溶接部の異常監視装置
【課題】車両に搭載されたアクスルにおいて、アクスルの溶接部における異常の発生をリアルタイムかつ高い精度で検出することが可能な溶接部における異常監視装置を提供する。
【解決手段】異常監視装置10は、シャフト本体2の外周面に配置され、溶接部5で発生したAE波を検出するAEセンサ12と、AEセンサ12からの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値μおよび標準偏差σから標本線を設定し、出力信号が標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否を判定し、これに基づいて溶接部5における異常の発生の有無を判定する判定部15とを備えている。
【解決手段】異常監視装置10は、シャフト本体2の外周面に配置され、溶接部5で発生したAE波を検出するAEセンサ12と、AEセンサ12からの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値μおよび標準偏差σから標本線を設定し、出力信号が標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否を判定し、これに基づいて溶接部5における異常の発生の有無を判定する判定部15とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に設けられるアクスルの溶接部における異常監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の特装車両には、走行装置の車軸としてのアクスルが搭載されている。アクスルは、特許文献1に示すように、筒状のシャフト本体の端部にシャフト本体側に向かって大径となるテーパ部を有するスピンドルを溶接して形成されている。アクスルは、車両の走行に関わる重要な部品であるため、アクスルを出荷する前には、超音波探傷やX線等の非破壊検査によって、シャフト本体部とスピンドルとの溶接部の異常の有無について十分な検査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−115405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクスルは、車両荷重や走行中の衝撃を繰り返し受ける部分であるため、時間の経過と共にクラック等が発生するおそれがある。このため、車両に搭載されたアクスルにおいては、異常が発生したことをリアルタイムかつ高い精度で検出できることが好ましい。
【0005】
本発明は、車両に搭載されたアクスルにおいて、アクスルの溶接部における異常の発生をリアルタイムかつ高い精度で検出することが可能な溶接部の異常監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の溶接部の異常監視装置は、筒状のシャフト本体の端部にスピンドルを溶接してなるアクスルを備えた車両に搭載され、アクスルにおける溶接部の異常の発生の有無を監視する溶接部の異常監視装置であって、シャフト本体の外周面に配置され、溶接部で発生したAE(Acoustic Emission)波を検出するAEセンサと、AEセンサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、出力信号が標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、これに基づいて溶接部における異常の発生の有無を判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この溶接部の異常監視装置によれば、シャフト本体の外周面にAEセンサを配置し、溶接部においてクラックが発生した際に生じるAE波を検出するAEセンサからの出力信号に基づいて、溶接部における異常の発生の有無を判定する。AEセンサの検出機能では、車両の走行時に生じる振動は検出されないので、クラックの発生によって生じた振動のみを検出することができる。したがって、AEセンサで、溶接部からのAE波を常時監視することにより、クラックが発生したことをリアルタイムに検出することができる。さらに、この異常監視装置では、AEセンサからの出力信号に一定の処理を施しているので、溶接部における異常の発生の有無を精度よく判定することができる。
【0008】
また、溶接部の異常監視装置では、シャフト本体の外周面において、衝撃波を検出する衝撃センサがAEセンサに隣接して配置され、判定部は、衝撃センサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、出力信号が標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有する衝撃波が検出されたか否かを判定することが好ましい。また、溶接部の異常監視装置では、判定部は、所定閾値以上のAE波が検出され、かつ所定閾値以上の衝撃波が検出されなかったと判定された場合に、溶接部に異常が発生したと判定することが好ましい。また、溶接部の異常監視装置では、判定部は、所定閾値以上のAE波が検出され、かつ所定閾値以上の衝撃波が検出されたと判定された場合に、溶接部に異常は発生していないと判定することが好ましい。
【0009】
この溶接部の異常監視装置では、衝撃センサが、AEセンサでは判別することができない所定の周波数を有する衝撃波を検出できる。これにより、アクスルを搭載した車両が跳ね上げた小石等がアクスルに衝突した場合であっても、その衝撃によって発生する振動と溶接部に異常が発生した際に生じる振動とを判別することができ、アクスルの溶接部における異常の発生の有無をより高い精度で検出することが可能となる。
【0010】
また、溶接部の異常監視装置では、判定部において溶接部に異常が発生したと判定された場合に、その判定結果を報知する報知部をさらに備えていることをことが好ましい。これにより、例えば、車両の運転者あるいは管理者に対して、アクスルに発生した異常を認識させることができる。
【0011】
