説明

湿式集塵装置

【課題】ノズルからの噴出水で塵埃類の捕捉を行った後の固液分離を図ることにより、穀粒乾燥機等からの塵埃汚物の廃棄処理の容易化を図り、ひいては循環利用の水を長期に亘って再利用可能にしようとする。
【解決手段】前側導入口を形成し塵埃を含む排気風を受けて後部排出口から排風する円筒状の集塵筒59には内周に沿わせて噴口を円周に設けたノズル環61a,61b,61cを配設し、該円筒状集塵筒59の下方には遠心分離器60を該集塵筒59内と連通可能でかつこれらを着脱自在に接続し、この遠心分離機60は内周に集塵バッグ70を着脱自在に設け側壁部に多数の目合を形成した回転容器67と該容器67の下方に位置する固定の受け皿69とからなり、固定の受け皿69には排水部66bを経て水槽73に連通させると共に該水槽73の貯水を上記のノズル環61a,61b,61cに供給するポンプ手段74を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、湿式集塵装置に関し、穀粒乾燥機等の排風ダクトに接続して利用しうる簡易型の湿式集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば穀粒乾燥機において、乾燥風を機体内部に流通させ内部収容の穀粒に熱風を作用させて乾燥する構成とするが、排風には籾殻や塵埃類が混在して機外に排出されている。環境改善を図るため、排風に混在するこれら塵埃類を湿式集塵装置によって捕捉し、機外排出空気の清浄化を図る構成がある(特許文献1)。
【0003】
上記特許文献1の構成は、穀物乾燥機からの排気を導入して塵埃を分離する集塵部分をユニット化して集塵ユニットとするとともに、それと水槽とを組み合わせるだけで、湿式であっても簡素でかつ小型に構成でき、しかも、水槽に貯留した水を循環使用することにより水の使用量を少なくできるうえ、水槽から集塵ユニットを完全に分離できて、水槽に貯まって塵埃の除去清掃作業も容易にできる穀物乾燥機用集塵装置である。
【特許文献1】特開2003-065676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが上記特許文献1に示す構成は、水槽に塵埃類を捕捉させる構成の開示に止まり、該水槽へ塵埃類が堆積すると集塵ユニットを外して水槽内の汚水化した貯留水を廃棄処分することとなって、その取り扱いが容易でない。
【0005】
本発明は、シャワー水で塵埃類の捕捉を行った後の固液分離を図ることにより、塵埃汚物の廃棄処理の容易化を図り、ひいては循環利用の水を長期に亘って再利用可能にしようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、この発明は次のような技術的手段を講じた。
【0007】
請求項1に記載の発明は、前側導入口を形成し塵埃を含む排気風を受けて後部排出口から排風する円筒状の集塵筒には内周に沿わせて噴口を円周に設けたノズル環を配設し、該円筒状集塵筒の下方には遠心分離器を該集塵筒内と連通可能でかつこれらを着脱自在に接続し、この遠心分離機は内周に集塵バッグを着脱自在に設け側壁部に多数の目合を形成した回転容器と該容器の下方に位置する固定の受け皿とからなり、固定の受け皿には排水部を経て水槽に連通させると共に該水槽の貯水を上記のノズル環に供給するポンプ手段を設けてなる。
【0008】
このように構成すると、集塵筒に導入された穀粒乾燥機等の排風は後方から抜ける間にノズル環から噴出される水にて塵埃類が捕捉される。該噴出水は塵埃類を捕捉して下方の遠心分離機内に入り、回転する回転容器の集塵バッグに受けられ、捕捉した塵埃は集塵バッグ内に残る一方集塵バッグの目合を通過した水は受け皿で受けられた後排水部を経て水槽に至る。また、ノズル環の円周方向に噴口を設ける形態であるから、排気風に対する水噴出の偏りを防いで的確に浮遊する塵埃類を捕捉できる。なお水槽にはポンプ手段によって貯水された水が集塵筒に還元利用される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、集塵筒には排気風の流れ方向に沿って複数のノズル環を設けてなる。このように構成することによって噴口から噴出する水に捕捉される機会を増して塵埃類を確実に下方の遠心分離器側に取り出すことができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、集塵筒を基枠に対して上下回動自在に装着し、上下回動手段を備え、上方回動によって遠心分離器の蓋体又は該蓋体に設ける受筒体に対して集塵筒の下部に設けた筒体を切り離し自在に連設してなる。
