説明

溝付き木質化粧板の製造方法

【課題】 木質化粧板の化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝底や溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち等の欠点が生ぜず、床材とした場合の足裏歩行感が良好で、床材以外の場合も、仕上がり品質に優れ、溝が深くシャープで長期間使用後も溝が浅くなったり溝が消失することのない溝付き化粧板を安価に作業性良く製造する方法を提供する。
【解決手段】 木質基材表面に単板を貼着し木質化粧基材を得る化粧貼り工程と、木質化粧基材に塗膜を施し木質化粧板本体を得る塗装工程と、塗膜を硬化させる塗膜硬化工程と、塗膜硬化工程直後の木質化粧板本体の表面温度が高温状態の間に表面を型付けロール又は型板で押圧し、木質化粧板本体表面に化粧溝を付与し、溝付き木質化粧板を得る溝付け工程とからなることを特徴とする溝付き木質化粧板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質化粧板の製造方法に関するものであって、特に表面に化粧溝を有する木質化粧板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の木質化粧板11にあっては、図7に示すように、化粧貼り工程において、木質基材12の表面に木質化粧単板13を貼着し化粧貼り基材14を作製し、次に前記化粧貼り基材14の表面に、溝加工用のグルーバーやルーター等を用いて、切削加工による切削溝Mを設けて溝付け加工が施され、木質化粧板本体15が作製される。最後に着色や上塗り塗装が施され、塗膜16が施され、化粧溝17付きの木質化粧板11が製造される。このようにして、この順序で木質化粧板11が製造されている。
【0003】
前記化粧溝17は、該化粧溝17と直交する方向の断面において、溝形状は種々あり、例えば、図7で例示する断面視略V字型溝の他、略U字型溝、略角型溝、略台形型溝、その他の溝形状がある。しかし、いずれの形状の化粧溝17であっても、その溝底は木質基材12にまで達しており、前記したとおり、切削加工等によって溝加工を行った後、前記切削溝Mの溝底に着色工程、塗装工程等を施して仕上げられたものが一般的である。この場合、木質化粧板11の表面の木質化粧単板13及び表面塗膜16は、前記化粧溝17の部分で分断されており、溝底部は木質基材12が露出している。
【0004】
従来、木質化粧板11において、表面化粧溝17の断面形状としては、該溝と直交する方向の断面において、前記種々の溝形状の中でも断面視略V字型又は略U字型のものが最も一般的なものとして溝付け加工が行われてきた。また、従来からある木質化粧板として、立体感の豊かな柔らか味のある木質化粧板で、表面化粧溝の上端縁角部に角張った部分がなく歩行感が良好で、しかも、化粧単板の基材の導管孔が原因で生じる溝部分における着色ムラのないデザイン性の良好な建築用化粧板の記載がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−172904号公報(第2−4頁、第1−4図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、木質基材に木質化粧単板を貼着した後、グルーバーやルーター等を用いて溝を切削加工し溝付き木質化粧板を製造する従来の製造方法においては、表面化粧溝の溝底が基材にまで達するので、溝底に下地となる基材が露出し、表面の木質化粧単板と木質基材とで木質材料自体の色調が異なり外観上違和感が生じる。また、前記違和感を解消するために、木質化粧板の木質化粧単板表面及び化粧溝内部に着色塗装や上塗り塗装等を施した場合においても、前記木質材料自体の色調差が原因の違和感の解消は困難で、施される塗料の色調によっては、かえって、前記違和感が強調される結果となり逆効果となることもあり、それを解消することは至難の業であり、外観上の大きな問題点となっていた。
【0007】
また、溝底が木質基材にまで達するので、木質基材の欠点、例えば、虫穴、腐れ、ササクレ、毛羽立ち、バリ等が発生じ、仕上がり感を低下させ、着色塗装しても均一に仕上がらず、品質上の大きな問題点となっていた。
【0008】
また、化粧溝加工を切削によって行うので、溝の上端縁角部に木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等が生じ易く、前記木質化粧板が床材として用いられた時、歩行時に靴下を破損したり、足裏歩行感が悪くなったりし、床材歩行時の、さまざまな問題点が生じていた。床材以外の化粧板として用いられた場合においても、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等は品質上の大きな問題点となっていた。
【0009】
また、上記特開平11−172904号公報に記載されている建築用化粧板の表面化粧溝においては、基材として合板と中比重繊維板を積層接着して構成された複合基材を用いているので、コスト的に不利なものとなっていた。
【0010】