また、溶接部の異常監視装置では、判定部において溶接部に異常が発生したと判定された場合に、車両の走行を禁止する制御部をさらに備えていることが好ましい。これにより、アクスルにおける異常の発生が原因となる不具合を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両に搭載されたアクスルにおいて、アクスルの溶接部における異常の発生をリアルタイムかつ高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置が取り付けられるアクスルの概略図である。
【図2】図1のアクスルの溶接部近傍を拡大した断面図である。
【図3】本発明の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置の機能構成を示したブロック図である。
【図4】図3のAEセンサから出力される信号の一例を示す図である。
【図5】図3の信号処理部における波形処理解析を説明する図である。
【図6】本発明の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図3のAEセンサから出力される信号の一例を示す図である。
【図8】図3の信号処理部における波形処理解析結果を説明する図である。
【図9】本発明の他の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置の機能構成を示したブロック図である。
【図10】図9のAEセンサおよび衝撃センサの検出機能を説明する図である。
【図11】図9の判定部における判定テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
本発明の好適な第1実施形態に係る溶接部の異常監視装置10について、図1〜図8を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明の溶接部の異常監視装置の検査対象となるアクスル1を示す概略図である。
【0015】
本発明の溶接部の異常監視装置10が監視する対象となるアクスル1は、トラック等の特装車両に搭載されている走行装置における車軸である。このアクスル1は、図1および図2に示すように、筒状のシャフト本体2の端部にシャフト本体2側に向かって大径となるテーパ部3bを有するスピンドル3を溶接して形成されている。シャフト本体2は、例えば、9mmの厚みを有する中空円筒状の部材である。スピンドル3は、シャフト本体2と接合される部分である接合部3aと、筒径がシャフト本体2側に向かって大きくなるように変化するテーパ部3bと、外周面にハブを取り付けるための部分である取付部3cとを有している。
【0016】
スピンドル3とシャフト本体2との溶接は、例えば、溶接ロボットを用いた自動溶接によって行われる。この溶接は、例えば図2に示すように、スピンドル3の開先部3dとシャフト本体2の開先部2aとを互いに突合わせ、突合わせた位置の内周面側に裏あて部材4を設け、外周面側から溶接ロボットのトーチが当てられる。そして、開先部3d,2aを互いに突合わせた接合面に沿って、トーチあるいはアクスルを形成する部材を回転させることによって、スピンドル3の端部とシャフト本体2の端部との間に、円周状の溶接部5が形成される。
【0017】
以下、上述したようなスピンドル3とシャフト本体2とを溶接してなるアクスル1における溶接部5の異常の発生の有無を監視する異常監視装置10について、図3〜図8を用いて説明する。
【0018】
異常監視装置10は、上述のアクスル1を備えた車両に搭載されており、図3に示すように、AEセンサ12と、信号処理部13と、判定部15と、報知部16と、制御部17とを含んで構成されている。
【0019】
AEセンサ12は、シャフト本体2における外周面に固定されており、溶接部5においてクラックが発生あるいは進展したときに生ずるAE波をシャフト本体2で検出する部分である。このAEセンサ12は、通常走行時に受ける振動よりもはるかに高い数10kHz〜数MHzという周波数帯域の振動のみを検出する特性を有している。AEセンサ12は、検出したAE波の強度に対応する出力信号を、帯域周波数が、例えば、40kHz〜1.2MHzであるアンプ(図示せず)を介して信号処理部13に出力する。なお、AEセンサ12から信号処理部13への出力は有線または無線のいずれであってもよい。
【0020】
図4は、溶接部5にクラックが発生したときあるいは溶接部5におけるクラックが進展したときにAEセンサ12から出力される信号の一例を示す図である。AEセンサ12は、溶接部5に異常が発生していない場合には何ら信号を出力しないが、溶接部5にクラックが発生したあるいは進展した場合には、シャフト本体2に伝播してくるAE波を検出し、例えば図4に示すように、最初に振幅のピークがあって次第に小さくなるような信号を出力する。
【0021】
信号処理部13は、AEセンサ12において検出された出力信号から、溶接部5における異常の発生の有無を判定するのに必要な判定値を抽出する部分である。信号処理部13は、後述する判定部15が、溶接部5における異常の発生の有無を判定するにあたって客観的に判定を行えるようにするために、波形処理解析によって出力信号を特徴化する。
【0022】
以下、信号処理部13が行う処理の一つである波形処理解析について説明する。この波形処理解析では、まず、図5に示すように、所定抽出幅における出力信号の移動平均値μを求める。次に、移動平均値μの標準偏差σに基づいて標本線を設定する。標本線は、標準偏差σを所定倍することによって得ることができる。例えば、図5に示すように、標準偏差σを、−3.0倍、−1.5倍、+1.5倍、+3.0倍することによって、−3σの標本線、−1.5σの標本線、+1.5σの標本線、+3.0σの標本線を得ることができる。次に、出力信号が、所定の標本線(例えば、+3σの標本線)の値に一致する回数を算出する。信号処理部13は、この回数を判定値とし、判定部15に出力する。
【0023】