【0011】
このように構成すると、上下回動手段の操作によって集塵筒を上方に回動させて定置される遠心分離器に対して取り外しでき、必要に応じて蓋体を取り外しすると内部の集塵バッグを回収できる。穀粒乾燥機などの後部が倉庫壁に迫る狭い空間で集塵装置を備えても集塵筒は上方に回動するため余計なスペースを必要とせずコンパクトに配置できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、ノズル環の噴口から出る水によって捕捉された塵埃類は下方の遠心分離機内に入り、回転する回転容器の集塵バッグに受けられ、捕捉した塵埃は集塵バッグ内に残る一方集塵バッグの目合を通過した水は受け皿で受けられた後排水部を経て水槽に至るから、水槽に溜まった塵埃類は放置されず集塵バッグにて所定に排出されることとなりその取り扱いが簡単であり、なお排水部を経て水槽に至った水は還元利用できる。また、ノズル環の円周方向に噴口を設ける形態であるから、排気風に対する水噴出の偏りを防いで的確に浮遊する塵埃類を捕捉できる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、集塵筒には複数のノズル環を設けてなる。このように構成することによって噴口から噴出する水に捕捉される機会を増して塵埃類を確実に下方の遠心分離器側に取り出すことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、上下回動手段の操作によって集塵筒を上方に回動させて定置される遠心分離器に対して取り外しでき、必要に応じて蓋体を取り外しすると内部の集塵バッグを回収できる。穀粒乾燥機などの後部が倉庫壁に迫る狭い空間で集塵装置を備えても集塵筒は上方に回動するため余計なスペースを必要とせずコンパクトに配置できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施例)
以下、図面に基づきこの発明の一実施例を説明する。
【0016】
まず、穀物乾燥機の全体構成について説明する。1は穀物乾燥機の機枠で、内部に貯留タンク2、乾燥室3、集穀室4の順に積み重ねられている。乾燥室3内には、通気性網体5a,5aを左右に対向させて傾斜状の穀物流下通路5,5を形成し、左右一対の穀物流下通路5,5を正面視V字型に形成している。各穀物流下通路5,5の上位側は更にV字型を形成するように左右の穀物流下通路5,5の内側を断面菱形の空間部とし、この空間部を熱風室6に形成している。なお、菱形断面の空間形成体のうち下半部は通気網体により構成し、V字型の上半部は非通気性の板材により構成している。
【0017】
穀物流下通路5,5下端の左右合流部下方には繰出バルブ7を設けている。この繰出バルブ7は断面円形の筒体に構成されていて、正回転及び逆回転に伴って外周の一部に形成した導入口部から穀物を受入れて、正逆回転に従って下方の集穀室4に落下させる構成である。
【0018】
乾燥室3内側の菱型空間部に形成した熱風室6内には、多角形の筒状に構成されていて乾燥室3正面側壁から後面側壁に亘る長さに形成された遠赤外線放射体10を配置し、機壁前面及び後面に夫々着脱自在に固着している。この遠赤外線放射体10の断面形状は、前記菱型空間部の断面形状に相似して対応するように上部の逆V字形状と下部のV字形状とを短い垂直部で連結する略6角形状に構成されていて、上部側と下部側とにはスリット状の開口11,12を形成している(図3)。なお、上部側開口11は、機体の前側部に所定範囲にわたって形成され、下部側開口12は前後にわたって形成されている。
【0019】
機体の正面側にはバーナ風胴14内に設けたバーナ13を備える熱風室6に連通している。また機体の背面側には、吸引ファン15を設け、この吸引ファン15の起風によって、菱形空間である熱風室6から穀物流下通路5,5を経て、穀物流下通路5,5の外側に形成される排風路16,16に向けて通風するように構成している。
【0020】
