説明

溶接設備の冷却システム

【課題】溶接時に発生する熱を小規模の冷却構成規模(冷媒循環流路)で排熱(冷却)させる溶接設備。
【解決手段】溶接設備1と、溶接設備1の近傍に設置される水槽2と、溶接設備1と水槽2間に形成される冷媒循環流路3とを備えている。冷媒循環流路3は、溶接設備1の近傍に配設される還冷却水ヘッダ31および往冷却水ヘッダ32と、水槽2内に配設される冷却管33と、還冷却水ヘッダ31と冷却管33の一端側間を連通可能に接続する冷却還水管34と、往冷却水ヘッダ32と冷却管33の他端側間を連通可能に接続する冷却往水管35とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接設備の冷却システムに係わり、特に、冷却構成規模(冷媒循環流路)を小さくすることができる溶接設備の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶接ガンの溶接時に発生する熱を排熱(冷却)するシステムとして、図3に示すような溶接設備の冷却システムが知られている(例えば特許文献1、2、3参照)。
【0003】
同図において、従来の溶接設備の冷却システムは、溶接設備100と、屋外に設置された水槽200と、溶接設備100と水槽200間に形成された冷媒循環流路300とを備えている。
【0004】
ここで、冷媒循環流路300は、溶接設備100の近傍に配設された還冷却水ヘッダ310a、往冷却水ヘッダ310b、屋内に配設される立下配管320a、320b、枝管330a、330b、主管340a、340b、屋内に配設される屋外主管350a、350b、冷却塔360および水槽200と屋外主管350b間の流路に配設されるポンプPを備えている。なお、これらの各種管等はホース、連結管およびバルブ等を介して相互に連結されている。
【0005】
このような構成の溶接設備の冷却システムにおいては、冷媒循環流路300を流れる冷媒(冷却水)は、溶接設備100を構成する溶接ガンの溶接時に発生する排熱により加温(還水)され、ホース370aを介して還冷却水ヘッダ310aに集約される。そして、加温された還水は、還冷却水ヘッダ310aから立下配管320a、枝管330a、主管340aおよび屋外主管350aを介して冷却塔360へ送出され、当該冷却塔360において冷却(往水)される。そして、冷却された往水は、ポンプPから屋外主管350b、主管340b、枝管330b、立下配管320b、往冷却水ヘッド310bおよびホース370bを介して溶接設備100へ送出される。
【0006】
なお、図中、符号500は、エア供給源600とエアヘッダ700間に接続されたエア配管を示している。
【0007】
このような構成の溶接設備の冷却システムによれば、溶接時に発生する熱は冷媒循環流路300を循環する冷媒(冷却水)によって排熱(冷却)することができるものの、次のような難点があった。
【0008】
第1に、溶接設備100を構成する溶接ガンからの排熱量は少量であるにもかかわらず、冷却水量が多いという難点がある。具体的には、還冷却水ヘッダ310aおよび往冷却水ヘッダ310bと枝管330a、330b間における冷却往水管および冷却還水管の温度が共に15℃程度であり、また、冷却塔360付近の往還水温差が2℃程度と小さいことから、すなわち、溶接時の排熱量が小さく、冷却水の往還温度差が非常に小さい割には冷媒の量(冷却水量)が多いという難点があった。
【0009】
第2に、冷却塔360や水槽200が屋外に設置されているため、冷却構成規模(冷媒循環流路300)が大きくなるという難点があった。
【0010】
一方、冷却構成規模(冷媒循環流路300)を小さくするためには、溶接設備1を構成する溶接ガンを新機構(改造・交換)とする必要があるところ、このような溶接ガンの新機構による冷却システムでは、数百の対象に改造(仕様変更)を行う必要があるため、仕様変更の負担が大きくなるという難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3902095号公報
【特許文献2】特開2010−69493号公報
【特許文献3】特開平6−142946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、溶接時に発生する熱を小規模の冷却構成規模(冷媒循環流路)で排熱(冷却)することができる溶接設備の冷却システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様である溶接設備の冷却システムは、溶接設備と、溶接設備の近傍に設置される水槽と、溶接設備と水槽間に形成される冷媒循環流路とを備え、冷媒循環流路は、溶接設備の近傍に配設される還冷却水ヘッダおよび往冷却水ヘッダと、水槽内に配設される冷却管と、還冷却水ヘッダと冷却管の一端側間を連通可能に接続する冷却還水管と、往冷却水ヘッダと冷却管の他端側間を連通可能に接続する冷却往水管とを備えるものである。
【0014】
第1の態様である溶接設備の冷却システムによれば、溶接設備の近傍に、すなわち還冷却水ヘッダおよび往冷却水ヘッダの近傍に水槽が設置されていることから、従来から使用していた立下配管、枝管、主管、屋外主管および冷却塔を省略することができ、ひいては、小規模の冷却構成規模(冷媒循環流路)で排熱(冷却)することができる。また、改造(交換)対象が従来システムの1/10程度となることから、すなわち改造(交換)対象が数十のヘッダ部ですむことから仕様変更の負担を小さくすることができる。