判定部15は、信号処理部13において算出された判定値に基づいて、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、溶接部5における異常の発生の有無を判定する部分である。具体的には、判定部15は、出力信号が標本線の値に一致した回数が基準データを満たす場合、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたと判定し、これに基づいて当該溶接部5に異常が発生したと判定し、出力信号が標本線の値に一致した回数が基準データを満たさない場合、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されなかったと判定し、これに基づいて溶接部5に異常が発生していないと判定する。なお、基準データは、標準偏差σを所定倍することによって得られる標本線ごとに設定された値であり、データベース部14に格納されている。また、判定部15は、シャフト本体2の外周面に設けられている。
【0024】
報知部16は、判定部15において溶接部5に異常が発生したと判定された場合、このことをアクスル1が搭載された車両の運転者あるいは管理者へ報知する部分である。報知部16は、例えば溶接部5に異常が発生したことを警告音として報知したり、車両の表示部等に溶接部5に異常が発生したことを表示したりして報知する。
【0025】
制御部17は、判定部15において、溶接部5に異常が発生したと判定された場合、アクスル1が搭載された車両の走行を禁止する部分である。例えば、制御部17は、車両が走行中の場合には、車両のブレーキを制御して車両を停止させたり、車両が停止中の場合は、エンジンを停止させたりするよう制御して車両が走行することを禁止する。
【0026】
以下、図6に示す溶接部5の異常監視装置10の処理の流れを示すフローチャートを使用して、上述した溶接部5の異常監視装置10の動作について説明する。AEセンサ12は、溶接部5において発生するAE波を常時監視しており、AE波を検出すると、検出したAE波の強度に対応する出力信号を信号処理部13に出力する(ステップS1)。
【0027】
次に、信号処理部13は、AEセンサ12において取得された出力信号から溶接部5における異常の発生の有無を判定するのに必要な判定値を抽出する(ステップS2)。具体的には、図7に示すように、まず、AEセンサ12から出力される信号について所定抽出幅(図7の例では、AE波の周期である150ns)における移動平均値μを求め、移動平均値μに基づく標準偏差σを算出する。次に、算出した標準偏差σを所定倍(図7の例では、標準偏差σの3倍)することによって得られる標本線を設定する。そして、出力信号が当該標本線の値に一致する回数を算出し、図8(a)に示すように判定値を取得する。なお、図8(a)に示す判定値は、図7に示す出力信号M1が、標本線3σの値を上回ったときと標本線3σを下回ったときとをカウントして算出されたものである。
【0028】
次に、ステップS2において抽出された判定値に基づいて、判定部15は、溶接部5における異常の発生の有無を判定する(ステップS3)。具体的には、判定部15は、図8(a)に示すように、+3σの標本線に対して、出力信号が標本線の値に一致した回数が1回でもあれば、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたと判定し、これに基づいて当該溶接部5に異常が発生したと判定する。一方、判定部15は、図8(b)に示すように、+3σの標本線に対して、出力信号が標本線の値に一致することがない場合、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されなかったと判定し、これに基づいて当該溶接部5に異常が発生していないと判定する。なお、ここでは、標本線3σに対して出力信号が標本線の値に一致した回数が1回以上あることを溶接部5に異常が発生したと判定される判定基準としたがこれに限定されるものではない。この判定値は、例えば、溶接部5に異常が発生した際に生じるAE波から得られる時系列波形を波形処理解析した結果に基づいて、標準偏差σを所定倍することによって得られる標本線ごとに設定することができる。
【0029】
ステップS3において、当該溶接部5に異常が発生したと判定された場合(ステップS3:有)、報知部16は、警告音を出力して、アクスル1の溶接部5に異常が発生したことを車両の運転者へ報知する(ステップS4)。次に、制御部17は、車両が走行中の場合には、車両のブレーキを制御して車両を停止させ、停止中の場合は、エンジンを停止あるいはエンジンの始動を制限するように制御して車両が走行することを禁止する(ステップS5)。
【0030】
一方、ステップS3において、当該溶接部5に異常が発生していないと判定された場合(ステップS3:無)、一連の処理を終了する。
【0031】
以上に説明したように、本実施形態の溶接部5の異常監視装置10によれば、クラックが発生した際あるいはクラックが進展した際に生じる数10kHz〜数MHzという周波数帯域の振動をAEセンサ12によって検出できる。そして、AEセンサ12の検出機能では、車両の走行時に生じる振動は検出されないので、クラックの発生あるいは進展によって生じた振動のみを検出することができる。また、本実施形態の溶接部5の異常監視装置10によれば、AEセンサ12が、溶接部5からのAE波を常時監視しているので、クラックが発生あるいは進展したことをリアルタイムに検出することができる。さらに、判定部15は、AEセンサ12からの出力信号に対してステップS2において抽出されるような判定値に基づいて判定を行っているので、溶接部5における異常の発生の有無を精度よく判定することができる。この結果、車両に搭載されたアクスル1における溶接部5に異常が発生したことをリアルタイムかつ高い精度で検出することができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
本発明の好適な第2実施形態に係る溶接部5の異常監視装置110について、図9〜図11を用いて説明する。なお、当該異常監視装置110の構成は、上記第1実施形態の異常監視装置10に対して衝撃センサ21を備える点と、判定部15における判定処理のみが異なる。以下、上記異なる点について主に説明し、同一番号が付された同一要素についてはその説明を省略する。
【0033】
衝撃センサ21は、図9に示すように、シャフト本体2における外周面において、AEセンサ12に隣接して固定されている。衝撃センサ21の周波数帯域は、例えば数Hz〜数kHz程度となっており、AEセンサ12に比べて低周波帯域をカバーするようになっている。衝撃センサ21は、検出した衝撃波の強度に対応する出力信号を信号処理部13に出力する。信号処理部13は、AEセンサ12および衝撃センサ21からの出力信号に対して第1実施形態と同様の波形解析処理を実行し、所定閾値以上のAE波・衝撃波が検出されたか否かを示す判定値を判定部15に出力する。なお、衝撃センサ21から信号処理部13への出力は有線または無線のいずれであってもよい。