集穀室4にはその中央に移送螺旋を備えた下部搬送装置25を設け、繰出バルブ7から繰り出した穀粒をこの下部搬送装置25で受けて例えば機体の正面側に移送する。機体の正面側には昇降機18を設け、内部にバケットを備え、下部搬送装置25からの穀粒を掬い上げて上部天井に設ける上部搬送装置31の始端部に揚穀するように構成している。移送螺旋を備えた上部搬送装置31の終端側の天井中央部には垂下軸32を設け、この垂下軸32に回転拡散板33を取り付けている。
【0021】
前記遠赤外線放射体10を構成する前記左・右半部の前・後壁への取り付けは、左・右半部の前側上部をまたぐ形状の係止具26により前壁にボルト・ナットで取り付け、左・右半部の前側下部及び後側上・下部を独立的に設ける係止具27,27により前・後壁に夫々ボルト・ナットで着脱自在に固着している。
【0022】
前記遠赤外線放射体10の入口側には、乾燥機正面に配置するバーナ13からの熱風を受け入れる構成である。即ち、バーナ13は気化型バーナとされ、正面向きの燃焼盤13aの中央部に横軸周りの回転気化筒13bを備え、気化筒13bの内側に設ける燃料ノズル(図示せず)からの噴出燃料は燃焼火炎を受けて加熱する気化筒13bによって気化され燃焼盤13aから噴出しながら燃焼を継続する構成である。
【0023】
気化型バーナ13は次のように装着される。基板23に対して断面矩形の支持筒13cをもって送風筒13dが支持されている。この基板23には該支持筒13cの左右に位置してイグナイタ13e用トランス13f及び上記燃料ノズルを接続する燃料ポンプ13gを装着し、該支持筒13c前側には外気導入口13h及び前面を導入口13hに形成した案内ガイド13iを設けている。13jは配線部、13kは燃料供給管である。
【0024】
上記基板23の裏面側には上記外気導入口13hに接続しかつ上記支持筒13cに通じる送風ダクト13lを設け、風調ファン13mの回転により、上記導入口13hからの外気を送風筒13d内に供給すべく構成する。13nは風調ファンモータである。
【0025】
図4におけるように、風胴上面にはコントローラ40を着脱ボルト等によって装着している。また、このコントローラ40は上面及び左右面、さらには後ろの空間部を覆うようにコントローラカバーを着脱可能に設けられる。また、風胴14正面側には適宜に通風孔36aを形成した正面カバー36を着脱自在に設けている。なお、この正面カバー36はコントローラ40の操作盤41面を除いた枠型に形成されていて一枚のカバー板部材にて賄われている。
【0026】
上記バーナ風胴14内のバーナ13は遠赤外線放射体10の入口部と連通している。即ち、機体前側壁3aの外側に位置する断面四角形状の上記バーナ風胴14を装着し、該前側壁3aの内側には遠赤外線放射体10の一端を装着する一方、案内ダクト28を装着する。該案内ダクト28は、前側壁3aに形成する導入口3bに略同形の断面略四角形状の短筒体に形成され、遠赤外線放射体10の始端側部分に外装状態で装着されるものである。従って、バーナによる燃焼熱気が主として遠赤外線放射体10断面に入り込むのに対し、バーナ風胴14に導入される外気は、遠赤外線放射体10の外周部を案内ダクト28内周に沿って吹き抜ける構成である。
【0027】
上記バーナ風胴14に導入される外気は、バーナ13に気化型バーナを構成する場合の二次空気供給の役割を果たしながら上記のように熱風室6に入って熱風温度の上昇を抑制する機能を備えるものである。
【0028】
ところで、バーナ燃焼熱気は遠赤外線放射体10に入るとそのまま後方に案内されて却って入口側上部付近の温度が低い傾向にあり、これを是正するため、上記のようにスリット状開口11を形成するものであり、従って、この部分への外気導入は更に温度を低下させるため、この外気導入を遮断すべく遮蔽板29,29を、案内ダクト28の後部側において遠赤外線放射体10の外周部に作用できないように設けている。
【0029】
このように構成すると、遠赤外線放射体10の前側部の開口11による温度上昇、及び案内ダクト28による外気導入の抑制とが相俟って、バーナ13に近い熱風室6入口上部の温度上昇を促進し、熱風室6全体の温度分布が適正範囲となるよう均等化することができる。
【0030】
また、前記のように、バーナ風胴14の前面には乾燥機用コントローラ(制御部)40を設けている(図5)。バーナ風胴14の正面にはコントローラ40操作盤41を備えている。この操作盤41には張込スイッチ42、通風スイッチ43、乾燥スイッチ44、排出スイッチ45、停止スイッチ46を備え、これらのスイッチ群により各種の運転モードに切り替えると共に運転停止を司る。また、緊急スイッチ47を設け、この緊急スイッチ47を操作すると、機体運転部の全体を略同時に停止することができる。
