
【0070】
次に、所定の位置で第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転することで、かぶり深さHを測定する。具体的には、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転すると、第1の直尺10の溝12内に配置された連結部材40の第1の取付部41は第1の直尺10とともに回転し、それに伴って、第2の直尺20の溝22内に配置された連結部材40の第2の取付部42が回転する。第1及び第2の直尺10、20が直交するように、相対的に90度回転すると、図15に示すように、溝22の幅方向に、連結部材40の第2の取付部42における厚みの大きい部分42bが位置する。このため、図16に示すように、厚みの大きい部分42bにより、第2の取付部42が溝12の開口側と当接し、その反作用によって連結部材40が第2の直尺20側(図16における下方)へ付勢され、第1及び第2の直尺10、20同士が圧接されて固定される。このように第1及び第2の直尺10、20が確実に固定された状態の測定部材において、図5及び図6に示すように、第1の直尺10全体をコンクリートCの表面に配置し、第2の直尺20を鉄筋Rの露出した部分に配置することにより、かぶり深さHを測定する。
【0071】
本実施の形態では、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに、第1及び第2の直尺10、20が固定されるので、一方の手でかぶり深さを示す目盛21が見えるように測定部材を保持し、他方の手で記録媒体を用いて目盛21を記録することもできる。
【0072】
なお、かぶり深さHを測定するときに、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方が適切な位置でない場合には、測定を中止して、第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるように回転し、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を延在方向に移動して、再度、所定の位置を決める。新たに設定した所定の位置で第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転して、第1及び第2の直尺10、20を直交させて、かぶり深さHを測定する。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態における測定部材は、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに、第1及び第2の直尺10、20同士が固定されることを特徴としている。
【0074】
本実施の形態における測定部材によれば、コンクリートC表面が鉄筋Rよりも下方に位置する場合のかぶり深さHを測定する場合において、測定部材の1箇所を支持することで、かぶり深さHを測定できる。したがって、コンクリートC表面が鉄筋Rよりも下方に位置する場合のかぶり深さHを容易に測定することもできる。
【0075】
(実施の形態5)
本実施の形態における測定部材は、基本的には実施の形態1の測定部材1と同様であるが、第2の直尺20及び連結部材の形状が異なる。
【0076】
具体的には、本実施の形態の連結部材50は、図17に示すように、第1の取付部51と、第2の取付部52と、接続部53とを有している。
【0077】
第1の取付部51は、第1の直尺10の溝12内に配置され、例えば円柱である。
【0078】
第2の取付部52は、第2の直尺20の溝22内に配置され、例えば溝52aを有する円柱である。溝52aは、平面形状が半円弧状であり、一方端52a1から他方端52a2に向けて浅くなっている。
【0079】
接続部53は、第1の取付部51と、第2の取付部52とを接続し、例えば棒状である。
【0080】
図18に示すように、第2の直尺20において、溝22を構成する上壁の中央(接続部53を貫通させる開口部近傍)から側壁側に移動させた位置に、溝22の鉛直方向下向きに向けて突出する弾性部材28が取り付けられている。弾性部材28は、例えばバネである。ケースの内部に弾性部材28を収容した状態で第2の直尺20に取り付けてもよい。
【0081】
第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるように配置した時には、図18に示すように、連結部材50の第2の取付部52において、溝52aにおける相対的に深い一方端52a1側に弾性部材28が位置する。このため、連結部材50の第2の取付部52は、溝22に沿って移動可能である。
【0082】
一方、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置した時には、図19に示すように、連結部材50の第2の取付部52において、溝52aにおける相対的に浅い他方端52a2側に弾性部材28が位置する。連結部材50の第2の取付部52が固定されるので、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに、第1及び第2の直尺10、20が固定される。
【0083】
なお、第1の直尺10、連結部材50の第1の取付部51及び接続部53は、実施の形態1とほぼ同様である。
【0084】
続いて、図5、図6及び図17〜図19を参照して、本実施の形態における測定部材を用いてかぶり深さを測定する方法について説明する。
【0085】
まず、第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるように配置し、第1及び第2の直尺10、20を延在方向に移動して、所定の位置に配置する。