【0034】
図10は、AEセンサと衝撃センサとの検出機能を示す図である。図10に示すように、車両の走行時の振動やアクスル1への小石等の衝突によって生じる衝撃波の周波数は、例えば数Hz〜数10kHzとなっている。したがって、衝撃波がアクスル1を伝播してきた場合には、衝撃センサ21で検出可能となっている。なお、衝撃波のうちの高周波帯域部分については、AEセンサ12において検出される場合がある。また、クラックの発生あるいは進展によって生じたAE波は、衝撃センサ21では検出されず、AEセンサ12のみで検出可能となっている。
【0035】
また、図11は、判定部15における判定テーブルの一例を示す図である。図11に示すように、判定部15は、衝撃センサ21およびAEセンサ12のいずれにおいても所定閾値以上の信号が検出されなかった場合、および衝撃センサ21のみで所定閾値以上の信号が検出された場合には、溶接部5に異常が発生していないと判定する。また、判定部15は、衝撃センサ21およびAEセンサ12の双方で所定閾値以上の信号が検出された場合についても、溶接部5に異常が発生していないと判定する。これは、上述のように、衝撃波のうちの高周波帯域部分については、AEセンサ12において検出される場合があることを考慮したものである。そして、判定部15は、AEセンサ12のみで所定閾値以上の信号が検出された場合には、溶接部5に異常が発生したと判定する。
【0036】
以上に説明したように、本実施形態の溶接部5の異常監視装置110によれば、上記実施形態の異常監視装置10と同様の効果に加え、AEセンサ12に隣接して衝撃センサ21を備えているので、AEセンサ12と衝撃センサ21とで互いに異なる検出機能を利用した図11に示すような判定テーブルに基づいて、溶接部5の異常の発生の有無を判定する。これにより、アクスル1に伝播する、例えば、クラック発生により生ずるAE波、飛来物の衝突により生ずる衝撃波、走行時の振動等の中からAE波を判別し、アクスル1の溶接部5における異常の発生の有無をより高い精度で検出することができる。
【0037】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で以下のような様々な変形が可能である。
【0038】
上記実施形態においては、報知部16は、溶接部5にクラックが発生したことを車両の運転者に報知する例を挙げて説明したが、例えば、遠隔地にいる当該車両の管理者等へ通信手段を介して報知するようにしてもよい。この場合、車両にGPS等の現在位置特定手段を搭載することによって、管理者に車両の位置と共に報知することが可能となる。また、車両に搭載された積算メータ等の走行距離特定手段等と連携することにより、管理者に走行距離と共に報知することが可能となる。これにより、より緻密に車両の状態を管理することが可能となる。
【0039】
上記実施形態においては、判定部15は、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、溶接部5における異常の発生の有無を判定しているが、AEセンサ12が測定できる最大振幅の例えば20%以上の振幅を有するAE波が検出されたか否かを判定し、溶接部5における異常の発生の有無を判定してもよい。
【0040】
上記実施形態の溶接部5の異常監視装置10,110では、標本線を設定するにあたり標準偏差σを3倍した3σを設定したがこれ限定されるものではなく、例えば、標準偏差σを1.5倍した1.5σや標準偏差σを6倍した6σ等を設定してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…アクスル、2…シャフト本体、2a…開先部、3…スピンドル、3a…接合部、3b…テーパ部、3c…取付部、3d…開先部、5…溶接部、10…異常監視装置、12…AEセンサ、13…信号処理部、14…データベース部、15…判定部、16…報知部、17…制御部、21…衝撃センサ、110…異常監視装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に設けられるアクスルの溶接部における異常監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の特装車両には、走行装置の車軸としてのアクスルが搭載されている。アクスルは、特許文献1に示すように、筒状のシャフト本体の端部にシャフト本体側に向かって大径となるテーパ部を有するスピンドルを溶接して形成されている。アクスルは、車両の走行に関わる重要な部品であるため、アクスルを出荷する前には、超音波探傷やX線等の非破壊検査によって、シャフト本体部とスピンドルとの溶接部の異常の有無について十分な検査が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−115405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アクスルは、車両荷重や走行中の衝撃を繰り返し受ける部分であるため、時間の経過と共にクラック等が発生するおそれがある。このため、車両に搭載されたアクスルにおいては、異常が発生したことをリアルタイムかつ高い精度で検出できることが好ましい。
【0005】