【0031】
これらのスイッチ42〜47の他に、張込量を設定する張込量設定スイッチ48、最終仕上げ水分値を設定する水分設定スイッチ49、及び、乾燥設定スイッチ50(籾乾燥の場合には乾燥速度を速い・普通・遅いに設定し、また、他の穀粒乾燥の場合には、例えば小麦・大麦等の品種に関連付けて予め設定した乾燥速度に設定する)を備えている。更に、乾燥仕上がりを水分値によらないで処理時間により乾燥する等のためのタイマ増・減スイッチ51,52を備えている。
【0032】
水分検出手段は一粒式の水分計53を採用し、所定時間毎に所定粒数単位で水分値を測定し、所定回数の検出結果を平均処理して水分値を算出し、前記操作盤41の表示部54に検出熱風温度等と交代的に表示する構成である。制御部40は併せて一粒水分値から水分のバラツキを判定したり、未熟粒の多少を判定できる構成とし、これらを3個のLED55,56により表示している。
【0033】
制御部40には、操作盤41のスイッチから運転モード情報等を入力するほか、各種センサから検出情報が入力され、前記気化型バーナ13の燃料供給量を制御したり、穀粒の移送系手段を運転制御するように構成している。
【0034】
図7〜図10は集塵装置を示す。上記穀粒乾燥機の機体背面部に設ける前記吸引ファン15のファン胴15aに、接続筒57を介して集塵装置58を接続している。この集塵装置58は、円筒状の集塵筒59と遠心分離器60とからなる。集塵筒59は、前側の導入口59aと後部の排気口59bの間に径大の胴部59cを形成し、この胴部59c内周にスプレーノズルを配設している。図例では集塵筒59の中心軸線方向に複数(3連)のノズル環61a,61b,61cを所定間隔をおいて設け、該ノズル環61には夫々内向きの噴口62a〜62fを備えている。これらのノズル環61a,61b,61cは、夫々導入パイプ63a,63b,63cが接続され、かつこれら導入パイプ63a,63b,63cは、集塵筒59の外側にて集合パイプ64から分岐する構成とし(図9)、後記のポンプ手段から高圧水を導入しうる構成である。なお、該集合パイプ64と各導入パイプ63とは接合手段64aによって着脱自在に構成される。
【0035】
上記胴部59cの中央下部に連通口59dを開口し、断面四角の筒体59eを固着している。この筒体59eを遠心分離器60の蓋体65の中央開口部に連設した相似形状の受筒体65aに上部側から着脱自在に嵌合しうる構成としている。
【0036】
上記遠心分離器60は、上記蓋体65で施蓋される本体66内に、側壁部に多数の通孔67aが形成され上部側をやや径大に形成した円筒形状の容器67を縦軸68周りに回転自在に支架させて設けると共に、該回転容器67の下方には受け皿69を設けている。また、回転容器67の内周面に沿って集塵バッグ70を係止紐70aによって着脱固定自在に設ける構成である。すなわち、集塵バッグ70は塵埃類を捕捉するフィルタ部材としての機能を有し、所定メッシュの繊維や樹脂等で可撓性を備えた袋状の形態であり、その入り口側外周に係止紐70aを備え、集塵バッグ70を回転容器67の内部にセットして該係止紐70aで固定することができる。
【0037】
71は上記縦軸68の下端に設ける伝動プーリで、本体底部に固定する駆動モータ72の回転を受けて回転容器67を一定方向に一定の速度で回転させる構成である。
【0038】
上記受け皿69の本体66側部には開口66aが設けられ、回転容器67から排出される水を受けシュート状の排水部66bを経て本体側部の水槽73に排水案内される構成である。
【0039】
上記水槽73には内部貯留の水を汲み上げるポンプ手段74を設け、前記集合パイプ64に高圧水を供給しうる構成である。また、水槽73にはフロートスイッチ75を設け、水槽73内の水位が所定以下になると該スイッチ75はオンして水道蛇口に接続するバルブ77を開作動して水槽73内に水を補給できる構成としている。
【0040】
78,78は前記集塵筒59の前後を所定高さに支持する搬送自在な脚部材であり、伸縮調整自在に2重筒によって構成され固定ボルト78a,78aで任意の高さに設定できる。79は前記集塵筒59の排気部59bに接続する可撓性の排気ダクトで、倉庫壁面に設ける任意の排出口に挿通して戸外に排気しうる。
【0041】
次に、前記構成の作用について説明する。
【0042】