また、上記特開平11−172904号公報に記載の表面化粧溝においては、表面化粧溝を加工する際、基材表面に化粧単板を貼着し、テノーナー、ギャグソー、カッターなどを用いて溝加工した後、化粧板表面の全面及び表面化粧溝の内部を、素地研磨し、続いてロールコーター、リバースコーター等を用いて着色、下塗り、中塗りを行い、フローコーターで上塗りを行う工程が採用されているが、それらの工程が複雑で、作業性に劣り、コスト的にも高価につくといった問題点があった。
【0011】
また、化粧単板が溝の箇所で分断されており、下地の中比重繊維板が露出するといった問題点もあった。
【0012】
さらに、溝底になる中比重繊維板と木質化粧単板とは材質が異なるので、着色剤や塗料等で溝内部を着色する際、着色剤や塗料が、溝内部の表面へ吸い込む時の吸い込み程度が異なり、そのことが原因で、溝内部に着色ムラが生じ易いという問題点もあった。
【0013】
また、型押し方法によって溝付け加工を行った場合、あまり深く型押しすると木質化粧単板にヒビ割れが発生するので、溝の深さや溝内壁の傾斜角度に制限があり、あまり、深くてシャープな溝付け加工が困難であった。
【0014】
また、型押し方法によって溝付け加工を行った場合、木質基材や木質化粧単板等の木質材料が、まわりの湿気の吸放湿によって含水率変動すると、せっかく設けた化粧溝が経日変化によって、段々と浅くなり極端な場合は化粧溝が消失してしまうという問題点があった。
【0015】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題、すなわち本発明の目的とするところは、木質化粧板において、その表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として用いた場合の足裏歩行感が良好で、床材以外に用いた場合においても、仕上がり品質に優れ、しかも、溝が深くシャープで長期間使用後も溝が浅くなったり溝が消失したりすることのない溝付き化粧板を安価に作業性良く製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の溝付き木質化粧板の製造方法は、木質基材表面に接着剤を介して木質化粧単板を貼着し木質化粧基材を得る化粧貼り工程と、該木質化粧基材の表面に、塗膜を施し木質化粧板本体を得る塗装工程と、前記木質化粧板本体表面の塗膜を硬化させる塗膜硬化工程と、前記塗膜硬化工程直後の木質化粧板本体の表面温度が高温状態を保持している間に、木質化粧板本体表面を型押しロール又は型板を用いて押圧し、木質化粧板本体表面に化粧溝を付与し、溝付き木質化粧板を得る溝付け工程とからなることを特徴としている。
【0017】
このような請求項1に記載の溝付き木質化粧板の製造方法では、木質基材表面に接着剤を介して木質化粧単板を貼着し木質化粧基材を得る化粧貼り工程と、該木質化粧基材の表面に、塗膜を施し木質化粧板本体を得る塗装工程と、前記木質化粧板本体表面の塗膜を硬化させる塗膜硬化工程と、前記塗膜硬化工程直後の木質化粧板本体の表面温度が高温状態を保持している間に、木質化粧板本体表面を型押しロール又は型板を用いて押圧し、木質化粧板本体表面に化粧溝を付与し、溝付き木質化粧板を得る溝付け工程とからなる製造方法であるので、この方法によって作製された木質化粧板は、木質化粧単板及びその表面に施された塗膜が化粧溝部分において分断されることなく、化粧溝を形成する基材内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されるように構成されているので、下地基材の露出がなく、表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として使用した場合の足裏歩行感が良好で、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質も良好で、しかも、作製する際の作業性に優れ、安価に製造できる溝付き木質化粧板の製造方法を提供することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の溝付き木質化粧板の製造方法において、塗装工程、塗膜硬化工程、溝付け工程が連続した一連の製造工程として一体的に構成されていることを特徴としている。
【0019】
このような請求項2に記載の溝付き木質化粧板の製造方法では、塗装工程、塗膜硬化工程、溝付け工程が連続した一連の製造工程として一体的に構成されているので、塗膜硬化後、木質化粧板本体の表面温度が高温状態が保持され、その熱が冷却しないうちに、木質化粧板本体表面を型押しロール又は型板等を用いて押圧し圧締するので、表面塗膜の硬度がまだ十分に硬くならないうちに、溝付けのための型押し圧締が可能となり、溝付け加工にとって、よりいっそう好適である。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の溝付き木質化粧板の製造方法において、木質基材表面に補強シートを貼着するシート貼り工程を、化粧貼り工程の前工程として組み入れたことを特徴としている。
【0021】