【0015】
本発明の第2の態様は、第1の態様である溶接設備の冷却システムにおいて、エア供給源に接続されたエア配管は、水槽内を通って溶接設備の近傍に設置されるエアヘッドに接続されているものである。
【0016】
第2の態様である溶接設備の冷却システムによれば、第1の態様である溶接設備の冷却システムの作用・効果に加え、水槽内の冷却水の温度を下げることができ、また、エア配管内のエアに熱が付与されることでエア配管内のエア容積(圧力)を増加させることができる。
【0017】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様である溶接設備の冷却システムにおいて、水槽は、金属製の放熱板を介して床面に設置されているものである。
【0018】
第3の態様である溶接設備の冷却システムによれば、第1の態様または第2の態様である溶接設備の冷却システムの作用・効果に加え、水槽の底板および放熱板を介して床面に伝熱させることで水槽内の冷却水の温度を低下させることができ、また、床面への排熱を室内の補助暖房に利用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の態様乃至第3の態様の溶接設備の冷却システムによれば、次のような効果がある。
【0020】
第1に、溶接設備の近傍に、すなわち還冷却水ヘッダおよび往冷却水ヘッダの近傍に水槽が設置されていることから、従来から使用していた立下配管、枝管、主管、屋外主管および冷却塔を省略することができ、ひいては、小規模の冷却構成規模(冷媒循環流路)で排熱(冷却)することができる。また、改造(交換)対象が従来システムの1/10程度となることから、すなわち改造(交換)対象が数十のヘッダ部ですむことから仕様変更の負担を小さくすることができる。
【0021】
第2に、エア供給源に接続されたエア配管の一部を水槽内の冷却水中を通過させた場合は、水槽内の冷却水の温度を低下させることができ、また、エア配管内のエアに熱が付与されることでエア配管内のエア容積(圧力)を増加させることができる。
【0022】
第3に、水槽を金属製の放熱板を介して床面に設置した場合は、水槽の底板および放熱板を介して床面に伝熱させることで冷却水の温度を低下させることができ、また、床面への排熱を室内の補助暖房に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の溶接設備の冷却システムの一例を示す模式図。
【図2】図1に示す溶接設備の冷却システムの要部を拡大して示す説明図。
【図3】従来の溶接設備の冷却システムの一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の溶接設備の冷却システムを適用した最良の実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明の溶接設備の冷却システムの一例を模式的に示す説明図、図2は、図1に示す水槽および冷媒循環流路の一部を拡大して示す説明図である。
【0026】
図1において、本発明における溶接設備の冷却システムは、溶接ガン、変圧器および配線等を有する溶接設備1と、溶接設備1の近傍に設置される水槽2と、溶接設備1と水槽2間に形成される冷媒循環流路3とを備えている。
【0027】
冷媒循環流路3は、溶接設備1の近傍に配設される還冷却水ヘッダ31および往冷却水ヘッダ32と、水槽2内に配設される冷却管33と、還冷却水ヘッダ31と冷却管33の一端側間を連通可能に接続する冷却還水管34と、往冷却水ヘッダ32と冷却管33の他端側間を連通可能に接続する冷却往水管35とを備えている。
【0028】
なお、図中符号5は、エア供給源6に接続されるエア配管を示しており、当該エア配管5は水槽2内の冷却水22を通って溶接設備1の近傍に設置されるエアヘッド7に接続されている。また、Pは冷却往水管35と冷却管33間の流路に設けられたポンプを示している。
【0029】
水槽2は、図2に示すように、金属製で上面が開放された直方体状の金属性の容器21を備えており、当該容器21内には所定量の冷却水22が充填されている。
【0030】
このような構成の水槽2は、所定の厚さを有する金属性の放熱板4を介して床面8に設置されている。なお、放熱板4の大きさ(面積)は水槽2の底板21bの大きさ(面積)よりも大きくされている。
【0031】
冷却管33は、冷却還水管34または冷却往水管35としての1条の管を例えばU字状に折り曲げることで形成することができる。このような構成の冷却管33は水槽2内の冷却水22中に水没するように配設されている。
【0032】
なお、エア配管5の所定箇所には、冷却管33と同様に、例えばU字状の折曲部51を設け、当該折曲部51を水槽2内の冷却水22中に水没するように配設することで、水槽2内の冷却水22を通過させることができる。
【0033】
次に、このように構成された溶接設備の冷却システムの動作について説明する。
【0034】