張込ホッパ(図示省略)に投入された穀粒は、張込スイッチ42をONすることにより駆動される昇降機17、上部搬送装置32等を経由して貯溜タンク2に張り込まれる。穀粒の張込が完了すると、乾燥作業に移行するが、前段階で水分設定スイッチ49及び乾燥設定スイッチ50により穀粒種類の設定や希望の乾燥仕上げ水分値を設定する。
【0043】
前記の設定操作の終了後に乾燥スイッチ44をONすると、昇降機17、上・下搬送装置25,31、繰出バルブ7等の駆動が開始されると共に、バーナ13も駆動されて熱風が乾燥室3の菱形空間である熱風室6の入口部に向けて供給される。
【0044】
ここで、バーナの火炎は吸引ファン15の回転により熱風化され、適宜に導入される外気と混合されながら遠赤外線放射体10内に流入し、遠赤外線放射体10を加熱しつつ上部及び下部に形成されているスリット状開口11、12を経て遠赤外線放射体10の外に流出する。その際に遠赤外線放射体10の加熱により遠赤外線放射体10の表面から遠赤外線が放射されて、この熱放射及び前記熱風は共に流下通路5,5を流下中の穀粒に作用し、遠赤外線による輻射熱と熱風により穀粒内部での水分移行が促進され、熱風による水分除去作用に伴って効率的な乾燥作用が行なわれる。
【0045】
なお、バーナ風胴14に入り込んでバーナ13の外周を流通する導入外気は、バーナ燃焼用二次空気供給の機能を行った後、前側壁3aから熱風室6に入るが熱風ダクト28に沿って遠赤外線放射体10の外周を流通し、熱風室6入口部の温度上昇を抑制する。なお、遮蔽板29,29を設けることによって当該遮蔽板29,29部で外気流通は遮断され、温度低下を抑制している。
【0046】
穀物流下通路5,5の前後に亘って遠赤外線の放射と熱風による乾燥作用がなされ、穀物流下通路5,5を通過した熱風は排風室16,16を経て排風される。乾燥室3で乾燥された穀粒は、集穀室4の下部搬送装置25、昇降機17、上部移送螺旋31を経由して再び貯溜タンク2に戻されて調質作用を受ける。このような行程を繰り返し、所定の水分値に達すると乾燥が終了するものである。
【0047】
上記乾燥作業中、乾燥機の後部側に集塵装置58を装着しておくと、吸引ファン15によってファン胴15aから排出される乾燥排気は、籾殻、その他の塵埃類を含んで排出されるが、接続筒57を経由して集塵筒59の導入口59aから入り排気口59bから抜ける途中で、中心部に向けノズル環61a,61b,61c夫々の噴口62a〜62fから噴出されるシャワー水を受けてこれらの塵埃類が捕捉され、シャワー水と共に連通口59dから下方の遠心分離器60に入る。この遠心分離器60では、回転容器67の回転で内部に入った水分が集塵バッグ70の目合いを通過し、および該回転容器67の通孔67aを通過する過程で該水分中に含まれる塵埃はその水分と分離されて集塵バッグ70内に残ることとなる。
【0048】
通孔67aを経由したシャワー水は、排水路を経て水槽71に貯水される。この水槽73の水はポンプ手段74によってノズル環61a,61b,61cに還元供給され再度シャワー水として利用される。
【0049】
集塵バッグ70には捕捉された塵埃類が堆積するが、適宜の時期を見計らって遠心分離器60本体より取り出して廃棄処分される。すなわち、脚部材78を高くしてボルト78aで固定することにより、集塵筒59を上方に持ち上げ、遠心分離器60の蓋体65の受筒体65aから集塵筒59の筒体59eを嵌合から外すと共に、接合手段64aをもって集合パイプ64と各導入パイプ63とを切り離しておくと、遠心分離器60本体をずらせることができる。次いで蓋体65を上方に外すことで回転容器67を露出させることができる。この状態で係止紐70aを解き、集塵バッグ70を回転容器67ないし本体66から取り出すことができる。集塵バッグ70内の堆積塵埃を廃棄し、又は集塵バッグ70毎廃棄処分し、新たに集塵バッグ70を回転容器に装着して次回の乾燥運転に備える。
【0050】
上記のように、集塵バッグ70には水分と分離された塵埃が堆積して残り、これを取り出す作業が集塵筒59と遠心分離器60との上下の切り離しによって容易に行なうことができ、然も遠心分離器60から排出される水分は再利用できるものである。
【0051】