このような請求項3に記載の溝付き木質化粧板の製造方法では、木質基材表面に補強シートを貼着するシート貼り工程を、化粧貼り工程の前工程として組み入れたので、すなわち、先ず、木質基材に補強シートを貼着し、その後、その表面に木質化粧単板を貼着するので、溝付工程で型押し加工を行っても木質化粧単板にヒビ割れ等が生じにくく、しかも、型押し溝の深さを深くシャープに行うことが可能で、型押し溝の深さとシャープさにとって好適であり、さらに、深くシャープな溝加工が可能となることで、溝の長期保持性と安定性にとって、よりいっそう好適である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、木質基材表面に接着剤を介して木質化粧単板を貼着し木質化粧基材を得る化粧貼り工程と、該木質化粧基材の表面に、塗膜を施し木質化粧板本体を得る塗装工程と、前記木質化粧板本体表面の塗膜を硬化させる塗膜硬化工程と、前記塗膜硬化工程直後の木質化粧板本体の表面温度が高温状態を保持している間に、木質化粧板本体表面を型押しロール又は型板を用いて押圧し、木質化粧板本体表面に化粧溝を付与し、溝付き木質化粧板を得る溝付け工程とからなる製造方法によって作製されるので、木質化粧単板及びその表面に施された塗膜が化粧溝部分において分断されることなく、化粧溝を形成する基材内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されるように構成されているので、化粧溝部分で、下地基材の露出がなく、表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として使用した場合の足裏歩行感が良好で、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質も良好で、しかも、作業性に優れ、安価に製造できる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、塗装工程、塗膜硬化工程、溝付け工程が連続した一連の製造工程として一体的に構成されているので、塗膜硬化後、木質化粧板本体の表面温度が高温状態が保持され、その熱が冷却しないうちに、木質化粧板本体表面を型押しロール又は型板等を用いて押圧し圧締するので、表面塗膜の硬度がまだ十分に硬くならないうちに、溝付けのための型押し圧締が可能となり、溝付け加工にとって、よりいっそう好適である。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、木質基材表面に補強シートを貼着するシート貼り工程を、化粧貼り工程の前工程として組み入れたので、すなわち、先ず、木質基材に補強シートを貼着し、その後、その表面に木質化粧単板を貼着するので、溝付工程で型押し加工を行っても木質化粧単板にヒビ割れ等が生じにくく、しかも、型押し溝の深さを深くシャープに行うことが可能で、型押し溝の深さとシャープさにとって好適であり、さらに、深くシャープな溝加工が可能となることで、溝の長期保持性と安定性にとって、よりいっそう好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態の一例を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の溝付き木質化粧板1の第一実施形態を示す斜視図、図2は図1のA−A線断面図、図3は本発明の溝付き木質化粧板1の要部拡大断面図を示し、(a)は第一実施形態の例を示し、(b)は第二実施形態の例を示す。図4、図5は本発明の溝付き木質化粧板1の製造工程を示し、図4の(A)はシート貼り工程を示し、(B)は化粧貼り工程を示し、図5の(C)は塗装工程を示し、(D)は硬化工程を示し、(E)は溝付け工程を示す。図6は本発明の溝付け加工状態の説明図で、(a)は型押しロールRを用いた例を示し、(b)は型板Kを用いた例を示し、(c)は型押しロールRの場合の、要部拡大断面図を示す。
【0026】
図1〜図3において、本発明の溝付き木質化粧板1の第一実施形態、及び第二実施形態の構成の詳細を説明する。第一実施形態においては、木質基材2の表面に化粧貼り工程において木質化粧単板3が貼着され木質化粧基材4が得られ、該木質化粧基材4の表面に塗装工程にて塗膜5が施され木質化粧板本体6が得られ、続く硬化工程において、前記木質化粧板本体6の表面の塗膜5が硬化され、前記塗膜5の硬化工程直後の木質化粧板本体6の表面の板面温度が高温状態を保持している間に、すなわち、表面塗膜5がまだ完全に硬化しない間に、続く溝付工程にて、木質化粧板本体6表面を型押しロールR又は型板Kを用いて、押圧圧締し、木質化粧板本体6の表面に化粧溝7を付与し、本発明の溝付き木質化粧板1が製造される。
【0027】
本例に示す第一実施形態における溝付き木質化粧板1の化粧溝7は、溝付き木質化粧板1の使用目的及びそのデザインや外観を考慮して決められるもので、化粧溝7の本数も1本の場合、2本以上の複数の場合がある。また、化粧溝7の溝長手方向は、本発明では、木質基材2の表面に貼着されている木質化粧単板3の木質繊維方向と略平行方向に設けられている。溝付き木質化粧板1の長手方向と略平行して木質化粧単板3の木質繊維方向を揃えて貼着されている場合は溝方向は縦溝となり、逆に、溝付き木質化粧板1の短手方向と略平行して木質化粧単板3の木質繊維方向を揃えて貼着されている場合は溝方向は横溝となる。