本発明は、車両に搭載されたアクスルにおいて、アクスルの溶接部における異常の発生をリアルタイムかつ高い精度で検出することが可能な溶接部の異常監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の溶接部の異常監視装置は、筒状のシャフト本体の端部にスピンドルを溶接してなるアクスルを備えた車両に搭載され、アクスルにおける溶接部の異常の発生の有無を監視する溶接部の異常監視装置であって、シャフト本体の外周面に配置され、溶接部で発生したAE(Acoustic Emission)波を検出するAEセンサと、AEセンサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、出力信号が標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、これに基づいて溶接部における異常の発生の有無を判定する判定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この溶接部の異常監視装置によれば、シャフト本体の外周面にAEセンサを配置し、溶接部においてクラックが発生した際に生じるAE波を検出するAEセンサからの出力信号に基づいて、溶接部における異常の発生の有無を判定する。AEセンサの検出機能では、車両の走行時に生じる振動は検出されないので、クラックの発生によって生じた振動のみを検出することができる。したがって、AEセンサで、溶接部からのAE波を常時監視することにより、クラックが発生したことをリアルタイムに検出することができる。さらに、この異常監視装置では、AEセンサからの出力信号に一定の処理を施しているので、溶接部における異常の発生の有無を精度よく判定することができる。
【0008】
また、溶接部の異常監視装置では、シャフト本体の外周面において、衝撃波を検出する衝撃センサがAEセンサに隣接して配置され、判定部は、衝撃センサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、出力信号が標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有する衝撃波が検出されたか否かを判定することが好ましい。また、溶接部の異常監視装置では、判定部は、所定閾値以上のAE波が検出され、かつ所定閾値以上の衝撃波が検出されなかったと判定された場合に、溶接部に異常が発生したと判定することが好ましい。また、溶接部の異常監視装置では、判定部は、所定閾値以上のAE波が検出され、かつ所定閾値以上の衝撃波が検出されたと判定された場合に、溶接部に異常は発生していないと判定することが好ましい。
【0009】
この溶接部の異常監視装置では、衝撃センサが、AEセンサでは判別することができない所定の周波数を有する衝撃波を検出できる。これにより、アクスルを搭載した車両が跳ね上げた小石等がアクスルに衝突した場合であっても、その衝撃によって発生する振動と溶接部に異常が発生した際に生じる振動とを判別することができ、アクスルの溶接部における異常の発生の有無をより高い精度で検出することが可能となる。
【0010】
また、溶接部の異常監視装置では、判定部において溶接部に異常が発生したと判定された場合に、その判定結果を報知する報知部をさらに備えていることをことが好ましい。これにより、例えば、車両の運転者あるいは管理者に対して、アクスルに発生した異常を認識させることができる。
【0011】
また、溶接部の異常監視装置では、判定部において溶接部に異常が発生したと判定された場合に、車両の走行を禁止する制御部をさらに備えていることが好ましい。これにより、アクスルにおける異常の発生が原因となる不具合を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両に搭載されたアクスルにおいて、アクスルの溶接部における異常の発生をリアルタイムかつ高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置が取り付けられるアクスルの概略図である。
【図2】図1のアクスルの溶接部近傍を拡大した断面図である。
【図3】本発明の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置の機能構成を示したブロック図である。
【図4】図3のAEセンサから出力される信号の一例を示す図である。
【図5】図3の信号処理部における波形処理解析を説明する図である。
【図6】本発明の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図3のAEセンサから出力される信号の一例を示す図である。
【図8】図3の信号処理部における波形処理解析結果を説明する図である。
【図9】本発明の他の好適な一実施形態に係る溶接部の異常監視装置の機能構成を示したブロック図である。
【図10】図9のAEセンサおよび衝撃センサの検出機能を説明する図である。
【図11】図9の判定部における判定テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
本発明の好適な第1実施形態に係る溶接部の異常監視装置10について、図1〜図8を用いて説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明の溶接部の異常監視装置の検査対象となるアクスル1を示す概略図である。
【0015】
本発明の溶接部の異常監視装置10が監視する対象となるアクスル1は、トラック等の特装車両に搭載されている走行装置における車軸である。このアクスル1は、図1および図2に示すように、筒状のシャフト本体2の端部にシャフト本体2側に向かって大径となるテーパ部3bを有するスピンドル3を溶接して形成されている。シャフト本体2は、例えば、9mmの厚みを有する中空円筒状の部材である。スピンドル3は、シャフト本体2と接合される部分である接合部3aと、筒径がシャフト本体2側に向かって大きくなるように変化するテーパ部3bと、外周面にハブを取り付けるための部分である取付部3cとを有している。
【0016】
スピンドル3とシャフト本体2との溶接は、例えば、溶接ロボットを用いた自動溶接によって行われる。この溶接は、例えば図2に示すように、スピンドル3の開先部3dとシャフト本体2の開先部2aとを互いに突合わせ、突合わせた位置の内周面側に裏あて部材4を設け、外周面側から溶接ロボットのトーチが当てられる。そして、開先部3d,2aを互いに突合わせた接合面に沿って、トーチあるいはアクスルを形成する部材を回転させることによって、スピンドル3の端部とシャフト本体2の端部との間に、円周状の溶接部5が形成される。
【0017】
以下、上述したようなスピンドル3とシャフト本体2とを溶接してなるアクスル1における溶接部5の異常の発生の有無を監視する異常監視装置10について、図3〜図8を用いて説明する。
【0018】
異常監視装置10は、上述のアクスル1を備えた車両に搭載されており、図3に示すように、AEセンサ12と、信号処理部13と、判定部15と、報知部16と、制御部17とを含んで構成されている。