上例において、集塵装置58の運転は専用の起動スイッチ(図示せず)操作によって駆動モータ72やポンプ手段74を起動し、専用の停止スイッチ(図示せず)によってこれらを停止処理する構成とするが、水槽73内の水位が低下したときは、フロートスイッチ75がこれを検知しバルブ77が開放状態に切り換わり蛇口からの水を補給するようになっているため、集塵装置58の運転中、自動的に水分補充を行ない得て自動運転継続が可能であって、穀粒乾燥機のように夜間を通じた連続運転を行なう装置の場合に効果がある。
【0052】
前記ノズル環61a,61b,61cは排気風の流通する方向に沿って複数(図例では3連)に設けてあるから、噴口62a〜62fからの水噴霧の範囲を拡大確保でき塵埃類の捕捉を十分に行うことができる。このノズル環61a,61b,61cを複数に設定し、ポンプ手段74との関係によって必要な捕捉範囲を得ることができる。
【0053】
前記ノズル環61a,61b,61cの一又は複数の夫々に配設される噴口62a〜62fのピッチは、上側のピッチPuが下側のピッチPdよりも狭い配列とし、捕捉の効率を高めている。
【0054】
図11は集塵筒59の上下動構成の改良に係るもので、集塵筒59の前部を乾燥機のファン胴15aに対して可撓性接続部材57及びリンク57aによって上下動可能に支持する一方、該集塵筒59の後部側を上下すべく伸縮調整自在の脚部材80によって支持する。この脚部材80は、ハンドル80a操作によって2重筒が伸縮しうる構成で、前記集塵バッグ70の廃棄の際には該ハンドル80aで脚部材80を高くすることによって集塵筒59が前方を支点として後方が上昇し、遠心分離器60の蓋体65の受筒体65aから集塵筒59の筒体59eの嵌合を外すことができ、作業が容易となる。
【0055】
なお、図のように蓋体65と集塵筒59とを連結一体化することにより、集塵筒59の上昇で蓋体65も一挙に上昇させ得、本体内部の回転容器67の上記作業が一層容易である。
【0056】
次に、図12〜図14に基づき繰出バルブ7のシール構成について説明する。
【0057】
左右の穀物流下通路5,5の下端合流部下方には、断面円筒状で正転及び逆転を繰り返しながら穀粒を繰り出す円筒状の繰出バルブ7を設け、この繰出バルブ7には穀物流下通路5,5の全幅に対応する穀粒繰出用の繰出開口部7aを構成し、繰出バルブ7の左右周面部と左右の穀物流下通路5,5の下端部との間に左・右間隙87,87を構成している。
【0058】
左右の穀物流下通路5,5の下端部下方で且つ繰出バルブ7の左右両側部位に断面凹状の左右のシール保持枠体88,88を配置している。即ち、断面U状に形成した外枠体88aと該外枠体88aに嵌合する内枠体88bとを一体的に構成する。このシール保持枠体88,88の内側部、つまり該内枠体88bの一隅部には繰出バルブ7に摺接対向するシール89,89を包持すべく包持体89aをもってボルト・ナットで着脱自在に固着している。すなわちシールはゴム製で基部側厚肉部89bは包持体89aの嵌合凹部89cに嵌合し、シールの先端側薄肉部89dは繰出バルブ7の外周に摺接しうる。
【0059】
上記シール保持枠体88,88の前後両端部にはブラケット90a,90bを取り付け、機枠1の前・後側壁91a,91bの支持孔91´a,91´bと前記ブラケット90a,90bの支持孔90´a,90´bに前後の支持軸93a,93bを挿通して、このシール保持枠体88,88を前・後側壁91a,91bに回動自在に軸支する。回動軸心(イ)について前側の支持軸93aにアーム94を設け、このアーム94を前側壁91aの外側に沿って回動可能に構成している。前後の支持軸93a,93bの一端部にはアーム94をシール保持枠体88と一体的に設け、このアーム94の先端部と機枠の所定個所との間に支点越えスプリング96を設ける。97は該スプリング96の引張り強さを調整するアジャストボルトである。このスプリング96の弾性力によりシール保持枠体88,88が前記通気性網体5a,5aの下端部に接して停止保持される第1姿勢の状態(図14中実線)と、支点越えしてシール保持枠体88,88を反転する第2姿勢(図14中仮想線)とに切換できる構成である。そして上記の第1姿勢ではシール89,89は繰出バルブ7外周面に接し、第2姿勢ではシール89,89は該外周面から離脱するものである。第1姿勢において異物の噛み込みによってシール保持枠体88に負荷がかかるとスプリング96が伸びて該シール保持枠体88の軸回りの回転を許容し支点越えした該スプリング96の引張力で第2姿勢に切り換わる構成である。なお、第2姿勢はスプリング96の自由長で静止しうるものである。上記第2姿勢でアーム94の動きによってオンするリミットスイッチ98(位置検出手段)を設けて異物噛み込みを報知するなどの措置を講じるものである。