【0028】
本発明の溝付き木質化粧板1では、その表面に貼着されている前記木質化粧単板3及びその表面に設けられている塗膜5は、前記化粧溝7の部分で分断されることなく、化粧溝7を形成する基材内壁面Wに沿って且つ木質化粧単板3と基材内壁面Wとが密接し、しかも滑らかな連続体として形成されている。
【0029】
本例に示す溝付き木質化粧板1の溝長手方向と直交する方向の断面における溝形状は略U字型形状の溝で示している。溝形状としては、本例に示す略U字型溝の他、略V字型溝、略半円形型溝、略角型溝、略台形型溝、その他の形状の溝が例示でき、溝付き木質化粧板1の使用目的及びそのデザインや外観を考慮して決められる。
【0030】
本発明の溝付き木質化粧板1に用いられる木質基材2として、合板、中比重繊維板、集成材、木削片板、または、これらの複合材料が好適なものとして例示できる。また、本発明の木質化粧単板3は厚みが約0.2mm〜1.2mm程度の銘木のスライス突板、ロータリー単板、ハーフロータリー単板等で、樹種として、楢、楡、欅、オーク、チーク、その他の銘木が好適なものとして例示できる。
【0031】
本発明の溝付き木質化粧板1の表面の木質化粧単板3の表面には、表面塗膜5が施されている。これに用いる塗料としては、木質化粧単板3の銘木の木目の外観意匠性を際だたせるために、無色透明又は着色透明の合成樹脂塗料が好適なものとして用いられる。塗料成分は、木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を例示できる。
【0032】
これらの木質材料用塗料の中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とする紫外線硬化型塗料が好適なものとして例示できる。紫外線(UV)ランプから照射される紫外線エネルギーによって塗料が極めて短時間(通常約1分以下)に硬化させることが可能で、しかも硬化工程のラインが短くてよい(通常約10m以下)。従って、製造場所等のスペースを考慮しても、塗装工程、硬化工程、溝付工程の三工程を連続した一連の製造工程として一体的にライン構成することが極めて容易となり、このように、塗装工程、硬化工程、溝付工程の三工程が連続した一連の製造工程として一体的にライン構成されていると、塗膜5が硬化後、木質化粧板本体6の表面温度が高温状態で保持され、その熱が冷却しないうちに、すなわち、表面の塗膜5がまだ十分に硬化せず、塗膜5の硬度がまだ十分に硬くならないうちに、木質化粧板本体6の表面を型押しロールR、又は型板Kを用いて押圧し圧締できるので、溝付けのための型押し圧締が容易に精度よく可能となり、溝付け加工にとって好適である。
【0033】
また、本発明の第二実施形態の場合も同様である。但し、第二実施形態の場合は、木質基材2と木質化粧単板3との間に補強シートSが設けられている。
【0034】
図3に本発明の溝付き木質化粧板1の要部拡大断面図を示す。(a)に示すように、本発明の第一実施形態における木質化粧板1において、その表面に貼着されている木質化粧単板3は、その表面に塗膜5が設けられ、化粧溝7を形成するための、木質基材2の凹部の基材内壁面Wに沿って且つ前記基材内壁面Wと密接するようにして、切れ目なく滑らかな連続体として設けられている。このように、木質化粧単板3が、滑らかな連続体として設けられているので、化粧溝7の内部、底部、溝上端縁角部Dにおいて、下地となる木質基材2が露出することがなく、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずる恐れがない。
【0035】
従って、必要に応じて仕上げ塗装を行う際、化粧溝7及び化粧溝7以外の部分に、油性又は水性の着色ステイン等を用いて下地着色を施し、さらに無色透明又は着色透明の下地塗装、仕上げ塗装を行った場合、前記木繊維の毛羽立ち、ササクレ、バリ等が原因の着色ムラが発生することがなく、表面化粧溝7及び化粧溝7以外の部分も含めて、色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れたものとなる。また、化粧溝7の内部及び化粧溝7以外の部分においても、木質基材2が露出しないので、表面着色工程、塗装工程が複雑な塗装工程を必要とせず簡略化でき、製造時の品質も安定することにより、製造時の作業性に優れ、コスト的にも安価なものとなる。
【0036】
特に、溝上端縁角部Dにおいて、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずることがないので、本発明の木質化粧板1を床材として用いた場合、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が原因で生じる、靴下やストッキングの破損が防止でき、また、歩行時に足裏に木繊維のササクレ等が刺さる恐れもなく、足裏歩行感に優れたものとなる。また、床材以外の化粧板として用いられた時においても、仕上がりの品質の良好なものとなる。
【0037】