【0019】
AEセンサ12は、シャフト本体2における外周面に固定されており、溶接部5においてクラックが発生あるいは進展したときに生ずるAE波をシャフト本体2で検出する部分である。このAEセンサ12は、通常走行時に受ける振動よりもはるかに高い数10kHz〜数MHzという周波数帯域の振動のみを検出する特性を有している。AEセンサ12は、検出したAE波の強度に対応する出力信号を、帯域周波数が、例えば、40kHz〜1.2MHzであるアンプ(図示せず)を介して信号処理部13に出力する。なお、AEセンサ12から信号処理部13への出力は有線または無線のいずれであってもよい。
【0020】
図4は、溶接部5にクラックが発生したときあるいは溶接部5におけるクラックが進展したときにAEセンサ12から出力される信号の一例を示す図である。AEセンサ12は、溶接部5に異常が発生していない場合には何ら信号を出力しないが、溶接部5にクラックが発生したあるいは進展した場合には、シャフト本体2に伝播してくるAE波を検出し、例えば図4に示すように、最初に振幅のピークがあって次第に小さくなるような信号を出力する。
【0021】
信号処理部13は、AEセンサ12において検出された出力信号から、溶接部5における異常の発生の有無を判定するのに必要な判定値を抽出する部分である。信号処理部13は、後述する判定部15が、溶接部5における異常の発生の有無を判定するにあたって客観的に判定を行えるようにするために、波形処理解析によって出力信号を特徴化する。
【0022】
以下、信号処理部13が行う処理の一つである波形処理解析について説明する。この波形処理解析では、まず、図5に示すように、所定抽出幅における出力信号の移動平均値μを求める。次に、移動平均値μの標準偏差σに基づいて標本線を設定する。標本線は、標準偏差σを所定倍することによって得ることができる。例えば、図5に示すように、標準偏差σを、−3.0倍、−1.5倍、+1.5倍、+3.0倍することによって、−3σの標本線、−1.5σの標本線、+1.5σの標本線、+3.0σの標本線を得ることができる。次に、出力信号が、所定の標本線(例えば、+3σの標本線)の値に一致する回数を算出する。信号処理部13は、この回数を判定値とし、判定部15に出力する。
【0023】
判定部15は、信号処理部13において算出された判定値に基づいて、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、溶接部5における異常の発生の有無を判定する部分である。具体的には、判定部15は、出力信号が標本線の値に一致した回数が基準データを満たす場合、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたと判定し、これに基づいて当該溶接部5に異常が発生したと判定し、出力信号が標本線の値に一致した回数が基準データを満たさない場合、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されなかったと判定し、これに基づいて溶接部5に異常が発生していないと判定する。なお、基準データは、標準偏差σを所定倍することによって得られる標本線ごとに設定された値であり、データベース部14に格納されている。また、判定部15は、シャフト本体2の外周面に設けられている。
【0024】
報知部16は、判定部15において溶接部5に異常が発生したと判定された場合、このことをアクスル1が搭載された車両の運転者あるいは管理者へ報知する部分である。報知部16は、例えば溶接部5に異常が発生したことを警告音として報知したり、車両の表示部等に溶接部5に異常が発生したことを表示したりして報知する。
【0025】
制御部17は、判定部15において、溶接部5に異常が発生したと判定された場合、アクスル1が搭載された車両の走行を禁止する部分である。例えば、制御部17は、車両が走行中の場合には、車両のブレーキを制御して車両を停止させたり、車両が停止中の場合は、エンジンを停止させたりするよう制御して車両が走行することを禁止する。
【0026】
以下、図6に示す溶接部5の異常監視装置10の処理の流れを示すフローチャートを使用して、上述した溶接部5の異常監視装置10の動作について説明する。AEセンサ12は、溶接部5において発生するAE波を常時監視しており、AE波を検出すると、検出したAE波の強度に対応する出力信号を信号処理部13に出力する(ステップS1)。
【0027】
次に、信号処理部13は、AEセンサ12において取得された出力信号から溶接部5における異常の発生の有無を判定するのに必要な判定値を抽出する(ステップS2)。具体的には、図7に示すように、まず、AEセンサ12から出力される信号について所定抽出幅(図7の例では、AE波の周期である150ns)における移動平均値μを求め、移動平均値μに基づく標準偏差σを算出する。次に、算出した標準偏差σを所定倍(図7の例では、標準偏差σの3倍)することによって得られる標本線を設定する。そして、出力信号が当該標本線の値に一致する回数を算出し、図8(a)に示すように判定値を取得する。なお、図8(a)に示す判定値は、図7に示す出力信号M1が、標本線3σの値を上回ったときと標本線3σを下回ったときとをカウントして算出されたものである。
【0028】
次に、ステップS2において抽出された判定値に基づいて、判定部15は、溶接部5における異常の発生の有無を判定する(ステップS3)。具体的には、判定部15は、図8(a)に示すように、+3σの標本線に対して、出力信号が標本線の値に一致した回数が1回でもあれば、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたと判定し、これに基づいて当該溶接部5に異常が発生したと判定する。一方、判定部15は、図8(b)に示すように、+3σの標本線に対して、出力信号が標本線の値に一致することがない場合、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されなかったと判定し、これに基づいて当該溶接部5に異常が発生していないと判定する。なお、ここでは、標本線3σに対して出力信号が標本線の値に一致した回数が1回以上あることを溶接部5に異常が発生したと判定される判定基準としたがこれに限定されるものではない。この判定値は、例えば、溶接部5に異常が発生した際に生じるAE波から得られる時系列波形を波形処理解析した結果に基づいて、標準偏差σを所定倍することによって得られる標本線ごとに設定することができる。