【0060】
また、上記第1姿勢において、繰出バルブ7の外周面に接するよう上記のスプリング96が作用するが、繰出バルブ7の繰出開口部7aがシール89,89に対応する範囲では、スプリング96による圧接作用を伴うとシール89が開口部7aの縁部に作用することによって破損し易い。このため、シール89部を繰出開口部7aが通過する範囲では該シール89を退避動させるカム部材99をバルブ駆動軸7bと一体的に設け、シール89と繰出開口部7aとの接触を防止すべく構成する。このように構成することによって上記欠点を解消することができる(図15)。
【0061】
図16は、繰出バルブ7の改良構成について示すものである。繰出バルブを長手方向に複数分割(図例では3分割)して前部・中間・後部の繰出バルブ7A,7B,7Cとし、夫々に繰出開口部100A,100B,100Cを備える相似形をなしている。これらは単一の駆動軸101に挿通され、うち前側の繰出バルブ7Aが該支持軸101と一体回転すべく固着され、他はこの軸101に遊嵌状態に支持されている。そして前部繰出バルブ7Aと中間繰出バルブ7Bとの間に、無負荷状態では位相を同じくし、回転負荷が掛かると位相のずれを許容する位相進退融通機構102を構成している。すなわち、位相進退融通機構102は、前部繰出バルブ7Aの後面側フランジ部103と中間バルブ7Bの前面側フランジ部104との間に構成される。フランジ部103には位相の融通角度範囲2α(例えば90度)に対応して回転方向前後にストッパ105a,105bを形成し、一方フランジ部104にはこのストッパ105a,105bに係止して前部繰出バルブ7Aの回転駆動力を中間繰出バルブ7Bに伝達する係止凸条106を設けている。また、フランジ部103には回転方向前後に中立復帰バネ107,107を設けてなる(図17)。
【0062】
上記位相進退融通機構102は中間繰出バルブ7Bと後部繰出バルブ7Cとの間にも構成される。
【0063】
このように構成された繰出機構は、繰出開口部100A,100B,100Cが揃った状態で下向きに停止された状態から、起動出力によって駆動軸101が正・逆回転すると、前部・中間・後部繰出バルブ7A,7B,7Cが一体的に回転して繰出開口部100A,100B,100Cが上向いて穀粒を受ける。そのまま駆動軸101の回転で同方向に回転しようとするが、穀粒の受け入れに伴って回転負荷が掛かり、まず駆動軸101と一体の前部繰出バルブ7Aが引き続き回転でき、中間繰出バルブ7B、後部繰出バルブ7Cは駆動軸101と一体でないため、穀粒負荷によって停滞しようとするが前部繰出バルブ7Aとの位相のずれが角度α(45度(90度の1/2))となると係止凸条106が復帰バネ107に抗してストッパ105aに接当する状態で回転駆動力が伝達され中間繰出バルブ7Bが位相遅れで回転する。同様に後部繰出バルブ7Cは、中間繰出バルブ7Bよりも角度α(45度)の位相遅れで回転連動される(図16(イ))。このような作用が行われるため、一挙に前後幅一杯に穀粒を受け入れた状態で一挙に回転連動させるものに比較して1/3ずつの駆動負荷を越えればよいため駆動負荷を分散でき、異常過負荷による故障を防止できる。また、作業終了で駆動を停止するときは図外の回転位置検出センサによって駆動軸101を前部繰出バルブ7Aの繰出開口部100Aが下向く姿勢で停止すべく出力させるが、このときには中間繰出バルブ7Bの繰出開口部100B及び後部繰出バルブ7Cの繰出開口部100Cも位相を遅れて追随しながら下方に穀粒排出できるため、負荷が軽減され各復帰バネ107の作用で前部・中間・後部の繰出開口部が揃う下向き姿勢で停止することができる(図16(ロ))。なお、この作用は逆転連動に際しても同様に行われるものとなる。
【0064】
以上のように、繰出バルブを複数に区分してこのうち所定の繰出バルブを駆動軸に一体化し、他は繰出バルブとの間で位相進退融通機構を構成することで各繰出バルブの繰出開口部の位相をずらせて穀粒を送り、空の状態で位相が揃うように復帰させることによって起動負荷を低減し、あわせて作業待機時は復帰バネで繰出開口部の位相を揃えることができる。
【0065】