また、(b)に示すように、本発明の第二実施形態における溝付き木質化粧板1は、木質基材2の表面にシート貼り工程にて補強シートSが貼着されており、該補強シートSの表面に、化粧貼り工程にて木質化粧単板3が貼着され、木質化粧板本体6が構成されている。また、前記木質化粧単板3はその表面に塗膜5が設けられ、前記化粧溝7の部分で分断されることなく、化粧溝7を形成する補強シートSの内壁面SWに沿って且つ木質化粧単板3と補強シート内壁面SWとが密接し、しかも滑らかな連続体として形成されている。
【0038】
また、本発明に用いる前記補強シートSは、例えば、和紙、薄葉紙、クラフト紙等の紙類、不織布、布帛、寒冷紗等の単板補強材料等を単体で用いる例の他、これらを複合させて用いる場合もある。
【0039】
また、木質化粧単板3の表面に透明で且つ軟質の樹脂シートをラミネートした複合材料を用いると、塗装工程が必要でない場合があり、塗装工程省略によって大きくコストダウンできる可能性がある。例えば、塩ビ樹脂シート、アクリル樹脂シート、オレフィン樹脂シート等の熱可塑性樹脂シートが好適な材料として例示できる。この場合は、硬化工程は、単に、木質化粧板本体6を加熱し、表面樹脂シートを柔らかくする工程として利用すればよい。
【0040】
また、木質化粧単板3の裏面にあらかじめ補強シートSとして、和紙、薄葉紙、クラフト紙等の紙類、不織布、布帛、寒冷紗等の単板補強材料を裏打ちしたものを用いてもよい。これらの単板補強材料で裏打ちされた木質化粧単板3は製造時のハンドリング等によって割れ等が発生する恐れが極めて低くなるので、製造工程にとって極めて安定したものとなり、コスト的にも有利なものとなる。さらに、溝付け加工時において、割れにくいので、極めてシャープで且つ深さの深い溝付け加工が可能となり、外観意匠性にとって優れたものとなる。
【0041】
このようにして、前記補強シートSを木質化粧単板3の下貼りとして用い、塗装工程、硬化工程を経て木質化粧板本体6がまだ高温状態のうちに、すなわち、塗膜5がまだ十分に硬くならないうちに、硬化工程直後に一体的に直結している溝付工程にて、型押しロールR又は型板Kを用いて型押しすることで、木質化粧板本体6の所定位置に、所定形状の溝が形成される。補強シートSを木質化粧単板3の下貼りとして用いると、溝付工程において型押しロールRや型板Kの押圧や圧締によって、木質化粧単板3がヒビ割れたりすることがなく、また、溝付き木質化粧板1を長期間使用中に、溝形状が湿気等により変形したり溝が浅くなったり、極端な場合溝が消失するといったことが有効に防止できる。
【0042】
また、補強シートSが熱硬化性樹脂含浸紙からなる場合、前記押圧された溝形状に沿って補強シートSが熱圧により固化するので、溝形状が湿気等により変形したり溝が浅くなったり、極端な場合溝が消失するといったことを防止するのに、よりいっそう好適である。
【0043】
また、本発明の溝付き木質化粧板1の第二実施形態においても、前記第一実施形態での効果を奏する。すなわち、前記溝付け加工後、必要に応じて、表面仕上げ塗装が施されるのであるが、木質基材2や補強シートSが露出しないので、仕上げ塗装において、表面着色工程、塗装工程が複雑な塗装工程を必要とせず簡略化でき、製造時の品質も安定することにより、製造時の作業性に優れ、コスト的にも安価なものとなる。
【0044】
また、溝上端縁角部Dの木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点防止と、特に床材として用いた場合の足裏歩行感の向上、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質向上効果も奏する。
【0045】
図4、図5において、本発明の溝付き木質化粧板1の製造工程を詳述する。先ず、図4において、シート貼り工程(A)と化粧貼り工程(B)を示す。本発明の第一実施形態においては、シート貼り工程(A)を行わず、最初に化粧貼り工程(B)を行う。但し、図4に示す化粧貼り工程(B)は第二実施形態の場合である。第一実施形態においては、補強シートSは省略する。化粧貼り工程(B)は、素地研磨工程(図示せず)、接着剤塗布工程(図示せず)、木質化粧単板3を貼着する熱圧工程とからなる。化粧貼り工程(B)は、木質基材2の表面を約180番手〜240番手程度の研磨紙にて素地研磨した後、ロールスプレッダー(図示せず)にて木工用接着剤、例えば、ユリア樹脂接着剤、ユリアメラミン共縮合樹脂接着剤、ウレタン樹脂瀬着剤、酢酸ビニル樹脂接着剤等を単体で又は組み合わせ配合し、約100g/m〜220g/m塗布し、木質化粧単板3を載置し、ホットプレスHにて熱圧締する。熱圧条件は、使用する接着剤、木質化粧単板3の種類によっても異なるが、熱圧温度約100℃〜160℃程度、熱圧時間約60秒〜180秒程度、圧力約7〜12kg/cm程度が好適である。前記木質化粧単板3の厚みが厚いほど、熱圧温度、熱圧時間を長くする必要がある。
【0046】
また、前記ホットプレスHを用いて熱圧締する代わりに熱ロールにて熱圧締してもよい。前記した熱圧締以外にコールドプレスにて冷圧締してもよい。しかしこの場合、圧締時間がかなりかかり、使用する接着剤によっても異なるが、例えば、少なくとも2時間〜長い場合は約24時間かかることもあり、長時間を要することになる。