先ず、ポンプPから冷媒循環流路3内に送出された冷媒(冷却水)は、溶接時に発生する溶接設備1の熱によって加温され冷却還水となる。かかる冷却還水は、ホース36を介して還冷却水ヘッダ31に集約され、還冷却水ヘッダ31から冷却還水管34を介して冷却管33へ送出される。そうすると、当該冷却管33は水槽2内に充填された冷却水22中に水没するように配設されていることから、当該冷却管33に送出された冷却還水は、水槽2内の冷却水22によって熱交換(放熱)され、冷却管33および当該冷却管33内の冷却還水が冷却されて冷却往水となる。
【0035】
このようにして冷却された冷却往水は、ポンプPから冷却往水管35を介して往冷却水ヘッダ32へ送出され、往冷却水ヘッダ32からホース37を介して溶接設備1へ送出される。
【0036】
次に、水槽2内の冷却水22の放熱作用について説明する。
【0037】
先ず、水槽2内の冷却水22は、水面からの放熱や冷却水22の蒸発によってその温度が下げられている。また、エア供給源6に接続されたエア配管5の一部を水槽2内の冷却水22中に配設した場合は、エア配管5内のエアの温度(13℃程度)が冷却還水管34内の冷却還水の温度(15℃程度)よりも低いことから、エア配管5内のエアが水槽2内の冷却水22中を通過することで冷却水22の温度を下げることができる。さらに、水槽2を金属製の容器21で形成し、当該容器21を金属製の放熱板4を介して床面8に設置した場合には、水槽2の底板21bおよび放熱板4を介して床面8に伝熱させることで冷却水22の温度を低下させることができる。
【0038】
このように構成された本発明の溶接設備の冷却システムによれば、次のような効果がある。
【0039】
第1に、溶接設備1の近傍に、すなわち還冷却水ヘッダ31および往冷却水ヘッダ32の近傍に水槽2が設置されていることから、従来から使用していた立下配管、枝管、主管、屋外主管および冷却塔を省略することができ、ひいては、小規模の冷却構成規模(冷媒循環流路3)で排熱(冷却)することができる。また、改造(交換)対象が従来システムの1/10程度となることから、すなわち改造(交換)対象が数十のヘッダ部ですむことから仕様変更の負担を小さくすることができる。
【0040】
第2に、エア供給源6に接続されたエア配管5の一部を水槽2内の冷却水22中を通過させた場合は、水槽2内の冷却水22の温度を下げることができ、また、エア配管5内のエアに熱が付与されることでエア配管5内のエア容積(圧力)を増加させることができる。
【0041】
第3に、水槽2を金属製の放熱板4を介して床面8に設置した場合は、水槽2の底板および放熱板4を介して床面8に伝熱させることで冷却水22の温度を低下させることができ、また、床面8への排熱を室内の補助暖房に利用することができる。
【0042】
なお、これまで、図面に示した特定の実施の形態をもって本発明を説明しているが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られているいかなる構成であっても採用することができる。
【0043】
例えば、前述の実施例では、1個のU字状部で形成された冷却管33を使用しているが、冷却管33を蛇行させることでU字状部を複数個形成してもよい。
【0044】
また、前述の実施例では、水槽2を直方体状に形成しているが、水槽の形状はこれに限定されない。
【0045】
さらに、前述の実施例では、上面が開放された水槽2を用いているが、水槽2の開口部21aには蓋を設けてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・溶接設備
2・・・水槽
3・・・冷媒循環流路
31・・・還冷却水ヘッダ
32・・・往冷却水ヘッダ
33・・・冷却管
34・・・冷却還水管
35・・・冷却往水管
4・・・放熱板
5・・・エア配管
6・・・エア供給源
7・・・エアヘッド
8・・・床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接設備と、前記溶接設備の近傍に設置される水槽と、前記溶接設備と前記水槽間に形成される冷媒循環流路とを備え、
前記冷媒循環流路は、前記溶接設備の近傍に配設される還冷却水ヘッダおよび往冷却水ヘッダと、前記水槽内に配設される冷却管と、前記還冷却水ヘッダと前記冷却管の一端側間を連通可能に接続する冷却還水管と、前記往冷却水ヘッダと前記冷却管の他端側間を連通可能に接続する冷却往水管とを備えることを特徴とする溶接設備の冷却システム。
【請求項2】
エア供給源に接続されたエア配管は、前記水槽内を通って前記溶接設備の近傍に設置されるエアヘッドに接続されていることを特徴とする請求項1記載の溶接設備の冷却システム。
【請求項3】
前記水槽は、金属製の放熱板を介して床面に設置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の溶接設備の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−143773(P2012−143773A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2928(P2011−2928)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】