なお、繰出バルブの複数区分形態において、当初から前部・中間・後部の各繰出バルブの繰出開口部の位相をずらせて駆動軸に装着するように構成し、停止状態でこのうちの一の繰出開口部が上向くよう回転制御すると、乾燥機への穀粒張込後、乾燥のために繰出バルブを起動する際、この上向き繰出開口部に穀粒が堆積状態となるだけであるから起動時に掛かる負荷が低減できるため、異常過負荷を防止する。
【0066】
図5において機体後部の壁面に火炎監視用の鏡体108を構成している。このガラス体108は遠赤外線放射体後部に対応する壁面に設けられ、正面側からのぞくと鏡体108にバーナの火炎が映し出されて着失火の確認や、火炎色の適否を判断できることを目的とするが、この鏡体108には光触媒をコーティング処理している。即ち酸化チタンの粉末をコーティング液にてコーティング処理するか、予めコーティング処理された市販ガラスを用いる。酸化チタンはバーナ燃焼による紫外線を受けて超親水性を呈し、鏡体108面を超親水性表面となすため、水滴が広がり曇りを防止して長時間の使用においても継続して上記の火炎確認を精度良く行うことができる。
【0067】
また、電子の移動により触媒面に接触した悪臭や細菌類を酸化と還元で分解するCT(Charge transfer:電荷移動型自動参加還元半導体)触媒を乾燥機等の農業機械に施すことによって防汚に効果がある。このCT触媒はスプレー式で噴霧しうるものを採用し、穀粒乾燥機の例では穀粒通路を形成する部分や螺旋やバケット等の移送手段に噴霧して用いることによって、防汚のほか、消臭、除菌の効果を得ることができる。特に上記光触媒に比較して紫外線を必要とせず、光の当たらない暗い場所にても有効であるため、倉庫に設置されて動かせる機会の少ない装置類に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】全体の切断側面図。
【図2】全体の一部切断した正面図。
【図3】遠赤外線放射体一例の斜視図。
【図4】操作盤の正面図。
【図5】バーナ及び遠赤外線放射体一部の側面図。
【図6】バーナの平面図。
【図7】集塵装置の斜視図。
【図8】集塵装置の側断面図。
【図9】ノズル環の斜視図。
【図10】集塵バッグの斜視図。
【図11】別例を示す集塵胴の側面図。
【図12】繰出バルブ部の拡大正断面図。
【図13】シール保持枠体の平断面図。
【図14】繰出バルブの作用説明図。
【図15】別例の繰出バルブの作用説明図。
【図16】更に別例の繰出バルブの側面図(イ)(ロ)。
【図17】図16の繰出バルブの側面図(イ)(ロ)(ハ)。
【符号の説明】
【0069】
1 穀物乾燥機の機枠
15 吸引ファン
58 集塵装置
59 集塵筒
60 遠心分離器
61 ノズル環
62 噴口
63 導入パイプ
64 集合パイプ
65 蓋体
66 本体
67 回転容器
68 縦軸
69 受け皿
70 集塵バッグ
71 伝動プーリ
72 駆動モータ
73 水槽
74 ポンプ手段
75 フロートスイッチ
77 バルブ
78 脚部材
79 排気ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側導入口を形成し塵埃を含む排気風を受けて後部排出口から排風する円筒状の集塵筒には内周に沿わせて噴口を円周に設けたノズル環を配設し、該円筒状集塵筒の下方には遠心分離器を該集塵筒内と連通可能でかつこれらを着脱自在に接続し、この遠心分離機は内周に集塵バッグを着脱自在に設け側壁部に多数の目合を形成した回転容器と該容器の下方に位置する固定の受け皿とからなり、固定の受け皿には排水部を経て水槽に連通させると共に該水槽の貯水を上記のノズル環に供給するポンプ手段を設けてなる穀粒乾燥機等の集塵装置。
【請求項2】
円筒状集塵筒には排気風の流れ方向に沿って複数のノズル環を設けてなる請求項1に記載の穀粒乾燥機等の集塵装置。
【請求項3】
集塵筒を基枠に対して上下回動自在に装着し、上下回動手段を備え、上方回動によって遠心分離器の蓋体又は該蓋体に設ける受筒体に対して集塵筒の下部に設けた筒体を切り離し自在に連設してなる請求項1または2に記載の穀粒乾燥機等の集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−7167(P2006−7167A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191313(P2004−191313)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】