また、上記の、化粧貼り工程(B)の製造条件は一例であって、この条件に限定されるものではない。
【0047】
また、本発明の第二実施形態においては、前記化粧貼り工程(B)に先立ち、シート貼り工程(A)を実施する。その次に図4に示す化粧貼り工程(B)を行う。前記シート貼り工程(A)においても、前記化粧貼り工程(B)と同様にホットプレスH又はロールプレス(図示せず)にて熱圧締するのがよい。ホットプレスHでの熱圧条件は、使用する接着剤と補強シートSの種類によっても変わるので、それに適した接着条件を選定する必要がある。化粧貼り工程(B)においては、前工程で補強シートSを貼着して作製された補強シート貼り木質基材2Sの表面に接着剤(図示せず)を塗布し、その上に木質化粧単板3を載置し、ホットプレスH又はロールプレス(図示せず)にて熱圧締する。また、木質基材2に前記したような接着剤を塗布し、その上に補強シートS及び木質化粧単板3をこの順に載置し、一度にホットプレスH又はロールプレス(図示せず)にて熱圧締してもよい。この場合、接着剤塗布量を、約30〜50%程度増やす必要があり、熱圧時間を多少長目にすることも必要となる。また、冷圧締で一度に圧締してもよい。
【0048】
次に図5において、本発明の第一実施形態及び第二実施形態における、塗装工程(C)、硬化工程(D)、溝付工程(E)について示す。前記化粧貼り工程(B)にて木質化粧単板3を貼着して得られた木質化粧基材4の表面温度が常温に達するまで木質化粧基材4を養生する。その後、塗装工程(C)に投入する。塗装工程(C)は、着色工程、着色剤の乾燥工程、塗装工程からなる。前記着色工程は、仕上がり意匠性を考慮して決められるもので、場合によっては省略してもよい。
【0049】
先ず、はじめに、十分養生された木質化粧基材4を研磨紙にて素地研磨する。このときの研磨紙の番手は約180番手〜240番手程度が好適である。
【0050】
前記着色工程は合成樹脂発泡体又は比較的ゴム硬度の低いウレタンゴムロール、ブチルゴムロール等の塗布ロールを有するロールコーターFを用いて水性又は油性のステインからなる所定色調を有する着色剤を塗布する。塗布条件は通常の着色塗布条件でよい。続いてジェットドライヤーJを通過させ、塗布した着色剤を熱風乾燥させ、続いて塗装工程に入る。着色剤の塗布量は約20g/m〜50g/m程度が好適である。前記ジェットドライヤーJの乾燥温度は約60〜80℃程度が好適である。
【0051】
塗装工程においては、塗料を塗布する装置として、本例では、二連のロールコーターとして、ナチュラル−リバースコーターを好適なものとして例示する。材の送り方向と正方向に回転するナチュラルロールNAに続いて逆方向に回転するリバースロールREにて塗装する。ナチュラルロールNAで塗料を塗布し、リバースロールREにて塗料を木質化粧単板3の導管内にすり込むようにして塗装する。使用する塗料は、木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を好適なものとして例示できる。これら、木質材料用塗料の中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とする紫外線硬化型塗料が好適なものとして例示できる。
【0052】
紫外線(UV)ランプから照射される紫外線エネルギーによって塗料が極めて短時間(通常約1分以下)で硬化させることが可能で、しかも、硬化工程のラインが短くてよい(通常約10m以下)。従って、製造場所等のスペースを考慮しても、塗装工程(C)、硬化工程(D)、溝付工程(E)の三工程を連続した一連の製造工程として一体的にライン構成できる。塗料の塗布量は約30g/m〜100g/m程度が好適である。上記各工程での製造条件の詳細は、好適な一例であって、これに限定されるものではない。
【0053】
次に、硬化工程(D)及びそれに続く溝付工程(E)について詳述する。前工程である塗装工程(C)にて、塗料を塗布された後、続いて硬化工程(D)に投入され、硬化装置Tにて塗料が硬化され、木質化粧板本体6が作製される。本例では最も好適な例として、紫外線硬化型塗料を用いて、紫外線ランプを備えた硬化装置Tを通過せ、塗料を硬化させる場合を例示する。
【0054】
硬化工程の製造条件は一例として以下のとおりであった。紫外線照射装置の紫外線(UV)照射エネルギーは、約60〜200ミリジュール/cm、紫外線照射装置の長さは、約3〜10m、紫外線(UV)照射時間は約5〜40秒、であった。硬化装置Tを通過直後の木質化粧板本体6の板面温度は約50〜70℃であった。
【0055】
前記硬化工程(D)にて下塗り塗料が硬化し、塗膜5が形成され、木質化粧板本体6が作製された後、材表面の温度が高温状態であるうちに、すなわち、塗膜5が完全に硬化しないうちに、次の溝付工程(E)に投入され、溝付装置Gにて所定形状の化粧溝7が設けられる。溝付工程(E)の製造条件は一例として以下のとおりであった。本例に示す化粧溝7の溝長手方向と直交する方向の断面における溝形状は略U字型形状の溝であった。木質化粧板本体6の板面温度が高温状態のうちに、前記溝形状に合致する形状を有する型押しロールRと下部の送りロールとの間の隙間に、前記木質化粧板本体6を通過させ、型押しロールRで押圧し化粧溝7を形成する。その後、必要に応じて、板面温度が常温に達するまで十分に養生する。