【0086】
次に、所定の位置で第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転することで、かぶり深さHを測定する。具体的には、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転すると、図19に示すように、第2の直尺20の溝22内に配置された連結部材50の第2の取付部52において、弾性部材28は第2の取付部52の溝52aの深い一方端52a1側から浅い他方端52a2側に移動する。このため、第1及び第2の直尺10、20が直交するように、相対的に90度回転すると、図19に示すように、第2の取付部52は、他方端52a2側における弾性部材28により、溝12内で固定される。このように第1及び第2の直尺10、20が固定された状態の測定部材において、図5及び図6に示すように、第1の直尺10をコンクリートCの表面に配置し、第2の直尺20を鉄筋Rの露出した部分に配置することにより、かぶり深さHを測定する。
【0087】
なお、かぶり深さHを測定するときに、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方が適切な位置でない場合には、測定を中止して、第1及び第2の直尺10、20の延在方向が同じ方向になるように回転し、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を延在方向に移動して、再度、所定の位置を決める。所定の位置とは、第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転したときに、図5または図6に示すように、コンクリートC表面に第1の直尺10を当接するとともに、第2の直尺20において第1の直尺10と交差する位置から端部までの距離がかぶり深さHになるような位置である。新たに設定した所定の位置で第1及び第2の直尺10、20の少なくとも一方を回転して直交して、かぶり深さHを測定する。
【0088】
以上説明したように、本実施の形態における測定部材は、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに、固定されることを特徴としている。このため、本実施の形態の測定部材を用いる場合であっても、コンクリートC表面が鉄筋Rよりも下方に位置する場合のかぶり深さHを容易に測定することもできる。
【0089】
なお、第1及び第2の直尺10、20が直交するように配置したときに、第1及び第2の直尺10、20が固定される機構は、実施の形態4または5に限定されず、例えば溝に偏芯カムを設け、スライド及び直角で固定できるようにする手段を備えていてもよい。
【0090】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1,2 測定部材、10 第1の直尺、11,21 目盛、12,22 溝、20 第2の直尺、28 弾性部材、30,40,50 連結部材、31,41,51 第1の取付部、32,42,52 第2の取付部、33,43,53 接続部、35 固定部材、36 台座、37 脚部、42a 厚みの小さい部分、42b 厚みの大きい部分、52a 溝、52a1 一方端、52a2 他方端、C コンクリート、R 鉄筋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートのかぶり深さを測定するための測定部材であって、
延在方向に目盛が形成され、かつ連結された2つの直尺を備え、
前記2つの直尺の延在方向が同じ方向になるように配置したときに、前記2つの直尺は延在方向に沿って互いに移動可能であり、かつ前記2つの直尺のそれぞれの任意の位置で、互いに交差するように回転可能であることを特徴とする、測定部材。
【請求項2】
コンクリートのかぶり深さを測定するための測定部材であって、
延在方向に目盛が形成されると共に、延在方向に沿って形成された溝を有し、かつそれぞれの前記溝が対向するように配置された2つの直尺と、
前記2つの直尺のそれぞれの前記溝内に配置されると共に、前記溝に沿って移動可能であり、かつ前記2つの直尺を連結する連結部材とを備えた、測定部材。
【請求項3】
前記2つの直尺のそれぞれの面のうち、2以上の面に目盛が形成されている、請求項1または2に記載の測定部材。
【請求項4】
前記2つの直尺が直交するように配置したときに、前記第1及び第2の直尺が固定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定部材を用いてコンクリートのかぶり深さを測定する方法であって、
前記2つの直尺を相対的に移動させて、所定の位置に配置する工程と、
前記所定の位置で前記2つの直尺の少なくとも一方を回転して、前記2つの直尺を直交させて、かぶり深さを測定する工程とを備えた、かぶり深さの測定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の測定部材を用いて、1人の測定者が、コンクリート表面が鉄筋よりも下方に位置する場合のかぶり深さを測定する方法であって、
一方の手でかぶり深さを示す目盛が見えるように前記測定部材を保持し、他方の手で記録媒体を用いて前記目盛を記録することを特徴とする、かぶり深さの測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−208039(P2012−208039A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74709(P2011−74709)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】