【0029】
ステップS3において、当該溶接部5に異常が発生したと判定された場合(ステップS3:有)、報知部16は、警告音を出力して、アクスル1の溶接部5に異常が発生したことを車両の運転者へ報知する(ステップS4)。次に、制御部17は、車両が走行中の場合には、車両のブレーキを制御して車両を停止させ、停止中の場合は、エンジンを停止あるいはエンジンの始動を制限するように制御して車両が走行することを禁止する(ステップS5)。
【0030】
一方、ステップS3において、当該溶接部5に異常が発生していないと判定された場合(ステップS3:無)、一連の処理を終了する。
【0031】
以上に説明したように、本実施形態の溶接部5の異常監視装置10によれば、クラックが発生した際あるいはクラックが進展した際に生じる数10kHz〜数MHzという周波数帯域の振動をAEセンサ12によって検出できる。そして、AEセンサ12の検出機能では、車両の走行時に生じる振動は検出されないので、クラックの発生あるいは進展によって生じた振動のみを検出することができる。また、本実施形態の溶接部5の異常監視装置10によれば、AEセンサ12が、溶接部5からのAE波を常時監視しているので、クラックが発生あるいは進展したことをリアルタイムに検出することができる。さらに、判定部15は、AEセンサ12からの出力信号に対してステップS2において抽出されるような判定値に基づいて判定を行っているので、溶接部5における異常の発生の有無を精度よく判定することができる。この結果、車両に搭載されたアクスル1における溶接部5に異常が発生したことをリアルタイムかつ高い精度で検出することができる。
【0032】
〔第2実施形態〕
本発明の好適な第2実施形態に係る溶接部5の異常監視装置110について、図9〜図11を用いて説明する。なお、当該異常監視装置110の構成は、上記第1実施形態の異常監視装置10に対して衝撃センサ21を備える点と、判定部15における判定処理のみが異なる。以下、上記異なる点について主に説明し、同一番号が付された同一要素についてはその説明を省略する。
【0033】
衝撃センサ21は、図9に示すように、シャフト本体2における外周面において、AEセンサ12に隣接して固定されている。衝撃センサ21の周波数帯域は、例えば数Hz〜数kHz程度となっており、AEセンサ12に比べて低周波帯域をカバーするようになっている。衝撃センサ21は、検出した衝撃波の強度に対応する出力信号を信号処理部13に出力する。信号処理部13は、AEセンサ12および衝撃センサ21からの出力信号に対して第1実施形態と同様の波形解析処理を実行し、所定閾値以上のAE波・衝撃波が検出されたか否かを示す判定値を判定部15に出力する。なお、衝撃センサ21から信号処理部13への出力は有線または無線のいずれであってもよい。
【0034】
図10は、AEセンサと衝撃センサとの検出機能を示す図である。図10に示すように、車両の走行時の振動やアクスル1への小石等の衝突によって生じる衝撃波の周波数は、例えば数Hz〜数10kHzとなっている。したがって、衝撃波がアクスル1を伝播してきた場合には、衝撃センサ21で検出可能となっている。なお、衝撃波のうちの高周波帯域部分については、AEセンサ12において検出される場合がある。また、クラックの発生あるいは進展によって生じたAE波は、衝撃センサ21では検出されず、AEセンサ12のみで検出可能となっている。
【0035】
また、図11は、判定部15における判定テーブルの一例を示す図である。図11に示すように、判定部15は、衝撃センサ21およびAEセンサ12のいずれにおいても所定閾値以上の信号が検出されなかった場合、および衝撃センサ21のみで所定閾値以上の信号が検出された場合には、溶接部5に異常が発生していないと判定する。また、判定部15は、衝撃センサ21およびAEセンサ12の双方で所定閾値以上の信号が検出された場合についても、溶接部5に異常が発生していないと判定する。これは、上述のように、衝撃波のうちの高周波帯域部分については、AEセンサ12において検出される場合があることを考慮したものである。そして、判定部15は、AEセンサ12のみで所定閾値以上の信号が検出された場合には、溶接部5に異常が発生したと判定する。
【0036】
以上に説明したように、本実施形態の溶接部5の異常監視装置110によれば、上記実施形態の異常監視装置10と同様の効果に加え、AEセンサ12に隣接して衝撃センサ21を備えているので、AEセンサ12と衝撃センサ21とで互いに異なる検出機能を利用した図11に示すような判定テーブルに基づいて、溶接部5の異常の発生の有無を判定する。これにより、アクスル1に伝播する、例えば、クラック発生により生ずるAE波、飛来物の衝突により生ずる衝撃波、走行時の振動等の中からAE波を判別し、アクスル1の溶接部5における異常の発生の有無をより高い精度で検出することができる。
【0037】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で以下のような様々な変形が可能である。
【0038】
上記実施形態においては、報知部16は、溶接部5にクラックが発生したことを車両の運転者に報知する例を挙げて説明したが、例えば、遠隔地にいる当該車両の管理者等へ通信手段を介して報知するようにしてもよい。この場合、車両にGPS等の現在位置特定手段を搭載することによって、管理者に車両の位置と共に報知することが可能となる。また、車両に搭載された積算メータ等の走行距離特定手段等と連携することにより、管理者に走行距離と共に報知することが可能となる。これにより、より緻密に車両の状態を管理することが可能となる。
【0039】
上記実施形態においては、判定部15は、所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、溶接部5における異常の発生の有無を判定しているが、AEセンサ12が測定できる最大振幅の例えば20%以上の振幅を有するAE波が検出されたか否かを判定し、溶接部5における異常の発生の有無を判定してもよい。