【0056】
また、前記溝付工程(E)及びその後の養生のあと、必要に応じて、表面仕上げ塗装(図示せず)を行う。このようにして、溝付き木質化粧板1が作製される。表面仕上げ塗装を行う必要がある場合は、仕上げ塗装の直前に研磨紙にて中間研磨を行う。この時の研磨紙の番手は約240番手〜400番手程度の比較的研磨紙の砥粒の細かいものが好適である。表面仕上げ塗装は、ロールコーター又はフローコーター又はスプレー塗装等(図示せず)でおこなうとよい。使用する塗料は、下塗り塗料とできれば同種の塗料を使用する方が溝付け加工前の塗膜5と表面仕上げ塗料との密着性にとって良好となり、溝付き木質化粧板1を施工後、長期間使用しても塗膜の白化現象、剥離現象、表面割れ等の発生が防止でき、長期耐久性能にとって好適である。木質材料用塗料の中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等を主成分とする紫外線硬化型塗料が好適なものとして例示できる。
【0057】
図6において、本発明の溝付け加工状態の詳細を説明する。溝付装置Gとして、図6の(a)は型押しロールRを用いた例を示し、(b)は型板Kを用いた例を示し、(c)は型押しロールRの場合の、要部拡大断面図を示す。型押しロールRは、その先端部に押圧部Pが設けられている。該押圧部Pの形状は化粧溝7の形状と略合致するように設けられている。すなわち、前記押圧部Pはその最先端部に溝形状と合致する溝内壁押圧部P1が形成されており、本例の場合、略U字型形状となっている。また、前記溝内壁押圧部P1の略U字型形状の左右両端部は型押しロールRの内方へ膨出する向きの曲面P2が、左右それぞれに設けられており、前記曲面P2の端部に平坦面P3が左右それぞれに設けられている。
【0058】
本発明の木質化粧板本体6が型押しロールRによって押圧されると、先ず、型押しロールRの先端にある押圧部Pの最先端部、すなわち溝内壁押圧部P1に木質化粧単板3の表面が接触し、下部の送りロールの搬送力で木質化粧板本体6が前方へ移送されるにつれて、前記溝内壁押圧部P1が木質化粧単板3の深奥へ食い込み押圧し、略U字型形状の化粧溝7が形成され、続いて、型押しロールRの前記曲面P2と木質化粧単板3の表面が接触して押圧され、曲面P2によって木質化粧単板3とその下部の木質基材2の表層部が押圧され、曲面P2の形状に合致した形状の、溝上端縁角部Dが形成される。このようにして形成された溝上端縁角部Dの形状は、本例では、木質基材2から見て外方へ膨出した曲面(型押しロールRから見て、型押しロールRの内方へ膨出する向きの曲面)として形成される。それゆえ、溝上端縁角部Dの木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が防止でき、特に床材として用いた場合の足裏歩行感が向上し、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質が向上する。このような溝形成プロセスに従って、所定形状の化粧溝7が形成される。この溝形成プロセスは図6の(b)に示す型板Kを用いた場合も大筋で同様である。しかし、型板Kは作製するのにかなりのコストがかかるので、型押しロール方式の方がコスト的に有利である。
【0059】
また、本発明の第一実施形態の場合も、また、本発明の第二実施形態の場合も前記した、塗装工程(C)、硬化工程(D)、溝付工程(E)は同様である。ただし、はじめの工程で第二実施形態の場合は、化粧貼り工程(B)の前工程として、シート貼り工程(A)を設ける必要がある。
【0060】
ここで、本発明の溝付き木質化粧板1の製造方法について、その工程順に述べると以下のようになる。
(製造工程)
(1)シート貼り工程(A)(この工程は必要に応じて実施。第二実施形態の場合のみ実施)。
1.所定の幅、長さ、厚みを有する木質基材2を用意する。
2.研磨紙にて木質基材2表面を素地研磨する。
3.木質基材2表面に木工用接着剤を塗布する。
4.接着剤を塗布した木質基材表面に補強シートSを載置する。
5.ホットプレスHを用いて熱圧し、補強シート貼り木質基材2Sを作製する。
(2)化粧貼り工程(B)
1.所定の幅、長さ、厚みを有する木質基材2又は補強シート貼り木質基材2Sを用意する。
2.木質基材2の場合は研磨紙にて木質基材2の表面を素地研磨する。
3.木質基材2又は補強シート貼り木質基材2Sの表面に木工用接着剤を塗布する。
4.接着剤を塗布した木質基材2又は補強シート貼り木質基材2S表面に木質化粧単板3を載置する。
5.ホットプレスHを用いて熱圧し、木質化粧基材4を作製する。
上記シート貼り工程(A)と化粧貼り工程(B)とは、必ずしも2工程で行う必要はなく、製造工程の簡略化を考慮すれば1工程で行うのが好ましい。この場合は以下のようになる。
(シート貼りと化粧貼りの同時貼り工程)
1.所定の幅、長さ、厚みを有する木質基材2を用意する。
2.研磨紙にて木質基材2表面を素地研磨する。
3.木質基材2表面に木工用接着剤を多少多め(通常の約30%〜50%程度多め)に塗布する。
4.接着剤を塗布した木質基材2の表面に補強シートS、木質化粧単板3をこの順で載置する。
5.ホットプレスHを用いて熱圧し、補強シートS及び木質化粧単板3を同時貼りし、補強シートSを用いた木質化粧基材4を作製する。
(3)塗装工程(C)
1.木質化粧基材4の表面を研磨紙にて素地研磨する。
2.ロールコーターにて着色剤を塗布し木質化粧単板3の表面を着色する。
3.ジェットドライヤー等の熱風式乾燥炉に投入し着色剤を乾燥させる。
4.ロールコーターにて塗装を行う。(紫外線硬化型塗料が好適である)。
(4)硬化工程(D)
1.塗装直後、硬化装置Tに投入する。硬化装置Tとしては、塗料が紫外線硬化型塗料の場合、紫外線照射機を備えた硬化装置Tに投入し、塗料を硬化させる。
2.このようにして、塗料を硬化させ、木質化粧板本体6が作製される。
(5)溝付工程(E)
1.前記紫外線照射機を備えた硬化装置Tから搬出されてきた木質化粧板本体6の板面の表面温度が高温であるうちに、すなわち、表面塗膜5がまだ十分に硬化しない間に、溝付装置Gに投入する。(溝付装置Gは型押しロールR方式と型板K方式があるが、製造ラインの一貫した連続ラインが好ましいので、前記型押しロールR方式の方が好適である。)
(6)仕上げ工程(図示せず)。
1.必要に応じて、仕上げ塗装工程に投入し、仕上げ塗装を行い、本発明の溝付き木質化粧板1の製造が完了する。
【0061】
上記した工程で溝付き木質化粧板1が製造される。上記工程のうち、塗装工程(C)、硬化工程(D)、溝付工程(E)が連続した一連の製造工程として一体的に構成されているので、塗膜5の硬化後、木質化粧板本体6の表面温度が高温状態が保持され、その熱が冷却しないうちに、木質化粧板本体6の表面を型押しロールR又は型板K等を用いて押圧し圧締するので、表面塗膜5の硬度がまだ十分に硬くならないうちに、溝付けのための型押し圧締が可能となり、溝付け加工にとって、よりいっそう好適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の溝付き木質化粧板の第一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】本発明の溝付き木質化粧板の要部拡大断面図。(a)第一実施形態の例を示す。(b)第二実施形態の例を示す。
【図4】本発明の溝付き木質化粧板の製造工程を示す。(A)シート貼り工程。(B)化粧貼り工程。
【図5】本発明の溝付き木質化粧板の製造工程を示す。(C)塗装工程。(D)硬化工程。(E)溝付工程。
【図6】本発明の溝付け加工状態の説明図。(a)型押しロールRを用いた例を示す。(b)型板Kを用いた例を示す。(c)型押しロールRの場合の要部拡大断面図を示す。
【図7】従来の木質化粧板を示す断面図。
【符号の説明】
【0063】
1 溝付き木質化粧板
2 木質基材
2S 補強シート貼り木質基材
3 木質化粧単板
4 木質化粧基材
5 塗膜
6 木質化粧板本体
7 化粧溝
S 補強シート
W 基材内壁面
SW 補強シート内壁面
D 溝上端縁角部
(A) シート貼り工程
(B) 化粧貼り工程
(C) 塗装工程
(D) 硬化工程
(E) 溝付工程
H ホットプレス
F ロールコーター
NA ナチュラルロール
RE リバースロール
J ジェットドライヤー
T 硬化装置
G 溝付装置
R 型押しロール
K 型板
P 押圧部
P1 溝内壁押圧部
P2 曲面
P3 平坦面
11 従来の木質化粧板
12 木質基材
13 木質化粧単板
14 化粧貼り基材
15 木質化粧板本体
16 塗膜
17 化粧溝
M 切削溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材表面に接着剤を介して木質化粧単板を貼着し木質化粧基材を得る化粧貼り工程と、該木質化粧基材の表面に、塗膜を施し木質化粧板本体を得る塗装工程と、前記木質化粧板本体表面の塗膜を硬化させる塗膜硬化工程と、前記塗膜硬化工程直後の木質化粧板本体の表面温度が高温状態を保持している間に、木質化粧板本体表面を型押しロール又は型板を用いて押圧し、木質化粧板本体表面に化粧溝を付与し、溝付き木質化粧板を得る溝付け工程とからなることを特徴とする溝付き木質化粧板の製造方法。
【請求項2】
前記塗装工程、塗膜硬化工程、溝付け工程が連続した一連の製造工程として一体的に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の溝付き木質化粧板の製造方法。
【請求項3】
前記木質基材表面に補強シートを貼着するシート貼り工程を、前記化粧貼り工程の前工程として組み入れたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の溝付き木質化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−196398(P2007−196398A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14384(P2006−14384)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(398051497)株式会社パル (65)
【Fターム(参考)】