【0040】
上記実施形態の溶接部5の異常監視装置10,110では、標本線を設定するにあたり標準偏差σを3倍した3σを設定したがこれ限定されるものではなく、例えば、標準偏差σを1.5倍した1.5σや標準偏差σを6倍した6σ等を設定してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…アクスル、2…シャフト本体、2a…開先部、3…スピンドル、3a…接合部、3b…テーパ部、3c…取付部、3d…開先部、5…溶接部、10…異常監視装置、12…AEセンサ、13…信号処理部、14…データベース部、15…判定部、16…報知部、17…制御部、21…衝撃センサ、110…異常監視装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシャフト本体の端部にスピンドルを溶接してなるアクスルを備えた車両に搭載され、前記アクスルにおける溶接部の異常の発生の有無を監視する溶接部の異常監視装置であって、
前記シャフト本体の外周面に配置され、前記溶接部で発生したAE波を検出するAEセンサと、
前記AEセンサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、前記出力信号が前記標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、これに基づいて前記溶接部における異常の発生の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする溶接部の異常監視装置。
【請求項2】
前記シャフト本体の外周面において、衝撃波を検出する衝撃センサが前記AEセンサに隣接して配置され、
前記判定部は、前記衝撃センサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、前記出力信号が前記標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有する衝撃波が検出されたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記所定閾値以上の前記AE波が検出され、かつ前記所定閾値以上の前記衝撃波が検出されなかったと判定された場合に、前記溶接部に異常が発生したと判定することを特徴とする請求項2に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記所定閾値以上の前記AE波が検出され、かつ前記所定閾値以上の前記衝撃波が検出されたと判定された場合に、前記溶接部に異常は発生していないと判定することを特徴とする請求項2または3に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項5】
前記判定部において前記溶接部に異常が発生したと判定された場合に、その判定結果を報知する報知部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項6】
前記判定部において前記溶接部に異常が発生したと判定された場合に、前記車両の走行を禁止する制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項1】
筒状のシャフト本体の端部にスピンドルを溶接してなるアクスルを備えた車両に搭載され、前記アクスルにおける溶接部の異常の発生の有無を監視する溶接部の異常監視装置であって、
前記シャフト本体の外周面に配置され、前記溶接部で発生したAE波を検出するAEセンサと、
前記AEセンサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、前記出力信号が前記標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有するAE波が検出されたか否かを判定し、これに基づいて前記溶接部における異常の発生の有無を判定する判定部と、
を備えることを特徴とする溶接部の異常監視装置。
【請求項2】
前記シャフト本体の外周面において、衝撃波を検出する衝撃センサが前記AEセンサに隣接して配置され、
前記判定部は、前記衝撃センサからの出力信号における所定の抽出幅から算出される移動平均値および標準偏差から標本線を設定し、前記出力信号が前記標本線の値に一致した回数によって所定閾値以上の出力信号を有する衝撃波が検出されたか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記所定閾値以上の前記AE波が検出され、かつ前記所定閾値以上の前記衝撃波が検出されなかったと判定された場合に、前記溶接部に異常が発生したと判定することを特徴とする請求項2に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記所定閾値以上の前記AE波が検出され、かつ前記所定閾値以上の前記衝撃波が検出されたと判定された場合に、前記溶接部に異常は発生していないと判定することを特徴とする請求項2または3に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項5】
前記判定部において前記溶接部に異常が発生したと判定された場合に、その判定結果を報知する報知部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶接部の異常監視装置。
【請求項6】
前記判定部において前記溶接部に異常が発生したと判定された場合に、前記車両の走行を禁止する制御部をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶接部の異常監視装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−64549(P2011−64549A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214824(P2009−214824)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】
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